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2013 年 年年年年年年年 年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年 ―年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年― 年年年年年年年年年 1

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2013年度 松浦良充研究会 夏課題

今後の日本における障害児教育の在り方―特別支援教育とインクルーシブ教育の共存に向けて―

慶應義塾大学文学部

人文社会学科教育学専攻 4年

11013400

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原田 早春

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アブストラクト

本研究は、今日文部科学省を中心に日本政府が改革を進めようとしている障害児教育、

とりわけ「特別支援教育」と「インクルーシブ教育」に関して考察するものである。

2007年に日本の障害児教育は特殊教育から特別支援教育へとその形を変えた。しかし、今日においてはその特別支援教育を推進させることで、障害児教育においては世界的に

もメインストリームであるといえるインクルーシブ教育への展開を目指そうという動き

がある。しかし、特別支援教育は特殊教育以来の分離教育体制を引き継ぐものであるのに

対し、インクルーシブ教育は排除や差別を認めない包括的教育体制である。そのような

一見矛盾したような教育体制を背景に特別支援教育はインクルーシブ教育へと展開するこ

とが本当にできるのだろうか。そこにはインクルーシブ教育を保障した『障害者権利条

約』の批准に焦る日本政府が、丁寧にそれらの関係を顧みないまま“障害児教育”という共

通項だけで安易に同一視してしまっているのではないかという懸念すら抱くことが出来

る。このようにして、筆者は日本政府によって「特別支援教育」と「インクルーシブ教

育」の関係の捉え方について丁寧な議論が避けられているのではないかという現状に対

して問題意識を持ち、本研究に着手することとした。そのため、本研究では特に、「特別

支援教育」と「インクルーシブ教育」が本当に推進によって展開することが出来るもの

なのか、あるいは展開するべきなのか否かという点について、また今後の障害児教育の

あるべき形について考察を行う。

そこで、以下に本研究をどのように行っていくかを記しておく。

まず序章においては、筆者が本研究に着手するに至った経緯、いわゆるテーマの設定

理由と、本研究の目的を提示する。ここでは筆者が特に「特別支援教育を推進すればイン

クルーシブ教育へと展開することが出来る」といった認識を前提とした日本政府の姿勢

に特に問題意識を持っていることを示す。

第一章では、第一節と第二節で本研究の重要なキーワードである「インクルーシブ教

育」と「特別支援教育」についてその定義・概要・目的を概観する。そして第二節第三項

ではそれらを対照させてみたとき、両者は微妙にその本質が異なるものであるというこ

と筆者の意見として示す。そして第三節ではまずインクルーシブ教育像における国内で

の捉えられ方の違いとして『第二次意見』と『論点整理』の対立を取り上げ、日本国内す

ら捉え方に対立があること、最終的に『論点整理』の立場をとった上で障害児教育の各施

策を進めていることを明らかにする。第二項では『共生社会の形成に向けたインクルー

シブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)』を参考に、日本政府が特別

支援教育を具体的にどのように推進して、インクルーシブ教育へと展開させていことう

しているかを記述し、その上で「特別支援教育はインクルーシブ教育へと展開し得る」

という前提がその背後に垣間見えることを指摘する。第三項では崔の研究を元に日本政府

の『障害者権利条約』そのものへの解釈の仕方を提示し、その解釈の仕方では「特別支援

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教育」と「インクルーシブ教育」は完全に異なるということを提示する。そして第四項

では特別支援教育がインクルーシブ教育へは推進するだけでは展開し得ないという考え

を持つ清水と越野の研究に対して先行研究検討を行い、第五項では筆者の新たな意見とし

て「特別支援教育を推進しなぜインクルーシブ教育へ展開しなければならないのかその

必然性はない」ということを述べる。

第二章では、まず第一章までを通して、筆者の考えを提示する。そして第二節では本研

究のメインクレームともなる(仮)仮説「特別支援教育とインクルーシブ教育は本質的に

異なるものであるためその連続性は無く(A)、特別支援教育の目的をソーシャル・イ

ンクルージョンに据えることで、両者は障害児教育という同一のものではない、異なる

パラダイムにおいて存在し得るものである。(B)」を提示する。その上で検証方法を

(A)と(B)に分け、それぞれにおいてどのようにそれらを明らかにするかを示す。

また仮説内の単語の定義づけも行う。

第三章では、全体を通して(A)の検証を行う。検証では第一章を踏まえ「特別支援教

育」と「インクルーシブ教育」が本質的に異なるものであることをしめすために、第一

節では両者が生まれた歴史的背景を丁寧にたどっていく。そこで両者がそれぞれどのよ

うな流れで誕生したか、その違いから本質的な違いを明らかにする。第二節では「特別

支援教育」と「インクルーシブ教育」がそれぞれどのような基盤(権利 or法律 or理念)

で支えられているかを示し、その違いを明らかにする。以上の二段階をもって両者が本

質的に異なるという意見がもっともらしいものであることを示す。

第四章では、(B)の検証を行う。(以下構想中)

終章では検証のまとめを行う。そして示唆及び提言において、筆者が考える日本の障害

児教育の今後の在り方について示す。それを踏まえて残された課題を示すことで本研究

のまとめと代えたい。

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目次

アブストラクト―――――――――――――――――――――――――――2

序章 第一節 テーマ設定理由―――――――――――――――――――――-――――― 6 第二節 本研究の目的―――――――――――――――――――――――――――---8

第一章 第一節 インクルーシブ教育の概要  第一項 概要及び定義――――――――――――――――――――――――――--9  第二項 目的――――――――――――――――――――――――――――――14

 第二節 特別支援教育の概要

第一項 概要及び定義―――――――――――――――――――――――――-17

第二項 目的―――――――――――――――――――――――――――――-21

第三項 「インクルーシブ教育」と「特別支援教育」の比較及び筆者の意見―-22

 第三節 特別支援教育からインクルーシブ教育への展開についての議論

   第一項 『第二次意見』と『論点整理』の対立――――――――――――――--24(以下、執筆中)

第二項 障害者権利条約批准に向けた日本の動向

第三項 崔栄繁の研究

第四項 清水貞夫と越野和之の研究

第五項 第一章のまとめ

第二章  第一節 第一章までについての筆者の考え

 第二節 筆者の主張

第一項 仮説提示

第二項 検証方法の提示

  

第三章

第一節 検証その1―1

第一項 世界のインクルージョンという概念が生まれた背景(歴史)

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第二項 日本の障害児教育のベースとなる概念の背景(歴史)

第三項 第一節のまとめ

 第二節 検証その1-2

第一項 インクルーシブ教育を支えている基盤

第二項 特別支援教育を支えている基盤

第三項  第三章のまとめ

第四章  第一節 検証その2

 

終章 第一節 まとめ 第二節 示唆及び提言

 第三節 残された課題

夏課題の反省及び今後の予定――――――――――――――――――――29参考文献一覧―――――――――――――――――――――――――――33

本文中の青字は検討中もしくは途中本文中の赤字は執筆中もしくは構想中です。

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序章 第一節 テーマ設定理由 2007年 4 月、日本における障害児教育が既存の「特殊教育」から「特別支援教育」

へと変わった。それまでの特殊教育が障害の種類と程度に合わせてそれぞれに見合った

特別な学校を設置していたように、徹底した分離教育であった。そのため特別支援教育は、

分離教育の体制は形としては残しつつも、“一人一人のニーズ”を把握して適切な指導と必

要な支援を行う等、その理念は画期的なものとされ、その後の障害児教育は新たな展開を

迎えるであろうと大いに期待がかかったのである。

一方当時世界では、1994年に開かれたユネスコ・スペイン政府主催の「特別ニーズ

教育に関する世界会議」1以来、その際に発表された『サラマンカ声明』内の「インク

ルーシブ教育」というものが今後の障害児教育の中心を据えるとされてきた。インク

ルーシブ教育とは、障害や人種や社会的・文化的違い等によって人は差別や排除されるこ

とのない、非差別・非排除を謳ったものである。

そのような背景があったにもかかわらず、日本ではその世界的潮流をあえて無視し

10年以上たった 2007年に特別支援教育という新体制へと障害児教育の形を変えたので

あった。この件について、文部科学省はいざ特別支援教育を唱導する際でさえ、あえて

インクルーシブ教育に背を向け、当時存在していた「特別支援教育はインクルーシブ教育

である」という主張は俗論であるとし、インクルーシブ教育に一言も触れず、触れるこ

とを慎重に避けてきたとまで言われている。2何故文科省がインクルーシブ教育という言

葉を避けてきたのか、それはおそらく、インクルーシブ教育は非差別・非排除を謳った

ものであるが故に、その斬新な概念が、分離体制が未だに拭いきれていない特別支援教

育とインクルーシブ教育は矛盾した関係ではないかと言った議論を恐れたからではない

かと推測できる。3

1 1994年6月7日から 10日にかけ、スペインのサラマンカに 92か国の政府および 25の国際組織を代表する 300 名以上の参加者が、インクルーシブ教育(inclusive education)のアプローチを促進するために必要な基本的政策の転換を検討することによって、「万人のための教育(Education for All)」の目的をさらに前進させるために、すなわち、学校がすべての子どもたち、とりわけ特別な教育的ニーズをもつ子どもたちに役立つことを可能にさせるため、ユネスコと協力しスペイン政府によって組織された会議。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所ホームページ「サラマンカ声明」前書き参照 http://www.nise.go.jp/blog/2000/05/b1_h060600_01.html(2012年 9 月 15日取得)2清水貞夫『インクルーシブ教育への提言-特別支援教育の革新』、クリエイツかもがわ、2012年、18 頁。3  今日においてもなお通常学級での特別な支援や、特別支援学校における教育(分離された教育)は隔離であり差別であり、不平等・不公平であるのかというインクルーシブ教育の理念にかかわる問題であると指摘がされている。

池田浩明「特別支援教育とインクルーシブ教育:就学の場に着目して」『藤女子大学紀

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しかし今日では、その特別支援教育もいよいよ「インクルーシブ教育」へと形を変え

ようとしている。それには、2006年に国連で採択された『障害者権利条約』が大きく関

連している。1948年の人権宣言以降、効果を持つ障害者のための条約の必要性が提起さ

れ続けた中、ようやく『障害者権利条約』というものが策定された。この条約交渉では例

を見ない大きな規模で障害者や渉外関係団体が交渉過程に参画し、深くコミットしたこと

で国際人権条約上の新概念が多く盛り込まれ、大きな意義を果たすものとされた。 4日本

でも 2007年 9 月に署名を行ったが、未だに批准には至っていない。その理由としてま

ず、障害者基本法改正5、総合福祉の実現、障害差別禁止法の制定という3点セットが前

提として満たされてこそ批准が可能となるという意見が多かったということが挙げられ

る。6またその他の理由としては、“インクルーシブ教育の捉え方”が大きな論点になった

ということである。7障害者権利条約では第二十四条の教育で、「インクルーシブな教育

制度」を保障しているため8、その「インクルーシブな教育制度」をどのように解釈する

かで、特別支援学校の存在の是非にも関連してくるのだ。日本が現在特別支援教育をイン

クルーシブ教育へとその形を変えようとしている大きな発端は、このような『障害者権

利条約』の批准に伴う“インクルーシブ教育の捉え方”にある。しかし、2009年には特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議の『特別支援教育の更なる充実に向けて(審

議の中間とりまとめ):早期からの教育支援の在り方について』9において文科省は以前

までの立場を一転させ、「特別支援教育はインクルーシブ・エデュケーション・システ

要 第 II部 47』、75-81 頁、2010年。4崔栄繁「障害者の権利条約とインクルーシブ教育(特集 インクルーシブ教育のいま)」『解放教育』 38(11)、26-33 頁、2008年。52011年に障碍者基本法は一部改正された。その目的は「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進すること」である。内閣府政策「障害者基本法の一部を改正する法律の公布・施行について」http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kihonhou/kaisei2.html (2013年 9 月 15日取得)6この3点については本研究に直接関連するものではないため、あえて詳しい言及はしないこととする。太田修平「合理的配慮の否定は、差別のひとつ(特集 障害者差別禁止法を目指して)」『ノーマライゼーション』31(5)、14-16 頁、2011年。7長瀬修「障害者権利条約と教育--障害者主体のインクルーシブ教育と盲・ろう・盲ろう教育 (特集 障害者権利条約と日本の課題)」『法律時報』81(4)、31-37 頁、 2009年。8外務省仮訳文「障害者権利条約」、2006年参照。9特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議『特別支援教育の更なる充実に向けて(審議の中間とりまとめ):早期からの教育支援の在り方について』、2009年。

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ムの実現」に沿うものと記すなど、今日ではインクルーシブ教育システムの構築に向け

て特別支援教育を推進しようとする動きが一貫して行われている。

このように今日の日本では文科省に設置された特別支援教育の在り方に関する特別委

員会を筆頭に『共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支

援教育の推進(報告)』10を取りまとめる等して、「特別支援教育がインクルーシブ教育

へと展開する」ことを前提に障害児教育の改革を目指している。しかし、筆者はここに

大きな疑問を感じた。そもそも特別支援教育はインクルーシブ教育へと“推進・展開”し得

るのであろうか。特別支援教育唱導時、あえてさけてきた「インクルーシブ教育」とい

う概念をこうも簡単にその立場を一転させ、取り込んでしまって良いのだろうか。近年

の政府の障害児教育への姿勢を見る限り、『障害者権利条約』の批准に向け、厄介ごとを

早急に片づけるべく、「特別支援教育」と「インクルーシブ教育」の関係の捉え方につい

て丁寧な議論を避けてきたのではないかという懸念が筆者の中で生まれた。

このような日本政府の障害児教育、とりわけ「特別支援教育」と「インクルーシブ教

育」の関係の捉え方への疑問や懸念から、特別支援教育からインクルーシブ教育への展望

の可能性の是非について、また「特別支援教育」と「インクルーシブ教育」の両者が障害

児教育というパラダイムにおいてどのように存在し得るかという点について筆者なりに

明らかにしたいと考えた。以上の経緯を踏まえて、本研究に着手するまでに至った。

第二節 研究の目的

 今日の日本政府の障害児教育に対する姿勢、具体的には「特別支援教育」と「インク

ルーシブ教育」へと推進できるということを前提に障害児教育の改革を進める日本政府の

姿勢について疑問を抱いた筆者は、本当に「特別支援教育」が「インクルーシブ教育」へ

と推進・展望できるのかという点について、両者の概要及び定義、目的の違いから両者は

本質的にことなるものであるということを明らかにする。また、国の『障害者権利条

約』に対する国の解釈の仕方、「インクルーシブ教育」そのものの捉え方について筆者

の意見を示した上で、「特別支援教育とインクルーシブ教育は本質的に異なるものであ

るためその連続性は無く(A)、特別支援教育の目的をソーシャル・インクルージョン

に据えることで、両者は障害児教育という同一のものではない、異なるパラダイムにお

いて存在し得るものである。(B)」という仮仮説を検証する。

 その上で筆者なりの日本の今後の障害児教育の在り方についての考えを述べ、新たな提

言を行うことが本研究の最終的な目的である。

10文部科学省「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(2013年 8 月 9日取得)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321669.htm

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第一章第一節 インクルーシブ教育の概要

第一項 概要及び定義(要検討) 序章で述べたように、筆者は日本の政府による「特別支援教育」と「インクルーシブ

教育」の関係の捉え方において懐疑的である。そのためまず第一章では「インクルーシ

ブ教育」と「特別支援教育」がそれぞれどのようなもので、どのような目的を持ってい

るのかを明らかにする。それらを明らかにした上で改めて日本政府のそれらの関係の捉

え方を示すことで、それが本当に正しい捉え方ではないという筆者の考えを述べたい。

本項では、まず本研究のキーワードである「インクルーシブ教育」の概要及びその定

義について見ていく。その際に「インクルージョン」あるいは「インクルーシブ教育」

についての4つの定義を挙げ、そこから本研究において基本的概念としての「インク

ルーシブ教育」の重要な要素を筆者なりにまとめたい。

 今日では日本においても「インクルーシブ教育」という言葉が比較的広く知られるよ

うになったと感じるが、この言葉が世界的にとりあげられるようになった契機ともいえ

るのが、序章の第一節でも少し言及した『サラマンカ声明』である。繰り返しにはなる

が、1994年にユネスコ・スペイン政府の共催で「万人のための教育」をさらに前進させ

るための「特別ニーズ教育に関する世界会議」が開かれ、「特別ニーズ教育における諸原

則、政策および実践に関するサラマンカ宣言」と「特別ニーズ教育に関する行動大綱」が

採択されたことで、イギリスでそれ以前に既に使用されていた「特別な教育的ニーズ」11

に対する教育的施策を意味する「特別ニーズ教育」という言葉と共に「インクルージョ

ン」という語が使用されるようになった。以前は統合を意味する「インテグレーショ

ン」12という用語が障害児教育において頻繁に使用されていたが、この宣言を機に包括を

意味する「インクルージョン」という言葉にとって代わられたのである。(ここでインテグレーションやインクルージョンの概念そのものを詳述すべきか検討中)ここで、『サラマンカ声明』で言及されている「インクルーシブ教育」について引用

したいと思う。

11 イギリスでは、1978年『ウォーノック報告』で、今まであった障害カテゴリー別に対応してきた政策を否定し、約 20%の子どもが「特別な教育的ニーズ」(Special Educational Needs)をもっていると想定し、とその子どもたちへの教育形態は基本的にはインテグレーション(統合)であるべきだとされた。中村満紀男・荒川智編『障害児教育の歴史』、明石書店、2003年、96 頁参照。12 「インテグレーション」とは、「既存の通常学級システムに障害児を同化させる」 という理念であり、障害児を通常児にできるかぎり同化させようとするものであり、日本語では「統合教育」と呼ばれている。同上 97 頁より抜粋。

10

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「インクルーシブ校の基本的原則は、すべての子どもはなんらかの困難さもしくは相

違をもっていようと、可能なさいはいつも共に学習すべきであるというものである。イ

ンクルーシブ校はさまざまな学習スタイルや学習の速さについて調整をしながら、また、

適切なカリキュラムと、編成上の調整、指導方略、資源の活用、地域社会との協力を通じ、

すべての子に対し質の高い教育を保障しながら、生徒の多様なニーズを認識し、それに

応じなければならない。そのさい、すべての学校内ででくわすさまざまな特別のニーズ

にふさわしい、さまざまな支援やサービスがなければならない。13」

この言及からは、インクルーシブ校がインクルーシブ教育を行う学校であると捉えて

解釈をすれば、その学校はいかなる子どもにも具体的にカリキュラムや指導法略を生徒

に合わせて変容させ、多様なニーズに対応するための支援やサービスを行うことを原則

としていることが分かる。

また、ユネスコ会議に参加していた、マンチェスター大学の教授であるピーター・

ミットラーはインクルージョンというもの自体を以下のように定義している。

「学校が用意するあらゆる機会に、学校のすべての子どもたちがアクセスでき、参加

できることを保障し、分離と隔離を避けることである。このような政策は、人種的、言

語的な少数グループ、障害のある、あるいは学習困難な子どもたち、学校を休みがちな、

あるいは排除されやすい子どもたちを含むすべての子どもの利益になるように計画され

る。14」

この定義からは、インクルーシブ教育が全ての子どもに機会均等、非分離・隔離を保障

し、その対象は障害を持つ人々・持たない人々の二類ではなく文化的・社会的マイノリ

ティとされる人々も含まれるすべての人に対する“万人の教育”であることが理解できる。

 また 2005年に UNESCOが発表したGuidelines for Inclusionでは、インクルージョ

ンについて4つの要素を示している。以下に本文からの引用と筆者が訳したものを示す。

◆ Inclusion is a process. That is to say, inclusion has to be seen as a never-e nding search to find better ways of responding to diversity. It is about learning how to live with difference and learning how to learn from difference. In this way differences come to be seen more positively as a stimulus for fostering learning, amongst children and

131に同じ14 ピーター・ミットラー「インクルージョン教育への道」山口薫訳、東京大学出版、2002年、11 頁より抜粋

11

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adults.

◆   Inclusion is concerned with the identification and removal of barriers. Consequently, it involves collecting, collating and evaluating information from a wide variety of sources in order to plan for improvements in policy and practice. It is about using evidence of various kinds to stimulate creativity and problem-solving.

◆ Inclusion is about the presence, participation and achievement of all students. Here“presence” is concerned with where children are educated, and how reliably and punctually they attend; “participation” relates to the quality of their experiences whilst they are there and, therefore, must incorporate the views of the learners themselves; and “achievement” is about the outcomes of learning across the curriculum, not merely test or examination results.

◆ Inclusion involves a particular emphasis on those groups of learners who may be at risk of marginalization, exclusion or underachievement. This indicates the moral responsibility to ensure that those groups that are statistically most “at risk” are carefully monitored, and that, where necessary, steps are taken to ensure their presence, participation and achievement in the education system. 15

◆インクルージョンはプロセスである。それは、多様性に応えるための最善策を

終わることなくさがしつづけなければならない。それは違いと生きる方法と

違いから学ぶ方法を学ぶことである。このようにして“違い”は子供や成人の間

で学びを助長する刺激としてより前向きに捉えられるようになる。

◆インクルージョンは一体化と障害の除去に関するものである。従ってそれは、

政策と実践において改善の計画を立てるために、広く様々な情報源からの情報

を集め、対照し、価値づけをすることを含む。それは創造力と問題解決力を刺

激するために様々な種類の証拠を用いることである。

15 UNESCO『Guidelines for Inclusion』(2013年 9 月 11日取得)http://unesdoc.unesco.org/images/0014/001402/140224e.pdf

12

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◆インクルージョンは出席、参加そしてすべての生徒の達成に関するものである。

ここでいう“出席”とはどこで子供が教育されるか、またどれほど確実にそして

厳密に出席しているかに関連している。“参加”とは彼らがそこに出席している

間の経験の質に関係し、それゆえ学習者自身の視点を具体化しなければならな

い。“達成”とはカリキュラムを通した学習の結果であり、単なるテストや試験

の結果ではない。

◆インクルージョンは疎外や排除または基準に達していないといった危機にさら

されているかもしれない学習グループを特に強調して携わっている。これは、

統計的に最も危機にさらされているグループを注意深く監視し、また、必要に

応じて教育システムにおける出席、参加、達成を確実にする施策が施されるこ

とを確かにする道徳的責任を指し示している。16

このユネスコのガイドラインから読み取れるインクルージョンの特徴としては、イン

クルージョンは終わりのないものであり、多様性に応え続けるための“プロセス”であるこ

と、またあらゆる角度からの吟味が必要であるということ、すべての生徒の出席・参

加・達成に関するものであるということ、すべての学習者を対象にしつつ特に疎外・排

除・基準に到達していない学習グループへの監視を強化しているということが分かる。

以上までに挙げた3つの定義やポイントをまとめると、まず、インクルーシブ教育の

対象は決して障害者だけでなく、人種の違いまたは社会的・文化的マイノリティであっ

たり疎外・排除・基準点以下の学習グループであったりと幅広いものであるため、“障害

児教育”という枠組みだけでは語れないものである。加えて、随所で“すべての生徒”“すべ

ての学習者”という言葉が見られることからもそのことがうなずけるだろう。また、学習

者が自分の障害の種類や程度に合った学校を選ぶのではなく、学校側がいかなる子ども

にも具体的にカリキュラムや指導法略をすべての生徒や生徒の学習速度等に合わせて変

容させ、多様なニーズに対応するための支援やサービスを行うことを原則としているこ

とが分かる。また前提としてすべての学校においてすべての生徒に機会均等を保障し、

差別や隔離といったもの避けるということもその特徴としてあげられる、ということが

分かる。

また、ここまで3つの引用からインクルージョンあるいはインクルーシブ教育がどの

ようなものかを概観しそのポイントを探ったが、これらはあくまで誰を対象に、どのよ

うな役割を果たすことを目指しているかという、インクルーシブ教育のより内的側面で

あった。そのため、インクルーシブ教育のより外的・実践的側面について言及している

二文字・田辺によるインクルーシブ教育の定義を以下に提示する。

16 上記の本文を元に筆者が翻訳

13

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「インクルーシブ教育は、公式あるいは非公式の教育環境における広範囲にわたる学習

ニーズに適切に対応することと関係している。インクルーシブ教育は学習者が普通教育

にどのように統合されるかという最低限の主題ではなく、学習者の多様性に対応する教

育制度

への変換を研究する方法である。17」

この定義からは、インクルーシブ教育は普通学校に学習者が統合されるようなインテ

グレーションのようなものではなく、学習者の多様性に応えられるような教育制度の変

換が伴うものであるということが指摘されていると考えられる。ただその内容を個々の

ニーズにこたえるだけでなく、学校の教育制度自体に変化が求められるということであ

る。

以上の4つの定義から「インクルーシブ教育」の要点をまとめると、以下の4つの要

素をその特徴としてまとめた。

インクルーシブ教育は、以下の4点をその特徴として備えている。

① すべての人を対象とした教育である(万人のための教育)

② すべての多様性に応えるべくあらゆる個々のニーズに対応する

③ 排除と隔離を避けるものである

④ 学校の制度そのものに変化が求められる

 また、筆者がまとめた4つのポイントは前述したUNESCOのGuidelines for Inclusionで先に述べた要点とは別にその特徴について簡潔にまとめてあるものと非常に

類似している。以下にそれを筆者が訳した表1を提示する。そしてその表1のポイント

が筆者が上記にまとめたポイントとどう対応しているかを表内に示すこととする。

表118

インクルーシブ教育は以下のことに関す

インクルーシブ教育は以下のものではな

○多様性を受け入れる(②) ×特別な教育のみの改革ではなく、正式

な、また非正式な教育システム両者の改

17ベンクト・G・エリクソン・二文字理明・石井昭男編著「ソーシャル・インクルージョンへの挑戦:排斥のない社会を目指して」、2007年、141 頁より抜粋 18 14に同じ。表を参考に筆者作成。「インクルーシブ教育は以下のものではない」という右欄の訳については、忠実な訳をすると二重否定になり難解になるため、肯定文での訳を行った。

14

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○排除されるものだけに限らず、全ての学

習者にとって有益である(①)

○学校で除外されていると感じる子供

○排除することなく、教育への平等な機会

を提供し特定のカテゴリーの子供のため

に特定の対策を設ける(②・③)

革である(④)

×多様性に対応するだけでなく、全ての学

習者にとって教育の質自体を改善してい

(①)

×特別学校だけでなく普通の学校制度を含

む更なるサポートである

×障害のあるこどもたちのニーズのみに対

応するわけではない(①)

×他の子供を犠牲にして一人の子供のみに

対応するわけではない(①・③)

 表1からわかるように、インクルーシブ教育は①~④のポイントをその特徴として備

えていることが分かった。④学校制度そのものについて変化が求められる、という点に

ついて、学校教育制度というのは“特別な”学校だけに限らず“普通の”学校も含めたもので

あり、両者の改革が求められるということを意識しておく必要がある。

ここまででインクルーシブ教育について4つの定義を挙げ、①~④のポイントを提示し、

それがどのようなものであるかを概観した。次項では、インクルーシブ教育そのものの

目的について確認を行う。

第二項 目的

インクルーシブ教育が①すべての人を対象とし、①すべての人を対象とし、②すべて

の多様性に応えるべくあらゆる個々のニーズに対応し、③排除と隔離を避け、④学校の制

度そのものに変化が求められるといった要素を含むことを前項で概観した。また

UNESCOのGuidelines for Inclusionにおいて“Inclusion is a process. That is to say, inclusion has to be seen as a never-ending search to find better ways of responding to diversity. 19(インクルージョンはプロセスである。それは、多様性に応

えるための最善策を終わることなくさがしつづけなければならない。)”という記述が

あったことから、インクルーシブ教育は何を目指すうえでのプロセスであり、最終的な

目的があるということが伺える。本稿ではその目的を明らかにする。

前項でも参照したサ『サラマンカ声明』20の「特別なニーズ教育における原則、政策、

19 14に同じ20 1に同じ

15

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実践に関するサラマンカ声明」という項目において、「このインクルーシブ志向をもつ

通常の学校こそ、差別的態度と戦い、すべての人を喜んで受け入れる地域社会をつくり上

げ、インクルーシブ社会を築き上げ、万人のための教育を達成する最も効果的な手段で

ある」と述べられているが、インクルーシブな志向を持つ学校が“最も効果的な手段”であ

るとすれば、それには必ず目的が伴うと考えられる。そうなれば、「インクルーシブ教

育はプロセスである」というGuidelines for Inclusion内の記述にも納得がいく。『サ

ラマンカ声明』のこの文脈で考えれば、インクルーシブ教育を手段としたとき、その目

標は「差別的態度との戦い」、「すべての人を喜んで受け入れる地域社会」、「インク

ルーシブ社会」、「万人のための教育」ということになる。

中村・岡21によれば、インクルージョンとは「広義には、社会的インクルージョン(ソーシャル・インクルージョン)の一つの方法としてのインクルーシブ教育であり、両者は密

接な関係がある」ものであるという。先の『サラマンカ声明』の引用にも「インクルー

シブ社会」という言葉があった。中村・岡は、「社会的インクルージョン(以下、ソー

シャル・インクルージョン)」について、それは 1980年代にフランスで用いられた社

会政策用語であり、社会の底辺に位置する異種の集団において、特に貧困・集団・コミュ

ニティが不利益を被っているソーシャル・エクスクルージョン22という言葉の対になるも

のとして意識されたと述べている。一方『サラマンカ声明』における「インクルーシブ

社会」という言葉は、The Salamanca Statement23の本文において “an inclusive society”と訳されている。そのことから、ソーシャルインクルージョンとインクルーシ

ブ社会という言葉は近しいものあるいは同一のものとして捉えることができると筆者は

考えるが、両者の文脈からはいずれにせよインクルーシブ教育は「ソーシャル・インク

ルージョン」24あるいは「インクルーシブ社会」の方法・手段であり何らかの関連がある

ということが伺える。他にもインクルーシブ教育は「ソーシャルインクルージョン(社

21中村満紀男・岡典子「インクルーシブ教育の国際的動向と特別支援教育」『教育』57(10)、 75-81 頁、2007年。22 Percy-Smith,J.(Ed.) Policy Responses Social Exclsion towards Inclusion?

Buckingham: Open University Press http://mcgraw-hill.co.uk/openup/chapters/0335204732.pdf (2013年 9 月 12日取得)23障害保険福祉情報研究システム『THE SALAMANCA STATEMENT(本文)』http://www.dinf.ne.jp/doc/english/intl/apddp/16.html (2013年 9 月 11日)

24 ソーシャル・インクルージョンとは、地域や社会においてもすべての人々を孤独、排除、摩擦から援護し、健康的で文化的な生活の実現につなぐため、社会の構成員として包み込み、支えあっていくものを指す。しかしこの用語については本研究の後半で詳しく述べるつもりであるため、ここではあえてその意味を確認しないことをご了承いただきたい。日本ソーシャル・インクルージョン推進会議「ソーシャル・インクルージョン:格差社会の処方箋」、中央法規出版、2007年。

16

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会的な排除をせず、共生社会をめざす運動)のための学校教育における運動」25であると

いった記述は多くみられることから、インクルーシブ教育はソーシャル・インクルー

ジョンのための方法・手段であり、ソーシャル・インクルージョンがその最終的な目的

であるとすることは妥当であると筆者は考える。

またここで、唐突ではあるが日本が批准に向けて準備を進めている『障害者権利条

約26』が 24条においてインクルーシブ教育に対してどのような立場をとっているか、清

水27の先行研究を参照しながら示しておく。『障害者権利条約』ではインクルーシブ教育

についての定義そのものの記述は見られないが、その捉え方から、インクルーシブ教育

がどのようなものであるか、何を目指しているものであるかを確認することができる。

まず清水は、『障害者権利条約』は条約全体でインクルージョンという用語が諸処に見

受けられることを示し、その基本原則の一つとして第3条の「社会での完全で効果的な参

加とインクルージョン」を挙げている。このことからインクルーシブ教育の実現は、教

育という枠組みにとどまらず、障害者の生活にかかわる諸分野における非排除・非差別・

平等の実現と不可分な関係にある、つまりは障害者の生活に関わる諸分野でのソーシャ

ル・インクルージョンとインクルーシブ教育は環をなしていると言っている。また、

『障害者権利条約』は実現されるべきインクルーシブ教育に関して“プロセスとしてのイ

ンクルージョン”という立場を探っていると清水は理解しているという。ここでいう“プロ

セスとしてのインクルージョン”とは、固定的なものではなく、フル(完全な)・インク

ルージョンというゴールを目指して、漸進的に前進していくプロセスとしてインクルー

ジョンを理解する立場であり、『障害者権利条約』がその考えを探っていることは、24条 2項(e)にも「効果的で個別化されたサポートが、知的及び社会的発達を最大化する環

境で、フル(完全な)・インクルージョンというゴールに即して提供される」28と規定し

ていることからもわかると彼は述べている。

以上の清水の先行研究による『障害者権利条約』におけるインクルーシブ教育の捉え方

から分かったことは、やはりインクルーシブ教育はソーシャル・インクルージョンとい

うものの実現を期しているということである。インクルーシブ教育は前項でポイントと

して挙げた①~④の要素をそなえつつ、ソーシャル・インクルージョンが最終的には目

指しているのだ。加えて、プロセスとしてのインクルージョンという立場上の目標であ

る“フル・インクルージョン”とは、「社会的発達を最大化する環境」という意味でのソー

シャル・インクルージョンも含まれると筆者は考える。そのことから、『障害者権利条

約』が改めて「インクルーシブ教育は固定的なものではなく、ソーシャル・インクルー

25 孫引き 堀智晴「インクルーシヴ教育とは」『教育と文化』46 号268に同じ。27清水貞夫「特集 障害者権利条約とインクルーシブ教育の動向:特別支援教育からインクルーシブ教育の制度へ」『障害者問題研究』39(1)、1-11 頁、2011年。28 8に同じ。

17

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ジョンを含めたフル・インクルージョンを目指したプロセスである。」という認識を

もっていることが確認できる。

 本項で筆者が明らかにしたかったことは、インクルーシブ教育の最終的な目的である。

そしてそれは『サラマンカ声明』とGuidelines for Inclusionの引用でインクルーシブ教育とソーシャル・インクルージョン関連を明らかにし、『障害者権利条約』のインク

ルーシブ教育への捉え方における清水の先行研究を概観することによって、「インク

ルーシブ教育はソーシャル・インクルージョンを目的として期したプロセスである」と

いうことを明らかにした。換言すれば、インクルーシブ教育の目的はソーシャル・イン

クルージョンであるということである。

 インクルーシブ教育の目的が明らかになったところで次節からは、日本オリジナルの

ものである特別支援教育について、取り扱っていく。

第二節 特別支援教育の概要

第一項 概要及び定義

2009年の『特別支援教育の更なる充実に向けて(審議の中間とりまとめ):早期から

の教育支援の在り方について』29において、「「障害者の権利に関する条約」(障害者権

利条約)が、平成18年12月、第61回国連総会において採択され、平成20年5月に

発効したところである。(中略)同条約が求める障害者を「包容する教育制度(インク

ルーシブ・エデュケーション・システム)」と特別支援教育との関係が論点の一つと

なっている。」30という記述がなされたことがインクルーシブ教育と特別支援教育を結ぶ

可視的なきっかけとなったことは序章でも言及済みである。しかしこのきっかけで両者

は関連付けて議論されるようになっただけでなく、特別支援教育はインクルーシブ教育

の実現に沿うものであるといった記述もなされたように、当時から「特別支援教育はイ

ンクルーシブ教育に展開し得る」といった姿勢が前提となってきているのも事実である。

その姿勢に懐疑的である筆者はまず両者の概念や定義、その目的を明らかにし、比較して

その違いを示したい。前節では、インクルーシブ教育についてその概要及び定義を概観

した結果、インクルーシブ教育は①すべての人を対象とした教育である②すべての多様

性に応えるべくあらゆる個々のニーズに対応する③排除と隔離を避けるものである④学

校の制度そのものに変化が求められるという①~④の要素を含むこと、またその最終的

な目的はソーシャル・インクルージョンにあるということを明らかにした。本節ではそ

のインクルーシブ教育に発展し得るとされる特別支援教育について概観していく。

29 9に同じ。 30 同上。4 頁より抜粋。

18

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2003年に特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議が発表した『今後の特別

支援教育の在り方について(最終報告)』において、特別支援教育とは

「従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障

害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的ニーズを把握して、

その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導

を通じて必要な支援を行うものである。」31

と定義し、従来の特殊教育との違いを明らかにしている。従来のものは障害の種類、程

度に対応してその教育の場を整備し、丁寧な教育を効果的に行うという視点で展開されて

きたのに対し、特別支援教育はあくまでも児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、

あえて場所を指定せず、適切な対応を図ることを基本的視点にしていることが分かる。

また、この報告書の資料として、同協力者会議が 2002年に行った『通常の学級に在籍す

る特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査』32の調査結果が公表さ

れ、通常の学級に「学習面か行動面で著しい困難を示す」児童生徒が 6.3%在籍するといった結果から、報告書には新たに適切な指導が必要であるとして小・中学校において

通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等33の児童生徒をその対象に加えた

ことも特殊教育からの大きな変更点である(項末・図1)さらに同報告書では、各学校に

福祉機関などの関係機関と連絡・調整を行い、保護者からの相談にのる役割を果たす、特

別支援コーディネーター(仮称)といった役職を配置するように示した。

2005年に中央教育審議会初等中等教育分科会が政府に行った『特別支援教育を推進す

るための制度の在り方について(答申)』34では、具体的な制度について、従来の特殊教

31特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」より引用(2012年 9 月 17日取得)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301a.htm32全国5地域の公立小学校及び公立中学校の通常の学級に 在籍する児童生徒 41,579人を対象として、学級担任と教務主任等の複数の教員で判断の上で回答するよう依頼した調査であり、実施期間は 2002年 2 月~3 月。文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」(2013年 4 月 22日取得)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301i.htm33 LD=学習障害とは、知的発達の遅れは見られないが、特定の能力に著しい困難を示すもの。ADHD=注意欠陥多動性障害とは、発達段階に不釣り合いな注意力や衝動性、多動性を特徴とする行動の障害。両者ともに脳などの中枢神経系に何らかの機能障害があると推定され、発達障害に分類される。高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、 他人との社会的関係の形成の困難さ、 言葉の発達の遅れ、 興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。文部科学省「主な発達障害の定義について」(2013年 4 月 22日取得)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm34文部科学省『特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)』、2005

19

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育から個々のニーズに応じた適切な指導および必要な支援を行う特別支援教室への転換と

いうこと以外に盲・聾・養護学校教諭免許状を特別支援教諭免許状に一本化し、特別支援

学校が地域のセンター的機能として位置づくようにすることも提言された。この地域の

センター的機能というのは、特別支援学校が、地域の実態や家庭の要請等により、障害を

もつ子どもやその保護者 、に対して教育相談を行うなど、各学校の教師の専門性や施

設・設備を生かした地域における特別支援教育に関する相談のセンターとしての役割を果

たす機能のことであり、特別支援教育が以前より家庭や地域との連携を行うよう開かれ

た存在になることを求められたと考えられる。

 つまり特別支援教育とは、障害を持つ子どもに障害の種類・程度に応じた画一的なもの

でなく、一人一人の教育的ニーズに応じた指導を柔軟的に行い、その学校だけでなくセ

ンター的機能を持った、地域や家庭との関わり合いにおいて開放的・連携的なシステム

であることがその特徴として挙げられることがわかる。

その上でさらに 2005年の答申では、

「我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊

重し支え合う共生社会である。その実現のため、障害者基本法や障害者基本計画に基づき、

ノーマライゼーションの理念に基づく障害者の社会への参加・参画に向けた総合的な施策

が政府全体で推進されており その中で 学校教育は、障害者の自立と社会参加を見通した

取組を含め、重要な役割を果たすことが求められている。その意味で、特別支援教育の理

念や基本的考え方が、学校教育関係者をはじめとして国民全体に共有されることを目指す

べきである。」35

と述べ、特別支援教育がノーマライゼーション36の理念を取り入れていることを成文化

して示している。

このようにして特別支援教育は既存の分離別学体制を揺るがす教育となる可能性が示さ

れたかのように思われたが、実際には分離教育は残ったままであり特殊教育の体制を引

年、5 頁。35 同上、5頁より抜粋36 ベンクト・ニィリエ著,河東田博・橋本由紀子・杉田穏子・和泉とみ代編『ノーマライゼーションの原理〔新訂版〕-普遍化と社会変革を求めて』、現代書館、2004年、

20

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き継いだものであるという意見もある37。そう言われる理由として、「学校教育法施行令

第 5条」38が挙げられている。三好39による指摘を次にまとめる。

入学期日等の通知、学校の指定において、市町村教育委員会が小学校または中学校の入

学期日を通知しなければならないのは「第 22条の 3の表に規定する程度のもの以外の

者」となっており、第 22条の 3の表に該当すると市町村教育委員会が判断した場合は、

入学期日を通知しなくてよいという規定になっている。その第 22条の表2には、視覚障

害、聴覚障害、知的障害、身体障碍、病弱の状態が一覧表で掲載されており、その表に該

当するか否かの判断を委任しているのが市町村教育委員会の設置する「就学指導委員会」

であった。そして 2006年に特別支援教育の移行に伴い、その判断を改めて「就学支援委

員会」と改称され表の程度のものに該当するか否かという判定機能よりも、入学希望者と

の就学相談機能が強調されるようになったのである。それにもかかわらず、肝心な「学

校教育施行令第 5条」が残っていることから、特別支援教育は分離教育を突破することが

出来ていない、ということである。

筆者もこの法的根拠がなくならない限り、特別支援教育は分離教育体制を脱却すること

は出来ないと考える。また少し極端な意見ではあるが、“特別支援学校”というものの存在

がありつづける限り、つまり通常の学校とは異なる種類の学校が存在しているという意

味で、分離教育は無くなることはないと考える。しかし筆者は分離体制が残っているこ

と自体を悲観しているわけではない。そもそも特別支援教育は、分離教育の脱却という

ものを意図しているわけではなく、より柔軟性をもった教育の必要から創始されたもの

である。確かに特別支援教育はノーマライゼーションを掲げたものであるが、そもそも

ノーマライゼーションの原理とは「生活環境や彼らの地域生活が可能な限り通常のもの

と近いか、あるいはまったく同じになるように、生活形式や日常生活の状態を、全ての

知的障害や他の障害を持っている人々に適した形で、正しく適用すること」40であり、障

害のない人々と障害を持つ人々が全く同じ状態で教育を受けることをせずとも、障害を

もつ人々が障害の無い人々と同じように“学校で教育を受ける”といった観点ではノーマラ

イゼーションが達成されているのではないかと考え、特別支援教育が分離教育を脱した

ものである必要は無いと考える。

 

話が脇にそれてしまったが、ここまでで特別支援教育は、障害を持つ子どもに障害の

種類・程度に忠実に応じた画一的なものでなく、一人一人の教育的ニーズに応じた指導を

柔軟的に行うものであり、その学校だけでなくセンター的機能を持った地域や家庭との

37三好正彦「特別支援教育とインクルーシブ教育の接点の探求:日本におけるインクルーシブ教育定着の可能性」『人間・環境学 18』、27-37 頁、2009年。38『学校教育法施行規則』(2013年 4 月 21日取得)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22F03501000011.html39 35に同じ。40 36に同じ。21 頁より抜粋。

21

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関わり合いにおいて開放的・連携的なシステムであるということに加え、ノーマライ

ゼーションの理念を含みつつ、分離教育の体制を残したままのものであるということが

分かった。

 特別支援教育においてもその要素を特徴として筆者なりに以下のようにまとめておく。

特別支援教育は、以下の4点をその特徴として備えている。

① 発達障害を含め、その対象を広げた障害児を対象とした教育である

②場所を指定せず、一人一人のニーズに対応する

③分離教育の体制は残ったままである

④ 地域や家庭とのかかわりにおいてより開放的・連携的である

図1 特別支援教育の対象の概念図41

第二項 目的

前項を踏まえたうえで、特別支援教育の最終的な目的について明らかにしていきたい。

特別支援教育の目的を示すために、前項でも引用した 2005年の答申での記述を再提示

41 文部科学省「特別支援教育の対象の概念図」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05120801/s001.pdf より抜粋(2013年 3 月 26日取得)。ただし数値は 2004年のものである。

22

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する。

「従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障

害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的ニーズを把握して、

その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導

を通じて必要な支援を行うものである」42

この記述から、その最終目的は「LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児

童生徒の自立や社会参加」であると考えられる。それに向けて特別支援教育は一人一人の

ニーズに応じた特別な支援を行うものだということである。また、同答申の以下の

「我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊

重し支え合う共生社会である。その実現のため、障害者基本法や障害者基本計画に基づき

ノーマライゼーションの理念に基づく障害者の社会への参加・参画に向けた総合的な施策

が政府全体で推進されておりその中で学校教育は、障害者の自立と社会参加を見通した取

組を含め、重要な役割を果たすことが求められている。その意味で、特別支援教育の理念

や基本的考え方が、学校教育関係者をはじめとして国民全体に共有されることを目指すべ

きである。」43

という記述からは日本が目指している障害の有無を超えた共生社会に向け、学校教育

(特別支援教育)は障害者の自立と社会参加を見通した取り組みを含んだ役割を果たすこ

とが必要とされているということがわかる。よって特別支援教育の直接的な目的は、障

害児の自立と社会参加ということになる。

また文部科学省のホームページによれば、特別支援教育とは、「障害のある幼児児童生

徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一

人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克

服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの44」であり、「障害のある幼児児童生

徒の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視線」に立った上で、幼

児児童生徒一人一人の教育的ニーズに適切な指導や支援を行うということから、その目的

が「障害児の自立や社会参加」という点に着目されていると考えることが出来る。

以上のことから特別支援教育が個々のニーズに対応して適切な指導やサービスを提供す

るのは、障害児の「自立・社会参加」に向けられているという記述が多いということが

42 43 35に同じ、5頁より抜粋44文部科学省「特別支援教育について」(2013年 9 月 15日取得)

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

23

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確認できた。そのため、特別支援教育の目的は「障害児の自立と社会参加」にあると考え

ることは妥当であるだろう。

第三項 「インクルーシブ教育」と「特別支援教育」の比較及び筆者の意見

前節で特別支援教育の概要・定義、及びその目的について見てきたが、第一節のインク

ルーシブ教育のそれと比較してみたとき、筆者は、それらは微妙に異なるといった印象

を受ける。以下に各節で明らかにしたインクルーシブ教育と特別支援教育の特徴と目標を

対照させた表2を記す。

表245

分類 インクルーシブ教育 特別支援教育

特徴 ①対象 すべての人(障害に限定しな

い)

範囲は拡大しつつ、障害児

に限定

②指導方法 すべての多様性に応えるべくあ

らゆる個々のニーズに対応

一人一人のニーズに対応

③学校形態 排除と隔離を避ける(通常教育

へ)

分離教育の体制を残す

(特別支援教育と通常教

育)

④改革内容 学校制度そのものに変化が必要 特別支援教育自体が地域や

家庭に開放的・連携的にな

目的 ソーシャル・インクルージョン 障害児の自立・社会参加

この表から見てわかる通り、①~④の分類において②の指導方法以外、少しずつその特

徴に違いがみられることがわかる。また、目的においてはその違いが顕著であると筆者

は考える。まずインクルーシブ教育はソーシャル・インクルージョンを目指すうえでの

プロセスであり、最終的にインクルーシブ教育を手段・方法として排除や差別のない社

会をつくりあげることがゴールである。一方、特別支援教育は、障害児が自立・社会参加

をすることを直接的な目的としている。よって、目的としている対象が前提として大き

く異なっていると考えられる。

45 第一章第一節第一項に記述したインクルーシブ教育の①~④の特徴と第二節第一項に記述した特別支援教育の①~④の特徴を①対象②指導方法③学校形態④改革内容とカテゴリーを設けた上で対照させた。筆者作成。

24

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上記の比較は丁寧なものとは言えないが、これだけでも「インクルーシブ教育」と

「特別支援教育」は異質なものではないかという疑問がますます深まるといえる。この

ことから、筆者が本研究に着手するまでに抱いた日本政府の「「特別支援教育はインク

ルーシブ・エデュケーション・システムの実現46」に沿うものとする「特別支援教育」と

「インクルーシブ教育」の関係の捉え方に対する懐疑心はますます強くなったとも言え

る。そして新たに「特別支援教育がインクルーシブ教育へと展開することへの可能性は

極めて低いのではないか」という考えが生まれた。この筆者の意見を踏まえた上で、次

節では具体的に日本政府が「特別支援教育からインクルーシブ教育への展開」についてど

のような立場をとり、それをどのようにして実現しようとしているのか、それに関連す

る『障害者権利条約』をどのように捉えているのかという点について明らかにしていく。

第三節 特別支援教育からインクルーシブ教育への展開についての議論

第一項 『第二次意見』と『論点整理』の対立

 前節で筆者が日本政府のインクルーシブ教育と特別支援教育の関係の捉え方への疑問を

改めて示したことを踏まえ、本節ではまず『障害者権利条約』をベースにまとめられた

国内の内閣府による『第二次意見』と中央教育審議会による『論点整理』という二つの報

告における“インクルーシブ教育”の捉え方の対立点を指摘する。その上で日本がどちらの

報告をベースにとり、「特別支援教育からインクルーシブ教育への展開」を展開しよう

としているのかを見ていく。その上で日本政府の捉え方では特別支援教育はインクルー

シブ教育ではないと指摘すると指摘する先行研究者を用いて、日本政府の姿勢の不確かさ

を明示する。さらに、特別支援教育からインクルーシブ教育へは展開し得ないと述べて

いる先行研究者の意見を挙げる。最後に第三項で第一章のまとめと筆者の考えを述べる。

 国連で『障害者権利条約』が 2006年に採択され、その締結に必要な国内法の整備等の

国の障害者制度の改革を行うため 2009年 12 月 8日に「障がい者制度改革推進本部(以

下、推進本部)」が設置され、同年 12 月 15日に障害者本人や障害者の福祉に関する事

業に従事する者及び学識経験者などの意見を聞くための「障がい者制度改革推進会議(以

下、推進会議)」が設置された。翌年の 6 月 7日に『第一次意見』47が取りまとめられ、

後の 12 月 19日に『第二次意見』がとりまとめられた。これらを踏まえて、『障害者権

利条約』批准に向けて必要とされる法整備の一つである障害者基本法の一部を改正する法

律が公布・施行された。一方、推進本部が設置された年の 7 月に文部科学省は中央教育審

議会初等中等教育分科会の元に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会(以下、特特

委員会)」を設置し、『障害者権利条約』の理念を踏まえた特別支援教育の在り方に関す

46 9に同じ。47『第一次意見』は続く『第二次意見』との内容は変わらないため、本研究では同等のものとして扱うこととする。

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る審議を行った。そこで各種団体及び各都道府県教育委員会などからのヒヤリング等及び

推進会議との討議を経て、中央教育審議会初等中等教育分科会において、障害者権利条約

『特別支援教育の在り方に関する特別委員会における論点整理について(以下、論点整

理)』がまとめられ公表された。

 しかし、推進会議と特特委員会のお互いが審議してまとめられた『第二次意見』及び

『論点整理』は結果的にするどく対立したものとなった48。推進会議は、『障害者権利条

約』を忠実に国内法の見直しに反映させようとした。一方で障害児教育の在り方を『障害

者権利条約』に照らし合わせて見直そうとしたのが特特委員会である。両者は“インク

ルーシブ教育像”において特にその対立を顕著にしている。『障害者権利条約』の批准に

向けて、国内でもその認識が統一が出来ていない点に関して、既に懐疑的にならざるを

得ないが、この『第二次意見』と『論点整理』の対立点を見た上で国の『障害者権利条

約』批准に向けた動向を確認していきたい。

 まず、『障害者権利条約』を忠実に国内法に反映させようとした『第二次意見』では、

インクルーシブ教育は「人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大

限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者が差別を受ける

ことなく、障害のない人と共に生活し、共に学ぶ教育」49と定義されている。また障害児

の就学先について、「障害のある子どもは、障害のない子どもと同様に地域の小・中学校

に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則」50と示し、「原則分離別学の仕組み」

であることを批判している。しかしだからといって特別支援学校や特別支援学級の存在

を認めていないわけではなく、例外という形でその存在は認めている。

一方、障害児教育の在り方を『障害者権利条約』に照らし合わせて見直そうとした特特

委員会の『論点整理』は、「インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学

ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある児童生徒に対して、その時点で

教育的ニーズに最も的確にこたえる指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備するこ

とが重要51」と提言し、あくまでも普通教育への就学が原則か例外かの区別をつけないで、

通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある「多様

な学びの場」を用意することをインクルーシブ教育のシステムと捉えている。

この対立はインクルーシブ教育の理解を就学先という観点から異なるように理解した

結果生まれた相違であると考えられる。清水もまた、その対立にある根底はインクルー

シブ教育の理解の仕方に起因するとしている。まず『第二次意見』においては、「障害者

48 27に同じ。49 第一次意見は 2010年 6 月にまとめられたが、続く第二次意見との内容は変わらないため、本研究では同等のものとして扱うこととする。50 障害者制度改革推進会議『第二次意見』、2010年、33 頁より抜粋51 中央教育審議会特別支援教育の在り方に関する特別委員会『論点整理』、2010年

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1300893.htm (2012年 9 月 17日取得) 

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権利条約の規定するインクルーシブ教育を新しいパラダイムと受け止め、それをもとに

単なる「理念」ではなく法制化して現行の障害児教育システムの改革へ進もうとする立場

であり、インクルージョンがインテグレーションの延長線上の形態ではなく、人権モデ

ルによる新しいパラダイムとして理解する立場52」であるという。一方『論点整理』に関

しては「インクルーシブ教育を新しいパラダイムとして理解するのではなく、インテグ

レーションの延長線上に位置するものと理解し、障害児のニーズの連続性に着目し多様な

就学の場を用意するというインテグレーション原理を擁護しつつ、2007年に法制化され

た特別支援教育がインクルーシブ教育の理念を踏まえたものとし、特別支援教育体制を微

調整しようとする立場53」にあると述べている。

 筆者は、『第二次意見』のインクルーシブ教育の捉え方こそ、『障害者権利条約』に忠

実であると考えている。第一章で確認したインクルーシブ教育の内容にも十分に合致し

ているといえるからである。しかし、政府は『論点整理』をとりまとめた後引き続き審

議を行い 2012年 7 月の中央教育審議会において『共生社会の形成に向けたインクルーシ

ブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)』を報告し、現在はそれにのっ

とり各般の施策に取り組んでいくこととなっている54。よって、今後日本政府は『論点整

理』のインクルーシブ教育像を中心に据えた動向が見受けられることが容易に推測でき

る。

第二項 障害者権利条約批准に向けた日本の動向(執筆中)

『共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進

(報告)』が特別支援教育からインクルーシブ教育をどのように推進しようとしている

かをまとめる。

⇒前提として特別支援教育がインクルーシブ教育へと展開し得るというスタンスを改めて

示す

参考資料:

・三輪善英「解説:インクルーシブ教育システムの構築に向けた国の推進方策(特集:今

後のインクルーシブ教育システムの構築に向けて)」『特別支援教育』48、32-33 頁、

2013年。・文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「資料:共生社会の形成に向けたインクルー

シブ教育システムの構築のための特別支援教育の推進(報告)概要(特集:今後のインク

ルーシブ教育システムの構築に向けて)」『特別支援教育』48、34-43 頁、2013年。

5227に同じ。53 同上54三輪善英「解説:インクルーシブ教育システムの構築に向けた国の推進方策(特集:今後のインクルーシブ教育システムの構築に向けて)」『特別支援教育』48、32-33 頁、2013年。

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第三項 崔栄繁の研究 (執筆中)

そもそもの日本の障害者権利条約に対する姿勢を示した上で、その解釈を素直に受けと

れれば、特別支援教育はインクルーシブ教育とは大きく異なるものであると指摘してい

る。だからどうするべきだという立場は示していない。

⇒『論点整理』と『第二次意見』は『障害者権利条約』を基本としてまとめられた報告書

であるが、前提として『障害者権利条約』の解釈の仕方に恣意性があることを示す。

参考資料:・崔栄繁「障害者の権利条約とインクルーシブ教育(特集 インクルーシブ教

育のいま)」『解放教育』 38(11)、26-33 頁、2008年。

第四項 清水貞夫と越野和之の研究(執筆中)

・清水貞夫は、『論点整理』についてその背景に「特別支援教育はインクルーシブ教育で

ある」、また「特別支援教育の「革新」ではなく「推進」がインクルーシブ教育にいたる

とする俗論が誤りである」といった俗論の存在を指摘し、反論している。

⇒筆者も清水のように特別支援教育がインクルーシブ教育に推進するという考えが誤りで

あると考えるが、清水は基本的に改革をもってすれば特別支援教育もインクルーシブ教

育に展開し得るというスタンスであるので、そこには同意できない。筆者はそもそもそ

れらがつながりをもったものであるのかという点にすら疑問を感じている。

・越野和之は、現行の特別支援教育はインクルーシブ教育の一つのステップではないと

主張している。両者に正当性はないと述べている。だからこそ政府は『論点整理』では

なく『第二次意見』(特別支援教育を例外的に認める)の立場をとるべきであると指摘し

ている。

⇒筆者も比較的に越野の意見に同意している。しかし、現在特別支援学校入学希望者の増

加や障害の重複化などといった現実レベルの問題を考慮したとき特別支援教育を例外的に

認める(=規模が小さくなることが見込まれる)という第二次意見のスタンスを全面施

行してしまうのは危険ではないかと考える。

参考資料:

・清水貞夫『インクルーシブ教育への提言-特別支援教育の革新』、クリエイツかもがわ、

2012年。・越野和之「法制化 6年 民主主義の徹底を基盤とした障害児教育改革を : 特別支援教育法

制化 6年の地点からインクルーシブ教育を展望する (特集 「特別支援教育」の光と影 : 一人ひとりのニーズに応えるために)」『クレスコ』12(12)、 30-35 頁、 2012年。

第五項 第一章のまとめ(執筆中)

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第二章 (執筆中)第一節 第一章までについての筆者の考え

 ・特別支援教育とインクルーシブ教育は異質のものである

 ・『障害者権利条約』への解釈と「インクルーシブ教育と特別支援教育の関係」の捉え

方(特別支援教育を推進すればインクルーシブ教育になる)を見直すべきであると

考える

 ・特別支援教育からインクルーシブ教育へと展開させる必要自体ないのではないだろ

うか。両者を“障害児教育”という一つの枠で考える必然性はないと考える。また、両

者を“障害児教育”という一つの枠で考えるからこそ、「インクルーシブ教育に特別支

援学校の存在は認められるか否か」といったややこしい議論が生まれるのではない

か。

第二節 筆者の主張

第一項 仮説提示

仮仮説

「特別支援教育とインクルーシブ教育は本質的に異なるものであるためその連続性は

無く(A)、特別支援教育の目的をソーシャル・インクルージョンに据えることで、

両者は障害児教育という同一のものではない、異なるパラダイムにおいて存在し得

るものである。(B)」

第三項 検証方法の提示

 

第三章 (執筆中)第一節 検証その1―1

第四項 世界のインクルージョンという概念が生まれた背景(歴史)

第五項 日本の障害児教育のベースとなる概念の背景(歴史)

第六項 第一節のまとめ

 第二節 検証その1-2

第三項 インクルーシブ教育を支えている基盤

第四項 特別支援教育を支えている基盤

第四章 (執筆中) 第一節 検証その2

 ・他の国で両者が共存している…とかあれば良い。

  しかも special education 自体の目的が social inclusionとか、共生社会とかを目指

しているっていう実態があればなおよし。

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 ・目的自体を変えれば、異なるパラダイムで存在しうる。例えば、「特別支援教育」へ

の需要が増えているとして、じゃあそっちいけばいいじゃん!選択肢をひとつのパ

ラダイムで考える必要はない。二つのパラダイムから選択できるようにすればいい。

  というか、インクルーシブ教育自体を障害児教育という枠でとらえようとする必要

性はない。

終章 (執筆中) 第一節 まとめ 第二節 示唆及び提言

 第三節 残された課題

夏課題の反省一ヶ月海外留学に行かせていただいたため、一週間ほどの猶予をいただいたものの、

やはり時間が足りず上手くまとめきれなかった上に、書きたいことのほとんどを記述し

きれなかったのが一番の反省点であり、悔しい点です。しかし、時間がないというのは

単なる言い訳であり、自分自身の夏課題に対する姿勢の甘さ故であると本当に深く反省し

ています。自分のクレームとなるところの記述がほとんどできなかったため皆様にはと

ても読みづらい文章だったことと思います。大変申し訳ございませんでした。以下に書

きたかったことのおおまかな流れをのせておいたのでそれを見ていただければ少しおわ

かりいただけるかもしれません。お手数をおかけして大変申し訳ございません。

しかし今回はアウトラインから大きく練り直し、自分のクレームや疑問点が明確に

なったこと、大枠は見えた気がします。ただ、春課題のように考えながら論文を書くよ

うなことには至らなかったのですが、反対に、自分の言いたいこと、もっていきたい

ゴールというものを意識しすぎて、非常に主観的に情報の選出をしてしまい、論理的で

ない文章になってしまいました。また読み返してみると論理に飛躍があったり、ところ

どころ詰めが甘い点が自分自身でも気になりました。卒業論文の提出まで残された時間

も少ないので、読者の目線でステップを踏みながら理解できるような卒業論文にするた

め、恣意的な情報や論の展開を早急にかつ丁寧に修正する必要があるように感じます。

今後の予定【論文全体について】

 非常に荒っぽい仕上がりになってしまい、詰めが甘すぎるので細かいところまで丁寧

に配慮を施したい。また一項がとても長くなってしまい、理解が難しくなっているよう

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に思うので、論の構成自体を見直す必要がある。序章だけで大量の情報量になってし

まったので、よりコンパクトにしあげることを意識する。

【論の流れについて】

 非常に恣意的であり、断片的でつながりがないように感じるので、ひとつの論文とし

て流れをつくることを意識する

【仮説について】

 言葉の選び方や、仮説自体の妥当性についてもう少し客観的に吟味する

【検証について】

検証方法について、Bについては海外のインクルーシブ教育の状況について見ること

ができていないので早急に確認する

考えている論の流れ■ 序章を通して 現状(P・P)障害児教育において、特別支援教育を推進することでインクルーシブ教

育へと展開させようとしている。しかし、特別支援教育は分離教育でありインクルーシ

ブ教育は非差別・非排除の包括的教育であるということを踏まえるとそれらは容易に発

展し得るとは考えられない。また特別支援教育発足以前もインクルーシブ教育は存在し

ており世界的潮流になっていたにもかかわらず、日本はその言及を避けてきた。しかし

『障害者権利条約』発足の 2008年以降、立場を変えて「特別支援教育はインクルーシブ

教育の一ステップである」と言いはじめた。そこには『障害者権利条約』の批准に急ぐ

国の乱暴な態度が垣間見える。『障害者権利条約』は国際規約以来の国際的コンセンサス

であるため日本もその批准を急ぎたいものの、インクルーシブ教育を保障するそれを批

准するにはまだ国の準備が足りていない。そのためまだ批准には至っていないが、急ぐ

姿勢が見て取れる。この様子から筆者は、日本政府は「特別支援教育」と「インクルーシ

ブ教育」そのもの、またはそれらの関係について丁寧に捉えることが出来ていないので

はないかという疑問、またそれらを丁寧に見たとき

(R・Q)「特別支援教育はインクルーシブ教育に推進をもって展開することはできない

のではないか」という疑問を抱いた。

■ 第一章を通して

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・特別支援教育とインクルーシブ教育は概要も、その目的も異なるのではないか?とい

うことをなんとなく示す。

・日本国内における「インクルーシブ像」にブレがあることを示す。

・日本政府は「特別支援教育を推進すればインクルーシブ教育に展開する」という前提で

施策を進めているということを示す。

・しかし『障害者権利条約』そのものの日本政府の解釈は、「特別支援教育」と「インク

ルーシブ教育」が異なるものであることを明らかにしているということを示す

・「特別支援教育の推進ではインクルーシブ教育へ展開はできない」と述べている先行研

究を検討し、「そもそも特別支援教育からインクルーシブ教育へと展開させる必然性は

あるのか」という疑問(意見)を改めて提示する。

→障害児教育という一つのくくりに両者をまとめる必然性はあるのか?

■ 第二章を通して 仮仮説:

「特別支援教育とインクルーシブ教育は本質的に異なるものであるためその連続性は

無く(A)、特別支援教育の目的をソーシャル・インクルージョンに据えることで、

両者は障害児教育という同一のものではない、異なるパラダイムにおいて存在し得

るものである。(B)」

意味としては、「特別支援教育とインクルーシブ教育を障害児教育という一つのくくり

で考える必要はない。同じものとして考える必要はない。インクルーシブ教育は障害児

のための教育ではない。そのため特別支援教育を障害児教育、インクルーシブ教育は普通

教育としてパラダイムを異なるものとして捉えて存在し得るのではないだろうか。その

ためには、『障害児権利条約』で最終目標となっているソーシャル・インクルージョン

というものを特別支援教育の最終目標として据えれば、条約にそむくことなく、両者は

共存できる(と考える。)

この仮仮説を提示するにあたって絶対必要なこと。

★ なぜ、本質的に違うものであるから展開する必要がないと考えるのか?  本質的に違うものであっても展開はできるのではないか?

⇒直接的な答えがないので、婉曲的にその理由を述べる…

「同じ枠組みで考えるからこそ“インクルーシブ教育”と“特別支援教育”は矛盾したもので

はない、いや矛盾したものであるといった議論や、特別支援学校を認めるか認めないか、

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といった根本的な部分での複雑な議論がおき、不明瞭さを残したまま施策が進んでしま

う恐れがあるから」

検証方法:

Aに関して。① 第一章に加えインクルーシブが生まれた背景と特別支援教育が生まれた背景を細

かく見ていく。そしてその背景の違いからそれらの本質的な違いを明らかにする。

② 特別支援教育とインクルーシブ教育、それぞれを支えている基盤を比較する。

(権利 or 法律 or理念のいずれか)

Bに関して。① 海外において特別支援教育とインクルーシブ教育が異なるカテゴリーで存在して

いる、といった例があれば一番良い。特別学校とインクルーシブ教育の管轄が異

なるといった事実や、その上で海外の特別学校の最終目標がソーシャルインク

ルージョンである等といった事実があればなおよし。それがなかったら、それら

しい理由で妥当性をもたせる。

説明の必要な単語:

連続性、ソーシャルインクルージョン、パラダイム

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参考文献一覧【書籍】

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ルージョンへの道 』、嶺井正也・ 西田有紀・ 瀧澤亜紀訳、明石書店、 1999年。・石部元雄・柳本雄次編『特別支援教育(改訂版)-理解と推進のために』、福村出版株式

会社、2011年。・位頭義仁『知的障害児の統合教育・インクルージョンに関する研究』、風間書房、

2007年。・伊藤隆二『全包括(インクルーシブ)教育の思想 : 社会的不利(ハンディキャップ)をなくす道』、明石書店、1998年。・岐阜大学教育学部特別支援教育研究会編『特別支援教育を学ぶ(第2版)』、ナカニシ

ヤ出版、2010年。・コレット・ドリフテ『特別支援教育の理念と実践:早期から望ましい行動を育むため

に』、納富恵子監訳、ナカニシヤ出版、 2006年。・清水貞夫『インクルーシブ教育への提言-特別支援教育の革新』、クリエイツかもがわ、

2012年。・日本特別ニーズ教育学会(SNE学会)編『特別支援教育の争点』、文理閣、 2004年。・乾美紀子・中村安秀編著『子どもにやさしい学校:インクルーシブ教育をめざして』、

ミネルヴァ書房、2009年。・曽和信一『ノーマライゼーションと社会的・教育的インクルージョン』、阿吽社、

2010年。・中村満紀男・荒川智編『障害児教育の歴史』、明石書店、2003年。・ハリー・ダニエルズ, フィリップ・ガーナー編『世界のインクルーシブ教育 :多様性を

認め、排除しない教育を』、中村満紀男、窪田眞二監訳、明石書店、 2006年。・ピーター・ミットラー『インクルージョン教育への道』、山口薫訳、東京大学出版会 , 2002年。・ベンクト・G・エリクソン・二文字理明・石橋正浩編著『ソーシャル・インクルージョ

ンへの挑戦:排斥のない社会を目指して』、明石書店、2007年。・ベンクト・ニィリエ著,河東田博・橋本由紀子・杉田穏子・和泉とみ代編『ノーマライ

ゼーションの原理〔新訂版〕-普遍化と社会変革を求めて』、現代書館、2004年。

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・深浦勇『障害児教育入門』角川学芸出版、2003年。・堀智晴『障害のある子の保育・教育:特別支援教育でなくインクルーシヴ教育へ』、明

石書店、 2004年。・堀智晴 ・橋本好市『障害児保育の理論と実践:インクルーシブ保育の実現に向けて』、

ミネルヴァ書房、1-3、78-97、2010年。・真城知己『図説 特別な教育的ニーズ論』、文理閣、2003年。・森壮也編『南アジアの障害当事者と障害者政策:障害と開発の視点から』、アジア経済

研究所、2011 年。・森田洋司監『新たなる排除にどう立ち向かうか―ソーシャル・インクルージョンの可

能性と課題』、学文社、2009年。・渡邊健治編『特別支援教育からインクルーシブ教育への展望』、クリエイツかもがわ、

2012年。・渡部昭男『日本型インクルーシブ教育システムへの道―中教審報告のインパクト』、三

学出版、2012年。

【論文】

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んなのねがい』(545)、40-42 頁、2012年。・荒川智「インクルーシブ教育の本質を探る(第2回)インクルーシブ教育と教育改革」

『みんなのねがい』(546)、40-42 頁、2012年。・荒川智「インクルーシブ教育の本質を探る(第5回)ドイツのある知的障害学校での試

み」『みんなのねがい』(549)、40-42 頁、2012年。・荒川智「インクルーシブ教育の本質を探る(第 9回)インクルーシブ教育をめざすもの-

自立・社会参加と発達保障-」『みんなのねがい』(553)、40-42 頁、2012年。

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ティア学研究』10、125-127 頁、2010年。・池田浩明「特別支援教育とインクルーシブ教育:就学の場に着目して」『藤女子大学紀

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・外務省仮訳文『障害者権利条約』、2006年。・木舩憲幸・川合紀宗「分科会 インクルーシブ教育と合理的配慮(特集 2010広島大学特別支援教育シンポジウム 国連障害者権利条約批准後の教育の在り方について:特別支

援教育と通常の教育との連携)」『広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践セ

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