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遷移金属複合酸化物を用いた新しいタイプの可視光応答光触媒
宇都宮大学 工学研究科 物質環境化学専攻
助教 手塚 慶太郎
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光触媒
1. 有機物を分解出来るので,防汚・殺菌
すでに実用化
2. 水やアルコールを分解し,次世代クリーン
燃料の水素の合成に有望
まだ実用化されていない
用途
光のエネルギーを用いて化合物を分解
主にTiO2等の酸化物
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光触媒による水の分解
H2O
H2
H2O
O2
e–
h+光
TiO2の研究が主紫外線:380 nm以下
クリーン燃料の水素の合成に有望
これまで
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光触媒による水の分解
太陽光スペクトル
200 400 600 800 1000
強度
/ a.
u.
波長 / nm
可視光活性型の光触媒が必要
光触媒のバンド構造
1.23 eV: 1008 nm Ti4+: d0 d軌道は空Zn2+: d10 d軌道は満
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Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga GeZr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In SnHf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb
d0 d10dn
可視光活性光触媒の開発
d0またはd10電子配置のイオンを含む金
属酸化物に関する研究が主流だが,一般的にバンドギャップが大きすぎて可視光活性を示さない。
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光触媒開発 (可視光活性化)
① (オキシ)硫化・窒化物
② 複合化
③ d遷移金属酸化物
新しいアプローチ
従来技術
本技術
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①オキシ硫化物,オキシ窒化物創製
ABOS, ABON (A, B = 金属)
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②複合化 (Z-スキーム型)
A
2種類の化合物を用いた2段階反応
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③ d遷移金属酸化物の検討
3d電子が妨害し,
光触媒活性を示さないとされてきた
満たされていない3d軌道
価電子帯の準位を上げる
可視光活性に有望
しかし
Ti4+: d0 d軌道は空Zn2+: d10 d軌道は満
電子配置
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③ d遷移金属酸化物の検討
d5電子系
正八面体結晶場では,遷移はほとんど起きない
t2g
eg
正八面体場
1.d10系に近い電子状態
2.可視光活性
複合金属酸化物MgFe2O4, CdFe2O4, MnGa2O4
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100
80
60
40
20
0
800700600500400300
波長 (nm)
反射率
(%)反射率測定
MnGa2O4
MgFe2O4
CdFe2O4
ZnO
TiO2
12
80
60
40
20
0300025002000150010005000
H2
CO
Ar
MgFe2O4を用いた全波長 (200 ~ 1100 nm) での
メタノール分解反応により発生した気体の変化量
Time / sec
Inte
nsity
/ a.u
.
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MgFe2O4を用いた全波長 (200 ~ 1100 nm) での
メタノール分解反応により発生した気体の変化量
Time / sec
Inte
nsity
/ a.u
.
CH3OH → HCHO + H2 → CO + 2H2
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0300025002000150010005000
14
80
60
40
20
03000200010000
80
60
40
20
03000200010000
水素発生量
MgFe2O4
MnGa2O4
CdFe2O4
Time / sec
Inte
nsity
/a.u
.全波長(200 ~ 1100 nm) 可視光(400 ~ 800 nm)
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従来技術とその問題点
実用化されている酸化チタンは,紫外光のみで,可視光に対しての活性がない。
・太陽光の有効利用ができない。
・室内灯による活性が低い。
可視光活性があるオキシ硫化物やオキシ窒化物は,不安定なものが多い。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来は紫外光の使用に限られていたが,本技術では可視光応答性を持たせることができたため,太陽光の有効利用や室内での蛍光灯などでも機能することが可能となった。
• 従来,光触媒はd0とd10電子配置の金属化合
物に限られると信じられてきたが,本技術により,元素・化合物選択の幅が広がった。
• 新技術の光触媒は,金属酸化物であるので従来技術のオキシ硫化物やオキシ窒化物に比べて安定である。
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想定される用途
• 太陽光や室内灯等の光を使った水素生成反応
• 太陽光や室内灯等の光を使った防汚,除菌などの有機物分解
–本技術の光触媒をコーティング・混合し,セルフクリーニング・除菌効果を持たせた塗料・材料
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想定される業界
• 想定されるユーザー
– 光触媒を用いた水素合成を目指している会社
– 光触媒を混入することにより,セルフクリーニング・抗菌などの機能を持たせたい塗料・材料メーカー
• 想定される市場規模
水素製造と有機物分解の光触媒の市場規模は大きい。
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実用化に向けた課題
• 現在,可視光応答性を持たせることには成功済み。しかし,高効率化が課題。
• また,より長波長の光にも活性を持たせる必要があり,今後,活性の波長依存性や光触媒材料のバンド構造などを詳細に調べて,より高効率でかつ長波長で活性を持つ光触媒材料の開発を行う。
• 耐久性は,酸化物なので十分あると考えられるが,長期間の試験を行っていないので,検討が必要。
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企業への期待
• 新しいタイプの光触媒の共同開発を希望 。
• 光触媒を実際に実装する技術を持つ,企業との共同研究を希望。
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本技術に関する知的財産権
発明の名称 :光触媒,水素製造方法,
及び有機物分解方法
出願番号 :特願2008-213017出願人 :宇都宮大学
発明者 :手塚慶太郎,渡部善之,
単躍進,井本英夫