T2K 実験に向けた新型光検出器 MPPC の多量サンプルテスト

T2K 実験に向けた新型光検出器MPPC の多量サンプルテスト

日本物理学会　秋季大会　 ( 北海道大学 )

2007/9/22(SAT)五味慎一　中家剛

横山将志　川向裕之大谷将士　永井直樹 ( 京都大学 )

中平武　村上武　 ( ＫＥＫ )

Off-axis detector

On-axis detector

50Gev Synchrotron

Far detector

T2K experimentIntroduction

• T2K 実験は 2009 年にスタートする次世代長基線ニュートリノ振動実験である。

• T2K 実験の前置検出器では総数で約 60000 個の MPPCを使用する。

• 今年度中に数万のオーダーの多量生産を行う。この規模での実用化は世界初。

2007/9/22 (SAT) 日本物理学会秋季大会 2

測定の概要について今測定の目的は 2 つ。

1. 300 個の MPPC(S10362-11-050CK 400 ピクセル 1×1mm2) についてその基礎特性を調べ、個体差を測定する。

2. T2K 実験に用いる数万単位の MPPC について測定するためのテストシステムを確立する。

2007/9/22 (SAT) 3 日本物理学会秋季大会

• ゲイン• 光子検出効率 (PDE)• ノイズレート• クロストーク + アフターパルス

LED

測定のセットアップ

MPPC + Connector各ファイバー･･･

×32・・・

Trip-t VMEPC

WLS ファイバー

Trip-t という ASIC を用い、 32 個のMPPC の同時測定システムの構築を行い、実際に使用し測定を行った。


LED からの光を散らす

ブレイクダウン電圧 (VBD) & オーバーボルテージ(ΔV)

Bias VoltageVbd

)V-(V e

C

e

Q GAIN bd

バイアス電圧

ブレイクダウン電圧

オーバーボルテージ

ゲインの測定からブレイクダウン電圧 (Vbd) を決定でき、 ΔV が求まる。

Vbd ΔV

bdBias V-V V 2007/9/22 (SAT) 5 日本物理学会秋季大会

同じバイアスで比較するとばらつきは非常に大きく見える。

同じ ΔV で比較する。

×10^3

ゲイン　測定結果 ( 300 個 )

Bias voltage [V]

×10^3

ゲインのばらつきは、ブレイクダウン電圧のばらつきに因るものである。

1×10^6

ΔV [V]

V e

C GAIN

5×10^5

Gain ・・・ 7.0 ～ 8.5×10^5


Gain : 400pixel 20 300samples℃ Gain DV : 400pixel 20 300samples℃

1×10^6

5×10^5

Gain ( ΔV = 1.5V ) 300samples

Gain

±6%

Capacitance : 400pixel 300samples VBD 20 : 400pixel 300samples℃

キャパシタンスとブレイクダウン電圧の分布図

ブレイクダウン電圧のばらつきは１ V 以内にほとんどのサンプルが収まっている。

キャパシタンス [ pF ] ブレイクダウン電圧　 (20 ) [V]℃

±5%

～ 1V

～ 2V


PDE : 400pixel 20 300samples℃ PDE DV : 400pixel 20 300samples℃

2×PMT

PDE 　測定結果 ( 300 個 )

3×PMT

Bias voltage [V]

PDE ・・・ 1.5 ～ 2.2×PMT


ΔV [V]

×PMT ×PMT

同じ ΔV で比較した時、 PDE のばらつきは RMS で約10% である。 ( ただしこの値はコネクターの再現性なども含む。 )

2×PMT

3×PMT

PDE ( ΔV = 1.5V ) 300samples

PDE [ ×PMT ]

±10%

ノイズレート・ X-Talk + A.P. の測定

pedestal event の個数

ポアソン分布を仮定

MPPC Gate=800nsec光源なし ( ランダム

ゲート )

クロストーク・アフターパルスの影響を全く含まない値

• 計算された 1PE の個数 = P(1)

・・・クロストーク・アフターパルスにより両者は等しくならない。

1p.e2p.e ・・・



pedestal

ノイズの定義にこの値を用い、クロストーク・アフターパルスの影響を取り除いた。

両者の比較から、クロストーク + アフターパルスを定義する。

ノイズレート　測定結果 ( 300 個 )

500kHz

250kHz

Noise ・・・ 200 ～450kHz

Noise rate [kHz] : 400pixel 20 300samples℃

Noise rate [kHz] DV : 400pixel 20 300samples℃


Bias voltage [V] ΔV [V]

ノイズのばらつきは RMS で約 18% と非常に大きい。

500kHz

250kHz

Noise rate ( ΔV = 2V ) 300samples

Noise rate [ kHz ]

±18%

Noise rate vs. Breakdown voltage

Breakdown voltage [V]ノイズレートはブレイクダウン電圧と関係があるようだが、詳しいことは不明である。

50%

30%

Cross-talk + after pulse rate ・・・ 27~33%

Cross-talk + After pulse: 400pixel 20 300samples℃

Cross-talk + After pulse DV : 400pixel 20 300samples℃

クロストーク + アフターパルス　測定結果 ( 300 個 )

Bias voltage [V] ΔV [V]

同じ ΔV で比較した時、クロストーク + アフターパルスのばらつきは RMS で約 10% である。

50%

30%

Cross-talk + After pulse Prob.

Cross-talk + After pulse ( ΔV = 2V ) 300samples

±10%

300 サンプルの個体差300 個の MPPC(S10362-11-050CK 400pixel) について･･･


index 測定結果 RMS

ゲイン 7.6×105 (ΔV=1.5V) 6%

光子検出効率 (PDE) 1.9×PMT (ΔV=1.5V) 10%

ノイズレート 200~450kHz (ΔV=2.0V) 18% ( ばらつき大 )

Cross-Talk + After Pulse 30% (ΔV=2.0V) 10%

ゲイン・ PDE ・ X-talk + A.P. ノイズレート個体差は数 % 程度個体差が RMS で 18% と大き

い。 T2K 実験からの要請に適っている。

13

• ΔV で比較した時、 300 個の MPPC の、ノイズを除いた 3 つの基礎特性は非常に良く揃っている。

• ゲイン・ PDE ・クロストーク + アフターパルスの 3 つの基礎特性は、 ΔV のみによってスケールし、 ΔV に対する振舞いも同じである。

Summary

2007/9/22 (SAT) 日本物理学会秋季大会

• Trip-t ASIC チップを用いた 32 個同時測定可能なテストシステムの構築に成功した。

3 つの特性のばらつきは、ブレイクダウン電圧のばらつきに由来している。

Back up

T2K 実験MAIN GOAL

• ν μ → ν e 振動モードの発見• ν μ → ν τ 振動モードの精密測定

TokaiKamioka2007/9/22 (SAT) 15 日本物理学会秋季大会

SK

2. Off-axis 検出器は、 0.2T の磁場中に置かれる。

1. 前置検出器の大部分は細かく分割されたシンチレーターと波長変換ファイバーとで構成される。そのため全読み出しチャンネルの総数は約 60000 という膨大な数になる。

T2K 実験での MPPC

Target

求められる光検出器は…Proton beam

MPPC はこれらの要請に応えることができる

Far detector Near detector

1. サイズが小さく、また安価な検出器

2. 磁場に対する安定性

Multi-Pixel Photon Counter ( MPPC )• Multi-Pixel Photon Counter ( = MPPC ) は、浜松ホトニ

クス (HPK) で開発された新型の半導体光検出器である。

• MPPC は、 100~1600 個の小さな Avalanche photo diodes( APD ) が 1mm×1mm の有感領域内に敷き詰められた構造をしている。

MPPC6mm

MPPC 有感領域　 400pixel

1pixel50μm×50μm


MPPC の動作原理• 各 APD ピクセルは Geiger モードで動作する。ゲイ

ンはその定義式から、ブレイクダウン電圧 ( Vbd ) 以上でバイアス電圧に比例して上昇する。

VVbd

)V-(V e

C

e

Q GAIN bd

Extrapolated to GAIN=0

• ガイガーモードでは１ピクセルから出力されるチャージ量 Q はそのピクセルが検出した光子の数に因らず一定になる。すなわち、光が入ったか・入らなかったかだけが判る。


6mm

5mm

MPPC character• 1 つの MPPC からの出力は各 APD ピクセルか

らの出力チャージ Q の合計値になる。また、各 APD ピクセルの性能は非常に良く揃っている。

• MPPC の持つ利点– Compact– 磁場に影響を受けずに安定に動作する。–高ゲイン ( ~106 ), 低いバイアス電圧

( ~70V )–高い光子検出効率– 安価

MPPC は非常に良い光子数分解能を有している


• MPPC は非常に良いフォトンカウンティング能力を有していて、図で示すように 1PE ・ 2PE ・・・のシグナルを検出できる。

MPPC output signal

MPPC raw signal

1PE2PE3PE

Pedestal

1PE

2PE

3PE

Pedestal

今回我々がテストした MPPC サンプル ( 型番： S10362-11-100MOD 400pixel) の基礎特性について報告する。


MPPC Histogram

ゲインの測定

e

)Q(pedestal - Q(1p.e.) GAIN

MPPC のゲインの定義式

1PE のピークと Pedestal のピークとの差からゲインを定義する。

1PE

2PE

3PE

Pedestal

測定方法 • 微弱な光をMPPC で観測する。• ADC 分布からゲインを算出する。

WLSファイ

バー

MPPC

ADC distribution of MPPC


MPPC

PMT

( reference )

同じ光量

0.789PEPDE = 1.96

1.550.789

=1.96

プラスチックコネクター

光子検出効率 (PDE) の測定

p.e.(PMT)p.e.(MPPC)PDE

( p.e. = # of photo electron )

同じだけの光量を 2 つの光検出器、 PMT ・ MPPC で観測する。 MPPC で得られた光電子量の、 PMT で得られた光電子量との比をとり、その値を「相対 PDE」として定義する。


1.55PE

ノイズレートの測定

1n Time

P(n)n

events ofnumber Length Gate

) P(2)2 P(1)(1 rate Noise 　

・・・

pedestal event の個数


MPPC Gate=800nsec光源なし ( ランダム

ゲート )

クロストーク・アフターパルスの影響を全く含まない値


・・・

クロストーク・アフターパルスの影響があるために両者は等しくならない。

1p.e2p.e ・・・



pedestal

クロストーク & アフターパルスの測定

Pedestal の個数は cross-talk & A.P. の影響を受けない


1PE の個数 : N1PE

( estimated by pedestal )||

X-Talk & A.P. 含まない

1PE の個数 : N1PE ( measurement )

||X-Talk & A.P. 含む

測定光源なし

Estimated 1PE,

Measured 1PE,Estimated PE,1 Rate

pulseAfter

&

Talk Cross

N

NN-

今回の測定では ADC 分布を用いているために、アフターパルスの影響とクロストークの影響とを区別することができない。『１ PE シグナルが >２ PE シグナルに見える確率』をここでは見る。

X-Talk& A.P. レートの定義式

この両者間の差が、クロストーク・アフターパルスの影響を表している。

2007/9/22 (SAT) 24

MPPC サンプルの基礎特性S10362-11-050CK ・・・ 400pixel sampleS10362-11-100CK ・・・ 100pixel sample

•　ゲイン•　光子検出効率 (PDE)•　ノイズレート•　クロストーク＋アフターパルス


ゲイン 400pixel 　測定結果

ゲインの測定結果から、ブレイクダウン電圧 (VBD) ・MPPC の 1 ピクセルのキャパシタンスが求められる。

1×10^6

5×10^5


×10^3×10^3

Gain 400pixel : ΔVGain 400pixel

PDE 400pixel 測定結果

• MPPC は PMT の約 2倍の PDE を有する。

Relative PDE 400pixel : ΔVRelative PDE 400pixel

2×PMT

1×PMT


500kHz

250kHz

1p.e noise

2p.e noise

• 1PE ノイズレートは、 T2K 実験からの要請(<1MHz) よりも十分低い。

ノイズレート 400pixel 　測定結果Noise rate [kHz] 400pixel : ΔVNoise rate [kHz] 400pixel


クロストーク 400pixel 　測定結果Cross-talk prob. 400pixel : ΔVCross-talk prob. 400pixel


50%

25%

• ここでは、 (2PE Noise)/(1PE Noise) を「クロストーク」と定義している。

50%

25%

クロストーク + アフターパルス 400pixel 　測定結果

• クロストーク + アフターパルスレートは、 ΔV のみの関数である。

Cross-talk + After pulse Probability 400pixel : ΔV

Cross-talk + After pulse Probability 400pixel


ゲイン 100pixel 　測定結果

ゲインの測定結果から、ブレイクダウン電圧 (VBD) ・MPPC の 1 ピクセルのキャパシタンスが求められる。

3×10^6

1.5×10^6


×10^3×10^3

Gain 100pixel : ΔVGain 100pixel

PDE 100pixel 測定結果

• MPPC は PMT の 2倍強の PDE を有する。

Relative PDE 100pixel : ΔVRelative PDE 100pixel

2×PMT

1×PMT


500kHz

250kHz

1p.e noise

2p.e noise

• 1PE ノイズレートは、 T2K 実験からの要請(<1MHz) よりも十分低い。

ノイズレート 100pixel 　測定結果Noise rate [kHz] 100pixel : ΔVNoise rate [kHz] 100pixel


クロストーク 100pixel 　測定結果Cross-talk prob. 100pixel : ΔVCross-talk prob. 100pixel


60%

30%

• ここでは、 (2PE Noise)/(1PE Noise) を「クロストーク」と定義している。

60%

30%

クロストーク + アフターパルス 100pixel 　測定結果

• クロストーク + アフターパルスレートは、 ΔV のみの関数である。

Cross-talk + After pulse Probability 100pixel : ΔV

Cross-talk + After pulse Probability 100pixel


MPPC表面とファイバー端面とはコネクターを用いて接続される。

セットアップ

光源

WLS ファイバー

MPPC × 32( プラスチックコネクター

付き )

Trip-t チップ


光源

コネクタークッキーと WLS ファイ

バー

LED

LED からの光を散らすMPPC とコネクター・基板

• 今回の測定に使用した光源– 青 LED×1 からの光を 2枚のプラ

スチック板でぼかして使用した。– LED からの光は WLS ファイバー

を用いて MPPC 感受領域へ移送される。


プラスチックコネクター (MPPC= ファイバー )

ファイバーハウジング

MPPC ハウジング

コネクター試作品

MPPC とファイバーとの接続に用いるプラスチックコネクターを設計・作成した。

ファイバーハウジング

MPPC ハウジング


接続

Trip-t chip

　 FNAL で開発された ASIC チップ　 D0 実験での使用実績　 T2K 実験での使用が予定されている Input 32ch アナログシグナル (－ )Output 1. ディスクリシグナル ( 各

32ch)2. Input シグナルに比例した

アナログシグナル3. Input シグナルとゲートと

の時間差に比例したアナログシグナル

:

:

Trip-t ･･･ TRIgger and Pipeline with Timing

128 ピン


190mm

65mm

190mm

155mm±5VIN

MPPC Hole 5.3φ（ 32 Mount ）

Bias control

Bias control

Trip-t チップテストボード

• このテストボードは、 32 個の MPPC を同時に読み出せる。


Documents

T2K 実験に向けた新型光検出器 MPPC の多量サンプルテスト