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試験の目的 水素化物発生装置HYD-100でヒ素、セレンを水素化物にして導 入し、 ICP発光分光法で河川水認証標準物質を測定して、定量値 の信頼性とメソッド検出限界を求めました。 また、検量線用標準溶液10 µg/L2時間連続導入して、安定性を 評価しました。 ヒ素についてはAs (Ⅲ)のみが水素化物となって検出されます。 水素化物発生装置HYD-100の予備還元機能を使用してAs (Ⅴ) を導入した場合の回収率を求め、予備還元機能を評価しました。 測定試料 ・河川水認証標準物質(微量分析用) NMIJ CRM7202-b ・安定性試験用標準試料: As (Ⅴ) 10 µg/L SPEX社製)、 Se10 µg/L (関東化学社製) ・検量線用標準試料: As (Ⅲ)標準溶液 (関東化学社製) Se標準溶液 (関東化学社製) 試験内容 ①河川水認証標準物質の定量と検出限界調査 検量線を作成後、河川水認証標準物質を測定して定量値を評価 しました。 ブランク溶液を10回測定し、検出限界(3 σ)と定量下限(10 σ) を求めました。 ②安定性試験 検量線を測定後、各元素10 µg/Lの標準液の2時間連続測定をし ました。 Asの検量線用試料は As (Ⅲ)標準溶液から調製し、安定性試験 用の10 µg/L標 準溶 液としてAs (Ⅴ)標 準溶 液を測 定しました。 水素化物発生装置 HYD-100の予備還元機能を使用し、装置内部 As (Ⅴ)からAs (Ⅲ)へ還元させて測定し、回収率から予備還元 機能を評価しました。 Technical Note EL14010 水素化物発生装置 HYD-100ICP発光分光法による ヒ素、セレンの分析 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 キーワード 水素化物発生法/予備還元機能/ヒ素/セレン/河川水認証標準物質/安定性試験 ICP発光分光分析 概要 この テ クニカルノートでは、予 備 還 元 機 能 付き 水 素 化 物 発 生 装 置HYD-100Thermo Scientific™ iCAP™ 7000シリーズ ICP-OESを用いたヒ素、セレン分析の 検出性能と、標準溶液の連続測定におけるデータの安定性を報告します。 1 :メソッドパラメーター As Se 波長 193.696 nm 196.090 nm 測光方向 軸方向 軸方向 高周波出力 1150 W 1150 W 補助ガス流量 0.5 L/min 1.0 L/min ネブライザーガス流量 HYD-100キャリアガスとして導入) 0.55 L/min 0.45 L/min 試料置換時間 4040積分時間 1515繰り返し回数 3 3 HYD-100ポンプ速度 5 4 還元炉 ON OFF 試薬 NaBH 4 1% (NaOH 0.5%NaBH 4 1% (NaOH 0.5%KI 40H 2 O HCl 1+1 HCl 1+1 HYD-100 水素化物発生装置 2 :水素化物発生 ICP発光法による河川水認証標準物質の測 定結果 As Se 認証値[µg/L] 1.10 ± 0.05 1.00 ± 0.06 測定値[µg/L] 1.17 1.01 %RSD 1.1 1.3 標準偏差σ 0.0103 0.0097 検出限界 3 σ[µg/L] 0.0309 0.0291 定量下限 10 σ[µg/L] 0.103 0.097

TN EL14010 水素化物発生装置HYD-100とICP発光分 …tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/EL14010-JA.pdf試験の目的 水素化物発生装置HYD-1 0でヒ素、セレンを水素化物にして導

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Page 1: TN EL14010 水素化物発生装置HYD-100とICP発光分 …tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/EL14010-JA.pdf試験の目的 水素化物発生装置HYD-1 0でヒ素、セレンを水素化物にして導

試験の目的水素化物発生装置HYD-100でヒ素、セレンを水素化物にして導入し、ICP発光分光法で河川水認証標準物質を測定して、定量値の信頼性とメソッド検出限界を求めました。また、検量線用標準溶液10 µg/Lを2時間連続導入して、安定性を評価しました。ヒ素についてはAs(Ⅲ)のみが水素化物となって検出されます。水素化物発生装置HYD-100の予備還元機能を使用してAs(Ⅴ)を導入した場合の回収率を求め、予備還元機能を評価しました。

測定試料 ・河川水認証標準物質(微量分析用) NMIJ CRM7202-b

・安定性試験用標準試料:As(Ⅴ)10 µg/L (SPEX社製)、 Se10 µg/L(関東化学社製)・検量線用標準試料:As(Ⅲ)標準溶液 (関東化学社製) Se標準溶液 (関東化学社製)

試験内容①河川水認証標準物質の定量と検出限界調査検量線を作成後、河川水認証標準物質を測定して定量値を評価しました。ブランク溶液を10回測定し、検出限界(3 σ)と定量下限(10 σ)を求めました。②安定性試験検量線を測定後、各元素10 µg/Lの標準液の2時間連続測定をしました。Asの検量線用試料はAs(Ⅲ)標準溶液から調製し、安定性試験用の10 µg/L標準溶液としてAs(Ⅴ)標準溶液を測定しました。水素化物発生装置HYD-100の予備還元機能を使用し、装置内部でAs(Ⅴ)からAs(Ⅲ)へ還元させて測定し、回収率から予備還元機能を評価しました。

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水素化物発生装置HYD-100とICP発光分光法によるヒ素、セレンの分析

サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社

キーワード水素化物発生法/予備還元機能/ヒ素/セレン/河川水認証標準物質/安定性試験/ ICP発光分光分析

概要このテクニカルノートでは、予備還元機能付き水素化物発生装置HYD-100とThermo Scientifi c™ iCAP™ 7000シリーズ ICP-OESを用いたヒ素、セレン分析の検出性能と、標準溶液の連続測定におけるデータの安定性を報告します。

表1:メソッドパラメーター

As Se

波長 193.696 nm 196.090 nm

測光方向 軸方向 軸方向高周波出力 1150 W 1150 W

補助ガス流量 0.5 L/min 1.0 L/min

ネブライザーガス流量(HYD-100へ

キャリアガスとして導入)0.55 L/min 0.45 L/min

試料置換時間 40秒 40秒積分時間 15秒 15秒繰り返し回数 3 3

HYD-100ポンプ速度 5 4

還元炉 ON OFF

試薬

NaBH4 1%(NaOH 0.5%)

NaBH4 1%(NaOH 0.5%)

KI 40% H2O

HCl(1+1) HCl(1+1)

HYD-100 水素化物発生装置

HYD-100 水素化物発生装置 と構成図

表2:水素化物発生 ICP発光法による河川水認証標準物質の測定結果

As Se

認証値 [µg/L] 1.10± 0.05 1.00± 0.06測定値 [µg/L] 1.17 1.01

%RSD 1.1 1.3標準偏差σ 0.0103 0.0097

検出限界 3 σ[µg/L] 0.0309 0.0291定量下限 10 σ[µg/L] 0.103 0.097

Page 2: TN EL14010 水素化物発生装置HYD-100とICP発光分 …tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/EL14010-JA.pdf試験の目的 水素化物発生装置HYD-1 0でヒ素、セレンを水素化物にして導

E1406

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表3:2時間の安定性データ元素 As Se

検体数 45 45平均値 [µg/L] 9.9 10.2%RSD 1.1 0.9

As(Ⅴ)回収率% 99 ̶

結果①河川認証標準物質のAs、Seの定量表2に各元素の測定結果と検出限界を示します。いずれの元素についても0.1 µg/L以下の検出限界値が得られ、測定値は認証値とよく一致しました。図1に、Asの検量線とサブアレーを示します。②安定性試験結果図2に2時間の安定性試験のグラフを示します。表3には安定性試験の測定結果とAs(Ⅴ)の回収率を示します。各元素でRSD

<1.1%と良好な結果を得ることができました。また、予備還元機能を使用したAs(Ⅴ)の回収率も100±1%と良好であり、予備還元機能が有効であることが確認できました。

まとめ水素化物発生装置HYD-100を使用することで、As、Seは河川水の環境基準の10分の1のオーダーの測定を正確に行うことができます。また、気液分離部に冷却機能を有しているため、長時間測定時の安定性にも優れています。ヨウ化カリウム溶液を試料と共にペリスタリックポンプで導入することでAs(Ⅴ)からAs(Ⅲ)への予備還元操作を装置内で行うことができ、前処理にかかる手間を省略することが可能です。

図2:長時間安定性結果

図1:Asの検量線とサブアレー

図 2に 2時間の安定性試験のグラフを示します。表 3には安定性試験の測定結果と As(Ⅴ)の回

収率を示します。各測定結果で RSD<1.1%と良好な結果を得ることが出来ました。また、予備還

元機能を使用した As(Ⅴ)の回収率も 100±1%と良好であり、予備還元機能が有効であることが

確認できました。

まとめ

水素化物発生装置 HYD-100を使用することで、As・Seは河川水の環境基準の 10分の 1のオー

ダーの測定を正確に行うことができます。また、気液分離部に冷却機能を有しているため、長時

間測定時の安定性にも優れています。ヨウ化カリウム溶液を試料と共にペリスタリックポンプで導

入することで As(Ⅴ)から As(Ⅲ)への予備還元操作を装置内で行うことができ、前処理にかかる手

間を省略することが可能です。

図 1:As の検量線とサブアレー

図 2長時間安定性結果

表 3 2時間の安定性データ

元素 As Se

検体数 45 45

平均値[μg/L] 9.9 10.2

%RSD 1.1 0.9

As(Ⅴ)回収率% 99 -

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0 20 40 60 80 100 120

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As安定性試験

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0 20 40 60 80 100 120時間 (min)

Se安定性試験

図 2に 2時間の安定性試験のグラフを示します。表 3には安定性試験の測定結果と As(Ⅴ)の回

収率を示します。各測定結果で RSD<1.1%と良好な結果を得ることが出来ました。また、予備還

元機能を使用した As(Ⅴ)の回収率も 100±1%と良好であり、予備還元機能が有効であることが

確認できました。

まとめ

水素化物発生装置 HYD-100を使用することで、As・Seは河川水の環境基準の 10分の 1のオー

ダーの測定を正確に行うことができます。また、気液分離部に冷却機能を有しているため、長時

間測定時の安定性にも優れています。ヨウ化カリウム溶液を試料と共にペリスタリックポンプで導

入することで As(Ⅴ)から As(Ⅲ)への予備還元操作を装置内で行うことができ、前処理にかかる手

間を省略することが可能です。

図 1:As の検量線とサブアレー

図 2長時間安定性結果

表 3 2時間の安定性データ

元素 As Se

検体数 45 45

平均値[μg/L] 9.9 10.2

%RSD 1.1 0.9

As(Ⅴ)回収率% 99 -

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0 20 40 60 80 100 120時間 (min)

Se安定性試験

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認証標準物質 As 10µg/L

図 2に 2時間の安定性試験のグラフを示します。表 3には安定性試験の測定結果と As(Ⅴ)の回

収率を示します。各測定結果で RSD<1.1%と良好な結果を得ることが出来ました。また、予備還

元機能を使用した As(Ⅴ)の回収率も 100±1%と良好であり、予備還元機能が有効であることが

確認できました。

まとめ

水素化物発生装置 HYD-100を使用することで、As・Seは河川水の環境基準の 10分の 1のオー

ダーの測定を正確に行うことができます。また、気液分離部に冷却機能を有しているため、長時

間測定時の安定性にも優れています。ヨウ化カリウム溶液を試料と共にペリスタリックポンプで導

入することで As(Ⅴ)から As(Ⅲ)への予備還元操作を装置内で行うことができ、前処理にかかる手

間を省略することが可能です。

図 1:As の検量線とサブアレー

図 2長時間安定性結果

表 3 2時間の安定性データ

元素 As Se

検体数 45 45

平均値[μg/L] 9.9 10.2

%RSD 1.1 0.9

As(Ⅴ)回収率% 99 -

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Se安定性試験

図 2に 2時間の安定性試験のグラフを示します。表 3には安定性試験の測定結果と As(Ⅴ)の回

収率を示します。各測定結果で RSD<1.1%と良好な結果を得ることが出来ました。また、予備還

元機能を使用した As(Ⅴ)の回収率も 100±1%と良好であり、予備還元機能が有効であることが

確認できました。

まとめ

水素化物発生装置 HYD-100を使用することで、As・Seは河川水の環境基準の 10分の 1のオー

ダーの測定を正確に行うことができます。また、気液分離部に冷却機能を有しているため、長時

間測定時の安定性にも優れています。ヨウ化カリウム溶液を試料と共にペリスタリックポンプで導

入することで As(Ⅴ)から As(Ⅲ)への予備還元操作を装置内で行うことができ、前処理にかかる手

間を省略することが可能です。

図 1:As の検量線とサブアレー

図 2長時間安定性結果

表 3 2時間の安定性データ

元素 As Se

検体数 45 45

平均値[μg/L] 9.9 10.2

%RSD 1.1 0.9

As(Ⅴ)回収率% 99 -

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0 20 40 60 80 100 120時間 (min)

Se安定性試験

図 2に 2時間の安定性試験のグラフを示します。表 3には安定性試験の測定結果と As(Ⅴ)の回

収率を示します。各測定結果で RSD<1.1%と良好な結果を得ることが出来ました。また、予備還

元機能を使用した As(Ⅴ)の回収率も 100±1%と良好であり、予備還元機能が有効であることが

確認できました。

まとめ

水素化物発生装置 HYD-100を使用することで、As・Seは河川水の環境基準の 10分の 1のオー

ダーの測定を正確に行うことができます。また、気液分離部に冷却機能を有しているため、長時

間測定時の安定性にも優れています。ヨウ化カリウム溶液を試料と共にペリスタリックポンプで導

入することで As(Ⅴ)から As(Ⅲ)への予備還元操作を装置内で行うことができ、前処理にかかる手

間を省略することが可能です。

図 1:As の検量線とサブアレー

図 2長時間安定性結果

表 3 2時間の安定性データ

元素 As Se

検体数 45 45

平均値[μg/L] 9.9 10.2

%RSD 1.1 0.9

As(Ⅴ)回収率% 99 -

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As安定性試験

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0 20 40 60 80 100 120時間 (min)

Se安定性試験

装置と機器構成水素化物発生装置HYD-100 と iCAP 7400(または7600)Duo

モデルを使用しました。HYD-100はユニークな予備還元機能と気液分離部に冷却機能を有しています。気液分離部を冷却することで熱影響を排除できます。主な試料導入系の構成と、機器パラメーターを表1に示します。測光方向は、微量元素の測定に向いている軸方向を用いました。