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1/4 XBRL インスタンス作成 Tool kit for RDB の作成 ―XBRL 文の及を目指して― 1.背 現代の金融事業は急速にグローバル化が進展しています。 しかし、国単位においても、企業単位においても事業報告様式が統一されてお らず、的確な金融行政や円滑な金融事業を阻む大きな要因となっていました。ま た、米国におけるエンロン事件や邦におけるライブドア事件等の粉飾事件の発 覚は、企業の財務内容の透明化などコンプライアンスの早確立を要請する大 きなうねりとなりました。 そこで、各国の金融関係者(財務省、銀行協会、公認会計士協会等)が、標準 として採用したのが、XML 言語を基盤として作出された XBRL という事業報告言 語です。 XBRL が及すれば、企業情報のサプライチェーンといえるものが出上がり ます。このサプライチェーンよって第一義的には、銀行や税務署、証券取引所と いった、企業の財務情報を収集・分析する立場にある企業や団体が恩恵を受け ます。 例えば監査人は、現在はほとんどの場合、紙で財務諸表を受け取り、それ を手作業で集計しコンピュータに入力するなどに手間を掛けています。しかし、顧 客企業から XBRL 形式の財務情報をインターネット経由で入手可能となれば、監 査のためのデータ集計・分析業務の手間を大幅に軽できます。 一般企業の XBRL 導入メリットとして、まず証券取引所や投資家への情報開示、 人税の申告、銀行への融資申請などといった事務処理が簡素化されます。ま た、処理の迅速化によって早に的確な情報開示が可能となり企業信用の向上 にも役立てることが可能です。 さらに、グループ企業の財務情報を XBRL 形式で送受信することができれば、 連結決算処理の事務作業のスピードアップが待できます。今では合併や買 収に伴い、関連会社であっても異なった会計システムを使用しているケースも多 く、統合する企業の会計システムが XBRL 形式でデータを管理していれば、会計 システム統合の手間を軽できることになります。 2.目的 XBRL インスタンスを受け取り、それを分析する仕組みは、大手の企業や大規 模パッケージ等で整備が進んでいますが、XBRL インスタンスの出し手側の仕組 みはだ整備されていないのが現状です。プロジェクトでは、この難解な XBRL データ構造をリレーショナル・データベースのテーブル構造に変換し、SQL と簡単 なメソッドのコールのみで XBRL インスタンスを作成し、利用することを可能にしま す。 XBRL Tool Kit を利用する対象は、会計データを統一的なフォーマットでやり 取りを行いたい企業、又は ERP ベンダを想定しています。 XBRL Tool Kit は、「出し手側」が利用することを想定しています。 XBRL Tool Kit は、リレーショナル・データベース内に集積されている財務デ ータや、その他勘定系情報を扱うアプリケーションの財務データから、XBRLイン

XBRLインスタンス作成Tool kit for RDBの作成 …...1/4 XBRLインスタンス作成Tool kit for RDBの作成 ―XBRL文暯の晘及を目指して― 1.背晙 現代の金融事業は急速にグローバル化が進展しています。

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Page 1: XBRLインスタンス作成Tool kit for RDBの作成 …...1/4 XBRLインスタンス作成Tool kit for RDBの作成 ―XBRL文暯の晘及を目指して― 1.背晙 現代の金融事業は急速にグローバル化が進展しています。

1/4

XBRL インスタンス作成 Tool kit for RDB の作成

―XBRL 文書の普及を目指して―

1.背景

現代の金融事業は急速にグローバル化が進展しています。

しかし、国単位においても、企業単位においても事業報告様式が統一されてお

らず、的確な金融行政や円滑な金融事業を阻む大きな要因となっていました。ま

た、米国におけるエンロン事件や本邦におけるライブドア事件等の粉飾事件の発

覚は、企業の財務内容の透明化などコンプライアンスの早期確立を要請する大

きなうねりとなりました。

そこで、各国の金融関係者(財務省、銀行協会、公認会計士協会等)が、標準

として採用したのが、XML 言語を基盤として作出された XBRL という事業報告言

語です。

XBRL が普及すれば、企業情報のサプライチェーンといえるものが出来上がり

ます。このサプライチェーンよって第一義的には、銀行や税務署、証券取引所と

いった、企業の財務情報を収集・分析する立場にある企業や団体が恩恵を受け

ます。

例えば監査法人は、現在はほとんどの場合、紙で財務諸表を受け取り、それ

を手作業で集計しコンピュータに入力するなどに手間を掛けています。しかし、顧

客企業から XBRL 形式の財務情報をインターネット経由で入手可能となれば、監

査のためのデータ集計・分析業務の手間を大幅に軽減できます。

一般企業の XBRL 導入メリットとして、まず証券取引所や投資家への情報開示、

法人税の申告、銀行への融資申請などといった事務処理が簡素化されます。ま

た、処理の迅速化によって早期に的確な情報開示が可能となり企業信用の向上

にも役立てることが可能です。

さらに、グループ企業の財務情報を XBRL 形式で送受信することができれば、

連結決算処理の事務作業のスピードアップが期待できます。昨今では合併や買

収に伴い、関連会社であっても異なった会計システムを使用しているケースも多

く、統合する企業の会計システムが XBRL 形式でデータを管理していれば、会計

システム統合の手間を軽減できることになります。

2.目的

XBRL インスタンスを受け取り、それを分析する仕組みは、大手の企業や大規

模パッケージ等で整備が進んでいますが、XBRL インスタンスの出し手側の仕組

みは未だ整備されていないのが現状です。本プロジェクトでは、この難解な XBRL

データ構造をリレーショナル・データベースのテーブル構造に変換し、SQL と簡単

なメソッドのコールのみで XBRL インスタンスを作成し、利用することを可能にしま

す。

XBRL Tool Kit を利用する対象は、会計データを統一的なフォーマットでやり

取りを行いたい企業、又は ERP ベンダを想定しています。

XBRL Tool Kit は、「出し手側」が利用することを想定しています。

XBRL Tool Kit は、リレーショナル・データベース内に集積されている財務デ

ータや、その他勘定系情報を扱うアプリケーションの財務データから、XBRLイン

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スタンスを作成する機能を提供します。利用方法としては、社内勘定系システム、

またはERPパッケージの機能の一部として取り込まれ、利用されることを想定し

ています。XBRL Tool Kit は、数種類のAPIを呼び出すのみで目的のインスタン

スが利用可能となります。

図1 XBRL を利用した情報の流れ

XBRL Tool Kit によって作られたインスタンスは、銀行や税務署、証券取引所

といった、企業の財務情報を収集・分析する立場にある企業や団体に対し、電文

として利用されることを想定しています。例えば一般企業は、証券取引所や投資

家への情報開示、法人税の申告、銀行への融資申請、などといった事務処理が

簡素化されることが期待できます。また、処理の迅速化によって早期に的確な情

報開示が可能となり企業信用の向上にもつながり、さらに、グループ企業の財務

情報を XBRL 形式で送受信することができれば、連結決算処理の事務作業のス

ピードアップに貢献することが可能となります。

3.開発の内容

機能は大きく三つに分けられます。

1)タクソノミー登録機能

タクソノミー(Taxonomy)と呼ばれる XML で記述された財務情報の勘定科目

を規定する語彙集を取り込み、必要な情報をリレーショナル・データベースに

登録します。これによりタクソノミー情報を SQL でアクセスが可能になります。

ここで登録されたタクソノミーデータは、次のインスタンス作成機能で XBRL

フォーマットのデータを作成する際の元データとなります。

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2)インスタンス作成機能

リレーショナル・データベース内に集積されている財務データや、その他勘

定系情報を扱うアプリケーションの財務データと“タクソノミー登録機能”で登

録されたタクソノミーデータを連結し、XBRL フォーマットの実データ(インスタ

ンスと呼ぶ)への変換を行います。データの連結に関しては、マッピングツー

ルを提供します。

3)サンプルアプリケーション

「タクソノミー登録機能」と「インスタンス作成機能」を利用したサンプルアプリ

ケーションを提供します。このサンプルによって本Tool kitの仕様の理解を早

め、導入時の参考プログラムとしても利用されることを目的とします。

図 2 機能説明図

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4.従来の技術(または機能)との相違

・ツールキットのオープンソース化

・Java VM と DOM パーサ(Xerces)、リレーショナルデータベースがあれば利用能

・複数のデータベースに対応(Oracle、PostgreSQL、MySQL)

・XBRL Tool kit をの数個のメソッドを呼び出すだけでインスタンス出力が可能

5.期待される効果

・XBRL 文書の流通量増加

・会計システム等の組込による XBRL を利用したシステムの普及

・XBRL に対する認知度の向上

6.普及(または活用)の見通し

オープンソースである「財務データ XBRL 変換ツール」を、勘定系システムへ統合

する企業、ならびにそれをサポートする SIer、および財務会計システムに組み込む

事を計画しているシステム構築会社に対して、変換ツール使用方法に関するコン

サルティング及びヘルプデスクサービスを商品化して、その販売活動を行う。また、

その販売活動を通して、XBRL 普及の啓蒙に貢献する。

7.開発者名(所属)

中山昌高(株式会社ゴーイング・ドットコム 第一システム開発部)

安藤俊介(株式会社ゴーイング・ドットコム 第二システム開発部)

権田悟穂(株式会社ゴーイング・ドットコム 第一システム開発部)

岡安雅子(株式会社ゴーイング・ドットコム 第一システム開発部)

(参考)

開発者URL http://www.going.co.jp