2016年第⼆四半期世界のベンチャー投資トレンド
2016 年 8 ⽉
#NestHongo
鮫島 昌弘 (Masahiro Sameshima)@NestHongo /Masahiro Sameshima
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Introduction
• これはKPMGとCB Insightsが7⽉19⽇に発表した世界のベンチャー投資トレンドに関するレポート「Venture Pulse Q2 2016」に対して、私⼀個⼈が解釈したものです。意訳も含まれておりますので、詳細につきましては原⽂をご参照下さい
• 普段は#NestHongoというインキュベーション施設にて、起業⽀援や起業直後の⽴ち上げ⽀援を⾏っておりますので、ご興味・ご関⼼ある⽅はFacebookまたはTwitter経由でお問い合わせください
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Executive Summary
1.グローバルベース• 16年Q2のVC投資⾦額、投資件数:$27.4B/1886件(⾦額は微増、件数は減少)• 投資ステージの割合
– シード投資:2016年Q1に31%に減少したものの、Q2には回復し35%まで増加。
– シリーズA投資:2016年Q1の25%からQ2には22%に低下• 投資ステージごとの平均投資⾦額
– アーリーステージ( シード+シリーズA)では$2.5Mから$2.3Mに減少
– レートステージ(シリーズD及びそれ以降)では$23Mから$25Mに増加• CVCが占める割合は全体の約1/4であり、前四半期と変わらず• サイバーセキュリティー分野への投資は2015年末にピークを迎えたが、回復基調• デジタルヘルス分野への投資は軟調。インドや中国で案件が顕在化。• AI分野への投資は堅調に推移しており、投資⾦額は増加傾向
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Executive Summary
2.北⽶• 16年Q2のVC投資⾦額、投資件数:$17.1B/1117件(⾦額は増加、件数は減少)• 投資ステージの割合
– シード投資:2016年Q1に28%に減少し、Q2は28%で変わらず
– シリーズA投資:2016年Q1に24%に減少し、Q2は23%に更に減少• 投資ステージごとの平均投資⾦額
– アーリーステージ( シード+シリーズA)では$2.8Mで⾼値で安定して推移
– レートステージ(シリーズD及びそれ以降)では$25Mと低⽔準にて推移• 16年Q1における⽶国のVCランキング1位はNEA。
General Catalyst Partnersは⼤きく順位を上げ同率2位に。
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Executive Summary
3.EU• 16年Q2のVC投資⾦額、投資件数:$2.8B/385件(⾦額は減少、件数は増加)• 投資ステージの割合
– 16年Q1にシード投資の割合が38%まで落ち込んだものの、今期は49%にまで回復。• 投資ステージごとの平均投資⾦額
– アーリーステージ( シード+シリーズA)は若⼲減少し$2.0Mへ。
– レートステージ(シリーズD及びそれ以降)は減少傾向にあり、$12.2Mへ。• 16年Q1におけるVCランキング:High-Tech Guenderfondsは16年Q2に10社以
上のユニークなベンチャー(Thermosome, Juniqeなど)へ投資しており、引き続きトップの座を守る。デンマークのSunstone Capitalは2位にランクイン。
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Executive Summary
4. アジア• 16年Q2のVC投資⾦額、投資件数:$7.4B/343件(⾦額は微増、件数は減少)• 投資ステージの割合
– シード投資:33%@16年Q1 から 39%@16年Q2 へ増加
– シリーズA投資:27%@16年Q1 から 21%@16年Q2 へ減少• 投資ステージごとの平均投資⾦額
– アーリーステージ( シード+シリーズA): $2.4M@16年Q1 から $2.0M@16年Q2へ減少
– レートステージ(シリーズD及びそれ以降): $67.5M@16年Q1 から $100M@16年Q2へ増加• 16年Q1におけるアジアVCランキング1位はインドのBlume Ventures。2位は
500 Startups、3位はSequoia Capital India。⽇本勢は6位にEast Ventures,10位にCyberAgent Venturesがランクイン。
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グローバルでの2016年上半期のVCからベンチャーへの投資件数は3894件、投資⾦額は$54B(約5.4兆円)
2015年はVCからベンチャーへの投資金額、件数ともに記録的な年であったが、2016年はその反動が見られる。現在のペースでは、2016年通期の投資件数は2013年より若干少ない程度だが、金額は$100B(約10兆円)を超える見込み
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2016年Q2のVCからベンチャーへの投資件数は2013年Q2以来の最低⽔準
2016年Q2の投資は落ち込んでおり、投資件数は1886件、金額は$27.4Bであった。投資件数は過去3四半期に亘って減少しているが、金額は過去3四半期に亘って高い水準で推移している
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”グロバーバルでのVCの資金調達金額は若干増加しているが、特に海外の投資家はVCの投資へ注意しているようだ。2015年以降の巨額のIPOしたベンチャーの株価は、初値より低い水準で取引されている。そのため、未上場のベンチャーのValuationへ疑問視する声も上がってきている。また、中国やEUの経済への先行き不透明感も相俟ってVCからの投資を鈍らせている”
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2016年Q2では、シリーズA投資の割合が減少した為、シード投資の割合が増加
シード投資:2016年Q1に31%に減少したものの、Q2には回復し35%まで増加シリーズA投資:2016年Q1の25%からQ2には22%に低下他のステージでの投資はQ1と比べてほぼ変化なし
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アーリーステージ( シード+シリーズA)での平均投資⾦額は$2.3M(約2.3億円)に減少
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レートステージ(シリーズD及びそれ以降)の平均投資⾦額は$25M(25億円)に増加
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インターネットとモバイル関連の投資は全体の約2/3を占める
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アメリカのVC投資は件数ベースでは減少したものの、EUはほぼ変わらずアジアを抜いた
2016年Q2のアメリカのVC投資は件数ベースで1117件、金額ベースで$17B。つまり一件あたりの金額サイズが上昇していることを示唆。
[件数ベース] [金額ベース]
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“Brexitにより、ベンチャー活動が阻害される(disruptthedisruptors)可能性がある。現在の環境ではVCへの投資活動にいかなる影響が出るのか予想することは難しい。労働市場の流動性の向上、(クラウドファンディングなどにより)資金調達が容易になったことを含むいくつかの懸念がVC投資に影響を与えていると思われる。しかし間違いなく言えることは、Brexitによる影響はUKやEUに限らず世界に波及するだろうということだ”
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全案件に占めるCVCの割合は全体の約1/4であり、前四半期と変わらず
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サイバーセキュリティー分野の投資は2015年末にピークを迎えたが現在は回復基調
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デジタルヘルス分野への投資は前四半期に⽐べると落ち着きを⾒せている。アメリカ以外にもインドや中国でも案件が活発化。
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AI分野への投資は堅調に推移しており、投資⾦額は増加傾向
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アーリーステージへの平均投資⾦額につき、⽶国は上昇したものの、EUや中国では減少
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レートステージへの平均投資⾦額につき、アジアでは回復傾向
アジアでの平均投資金額は2015年Q4に$150M(150億円)まで上昇したが、16年Q1に$75Mまで下落16年Q2には$100Mまで回復。米国とEUではほぼ動きなし
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$100M(100億円)を超える⼤規模は資⾦調達は減少傾向
2015年は異分野からの投資家やCVCなどのベンチャー業界への投資が活発化した為大型の資金調達が目立った。米国:2015年Q3では37件→2016年Q2では14件。大型の調達は大きく減少アジア:2016年Q2では17件と堅調に推移しており、前期に続き米国を上回っている
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“投資家は以前に比べて、より投資先に関与する傾向が出てきている。
投資家は投資した金額が投資先のベンチャーのビジネスを維持し成長させることができるかと見極めたいと考えている。
また、投資家は投資先ベンチャーのビジネスモデルや、短期・長期のゴールに対しても口を出しているようだ”
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2016年Q2に誕⽣した新たなユニコーン企業は7社。2015年に⽐べると低⽔準で推移
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今期に誕⽣したユニコーン企業7社のうち5社は⽶国で、16年Q1に⽐べて増加
米国:今期に誕生したユニコーン5社はHumanLongevityやZoox、SMSAssistなど。アジア:15年Q2以降減少が続くEU:今期に誕生したユニコーン企業はゼロ。
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他地域での16年Q2の資⾦調達状況
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2016年Q2、⽶国の代表的Exit事例
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2016年Q2、その他の代表的Exit事例
*DCMが2社ランクイン
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2016年上半期の⽶国におけるVCからの投資⾦額は$32.6B(3.3兆円)、件数は2332件
大規模な資金調達案件が重なった為、2015年のVC投資は記録的な年となった。2016年は投資金額と案件ベースでは、2012年よりも低水準にて着地する見込み
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16年Q2におけるVC投資件数は1117件と、2012年の⽔準にまで⼤きく減少
一方、VC投資金額はUber($3B)Snapchat($1B)の調達の影響で$17Bに増加
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“2016年Q2におけるVC投資の金額は増加したものの案件数は減少したことはVC側が量より質を求めていることを示唆している。よって、短期もしくは中期でのVCの成功を分けるのは、選別された投資案件の成功であろう“
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ステージ別ではアーリーステージ(シード、シリーズA)が全体の約半分を占める
シードステージ:ピーク時の15年Q3では33%であったが、16年Q2では28%にまで減少(業界が活気付いている時には、果敢にシードへの投資が活発化すると示唆される)
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16年Q2のアーリーステージへの平均投資⾦額は$2.8Mと⾼値で安定して推移
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今期のレートステージへの平均投資⾦額は$25Mと低⽔準にて推移
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投資分野別では、インターネット分野への投資が増加し、全体の約半分を占める
ヘルスケア、モバイル・通信分野への投資は前期に比べて減少
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今期の資⾦調達案件トップ14。これらの合計資⾦調達⾦額は$6.4B(6400億円)
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今期のCVCが占める割合は全体の25%で、前期と変わらず
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”米国では多くの企業がCVCに参入しており、投資家はそれらの企業に対して、ベンチャーに投資するか、(M&Aにより)株主に還元してほしいと考えている。
企業は資本を有効活用する為に投資先を探しており、益々ベンチャーのM&Aが活発になっている”
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16年Q1における⽶国の最もActiveなVCはNEA。General Catalyst Partnersは⼤きく順位を上げ同率2位に。
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2016年上半期における⽶国のVC投資⾦額は$31.8B(3.2兆円)、件数は2194件
2016年通年では、投資金額は$60Bを超えるペースであるが、件数は2012年より少ない見込み
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16年Q2における投資件数はQ1より減少したものの、投資件数は増加
16年Q2における投資件数は1048件と、11年Q4以降最低水準にまで減少。投資金額はUberなどの大型調達により増加。
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”ベンチャーのValuationが低下しており厳しい市場環境下、投資家は投資していない訳ではなく、より慎重に投資している。
市場から弾かれる恐れは少ないものの、投資家は多くのプロセスを踏んでいる。例えば、DueDiligenceを厳しくしたり、複数の投資ラウンドを設定することなど。”
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カリフォルアは引き続き⽶国のVC投資を牽引している地域
カリフォルニア:15年Q3のピーク以降、3四半期連続で減少ニューヨーク:波はあるが過去の5四半期の中では最低水準マサチューセッツ:15年Q2以降、連続で減少
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16年Q2におけるVC投資⾦額はカリフォルニア地域では増加したがニューヨークとマサチューセッツでは減少
カリフォルニア:UberとSnapchatの資金調達の影響で大きく増加ニューヨーク、マサチューセッツ;過去5四半期の中で最低水準
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今期におけるアーリーステージへの投資は全体の約半分を占める
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⽶国のベンチャーに投資するVCのうち34%はカリフォルニアが本社
・16年Q2における米国のベンチャーに投資するVCのうち53%はカリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツが本社
・カリフォルニアが全体の34%を占め、リードしているが、イリノイやテキサス、ペンシルベニアは合計して28%を占める
・イギリスや中国、イスラエル本社のVCは全体の19%を占める
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カリフォルニアのVC投資推移
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ニューヨークのVC投資推移
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マサチューセッツのVC投資推移
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テキサスのVC投資推移
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北⻄地域(シアトルなど)のVC投資推移
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カナダのVC投資推移
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2016年上半期のEUでのVC投資はスロースタート
EUにおける2015年のVC投資は1600件、$14B(1.4兆円)という記録的な年であった2016年上半期では、750件、$6.3B(6300億円)とスロースタートであり、このペースでは2014年・2015年の水準で着地見込み
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”VCから投資を受けるベンチャーは技術力の高いプロフェショナル人材と多様性に基づいている。UKがEUを離脱するとなると、労働流動性を下げ、優秀な人材確保を阻害するのだろうか。
他にも例えば、市場へのアクセスのしやすさ、規制のフレームワーク、データのプライバシーや税金などの様々な課題がある、勿論、他にもBrexitによる全ての影響が顕在化するまでには時間がかかる見込み。”
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EUにおける16年Q2のVC投資は投資件数は増加したものの、⾦額ベースでは減少
投資件数:15年Q3以降、2期連続で減少したものの、今期は385件に増加投資金額:大規模な資金調達案件不足な為、今期は14年Q4以降初めて$3Bを割る
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投資ステージ別では、全体に占めるシード投資の割合が49%まで回復
16年Q1にシード投資の割合が38%まで落ち込んだものの、今期は49%にまで回復。その為、他のステージへの投資割合が減少。
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アーリーステージへの平均投資⾦額は若⼲落ち込み、$2.0Mへ
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レートステージへの平均投資⾦額は下落基調にあり、今期は$12.2M(12億円)へ
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投資分野別では、インターネット関連が全体の約半分を占める
モバイル・通信関連分野への投資割合は若干減少しており、17%@15年Q2→14%@16年Q2。
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EUでの資⾦調達トップ11の案件の合計調達⾦額は$1B(1000億円)以上
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全体におけるCVCの割合は増加傾向にあり、16年Q2は24%へ増加
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”2016年上半期は機械学習や人工知能の領域でUSからUKへの投資が活発でした。このことはUKのテック領域のエコシステムの強さとプロダクトの品質の高さを物語っている”
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EUにおける16年Q2のVCランキング
High-TechGuenderfondsは16年Q2に10社以上のユニークなベンチャー(Thermosome, Juniqeなど)へ投資しており、引き続きトップの座を守る。デンマークのSunstone Capitalは2位にランクイン。
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UKのVC投資推移
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ドイツのVC投資推移
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アジアにおける2016年上半期のVC投資⾦額は$14.6B(1.5兆円)、投資件数は732件
2012〜2015年は毎年、投資金額・件数ともに増加を続けてきたが、2016年通期は現行のペースでは投資金額・件数ともに2015年を下回る見込み
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アジアにおけるVC投資件数は3四半期連続して減少
投資件数:16年Q2の投資件数はQ1389件より更に減少し343件投資金額:16年Q2の投資金額はQ1$7.2Bより増加し$7.4B。主にDidi Chuxing,Weiyand Technology,UcarGroupの案件が牽引
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”アジアにおけるVC投資は現在非常に注意が向けられている。すぐに黒字するかCashFlowpositiveになる見込みがない限り、高いValuationを要求することは難しい。
投資家はますます案件を選別しており、コアなfundamentalsに注視するであろう”
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投資ステージ別では、シード投資の割合が39%へ増加
シード:33%@16年Q1→39%@16年Q2へ増加シリーズA:27%@16年Q1→21%@16年Q2へ減少
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アーリーステージへの平均投資⾦額は$2.0M(約2億円)へ減少
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レートステージへの平均投資⾦額は$100M(約100億円)に増加
平均投資金額を押し上げた主要な案件はDidi Chuxing,SpringRainTechnologies, Tokopedia
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投資分野ではインターネット関連が最⼤で、55%を占める
全体に占める割合はまだ小さいが、ヘルスケア関連への投資が増加しており今期は7%
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アジアにおける投資案件トップ10。合計調達⾦額は$4.1B(4100億円)以上。
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全体に占めるCVCの割合は34%と前期と変わらず
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16年Q2におけるアジアVCランキング
インドのBlumeVenturesが前回王者の500Startupsを抜いて首位に。3位はSequoiaCapitalIndia。日本勢は6位にEastVentures,10位にCyberAgent Venturesがランクイン
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16年Q2における中国の代表的な投資案件
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16年Q2におけるインドの代表的な投資案件
82
16年Q2における東南アジアの代表的な投資案件
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@NestHongo /Masahiro Sameshima
#NestHongo
鮫島 昌弘 (Masahiro Sameshima)
東京⼤学のある本郷三丁⽬近辺でテクノロジー系ベンチャーの起業⽀援や起業直後の⽴ち上げ⽀援を⾏っておりますので、ご興味・ご関⼼ある⽅はFacebookまたはTwitter経由でお気軽にお問い合わせください。