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© Nomura2020年5月18日
金融市場とブロックチェーン
~海外におけるSTO事例~
野村資本市場研究所
主任研究員 神山 哲也
副主任研究員 塩島 晋
金融市場におけるブロックチェーン技術の活用等に関する研究会(第2回)
1
海外STOの全体像
• スイスのSTOプラットフォームのBlockStateによると、世界のSTOは累計124件(完了51%)、総調達額は9.5憶ドル。米国、金融セクターが中心。プロトコルはイーサリアムが94%。
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調達額 調達目標額
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米国 スイス 英国 ドイツ エストニア UAE 0 10 20 30 40 50 60
エネルギー
芸術
Eコマース
スポーツ
ギャンブル
インフラ
ソフトウェア
ヘルスケア
テクノロジー
サービス
不動産
ブロックチェーン
金融
世界のSTO案件数 世界のSTO調達額・調達目標額推移(100万ドル)
国別STO案件数 セクター別STO案件数
出所)BlockState “GlobalSTO Study”(2017年以降の世界の123件のプロジェクトを対象とした調査)より野村資本市場研究所作成
2
海外STO案件①
• 「STO」について統一的な定義はなし。ここでは試論として、ブロックチェーンを通じた証券発行を広義に捕捉したうえで、それを下記の3つに分類。
①証券発行・投資契約等による資金調達で、外部調達を伴う、事務処理の変更に留まらないなどの観点から、複数の文献等において「STO」とされるもの
②ブロックチェーンを利用した有価証券発行ではあるものの一般的に「STO」とは目されないもの(外部資金調達を伴わない、記録管理など専らバックオフィスとしてブロックチェーンを利用するなど)
③金融商品等のデリバリーでブロックチェーンを用いるもの(ファンド受益証券のトークン化など)
世銀のBond-Iサンタンデールのブロックチェーン債ソシエテ・ジェネラルのブロックチェーン債など
tZEROのTZROPBitbondのBB1Aspen DigitalのAspenCoinなど
22X FundNYCQ Fundなど
① ②
③※サンタンデールのブロックチェーン・ボンド
‐パブリック・イーサリアムで発行し、満期まで同プラットフォームに残る。
‐債券と現金のDVPもブロックチェーンで行った初の事例とされる。
‐調達額は2,000万ドル、1年満期、クーポン(トークン
化)は1.98%。
‐トークン化エージェント、ディーラーはグループ会社。購入もグループ会社。
3
海外STO案件②
• BlockStateによると、2017年以降の世界のSTOは計123件。そのうち、アナウンスが済み、資金調達がなされ(かつ調達資金が開示され)、完了している案件は65件(主に前頁①に該当)。それでもなお、世銀Bond-iやサンタンデール、Blockstack等は含んでおらず、「STO」の範囲・捉え方の多様性が伺われる。
注)調達額1位~20位の案件 出所)BlockStateより野村資本市場研究所作成
CompanyCountry of
incorporationIndustry Target amount Amount raised End Date Infrastructure Asset class
tZERO United States Finance & Banking $250,000,000 $134,000,000 Q3 2018 Ethereum Debt
Proxima Media United States Finance & Banking $100,000,000 $100,000,000 Q2 2019 Ethereum Equity
Bolton Coin UAE Real estate $100,000,000 $67,830,000 Q1 2019 Ethereum Asset backed
Nexo Switzerland Finance & Banking $52,500,000 $52,500,000 Q2 2018 Ethereum Debt
Jinbi Belarus Finance & Banking $12,500,000 $47,500,000 Q4 2018 Ethereum Equity
Alchemy Hong Kong Finance & Banking $60,000,000 $46,620,000 Q3 2018 Ethereum Equity
22x Fund United States Finance & Banking $35,000,000 $22,000,000 Q1 2018 Ethereum Asset backed
Aspen Digital United States Real estate $18,000,000 $18,000,000 Q4 2018 Ethereum Equity
Elio Motors United States Technology $25,000,000 $16,917,576 Q2 2018 Ethereum Equity
SWARM FUND United States Finance & Banking $100,000,000 $16,118,868 Q4 2017 Ethereum Equity
Smart Containers Switzerland Blockchain $36,000,000 $15,420,000 Q2 2018 Ethereum Equity
Spice United Kingdom Finance & Banking $100,000,000 $15,177,824 Q4 2017 Ethereum Equity
Science Blockchain United States Finance & Banking $50,000,000 $12,298,073 Q4 2017 Ethereum Equity
Dovu United Kingdom Software $3,000,000 $12,000,000 Q4 2017 Ethereum Equity
Swiss Alps Mining Switzerland Blockchain $100,000,000 $10,529,563 Q4 2018 Ethereum N/A
Vaultbank United States Finance & Banking $10,000,000 $10,000,000 Q1 2018 Ethereum Asset backed
Blockchain Capital United States Finance & Banking $10,000,000 $10,000,000 Q2 2017 Ethereum Equity
Vaultbank United States Finance & Banking $10,000,000 $10,000,000 Q2 2019 Ethereum Equity
Celes Chain China Service $42,000,000 $10,000,000 Q3 2018 Ethereum Equity
Miner OneUnited Arab
EmiratesInfrastructure $200,000,000 $9,000,000 Q2 2018 Ethereum Equity
4
海外STO案件②(続)
注)調達額21位~40位の案件 出所)BlockStateより野村資本市場研究所作成
CompanyCountry of
incorporationIndustry Target amount Amount raised End Date Infrastructure Asset class
UniCrypt Switzerland Finance & Banking $25,000,000 $8,412,548 Q2 2019 Ethereum Equity
Gramaton Token Belarus Blockchain $212,500,000 $7,000,000 Q3 2018 Ethereum Equity
Gigzi United Kingdom Finance & Banking $7,000,000 $6,743,781 Q1 2019 Ethereum Equity
Victorieum Belize Finance & Banking $31,000,000 $6,345,390 Q1 2019 Ethereum Equity
GG World Lottery British Virgin Is. Gambling $500,000,000 $6,113,210 Q1 2019 Ethereum Equity
TheArtToken Switzerland Art $25,000,000 $6,000,000 Q1 2019 N/A Debt
Equitybase Hong Kong Real estate $20,000,000 $5,831,278 Q2 2019 Ethereum Asset backed
Venus Seychelles Blockchain $9,100,000 $4,800,258 Q1 2019 VNS Equity
Countinghouse Fund Seychelles Finance & Banking $20,000,000 $4,715,000 Q2 2018 Ethereum Equity
Neufund Germany Finance & Banking $1,312,399 $4,410,560 Q4 2018 Ethereum Equity
CINDX Estonia Finance & Banking $21,000,000 $3,868,840 Q4 2018 Ethereum Equity
Genesis Estonia Real estate $3,000,000 $3,480,000 Q2 2018 Ethereum Asset backed
Bitbond Germany Finance & Banking $114,560,000 $3,436,800 Q2 2019 Stellar Debt
Blockimmo Switzerland Real estate $2,982,210 $2,982,210 Q1 2019 N/A Asset backed
GIFcoin Bulgaria Gambling $4,000,000 $2,800,000 Q2 2018 Ethereum Equity
Mt. Pelerin Switzerland Finance & Banking $2,500,000 $2,500,000 Q4 2018 Ethereum Equity
UniFox UAE Finance & Banking $100,000,000 $2,500,000 Q4 2018 UniFox Equity
SocialRemit United Kingdom Real estate $5,728,000 $2,291,200 Q3 2019 Ethereum Asset backed
Evareium Cayman Islands Real estate $90,000,000 $2,000,000 Q2 2018 Ethereum Asset backed
Loteo Curacao Gambling $2,500,000 $2,000,000 Q2 2019 Ethereum Equity
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米国におけるSTO規制①
■連邦証券諸法におけるSTOの位置づけ
SECは、数々の詐欺的なICO事案が噴出する中、DAO Report(17.7)、デジタル資産の「投資契約性」分析枠組み(19.4)等において、デジタル資産の連邦証券諸法上の扱いを明確化。
ICOもしくはデジタル資産(ブロックチェーンを通じて発行・移転されるデジタル通貨やトークン等)の募集・販売をする場合、「証券」として連邦証券諸法の適用について検討する必要。
STOにおけるトークンを含むデジタル資産が「証券」に該当するか否かは、いわゆるHowey Test(1946年のSEC v.Howey判決に基づく判例法)に準拠することを明確化。Howey Testによると、下記の基準を満たす場合は「証券」として、連邦証券諸法が適用される:
(1)金銭の投資(investment of money):
SECは、デジタル資産の公募・販売では、法定通貨/デジタル通貨を問わず「価値(value)」が対価とされているため、通常は満たされているとする
(2)共同事業(common enterprise):
SECは、これまでの経験から、デジタル資産においては「共同事業」が通常は存在するとする
(3)専ら他者の努力による合理的な利益の期待
(reasonable expectation of profits derived solely from efforts of others ):
SECによると、デジタル資産の「証券」該当性で問題になるのは主に同基準。
• 他者の努力による:①Active Participantの努力に依拠することを購入者が合理的に期待するか、②当該努力が単に事務的なものでなく、疑いようがなく重要なものであり、事業の成功・失敗を左右する不可欠な経営努力か、を基軸に、個別に判断される。
• 合理的な利益の期待:インフレ傾向など外部市場要因による価格上昇は「合理的な利益」に含まれない。その上で、保有者に事業の収益等への参加機会が提供されている、セカンダリー市場で取引されている、などの要因を総合的に勘案して個別に判断される。
• その他:合理的な利益の期待の有無を判定する際、判例上は、経済的実態や、消費者による購入行為のために発行されたものか否かも基準に。
6
米国におけるSTO規制②
■登録免除等の方法
証券の募集・販売に該当する場合(STOの場合)、公募手続きに係る時間・コストを回避するべく、登録免除規定が利用される。
(1)レギュレーションD:SEC登録が免除される私募規定
Rule 504:自衛力認定投資家のみ、不特定多数への勧誘不可、最大調達額年間500万ドル、ロックアップ期間あり
Rule 506(b):自衛力認定投資家+非自衛力認定投資家35人まで、不特定多数への勧誘不可、調達上限なし、ロックアップ期間あり
Rule 506(c):自衛力認定投資家のみ、不特定多数への勧誘可、調達上限なし、ロックアップ期間あり
⇒Rule 506(c)が、不特定多数への勧誘(ネット勧誘)が可、調達上限なしという特性から、米国STOで最もよく利用されている模様。
(2)レギュレーションA:小規模発行のための簡易登録制度
2015年JOBS法により規制緩和(RegA+)。自衛力認定投資家以外の小規模投資家にも販売可能に。
Tier 1:年間調達額2,000万ドル、財務諸表監査不要、継続開示義務なし、投資家側の投資額制限なし
Tier 2:年間調達額5,000万ドル、財務諸表監査必要、継続開示義務あり、自衛力認定投資家以外は年間収入もしくは純資産の高い方の10%が投資上限(=適格購入者(qualified purchaser))
ロックアップ期間なし、不特定多数への勧誘可
(3)レギュレーションS:国外投資家向けの登録免除制度
不特定多数への勧誘可、調達上限なし、ロックアップ期間あり
7
米国tZEROのtZERO Preferred Equity Token(TZROP)
発行の事例① ~優先株トークン化による過去最大案件
■ tZEROの概要
• Overstockは家具等のオンライン小売業者(本業では苦戦)。2014年からデジタル通貨を受け付けるなど、デジタル分野で先進的な取り組みをしてきた。2014年にブロックチェーン関連のベンチャー企業に投資するMedici Ventures設立。Medici Venturesのkeiretsu companiesの一つがtZERO。
• tZEROは、デジタル証券プラットフォーム。①資金調達者に対するトークン化サービス、②デジタル資産を保有するためのウォレット、③デジタル資産取引(Dinosaur Financial、tZERO ATS)を提供。
■TZROPの概要
• Overstockの自衛力認定投資家株主のうち希望するものと、2017年12月以降、Simple Agreement for Future Equity(SAFE)締結。将来、優先株トークン(tZERO Preferred Equity Token、TZROP)が発行された場合、10株につき1株のTZROPを提供するというもの。2018年3月1日時点の目論見書の時点で、約1,100の投資家が1.146億ドル分の応募(SAFE締結合意)。
• 2018年8月、Reg Dに基づく私募でTZROP発行。発行体はtZERO。
• TZROPの購入価格はPre sale期間中に上昇する仕組み(ディスカウント率低減)。最初の5ドルから6.67ドル、8ドル、10ドルへ。
• 調達目標額2.5億ドル、実調達額1.34億ドル
• 自衛力認定投資家への私募なのでRestricted Securitiesとして1年のロックアップ期間。2019年8月よりRule 144に基づき自衛力認定投資家以外も売買可能に。
• 受入れ通貨は、米ドル、ビットコイン、Ether。
• AML/KYCとして、SAFEを締結・執行する自衛力認定投資家に認証手続きを要請。
• 調達額100万ドルまでは最低投資額なし(額面が最低投資額)、100万ドル以降は最低投資額5万ドル。
• TZROPに議決権はつかない。tZEROのグロスレベニューの10%を四半期ごとに支払い。
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米国tZEROのtZERO Preferred Equity Token(TZROP)
発行の事例② ~優先株トークン化による過去最大案件
■調達資金の使途
• Overstockへの債務返済
• 株式投資
• トークン及びトークン取引システムの将来的な発展
• tZEROがトークン保有者に提供する機能の開発
• M&Aや債務支払い、サイバーセキュリティ、インフラ、人件費、商品開発などの一般経費
• セキュリティトークンを中心としたブロックチェーン技術関連の法規制に関するロビイング
• 法務・会計費用
■TZROPの流通市場
• 1年のロックアップ期間を経て売買可能に。
• 当初はグループ会社のDinosaur Financial経由でtZERO ATSのみの取引とする予定であったものの、SECの反対を受けて他所での取引も容認。
• 2020年3月時点では、Dinosaur Financialのみが取り扱い。報道によると、数10社がTZROPの取り扱いを開始する意向を示している模様。
9
米国BlockstackのStacks Token(STX)発行の事例①
~米国初のSEC登録によるSTO
■ Blockstackの概要
• 2013年設立、2017年アルファ稼働。ブロックチェーンに基づくDApps(自律分散型アプリケーション)の開発ネットワークを提供。デベロッパーがネットワーク上でアプリケーション開発、そのユーザーも自分のカギ・データを保有しながらアプリを利用できる。
■STXの概要
• 2019年7月のレギュレーションA(Tier 2)に基づくオファリングは、登録免除のRegulation Dではない、初のSEC承認STOとされる。
-バウチャー・プログラム:バウチャー保有者に7,833万STXを0.12ドルで提供。上限3,000ドル。※バウチャーは、2017年11・12月にBlockstackにindication of interestを表明した者に無料配布。2019年のトークンへの応募も任意。
-一般オファリング:適格購入者に6,200万STXを0.30ドルで提供。
-アプリの開発・評価プログラム:Blockstackネットワーク上で高評価のアプリ開発、そのレビュー提供へ最大4,000万STXを提供。
• バウチャー・プログラム及び一般オファリングの最低投資額は100ドル。最大投資可能額は3,000ドル。
• バウチャー・プログラム及び一般オファリングの入金受付通貨は米ドル、Bitcoin、Ether。
• AML/KYCにはCoinList(暗号資産取引プラットフォーム)のAML/KYCシステムを利用。政府発行ID提出等を要請、20か国に対応。
• Regulation Aベースであるため、restricted securitiesではなく、ロックアップ期間なし。
• 上記と並行して、Regulation Sに基づく海外投資家向けオファリングを実施:restricted securitiesとして1年のロックアップ期間。
-2019年1月に200万STXの購入権を1STXあたり0.0132ドルで提供
-2019年7月のオファリングと並行して4,000万STXを0.25ドルで提供
• 調達額は、Regulation AとRegulation Sに基づくトークン・オファリングで2,300万ドル。
• STXはBlockstackネットワークにおけるnative token。①ユーザーやドメイン名等のデジタル資産の登録、②スマート・コントラクトの登録及び執行、③取引をブロックチェーンに乗せるための取引手数料、④ブロックチェーンのマイナーへの支払い(FAQでは「将来課題」と位置づけ)、などに利用。配当や利益配分はなし。
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米国BlockstackのStacks Token(STX)発行の事例②
~米国初のSEC登録によるSTO
■調達資金の使途
• Regulation AオファリングとRegulation Sオファリングの調達資金の使途については、「経営陣は広範な裁量を持つ」こととされており、人材やコンサルタント採用等の一般的な事業オペレーション、Blockstackネットワークの拡充、ブロックチェーンの開発、アプリケーション・エコシステムの支援、マーケティング及び教育的イベントの開催、デベロッパーへの投資を例示(Regulation Aオファリング目論見書)。
■STXの流通市場
• 暗号資産取引プラットフォームのBinance(中国発・マルタ籍、金融規制対象外)及び暗号資産取引プラットフォームのHashkey Pro(香港籍、19年11月に香港SFCに認可申請)で二次流通可能。両取引所とも米国投資家の参加不可、米国でSTXを扱うATSもなし。
■STXの有価証券該当性(目論見書より抜粋)
• 当面の間、Howey TestやSECのガイダンス(19.4)に基づきSTXを証券(投資契約)として扱う。しかし、Blockstackの取締役会は、STXが米国証券法に基づく有価証券に該当するか否か、定期的に検討し、最終決定を下す。
• 現状、この決定は、Blockstackのネットワークが十分に分散化(decentralized)しているか否かに依拠する。これは即ち、①Blockstackが重要な経営・創業の努力(managerial or entrepreneurial effort)をすることについてSTX保有者が合理的に期待するか、②重要な非公開情報がBlockstackネットワークの将来を左右するほどBlockstackがネットワークに影響力を持つか、に依る。
• そうした期待をSTX保有者が持たず、Blockstackがそうした影響力を持たないのであれば、STXは証券に該当しないと決定する。
• 例として、現状ではBlockstackネットワークにおけるコア・デベロッパーは全員Blockstack従業員だが、ネットワークが分散化するにつれ、Blockstack従業員以外のコア・デベロッパーがネットワークの成功を左右するようになるかもしれない。あるいは、ネットワークのガバナンスと統制を、ネットワークのユーザーやデベロッパーに移転するかもしれない。その場合、ネットワークの成功はBlockstackの努力ではなく他者に依存することになる(ゆえにHowey Testの要件を満たさず「証券」ではなくなる)。
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ドイツBitbondのBitbond Token(BB1)発行の事例①
~欧州初の当局承認STO
■ Bitbondの概要
• 2013年設立、グローバルなレンディング・プラットフォームを運営。500万ユーロをVC等から調達。
• 80か国以上で、1,300万ユーロ以上の融資実行。プラットフォームにおける調達件数は3,000件超。
• 「非効率なSWIFTをブロックチェーンに置き換える」「銀行が対応しきれなかった中小企業向け融資を提供」を謳う。
• クレジット・スコアリングは、eコマースや銀行口座の取引履歴などオルタナティブ・データをAI分析。投資家はスコアリングを付された個別融資案件を閲覧し、どのプロジェクトに資金拠出するか決定。融資額は最大2.5万ドル。
• Bitbondの収益は、①借り手から徴収するオリジネーション・フィー(融資額の2~3%)、②投資家から徴収する返済手数料(返済額の0.5~1.5%)。
出所)Bitbond
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ドイツBitbondのBitbond Token(BB1)発行の事例②
~欧州初の当局承認STO
■ BB1の概要
• 発行体はBidbond GmbHの完全子会社Bitbond Finance GmbH。BaFinから目論見書の承認を受けたドイツ初のSTOとされる。
• 額面1ユーロの無担保劣後債。最低投資額も1ユーロ。
• 固定金利は年間4%(四半期毎)、変動金利は発行体Bitbond Finance GmbHの税前利益の60%(年一回)。
• 入金受付通貨は、ユーロ、Stellar、Bitcoin、Ether。償還・クーポン払いはユーロ建て。
• 発行日は2019年7月1日、満期は2029年7月1日。償還日に額面償還。
• 調達目標額350万ユーロに対し調達額210万ユーロ。ブログ等でBB1を宣伝するアフィリエイトは3.2万ユーロ以上のコミッション獲得。
• 発行では早期申込者へのディスカウント方式。申し込みが後ろに行くにつれてディスカウント率低減。
■調達資金の使途
• Bitbondにおける中小企業融資( 40% )、劣後債のファイナンス(40%)
• Bitbondの営業費用(10%)、アドミ、マーケティング、アフィリエイト(10%)
■BB1の流通市場
• Stellarブロックチェーンで売買可能。他での売買は認められていない(目論見書ベース)。
• BB1 Token購入者は自動的にStellar Walletを受け取る(発行日の7日後にStellar WalletにBB1 Tokenを受け取る)。既に持っているStellar Walletを利用することも可能。
• また、LOBSTRやInterstellarなどのウォレットも利用可能。
~2019年4月1日
~4月8日
~4月15日
4月22日
5月10日
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米国Elio MotorsのElioCoin Security Token発行の事例
~事業会社による株式トークン調達
■ Elio Motorsの概要
• Elio Motorsは2009年設立、超低燃費車の二人乗り三輪自動車を開発・製造を手掛ける。
• Elioの三輪自動車の量産体制確立は苦戦、注文に応じられていない状況。投資家からは不満の声があげられ、慢性的な資金不足に陥っている。2018年4月にOverstockより250万ドルの出資受け入れ。
■ ElioCoinの概要
• 2018年9月、ElioCoin Security Tokenのプリセールスを開始。最大調達額2,500万ドル、実調達額1,692万ドル。
• プリセールスはElioCoin Security Token とシリーズE優先株から成る。
• Regulation D Rule 506 (b)に基づき自衛力認定投資家のみに販売。最初の投資家はOverstockのCEO。
• 当初は、トークン保有者が注文した車両を優先的に入手できる権利をトークンにコーディングしようとしたものの断念。
• 受け入れ通貨は、米ドル、ビットコイン、Ether。
• 投資銀行のJones Trading Institutional Servicesが投資家への販売を担うプレースメント・エージェント。
• ElioCoinのプリセールス後のメインセールスについては、現時点で公表事実なし。
• 調達資金の使途は、三輪車開発・生産に必要な設備投資。
• tZEROのプラットフォームで取引可能となる予定(2019年8月以降続報なし)。
14
米国Aspen DigitalのAspenCoin発行の事例
~不動産のSTO
■ Aspen Digitalの概要
• 発行体のAspen DigitalはSt. Regis Aspen Resortを保有するために設立されたエンティティであり、シングルアセットREITと説明されることもある。親会社は不動産等の資産管理会社でトークン化等も手掛けるElevated Returns。
• Elevated Returnsの創業社長がバンコックのエンティティ経由で2010年に不動産買収。トロフィー不動産のSTO案件として注目された。
■ AspenCoinの概要
• St. Regis Aspen ResortのOperating Partnershipへのエクイティ・オーナーシップを表象するアセットバック・トークン(1 AspenCoin=1株)。
• Regulation D 506 (c)に基づく自衛力認定投資家向け私募。
• セキュリタイズのプラットフォームで発行。
• 入金は米ドル、ビットコイン、イーサリアム。
• 最低投資額1万ドル、調達額1,800万ドル。
• 配当イールド予想は4.7%。イーサリアムがウォレットに支払われる。
• 運営への参加、議決権はなし。
■ AspenCoinの流通市場
• 暗号資産取引プラットフォームのTemplum Markets(SEC、FINRA登録のATS、ブローカー・ディーラー)で取引可能。KYC/AML関連書類はTemplumのポリシーに従い投資家がTemplumに提出。オファリング時も同プラットフォーム利用。
• AspenCoinはイーサリアム・ネットワーク上の暗号資産であり、ウォレットもイーサリアム適格のウォレットであれば利用可能。また、ウォレットを持っていない投資家はComputerShareのマスター・ウォレットを利用可能。
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STOの発行・流通プラットフォーム
• STOScopeによると、STO発行プラットフォームは35、流通プラットフォームは11ある(重複あり)。
• STOでは、発行されたトークンは申込者のウォレットに記録される。その後、Regulation Dなどロックアップ期間のある私募スキームを利用した場合は、一定のロックアップ期間後、トレーディングが可能。
• トレーディングは、発行体・発行プラットフォームとAML/KYCでリンクした暗号資産取引プラットフォームで行われる。
⇒STXはBinanceやHashkey Pro、TZROPはtZERO ATS、BB1はStellar Blockchain。
発行プラットフォーム 流通プラットフォーム
出所)STOScope
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海外事例の特徴と論点
■個別事例の特徴
• tZEROは、苦戦する本業の株主への還元策として、有望子会社の利益配当権を付与したもの。調達資金は当該子会社のプラットフォーム運営資金に。
• Blockstackは、ICOに類似した事例。Blockstackが運営する自立分散型アプリの開発ネットワークが外部デベロッパー参入により分散化し、同ネットワークへのBlockstackの影響力が低下したら証券規制から脱する意向。
• Bitbondは、小口融資のプラットフォームの資金調達であり、資金の出口に性質に合わせて、債券でブロックチェーンを活用した小口の調達を実現。
• Elio Motorsは事業会社のSTO事例だが、プリセールスのみでメインセールスに関する説明なし。車両の量産体制の確立も滞っている模様。
■検討課題
• これまでは主にブロックチェーン関連のスタートアップ、金融セクターがSTO活用。今後、発行体の裾野が広がっていくか。
• 投資家への資金使途や発行スケジュール等の説明が不十分、あるいは証券投資家としての保護が突如なくなる懸念のある事例も。
• 円滑な発行・売却機会の確保と、発行体・投資家のチェック機能とのバランスを如何に確保するか。
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製または転送等を行わないようお願い致します。
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