White Biotechnology Biomass Utilization Carbon Neutral Sustainable Development Goals SDGs先端的低炭素化技術開発(ALCA) ホワイトバイオテクノロジー

White BiotechnologyWhite Biotechnology ホワイトバイオテクノロジー 運営総括(PO) 土肥 義治 高輝度光科学研究センター 理事長 ホワイトバイオテクノロジーによるバイオマス由来の化成品創出は、カーボン

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

White Biotechnology

Biomass UtilizationCarbon Neutral

Sustainable Development Goals (SDGs)

先端的低炭素化技術開発(A L C A)ホワイトバイオテクノロジー

PetrochemistryPetroleum, Natural GasGreenhouse Gas Emissions Global Warming

国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)未来創造研究開発推進部 低炭素研究推進グループ〒 102-0076 東京都千代田区五番町 7 番地 K’s 五番町Tel: 03-3512-3543 Fax: 03-3512-3533E-mail: [email protected] https://www.jst.go.jp/alca/

2019.1

Realization of a Low Carbon Society

White Biotechnology

ホワイトバイオテクノロジー運営総括(PO)土肥 義治高輝度光科学研究センター 理事長

 ホワイトバイオテクノロジーによるバイオマス由来の化成品創出は、カーボンニュートラルや省エネルギーの観点からCO2排出削減に大きく貢献することが期待されます。バイオマスから化成品をつくる実用生産プロセスを開発するためには、(i)合目的なバイオマス成分の効率的分離、(ii)基幹化成品への化学工学的および生物工学的変換、(iii)高性能なポリマー素材の合成と材料化、といったバイオマス化学産業における基盤技術を確立することがきわめて重要です。バイオマス化学産業の技術確立を目指して、バイオマスから高付加価値化成品を生産するための一気通貫プロセスにおける革新的な要素技術を開発します。

⃝�ホワイトバイオテクノロジーとは  バイオマスを原料に化成品等を製造し石油製品を代替するクリーンで持続可能な技術

ヘミセルロース

セルロース

木質系・草本系バイオマス

その他のバイオマス・微生物、藻類・甲殻類・廃グリセロール・天然ゴム

リグニン(含リグノセルロース)

 本領域の運営にあたっては、運営総括のリーダーシップのもと、研究開発推進のために領域内の研究開発課題間はもとより、ALCAの他領域及びCREST、さきがけなどJST他プログラムにおける関連研究開発課題との連携を図っています。 また、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」とのプロジェクト連携を効果的に推進するために、JST、NEDO、プロジェクト関係者からなる合同連絡会議を設置しています(文部科学省、経済産業省関係者もオブザーバー参加)。

�■「チーム型」� 化成品合成一貫プロセスの研究開発を行う■「要素技術型」� バイオマスからポリマーを創出するための技術的ボトルネック解決に取り組む■「特定技術型」� セルロースナノファイバーに関する次世代型研究開発を行う

セルロースナノファイバーナノセルロースが分子キラリティを支配する界面不斉反応の創発九州大学 北岡 卓也

セルロースナノファイバーセルロースナノファイバーを用いた高機能性プラスチック極限軽量断熱発泡部材の開発京都大学 大嶋 正裕

フランジカルボン酸、脂肪族ジオール(ポリエステル原料)非可食バイオマスからカルボン酸およびアルコール類の高効率合成北海道大学 中島 清隆

グリコール酸ポリマー(ポリエステル)糖質バイオマスからグリコール酸ポリマーを合成する微生物プロセスの開発北海道大学 松本 謙一郎

フラン環含有ポリマー(機能性高分子)*フラン環の構造特性を利用した高機能性高分子の創出群馬大学 橘 熊野

リグニンの材料化(機能材料)*環境適応型プロセスによるリグニンの抽出および高機能素材への展開産業技術総合研究所 敷中 一洋

芳香族化合物(人工漆)海洋微生物酵素群によるリグニン分解高度化と人工漆材料への展開海洋研究開発機構 大田 ゆかり

ムコン酸(ナイロン、PETのモノマー中間原料)糖質に依存しないムコン酸のバイオ生産弘前大学 園木 和典

熱可塑性ポリマー(耐熱・耐衝撃・光学材料)革新的合成法による高性能な高分子多糖類バイオプラスチックの創製と高機能部材化東京大学 岩田 忠久

1.3- プロパンジオール(ポリエステル原料)バイオ燃料廃棄物系バイオマスからポリマー原料への微生物転換筑波大学 中島 敏明

高性能ゴム加硫の技術革新による天然ゴムの新展京都工芸繊維大学 池田 裕子

*2016年度採択課題については課題紹介除く

糖(C5/C6)

脂肪族モノマー

高分子多糖類

加硫ゴム

セルロースナノファイバー

リグニン・芳香族モノマー

未発泡体表層

Skin layer

3μm

高発泡倍率 材料削減 省資源気泡微細化 強度補強

低熱伝導率省エネルギー

軽量化・高断熱性の実現

Hybrid shish-kebab

内部

Nano / MicroCellular

繊維状構造

PP 結晶

Fibrillary

CNF が核となりPPの結晶がCNFから成長している

SEM 写真

200μm

200nm

CNF

SEM 写真

2 倍発泡厚み 2mm

5 倍発泡厚み 5mm

7 倍発泡厚み 7 mm

10 倍発泡厚み 10 mm

12 倍発泡厚み 12 mm

15 倍発泡厚み 15 mm

18 倍発泡厚み 18 mm

固体触媒を駆使する高効率物質変換技術

ナノセルロースを触媒反応場とする高収率かつエナンチオ選択的アルドール反応の立体制御

ナノセルロースが分子キラリティを支配する界面不斉反応の創発北岡 卓也 九州大学 大学院農学研究院 教授

セルロースナノファイバーを用いた高機能性プラスチック極限軽量断熱発泡部材の開発大嶋 正裕 京都大学 大学院工学研究科 教授

目 的樹木ナノセルロースと有機分子触媒を組み合わせることで、高効率と高選択性を併せ持つ不斉合成反応を実現します。

科 学 技 術 の 成 果ナノセルロース結晶界面に規則的に配列した不斉点を、有機分子触媒の反応場として利用することで、極めて高効率かつ高度な立体構造制御が可能な触媒的不斉合成に成功しました。天然多糖類に特徴的なナノ界面構造を、触媒反応で活用する新発想の材料開発が期待されます。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開物質変換プロセスの革新は、化学産業の省エネルギー化・低環境負荷・二酸化炭素排出抑制を促進し、樹木ナノセルロースの用途拡大は、林業・林産業の活性化と次世代バイオマス産業の創出による炭素固定量増加が期待されるため、両面で低炭素社会の実現に貢献できます。

目 的セルロースナノファイバー(CNF)と可塑性高分子のナノコンポジットから、発泡倍率が10倍以上で、空隙径を数μmからnmオーダ領域にまで微細化させた高比強度軽量発泡部材を創製します。

科 学 技 術 の 成 果CNFを化学変性あるいはコーティングし、可塑性高分子との仲の良さ(疎水性)と仲の悪さ(親水性)を適切に制御し、可塑性高分子の発泡助材(フィラー)として活用することで、発泡倍率が20倍という超軽量で、繊維状の空隙構造を有する、吸音性や断熱性に優れた射出発泡成形部材を作り出しました。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開CNFを利用し、高分子の軽さ・しなやかさを活かしたまま、軽量化や高断熱性の機能をもったプラスチック部材を世の中に創り出します。自動車部材の軽量化や車体の断熱性向上による燃費(電池の消費)低減や電化製品の軽量化を通じて省エネルギー低炭素社会に貢献します。

セ ル ロ ー ス ナ ノ フ ァ イ バ ー

合成方法の融合による新材料の創製へ

0.0

0.0

0.2

0.2

0.4

0.4

0.6

0.6

0.8

0.8

1.0

1.0

1.2

1.2

1.41.4

(µm)

(µm)

従来型 グリコール酸ポリマー

バイオマス

新規なポリマー高次構造制御により実現したポリマーフィルムのナノ構造

ポリマー合成菌

糖(炭素源)

人工改変微生物プロセス

バイオマス資源由来の糖類やカルボン酸を原料とした化石資源由来汎用ポリエステルを代替する高機能ポリエステル原料の合成法を確立します。

二酸化炭素を介した炭素資源循環 バイオフラネート樹脂

・ 高機能ポリエステル・ 高耐熱 / 高引張強度・ 高ガスバリア性

新規還元触媒によるジオールの合成

グルコース

油脂類

バイオマス

HOOC-R'-COOH HOH2C-R'-CH2OH

OHOH

OHHO

HO

O

ジカルボン酸

水素化

非貴金属新触媒 ジオール

生産性の高いジカルボン酸の合成アセタール化

HMFHO(CH2)3OH

OHOH OH

OCnH2nOm

HO HOO

O

OO

OO O

O

O

O

フランジカルボン酸

酸化

非可食バイオマスからカルボン酸およびアルコール類の高効率合成中島 清隆 北海道大学 触媒科学研究所 准教授

糖質バイオマスからグリコール酸ポリマーを合成する微生物プロセスの開発松本 謙一郎 北海道大学 大学院工学研究院 教授

目 的非可食バイオマス資源から高機能プラスチックの原料となるジカルボン酸ならびにジオールを合成します。

科 学 技 術 の 成 果グルコースからアセタール中間体を経由するフランジカルボン酸の合成ルートならびにカルボン酸から直接アルコールを製造する非貴金属触媒を開発しました。これらの新手法により、バイオマス資源から高生産性ならびに高LCA優位性を達成する製造プロセスの実現が可能となります。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開PET、PBTを代表とする汎用ポリエステルの機能性を凌駕するバイオポリエステルのコスト競争力を高めることにより、汎用樹脂の脱化石資源化によるCO2排出量の削減ならびに高機能化による省資源化を達成して、持続可能な循環型低炭素社会の実現に貢献する技術を確立します。

目 的再生可能なバイオマス資源を活用し、有用なバイオプラスチックを微生物合成します。

科 学 技 術 の 成 果微生物が合成するポリエステルの生合成系を人工的に改変することにより、天然では合成されないグリコール酸ユニットをモノマーとして含むポリエステルの合成に成功しました。さらにポリマーの高次構造を制御する新規な方法も発見しました。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開バイオマス由来材料が低炭素社会に貢献するためには、より幅広い用途に利用可能にすることが重要です。その実現のため、発見した新しい合成機構を用いて、生産性の高さと使いやすい物性を兼ね備えたポリマーの合成系を構築することを目標としています。

バイオマス

木質系 草本系

芳香族モノマー

触媒技術

「スーパーウルシオール」 「スーパー漆」

酵素 5

ワンポット酵素変換

酵素 1

酵素 2酵素 3

酵素 4

環境調和型変換低変性リグニン

HO

HOn

MeO

OH

O

O

R

R

R=H, OCH3

リグニン

低分子フェノール類不均一な混合物が生成

培養液から精製した高純度ムコン酸

多様な結合から成る天然芳香族高分子

工業利用できる様々な脂肪族・芳香族化合物を生産する微生物反応創出へと応用し、石油化学由来ポリマーの代替や高機能性ポリマー合成へ

セルロース(30~50%)リグニン

(10~30%)

ヘミセルロース(20~40%)

⃝�微生物代謝の改良・最適化⃝�不均一な混合物をムコン酸へと収束

分離・低分子化処理

海洋微生物酵素群によるリグニン分解高度化と人工漆材料への展開大田 ゆかり 海洋研究開発機構 海洋生命理工学研究開発センター グループリーダー代理

糖質に依存しないムコン酸のバイオ生産園木 和典 弘前大学 農学生命科学部 准教授

目 的酵素法でのリグニン分解~触媒技術による高付加価値化学品の創生を行い、リグニン高度利用を具体化します。

科 学 技 術 の 成 果木材などの非可食バイオマスから酢酸・過酢酸を用いて高純度・低変性リグニンを取り出す方法を見出しました。このリグニンに5つの酵素を同時に作用させることで、芳香族モノマーが生産可能です。このモノマーを、触媒技術により、新高分子材料「スーパーウルシオール」「スーパー漆」へと導きます。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開世界中で植物バイオマス由来の多糖類を利用するバイオリファイナリー工場が稼働を始めていますが、リグニンの利用はまだ不十分です。本課題で開発したリグニン抽出・変換技術をバイオリファイナリープロセスに融合させ、バイオマスを無駄なく全体利用する技術を促進します。

目 的セルロース由来の糖質ではなく、リグニン由来のフェノール類から幅広いポリマー合成に利用できるムコン酸を生産する技術の開発を目指します。

科 学 技 術 の 成 果非可食バイオマスを化学処理して得られる不均一なリグニン由来のフェノール類から効率よくムコン酸を生産できる微生物株を分子育種しました。リグニンの利用にはその不均一な構造が主な障壁でしたが、微生物代謝を利用して特定の化合物へ収束するための要素技術を確立しました。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開不均一なリグニン由来のフェノール類を、工業利用できる多様な脂肪族・芳香族化合物へと収束するための代謝改変・最適化を進めます。そして低炭素社会実現に向けて、リグニンの分離・低分子化技術と組合わせ、リグニンの高度利用を実現します。

リ グ ニ ン ・ 芳 香 族 モ ノ マ ー

酵素触媒合成・無溶媒反応による多糖類誘導体の合成

高性能バイオプラスチック

樹脂改質・成型加工・大量生産

酵素触媒重合

無溶媒大量合成

高機能・高性能・高意匠(成形品、フィルム、繊維…)

木材 / 草本 セルロース 微生物・緑藻 パラミロン

酵素触媒重合非天然型多糖類甲殻類の殻 キトサン

OH

OH

OH

OH

OH OH

OHOH

OHOH

OH

OH

OHOH

OH

OH

OH OH

OH

HO

HO

HO

HO

HO

HO

HO

HOHO

HO

HO

HONH2

NH2

OO

O

OOOO

OO

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

革新的合成法による高性能な高分子多糖類バイオプラスチックの創製と高機能部材化岩田 忠久 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授

目 的天然あるいは酵素触媒重合により得られる高分子多糖類を原料とし、その特徴的な構造を活かした新規で高性能なバイオプラスチックを創製し、実用部材化を行います。

科 学 技 術 の 成 果◦�耐熱性、耐衝撃性、光学特性に優れた様々な長

鎖・短鎖多糖類エステル誘導体の合成に成功◦�水系・常温・常圧の条件下で、酵素による非天

然型多糖類のin vitro合成に成功◦低エネルギー大量合成法の確立◦高級漆器調バイオプラスチックの開発に成功

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開木材から抽出されるセルロース、ミドリムシが合成するパラミロンなどの、様々な多糖類から熱成形加工可能で機能性や装飾性に優れた部材の開発を行います。酵素触媒合成や無溶媒反応など、有機溶媒や金属触媒に依存しない、低エネルギー・低環境負荷合成法の開発を目指します。

高 分 子 多 糖 類

ミドリムシが合成した高分子多糖類からの溶融紡糸繊維

漆器の美しさを実現したセルロース系バイオプラスチック

BDF 生産拠点(燃料工場) TB-96 株

Conc

entra

tion

(g/l)

Conc

entra

tion

(g/l)

Time (h)Time (h)

50 10040 8030 6020 4010 2000 06 1212 2418 3624 4830 6036 42 48

0

機能性高分子材料

1,3-PD

固定化微生物で繰り返し使用

乳酸・ギ酸生成系破壊で生産が倍以上

高 pHグリセロール廃棄物

バイオディーゼル燃料 (BDF) =軽油の代替燃料

■1.3-PD●グリセロール◆乳酸▲ギ酸

培養条件オミクス解析変異導入代謝改変

事業性評価⃝生産コスト⃝環境コスト

低炭素社会構築用高性能ゴム材料波及効果

ヘベア代替天然ゴム ワユーレ, ゴムタンポポ

加硫反応制御

合成天然ゴム(イソプレンゴム)

加硫反応機構の解明亜鉛: 加硫ゴムの網目不均一性制御の鍵

酸化亜鉛

網目ドメインメッシュ網目

ジスルフィド結合様式に富む

加硫反応制御

波及効果

波及効果

バイオフィラー リグニン, ナノセルロース など

汎用補強性フィラー カーボンブラック シリカなど

合成ゴム 汎用ゴム・ 特殊ゴムなど

エコタイヤ 免震ゴム ガス貯蔵シール材 医用ゴム 電池用ゴム低炭素社会 安全・安心・高効率エネルギー変換

ヘベア天然ゴム

ポリスルフィド結合とジスルフィド結合様式に富む

バイオ燃料廃棄物系バイオマスからポリマー原料への微生物転換中島 敏明 筑波大学 生命環境系 教授

加硫の技術革新による天然ゴムの新展開池田 裕子 京都工芸繊維大学 分子化学系 教授

目 的バイオディーゼル燃料の生産において副生するグリセロールから、微生物を用いて、ポリマー原料である1,3-プロパンジオール(1,3-PD)を生産する上での技術的ボトルネック解消を目指します。

科 学 技 術 の 成 果培養の最適化とオミクス解析、代謝改変によって生産速度の大幅な増大と副産物の低減がみられ、当初の倍以上の1,3-PDを生産しました。本微生物は繰り返し使用も可能です。コスト試算の結果、事業化可能なラインであり、環境コストを考慮すると既存の生産法の代替となり得ます。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開1,3-PDは多くのポリマーの前駆体となるため、焼却処理されていた廃グリセロールからの生産は、CO2の直接的な増加だけでなく、ポリマー原料である原油の使用削減にもつながり、2倍の温室効果ガス削減効果が期待できます。3-ヒドロキシプロピオン酸(アクリル酸前駆体)の生産も検討中です。

目 的低炭素社会のためのゴム科学のブレークスルーを加硫の化学から達成します。

科 学 技 術 の 成 果環境適合性高性能ゴム材料創生の鍵となる加硫の基礎技術の構築に役立つ知見を得ました。新規反応中間体“亜鉛複核錯体”の加硫における役割の解明に挑戦し、加硫の化学を深化させてゴム材料科学の新展開を図りました。

低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 け て の 展 開エコタイヤや電池用ゴム、水素ガス貯蔵シール 材など、低炭素社会の構築に役立つゴム材料の設計指針の基礎を提供します。また、天然ゴムの生物多様性とバイオセキュリティーの観点から、非ヘベア天然ゴムの加硫制御に有用な技術となります。さらに、高性能なバイオフィラー充てん天然ゴムコンポジットの創製にも貢献できます。

脂 肪 族 モ ノ マ ー ・ 加 硫 ゴ ム

ALCA Outline

Management

ALCAのSDGsへの取り組み

 地球温暖化問題の原因である温室効果ガスの中で最も大きな割合を占める二酸化炭素の排出を抑制する「低炭素社会」を構築することが、世界的な課題となっています。こうした国際動向の中、日本国内でも温室効果ガス排出の低減に向けた取り組みが始まり、2010年、温室効果ガス排出の低減を目指した低炭素技術開発に特化した研究プログラムとして先端的低炭素化技術開発(Advanced Low Carbon Technology Research and Development Program; ALCA)を発足しました。 地球温暖化問題の解決に向け、ALCAではCO2の発生を創エネルギー、蓄エネルギー、カーボンニュートラルによって、また、CO2排出量を省エネルギーによってそれぞれ低減し、低炭素社会の形成を目指しています。

 事業統括(プログラムディレクター;PD)はALCA運営全般を統括し、運営統括(プログラムオフィサー;PO)は特別重点技術領域、革新技術領域と実用技術化プロジェクトのマネジメントを行います。 ALCAはゲームチェンジングな挑戦的課題を積極的に採択しますが、研究開発期間中に“ステージゲート評価”を行い、研究開発の継続/中止について、サイエンスの観点のみならず「低炭素社会への貢献可能性」という観点からも厳密に判断します。

 ALCAでは、温室効果ガスの排出削減を目指した技術開発を通じて、「環境・エネルギー」分野に関する以下の目標に貢献していきます。

ALCA事業総括(PD)橋本 和仁物質・材料研究機構 理事長

運営体制 ◦事業統括(PD)・運営総括(PO)◦先端的低炭素化技術開発(ALCA)事業推進委員会

特別重点技術領域

◦ 文部科学省と経済産業省が合同検討会を開催してテーマを設定(次世代蓄電池、ホワイトバイオテクノロジー)

◦領域内でチーム型や要素技術型の課題を一体的に推進◦府省連携が必須◦3~20億円/年・領域程度

実用技術化プロジェクト

◦ 個別課題を集積したプロジェクトを編成し、要素技術を統合しつつ実用技術化の研究開発を加速

◦実用化の担い手となる企業との連携が必須◦0.5億~2億円/年・PJ程度

革新技術領域 ◦ 温室効果ガス排出量の大幅削減に貢献する革新的技術シーズを創出

◦0.3億円/年・課題程度

技術分野 ◦次世代蓄電池◦ホワイトバイオテクノロジー◦太陽電池および太陽エネルギー利用システム◦超伝導システム◦蓄電デバイス◦耐熱材料・鉄鋼リサイクル高性能材料◦バイオテクノロジー◦革新的省・創エネルギー化学プロセス◦革新的省・創エネルギーシステム・デバイス