O-ga-le ! 人材育成情報誌 vol. 16 2013.9 オガーレ! Special Issue

z ú ý Ú Ô ø!¢ é 「OECD東北スクール」...石巻ハッカソン 技の肖像 2 パイプオルガン(石巻市河南町) オガーレ!らぼ 第15回 20 「腐敗」と「発酵」って何が違うの?-恵みをもたらす微生物の力-

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Page 1: z ú ý Ú Ô ø!¢ é 「OECD東北スクール」...石巻ハッカソン 技の肖像 2 パイプオルガン(石巻市河南町) オガーレ!らぼ 第15回 20 「腐敗」と「発酵」って何が違うの?-恵みをもたらす微生物の力-

情報提供お待ちしております!「オガーレ!」では、読者の皆様からの情報提供をお待ちしております。未来を担う子どもたちの人材育成に取り組んでいる学校や、企業、地域の方々を紹介してください。私たち「オガーレ!」編集部が誌面を通じてエールを送ります。

「オガーレ!」編集部ハリウ コミュニケーションズ株式会社内〒984-0011 仙台市若林区六丁の目西町2-12TEL. 022-288-5011(代) FAX. 022-288-7600E-mail. [email protected]. http://www.zundanet.co.jp/o-ga-le/

お問い合わせ

この印刷物は、輸送マイレージ低減によるCO2削減や地産地消に着目し、国産米ぬか油を使用した新しい環境配慮型インキ「ライスインキ」で印刷し、印刷用の紙へリサイクルできます。

P-Z10064この印刷製品は、環境に配慮した資材と工場で製造されています。

本冊子は10,000部作成し1部あたりの印刷単価は50.4円です。

授業で使える

理科雑記帳

かえ

敗は、細菌やカビなどの微生物が生き物の体や体液などを分解するとき、おきる現象です。独特の臭いを放ち、微生

物がつくりだす毒素や微生物そのもののせいで、人間がそれを食べると、食中毒を引きおこすこともあります。 一方で、発酵は、酵母菌などの微生物を利用して、食べものを分解し、うま味や炭酸ガスなどを生み出すことを言います。味噌やしょう油、ビールにチーズ―。わたしたちが普段、口にしている食べものの中にも、こうした「発酵食品」は多く存在します。

ちらも、微生物の活動によっておきるのに、「腐敗」と「発酵」で、呼び方が違うのは、なぜなのでしょうか?

 一般的には、わたしたち人間にとって有害であれば「腐敗」、安全で役に立つものであれば「発酵」と考えられています。 しかし、ふたつの間に明確な境界線はありません。たとえば、日本人が好んで食べる納豆は、大豆を納豆菌で発酵させた発酵食品ですが、外国人にとっては「悪臭を放つ、腐ったもの」とみなされてしまうことがあります。 結局、わたしたちの都合で「腐敗」と「発酵」は区別されているだけなのです。

生物がはびこり、食べものを醜い姿に変えてしまうさまに例えて、「腐敗」は、しばしば悪い組織や政治の行いを語る

ときに使われます。 どうしても「悪いイメージ」が付きまとう「腐敗」ですが、自然界で、生物の死骸を分解し土に還す重要な役割を果たしています。大地の恵みを受けて暮らす、わたしたち人間も、実は恩恵を受けているのです。

界初の抗生物質と言われる「ペニシリン」は、1929 年イギリスの細菌学者フレミングが、研究中に誤って発生させ

てしまったアオカビの中から発見されました。その後の研究で、大量生産が可能になった「ペニシリン」は、100 種類以上の病原菌に効果がある治療薬として、多くの人の命を救いました。 わたしたちの暮らしにさまざまな恵みをもたらすカビなどの微生物は、ときに健康を害する悪者として嫌がられることもあります。そんな人間の「ご都合主義」に「腐る」ことなく、微生物には、これからも活躍してほしいものです。

ど 世

O - g a - l e!人材育成情報誌

v o l . 162 0 1 3 . 9

人材育成情報誌

発行:宮城県(産業人材対策課)/ハリウ

コミュニケーションズ株式会社

オガーレ!

vo

l.

16

オガーレ!被災地の中高生が世界に復興をアピール

「OECD東北スクール」

S p e c i a l I s s u e

Page 2: z ú ý Ú Ô ø!¢ é 「OECD東北スクール」...石巻ハッカソン 技の肖像 2 パイプオルガン(石巻市河南町) オガーレ!らぼ 第15回 20 「腐敗」と「発酵」って何が違うの?-恵みをもたらす微生物の力-

O - g a - l e!

オガーレ!人材育成情報誌

v o l . 162 0 1 3 . 9

FOCUS 表紙の人

OECD東北スクールの戸倉チームに参加する 小山 康平くん(15)石巻高1年4日間のスクールを終えてどうでしたか?高校生になって、部活などで、地域の活動に参加する機会が少なくなりましたが、今回を機会にもう一度、頑張ろうという強い気持ちを持つことができました。パリでは、最高のイベントにしたいと思っています。将来の夢は?震災後、オーストラリアに行き、英語に興味を持ちました。大学に進んで、将来は英語を使った仕事に就きたいです。先生もいいなぁ。

(関連4~9ページ)

オガーレ!とは

 「オガーレ!」は、宮城の方言「おがる(育つ)」と応援のかけ声「オーレ」の造語です。 未来の産業人である子どもたちを「おがらせよう」と取り組む学校や、企業、地域の人 を々応援したい―。そんな気持ちを込めて名づけました。

・・・・・・

C O N T E N T S

19TOPICS東京スカイツリーを満喫 被災地域児童の東京ツアー

科学技術を体感 たのしいサイエンス・サマースクール

最新の車 組み付け体験 クラフトマン21 村田高で実践研修

ハイブリッド車の仕組みを学ぶ 夏休み親子工作教室

16しごと図鑑⑦百貨店 販売員 小田嶋 静 さん

18o-ga-le! NEWS 超一流のエンジニアとスマホのアプリ開発に挑戦石巻ハッカソン

2技の肖像パイプオルガン(石巻市河南町)

20オガーレ!らぼ 第15回「腐敗」と「発酵」って何が違うの?

-恵みをもたらす微生物の力-

12MADE in MIYAGI 中小企業の挑戦「3Dプリンタを活用した砂型鋳造技術」 コイワイ宮城工場(大河原町)

10特別編 キャリア教育REPORT REPORT 県内の小学生が「いじめ根絶」のために意見を交わす みやぎ小学生いじめを考えるフォーラムREPORT 県工高インターンシップ成果発表会REPORT 小中学生にプロが仕事を指南 楽学プロジェクト

1

3

2

被災地の中高生が世界に復興をアピール「OECD東北スクール」

4S p e c i a l I s s u e

女川/気仙沼/南三陸戸倉 3チームの活動インタビュー OECD東北スクール運営事務局 統括責任者      福島大学教授 三浦浩喜さん

14あすを拓く-innovation-平井 孝浩 さん 平孝酒造 社長

3

O - g a - l e!

オガーレ!人材育成情報誌

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FOCUS 表紙の人

OECD東北スクールの戸倉チームに参加する 小山 康平くん(15)石巻高1年4日間のスクールを終えてどうでしたか?高校生になって、部活などで、地域の活動に参加する機会が少なくなりましたが、今回を機会にもう一度、頑張ろうという強い気持ちを持つことができました。パリでは、最高のイベントにしたいと思っています。将来の夢は?震災後、オーストラリアに行き、英語に興味を持ちました。大学に進んで、将来は英語を使った仕事に就きたいです。先生もいいなぁ。

(関連4~9ページ)

オガーレ!とは

 「オガーレ!」は、宮城の方言「おがる(育つ)」と応援のかけ声「オーレ」の造語です。 未来の産業人である子どもたちを「おがらせよう」と取り組む学校や、企業、地域の人 を々応援したい―。そんな気持ちを込めて名づけました。

・・・・・・

C O N T E N T S

19TOPICS東京スカイツリーを満喫 被災地域児童の東京ツアー

科学技術を体感 たのしいサイエンス・サマースクール

最新の車 組み付け体験 クラフトマン21 村田高で実践研修

ハイブリッド車の仕組みを学ぶ 夏休み親子工作教室

16しごと図鑑⑦百貨店 販売員 小田嶋 静 さん

18o-ga-le! NEWS 超一流のエンジニアとスマホのアプリ開発に挑戦石巻ハッカソン

2技の肖像パイプオルガン(石巻市河南町)

20オガーレ!らぼ 第15回「腐敗」と「発酵」って何が違うの?

-恵みをもたらす微生物の力-

12MADE in MIYAGI 中小企業の挑戦「3Dプリンタを活用した砂型鋳造技術」 コイワイ宮城工場(大河原町)

10特別編 キャリア教育REPORT REPORT 県内の小学生が「いじめ根絶」のために意見を交わす みやぎ小学生いじめを考えるフォーラムREPORT 県工高インターンシップ成果発表会REPORT 小中学生にプロが仕事を指南 楽学プロジェクト

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被災地の中高生が世界に復興をアピール「OECD東北スクール」

4S p e c i a l I s s u e

女川/気仙沼/南三陸戸倉 3チームの活動インタビュー OECD東北スクール運営事務局 統括責任者      福島大学教授 三浦浩喜さん

14あすを拓く-innovation-平井 孝浩 さん 平孝酒造 社長

パイプオルガン(石巻市河南町)

技の肖像

上:勝浦通之さんが手がけたパイプオルガン=遊楽館(石巻市河南町)中:特別な道具を使ってパイプの音を調整する勝浦さん 下:勝浦さんが書いたパイプオルガンの設計図。いまもなおアナログにこだわる

金属製や木製のパイプが並ぶパイプオルガン内部

問い合わせ勝浦オルガン工房石巻市前谷地字中埣56℡.0225-72-4069WEB http://www1.odn.ne.jp/katsuuraorgelbau/

11世紀に、聖堂建築が盛んだったヨーロッパ各地

で広まったとされるパイプオルガン。重厚な外観と

荘厳な音色は、いまもなお多くの人を魅了し続けて

いる。

 オルガンの音色は「笛」と呼ばれる長さ10数セン

チから数メートルのパイプを通る風によって生みだ

される。パイプの素材は、ナラや※スプルースなど

の木材と、スズや鉛などの金属。その数は数千本に

のぼる。奏者らは、鍵盤や音色を選ぶ装置「ストッ

プ」を操り、いくつものパイプに風を送り込むこと

で、旋律を奏でる。

 「大きな木材を加工したり、パイプの歌う

たくち口を数ミ

リ単位で調整したり、オルガンづくりには、大胆さ

と繊細さの両方が求められるんです」。東北で唯一、

パイプオルガンを手掛ける制作家の勝浦通之さん

(56)は、その奥深さを語る。

 勝浦さんは福井県出身。ピアノの調律師として活

躍する中で、「手づくりで楽器をつくる仕事をした

い」と、オルガン工房に飛び込み、約10年間、国内

で制作や修復などの経験を積んだ。その後、本場ド

イツで3年間、実績を重ね、石巻市(旧河南町)で

独立した。

 「手仕事なだけに、仕上がりは一つ一つ違う。設置

するホールの環境によって、音が大きく変わるので、

毎回、試行錯誤しています」と話す勝浦さん。音へ

の飽くなき探求はこれからも続く。

※スプルース マツ科トウヒ属の常緑針葉樹。

石巻市河南町●

2

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O - g a - l e!

いま、宮城、岩手、福島の3県の中高生が来年8月、フランス・パリで、東日本大震災からの復興をアピールするため、準備を進めている。OECD(経済協力開発機構)などが企画した「OECD東北スクール」の取り組みで、生徒たちは、大手企業の関係者と交渉したり、地元の農水漁業関係者に協力を呼びかけたりと奔走している。生徒たちに、共通するのは「地元への愛着」。今号では、スクールに参加する県内3つの被災地の活動に密着し、生徒たちの想いに迫る。

S p e c i a l

I s s u e

被災地の中高生が世界に復興をアピール

「OECD東北スクール」レセプション会場で円陣を組んで声を出す参加者▲イベントに使う凧を披露する気仙沼チームの生徒▶

イベントの企画について熱く議論する生徒▼

 「2014年、東北の魅力を世界に

発信するイベントをパリで開きます。

被災者も、そうでない人も一丸となっ

て復興を目指していきたい」

 8月上旬、国立オリンピック記念

青少年総合センター(東京・代々木)

で行われた「OECD東北スクール」

の取組発表会。福島県いわき市から

参加した佐藤陸くん(磐城高校2年)

は、大勢の企業や政府関係者を前に、

来年8月のイベントに向けた意気込

みを力強く語った。

パリで被災地の復興メッセージ

を発信

 OECD東北スクールは、地域や

日本を担う人材を育成しようと、O

ECD(経済協力開発機構)や福島

大学などが企画。東日本大震災によ

る大津波や福島第一原子力発電所の

事故で、甚大な被害を受けた福島、

宮城、岩手3県の9地域に住む中高

生約100人が、フランス・パリの

シャン・ド・マルス公園で国際的な

復興イベントを開くため、昨年3月

から準備を進めている。

 スクールではこれまで、気仙沼市

や福島県いわき市の2カ所で、計3

回の全体会議を開催。パリのイベン

トで東北の祭りや名産品などを紹介

するために、その方策を話し合って

きた。

コンセプトは「死と再生」

 「復興とは何か」「東北や日本の課

題は何か」などをワークショップ形

式で議論することから、スクールは

スタート。ジャーナリストの池上彰

さんらが指導役となり、夜遅くまで

話し合う中で、行動計画をまとめ上

げ、それぞれの地域に帰って、内容

に磨きをかけてきた。

 ことし5月には、16人の生徒がフ

ランスに渡り、OECD本部で企業

や政府の関係者らに、企画案を報告。

理解や協力を得るなどして、イベン

ト開催に向け、着実に足場を固めて

きた。

 そうして迎えた東北スクールの「取

組発表会」では、イベントのコンセ

プトを「死と再生〜未来へとつなぐ

〜」にした背景や、公園で各地域の

津波の高さを再現した、巨大なバルー

ンを飛ばしたり、写真パネルを展示

したりして、被災地のメッセージを

発信することを報告。国の重要無形

文化財「相馬野馬追」を紹介する企

▲シャン・ド・マルス公園を視察する生徒。パリ市副市長から公園の利用や交通の規制など協力の約束を取り付けた(福島大学提供)

▲生徒と意見を交わす吉川国連大使

 東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで8月6日に行われた「OECD東北スクール」取組発表会には皇太子ご夫妻が出席された。 発表後の懇談で、皇太子ご夫妻は「良い発表でした」と生徒に声をかけられた。発表者のひとり、気仙沼市出身の小山結有さん(仙台育英高1年)は「パリで気仙沼の特産品をアピールしたい」と話すと、雅子さまは、「ホヤを食べたことあります。おいしいですね」と励まされたという。 「両殿下から気仙沼やホヤについて聞かれ、うれしかった。(お言葉を励みに)今後も活動を頑張りたい」と小山さんは話した。 皇太子ご夫妻の出席は、OECD東北スクールに参加している生徒のひとりが「世界の人々に活動を知ってもらうために、ぜひお越しいただきたい」と、雅子さまにあてた手紙がきっかけで実現した。

皇太子ご夫妻、被災地生徒を激励「良い発表でした」

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いま、宮城、岩手、福島の3県の中高生が来年8月、フランス・パリで、東日本大震災からの復興をアピールするため、準備を進めている。OECD(経済協力開発機構)などが企画した「OECD東北スクール」の取り組みで、生徒たちは、大手企業の関係者と交渉したり、地元の農水漁業関係者に協力を呼びかけたりと奔走している。生徒たちに、共通するのは「地元への愛着」。今号では、スクールに参加する県内3つの被災地の活動に密着し、生徒たちの想いに迫る。

S p e c i a l

I s s u e

被災地の中高生が世界に復興をアピール

「OECD東北スクール」レセプション会場で円陣を組んで声を出す参加者▲イベントに使う凧を披露する気仙沼チームの生徒▶

イベントの企画について熱く議論する生徒▼

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O - g a - l e!

えるのではなく、なぜこういうこと

が起きてしまったのか(を考えてほ

しい)。私たちが変わるしかないとい

うことを伝えたかった」と、震災直

後に、津波ですべてが流された街の

姿をカメラで撮り続けた理由を説明。

 「展示物に『被災地で拾った自転車』

と展示をしても、被災していない人

には何も伝わらない。人は『無』か

らは何も想像できないから。『他人事』

と思ってほしくないのなら、ストー

リーの中に引きこませる、最大限の

努力をしなければならない」と、2

人にアドバイスをした。

アートで「ふるさと」表現

 2人はこれまで、女川町内の商店

街で、復興支援をするNPO法人の

関係者らと地元の人たちが集う場と

して「キャンドルイベント」やボラ

ンティア活動などをしてきた。

 パリのイベントでは、そうした経

験や山内さんのアドバイスを生かし

て、「ふるさと」をテーマにしたアー

ト作品を披露する予定だ。

 地元の人らが思い描く「ふるさと」

についてのイメージを聞いて、写真

や音楽などを使って表現。ストーリー

を組み立てながら、展示することを

考えている。

今後に意欲

 8月上旬の「OECD東北スクー

ル」。木村さんは、大勢の人の前で、

女川チームが企画しているイベント

案とともに、「二十歳になったときに、

同じような企画を実施したいと思っ

ています。(こうした活動を続けるこ

とで)周囲の人に少しでも力を与え

ることができたら」と、語りかけた。

 それまで大勢の前で発表すること

がほとんどなかった木村さんが、堂々

と発表をする姿に、引率したNPO

法人「カタリバ」の担当者は、目を

細めた。

 一方で、山本さんにとっては、生ま

れて初めての単身上京。「自分

で行動することの楽しさを感

じることができました。これ

からは、仙台などのアート展

にいっぱい出掛けて、表現を

勉強していきたい」と、今後

の活動にやる気をみなぎらせ

ていた。2人はこの夏のスクー

ルへの参加をきっかけに、新

たな「復興」へのステージを歩

み出したのかもしれない。

 OECD東北スクールの「取組発

表会」で、企業や政府関係者らを前に、

発表に挑んだ小山結有さんは、気仙

沼市(旧本吉町)出身。震災当時は

中学生で、大きな揺れが起きた後、

すぐに避難所に向かったため、街を

襲った津波は見ていない。家族もみ

んな無事だった。

 「ごめんなさい」。小山さんは震災

直後、避難所生活をする中で、同級

生や付き合いのあった人たちが、悲

しい表情を浮かべている姿を見て、

そう思ったのだという。

 「わたしにも何か役に立てることは

ないか」。考えをめぐらせたものの、

どう行動に移してよいか分からず、

悩み続けていた矢先に、「OECD東

北スクールに参加しないか」と、津

谷中の教諭から声を掛けられた小山

さん。

2凧に込める「ふるさとへの想い」

チーム気仙沼・小山結有さん

7

O - g a - l e!

画なども説明し、地元の企業や農協、

漁協などの協力を取り付けながら、

東北の魅力や復興の様子をアピール

する意向も示した。

企業と交渉 好感触

 今回のスクールは、生徒にとって、

企業関係者らと直接、交渉をして、

資金援助を取り付ける「ラストチャ

ンス」でもあった。

 大槌中(岩手県大槌町)3年の中

井李乃葵さんは発表会で、「イベント

を成功させるために本気で勝負をし

ています。みなさんもわたしたちの

『環』に入ってください」と企業関係

者にPR。

 レセプションで、生徒たちは、ソ

フトバンクモバイル(東京都)から

提供を受けたタブレット端末を使っ

て、「プロジェクターを支援してほし

い」「もっと大きなイベントにしたい

ので、協力してほしい」などと、粘

り強く企業関係者にプレゼンテー

ションし、協力を呼びかけた。

見違えるように成長

今後に期待

 東北スクールは、イベントまでの

活動を通じて、子どもたちに、交渉

力や建設的批判思考力、国際性など

を身に付けてもらうため、イベント

の企画を練り上げる段階から、主体

性を重視している。教育関係者らは、

「今後の日本の教育改革につながる取

り組み」として、その動向に注目する。

 ことし5月にパリで生徒の発表に

耳を傾け、8月の東北スクールにも

足を運んだOECD教育局のアンド

レアス・シュライヒャー次長は、生

徒たちによる取り組みを高く評価し

た上で、「みなさんの成果を共有して

いきたい」と話す。

 2012年3月の設立当初から、

活動を見守ってきた国連大使(前O

ECD日本政府代表部大使)の吉川

元偉さんは「この1年半で見違える

ように成長している。自信をもって、

(来年)パリで発信してほしい」と期

待を寄せている。

▼レセプション会場で関係者に支援を要請する生徒

佐藤陸くん(福島県磐城高2年)。全体リーダーとして生徒を引っ張る▶

 7月下旬、女川チームの木村朱里

さんと山本瑞帆さんは、気仙沼市の

リアス・アーク美術館にいた。津波

で壊れた建物のオブジェや、がれき

に埋もれた街が写った写真を神妙な

表情で見つめ、2人は展示室を後に

した。

私たちが変わるしかない

 2人は町内の同じ中学校に通って

いた。震災当日、高台にある学校で、

大津波が街を襲う様子を見て、絶望

感を抱いた。そうしたつらい記憶が、

リアス・アーク美術館の写真やアー

ト作品を見て、フラッシュバックし

たのだという。

 被災者がアートを通して、多くの

人にメッセージを伝えるためには、

どうしたらいいのか—

。2人は、同

美術館の山内宏泰さんに写真を撮っ

た意図などについて、話を聞くため、

この日、美術館を訪れたのだった。

 自身も被災し、家が流された山内

さんは「人々の悲しみや苦しみを伝

1自分の成長肌で感じる

女川向学館チーム・木村朱里さん山本瑞帆さん

▲東京でチームの取り組みを報告する木村さん

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O - g a - l e!

スクールの目的と特徴について教えて

ください。

 「OECD東北スクール」は、被災地復

興の担い手を育成する教育復興事業とし

て始まりました。学校と地域の両方にま

たがる活動を、2年半の長期間、行うこ

とが特徴です。

 パリのイベントを実現するために、子ど

もが主体性をもって大人と一緒に課題を解

決していきます。震災直後から、被災地

の子どもや大人は緊急時の課題に対して、柔軟に対応する必要がありま

した。スクールでは、気づいた人やできる人が主体的に行動することを大

切にしています。

スクールに参加する生徒に期待することについてお聞かせください。

 東北地方が抱えている課題は、震災復興だけではありません。

 震災前から、経済的、歴史的なハンディキャップを持っているとも言えます。

東北地方を国際化し、世界に発信する̶

。そうした動きをけん引する人

材をつくっていきたいと考えています。

 生徒にはリーダーシップ、企画力、実行力を身につけ、東北地方全体の

未来を担う人材として育ってほしいと思っています。来年8月に開かれるイ

ベントが成功するよう生徒には残り1年精いっぱい頑張ってほしいと願ってい

ます。 INTERVIEW

OECD東北スクール運営事務局

統括責任者/

福島大学教授

三浦浩喜さん

被災地の中高生が来年

パリで世界に向けて

復興をアピールするため、

1年半前から取り組みが始まった

「OECD東北スクール」。

来年8月の

フランス・パリのイベントに向け、

参加する生徒が準備を進めている。

スクールのねらい、

生徒に期待するものなどについて、

統括責任者の

三浦浩喜さんに話を聞いた。

■プロフィル<みうら ひろき> 福島大学人間発達文化学類教授。福島県生まれ。同大教育学部助教授、人間発達文化学類准教授などを経て現職に至る。専門は美術教育学と文化活動。

◀小山康平くん。OECD東北スクールでチームの取り組みを発表する(上) 沖縄県石垣島で鹿子躍を披露した生徒(下、谷山知宏氏提供)

戸倉中でも授業で教わるようになり、

文化祭などの学校行事だけでなく、

伝統芸能発表会などの地域のイベン

トで披露。大人たちに混じって踊る

中で、戸倉中の生徒は、鹿子躍の継

承者として、欠かすことができない

存在となった。

まちが壊滅

「復興の旗印 元気にしたい」

 南三陸町は震災の大津波で、壊滅

的な被害を受けた。海に面した戸倉

中も1階の天井付近まで津波が押し

寄せた。地区の稽古場も流され、太

鼓や法はっぴ被は流失した。

 地区の住民が、がれきの中から12個

の太鼓のうち、11個を拾い集めた。衣

装や鹿頭も徐々に集まった。修復を終

え、5月に保存会メンバーは子どもた

ちとともに鹿子躍を復活させた。

 多くの住民が避難した登米市や南

三陸町の復興イベントで戸倉中の生

徒は踊った。全国各地から招待され、

沖縄県石垣島や、かつて阪神大震災

のあった神戸市でも披露。多くの人

を元気づけた。 

鹿子躍と漁業の復活で地域の

再生を表現

 戸倉チームはパリのイベントでも、

この踊りの実演を計画している。

 メンバーが鹿子躍を学んだ戸倉中

は来年度、志津川中に統合される。

地域の「シンボル」でもある鹿子躍

の灯を消さないためにも、メンバー

は、パリのイベントで、披露しなけ

ればと考えている。

 「震災後、鹿子躍を披露

する中で、(元気になる人

たちの表情を見て)その

良さや、踊ることの楽し

みを知りました。パリで

は、最高のものをみせた

いと思っています」

 地域の想いを背負った

戸倉チームは来年8月、

パリの舞台で、魅力を伝

える。

9

 「これなら、自分にもできるかもし

れない」と、OECD東北スクール

への参加を決めた。

故郷を離れ

「ふるさと」への想いより強く

 津谷中を卒業し、ことし4月に仙

台市内の私立高校に進学した小山さ

んは、100㌔以上も気仙沼から離

れた地で、寮生活を始めた。すると、

ふるさとへの想いが、強くこみ上げ

るようになったのだという。

 温かな地域の人、小さい頃から食

べ親しんだ地元の魚―。日常の生活

の中に魅力がたくさんあることを、

あらためて感じるようになったとい

う小山さん。

 「風景というか、空気が好きなんで

す。家の近くの小道とか、どこにで

もあるような風景でも、歩いている

と幸せな気持ちになれるんです」

 いま小山さんは月に数回、来年8

月に行われるパリのイベント準備で、

気仙沼市に帰省し、チームのメンバー

と話し合いに臨んでいる。

 週末を利用して、電車やバスなど

で3時間近くの道のりを往復するの

は大変だが、「地元のために役に立ち

たい」との思いがこれまで以上に強

くなったことから、苦には感じてい

ないのだという。

連凧でコラボ

バルーンで飛ばす

 気仙沼チームでは、これまで、イ

ベントに向けて、さまざまな企画案

が話し合われてきた。被災3県のチー

ムが一堂に集まる日まで、期日が迫

り、企画が絞り込めない中で、リー

ダーの小山さんは、チームをまとめ

あげた。

 「復興のメッセージを書いて連凧

を上げます」。7月下旬、仙台市内

で行われたリーダー会議。小山さん

は、バルーンと「書」の展示を計画

している福島県いわき市と二本松市

のチームとコラボレーションをする

ため、交渉に臨んだ。

 「凧に書く文字を書いてもらえませ

んか」「バルーンに凧をつけてあげて

みたいのですが」―。交渉の末、福

島県いわき市のチームのバルーンに

取りつけて、凧を飛ばすアイデアが

まとまった。

 その後、二本松チームのリーダー

と、フェイスブックなどを使って話

し合いを進め、8月のスクールの前

に協力をとりつけた。

 小山さんは言う。「積極的に動いた

ことで、さまざまな分野の人と話が

できました。人とのつながりができ

ると、いろんな場面で人が助けてく

れことが分かりました。大好きな気

仙沼、東北の魅力をイベントで発信

するため、たくさんのことを吸収し

て、形にしていきたい」

▼連凧をつくる気仙沼チームの生徒

小山結有さん(右)。リーダー会議で福島県いわき市や二本松市 のリーダーと企画のコラボを交渉する▶

 戸倉チームの小山康平くんが生ま

れ育った南三陸町戸倉地区では代々、

伝統芸能の「鹿ししおどり

子躍」が受け継がれ

てきた。鹿ししがしら頭をかぶった8人の踊り

手が供養を願い、太鼓を打ち鳴らし

て踊る郷土芸能で、約300年以上

の歴史があるとされる。

 鹿子躍は、供養碑が発見されたこ

とを契機に、1991年、戸倉・水

戸辺地区の保存会が復活させ、翌年

に戸倉小で指導が始まった。やがて

3地域の伝統つなぎとめたい

南三陸戸倉チーム・小山康平くん

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キャリア教育

REPORT

特別編 子どもたちに働くことについて考えても

らおうと、仙台市教委は7月30、31の両日、

職業体験イベント「楽学プロジェクト」を

青葉区の木町通小で開いた。

 イベントはことしで10年目。2日間で市

内の小学5年生から中学生まで約1000

人が参加。児童・生徒は、40コースに分かれ、

消防士やパティシエ、幼稚園の教諭、弁護

士など、その道の「プロ」から直接、話を

聞いたり、作業を体験したりした。

 そのうち、「自動車の仕事」のコースでは、

約20人の児童が、宮城トヨタ自動車の担当

者から、仕事のやりがいや、就職したきっ

かけなどについて、詳しく話を聞いた後、

玄関に用意されたハイブリッド自動車やR

V車に試乗。「この車はいくらなんですか」

「タイヤハウスのパーツは、なぜ付いている

の」などと、目を輝かせながら、担当者に

質問を投げかけていた。

 「消防士の仕事」では、仙台市青葉消防

署の署員が、仕事について説明した後、「応

用力は基礎、基本から、培われる。いま

勉強していること、頑張っていることを精

いっぱいやってほしい」と参加者にエール

を送った。

 自動車の仕事に参加した児童は、「車に関

する知識を深めることができたので参加し

てよかった」、消防の仕事に参加した児童は、

「将来なりたい仕事に就くためには、いろん

なことを勉強しておいた方が、可能性が広

がるということが分かった」と感想を話し

ていた。

 イベントでは、最終日の午後に料理研究

家の相田幸二さんによる特別講座「料理研

究家の仕事」も行われ、大勢の児童、生徒

が耳を傾けていた。

小中学生にプロが仕事を指南

楽学プロジェクト

 仙台市教委

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キャリア教育

REPORT

特別編

県内の児童約130人が熱く意見を交わしたフォーラム

 県教委の主催で、小学生を対象にいじめ

問題のフォーラムを開くのは今回が初めて。

児童は28のグループに分かれ、進行役の大

学生のもとで、「いじめのきっかけ」や「被

害者の心境」、「いじめを見ている周囲の児

童の気持ち」などについて、議論を重ねた。

 この日の午前中のワークショップで、児

童は「いじめられている子を見ると、自分

もいつか、いじめられるかもしれないと怖

くなる」などと、意見を出し合いながら、

付せん紙に問題点を書き込んで、グループ

ごとに、いじめの現状や問題点を整理。

 午後には「いじめ無くせば、友達∞(無

限大)」「差しのべよう希望の手」などのス

ローガンを決めて、ポスターで発表をした。

 参加した利府小6年の児童は「いじめに

ついて、どうやって食い止めるかなどを深

く知ることができた。学校でも、フォーラ

ムで学んだことを生かしていきたい」と話

していた。

 県教委は昨年、中学生を対象にした同様

のフォーラムを開いている。

 ソフトウェア開発の「日立ソリューショ

ンズ東日本」(仙台市青葉区)で7月下旬か

ら行われた「弟子入りインターンシップ」。

8月2日に、県工業高(同)の生徒7人が

社員を前に、2週間の取り組みの成果を発

表した。

 生徒はこの日、同社社員の指導で、手掛

けた電子計算機のプログラムを披露=写真

=。デモンストレーションを交えたプレゼ

ンに、社員からは「大きな声が出ていて素

晴らしいプレゼンだった」、「わかりやすい

ソースコードでした」などと、好評だった。

 発表会で「将来コンピューター関係の仕

事につきたい」と話した情報技術科2年の

遊佐翔太くんは、「会社のみなさんがとても

優しく、いい雰囲気で仕事をしていたのが

印象的だった。自分も社会人になったら見

習いたい」と話していた。

 弟子入りインターンシップは、クラフト

マン21事業の一つで、同社の受け入れは、

今年度で

5年目に

なる。

県内の小学生が「いじめ根絶」のために意見を交わす

みやぎ小学生いじめを考えるフォーラム

「経験将来に生かしたい」

県工高インターンシップ

成果発表会

 県内の小学校5、6年生の児童がいじめについて議論する「みやぎ小学

生いじめ問題を考えるフォーラム」が8月7日、県庁であり、県内34市

町村の代表約130人が、いじめをなくすための方法などについて、意

見を交わした。

いじめ根絶のためのスローガンを披露する児童

フォーラムで児童はスローガンを決め、グループのメンバーで協力し合ってポスターを完成させた

ワークショップで児童は、「ズタズタ」など、いじめを連想するキーワードを付せん紙に張り付け、課題を共有した

いじめの現状や問題点を話し合う児童(中央、左)と進行役の大学生(右)

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O - g a - l e!

中小企業の挑戦

3Dプリンタを活用した砂型鋳造技術

宮城には、優れた技術を持つ中小企業がたくさんある。世界トップシェアの製品を開発する企業や、先端技術を支える企業などが、さまざまな分野で活躍している。このコーナでは、そんな企業を紹介する。

 3D(3次元)の設計データをもとに立体的な構造物を造形する「3Dプリンタ」を業界で先駆けて導入した鋳造部品メーカー。圧倒的な国内稼働シェアと短納期を武器に、国内外の自動車メーカーと取引する。鋳物技術の担い手を育てるため宮城工場では、人材育成に力を入れる。

■会社基本情報社   名 : 株式会社コイワイ資 本 金 : 2000万円従 業 員 : 72人(宮城工場26人)所 在 地 : 神奈川県小田原市羽根尾(本社) 柴田郡大河原町金ケ瀬(宮城工場)W E B : http://www.tc-koiwai.co.jp※2013年8月現在

■主な事業 試作・量産鋳物等の製造販売・RP砂型積層工法による各種鋳物の試作・金型鋳造による量産品の製造・鋳造品をはじめとした各種機械加工・鋳造用金型・樹脂型製作・3D EBM 金属粉末積層工法による航空宇宙関連

部品・医療用インプラント品3次元CADによるモデリングCT等による非破壊検査の受託撮影

コイワイ宮城工場(大河原町)❶コイワイ宮城工場の若手社員たち(中央が小岩井社長。右が福島工場長)❷鋳造用砂型を積層する3Dプリンタ❸3Dプリンタで製作した部品の砂型。複雑な構造まで造形される❹〜❻部品生産の様子(宮城工場)

❷❸

❻ ❺

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O - g a - l e!

中小企業の挑戦

3Dプリンタを活用した砂型鋳造技術

宮城には、優れた技術を持つ中小企業がたくさんある。世界トップシェアの製品を開発する企業や、先端技術を支える企業などが、さまざまな分野で活躍している。このコーナでは、そんな企業を紹介する。

 3D(3次元)の設計データをもとに立体的な構造物を造形する「3Dプリンタ」を業界で先駆けて導入した鋳造部品メーカー。圧倒的な国内稼働シェアと短納期を武器に、国内外の自動車メーカーと取引する。鋳物技術の担い手を育てるため宮城工場では、人材育成に力を入れる。

■会社基本情報社   名 : 株式会社コイワイ資 本 金 : 2000万円従 業 員 : 72人(宮城工場26人)所 在 地 : 神奈川県小田原市羽根尾(本社) 柴田郡大河原町金ケ瀬(宮城工場)W E B : http://www.tc-koiwai.co.jp※2013年8月現在

■主な事業 試作・量産鋳物等の製造販売・RP砂型積層工法による各種鋳物の試作・金型鋳造による量産品の製造・鋳造品をはじめとした各種機械加工・鋳造用金型・樹脂型製作・3D EBM 金属粉末積層工法による航空宇宙関連

部品・医療用インプラント品3次元CADによるモデリングCT等による非破壊検査の受託撮影

コイワイ宮城工場(大河原町)

 国内で急速に広まりを見せたコンピューターによる

3次元設計(3DCAD)の波は1990年代、鋳物

業界にも訪れた。

 3DCAD技術の進歩を目の当たりにして、「業界

の将来に危機感を持った」社長の小岩井豊己は98年、

3DCADによるものづくりに着手。2007年には、

本社工場(神奈川県小田原市)で3Dプリンタの一種

「レーザー積層造形装置」を使った砂型の製造を開始

した。

 仕組みはこうだ。特殊な樹脂を混ぜた砂にレーザー

光線を当てると、その部分の樹脂が溶け、砂と一緒に

再び固まる。その上に0・24ミリメートルの砂が敷

き詰められ、再びレーザー光線が照射される―。こ

れを繰り返しながら、立体的な砂型をつくっていく。

 これまでは、型を作り直す必要があった砂型鋳造

も設計データさえあれば、同じ砂型を繰り返し、つ

くることができるようになった。従来の工法なら1

カ月かかる4気筒の自動車エンジン用のシリンダーブ

ロック試作品も3Dプリンタなら最短で3日で完成す

るという。

 「より複雑な形状の部品も量産できる」。07年以降

も新たな3Dプリンタの導入を続け、いまでは3D積

層砂型鋳造国内トップ企業としてシェア75%を占め

るようになった。

 国内のメーカーの依頼を受け、部品の試作や量産

部品の注文が相次ぐようになった。アメリカやインド

などの自動車メーカーとの取引も始まった。

 現在は、東北大と連携し、粉末の金属を積層して

鋳型を用いないで部品をつくる技術も実用化に向け

開発を進めている。

担い手育てる拠点

宮城県へ

 新たな技術の導入とともに、鋳造技術の担い手の

育成にも力を注ぐ。

 1973年の創業以来、鋳造業を営んできた会社

では、熟練の技術者が脈々と鋳造のノウハウを蓄積し

てきた。

 しかし、そうした職人は、「若い人材の採用がまま

ならなかった」ことから、減少。取引先の関係者か

ら「宮城県には、地元就職志向の有能な若者がたく

さんいる」と聞き、2004年、大河原町に宮城工

場を設置し、地元の高卒者を継続的に採用するよう

になった。

 若手社員はいま、水上バイクや医療機器の部品の

素材づくりを通じて、鋳造技術を身に付けている。

 間もなく宮城工場でも国内最大級の砂型用3Dプ

リンタが稼働するが、「従来の製造技術の重要性は、

どんなに時代が進んでも、揺らぐことがない」と考

える小岩井。「両方の技術を磨くことで、将来の鋳造

業界をけん引する人材になってほしい」と宮城工場の

社員に期待を寄せている。

(敬称略) 

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O - g a - l e!

平井孝浩 さん(51) 平孝酒造 社長

 6月中旬、東京・吉祥寺のそば屋

に平井はいた。

 「日高見を楽しむ会」に集まった

30人ほどの若いそば屋の店主を前

に、平井は、持参した10種類の日高

見の中から1つを取り出し、解説を

始めた。

 この「うすにごり」は、宮城県の

冬をイメージしたお酒です―。

 震災から2年が経ち、平井は震災

時に全国から届いた励ましの手紙

や、支援に対して、お礼の気持ちを

伝えるため全国を飛び回っていた。

 「本当にたくさんの人たちに応援

してもらったのを、行く先々で感じ

ている。それに応えていくのは酒質

の向上しかない」

 新たな酒造りへの意欲をみなぎら

せる。

反発から、

「俺がやる」

 造り酒屋の5代目として生を受け

た平井。父親には小さい頃から「家

を継げ」と言われ続け、反発するよ

うに「絶対嫌だ」と返してきた。

 大学を卒業すると、家を飛び出す

ように東京の卸問屋に就職。酒や食

品を仕入れて売る仕事を経験した。

 サラリーマンとしての仕事に面白

みを感じながらも、「俺がメーカー

だったらこういう商品をつくって

(問屋に)もっていくのに」と、も

どかしさを感じていた。

 いつの間にか、メーカーである家

業のことを気にかけるようになっ

た。

 東京に来て2年が経つころ、突然

父親が東京にやってくると、「お前

が帰ってこないなら店を辞める」と

言い渡された。1980年代半ばか

ら、ビールが台頭。ワインや焼酎の

人気が広がっていた。

 流通網が整い、ディスカウントス

トアが出現。地方の造り酒屋は疲弊

していた。

 「自分の好きにやらせてくれるな

ら、俺がやる」

 明確な再建のビジョンや造りたい

酒の構想はないが、やる気と根拠の

ない自信だけはあった。

どん底の中から

見つけた「日高見」

 家に戻って待っていたのは、想像

以上に苦しい経営状況だった。酒造

りの技術を持ち合わせていない平井

にできるのは、在庫となっていた酒

をトラックに積み込んで、県内各地

の酒販店へ売り込みに出かけること

だけだった。

 必死に頭を下げた。倉庫の片づけ

の手伝いをして、ようやく1ケース

を買ってもらうこともあった。値下

げを要求されることもしばしばだっ

た。既存の酒では買いたたかれてし

まう。「自分で考えた酒で勝負した

い」という気持ちが芽生えた。

 その頃、全国的に地酒ブームが巻

き起こっていた。吟醸酒の人気が高

まっていたことを受け、「手に届く

値段の吟醸酒をつくり、たくさん飲

んでもらうことでまずはブランドを

構築したい」と、杜氏を説得して吟

醸酒を造った。地元のゆかりのお酒

となるよう、かつて父親が命名し廃

版となっていたブランド「日高見」

の名を付けた。

 1990年にタンク1本で始めた

日高見の生産は、次第に人気を集め、

売り上げが、徐々に伸びていった。

 経営が安定すると、父親は社長の

座を退いた。「日高見は俺がつくっ

た酒だ」。平井が後を継ぐとき、そ

う口にした父親の表情は、誇らしげ

だった。

 平井は社長になると、酒造りの知

識をあらためて勉強するため、広島

の醸造試験場に通い知識を深めた。

そこで得た知識をもとに、杜氏と試

行錯誤を繰り返し、日高見の品質は

向上。2007年には、全国新酒鑑

評会で金賞を受賞し、全国に知られ

るブランドへと成長した。

震災が生んだ

奇跡の酒に教えられて

 2011年3月、大地震が石巻を

襲った。奇跡的に残ったタンクから

生み出された酒を「震災復興酒 希

望の光」と名付けて売り出すと、全

国の酒販店や料理屋から注文が舞い

込んだ。同時に、注文先から多くの

感謝や励ましの手紙が届いた。

 「それまで、技術のしのぎ合いで

良い酒を作ろうとやってきたが、日

本酒は、人に感動を与えることがで

きることを教えられた。もっと多く

の人に感動を与えたい。そのために

良いお酒を造る」

 平井はすぐさま壊れた設備を立て

直し、秋には酒造りを開始。新しい

設備で作り上げた酒で再び金賞を受

賞した。さらに翌年、今年と受賞。

7年連続の受賞と全国的な快挙を成

し遂げた。

(敬称略) 

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O - g a - l e!

平井孝浩 さん(51) 平孝酒造 社長

全国規模の鑑評会で、7年連続金賞の快挙を手にした酒蔵が石巻市内にある。震災後も愛好家をうならせる地酒「日高見」。ブランドを世に広げた平井孝浩社長がいま、目指しているのは、「人を感動させる酒造り」だ。

<ひらい・たかひろ> 1962年、石巻市生まれ。1985年に東北学院大経済学部を卒業し、国分に入社。2年後、経営の危機にあった平孝商店(現平孝酒造)に専務として戻り、2003年から社長に就任。現在に至る。

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O - g a - l e!

イスを受けたりしながら、お客さんの

話に、耳を傾けることに心を配った。

 次第に、共通の話題を見つけるコツ

をつかんだ。会話が広がり接客がうま

くいくようになった。就職前のアルバ

イトで学んだ経験も、役立った。商品

の知識は、自分の手で触わって、柔ら

かさや形を頭に叩き込んだ。

 そうした努力が実を結び、靴が順調

に販売できるようになった。

 いまは月に100足以上の靴を売る

が、まだ“一人前”とは思っていない。

足の形を見ただけで、1500種類あ

る売場の商品のなかからピタリと合う

靴を選ぶことができる先輩がいる。

 「自分はまだ、『こういう感じかな』

という靴を何足か履いてもらって確か

めている。先輩のようになりたい」

 会社からの推薦があり、靴と足の総

合的な知識を兼ね備えたシューカウン

セラーの資格を取得した。足の形や歩

き方、靴底の減り方などを観察し、巻

き爪や外がい

反ばん

母ぼ

趾し

にならない靴選びのア

ドバイスができるようになった。

 「デザインだけでなく、履き心地な

どの健康面も重視して、そのお客さま

に『合う靴』を提供できるよう心がけ

ています」

 売場では小田嶋さんを含め3人の

シューカウンセラーを頼りに靴を買い

求めるお客さんもいるという。

 実績が認められ、売場のレイアウト

を任されるようになり、今年の春から

は、展示会などで靴を仕入れる「アシ

スタントバイヤー」を担当するように

なった。

 「販売だけでなく、もっと売場全体

の仕事も、できるようになりたい」

 新たな仕事とともに、責任も増えた

小田嶋さん。決意を胸に、きょうも笑

顔で売場に立つ。

❶シューカウンセラーの知識を生かし接客をする小田嶋さん❷バックヤードで自分の担当ブランドの商品をチェック❸売場の責任者と仕入れについての打合せ。接客以外の仕事もこなす❹笑顔が小田嶋さんのトレードマーク

百貨店販売員ある日の一日

小田嶋さん

百貨店の販売員になるためには? 就職するために必要な資格は特にないが、就職後に、配属先の必要性に応じて取る人が多い。会社によっては、資格取得のための研修や通信教育を受けるための支援をするところもある。 最近の傾向について、藤崎営業企画部の大沼信幸さんは、「いまは知識が豊富なお客様が多い。より納得して商品を購入してもらうために高い専門性(資格など)を身に付ける必要はある」と話す。 また、基本的なこととして、人とのコミュニケーションがとれるかが重視される。

販売員をめざす皆さんへ 「私は人と話すのは苦手でしたが、コミュニケーションをとることは好きでした。もの(商品)が好きという気持ちだけで目指すと、接客でつまずくこともあると思います。『人と接する仕事をやってみたい』と思う人が、この仕事に向いていると思います」(小田嶋さん)

起床出社。ダンボールで入荷した商品をバックヤードへと運ぶ。力仕事。掃除、レジの準備朝礼開店。婦人靴売場で接客遅番の人が出勤したのを確認し、入荷した商品の品出し。一人ひとり担当ブランドがある社員食堂で持参した弁当を食べるバイヤーと翌週の売場レイアウトの変更についての打合せ休憩売場に戻り再び接客退社。ファッションビルに立ち寄り買い物ついでに靴売場を見る。本屋でお客さんが読むような雑誌を立ち読みして情報収集帰宅。録画していたバラエティやファンション関連の番組を見ながら夕食。アマゾンで靴関連の書籍を購入就寝

6:309:15

9:4510:0010:45

12:2013:10

15:4516:1018:10

20:00

23:30

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❶ 百貨店

販売員

しごと図鑑

藤崎(仙台市青葉区)

小田嶋

静さん(27歳)

未来をつかもう!

しごと図鑑❼

 仙台市中心部の百貨店「藤崎」本館

1階の婦人靴売場。「この靴のヒール

の高さは何センチかしら」と、お客さ

んから質問を受けた販売員の小田嶋静

さんは、自分の左手小指をヒールの部

分に当てながら、「4センチなのでちょ

うどいいですね」と笑顔を見せた。

 先輩に教わった計測法はしっかりと

自分のものにしている。親しみやすい

笑顔は、安心感をもたらす。

 この日入社5年目の小田嶋さんが、

靴を売るのは、このお客さんで5足目

だった。「直接お客さまから『ありがと

う』と言っていただける仕事なので、

そのことがやりがいになっています」。

5回目の「ありがとう」の言葉をお客

さんからもらうと、笑顔で見送り、う

れしさを噛みしめながら、小田嶋さん

は売場へと戻っていった。

 小田嶋さんは大学生のころまで、社

会人になったら、服作りの仕事に就き

たいと考えていた。子どもの頃から、

和裁士の祖母が着物をつくる姿を見続

け、「着物や洋服を作りたい」と思っ

たからで、大学では、デザインなどを

学んだ。

 大学で学んだ知識を無駄にはしたく

ない―。その思いから、婦人服の売場

の販売員を目指すことを決め、いまの

会社に就職することができた。

 新入社員研修の一環で、1日だけ婦

人靴売場に立った。「服と違って靴は

足の形にあったものを選んで薦めるこ

とが求められる。その判断に加えて

ファッションの視点も入る。楽しい」。

すぐに配属希望を婦人靴に変え、希望

がかなって売場の担当になった。

 やる気と期待を胸に売場に立った

が、はじめは話すことが苦手で、不安

はあった。先輩の姿を見たり、アドバ

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 亘理町に住む小学生親子168人が7月下旬~8月中旬、東京スカイツリーを訪れ、展望台から眺望できる上空451メートルの景色を楽しんだ。 東武タワースカイツリーの企画。宮城、岩手、福島の被災地域の小学生の親子504人が招待され、東京スカイツリーやJALの機体工場を見学した。 8月7日に東京スカイツリーを訪れた亘理小6年の佐伯貫太君は、展望台からの風景に「とても高いところだけど平気。ビルがたくさん見えた」と話した。 企画はことしで2回目で、宮城県では、亘理町に住む小学生親子が招待された。

 工作を通じてハイブリッド自動車の仕組みを学ぶ「夏休み親子工作教室」が7月27、28の両日、大衡村のトヨタ東日本学園であり、県内の小学校5、6年の児童67人とその家族が、モーターで走る自動車の模型づくりに挑戦した。 トヨタ自動車東日本(大衡村)と宮城県技能振興コーナー(県職業能力開発協会内)と宮城県の主催で、次世代の人材育成が狙い。自動車が減速時にエネルギーを回収する「回生」と呼ばれる仕組みについて、自動車模型の制作を通して学んだ。

 児童は、トヨタ東日本の社員や学園の訓練生から、手ほどきを受けながら、同社が独自に手を加えた模型を作り、走行スイッチを切ると、豆電球が光る同社独自の仕組みに、福岡小(仙台市)4年の佐藤汰一君は、「スイッチなど本格的で作りがいがあった。モーターは発電機になるのがわかった」と話した。 会場に駆け付けた葛原徹副社長は、「地元の企業として地域の方に喜んでもらえることが何よりです。学園生も地域の方と触れ合うことで、地域の一員という意識が高まります」と述べた。

 自動車の車体構造などについて学ぶ実践研修が7月31日、村田高(村田町)であり、同高の生徒7人が分解と組み付けに挑戦した。 県内の高校生を対象に、ものづくり人材の育成に取り組む「みやぎクラフトマン21事業」の一環。生徒はトヨタ東日本から寄贈された「アクシオ」の部品を脱着。構造について、学んだ。 研修で生徒は、工具を使って、ボンネットやドアなどをはずし、再び組み付ける作業を花壇自動車大学校(仙台市青葉区)の整備士の指導で体験。同高の3年生上村優作くんは、「新しい車を分解するのは初めてで、難しかった」と感想を述べた。 クラフトマン21事業では本年度、工業高校など県内14校で、旋盤や溶接、プログラミングなど204テーマを行う方針。

被災地域児童の東京ツアー

東京スカイツリーを満喫

夏休み親子工作教室

ハイブリッド車の仕組みを学ぶ

クラフトマン21 村田高で実践研修

最新の車 組み付け体験

 科学の技術や理論を学ぶ「たのしいサイエンス・サマースクール」が8月6日から3日間、仙台市青葉区の東北大学創造工学センターであり、県内の中学生約50人が、「光とエレクトロニクス」をテーマに実験に取り組んだ。 東北大、宮城教育大、仙台高専の教員らで組織する企画委員会の主催。20回目となったことし、「光センサを用いたライントレーサー実験」などをテーマに、6つのグループ分かれて実験に挑んだ。 そのうち、太陽光パネルを使った実験では、LED電球を照らしてコンデンサに蓄電。モーターで、プロペラがどれくらい高く飛ぶかを競った=写真=。 円を大きくしたり、スイッチで並列の電流を直列に切り替えるタイミングを工夫したりしながら、生徒は楽しみながら、エネルギーの変換効率など、高度な知識について、理解を深めていた。

たのしいサイエンス・サマースクール

科学技術を体感

訓練生からの説明を受けながら組み立てた模型

展望台から眺めを楽しむ亘理小児童

TOPICSトピックスO - g a - l e!

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 亘理町に住む小学生親子168人が7月下旬~8月中旬、東京スカイツリーを訪れ、展望台から眺望できる上空451メートルの景色を楽しんだ。 東武タワースカイツリーの企画。宮城、岩手、福島の被災地域の小学生の親子504人が招待され、東京スカイツリーやJALの機体工場を見学した。 8月7日に東京スカイツリーを訪れた亘理小6年の佐伯貫太君は、展望台からの風景に「とても高いところだけど平気。ビルがたくさん見えた」と話した。 企画はことしで2回目で、宮城県では、亘理町に住む小学生親子が招待された。

 工作を通じてハイブリッド自動車の仕組みを学ぶ「夏休み親子工作教室」が7月27、28の両日、大衡村のトヨタ東日本学園であり、県内の小学校5、6年の児童67人とその家族が、モーターで走る自動車の模型づくりに挑戦した。 トヨタ自動車東日本(大衡村)と宮城県技能振興コーナー(県職業能力開発協会内)と宮城県の主催で、次世代の人材育成が狙い。自動車が減速時にエネルギーを回収する「回生」と呼ばれる仕組みについて、自動車模型の制作を通して学んだ。

 児童は、トヨタ東日本の社員や学園の訓練生から、手ほどきを受けながら、同社が独自に手を加えた模型を作り、走行スイッチを切ると、豆電球が光る同社独自の仕組みに、福岡小(仙台市)4年の佐藤汰一君は、「スイッチなど本格的で作りがいがあった。モーターは発電機になるのがわかった」と話した。 会場に駆け付けた葛原徹副社長は、「地元の企業として地域の方に喜んでもらえることが何よりです。学園生も地域の方と触れ合うことで、地域の一員という意識が高まります」と述べた。

 自動車の車体構造などについて学ぶ実践研修が7月31日、村田高(村田町)であり、同高の生徒7人が分解と組み付けに挑戦した。 県内の高校生を対象に、ものづくり人材の育成に取り組む「みやぎクラフトマン21事業」の一環。生徒はトヨタ東日本から寄贈された「アクシオ」の部品を脱着。構造について、学んだ。 研修で生徒は、工具を使って、ボンネットやドアなどをはずし、再び組み付ける作業を花壇自動車大学校(仙台市青葉区)の整備士の指導で体験。同高の3年生上村優作くんは、「新しい車を分解するのは初めてで、難しかった」と感想を述べた。 クラフトマン21事業では本年度、工業高校など県内14校で、旋盤や溶接、プログラミングなど204テーマを行う方針。

被災地域児童の東京ツアー

東京スカイツリーを満喫

夏休み親子工作教室

ハイブリッド車の仕組みを学ぶ

クラフトマン21 村田高で実践研修

最新の車 組み付け体験

 科学の技術や理論を学ぶ「たのしいサイエンス・サマースクール」が8月6日から3日間、仙台市青葉区の東北大学創造工学センターであり、県内の中学生約50人が、「光とエレクトロニクス」をテーマに実験に取り組んだ。 東北大、宮城教育大、仙台高専の教員らで組織する企画委員会の主催。20回目となったことし、「光センサを用いたライントレーサー実験」などをテーマに、6つのグループ分かれて実験に挑んだ。 そのうち、太陽光パネルを使った実験では、LED電球を照らしてコンデンサに蓄電。モーターで、プロペラがどれくらい高く飛ぶかを競った=写真=。 円を大きくしたり、スイッチで並列の電流を直列に切り替えるタイミングを工夫したりしながら、生徒は楽しみながら、エネルギーの変換効率など、高度な知識について、理解を深めていた。

たのしいサイエンス・サマースクール

科学技術を体感

訓練生からの説明を受けながら組み立てた模型

展望台から眺めを楽しむ亘理小児童

TOPICSトピックスO - g a - l e! o-ga-le! NEWS

 若者がスマートフォン(高性能携

帯電話=スマホ)のアプリケーショ

ン開発を通して、プログラミングの

技術をみがく「石巻ハッカソン」が

7月26日から3日間、石巻工高で行

われた。

 「石巻ハッカソン」は、石巻の若者

がソフトウェア開発などについて学ぶ

プロジェクト「イトナブ石巻」の一

環で、昨年度から開催。2年目となっ

たことしは、クラフト

マン21事業でアプリ開

発に取り組む石巻工高

の生徒ら約80人が参加

し、IT企業の第一線

で働くエンジニアの指

導で、プログラミングに挑戦した。

 今回、はじめてプログラミングを

体験した石巻市女商高1年の佐藤円

香さんは、専用のツールを使ってエ

アホッケーゲームのアプリ開発に挑

戦。開発を終えて、佐藤さんは「関

数を覚えるのが難しかった。先生に

助けてもらいながら、アプリを動か

すことができて楽しい」と感想を話

した。

 佐藤さんを指導したエンジニアの

及川卓也さんは、「子

どもたちが、目を輝か

せながら喜ぶ姿をみる

と、こちらもうれしく

なる」と話した。

 最終日の成果発表会

では、参加者がそれぞ

れ開発したゲームやス

ケジュール管理などの

アプリを発表。アプリ

開発を行ったプロのエ

ンジニアも、成果を披

露し、一流のプロの技

術に「すごい」などと、

生徒たちから、どよめきが巻き起こっ

ていた。

 「イトナブ石巻」代表で石巻工高出

身の古山隆幸さんは、「世界の第一線

で活躍するクリエイターと3日間、

同じことに打ち込めたことは、(参加

者にとって)とてもいい経験だった

はず。この経験を活かして、目標に

向かってチャレンジしてほしい」と

エールを送っていた。

石巻ハッカソン

超一流のエンジニアとスマホのアプリ開発に挑戦

▲プログラミングに打ち込む生徒

▲プロのエンジニアからアドバイスを受ける生徒

▲ 成果発表会で開発したアプリを披露した

PCの画面でアプリの動作を確認しながらプログラムを修正する▶

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Page 11: z ú ý Ú Ô ø!¢ é 「OECD東北スクール」...石巻ハッカソン 技の肖像 2 パイプオルガン(石巻市河南町) オガーレ!らぼ 第15回 20 「腐敗」と「発酵」って何が違うの?-恵みをもたらす微生物の力-

情報提供お待ちしております!「オガーレ!」では、読者の皆様からの情報提供をお待ちしております。未来を担う子どもたちの人材育成に取り組んでいる学校や、企業、地域の方々を紹介してください。私たち「オガーレ!」編集部が誌面を通じてエールを送ります。

「オガーレ!」編集部ハリウ コミュニケーションズ株式会社内〒984-0011 仙台市若林区六丁の目西町2-12TEL. 022-288-5011(代) FAX. 022-288-7600E-mail. [email protected]. http://www.zundanet.co.jp/o-ga-le/

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この印刷物は、輸送マイレージ低減によるCO2削減や地産地消に着目し、国産米ぬか油を使用した新しい環境配慮型インキ「ライスインキ」で印刷し、印刷用の紙へリサイクルできます。

P-Z10064この印刷製品は、環境に配慮した資材と工場で製造されています。

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理科雑記帳

かえ

敗は、細菌やカビなどの微生物が生き物の体や体液などを分解するとき、おきる現象です。独特の臭いを放ち、微生

物がつくりだす毒素や微生物そのもののせいで、人間がそれを食べると、食中毒を引きおこすこともあります。 一方で、発酵は、酵母菌などの微生物を利用して、食べものを分解し、うま味や炭酸ガスなどを生み出すことを言います。味噌やしょう油、ビールにチーズ―。わたしたちが普段、口にしている食べものの中にも、こうした「発酵食品」は多く存在します。

ちらも、微生物の活動によっておきるのに、「腐敗」と「発酵」で、呼び方が違うのは、なぜなのでしょうか?

 一般的には、わたしたち人間にとって有害であれば「腐敗」、安全で役に立つものであれば「発酵」と考えられています。 しかし、ふたつの間に明確な境界線はありません。たとえば、日本人が好んで食べる納豆は、大豆を納豆菌で発酵させた発酵食品ですが、外国人にとっては「悪臭を放つ、腐ったもの」とみなされてしまうことがあります。 結局、わたしたちの都合で「腐敗」と「発酵」は区別されているだけなのです。

生物がはびこり、食べものを醜い姿に変えてしまうさまに例えて、「腐敗」は、しばしば悪い組織や政治の行いを語る

ときに使われます。 どうしても「悪いイメージ」が付きまとう「腐敗」ですが、自然界で、生物の死骸を分解し土に還す重要な役割を果たしています。大地の恵みを受けて暮らす、わたしたち人間も、実は恩恵を受けているのです。

界初の抗生物質と言われる「ペニシリン」は、1929 年イギリスの細菌学者フレミングが、研究中に誤って発生させ

てしまったアオカビの中から発見されました。その後の研究で、大量生産が可能になった「ペニシリン」は、100 種類以上の病原菌に効果がある治療薬として、多くの人の命を救いました。 わたしたちの暮らしにさまざまな恵みをもたらすカビなどの微生物は、ときに健康を害する悪者として嫌がられることもあります。そんな人間の「ご都合主義」に「腐る」ことなく、微生物には、これからも活躍してほしいものです。

ど 世

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人材育成情報誌

発行:宮城県(産業人材対策課)/ハリウ

コミュニケーションズ株式会社

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オガーレ!被災地の中高生が世界に復興をアピール

「OECD東北スクール」

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