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Title Synthesis, Characterization, and Gas Permeation Properties of Novel Cellulose Derivatives( Abstract_要旨 ) Author(s) KHAN, Fareha Zafar Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 2008-03-24 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k13842 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

Title Synthesis, Characterization, and Gas Permeation ...repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/...―1203― 【511】 氏 名 Fareha ファリハ Zafar ザファル

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Title Synthesis, Characterization, and Gas Permeation Properties ofNovel Cellulose Derivatives( Abstract_要旨 )

Author(s) KHAN, Fareha Zafar

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2008-03-24

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k13842

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

―1203―

【511】

氏     名 Farehaファリハ

Zafarザファル

KHANハン

学位(専攻分野) 博  士 (工  学)

学 位 記 番 号 工 博 第 2946 号

学位授与の日付 平 成 20 年 3 月 24 日

学位授与の要件 学 位 規 則 第 4 条 第 1 項 該 当

研究科・専攻 工 学 研 究 科 高 分 子 化 学 専 攻

学位論文題目 Synthesis, Characterization, and Gas Permeation Properties of NovelCellulose Derivatives(新規セルロース誘導体の合成,特性,および気体透過性)

(主 査)論文調査委員 教 授 増 田 俊 夫  教 授 中 條 善 樹  教 授 木 村 俊 作

論   文   内   容   の   要   旨

エチルセルロース,酢酸セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースは不斉性,高い熱安定性,生体適合性,人体や

環境に無害などの特性を有しており,学問的,技術的,並びに実用的に重要であることから,セルロース化学の分野で重要

な位置を占めている。本論文は序論および5章からなっており,有機溶媒に可溶なこれらのセルロース誘導体の残存水酸基

を利用して様々な官能基を導入することにより新規官能基化セルロースエーテルおよびエステルを合成し,それらの官能基

の導入による生成ポリマーの溶解性,熱安定性などの諸性質への影響について検討している。さらに,自立膜の調製のし易

さおよび気体透過特性における側鎖の影響について詳細に調べている。

序論では,セルロースやセルロース誘導体の特性および高分子膜の気体透過機構について述べており,セルロース誘導体

の諸性質および気体透過性を検討する目的,意義について考察し,本研究の概要を述べている。

第1章では,シリルエーテル化したエチルセルロース誘導体を合成し,溶解性,熱安定性および気体透過性に及ぼすシリ

ル基の影響について検討している。水酸基を無極性のかさ高いシリル基で置換することにより,熱安定性の低下なしに比較

的無極性の溶媒に対する溶解性が向上することを明らかにしている。シリル置換基が大きくなるのに伴いシリル化エチルセ

ルロース誘導体の気体透過性は減少し,トリメチルシリル基を有するポリマーが最も高い気体透過性を示すことを見出した。

また,トリメチルシリル,トリエチルシリル,ジメチルイソプロピルシリル基を有するエチルセルロース誘導体のCO2透

過性とCO2/N2透過選択性の関係をプロットすると,これまでの上限である“Robeson’s upper bound”を超える値を示す

ことを明らかにしている。すべてのシリル化セルロース誘導体は,誘導体化前のエチルセルロースと比べて高分子膜の自由

体積分率(FFV)の増大により高い気体透過性を示すことを見出している。

第2章では,エチルセルロース(DSEt=2.69)の様々な長さのパーフルオロアルカノイル基による定量的なエステル化お

よびパーフルオロベンゾイル基による部分的なエステル化によって新規セルロース誘導体を合成している。パーフルオロア

シル化により生成したポリマーの表面が水に対して大きい接触角を示すことを明らかにしている。トリフルオロアセチル化

誘導体は最も高いガラス転移温度を示し,ガラス転移温度はパーフルオロアルカノイル基の長さが長いほど減少することを

見出している。さらに,気体透過性はエチルセルロースの2~3倍の値であり,これはポリマーマトリックス中のFFVと

気体の拡散係数の増大が原因であることを見出している。

第3章では,ユニークな特徴を有しているデンドリマーで官能基化されたセルロースの溶解性,熱安定性および気体透過

性に対するアミドイミドデンドリマー置換基の影響を明らかにしている。中心にカルボキシ基,外部にアルキル基を有する

アミドイミドデンドリマーの第一世代および第二世代をコンバージェント法によって合成し,エチルセルロースとエステル

基で結合することに成功している。デンドリマーで置換したエチルセルロース誘導体は,出発物質と同程度の熱安定性を示

し,非常に低いガラス転移温度を有することを見出している。第一世代デンドリマーを結合したポリマーはCHCl3に対する

溶解性が非常に高く,そのポリマー溶液をキャストすることにより自立膜を調製できることを明らかにしている。エチルセ

―1204―

ルロースにかさ高いデンドリマーを結合することによりFFVを減少させ,密度が上昇することにより気体透過性が減少す

るが,He/N2,H2/N2,CO2/N2,CO2/CH4透過選択性は向上することを見出している。

第4章では,エチルセルロース(DSEt=2.69,DSEt=2.50)および酢酸セルロース(DSAc=2.46,DSAc=1.80)の t-ブチ

ルカルバメートの合成を行い,生成ポリマーの溶解性,熱安定性および気体透過性について調べている。誘導体化により有

機溶媒への溶解性が向上し,ガラス転移温度のわずかな低下が観測されることを見出している。カルバメート形成は高分子

中の局所運動性を増加させ,それにより気体拡散性が増大し,結果として気体透過性が向上することを明らかにしている。

それにも関らず,極性のカルバメート結合によりCO2溶解選択性およびCO2/N2は減少しないことを見出している。

第5章では,生理不活性で生体適合性を有する水溶性セルロースエーテルと自然界の基本的な構成要素であるアミノ酸と

の結合について検討している。種々の化学的性質,形,かさ高さを有する t-BOC( t-BOC=t-butoxycarbonyl)で保護した

アミノ酸を用いてヒドロキシプロピルセルロースをエステル化し,アミノ酸のα-炭素の置換基のかさ高さの影響を調べて

いる。アミノアルカノイル部位が有機溶媒に対する溶解性の低下やガラス転移温度の上昇なしに疎水性を増大させることを

明らかにしている。

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文はシリル化,アシル化,およびカルバモイル化した,有機溶媒に可溶な新規セルロース誘導体を合成し,生成ポリ

マーの構造,特性,気体分離膜材料などへの応用について検討した結果をまとめたものであり,得られた主な成果は次のと

おりである。

1.エチルセルロース,酢酸セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースはキラリティー,高い熱安定性,生体適合性,

人体や環境に無害などの特性を有しており,それら自身が機能性物質として有用であるだけでなく,種々の新材料を合

成するための出発原料としても重要であることから,セルロース化学の分野で重要な位置を占めている。これらのセル

ロース誘導体の残存水酸基を無極性で種々のかさ高さを有するシリル基,様々な長さの疎水性パーフルオロアルカノイ

ル基,極性を有しかさ高くほぼ球状のアミドイミドデンドリマー,球状で適度に極性のカルバモイル基,様々な極性を

有する生体適合性のアミノアルカノイル官能基などで置換した多数の新規物質を合成した。

2.置換基の特性がそのポリマーの熱特性に大きく影響することを明らかにした。例えば,官能基としてデンドロンを導入

したエチルセルロース誘導体は最も高い熱安定性(T0=295-325℃)を示し,トリフルオロアセチル化したポリマー

では最も高い剛直性(Tg=227℃)を示すことを見出した。

3.気体透過性を二つの構造的特性,すなわちセルロース誘導体の側鎖の極性,形やかさ高さによって容易に変化する局所

運動性およびポリマーマトリックス中の自由体積分率によって明らかにすることができた。極性が低く適度にかさ高い

シリル基の導入により透過性は最も増大し,適度に極性で球状のパーフルオロアルカノイルおよびカルバモイル基は透

過選択性を低下させずに透過性を向上させた。それに対し,極性が高くかさ高いデンドリマー側鎖を導入すると,透過

性は減少したが,高い透過選択性を示した。

以上要するに本論文は,種々のシリル基,パーフルオロ基などを有するセルロース誘導体の合成を達成し,それらの諸性

質および気体分離機能などの特性を明らかにしたものであり,学術上,実際上寄与するところが少なくない。よって,本論

文は博士(工学)の学位論文として価値あるものと認める。また,平成20年2月1日,論文内容とそれに関連した事項につ

いて試問を行った結果,合格と認めた。