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デザインの裏のデザインの裏のデザインジェイソン・ホブス 2014 / 15
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コンテンツ
1. デザインの裏のデザイン2. ブループリントの裏3. コンセプト・ダイヤグラム4. ハビトゥスの情報アーキテクチャ5. 意味を与える、意味を作る6. 総合的認知:考えながら描く7. まとめ
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謝辞
このエッセイは2014年にカリフォルニアのサンディエゴで開催されたIA Summitではじめて紹介したものです。私を演壇に立たせてくれた主催者たちに感謝です。
一部のコンテンツやイメージはあれから変更したり削除し、新しいコンテンツをいくつか追加しました。
このエッセイのアイデアはテレンス・フェンとの作業や会話の中で得られたものです。私たちの論文からの引用もこの中に含まれています。私たちの協業に関するさらなる情報は www.fennhobbs.com を参照してください。
訳者まえがき
このエッセイの日本語訳はイ ソヨンが行いました。ジェイソン・ホブスとは2014年ブリュッセルで開催されたEuroIAで出会い、彼のIAに対する深くて人類学的なアプローチに感心しました。この素晴らしいエッセイを日本に広める手助けができてうれしく思います。ご意見やご指摘などは [email protected] にご連絡ください。
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デザインの裏のデザイン
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私がはじめて「デザインの裏のデザイン」という表現を目にしたのは、Boxes and Arrowsのウェブサイトでした。それは1990年代後半から2000年代前半にかけての情報アーキテクチャ(IA)の働きかけについて触れているものでした。
具体的に「デザインの裏のデザイン」とはグラフィック・デザインとコーディングより前の段階で生成されるアイデアや成果物のことで、ユーザーには見えないデザインのことを指します。これらはユーザーがウェブサイトで操作をするときに直接伝わるグラフィック・デザイン、コンテンツ、機能といったものの裏にあるものです。
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他にも色んなものがありますが、IAによって作られるデザイン成果物にはサイトマップ(ウェブサイトの構造やコンテンツ間の関係、そして機能を明確に表現したもの)、タスク・フロー(プロセスを表現したもの)やワイヤーフレーム(ページレベルのナビゲーションと情報デザイン)があります。昔からの感覚で言うアーキテクチャという言葉の通り、ウェブサイトのようなものをどう作るかについての概略図やブループリントが成果物になるとのことでした。
このデザインが必要な理由には次のようなものがあります。
• ユーザビリティの向上• 構築にかかる時間の節約• ステークホルダーとの共通認識を作る• 顧客を中心にできる• 構築フェーズにおけるスコープ設定やコスト見積もりに役立つ• 完成度の低い状態でテストを行うことができる• などなど
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ブループリントの裏
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初期にはIAがデザインに基づいた活動ではなく、よりエンジニアリングに近いものであるという見方が(IAコミュニティの中でにも)ありました。
サーバー上で、ブラウザのインターフェースのコントロールを通じて、コンテンツを保存して検索するためには、どのようにコンテンツを組織すればいいのだろうか?
このような見方は図書館志向が強く、初期の取り組みの多くは図書館学やナレッジマネジメントから浮上したIAのトピックスに関するものでした。
このように考えると、IAはユティリティ機能を提供するものとして意味を持ちます。
この時期に全てのIAがこのようなパラダイムの中に存在していた訳ではないですが、注目すべきものではありませんでした。IAを採用したクリエイティブ・エージェンシーは、なぜ、どのようにIAを実践すべきかを考えるより、マーケティングを中心に考える傾向が強く、また、ユーザー中心デザインを実践していたさまざまな組織はインタラクション・デザインの問題を解決するために情報アーキテクチャを頻繁に使っていました。
IAをやるときに、特に何もないところから新しいものを作らないといけないときには、私はいつも私たちがやっているのはただ保存と検索のためのシステムをデザインしているだけのことではないという強い直感を持っていました。
ページや情報アイテムをリンクしたり、カテゴライズしたり、グルーピングしたり、つながりを創造することで、新しい世界を作っているような感覚がありました。
どちらかというと保存と検索のシステムをエンジニアリングしているというより、ロール・プレイングのように、プレイヤーがドラゴンを狩るために、宝石を集めるために旅に出るような世界をデザインしていると感じていました。
楽しかったです。そして、ものをオンラインでつなげるのはすごく簡単だったので、つながりを好きなように作ることには開放性や自由がありました。プレイヤーをダンジョンにナビゲートして、ドラゴンを撃退させて戦利品を持ったまま退散させることができれば、既存のナレッジ構造を気にしすぎる必要もありませんでした。
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実験:どのようにバナナカエルを作るか?最初に全てのバナナのセットと全てのカエルのセットを考えます。
そして、二つのセットが重なる部分で、バナナカエルを見つけることができるはずです。
バナナ カエル
バナナカエル
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似たような直感的推論として、私たちが劇、映画、本、アートのフィクションの世界に対する疑惑を一旦止めて、受け入れることができるのも、その中にはなんだかの関連や意味、そして「リアルなこと」があるからです。例えば、
「なぜゾウはお酒を飲むのか?それは忘れたいことがあるから」
つまり、実用性のことだけを考えたい気持ちを一旦抑えてみることです。今まで考えられていたもの以上の力がIAにあると考えると、新しい可能性が広がります。
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情報アーキテクチャが意味を持つためには、実用的な機能を提供しないといけない訳ではありません。
上記の例は、単純なHTMLページの真ん中に「Winter」と書かれていて、そのページは「Spring」と書かれているページへのハイパーリンクでつながっています。また、「Spring」と書かれているページは
「Summer」と書かれているページへのハイパーリンクでつながっていて、「Winter」に戻るまで同じことが続きます。
これは季節と同じで、ループになっています。円状の構造がメタファーを提供するところにアーキテクチャの意味があります。
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人類学的空間Anthropological space
季節の実験で得られるヒントは、毎日の生活で私たちが理解しているまわりの空間とは違うタイプの空間の中で何かを構築するということには意味があるということです。
オットー・ボルノウが三つの特徴を持つ人類学的空間という概念を提唱していました[2]。彼は人類学的空間は異性分からなるもの(個人的、主観的、相対的)であり、ホドロジー的なもの(物理的、社会的、心理的)であり、そして進化するもの(私たちの空間に対する考えは時がたつにつれて変化する)であると主張しました。
私には、全ての形のデザインは、この人類学的空間の中と外に半分ずつかかっているところで行われるものに思えました。
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アンドレア・レスミニ、『It’s Pitch Black. You Are Likely to be Eaten by a Grue』[3]
「情報は空間中の物語を編み合わせることで意味を持つ」
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アンドレア・レスミニ「ヨハネスブルグ・アート・ギャラリー、クロス・チャンネルな発見的調査フェーズ」、2012年
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暗黙のものを明白にする:展示会で見られる情報アーキテクチャを可視化してみるエクササイズ
マイケル・ディーン、『Introduction of Muscle』[4]
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深澤直人
「私のプロダクトはすでにあなたたちの心の中にあります。まだあなたたちが見てないだけなんです[5]。」
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深澤直人、ALESSI アレッシィ Shiba ソースパン/フタ付き 18cm (ハンドル:木製)
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コンセプト・ダイヤグラムデザインを人類学的空間に置いてみる
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コンセプト・ダイヤグラムは人類学的空間そのものの、その中の、そのための、隠された他のデザインを明らかにします。
HTMLで書いた季節の例に戻ると、ウェブ上に現れた人類学的空間のデザインは明らかです。一般に人類学的空間を構成する隠された情報は、目立つようになります。これは、私が信じるに、現在IAが実用的な分野として浮上した理由でもあります。
デザイナーが自分のことをIAという言葉で定義しようとしようが、ウェブ上のデータと情報を構築することをIAと認識しようが、それはあまり関係のないことです。情報を構築するための意思決定プロセスこそが人類学的空間のデザインに直結します。
これはウェブに限った話ではありません。私たちの生きる時代に浮上した多くのことがこの考え方の影響を受けています。
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映画『E.T』のはじめに、ゴミ箱が倒れて、犬が吠える音が聞こえてくる前に、少年たちはテーブルで『ダンジョン&ドラゴンズ』をしていました。1982年のことです。
ロール・プレイングはずっと昔からいろんな形で存在していたはずですが、今になって高度の構成されたフォーマット(例えば、ゲームについてくる難解なルールブックなど)で出現し、それと同じ時期にウェブが出現したことは、とても興味深いと思います。
どちらも情報空間での「デザイン」と文字通りの「遊び」の例だからです。
『ダンジョン&ドラゴン』のようなロール・プレイング・ゲームがわからない人のために説明すると、その原理はシンプルです。プレイヤーが決めたキャラクター(デザイン分野のペルソナと似たものです)が脚本を持つ物語に基づくフィクションの世界の中を進んでいくといったものです。面白いことに、これは共同作業で行われ(複数のプレイヤーが同じ物語の中で一緒に遊ぶ)、この世界の中でプレイヤーたちが一人かみんなで意思決定をして、予測のできないことの連続で物語が創造されていきます。
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コンピューター・ゲームは今まで説明してきた、情報空間の中で作ったり遊んだりといったもののさらなる例です。私たちはこのような空間をさまざまな形式のテクニック(主にHCIの分野でカバーされる)を通じて理解するとともに、ゲームを作る人たちも特定のターゲット・オーディエンスを理解させるために直感的な文化的レファレンスを適用します。例えば、妖精やドラゴン、魔法使いは西洋のオーディエンスをターゲットとするゲームを理解しやすくします。知られていないものはルールブックや説明文で紹介することで、触れ合ったり遊んだりするための充分な理解を得られるようにしています。
「NoClip」はコンピューター・ゲームにおける古いチートです。私は正確に覚えているとしたら、私は『Doom』をプレイする途中でこれを発見しました。「NoClip」が発動されると、プレイヤーは壁を通り抜けられるようになったり、モンスターに攻撃されなくなります。これは元々、空間をデザインするプログラマーたちが、問題やバグがないかを全てにおいて正しくチェックするために、空間を通り抜ける能力を持っていたことがはじまりでした。
私がはじめてこのコマンドを使ったとき、可能な限り遠く離れたところに向けて、まっすぐなパスで進みました。『トゥルーマン・ショー』のジム・キャリーのようにボートに乗り、情報空間の境界がマークされている壁に向かった進みたかったのです。これ以上進められない地点まで来ては、窓から出て空に飛んでいかないと見ることのできない、優越で特別な景色を見渡しました。
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私にとって、これらは全て意味のあることでした。情報時代において、情報はますます目立つようになっています。そして情報は、特に実用的な状況で、アーキテクチャを必要とします。
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ピエール・ブルデュー
ハビトゥスThe Habitus
コンセプトとしてのハビトゥスはデザインの社会的コンテキストの背景に訴えるものです。ハビトゥスは私たちがどのように世界を理解し、情報を解釈し、社会的側面を組み込んだ意味をどう世界へ投影するかを説明してくれます。また、デザインはハビトゥスとの関係の中で存在します。
「...毎日の生活で、行動や経験を通じて得られる、特定の社会グループのライフスタイルやバリュー、性質や期待(...)ハビトゥスは得られたスキーム、感覚、性質、好みの集合で特徴づけられるマインド構造として理解することもできる。ハビトゥスの具体的な中身はジェンダー、人種、階級のような社会構造を具体化した複雑な結果であり、(...)これらは未来の体現のための趣味嗜好、好み、行動を通じて再生産される...[15]」
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43地理学の知識を持って見ると、私はこの景色はメーサや岩山のような要素で構成され、いくつかの理論と説明があってのこの形になったものだと解釈できます。景色の意味は地理学のレンズを通じて変形されます。
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44同じく、南アフリカのトロンプスバーグ外郭にあるこの十字架からは、地域の住民たちの特性が分かり、さらにこの十字架は自然と彼らの信仰の関係を示唆しているとのことも分かります。
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ハビトゥスの情報アーキテクチャ
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46暗黙的あるいは明示的なアートやデザインに関する全ての議論は、批評理論で重要視されるハビトゥスの情報アーキテクチャとして語ることができます。
左側のマネのオランピア(1863年)は、オランピア(彼女が売春婦であることを示唆する数々の要素が含まれています)はビューアーと視線を合わせていて、自分の裸が見られていることを自覚していることを表す明示的な例です。彼女のポーズは、アートの歴史の中でオダリスクのポーズと知られるものを参照しており、裸の女性を登場させるという点でアートの伝統に従っていますが、人の(特に男性の)視線を意識していて、神話的な存在(例えばヴィーナスのような)としてヌードを描くといったやり方から逸脱している点で、物議を醸しました。
ジョルジョーネ、『眠れるヴィーナス』(1510年頃)
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キュビストの静物画は日常的オブジェクト(新聞を切り抜いたもの、瓶、楽器、アフリカの仮面)を集めたもので、彼らの作品は風景を写したり、依頼者の富や知性を表す彫刻を作るといった伝統的なやり方を破壊し、まわりのものを使うという、彼らの時代にとってのハビトゥスとして捉えることができます。このような現代のオブジェクトは具象の本質についての現代的な議論の対象になり、キュビストたちの思考の転換や新しい試みは正式な表現手段となりました。
左側のロイ・リキテンスタインの1979年の『Cubist Sill Life with Playing Cards』は、ア
ート(の歴史)についてのアート、関連する消費主義者たち、アートを評価するときにつきまとう市場中心の力に対するレファレンスとその時代をめくっていることを表現しています。
パブロ・ピカソ、『Still Life with Chair Caning』(1912年)
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最後に、左側のダミアン・ハーストの2007年の彫刻『For the Love of God』は伝統的な静物画に良く
使われる骸骨のイメージを用いて、メメント・モリ(訳注:ラテン語で「死を記憶せよ」という意味)を
表現しています。同時に、この作品は現代のアート市場におけるアートの価値についての議論を提起しています。(これは18世紀の骸骨をプラチナ鋳造し、8601粒のダイヤモンドを散りばめたものです。
フィリップ・ド・シャンパーニュ、『バニタス』 (1671年頃)
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論点の集合としてのアートの歴史は、情報アーキテクチャであり、アートの背景であり、アートの基となって、質問を投げかけられ、議論されてきたハビトゥスなのです。
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「順序や規則を表すストップ・サイン、駐車禁止ゾーン、黄色いライン、赤いライン、そして舗道についている広めの黄色い枠のようなサインは、ヨハネスブルグのような都市においては完全に装飾としてしか機能していないのが興味深い」
右上の写真は道の標識を意図的に削除した、編集された写真です。
引用文と写真はスティーヴン・ホブスによるものです。
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建築(アーキテクチャ)についての建築(アーキテクチャ)。写真は2014年ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツのセンシング・スペース展で撮ったものです。左はエドゥワルド・ソウト・デ・モウラの、右はディエベド・フランシス・ケレの作品です。
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建築(アーキテクチャ)についての建築(アーキテクチャ)。写真は2014年ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツのセンシング・スペース展で撮ったものです。左と右上の写真はグラフトン・アーキテクツの作品で、右下はエドゥワルド・ソウト・デ・モウラの言葉です。
「アーキテクトのための空間というのは存在しないので、私たちは空間のような印象を与える境界をデザインする」
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このイメージはヨハネスブルグ・アート・ギャラリーの情報アーキテクチャのソリューションとして、ジェイソン・ホブスとテレンス・フェンが作ったものです[16]。 このソリューションは意味(南アフリカとヨハネスブルグでアートとギャラリーがどのような意味を持つか、またそのコンテキスト)、組織(ギャラリーそのものの内部の力関係)、場所
(ヨハネスブルグ都心のF区)という交差する三つの次元で構成されています。上記ギャラリーの正面エントランスの外観の写真で分かることは、ソリューション(円が合わさる部分)をはっきりさせた上で決定を行うことは、ハビトゥスを背景にして、ソリューションを重ねることということです。
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コラージュは共通点のない欠片を集めてまったく新しい何かを形作るための良い方法です。ハビトゥス間の異なる時点を表す欠片を集めることで、新しい意味を見いだすことができます。上記の作品は都市計画家で建築家であるThiresh Govender氏がヨハネスブルグ都心を歩き回って集めたさまざまな視点を一つのイメージにしたものです。
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情報アーキテクチャを見いだせるのはアートだけではありません。科学、宗教、歴史などには全てハビトゥスの情報アーキテクチャが隠れています。
ハビトゥスの中の情報アーキテクチャは、
• 自己組織システムとして浮上するもの• 知識や話題の範囲に適応するもの• 情報の交換と解釈のための集合を提供する• 時代を超えてアイデンティティを発展させ、恊働や集団学習を円滑にする• 時代を超えて知識体系や関連する知識の蓄積を発達させる• 新しい知識を取り入れるための検証手段を適用する• コミュニティにとって重要な価値を包含する• 隣接する他の情報アーキテクチャと交差する
そしておそらく最も重要なこととして、ハビトゥスの中の情報アーキテクチャは、揺るぎないものとして定着した場合、現実そのものを示すものになります。
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これは映画『マトリックス』の基本的な内容です。ウサギの穴(訳注:『不思議な国のアリス』に登場する現実から不思議な国につながる穴のこと)をくくると、そこにはマトリックスの情報アーキテクチャがあります。マトリックスを制作した人がこの作品を「ザ・アーキテクト」と呼んでいたと言うくらいです。実生活の中でも、私たちは複数の結合したマトリックスの中で存在しています。
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意味を与える、意味を作る
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ある意味、これはポストモダンなことなのかもしれません。
(リサーチを通じて、意味を作る作業としての)情報アーキテクチャは、物語を伝えるために、複数の交差する情報アーキテクチャが広がっている景色を見渡すようなことです。(デザインを通じて、意味を与える作業としての)情報アーキテクチャは、既存のアーキテクチャをいじったり、既存のアーキテクチャ間の関係を作り出したり、既存のアーキテクチャに合わせたりつなげたりして新しいアーキテクチャを組み立てることで、浮かび上がる問題を解決しようとすることです。
2014年にヨハネスブルグ大学でインタラクション・デザインと産業デザインコースのコラボレーションで行われた4年生たちの意味を与える作業の例を次に示します。
デザイナーがものすごく複雑な問題(あるいは、ねじれた問題)を解決しようとするときの、理解してから意味を与える作業と、解決することで意味を作る作業がコインの両面であることはとても重要なことです[17]。また、意味を作る過程で創造された情報アーキテクチャは、科学の本質に挑戦するようなものではなく、問題の解決に重点をおいたものです[18]。そして、意味を与えることはいくつかの学問に及ぶ複数の交差する情報アーキテクチャを解釈する作業を含むので、実用的な意味での情報アーキテクチャは自然と学問を超越したものになります[19]。
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68Ormond and Jacobsz、産業デザイン/インタラクション・デザイン専攻の4年生たちの作品(南アフリカヨハネスブルグ)
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69VD Westhuizen, McCarthy, Van Heerden、産業デザイン/インタラクション・デザイン専攻の4年生たちの作品(南アフリカヨハネスブルグ)
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70Malan and Thantsha、産業デザイン/インタラクション・デザイン専攻の4年生たちの作品(南アフリカヨハネスブルグ)
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デザインの結果としては椅子、ウェブサイト、ビル、サービス、ヤカンのようなものがあります。
デザインの結果
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合成リサーチ デザイン
しかし、デザインの結果からはそれを作るまでにデザイナーが経験したプロセスは見えません。簡単な問題を扱うときは、このプロセスはデザイナー本人にすら見えないことも多いです。デザインプロセスの中で立てる仮説は問題の単純化に役立ちます。例えば、深いリサーチを実施せず、問題を深堀りせず、最終的なソリューションを打ち出すときには、仮説を立てます。
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戦略リサーチ デザイン
状況が複雑な場合は、他のステージをデザインプロセスから分離すると良いでしょう。デザイン・マネジメントにおいて、リサーチのステージと戦略を決めるステージをデザインと別に定義する場合もあります。(全てのプロセスがデザイン活動ではありますが)
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戦略リサーチ デザイン
UXデザイン、ウェブデザイン、インタラクション・デザインのような分野で、デザインが戦略を明らかにする場合は、IAはブループリント(B)としての機能を果たします。
問題に対して仮説を立てるのが簡単な場合は、ブループリントとしてのIAはプロセスから省かれることが多いです。これはデジタル・デザインにおける実用的なIAの最も基本的な考え方です。
B
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戦略リサーチ デザイン
問題環境(PROBLEM ECOLOGY)
リサーチを通じて問題を深く探求すると、歴史、政治、文化、社会、使用状況、使用環境、関連組織、さまざまなユーザーのタイプ、市場など、コンテキスト上に存在する全ての問題を明らかにすることができます。
探求によって、問題と関係するデータを大量に得ることができます。問題が主観的だった場合に、デザイナーはどのようにこの大量のデータに意味を与えて解釈を行うと良いでしょうか?社会学者は社会の問題を発見するだろうし、ITマネージャーはITの問題を、マーケターはマーケティングの問題を発見するはずです。
これが私たちが問題環境と呼ぶものです。
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戦略リサーチ デザイン
解決環境(SOLUTION ECOLOGY)
続けて解決空間にて、歴史、政治、経済、市場、ユーザーなどの領域での懸念と、それらに対するさまざまな見方が存在することを理解し、問題を解決する必要があります。
これが私たちが解決環境と呼ぶものです。
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問題解決環境リサーチ デザイン
意味を与える(SENSE-MAKING)
意味を作る(MEANING-MAKING)
前述の通り、デザイン・プロセスの中で、問題解決に意味を与えることと、解決すること(複雑な状況をひも解いて意味を作ること)はまったく同じことです[17]。私たちはこれを問題解決環境と呼びます。デザイン思考ではこれをアイディエーションと呼びます。
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総合認知リサーチ デザイン
意味を与える(SENSE-MAKING)
意味を作る(MEANING-MAKING)
問題環境において、問題が複雑なために、分析的思考では解決が難しい矛盾や衝突が生じることがあります。このような状況でのデザインの価値は、総合的思考で問題を単純化せず解決し、革新的なソリューションを提供することです。
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総合認知リサーチ デザイン
情報アーキテクチャ 情報アーキテクチャ
大量のデータが複雑な形で存在するときに、情報アーキテクチャはブループリントとしての役割を越え、複雑さ解決のために用いられ、総合的認知モードの中で作用するものになります。
これがデザインの裏のデザインの裏のデザインです。
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80デザインをデジタル・デザインの結果だと考え、IAをブループリントと考える実用的な視点(現在メインのIAの捉え方)では、三つの誤解[20]が浮き彫りになります。これらの誤解はこのエッセイで議論したようなIAがうまく理解されなくなる原因でもあります。
誤解1
IAの成果物はワイヤーフレーム、サイトマップ、タスクフロー、分類表など
である。
そうではありません。成果という言葉が表しているように、IAの成果物は問題解決環境
に対する総合的ソリューションです。
誤解2
デザイン・ソリューションはウェブサイト・モバイルアプリなどである。
そうではありません。デザイン・ソリューションは問題解決環境における解決策です。ウェブサイトやモバイルアプリは、デザイン
の結果です。
誤解3
IAはビジネスに測定可能な価値をもたらすことで意味(関連性、価値、目
的)を持つ。
そうではありません。IAの関連性、価値、目的は問題解決環境に意味を与えることです。ビジネスの価値はIAがもたらすたくさ
んの潜在的成果の一つであり、全てではありません。
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総合認知:考えながら描く
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「...(特に1年生にとって、また1年のはじめにおいて)学生たちに批評力や自覚を持たせ、ドローイングとプロセス、またその結果を反映するように促すことが必要です。
学生たちは基本的に描いているものについて、どのように描いているのかについて、『休戦』が宣言されてドローイングが終了するまで、なぜ全てのステージにおいての結果に疑問を持つべきなのかについて、常に考えながら描いているのです。」
デヴィッド・パトン、ヨハネスブルグ大学講師
パトンのクラスで、彼は学生たちに前に置かれているレンガを描くようにと指示しました。それが終わったあと、彼は学生たちにレンガをアウトラインを描かず、縦の線だけを使って再度描くように指示しました。
パトンのメソッドは学生たちに「レンガを存在に変える思考戦略」を持たせ、「描かれたものに対する精神的責任」を持つように試みています。
デヴィッド・パトン提供の学生ドローイングの例
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デヴィッド・パトン提供の学生ドローイングの例
デヴィッド・パトン提供の学生ドローイングの例
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2012年のヨハネスブルグ・アート・ギャラリーのデザイン介入分析の一部である「JAG snag」の著者ノート
価値というのは多重で、多面的で、まるで南アフリカのように、人々のように、ヨハネスブルグ都心のように、常に流れているものです。
ヨハネスブルグ・アート・ギャラリーの(方針、建築、費用、セキュリティ、コンテンツへのアクセス、物理的な立地などからなる)エコシステムは共有された価値の不在のため、うまく機能していません。
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2012年のヨハネスブルグ・アート・ギャラリーのデザイン介入分析の一部である「JAG snag」の著者ノート
コンテンツがステークホルダーやユーザー、近くにいる人たちにとってアクセスしにくく、ギャラリーが意図した価値と反して、人とヨハネスブルグ・アート・ギャラリーの関係には亀裂が生じていました。
現在の立地で少しでも長く存続したい場合、この「価値」を理解して受け入れ、関わってもらえるかどうかは、ギャラリーが意味ある存在として残り、継続して未来の問題解決をするための根本をなしている部分です。
ヨハネスブルグ・アート・ギャラリーを囲む環境や建築上の歴史における多重性を表現したスティーヴン・ホブスの解釈によるアートワーク
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アンドレア・レスミニ「ヨハネスブルグ・アート・ギャラリー、クロス・チャンネルな発見的調査フェーズ」、2012年
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点についての議論
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点のコンテキストについての議論
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90
何かについての議論
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二つのものについての議論
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この二つがどう関係しているのかについての議論
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一つの方がより重要であるあるいは、他の一つの方と関連する一つ以上のものが存在する
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一つは他の一つの部分集合で、他の一つの中心となる重要なものである
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一つは他の一つの部分集合だけど、コアではなくただの一部である
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二つは関係していて、小さい方が大きい方の範囲を超えて存在する
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二つは関係していて、小さい方は大きい方の一部ではなく、大きい方の範囲を超えて存在し、より重要な意味を持つ
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二つは関係していて、小さい方は大きい方の一部ではなく、大きい方の範囲を超えて存在し、会話の中で重要なところとは少し離れたところにある
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二つは直接関係していないが、同じ議論の中の一部である
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これが議論のコンテキスト、背景です
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まとめ
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このエッセイでは、現在実用的な場面で主流であり、一般的に理解されている情報アーキテクチャより広い意味での捉え方について論じてきました。IAはデジタル・オブジェクトをデザインするためのブループリントという範囲を超えて、私たちが問題環境(もっと広い意味では、問題環境はあらゆる情報構造の配置や記述を可能にします)と呼ぶものの構造的、情報的なまとめを提供します。
デザインの視点から、私たちは最後の章で言及した総合認知(クリエイティブ・シンキング)を行う手段としてのドローイングのような総合的思考(非分析的なクリエイティブ・シンキング)によって、世界をどう解釈して問題を特定するか(意味を与える)、ソリューションを作るか(意味を作る)というところに興味があります。
IA分野は次のようなものを含みます。デジタル加工品のデザインの範囲を超えたところにIAが適用可能であることを考慮すること、IAを適用するために広い手段を模索すること、新しい可能性を見せてくれるデザイン活動としてIAを認識すること、IAが持つ教育的、理論的意味を考慮すること。
デザイン分野においては、このエッセイは実務担当者や先生、調査員に、デザインにおけるIAの役割をより広いものとして(産業デザイン、建築、コミュニケーション・デザイン、デジタル・デザインなどの形を超えたものとして)認識することを呼びかけています。私たちが知識経済が進んだ情報化時代に暮らしていることを考えると、このような認識がデザインの議論の中心の置かれていないことは(これをIAと呼ぶべきかどうかはおいておいても)、私にとっては驚くべきことです。
幸いなことに、このエッセイでIAとデザインの両分野を推進するための方向と目指すべき場所を提示することができました。
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1. http://player.vimeo.com/video/77330591. Parachutes.tv
2. ‘Pervasive IA. Designing Cross-Channel User Experiences’ Resmini and Rosati, 2011. Morgan Kaufmann. Page 68
3. ‘It’s Pitch Black. You Are Likely to be Eaten by a Grue. Lessons from videogames’ Resmini. 2014. http://www.slideshare.net/resmini/its-pitch-black-you-are-likely-to-be-eaten-by-a-grue
4. ‘The Introduction of Muscle’ Michael Dean. 2013. Installation at the Arnolfini. http://www.arnolfini.org.uk/whatson/michael-dean. All photographs by the author.
5. Fukasawa speaking at the 2014 Design Indaba. http://www.designindaba.com/profiles/nao-to-fukasawa
6. http://www.dezeen.com/2013/11/04/next-architects-chinese-bridge-competition/
7.http://www.spatialpractice.com/projects/17_beijing-cbd-towers/2.html
8. http://www10.aeccafe.com/blogs/arch-showcase/2013/07/11/taichung-city-cultural-center-com-petition-entry-in-taiwan-by-hyunjoon-yoo-architects/concept-diagram-5/
9.http://www.spearsphotographics.co.uk/untitled-gallery-34755/399002_birds-nest-concept-dia-grams-coloured.html
10. http://plusmood.com/2012/05/swiss-clockwork-embassy-matteo-cainer-architects/
11. http://plusmood.com/2014/01/museum-of-cycladic-art-kois-associated-architects/9-concept-di-agram/
12. http://jonascels.com/little-sparta/
13. http://www.dezeen.com/2012/11/14/ole-scheeren-unveils-duo-skyscrapers-for-singapore/
14. http://www.archdez.com/2013/09/20/folding-house-by-ar-design-studio/folding-house-by-ar-de-sign-studio-concept-diagram-06/
15. http://en.wikipedia.org/wiki/Habitus_%28sociology%29
16. ‘Research Summary and Strategic Recommendations for the JAG’ 2013. Jason Hobbs
17. “Dilemmas in a General Theory of Planning”. 1973. Rittel, H & Webber, M. Policy Sciences.(4)
18. “The Information Architecture of Transdisciplinary Design Practice: Rethinking Nathan She-droff‟s Continuum of Understanding” 2012. J Hobbs and T Fenn. Design Development Research 2012 Conference Proceedings.
19. “The Information Architecture of Transdisciplinary Design Practice: Rethinking Nathan She-droff‟s Continuum of Understanding” 2012. J Hobbs and T Fenn. Design Development Research 2012 Conference Proceedings.
20. “The information architecture of meaning-making” J Hobbs and T Fenn. Published in “Reframing Information Architecture” Resmini, Andrea (Ed.). 2014 Springer HCI series.
References