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とやま語りの会 県教育功労団体表彰祝祝

№44

富 山 地 区 生 涯 学 習 団 体 協 議 会 発 行富山市舟橋北町7-1県教育文化会館内県民カレッジ

平成22年12月(076)441-8401

幼稚園などで民話の語りに取りくみ、民話の収集・整理にも尽力している功績を認められ、本年度優良社会教育団体として表彰された。

講師 重要文化財 勝興寺保存修理工事棟梁 田中健太郎氏

「評価は二百年後」ニコニコパソコンクラブ 福田 修策

の仕事を残すことに意義がある。ノミやカンナの跡を見て、棟梁には「こんな大工がいたんだな」と、大工がそこにいるように感じられた。その大工の気持ちまで解かるような気がしたとのことだった。時を経て、宮大工として同じ現場に立ち、同じように組み上げた。「二百年前の大工と勝負できるのは職人冥利に尽きる、負けられませんね。二百年に一度解体するということは二百年後の大工に全部見られるということ、その時に平成の大工もなかなかやるじゃないかと言わせたい」とも話された。棟梁はとても気さくで、その腕の確かさは言葉の端々から伝わってきた。

平成の大修理を聴く平成の大修理を聴く・・観観るる7月237月23日日現地研現地研修修 雲雲龍龍山山 勝興勝興寺寺

平成の大修理が進む「ふるこはん」の名で親しまれる雲龍山勝興寺を見学した。棟梁から本堂などの解体や修理工事の過程で「かわら」「こけら」の中から江戸や明治時代の工事に携わった人の祠堂や落書きなどが見つかったことを紹介され「当時の人の心を表す貴重な資料である」と話された。寺建設のために住民が木材を寄進し、曲がった木も本堂の根継ぎなどで軒支柱として役立った。また、創建に込めた当時の住民や大工の思いを伝える事で先人の遺産を大切にする心、文化財を守る心意気が伝わってきた。文化財修理は、木材はもちろん釘一本でも再利用できるものは元に戻す、建物全体の構造を把握し、工事の進行や品質に責任を持ち何万点に及ぶ部材をすべて掌握し元に戻した。

江戸時代に携わった何百人の大工、何百種類の仕事があった。部材を残しそ

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平成22年度富山地区 「豊かな暮らしを求めて」-学びの楽しさ-教 養 講 座

いこい会 松井千枝子

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林 祥子

去る7月9日、教育文化会館にて「高岡御車山と高岡」と題して樽谷雅好氏を講師に迎えて教養講座が開催された。私は初めての参加であり少し戸惑ったが、大勢の参加者の学びに対す

講師は、QOL(Quality生活の質

oflife)を「生活の充実感」の視点から話された。豊富な知識や体験をもとに、グローバルな観点に立って、歴史、言語、環境、習慣、価値観などが多様な世界の

中で、日本人はハッピーであり、富山の人は恵まれた環境にあると言われる。日本という国籍があり富山という故郷がある。そして、水がふんだんにあり、おいしい食べ物もある。これはすごいことであり、とても恵まれている。個人の歴史もとても大切である。出生・名前・子ども時代、その後の自分、親の代も含めて自分のことを調べなければならない。講師は、自分の歴史を紹介しながら「叩けよさら

ば開かれん」という気持ちで、充実した仕事をしてきた人生について「好奇心が最大の薬」と言われる。「好奇心」は、この講座の参加者にもある。グループの話し合いでは、未知のことを知る喜び、教養を高める喜び、話を聞き話す喜びなど多くの人は生涯学習を自分の栄養としていることが分かる。さらに、感想を書いたり、調べたり、友達や家族に伝えたりして、学んだことを深め、広げている人もいる。すばらしい好奇心である。私は初めてこの講座に参加したが、こんなに沢山の人々(主に高齢者)が、好奇心いっぱいに自発的に学んでいる姿に驚き感動させられた。このような講座は、いたる所で開催されている。好奇心いっぱいにしてアンテナをはって「自分のハッピー」を自分で作っていかなければならない。充実感を求め、自分に合ったQOLを意識して求めていくことが大切である。健康QOL・生活QOLなどのテーマのもとにQOL向上にふさわしい生き方を選択して、培ったものを次世代へと伝えて行けたら素晴しい。

る真摯な姿に感動した。高岡御車山の花笠のなりたちやその歴史を中心として話された。美しい花笠の映像やそれにまつわるエピソードなどを話された。その発祥は1583年、後陽成天皇が聚楽第に行幸の

際使用された鳳輦が豊臣秀吉から前田利家を通じ高ホウレン

岡に下げ渡された。以後、高岡御車山〝祭〟として伝えられたとのことである。このような花笠は埼玉県秩父の夜祭の花笠や県内各地に見られ、その発祥

は人類史の初期、人間の生死にかかわる神事が時代とともに進化して行ったものと思われる。祭りは、「祀り」を母体として貴族から武家へ、長い年月を経て庶民のものとなったと思う。現在、高岡には7基の御車山を9町で保存しているとのことであった。今では私達の身近となっている「祭り」は、こうした歴史をたどって根付いたのだろう。こういう形で郷土の種々の文化や歴史を学ぶことはとても有意義であった。私達は何を学ぶかではなく、何でも学ぶという広い見地に立って身辺に目を向けるべきではないかと思った。小さな花の集まりで大きな花笠を作って郷土の文化「祭り」を楽しみたい。

高岡御車山と高岡 7月9日

講師 郷土史家 樽谷 雅好氏

個々人の「生活の充実感(QOL)」と 8月27日

生涯学習について考える講師 富山大学医学部保健医学講座 研究生 濱西 島子氏

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自遊塾 堀 俊弘猛暑も過ぎ、さわやかな秋の気配がするこの頃ですが、早朝は野鳥の鳴き声で目がさめ、夜は虫の奏でるオーケストラの音でにぎやかです。春には近くの公園にうぐいすが来、春夏秋冬

のある日本に留め鳥や渡り鳥が来ての鳴き声で季節の移りがあります。緑の豊かな自然がある本県の野鳥の色々の話を聞き、富山には300ほどで全世界では8700種類とのことで、余りの多さに驚きました。まだ発見されていない鳥もいるのでは?

スクリーンに映された50余りの美しい野鳥の映像には初めて見るものもありました。鳥は朝が早いので生態を映すには深夜からの活動であり大変だったと思います。「トキ」の声を聞き、ずっと富山に棲みついてもらいたいものです。平成3年に羽を傷めた白鳥が越冬し、翌年にシベリヤから帰った家族が見に来たという家族愛の話を聞き、心があたたまりました。立山には、氷河期を生きた化石といわれる「ライチョウ」がおり、県鳥であり、県の宝物です。ねいの里に県の自然博物園があり「自然に親しみ」「自然に学び」「自然を守る」の目的の施設があり、傷ついた鳥の保護や五箇山の「イヌワシ」の観察もし、希少動植物の保全の日々を見て、野鳥に限らず動植物の棲む里地、里山の環境は高度成長の時の人工的な開発や私達の生活様式も変わり、緑の豊かな自然が県の財産です。日々緑が少なくなりました。美しい郷土を皆の力で次世代に残したいものです。

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富山の野鳥事情 9月17日

講師 日本野鳥の会 富山県支部支部長 酒井 昌則氏

広域交流

講座「とやま地域学を探る」-福岡の歴史と文化-

講 義 9月10日現地研修 9月23日

講師 高岡市福岡歴史民俗資料館学芸員 日和 祐樹氏

「福岡町の歴史と菅笠づくり」の講義と現地研修の受講者101名は、日和氏とボランティアグループさくらの会 荻野良一氏の説明を受けながら、バス2台で福岡町へ。雨の中、草原の木舟城跡に着いた。バスの中で木舟城の図を見ながら、解説を聴いて木舟城の姿を想像した。遺構を見られなかったのは残念に思うが、発掘調査により四半世紀ぶりに木舟城と城下町が姿を現したと知った。次に、佐伯家広間に上がり、住宅の変遷の解説を聴いた。明治4年(1767)に着手し、主家の移築、つの、おろし、しょくじばが増築されたとのこと。にわ、だいどころ、ちゃのま、しょくじば、ねまなど自由に見学し、当時の生活を話し合った。高岡市福岡歴史民俗資料館では、菅笠コーナーに菅原が再現されていた。古代より伝承された笠縫いの手順を辿って観た。現在も活用されている菅笠は関心深い。縄文、弥生、古墳時代の埋蔵文化財、城ケ平出土品、上野経塚出土品を鑑賞した。福岡町雅楽の始まりの解説を楽しく聴いた。赤丸浅井神社は1300年前の式内、参道の杉は1000

年前の木という。大欅は幹回り9.3m、高さ20mと高く風格があった。雨の境内を歩いて歴史を思った。道の駅、メルヘンおやべで4地区会員が交流昼食会となった。記念撮影は楽しく声をかけ合っていた。つくりもんまつり見学は小グループで回るようにとのこと。数名が「ふくおか歩いた楽まっぷ」を手にして出発した。時代を映す野菜芸術とあるとおり、5mの 大 作「末広鏡獅子」は衣装の黒豆が光って帯の人参の赤を引き立て見事だった。「少年時代」昭和30年代の夏休みの子どもと家族を、小川に葱を使って作られ好評だった。つくりもんまつりは福岡町に生き続けると思った。

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世界一の長寿国日本、その平均寿命は男性79.6歳、女性86.4歳。私たちはどのように余暇生活を送ったら良いのだろうかと、種谷講師は提言された。余暇とは何か。(自由に使える創造的な

2010年レジャー白書から、昨年の余暇活動の参加者(ベスト5)①ドライブ ②国内旅行 ③外食④映画 ⑤音楽鑑賞であった。また、高齢者が生きがいを感じるときは1位 趣味やスポーツに熱中しているとき2位 孫や家族との団らんのとき毎年この傾向は変わらないようだ。「健康と長寿のコツ」として運動は大切長寿世界一の農夫ミスリモフさん(ソ連)は164歳まで土と共に生きたことを、1969年のスクラップ記事を見せ証明された。講義の中で、講師のスクラップの保存や余暇の活用について驚かされた。日本国内外の鉄道切符や切手の収集、更にその国まで出かけ、歴史も調べるというように深く入りこんでいる。70歳からピアノを習い初めて、ピアノまで購入してしまうなど。確かな資料による講義、実践している生き方を受講し、生涯学習に参加できる幸せを感謝している。後半は「あなたにとって余暇とは何ですか」について、7グループで討議した。

時間)と定義したい。1 生涯生活時間人生80年=70万時間の内訳は・生活必要時間 30万時間 ・労働時間 10万時間・教育時間 2万時間 ・自由時間 28万時間60歳~80歳までの自由時間は10万時間ある。2 時間の使い方について個性(健康 環境 能力 経済力 性格など)的なもので、方程式はない。しかし、目的をもつ。無理をしない。自分に適した趣味などを持つこと。3 ボランティア人のため、自分のために無報酬、公共性、先駆性、自発性の四精神にもとづいて行う。

なかまたちの声

あなたにとって余暇とは何ですか講師 富山県生涯学習インストラクターの会 副会長 種谷 祐治氏

10月15日

1 仲間と山登り、ウォーキング、カレッジや、市民大学で学んでいる。2 ラジオ体操、ラジオで経済学を学んでいる。和英辞書を読んで語学も。3 3つの柱をたて、地域の仕事、体力づくりは水泳、グランドゴルフ、趣味は水墨と俳句をしている。4 生活のリズム1日1回外へ出る。歩くこと。声を出すこと。笑うこと。5 80歳過ぎてからゲートボールをやっている。みんなでワイワイが楽しい。6 退職後、書道を習いコンクールに入賞。中国へも書の勉強で行ってきた。7 水墨画を始め、作品発表のための創作が自分への励ましとなっている。8 小物づくりが好き、福祉施設で「おはなし」のボランティアしている。9 園芸・『ラン』を育てている。体力づくりと植物を育てている。10 退職して富山へ帰ってきた。地域に貢献したい。11 月3冊の雑誌を購入し、読書で余暇を過している。12 元気に生きたい。新聞、ビデオの撮影で忙しく過している。13 家庭菜園が楽しい。14 美術館めぐりの目標を立て、現在6年間で155館になった。15 文章を書く、日記を書く。16 ママさんコーラスに加入。毎年12月に第九を歌っている。17 90歳の母を介護しながら、時間を作り講座にきている。

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期待感でお話に引き込まれ和漢膳の魅力、元気に過ごすための知恵をいっぱいいただきました。健康回復によいのは、①牛、②鶏、③豚のどの肉かのなぞなぞでは正解は鶏肉でした。渡り鳥のスタミナはその胸肉にあり鶏肉は疲労回復に抜群とのことです。正解者には、机上に所狭しと並べられた先生の著書や生薬の実物、商品「KUROTIKARA」や和漢膳カレーのプレゼントをしていただき、会場が一気に盛り上がりました。

医療費が34兆円にもなる現在、病気を予防をする視点でいかに免疫力を高めるかが健康のキーワードになっているそうです。親から受け継いだ良い遺伝子は、四分の一で、あとは環境であり三度の食習慣が一番大きいとのこと。つまり、食事に気を付ければ健康であるということになります。板倉先生は、「幸福は口福から」と様々な例を挙げて分かりやすく教えてくださいました。体の不調な状態を未病と言い、その時の体のバランスの崩れを薬や食品で治そうとするのが東洋医学であるなど興味深く伺いました。和漢膳とは栄養価の高い食材をそれぞれの体質にあわせて食べるので、バランスの崩れが早く整うのが魅力である。是非、和漢膳を体験したいと思いました。また、体が喜ぶ食品を摂ることを勧められ、薬効成分の顕著な高麗人参、貝母、なつめなどの紹介もあり、大変参考になりました。「季節ごとに体の衣替えをしましょう」の言葉が心に残り、日頃の食生活を猛省し、体の声に耳を傾けながら日本人の体に合った食事を心掛けようと強く思います。多くの学びと気付きを下さった板倉先生に心よりお礼を申し上げ、健康・幸せの輪が広がることを願っています。

「36年間病欠なし、平均睡眠時間5時間、視力1.5」国際薬膳食育学会会長として出版やテレビ出演など全国で大活躍の板倉先生のお元気な様子に圧倒され、先生のパワーの源を知りたい

く、そして面白く、井上ひさしの言葉を思いうかべるような語りぶりに、親しみと温かさを感じた。論説は4名で編成され、3名が社説を担当、1名がコラム(天地人)を担当している。一日として、休む暇なく、限られたスペースに書き綴らなければならない仕事である。しかも〆切り時間があって、それに間に合うように記事を作成するには大変気づかいを伴う。毎日他紙の隅々まで目を通し、関連資料を読み、疑問点を調査する。書類とにらめっこの連日であるという。

スポーツや事件についてはよく話題になるが論説は話題としては少ない部門であろう。原稿は予定より早く仕上ったときはホッとする。論説とはピッチャーの剛速球と云える。何々をこうすべきであると、ずばり直言しなければならない。どうやって論旨を組み立てるかに頭をひねる。一方コラムは、変化球であるから、いろんな角度から投げ入れられ、面白い面をもっている。昨年は、長く続いた自民党政権に変わって民主党政権になった。政権交代によって、日本人の多くが、よりよい日本を期待したが、思うように進展していない。最近、総理のイスが度々変わる状況にあり、安定度を欠いている。過去の総理の気質、考え方、また将来への展望など、ユーモアを入れて解説をいただいた。今後、ますます少子高齢化が進み、その対策、日本教育の現状、安全で安心できる日本のあり方など、多岐にわたってその問題点も指摘をいただいた。要は、国民一人一人がしっかりと考えて行動しなければならない。また、最近は、多くの人が「携帯電話」を主流にしているが、活字文化を大切にし、本や新聞を見なおす事が大切であろうと考えた。

論説と聞いただけで、むずかしく、かたい記事を連想し、それを書く人も、一般人と違った高度な知識と教養にあふれ、接しがたい人と考えていた。ところが講師はむずかしいことをやさしく、やさしいことを深

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五十嵐俊子

「論説の仕事」について 11月12日

講師 北日本新聞社論説委員長 稲垣 雅則氏

和漢膳で元気百歳 10月22日

~幸福は口福から~講師 国際薬膳食育学会

会長 板倉 啓子氏

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(講 義)①7月1日 ②7月15日③8月5日 ④9月2日⑤9月16日

会場:県教育文化会館 ハイビジョン学習室(現地研修)⑥10月7日

会場:富山県立図書館

ふふるさと富山ふるさと富山再再’10セミナー

講師 富山県立図書館 館長 立野 幸雄氏

一般的に、富山は文学不毛の地と言われているが、調べてみると富山に関した文学は数多くある。ただそうした作品の整理が行われていない。その結果知らせるということが行われなかった。それがこのような結果を招いたといえよう。今回はその中より、金沢に生まれ富山にも一時滞在し、富山を舞台にした作品を数多く書いている泉鏡花をとりあげて考えて見たい、との言葉からセミナーは始まった。

◆越後の国境の怪異『湯女の魂』小川温泉を舞台に口伝という形で発表された『湯女の魂』は、大きな蝙蝠が男への思いを断ちきれず病床に臥す湯女の魂を尋ねてきた男の友達に預け、東京まで運ばせるという、こちらの胸までひっかき

まわされるような不気味な話である。結局女性は死亡、男性は独身でいます、で話は終わっている。ではなぜ小川温泉なのか。鏡花のなかには、いままでに読んだ『奥の細

道』の市振・謡曲『山姥』があったのではないか。また『山姥』の舞台である上路(あげろ)は(山一

つ隔てて小川温泉)都からは、東北への境界線として考えられていたと思われる。そうした背景が小川温泉を選ばせたのではないか。この物語には蝙蝠が大きな役割を果たしている。前半は原因のわからない恐怖、後半になってある特定の人にまつわりつき苦しみを与える恐怖。このように二つの怖さの違った話を組み合わせた形でこの物語は構成されている。蝙蝠については、これより前に書かれた『蝙蝠物語』(未完)があるが、この中にも笹川(朝日町)という地名がでてくるなど、その土台にはいろんな物語がある。

◆加賀国境の怪異『星女郎』舞台は倶利伽羅峠。一軒だけ残った廃屋に近いかっての茶屋に住む若く美しい女性と、その姉のような存在の貴婦人に、女の業の怖さを感じさせる話である。この作品は、鏡花35歳の作で自然主義全盛の時代に、現実ばかりが面白いのではない、こんな幻想的な世界もあるのだと、当時の文壇に反旗を掲げたものといわれる。

◆市井の怪異 富山の魔界『蛇くひ』明治の初めころ、神通川のほとりの佐々成政別邸跡、郷屋敷田圃に異様な乞食の集団がいて、富山市街に出ては物乞いをするが、それを拒むと後日、店先や戸口に蛇を持ってきて、それを食べ、あたりに吐き出して報復する。その集団は神出鬼没で実態がつかめない。彼らが現れると町中が怖れ「屋敷田圃に光る物ァ何じゃ/虫か、蛍か、蛍の虫か/虫でないのじゃ、目の玉じゃ」と童謡にも唄われるようになる。それが後に、「応」と呼ばれるこの不気味な集団

毎年7月の祇園会に梅沢町の円隆寺ではゆかたに赤い前かけ姿の少女達が輪になって踊る

セミナーを受講して

作品の底辺にあるものを読むとやま“おんなの哲学”研究会 中田 睦子

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小説に書かれた富山泉鏡花を中心として発発見講発見講座座

テーマ「越中文学探訪」

谷』を改題・短くしたもので幻想小説であり、『高熱隧道』は徹底的に調べたものを底辺に、自分のテーマに沿ったものを選んで作り上げられた、真実味を帯びた虚構の世界であって記録小説とは異なるものである。しかし、彼が執着したのは、あくまで『水の葬列』だったと思われる。

《現地研修》10月7日、セミナーも最終回を迎え県立図書館を中心に現地研修という形で行われた。まず、県立図書館 多目的ホールにおいて立野先

生による早百合姫伝説とは、微妙に似て微妙に違う泉鏡花の『黒百合』の世界について聞く。続いて、県立図書館副主幹 高岡 徹氏による「赤丸城主とその経済活動」と題し、先般福井県敦賀市で発見された中山正弥家文書(米の借用資料)より知ることができた、赤丸城(旧福岡町)領主の勧農や経済活動などについての講義があった。昼食後は、2班に分かれて図書館内を見学する。普段私たちの入ることのできない書庫で古絵図・古文書などの貴重な品々の保管状況や実物を見せてもらう。また県立図書館の役目として、個人への閲覧・貸し出しは勿論だが、市町村図書館へのサポートがむしろ大きいとの説明を聞く。次に向かった埋蔵文化財センターでは、数日後に迫った特別展に備えての展示作業及び収蔵庫を見学。立派な桐の箱で保管された土器を、どのように展示するかに真剣に取り組む職員の姿に感動した。最後は公文書館である。ここでは公文書や古文書などの収集・整理・保存が行われ、そうした資料の重要性を痛感した。

「正面の向きはこちらがいいのかな」特別展展示にむけて準備に忙しい職員たち

神通川堤土の一本榎

の出現を予告するように、町中に響くようになる。乞食は、仏語で信仰心が底辺にあり修行の一つであって仕返しをするのにもルールがある。ちなみに、この童謡は

「サンサイ節」に変わる。「応」の手段は、山地の民が平地へ降りてきた時の様子をモデルに書かれたのではないか。『蛇くひ』の世界は、子供の無意識の混沌とした世界が創りだした心象世界なのかもしれない、というのが先生の考察である。

◆市井の怪異 富山の魔界『黒百合』富山県知事令嬢の勇美子が花売り娘お雪に、人跡未踏の深山石滝(いわたき)に咲く黒百合が欲しいというところから、この黒百合採りをめぐって波乱に満ちた筋が展開される。

この物語は町なかの一本榎から始まり、黒百合が咲くという魔の世界石滝、すなわち立山の地獄へと続いている。※鏡花は、好きな“草双紙”や“のぞきからくり”の影響を強く受け、現実社会にいながらパッと目前に異なるパノラマの世界を展開する。このように鏡花には、物語の底辺に幼いころから培われた知識や、経験がある。それをどのように読みとるかが彼の作品には特に大切なのだ、ということを先生は示唆されたのではないだろうか。

○黒部の二つの顔 吉村昭~『水の葬列』と『高熱隧道』をめぐって~

『水の葬列』は、35歳の時に発表された『墳墓の

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富山県教育文化会館旧知事公館

金井会長より表彰状をいただく中川速子氏 抹茶茶碗の説明をされる新夕嘉久子先生

永松美恵子団体表彰 稲 穂 会

秋晴れのよき日、会発足30年を迎えその喜びに加え、富山県生涯学習団体協議会より表彰されるという二重の喜びを味わいました。また思いがけず新メンバー4名も加わり、毎月の学習会も活気がでてきました。これも長い期間テキストと場所を提供してくださった図書館や公民館の皆さま、パネルを作るとき、お力添えをしてくださった協議会の皆さまに感謝を込めて頑張ろうと思います。

生涯学習の祭生涯学習の祭典典 第22回第22回 県民カレッジ県民カレッジ学遊祭学遊祭

喜びの鈴木氏

晴天に恵まれた去る10月2日、県民カレッジ学遊祭が開催された。柴田理恵氏の講演や旧知事公館のお茶席も幸いしたのか、会場はぶつかり合うほどの方が訪れてくださった。富山地区生涯学習団体協議会は、教養講座、現地研修、交流会、’10セミナー、自主講座など日頃の学習の

成果をパネルにして展示した。ホールでは10時から式典が行われ、加藤学長、金井会長の挨拶、富山県教育委員会教育長から祝辞をいただいた。

つづいて行われた表彰式では、単位認定証授与式があり、富山地区生涯学習団体協議会で学んでいる鈴木義雄氏が『県民カレッジマスター』として表彰を受けた。また吹澤幸治氏も『県民カレッジアドバイザー』として認定証を授与された。生涯学習団体では永きに渡って地道に活動をつづけてきた読書会『稲穂会』が表彰された。

ステージでは、洋影編物教育会の詩舞「天草洋に舟を泊す」、剣詩舞天黎会の詩舞、剣舞など、日頃の練習の成果をたくさんの人の前で堂々と演じていた。つづいて、富山県出身の柴田理恵氏のトークショーに会場は温かくなごやかなムードで包まれた。


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