20
「ティーム・ティーチング等教育方法の点検・評価」の取組(第2WG) はじめに 本稿は,鳴門教育大学を中心とした第 2 ワーキンググループ(WG)の取り組みを報告 するものである。WG は,鳴門教育大学 8 名,兵庫教育大学,上越教育大学それぞれ 2 の教員が中心となり,研究を進めてきた。平成 20 年度に 1 回,平成 21 年度に 1 回の全体 WG を開催し,平成 21 11 月に第 2 ワーキンググループとしてのワークショップを開催 した。また,鳴門教育大学の教員を中心として,取り組みを推進する会議を月に 1 度程度 開催してきた。 2WG のテーマは,ティーム・ティーチングを含めた教職大学院の教育方法に関する 点検・評価である。後でみるように,教職大学院は,従来の大学院教育と異なり,教育方 法上,様々な工夫を凝らすことが求められている。2 年間の WG の成果と課題を整理して いきたい。 教職大学院における教育方法上の課題 (1)教職大学院の特徴 教職大学院は,高度専門職業人の養成を目標とし,その中で現職教員を対象としたスク ールリーダー養成と学卒学生を対象とした新人教員養成を目指した教育を行うため,平成 20 年度に設立された。上記の目標を達成するため,教職大学院においては,理論と実践 の融合が強く求められ,教員組織において,4 割以上の実務家教員の配置を求めている。 教職大学院のカリキュラムに関しては,中央教育審議会答申においてかなり踏み込んだ 記述があり,共通科目,コース別選択科目,実習科目の 3 領域の構成とすること,また, 共通科目について,教育課程の編成・実施に関する領域,教科等の実践的な指導方法に関 する領域,生徒指導,教育相談に関する領域,学級経営,学校経営に関する領域,学校教 育と教員のあり方に関する領域,と 5 領域を必修として課すことになっている。 そして,最大の特徴となるのが,実習科目の設置である。理論と実践の融合を図る科目 として実習科目が位置づけられ,各大学,様々な工夫がなされるとともに,教育委員会, 実習を行う学校と様々な連携を図ることが必要となる。 このことは,従来の大学院にない二つの課題を提示している。第一に,キャリアの異な る現職教員院生と学卒院生を合同で行う授業の割合が高く,両者の力量向上につながる授 業を展開せねばならないことである。従来の大学院においても,同様の状況が存在してい たが,授業の内容が各分野の最新の理論の習得にあったため,現職教員院生と学卒院生の キャリアの違いがそれほど顕著にならなかったが,教職大学院では,実践的な側面の力量 向上を目指すものであるため,両者のキャリアの違いが授業の中で大きく影響を与えるこ とになる。第二に,理論と実践の融合に重点が置かれていることである。従来の大学院は, 大学院で理論を習得し,実践への適用は,院生が個々に取り組む,というスタンスであっ たところがあり,特に問題とならなかったが,教職大学院はまさにそのことが教育のねら いとなり,それに対応した授業の展開を考える必要がある。

WG 2WG - 兵庫教育大学|Hyogo University of …「ティーム・ティーチング等教育方法の点検・評価」の取組(第2WG) 1 はじめに 本稿は,鳴門教育大学を中心とした第2

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「ティーム・ティーチング等教育方法の点検・評価」の取組(第2WG)

1 はじめに

本稿は,鳴門教育大学を中心とした第 2 ワーキンググループ(WG)の取り組みを報告

するものである。WGは,鳴門教育大学 8名,兵庫教育大学,上越教育大学それぞれ 2名の教員が中心となり,研究を進めてきた。平成 20年度に 1回,平成 21年度に 1回の全体

WGを開催し,平成 21年 11月に第 2ワーキンググループとしてのワークショップを開催

した。また,鳴門教育大学の教員を中心として,取り組みを推進する会議を月に 1度程度

開催してきた。

第 2WG のテーマは,ティーム・ティーチングを含めた教職大学院の教育方法に関する

点検・評価である。後でみるように,教職大学院は,従来の大学院教育と異なり,教育方

法上,様々な工夫を凝らすことが求められている。2年間の WGの成果と課題を整理して

いきたい。

2 教職大学院における教育方法上の課題

(1)教職大学院の特徴

教職大学院は,高度専門職業人の養成を目標とし,その中で現職教員を対象としたスク

ールリーダー養成と学卒学生を対象とした新人教員養成を目指した教育を行うため,平成

20 年度に設立された。上記の目標を達成するため,教職大学院においては,理論と実践

の融合が強く求められ,教員組織において,4 割以上の実務家教員の配置を求めている。

教職大学院のカリキュラムに関しては,中央教育審議会答申においてかなり踏み込んだ

記述があり,共通科目,コース別選択科目,実習科目の 3領域の構成とすること,また,

共通科目について,教育課程の編成・実施に関する領域,教科等の実践的な指導方法に関

する領域,生徒指導,教育相談に関する領域,学級経営,学校経営に関する領域,学校教

育と教員のあり方に関する領域,と 5領域を必修として課すことになっている。

そして,最大の特徴となるのが,実習科目の設置である。理論と実践の融合を図る科目

として実習科目が位置づけられ,各大学,様々な工夫がなされるとともに,教育委員会,

実習を行う学校と様々な連携を図ることが必要となる。

このことは,従来の大学院にない二つの課題を提示している。第一に,キャリアの異な

る現職教員院生と学卒院生を合同で行う授業の割合が高く,両者の力量向上につながる授

業を展開せねばならないことである。従来の大学院においても,同様の状況が存在してい

たが,授業の内容が各分野の最新の理論の習得にあったため,現職教員院生と学卒院生の

キャリアの違いがそれほど顕著にならなかったが,教職大学院では,実践的な側面の力量

向上を目指すものであるため,両者のキャリアの違いが授業の中で大きく影響を与えるこ

とになる。第二に,理論と実践の融合に重点が置かれていることである。従来の大学院は,

大学院で理論を習得し,実践への適用は,院生が個々に取り組む,というスタンスであっ

たところがあり,特に問題とならなかったが,教職大学院はまさにそのことが教育のねら

いとなり,それに対応した授業の展開を考える必要がある。

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(2)従来の大学院の教育方法

兵庫,上越,鳴門の新構想教育大学は,教職大学院設置以前より,現職の派遣院生を多

く受け入れ,教職大学院に近い教育を行ってきた。たとえば,鳴門の場合,従来の学校改

善,授業開発,生徒指導コースをそれぞれ母体として,学校・学級経営,授業実践・カリ

キュラム開発,学校臨床実践コースが設置されている。しかし,教育方法としては,様々

な変革が求められた。

従来の大学院の授業は,主として一人の研究者教員が講義科目と演習科目を持つか,コ

ースの教員が分担してオムニバス的に行うのが通常であった。内容としては,それぞれの

領域に関する専門的な知識を提供し,受講する院生もそれぞれ関心を持つ科目を選択し,

履修する形態であった。そのため,同一のコース内でも,他の教員がどのような授業を展

開しているか,シラバスで確認する以上の理解は行われないことが通常であった。ただ,

それぞれの専門領域が異なるため,授業内容に重なりが起きるという問題は特に起きなか

った。そのため,教職大学院の教育方法として多く用いられているティーム・ティーチン

グという発想はほとんどなく,そうした教育実践の積み重ねはほとんどない状況であった。

(3)教職大学院における教育方法の課題

従来の大学院では,前にみたように,基本的に一人の研究者教員がその授業科目内にお

いて教育方法上の工夫(たとえば多様な教材,電子機器の活用,授業の進め方など)を行

っていたが,教職大学院は,授業の前提が大きく異なる形となった。

従来との違いを整理すると,第一に,授業をする大学教員の内 4割以上が実務家教員と

なり,大学院での授業経験をほとんど持たないものが授業を担当する必要が出た点である。

第二に,大学院のねらいが理論の習得でなく,理論と実践の融合を図る必要があり,それ

に対応した授業内容をとらねばならない。第三に,授業科目の内,共通科目が半数以上を

占めることに伴い,現職教員院生と学卒院生が合同で授業を受ける機会が極めて多く,ま

た,院生が学びたいと思っていない科目も履修する必要が出る点である。第四に,実務経

験を持たない研究者教員も学校で実習科目の指導を行うことが求められる点である。

多くの教職大学院が,大学での授業科目(共通科目,コース別選択科目)を研究者教員

が担当し,実習科目を実務家教員が担当するという分担制はとっていない。このような分

担制をとると,理論と実践の融合が十分確保できない危険性があるためである。そこでと

られた対応は,研究者教員と実務家教員がペアを組み,共通科目,コース別選択科目,実

習科目を担当するティーム・ティーチングの形態を採用したのである。これは,理論と実

践の融合を図るという目的だけでなく,現職教員院生と学卒院生のキャリアの違いをそれ

ぞれの授業の中で対応するという目的も兼ね備えたものでもある。小中学校でティーム・

ティーチングというと,学習について行けない子どもの寄り添い,指導を行うイメージが

強いが,まさにそうした意味を併せ持つ可能性があり,多くの教職大学院でティーム・テ

ィーチングが採用された。

しかし,(2)でも述べたように,これまでの大学院では,ほとんどティーム・ティー

チングの実践は行われていない。そこで,教職大学院における教育方法,特に,ティーム

・ティーチングの効果的な実践について研究することを本ワーキングの主たるミッション

としたのである。

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3 第 2ワーキンググループの組織と取り組み(第 1期)

第 2ワーキンググループの取り組みであるが,第 1期と第 2期に分けて説明したい。第 1期の取り組みを検証する中で,新たなミッションが明らかになり,区分して説明した方が

わかりやすいと判断したためである。

(1)組織

第 2 ワーキンググループは鳴門教育大学コラボレーションオフィス関係者が中心とな

り,兵庫教育大学,上越教育大学から各 2名ずつ委員を招き組織した。全体会議としては,

平成 20年度に 1回,21年度に 1回,そして,21年度にワークショップを開催するととも

に,2 月に 3 ワーキング合同の共有研修を行った。また,鳴門の教員内では,月に 1 回程

度集まり,計画を立てるとともに進行状況の確認を随時行った。組織の構成員は資料 1の通りである。

(2)ミッション(平成 20年度)

これまで論じてきた課題をもとに,本ワーキングとしてのミッションを次の二つに設定

した。

ミッション 1:理論と実践の融合を促進する教育方法の探究

サブミッション 1 キャンバスでの授業における教育方法

サブミッション 2 実習など学校をフィールドにする教育方法

ミッション 2:現職教員院生と学卒院生の合同教育を効果的に行う教育方法の探究

上記 2つのミッションにおいて,キーワードとなるのがティーム・ティーチングであり,

特にその視点から,効果と課題を明らかにすることとした。

(3)取り組み

上記のミッションを達成するため,次の 3つの取り組みを進めた。

① 3大学教員に対するアンケート調査

兵庫,上越,鳴門の教職大学院授業担当者に,それぞれの授業科目について,ティーム

・ティーチングの実施状況,その効果と課題等について,アンケート調査を行った。兵庫

教育大学 20授業,上越教育大学 8授業,鳴門教育大学 28授業から回答があった。上越教

育大学はティーム・ティーチングを共通科目等で実施していないため,回答数が少なくな

っている。

②鳴門教育大学における共通科目および実習と連動する科目における教育方法改善の取り

組み

共通科目および実習と連動する科目におけるティーム・ティーチングの効果を検証する

ため,共通科目から 2科目,実習トレンドする科目から 2科目選び,それぞれの授業にお

いて,工夫した取り組みの成果と課題を報告しながら,改善策を共通する取り組みを行っ

た。共通科目としては,「学級経営の実践と課題(担当:久我直人,佐古秀一)」(1 年前期

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:共通科目) ,「学習評価の実際と課題(担当:香西武,西村公孝,川上綾子)」(1 年前期

:共通科目),実習と連動する科目としては,「学校プロジェクト事例演習(学校臨床

実践)(担当 :山下一夫,小坂浩嗣,佐藤亨,末内佳代)」(1年後期:コース別選択

科目),「学級経営実地演習(藤原伸彦,豊成哲,木下光二,葛上秀文,山田芳明,岩久

保和義)」(1年後期:コース別選択科目)である。

③ティーム・ティーチングに関する取り組みの国内および海外視察

国内の他の教職大学院におけるティーム・ティーチングの取り組み状況についておよ

び,アメリカ,フィンランドにおける教師教育における教育方法改善の取り組みについて

調査を行った。

上記 3つの取り組みの内,①,②を中心に次節で報告する。

4 本ワーキングの取り組み報告

(1)アンケート調査の分析

アンケートは,各大学のティーム・ティーチングの実施状況およびその工夫改善点を中

心に,授業科目の筆頭担当者に回答いただく形で調査を行った。回収数は 3大学合わせて

56であった。

①授業の実施形態

まず,授業の実施形態をみると,複数の教員がオムニバス形式で実施している科目は 7科目(12.5 %),10 回以上 T.T.で行っているは 27 科目(48.2%),3 ~ 10 回は 16 科目(28.6%),3階未満は 6科目(10.7%)の回答であった。回答のあった科目では,8割以上の科目

がティーム・ティーチングで実施され,その半数近くが 10 回以上実施している実態が明

らかになった。

②複数担当で行うとき実施していること

次に,授業の実践だけでなく,その計画,事前打ち合わせ,事後の打ち合わせ,評価を

どのように行ったか尋ねた。シラバスを共同で作成していると答えたのは,45 授業(80.4%)と,多くの科目が,計画段階から共同して取り組んでいることが明らかになった。授

業前の打ち合わせについては,39 授業(69.6 %),授業後,内容や学生の理解度について

の打ち合わせは 30 授業(53.6 %),評価を担当者全員で相談して行う,については,44 授

業(78.6 %)の回答があった。多くの授業において,PDCA の各段階において協働性が担保

され,実施されていることがわかる。ただ,授業後の評価について,教員の多忙な実態も

あり,確保することがやや困難である結果が浮かび上がった。

③ティーム・ティーチングにおいて工夫している点

アンケートでは,各授業科目において,ティーム・ティーチングで工夫している点を自

由記述で尋ねた。「事前に入念な打ち合わせを行い、授業後には、反省と次回の授業につ

いて話し合いをもっている。(鳴門)」「リフレクションを一緒に行う。学校との連携の調

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整をお願いしている。リフレクションは,複数チームで行うこともある。(上越)」という

回答が見られ,②と同様に,授業前後の打ち合わせの重要性が指摘された。また,資料作

成についても,「授業内容に関する資料を作成し,事前に担当教員に配布した。論点を明

確にして,受講生相互間の議論を誘発できるようにした。(鳴門)」など,全ての授業担当

の教員が資料を共有することを大切にしている記述,また,授業担当でなくても,その授

業に参加し,授業の様子を見学するなどの工夫がなされていた。

内容面に関して,「特に授業主題に対する先進校の取り組み調査・報告の演習部分につ

いて、実務家教員と研究者教員がそれぞれの立場から助言し、受講者へのフィードバック

を保障できるようにした。(兵庫)」,「授業の中で,研究者教員のこれまでの知識・理論

を踏まえて事例を検討してきたが,実務家教員からは異なった観点(現実の学校での実践

可能性など)からの発言があり,受講生にとっては複眼的な視点から物事を捉える力量の

形成に寄与していると考えられる。(鳴門)」といった,理論と実践の融合について立場の

異なるもの同士のティーム・ティーチングの可能性を指摘する意見もみられた。

授業の進め方について,「1 回の授業を 75 分(本体部分)と 15 分(実務家担当)に分

け,実務家担当部分は 15 回にわたって「校長の視点」を解説する。(兵庫)」,「見学後の

シェアリングの時間には,必ず 2名の教員が参加し,不登校・教育相談を中心とした観点

と,非行・生徒指導を中心とした観点の両方からコメントを行って,院生の理解を深める。

鳴門)」,「大学教員同士だけでなく,実習校のメンターとのT.T.を実践している。(鳴

門)」といった工夫がされていた。

院生のキャリアの違いへの対応についての記述として,「本科目は、当初、教職経験 10年程度の現職教員学生を念頭に置いて目標、内容等を設定しており、ストレート学生への

対応が難しかったが、学生個々の興味・関心、理解度等を反映させながらグループ活動等

を媒介に、現職、ストレート相互の討論等を深化させ、より具体的・実践的に学ばせる工

夫をした。(兵庫)」があった。今回のアンケートのねらいが理論と実践の融合に傾斜して

いたこともあり,記述が少なかったと考えられる。

④ティーム・ティーチング実施上の課題

ティーム・ティーチング実施上の課題についても尋ねた。まず問題としてあげられるこ

とが多かったのが,打ち合わせ時間の確保についてである。「現職教員のAクラスとスト

レート学生Bクラスでは、受講生の興味・関心のあり方や水準の高さには大いに差があり、

それぞれに工夫した授業の構成・展開が必要であり、実質的にA科目主担とB科目主担と

を分担し、主担科目では主導的役割を、副担科目では支援的役割を果たすように工夫して

いるが、打合せ時間が取りにくい。(兵庫)」,「やはり,授業前と後の打ち合わせ等の時

間確保が難しい。(鳴門)」の記述が 3大学ともみられ,運営上の負担が多いことが推察さ

れる。

一方,複数担当により教える内容が方になっていて,その対応が必要という意見も多い。

「「限られた回数しか行えず、後期にも引き続き同様の自主ゼミを開催している。教員の

負担が増す。(兵庫)」,「講義については,授業回によってメインとなる担当者を設定し

ているため,必ず当該時間(回)内に終わらせなければならないこと。(つまり,時間を

柔軟に調整することが難しい。)(鳴門)」,「院生の授業評価に「各教員の授業をもっと受

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けたい」と記されているように,授業時間数が足りない。(鳴門)」など。

また,内容についても,「授業担当者間で意識的に意思の疎通を図ることが、各々の差

異を見えにくくしている場合があるようである。各々の特性を示すためには一部にオムニ

バス形式の講義を取り入れる等、各教員がある程度まとまった表現をする機会を設定した

ほうが、受講生にはその差異が明確になるかもしれない。(鳴門)」という指摘のように,

教員それぞれの個性が発揮しにくい状況もあるようである。

各教員が工夫しながら取り組んでおり,課題についての記述は少なかったが,十分な効

果が発揮されているか,立ち止まって検証することを求める意見もあった。また,限られ

たスタッフの中でティーム・ティーチングを行うため,いろいろな授業が類似したメンバ

ーで実施され,院生からみると,科目間の違いがわかりにくい,内容的な重複も多く,事

前の計画段階での調整を求める声が聞かれたことも指摘しておきたい。

⑤ティーム・ティーチングの効果

最後に,ティーム・ティーチングの効果について尋ねた。

「研究者教員から学習論、授業論について理論的な内容の講義と演習、実務家教員から具

体的な実践事例を提供している。その結果、院生にとって理論と実践が深く結びついた授

業となっているように思う。(鳴門)」,「研究者教員2人(教育社会心理学,教育方法学),

実務家教員(社会科教育・元指導主事),及び兼担実務家教員(現職小学校教員)という

専門も経験も異なる担当者が,共同して1つの授業を創っているので,難しさもあるしお

もしろさもある。単独の教員による講義より,多元的に学べる効果があると考えられる。

ただし,受講生の中には,これらをうまく統合できない者もおり,しつこいくらいの橋渡

しが必要と思われる。(兵庫)」,「昨年度授業評価の回答のなかにも,「T.T.」について効

果があったとの自由記述があった。幸い,授業担当者は問題意識を共有できているところ

があって,授業 point について,そう大きく見解が異ならない。研究者教員の立場からと

異なる観点のコメントが授業内容理解に効果があるように思う。(鳴門)」のように,理論

と実践の融合の可能性を示唆する意見が多くみられた。ただ,指摘にもあるように,ティ

ーム・ティーチングのペアの専門性がある程度共通していること,また,院生へのフォロ

ーを十分図ることなどの条件も示されていた。

キャリアの違いへの対応にも有効という意見が多くあげられた。「学生主体のグループ

ワークで授業展開しているので,学生個々への個別指導ができ有効である。(鳴門)」,「受

講者数を1グループ5人未満に抑え、ディスカッションをしながら逐語録や事例の検討や

ができるため、一部の受講者のための時間になることがない。(兵庫)」,「学生の理解度

の把握が深まる。専門性、得意分野をお互いに補いながらできるので、幅広い領域につい

て授業することが可能となる。(兵庫)」など,複数で授業を実践するメリットも大きい。

また,実習科目やそれと連動する科目については,「学校との連携がスムーズにいく。リ

フレクションで多様な視点から考えることができる。(上越)」といった意見もあった。

逆に,担当が変わることで,意見のずれが出ないよう,教員同士の情報共有の場面は不可

欠であろう。

最後に,「体系的な知識の提供という点では単独の方が望ましいと思われるが,実践と

の接合を考えた場合,実務家からの異なる視点の提供は有効であると考える。15 回の授

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業構成の中で,どこで実務家が関わることが適切なのかを検討すればより効果的になると

考える。(鳴門)」という指摘があり,今後の教育方法改善の取り組みを考える上で,大

いに示唆を与える意見といえよう。

ここまで,アンケート調査の結果を分析したが,ティーム・ティーチングが理論と実践

の融合,キャリアの違いに対応する点について,一定の効果が指摘された。しかし,打ち

合わせ時間の確保,知識内容が過多になる問題,また,理論と実践の融合が,受講する院

生にゆだねられる構図は変わらず,それが全ての授業で進められることの弊害も危惧され

る。ティーム・ティーチングの有効性を認めつつも,それが教員にも院生にも負担なく効

果を発揮するためには,その在り方を問い直す必要性があると思われる。

(2)共通科目および実習と連動する科目における教育方法改善の取り組み

鳴門教育大学において,共通科目および実習と連動する科目を二科目ずつ設定し,それ

ぞれの授業における教育方法改善に取り組み,その効果について検討する機会を持った。

①共通科目に関する取り組み

1)「学級経営の実践と課題」(1年前期:共通科目)

授業担当者は,久我直人(実務家教員),佐古秀一(研究者教員)によるティーム・テ

ィーチングの実践である。

本授業は,久我が主担当となり,授業構成を行っている。学級経営における今日的課題

について,理論的な枠組みによる押さえ(理論知のゴール)と実践的な取組事例の教育的

価値の理解(実践知のゴール)を基本として展開し,理論と実践の往還を具現化すること

をねらいとしている。また,受講者に授業感想を毎時間求め,授業の学びの内実や疑問点

等を抽出し,次時の授業内容や展開に加える等の工夫をしている。

本授業における久我と佐古は,授業前に実施内容,展開方法等を事前に打ち合わせし,

研究者の視点からの解説や考えの提案場面の設定等を行っている。また,事前打ち合わせ

にない場面であっても,受講者からの疑問や授業の展開に応じて佐古が臨機応変に対応し,

受講者の授業理解の深化を図っている。授業後の振り返りについては,授業直後の教室で

の議論やメール等でのやりとりによって,互いの気づきを交流し,改善に努めている。

授業改善を通した学級経営改善,学校経営改善の事例を取り上げた授業において,実践

的な取組内容について久我が説明を行い,組織論の視点から佐古が解説を加える展開を試

みた。

成果と課題は以下の通りである。受講者からは,改善事例に対する実践的な側面からの

興味関心の高さと理論的な解説の有効性についての感想が多数寄せられた。一つの事例に

対して,実践的な側面からの説明と研究的な側面からの解説を組み合わせることによって,

受講者の理解において大きな効果を産むことがとらえられた。

課題としては,授業後の振り返りの時間を確保しにくいことがあげられる。

2)学習評価の実際と課題(1年前期:共通科目)

授業担当者は香西武(実務家教員),西村公孝(研究者教員)川上綾子(研究者教員)

の3名である。

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この科目は,教育評価について視野を広げるとともに,最近における学習評価のパラダ

イム転換について理解を深めた上で,学習評価の進歩,改善への実証的研究について,理

論的,技術的な力量を修得することをねらいとしている。

15 回の授業のうちシラバス上は 11 回分がティーム・ティーチング(T.T.)での実施

となっていたが,実際はほぼ全回にわたり少なくとも 2 名の授業担当者が参加し,T.T.の形態を取っていた。その具体的な形態としては,講義中心の回では,1 名がその回の主

担当者として講義を行い,他の 1名ないし 2名の教員は適宜コメント等を行うといったも

のであり,演習中心の回ではそれぞれが受講生の活動を見てアドバイス等をするというも

のであった。

T.T.としての活動の実際的な内容は,まず,シラバスの作成・修正において,各担当

者の専門領域(強み)を生かせるよう各々の担当講義及び演習の内容の決定やその系列化

を共同で行った。また,毎回ではなかったが,必要に応じて(特に演習の進め方等に関し

て)授業前には打ち合わせを行った。成績評価についてはその方法や基準等を相談して行

った。

以上のようなT.T.実施に際しての留意点・工夫点としては,授業内容の一貫性を保つ

ために,それぞれが自らの講義時に他の担当者の講義内容との関連づけが図られるよう努

めたことがあげられる。内容的な吟味は当然ながら,担当予定回以外でも可能な限り授業

に参加する,配付資料については参加できなかった担当者も含め全員で共有する,自分の

講義時に他の担当者の講義内容について積極的に言及する,等のことを心がけた。

成果として,昨年の授業評価では「先生方の連携も十分にされており、それぞれが補い

合って授業が構成されていた」「複数の指導者による講義の中では、内容のつながりや指

導者の連携が良くできていると感じた。一貫性のある講義内容だった」という受講生から

のコメントもあり,T.T.の機能はある程度効果的に果たされていたのではないかと考え

る。

課題としては,各自の講義日程・回数が決まっているため,進め方に融通が利きにくい

といったことがあげられる。担当時間内に終わろうと詰め込んでしまうと受講生が消化不

良になる恐れもあり,内容の精選はもとより,毎回の進度に応じて柔軟な対応ができるよ

うな授業計画を考える必要がある。また,担当者が各々の専門性に基づいて意見を述べた

場合など,受講生にとってはそれらが整理できないことも生じ得よう。そのような事態へ

の対策として,受講生の理解度について共同で確認・検討する機会を設定することが重要

であると考える。

②実習と連動する科目における取り組み

1)「学校プロジェクト事例演習(学校臨床実践)」(1年後期:コース別選択科目)

授業担当者は山下一夫(研究者教員),小坂浩嗣(研究者教員),佐藤亨(実務家

教員),末内佳代(実務家教員)の4名である。

本授業では,2年次の課題分析・課題解決実習に向けて,実習校(置籍校)における実

習計画案をシミュレートして検討し,実習基本計画の作成へと展開させていくことを主眼

においた演習である。

本コースでは生徒指導に関わる実践的応用力を養成するため,授業方法の特徴として実

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践活動についての事例検討・研究を主柱にグループワーク,ロールプレイ,フィールドワ

ークなど効果的,効率的に学習できるように工夫してきた。本授業では受講生が①実習校

でのフィールドワークにより得た学校や子どもに関する多様な情報の分析結果を学校分析

レポートにまとめ発表しグループ検討する,②分析結果をもとに作成した実習計画案を発

表・グループ検討するというグループワークに重点をおいた。そのために授業では,実務

家教員2名と研究者教員2名のそれぞれに専門領域が異なる全教員参加型のティーム・テ

ィーチングを取り入れたグループワークで授業展開したのが大きな特徴である。

成果として次の 3点が挙げられる。

①グループ検討においては,専門領域の異なる教員が全員参加したことにより多角的視

点からディスカッションに介入でき分析の切り口を広げたり検討内容に深みを与え

ることができた。

②受講生に限らず,教員間においても良き議論の場になったことから,教員個々の研究

や実践におけるヒントを得たり新たな研究課題を見出す効果があった。

③授業に関わるだけでなく,授業内容や授業法,授業での疑問点,受講生に関する情報

などについて,教員間で意見や情報交換し合う時間が自然発生的に授業外で生じて

きた。

課題として,次の 3点が挙げられる。

①シラバス作成や授業前後での打合せについて定期的な時間確保が難しい。

②授業内では,個々の教員から出された意見が内容上補完し合えることもあったが,受

講生を混乱させることがあったことも否めない。教員間での授業前後の話し合いが

課題であろう。

③授業展開上で致し方ないのかもしれないが,全教員が並列の立ち位置であったため授

業全体を統括し主導する教員と受講生個々に重点おいて指導する教員といった役割

機能を分化させた指導が取れなかった。

2)「学級経営実地演習」(1年後期:コース別選択科目)授業担当者は,藤原伸彦(研究者教員),豊成哲(実務家教員),岩久保和義(実務家教員),

木下光二(実務家教員),葛上秀文(研究者教員),山田芳明(研究者教員)の6名である。

この科目は,学卒者対象で1年次に実施する「学級経営基礎実習」と連動する演習科目

であり,実習を担当しているコース教員が全員参加し,学生の実習での経験を精緻化する

ことをねらいとしている。実習課題として,たとえば,学生は,配属学級での朝の活動を

整理するとともに,実際に活動を行い,その風景をビデオで撮影したデータをもとに,改

善案を検討した。学生は,配属学級の朝の活動のねらいを整理したものについてプレゼン

を行い,代表の学生の実際の活動をビデオで振り返り,改善点について,全員による議論

を行った。

コース教員が全員参加する授業のため,コース会議等を活用し,学生の理解度を共有し,

指導のあり方を検討する時間を持った。また,前期に開講した「教科外活動に関する実践

と課題」(コース別選択科目)と関連づけ,実践力の向上に向け,指導を進めた。

成果として次の3点が挙げられる。

学生が現場で経験する課題は多種多様であり,様々な背景を持つ教員が,その特性を活か

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し,指導することができる

各自の経験を整理するとともに,相互に交流することで,経験の精緻化が進む

③ 普段から合同で行っているため,教員間の役割分担が暗黙の内に行われ,指導に有

効である

課題として次の 3点が挙げられる。

学生にそれぞれ 2名の大学教員が担当として配属し,そのものが,実習校との調整に当

たるため,その 2名とほかの 4名の,学生に対する情報量の違いから,指導にずれ

の出る場面がある

コース会議を月 2回開催し,学生の状況について率直に議論する機会を設けているが,

その時間の確保が課題である

実践を共有することについて,今年度は少人数であったため可能であったが,学生の数が

多くなったときの対応が困難

(3)中間まとめ

ティーム・ティーチングの教育効果について,アンケート調査,実験的な授業実践の効

果の分析を通して,2つのミッションがどの程度効果があったか考察したい。

もう一度,二つのミッションを確認したい。

ミッション 1:理論と実践の融合を促進する教育方法の探究

サブミッション 1 キャンバスでの授業における教育方法

サブミッション 2 実習など学校をフィールドにする教育方法

ミッション 2:現職教員院生と学卒院生の合同教育を効果的に行う教育方法の探究

まず,ミッション 1であるが,アンケート,授業実践の取り組み双方において,理論と

実践の融合をすすめる可能性が示唆された。ただ,形式的に様々な科目でティーム・ティ

ーチングを実践することは,様々な問題を引き起こす危険性も明らかになった。授業を担

当する教員は限られている一方,教職大学院は多くの単位を開設せねばならず,教員の負

担は高まるし,授業者が類似した構成となるため,院生から,科目間の違いが見えにくい,

院生の理解度に応じて,授業計画を柔軟に対応することが困難といった問題点も明らかに

なった。また,研究者教員,実務家教員という区別について,3 大学の多くの教員が両方

の性格を併せ持っている,すなわち,研究者教員であっても,現場と共同した研究に取り

組んでいるものがほとんどであるし,実務家教員も,大学院を修了したものが多く,研究

指導も一定のレベルに到達しているのである。そのため,研究者教員が実習場面で指導す

ることに特に戸惑うこともないし,実務家教員が大学で授業する上で,その内容を理論的

な背景も押さえながら講義できる力量を持っているものが多いため,研究者教員と実務家

教員がティーム・ティーチングをくむ必然性が少なかったこともある。

したがって,理論と実践を融合するのは,それぞれの授業科目で目指すのでなく,教職

大学院のカリキュラム全体で到達するという視点に立つことが,教職大学院の教育効果を

高めることにつながるという判断するに至った。

ミッション 2についてであるが,キャリアの違いに対応するティーム・ティーチングの

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効果を一定確認できたが,むしろ,キャリアの違いに応じたカリキュラムを設定したほう

がより効果的という意見がワーキンググループの中で高まることになった。特に,鳴門の

場合,学卒者の数が少ないため,学卒対象のコースの教員からそうした要望が強く出され

た。もちろん,合同教育の効果も認められることから,一定の割合で,合同教育を行い,

そこでは,ティーム・ティーチングを有効に活用するとともに,キャリアの違いに応じた

カリキュラム設定を考えることが重要であろう。もちろん,キャリアの違いにより科目を

分けると,授業負担が増すが,ティーム・ティーチングをすべてで行うのでなく,ポイン

トを絞って実施することで,授業負担を軽減することを会わせながら,カリキュラムを見

直すこととした。

そのため,第 2ワーキンググループの取り組みは,教育方法の改善に限定せず,教育内

容,教育方法,授業改善のシステムを総合的にとらえ直し,よりよいカリキュラムを構築

する新たなミッションを設定し,その探求に力点を移すことにした。

5 第 2ワーキンググループの取り組み(第 2期)

(1)第 3のミッション

4 で述べてきたように,教育方法の改善を検討する過程で,改めてカリキュラム全体を

見通した改善を図る必要性が出てきた。そこで,新たなミッションとして,

ミッション 3:教職大学院のカリキュラム全体を見通し,理論と実践の融合と,キャリア

の違いに対応しながら,教職大学院のねらいを達成する教育内容,教育方法,FD の在り

方について探求する

を設定し,取り組みを進めることとした。具体的には,教職大学院のねらいを明確にする

ため,到達目標を設定し,それに会わせたカリキュラム,教育方法,授業改善のシステム

を設計することとした。

(2)鳴門教育大学教職大学院における到達目標の設定

①はじめに

学力低下,学力格差,不登校,いじめの問題など,教育に関する社会の関心が高まるな

か,教育の担い手である教員の資質に対する意識が高まるとともに,教員養成を行う大学

の教育に対しての批判的な見方が強まってきている。

専門職としての基準作りを先進的に進めているのはアメリカである。たとえば,医学教

育において 20 世紀初頭カリキュラムのあり方が問われ,その後,法律,工学分野へと広

がった(ハモンド・スノーデン,2009)。教員養成については,1980 年代になってからと

かなり後れをとっているが,着実に広がりつつある。

日本にもその影響が広がり,たとえば,「教員の資質向上」の一環として、教員養成を

行う大学の組織やカリキュラムのあり方を改善する動きがあげられる。「国立の教員養成

系大学・学部のあり方に関する懇談会」(2001 年 11 月 22 日)では、教員養成に携わる教

員の間にカリキュラムについての共通理解がないことを指摘し、関係者による「モデル的

なカリキュラム」の策定を提案した。そこで,教員養成を行う大学が主体的にカリキュラ

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ム経営に取り組み、4 年間の教員養成課程の学習内容・構成を整備する取り組みが進めら

れている。さらに,中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」

(2006 年7月 11 日)の中で、教職課程を修了する時点での「学習履歴の確認」としての

意味合いを持つ「教職実践演習(仮称)」の導入が提案され、2010 年度入学生から実施の

予定になるなどの、いわゆる「質保証」を求める動きにもつながっている。

また、広く「学部(学士課程)段階の教育」に関する質保証を、その到達水準を明示す

る形で行うことを求める動きも強まっている。医学教育,歯学教育分野の「モデル・コア

・カリキュラム」のような専門技能の質保証を確実にする到達目標の明確化である。教員

養成の領域においても,後でみるように,様々なスタンダード作成の動きが進められてい

る。

一方,高度専門職業人の養成を目指し,教職大学院が設置されて,2年目を迎えている。

教職大学院は,(1)学部段階での資質能力を習得したものの中から,さらにより実践的

な指導力・展開力を備え,新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成,(2)現職教員を対象に,地域や学校のおける指導的役割を果たしうる教員等として不可欠な確

かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えたスクールリーダーの養成,の二つの目的・

機能を目指している。鳴門教育大学にも,平成 20 年 4 月に学校教育研究科高度学校教育

実践専攻として設置され,学校・学級経営コース,学校臨床実践コース,授業実践・カリ

キュラム開発コース,教員養成特別コースの 4コースでスタートした。

教職大学院のカリキュラムに関しては,中央教育審議会答申においてかなり踏み込んだ

記述があり,共通科目,コース別選択科目,実習科目の 3領域の構成とすること,また,

共通科目について,教育課程の編成・実施に関する領域,教科等の実践的な指導方法に関

する領域,生徒指導,教育相談に関する領域,学級経営,学校経営に関する領域,学校教

育と教員のあり方に関する領域,と 5領域を必修として課すことなどを求めている。

さらに,上述した,質保障の観点から,到達水準を明確化するため,日本教職大学院協

会において検討が加えられている。

本稿では,医学などの隣接領域,海外の教員養成に関するスタンダード作成の取り組み,

そして,日本の教員養成のスタンダード作成の取り組みを振り返った後,鳴門教育大学教

職大学院版のスタンダードを提唱し,その成果と課題について論じていきたい。

②教師教育におけるスタンダード設定の取り組み

これまでみてきたように,高等教育におけるスタンダード作成の取り組みが各領域で盛

んに進められている。先進的な事例である医学教育を例にとると,モデルカリキュラムと

して,「基本事項」「「医学一般」「人体各器官の正常構造と機能,病態,診断,治療」「全

身に及ぶ生理的変化,病態,診断,治療」「診療の基本」「医学・医療と社会」「臨床実習」

と,7 つの項目が設定されている。各大学医学部では,スタンダードに沿ったカリキュラ

ムの見直しが進められ,標準化が図られている。

教員養成の領域においても,日本教育大学協会が「モデル・コア・カリキュラム」研究

プロジェクトを 2001 年に発足させて,スタンダード作成作業に入った。しかし,教員養

成免許制度の複雑さ,すなわち,免許状が専修,1 種,2 種に分かれ,さらに,幼稚園,

小学校,中学校,高等学校各教科,特別支援と校種ごとに免許が設定されている点である。

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医学,法曹資格などは,領域に細分されず 1種類であるのに対し,教員養成は 140を超え

る免許があり,それを包括するスタンダード作成は困難であるため,図 1のような教員養

成のカリキュラムモデル概念図の提示にとどまっている。

欧米に目を向けると,教員養成に関するスタンダード作成の取り組みが進められている。

まず,アメリカでは,州ごとの独立性が強いが,州を超えた基準作成も試みられ,その代

表である INTASC(Interstate New Teacher Assessment and Support Consortium Principles)が、

目標基準である 10の原則として,

(1)教科内容とそれを導く経験の組織化についての理解

(2)学習や発達についての理解

(3)学習者の差異への着目

(4)多様な教育方法の理解

(5)動機付けと学習環境の関係理解

(6)学級経営の方法の理解

(7)授業計画の方法の理解

(8)評価方法の理解

(9)職能成長のための手立ての理解

(10)同僚性と地域との連携

を示している。

INTASC の基準が,教員養成段階であるのに対し,現職教員の中の卓越した教員の基準

作成を試みているのが NBPTS(National Boards on Professional Teaching Standards)である。

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NBPTS は 1989 年に最初の専門性の基準案が作成された。そのなかでは、5つの命題が掲

げられ、現在も維持されている。

〈命題1〉教師は子どもたち及び子どもたちの学習全般について託されている。

〈命題2〉教師は教科内容とそれぞれの教科の教育方法に精通している。

〈命題3〉教師は子どもたちの学習を運営し、監督する責任を負っている。

〈命題4〉教師は各自の実践を体系的に考察するとともに、経験から学習し続ける。

〈命題5〉教師は学習共同体の構成員である。

NBPTSではこれら5つの命題を、熟練した教師、教育の専門家などが結集して作成し、

熟練した教師が持つ有能さ、知識、スキル、傾向を指し示すものと考えた。そして、それ

ぞれの専門性のスタンダードが定められている。たとえば、「教師一般」のスタンダード

として、

(1)生徒に関する知識

(2)教科内容とカリキュラムに関する知識

(3)学習環境を作り上げること

(4)多様性を尊重すること

(5)多彩な教材を準備していること

(6)生徒の学習を支援する十分な知識を有していること

(7)教育方法

(8)評価

(9)家庭との連携

(10)省察

(11)専門性への寄与

という 11 が定められている。それ以外に,各教科,特別支援など,専門領域ごとにスタ

ンダードが作成されているが,項目としてはほぼ同様の構成である。

一方,イギリスにおいては,日本の文部科学省に相当する子ども・教育・家庭省の下部

機関である TDA(Training and Development Agency)が教員養成段階,標準段階,中堅段

階,優秀段階,指導段階の 5 段階を設定し,段階ごとに,以下の 3 領域,16 の観点のス

タンダードを作成している。

1 専門的な属性

(1)子どもとの関係構築

(2)教職の役割の認識

(3)協働

(4)専門性の成長

2 専門的な知識

(5)教授と学習

(6)評価

(7)教科とカリキュラム

(8)基礎的学力

(9)子どもの多様性の理解

(10)法で定められた子どもの権利の保障

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3 専門的技能

(11)計画

(12)教授法

(13)評価とフィードバック

(14)自身の教授行動の省察

(15)学習環境への配慮

(16)協働するためのスキル

アメリカおよびイギリスのスタンダードは比較的類似したものとなっており,日本にお

いてもこれらを参考にしたスタンダード作成が始められている。ただ,欧米においては,

教師は,国語,算数といった教科学習の指導が主たる役割で,生徒指導などは別の専門家

にゆだねられるのに対し,日本の場合,教科指導,生徒指導,進路指導など,様々な役割

をこなさねばならないというように教師の役割が大きく異なっているところがあり,その

まま適用することは問題がある。次節では,これらの取り組みを参考にして,独自のスタ

ンダード作成を試みている各大学の事例を振り返る。

③各大学におけるスタンダード作成の取り組み

教員養成系大学・学部において,学部段階のスタンダード作成の取り組みが進められて

いる。ここでは,岡山大学,島根大学,福島大学の取り組みを取り上げる。

岡山大学では,表 1 のような 4 つの領域,16 の観点のスタンダードを作成している。

このスタンダードは,実践的な力量に特化したもので,主として教育実習との関連の中で

特徴づけられたものである。

島根大学では,表 2 の 3 領域,10 の

観点のスタンダードを作成している。自

己進化力という領域が設定され,医学教

育の基本事項に相当する内容が示されて

いるところに特徴がある。また,島根大

学は,この観点と各授業科目との対応関

係を明確化し,学生に対する大学教員の

評価,学生自身の自己評価,学生の授業

評価と関連づけているところに大きな特

徴がある。たとえば,教育実践力という

領域の学習者理解という観点に関して,

対応する授業科目で,学生に与えられた

評価の平均をとり,それを学生に返すとともに,学生も,自らの到達状況を自己評価する

ところまで実施している点は重要である。スタンダードを作るだけでなく,それを活用す

る,しかも,学生も主体的に取り組む島根大学のシステムは評価される。

表1 岡山大学のスタンダード教育実践力 評価項目

学習状況の把握力授業設計力授業実践力授業の分析・省察力子どもの発達的特徴を理解する力子どもの生活を理解する力学校・学級での生活を指導する力コミュニケーション力連携・協力の現状を理解する力保護者・地域とつながる力実習校の教職員とつながる力教育実習生同士で協働する力学級をマネジメントする力学年・学校行事をマネジメントする力学校マネジメントを理解する力セルフ・マネジメント力

マネジメント力

コーディネート力

生徒指導力

学習指導力

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福島大学では,表 3 の 4領域,13の観点のスタンダードを作成している。欧

米のスタンダードを参考にしたバランス

のとれた内容となっている。このスタン

ダードはさらに,各観点を,態度,知識,

実践力の 3 つの側面からとらえること

で,それらの観点の到達をより具体化し

て示すものとなっている。たとえば,

「児童生徒の人間的な成長・発達と個性

の把握」

【態度】

①児童生徒を「成長し続ける存在」とと

らえ、未来への可能性を切り開こうとす

②児童生徒の思いや願いを大切にしなが

ら、励ましと厳しさで自立に向かわせよ

うとする

【知識】

①児童生徒の各段階の特徴と課題を理解

しており、成長・発達の一般的な筋道を

知っている

②特別な教育的ニーズのある児童生徒を

理解し、個に応じた支援の方法を導き出す方策を知っている

③児童生徒の社会的自立にかかわる課題を理解している

【実践力】

①様々な実践を通して、一人ひとりの多面的な能力や特性を踏まえて指導することができ

②様々な課題を抱える児童生徒に対し、理解・共感しながら指導することができる

③児童生徒の自主性を伸ばし、自己実現を図る積極的な生徒指導を行うことができる

が示されている。

上記 3 大学以外にも,横浜国立大学が 8 領域,50 の観点のスタンダードを作成してい

る。これらのスタンダードは,それぞれ強み,弱みを持っており,また,教師として全て

の力量を網羅するスタンダード作成はきわめて困難なところがある。実際,島根大学に聞

き取り調査を行った際,スタンダード作成の担当者は,全てを網羅するというよりも,重

要な観点を提示し,実践することが重要であると語っていた。一方,これらのスタンダー

ドは学部段階を対象としたものであり,本稿で取り扱う教職大学院のスタンダードは,現

状では,公表されているものはないと考えられる。そこで,これらのスタンダードを参考

にして,鳴門教育大学教職大学院のスタンダードを作成するとともに,島根大学の取り組

表2 島根大学のスタンダード分野 10の軸

学校理解学習者理解教科基礎知識・技能授業実践研究リーダーシップ・協力社会参加コミュニケーション探究力教師像・倫理

教育実践力

自己進化力

対人関係力

表3 福島大学のスタンダード領域 項目

教員の意義の理解と教員としての自覚・使命感・情熱教員としての確固たる倫理観積極性と豊かなコミュニケーション能自らの実践の省察と改善教育目標と発達課題にもとづく授業の構想教科内容の深い理解と児童生徒への知識の定着効果的な指導方法と指導技術の研究・開発児童生徒の学習状況の評価児童生徒の人間的な成長と個性の個人の尊重と互いを高めあう学級経児童生徒の個性を伸長し社会性を高める諸活動の展開教職員の協働とよりよい学校経営学校と家庭・地域社会の連携

教職員の協働と学校づ

児童生徒の理解と指導

授業づくりと学びの創造

教員の自立と使命感

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みを参考にして,授業科目と関連づけ,学生の自己評価も取り組んだ「学びのポートフォ

リオ」を作成することとした。

④鳴門教育大学教職大学院のスタンダード

1)到達目標および「学びのポートフォリオ」の設定

表 4 鳴門教育大学教職大学院の到達目標(現職版)

鳴門教育大学教職大学院においても,中央教育審議会答申,上述した各スタンダードを

参考にして,著者たちを中心に検討を加えて,原案を作成し,それを専攻会議にかけて,

改善を加え,作成を進めた。表 4に現職教員向けの到達目標を提示する。鳴門の場合,領

域として,教育的人間力,教育実践指導力,学校改善指導力(学卒の場合,協働的改善力)

の 3 領域を設定し,その下に 11 の観点を設定している。教育的人間力とは,専門職とし

ての教員の基盤として求められるもので,教育動向の理解,教員としての倫理観,コミュ

ニケーション能力で構成している。教育実践指導力は,学習指導,生徒指導,学級経営で

構成し,対子どもの能力として不可欠な要素で構成している。学校改善指導力は,教職大

学院のねらいであるリーダー教員に求められる力量で構成し,学校を改善するために必要

な要素となっている。学卒学生の場合,将来,学校を改善していくために必要な協働力の

第1層 第2層 第3層(T) 第3層(P)領域 観点 理論的側面 実践的側面

最新の教育動向

の理解

教育政策や学校改革の動向や事例について知る

とともに,それらの背景について理解している

教育政策や学校改革の動向との関連で,自校の

課題や特徴を捉えることができる

社会と関連づけ

た教育の認識

人間の成長発達に占める学校教育の役割や社会・経済的状況と学校教育の関係等,幅広い観

点から学校ないし学校教育を理解している

社会で求められる教育の役割と関連づけながら

自校の教育の在り方を考えることができる

教員の在り方, 教員としての省

教員の果たすべき役割,教員の専門性について,理論的に理解している

教員の在り方や専門性という観点から,教員としての自己の課題を捉えることができる

コミュニケーション

様々な背景を持つ人たちと適切にコミュニケーションできる知識・スキルを習得している

様々な人と適切にコミュニケーションするとともに,集団の中でリーダーシップを発揮したり,コーディネートできる

生徒指導生徒指導,教育相談に関する理論的,専門的な知識やスキルを習得している

生徒指導,教育相談のすすめ方について,他の教員に指導できる

学習指導授業の構成,実施,評価に関する理論的,専門的な知識やスキルを習得している

授業の構成,実施,評価に関して,他の教員に指導することができる

学級経営子どもの理解,学級集団の理解に関する理論的な知識や,関連したスキルを習得している

学級集団や学級経営の診断と改善に関して,他の教員に指導できる

学校分析学校に関する資料をもとに,学校の現状と課題

を把握するための知識,スキルを習得している

勤務校の児童生徒,教職員,学校運営,地域等

との連携,等について,具体的なデータ(資料)にもとづき,特徴と課題を明らかにすることができる

組織運営学校の教育活動の活性化に結びつく,組織運営(マネジメント)の知識,スキルを習得してい

学校組織活性化のための具体的な計画を構想す

ることができる

評価改善学校の取り組みを評価するための知識,スキル

を習得している

自校の取り組みとその成果に関する評価を行うことができ,それに基づいてさらなる改善課題

を明らかにできる

連携構築外部の関係機関等に関する知識を有し,異校種,家庭・地域,関係機関等と連携をすすめる

ための知識,スキルを習得している

連携構築に関する自校の実態と課題を明らかに

し,連携構築に向けた構想を具体化できる

学校改善指導力

教育実践指導力

教育的人間力

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観点で構成している。これらの観点について,さらに,理論的側面,実践的側面に区分し,

最終的に理論と実践を融合できる教員としての力量形成を図る構成とした。最終的に 22項目の到達目標を作成した。

到達目標を中核にして,後でみる,授業目標との対応,学生の自己評価とその結果に基

づく課題設定,をパッケージにしたものを鳴門教育大学「学びのポートフォリオ」とし,

院生に配布した。

2)到達目標と授業科目との関連

1)で設定した到達目標と授業科目との関連について,授業科目担当者に依頼して,関

連する観点を明らかにしてもらい,それをコースごとに一覧にした(現状では暫定版であ

る)。その一部を表 5 として示す。到達目標を明確化し,その後,授業科目を構成したの

ではないため,バランスに欠け,対応する授業科目がない観点もあるが,ほぼ,網羅する

形で科目が配置されている。今後,各授業科目で,丸をつけた観点について,観点別の成

績評価を実施する予定となっている。また,カリキュラムの見直しも現在進めているとこ

ろで,対応関係がより明確になるよう,検討を進めている。

⑤到達目標達成するための,大学教員,院生,教育委員会が協働するためのシステム

鳴門では,これまでのプロセスで設定した到達目標とそれに準拠したカリキュラムを設

定し,それをもとに,院生,大学教員,教育委員会と協働したカリキュラム改善システム

を構築している。

観点

? ? ? ?

? ? : ? ? ? ? ?? ? : ? ? ? ? ?

科目名

共通科目 コース別選択科目 実習科目

・J・・・L・・・・・・・メ・ャ・フ・タ・ロ・ニ

・ロ・・

・w・Z・J・・・L・・・・・・・フ・J・ュ

・・・ニ・タ・H・フ・ェ・ヘ・ニ・・・P

・w・K・w・ア・フ・\・ャ・ニ・W・J

・w・K・]・ソ・フ・タ・ロ・ニ・ロ・・

・カ・k・w・ア・E・ウ・・・・・k・ノ・ヨ・キ

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・・・タ・H・ニ・ロ・・

・w・・・o・c・フ・タ・H・ニ・ロ・・

・w・Z・o・c・フ・タ・H・ニ・ロ・・

・ウ・・・フ・ン・・・・・ノ・ヨ・キ・・・タ

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・・・c・・・ゥ・・・・・カ・・・ヨ・フ・ュ・B

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・y・x・ュ・B・・・Q・・・ヨ・フ・x・・・ニ

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・ウ・・・ュ・・・フ・ョ・・・ニ・ロ・・

・w・Z・v・・・W・F・N・g・・・・・・・K

??????

??????

??????

・ル・Z・・・タ・K

最新の教育動向の理解

教育政策や学校改革の動向や事例について知るとともに,それらの背景について理解する

○ ○ ○ ○ ○

教育政策や学校改革の動向との関連で,自校の課題や特徴を捉える

○ ○ ○ ○

社会と関連づけた教育の認識

人間の成長発達に占める学校教育の役割や社会・経済的状況と学校教育の関係等,幅広い観点から学校ないし学校教育を理解する

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社会で求められる教育の役割と関連づけながら自校の教育の在り方を考える

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社会の中の教員の在り方

教員の果たすべき役割,教員の専門性について,理論的に理解する

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教員の在り方や専門性という観点から,教員としての自己の課題を捉える

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コミュニケーション

様々な背景を持つ人たちと適切にコミュニケーションできる知識・スキルを習得する

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様々な人と適切にコミュニケーションするとともに,集団の中でリーダーシップを発揮したり,コーディネートする

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このことにより,3つの成果が生まれている。第一に,院生の自己評価力の向上である。

本学では,到達目標に関して,学期開始時(2 年間で 4 回)と修了時の 5 回,自己評価を

行い(step1),その評価に基づき,その学期の学習目標を立てさせるようにしている

(step2)。これは,ただ漠然と学ぶのでなく,院生それぞれが自分の強みと弱みを把握し,

その中で,どこに力点を置いて学習するか,計画させることにより,自己評価力の向上に

つながると考えている。自己評価力は,大学院の 2年間だけでなく,今後の教員生活にも

活用できるものであることからも,継続的に取り組んでいる。

第二に,大学教員の授業改善に活用することである。これまでも本学では組織的な授業

改善に取り組んできたが,それは個々の授業科目の改善にとどまり,カリキュラム全体と

して,大学院生の力量を向上させるという視点に立った授業改善の発想は弱かった。今回,

大学教員に対して,それぞれの授業科目において,到達目標のどの観点の力量向上につな

がるか明らかにしてもらうこととした。その観点について,授業の中で院生にどの程度力

がついたか評価してもらう形をとっている。また,院生に対しても,その授業科目の中で,

大学教員が明示した観点について,どの程度力量が向上したか,自己評価してもらい,そ

の二つの評価も参考にしながら,授業改善を考える形としたのである(step3)。これによ

り,それぞれの授業科目内だけでなく,教職大学院全体の教育改善につながることが期待

される。

第三に,連携協力校,教育委員会と実質的な連携を深めるツールとなる点である。教職

大学院を設置するに当たり,また,設置後も,様々な教育委員会と議論してきたが,従来

の修士課程との違いを十分理解してもらえないところもあった。また,授業科目,シラバ

スなどを提示し,教育委員会と議論することを試みたが,十分な意見交換するところまで

に至らなかった。その原因は,教職大学院として,どのような人材養成を目指すのか明確

でなかったためと考え,到達目標を設定し,それと授業科目との関連を提示することとし

到達目標の設定と準拠したカリキュラム

院生 大学教員 学校・教委

目標に対する自己評価(半

期ごと)

Step1

授業評価院生各自の観点別評価

課題設定

到達状況の確認

授業改善策の設定

院生の学習状況の評価

Step2

Step3

学校,教育委員会関係者とともに行うカリキュラムの改善

Step4学校、教育委員会と評価観点を共有

質向上への主体的参加

各自の授業だけでなく全体を意識した授業改善

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た。その結果,教育委員会との意見交換および,実習校の管理職との意見交換が従来より

進展する形となった(step4)。

6 まとめ

第 2ワーキンググループでは,理論と実践の融合,キャリアの異なる院生に対する合同

教育という二つの課題に対応する教育方法の改善について検討を加えた結果,これらの課

題は教育方法の改善だけでは十分でないと考え,教職大学院全体のカリキュラムの体系化

とそれを不断に改善するシステムを構築することで対応する必要があると考え,その取り

組みを進めた。これらの取り組みはまだ緒についたばかりで,多くの課題が山積している。

今後,3 大学およびその他の教職大学院と意見交換しながら,よりよいカリキュラムの構

築に向け,努力を続けていきたい。