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視床下部におけるオレキシン、バソプレシン、オキシトシンの
相互作用に関する神経ネットワークの形態学的解析
間下 智浩
要旨
オレキシンは、摂食亢進物質として発見され、近年では覚醒・睡眠系、ストレス応答系、生殖活動などに関与
することで注目されている神経ペプチドである。本研究は、生理的機能においてオレキシンと同様に生殖活動や
ストレス応答、摂食飲水行動に関与するオキシトシン、バソプレシンと、オレキシンとの脳内神経ネットワーク
を詳細に検索することを目的とした。オレキシン-A、オキシトシン、バソプレシンにそれぞれ特異的な抗体を用
いて蛍光二重免疫組織化学を行った結果、視床下部の室傍核、視索上核においてオレキシン-A 免疫陽性神経線維
がオキシトシンやバソプレシン免疫陽性細胞へ近接する様子が観察され、更に視交叉上核においてもオレキシ
ン-A 免疫陽性神経線維がバソプレシン免疫陽性細胞へ近接する様子が観察された。また、視床下部外側野におい
ては、オレキシン-A、オキシトシン、バソプレシンの各々の免疫陽性細胞が隣接して分布していることが分かっ
た。これらの結果は、オレキシンニューロンとオキシトシンやバソプレシンニューロンの相互作用を考察する上
において、形態学的に重要な示唆を含む結果と考えられ、これらのペプチドニューロンが上記の生理的機能の制
御に協調して働いている可能性を示唆するものである。
Ⅰ.はじめに
オレキシン(orexin)は 1998 年にオーファン G
タンパク共役型受容体のリガントとして発見され
た比較的新しい神経ペプチドであり、脳室内に投
与したところ動物の摂食が亢進したことから、こ
の名がつけられた 1)。オレキシンは、前駆体ポリ
ペプチドであるプレプロオレキシンから、オレキ
シン-A とオレキシン-B の 2 種類が合成される。オ
レキシン-A は 33 アミノ酸残基、オレキシン-B は
28 アミノ酸残基からなるペプチドで、オレキ
シン-Aは分子内に 2対のジスルフィド結合を有す
る。オレキシンに対する受容体も、OX1 受容体、
OX2 受容体の 2 種のサブクラスが存在しており、
OX1 受容体は、オレキシン-A に対する親和性がオ
レキシン-Bに対する親和性と比較して 50倍高く、
OX2 受容体は、オレキシン-A とオレキシン-B に対
する親和性がほぼ同じである 1)。
オレキシンを産生するニューロンの細胞体は、
主に視床下部外側野に局在し、その神経線維は小
脳を除く中枢神経系全域にわたっている 2・3)。逆
に、オレキシンニューロンへの入力は、主に弓状
核で体内の栄養状態を感受し、摂食調節に関与し
ているニューロペプチド Y(NPY)、αMSH(α
Melanocyte Stimulating Hormone)、AGRP(agouti
related peptide)などの産生ニューロンが投射し
ている 4)。オレキシンニューロン自身もグルコー
スに対する感受性があり 5)、さらには脂肪組織か
ら分泌されるレプチン(leptin)に対する受容体
を発現していることから 6)、オレキシンは、一つ
には栄養状態に応じて、摂食量を調節していると
考えられている。その後、ナルコレプシー
(Narcolepsy, 睡眠障害)患者やナルコレプシー
のモデル動物において、オレキシンニューロンの
脱落が観察され 7)、オレキシンニューロンはモノ
アミン神経系の起始核である青斑核( locus
coeruleus)や逢線核(raphe nuclei)、結節乳頭
体核(tuberomamillary nucleus)、橋のコリン作
動 性 神 経 の 起 始 核 で あ る 外 背 側 被 蓋 核
(laterodorsal tegmental nucleus)と脚傍核
(pedunculopontine nucleus)など、脳幹の覚醒
系へ豊富に投射していること 2)が明らかとなり、
睡眠・覚醒にも関与していることが示された。オ
レキシンニューロンへの入力としてもう一つ明ら
かなのが、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
(corticotropin releasing hormone, CRH)産生
ニューロンからの入力である。オレキシンニューロ
ンも視床下部室傍核へ投射しており、オレキシン
ニューロンの活動性はストレスに応答して増加す
90
ることから、ストレス応答系との関係も示唆されて
いる 8)。また、オレキシンニューロンは視床下部
の視索前野へも投射しており、生殖内分泌系 9・10)
や性行動 11)にも影響を与えることが報告されて
いる。
オレキシンニューロンの神経伝達物質に対する
応答性は、GFP(Green Fluorescent Protein)導
入トランスジェニック動物を用いた電気生理学実
験やカルシウムイメージングの実験によって調べ
られている。後者の実験によると、オレキシン
ニューロンはモノアミン系の神経伝達物質に対
しては抑制性に応答する一方で、バソプレシン、
オキシトシンに対しては興奮性に応答することが
報告されている 12)。
オキシトシン( oxytocin)とバソプレシン
( vasopressin ) は 、 視 床 下 部 の 視 索 上 核
(supraoptic nucleus)や室傍核(paraventricular
nucleus)のニューロンで主に産生され、下垂体後
葉まで投射して血中に分泌される、下垂体後葉ホ
ルモンとして知られている。これら二つのペプチ
ドは、共にアミノ酸 9個から構成され、ジスルフィ
ド結合を有する構造となっている。これらのペプ
チドをコードする遺伝子は第 20 染色体上にあっ
て、3 つのエクソンから成り、ともにニューロフィ
ジンの遺伝子をコードしている点で類似している。
オキシトシンの生理的作用は、分娩時の強力な子
宮平滑筋の収縮作用や授乳期の乳汁分泌、母性行
動の誘発など生殖活動との関わりがよく知られて
おり、更に摂食抑制、不安行動抑制、ストレス刺
激に対する ACTH(adrenocorticotropic hormone)
放出抑制、攻撃行動の抑制など様々なる作用を有
することも報告されている。オキシトシン受容体
は、扁桃体(amygdala)、内側視索前野(medial
preoptic area)や分界条床核(bed nucleus of the
stria terminalis)、縫線核などの中枢神経系 13)
と、子宮などに存在している。一方、バソプレシ
ン受容体は、V1a、V1b、V2 と 3 つのサブタイプが
あり、V1a 受容体は、中枢神経系の中隔野、大脳
皮質、海馬(hippocampus)と血管平滑筋や肝臓に、
V1b 受容体は下垂体、大脳皮質、扁桃体、海馬に、
V2 受容体は主に腎臓に発現している。バソプレシ
ンは V1a 受容体を介して空間認識 14)、正常血圧維
持 15)に、V1b 受容体を介して ACTH 分泌のストレス
応答系 16)に、V2 受容体を介して抗利尿作用として
働いている 17)。血中ホルモンとして知られてきた
オキシトシンやバソプレシンだが、脳内において
も放出されており、神経伝達物質として働くこと
により、ストレスや社会行動、精神障害に関与し
ていることが示唆されており、中枢神経系におけ
る機能が注目されている。
以上のようにストレス応答系や摂食・飲水行動、
生殖活動などの共通な生理的機能において、オレ
キシンとオキシトシン、オレキシンとバソプレシ
ンは、相互に影響し合っている可能性が考えられ
る。実際、V1a 受容体を発現するオレキシンニュー
ロンが飲水行動の誘起に関わっていることを示唆
する研究 18)や、妊娠や授乳期におけるオレキシン
発現量の変化を示した研究 19・20)などが報告されて
おり、これらのペプチドニューロンが神経ネット
ワークを形成している可能性は高い。しかしなが
らオレキシンニューロンからの視床下部室傍核や
視索上核、視交叉上核への投射は報告されている
が、具体的にどのような神経伝達物質を有する
ニューロンへ、オレキシン神経線維が入力している
かを調べた報告は尐ない。また、オレキシンニュー
ロンの細胞体へオキシトシンやバソプレシンの神
経線維が入力していることを示した報告もほとん
どない。
そこで、本研究では、オレキシニューロンとバソ
プレシンやオキシトシンニューロンとの神経ネッ
トワークを、蛍光二重免疫組織化学を用いて詳細
に調べ、それぞれ細胞体と神経線維の脳内分布の
相関を形態学的に明らかにした。
Ⅱ.方法
1.実験動物
8 週齢 成熟 Wistar 系雄ラット 5 匹
2.使用機材
・クリオスタット(CM3050S,LEICA 社)
・マイクロウェーブ(東屋医科器械社)
・光学顕微鏡(AX80,OLYMPUS 社)
・画像解析ソフト(DP Manager,OLYMPUS 社)
3.一次抗体
・Rabbit anti-vasopressin 抗体(AB1565)
・Rabbit anti-oxytocin 抗体(AB911)
(CHEMICON 社)
AB1565、AB911(CHEMICON 社)は、それぞれ
バソプレシン、オキシトシンに特異的であるこ
とが、吸収試験により確認されている 21)。
・Rabbit anti-orexin-A 抗体
91
この抗体は、orexin-A に特異的で、orexin-B
には交叉しないことが確認されている 22)。
4.試料作成
ラットにペントバルビタールを腹腔内注入
して十分な全身麻酔をした後(50mg/kg body
weight)、開胸して左心室から生理食塩水を灌
流し、さらに 4%パラホルムアルデヒド-リン酸
緩衝液(pH7.4)を用いて灌流固定を行った。
脳を摘出し、同固定液で更に一晩浸漬固定した
後、30%ショ糖-リン酸緩衝液 2日間浸透させ、
液化炭酸ガスを用いて急速凍結した。クリオス
タットを用いて厚さ 25μmの冠状断切片を作成
し、0.1M リン酸緩衝食塩水(phosphate-buffered
saline, PBS)にて 4℃で保存した。
5.酵素抗体法による免疫組織化学
保存しておいた切片を 0.3%Triton-X100 が
含まれる PBS(PBST)にて、5 分間洗浄を 3 回
行い、内因性ペルオキシダーゼによる非特異的
反応を防ぐ目的で 0.3%過酸化水素液にて 10分
間ブロッキングを行った。PBST にて洗浄した後、
5%ヤギ血清に、マイクロウェーブを用いて 10
分間反応させた。次に、ウサギ抗バソプレシン
抗体(1000 倍希釈)、またはウサギ抗オキシト
シン抗体(500 倍希釈)、またはウサギ抗オレキ
シン-A 抗体(1000 倍希釈)と、4℃で 2 日間反
応させた。切片を PBST で洗浄後、ビオチン標
識ヤギ抗ウサギ IgG 抗体を、マイクロウェーブ
を用いて 10 分間反応させた。PBST にて洗浄し
た後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジ
ンとマイクロウェーブを用いて 10 分間反応させ
た。PBS、 0.1M リン酸緩衝液(phosphate buffer
solution, PB)で洗浄した。切片を 0.05% 3,3-ジ
アミノベンジジン( 3,3-diaminobenzidine,
DAB)と 0.01% 過酸化水素を含む反応溶液に浸
し、顕微鏡下で観察しながら反応させ、十分に
染まったところで蒸留水(distilled water,
DW)に移して反応を停止した。PB にて洗浄した
後、切片をクロムゼラチン塗抹スライドガラス
にマウントし、乾燥・脱水したのちに封入した。
オレキシン-A では、脱水の前にクレジルバイオ
レットを用いてニッスル染色を行った。
6.蛍光二重免疫組織化学
切片を PBST にて、洗浄した後、ウサギ抗バ
ソプレシン抗体(1000 倍希釈)、またはウサギ
抗オキシトシン抗体(500 倍希釈)と、4℃で 2
日間反応させた。切片を PBST で洗浄後、遮光
して Alexa488 標識ロバ抗ウサギ IgG 抗体(500
倍希釈)と反応させた(室温 25℃,2 時間)。PBST
で 洗 浄 後 、 Zenon Rabbit IgG - Alexa568
Labeling Kits(Molecular Probes 社)で直接
標識されたウサギ抗オレキシン-A 抗体(1000
倍希釈)を反応させた(室温 25℃,2 時間)。PBS
で洗浄し、切片をクロムゼラチン塗抹スライド
ガラスに貼り付け、十分乾燥させた後、封入し
た。標本は、蛍光顕微鏡を用いて観察および撮
影記録し、DP Manager を使用して画像を重ね合
わせ、解析した。
Ⅲ.結果
1.酵素抗体法による免疫組織化学染色
(1)オキシトシンの免疫染色
多数の免疫陽性の細胞体が、視床下部の室傍
核、視索上核に密集して観察された(図
1-A,B,C)。室傍核の免疫陽性細胞体は、外側部
の大細胞性領域に多数観察され、内側部や腹側
部にもわずかながら分布する様子が観察された
(図 1-B)。視索上核の免疫陽性細胞体は、吻尾
にわたって分布する様子が観察された(図 1-C)。
その他、特徴的なものとしては、尐数の細胞が
凝集している、視床下部の nucleus circularis
(図 1-D)の細胞集団に免疫陽性反応が認めら
れた。
免疫陽性神経線維は、室傍核から起始して外
側へ向かい、その後に腹側へ向かって走行し、
視索上核(図 1-C)から起始する免疫陽性神経
線維に徐々に合流して、尾側の正中隆起へと伸
長している様子が観察された(図 1-F)。この線
維束は途中、視床下部外側野の脳弓周囲を通過
していた。また、室傍核と視索上核を結ぶ線維
束の走行路の中間的な位置にもオキシトシン免
疫陽性細胞体が散在している様子が観察された
(図 1-E)。これらの散在性の細胞体は、尾側で
は、視床下部外側野の領域にも存在した。
(2)バソプレシンの免疫染色
多数の免疫陽性の細胞体が、視床下部の視索
上核(図 2-A,B)、室傍核(図 2-B)および視交
叉上核(図 2-A)に密集して観察された。視索
上核の免疫陽性細胞体は、吻尾にわたり分布し
ている様子が観察された(図 2-C)。室傍核の
免疫陽性細胞体は、外側部の大細胞性領域を中
92
心に、内側部や腹側部に存在する細胞にも分布
している様子が観察された(図 2-D)。視交叉
上核の免疫陽性細胞体は腹内側部に、密な免疫
陽性神経線維とともに分布している様子が観
察された(図 2-E)。Nucleus circularis(図
2-F)の細胞集団は、バソプレシンに対しても
免疫陽性が認められた。
免疫陽性神経線維の分布は、室傍核の細胞群
から起始する豊富な線維束が、腹外側へ向かい、
視床下部外側野の脳弓周辺を走行したのち(図
2-B)、方向を変え、視索上核から起こる線維束
と共に内側へ向かい、尾側の正中隆起へと伸長
している様子が観察された(図 2-G)。この室傍
核から視索上核へつながる免疫陽性神経線維の
走行路の中間的な位置に複数のバソプレシン免
疫陽性細胞体が散在しており、視床下部外側野
の脳弓周辺を含め、免疫陽性細胞体が吻尾にわ
たって散在している様子が観察された。
(3)オレキシン-A の免疫染色
免疫陽性の細胞体が、視床下部外側野から脳
弓周囲に限局しており、特に脳弓の背側を中心
に多数の免疫陽性細胞体が吻尾に渡り分布して
いる様子が観察された(図 3-A)。
オレキシン-A 免疫陽性神経線維は、弓状核や
視索前野などに密に分布した他、バソプレシン
とオキシトシン産生神経細胞体が存在する視床
下部室傍核(図 3-B)、視索上核(図 3-C)およ
びバソプレシン産生神経細胞体が存在する視交
叉上核(図 3-D)などにも多くの免疫陽性神経
線維が観察された。室傍核においては外側部、
内側部および腹側部の細胞群ともに豊富に免疫
陽性神経線維が投射していた(図 3-C)。視交叉
上核の免疫陽性神経線維は、バソプレシン産生
神経細胞体が存在している核の腹内側に投射し
ている様子も観察された。(図 3-D)
その他、前述のオキシトシンおよびバソプレ
シンの免疫陽性細胞が観察された Nucleus
circularis の近くにもオレキシン-A 免疫陽性
神経線維の走行が観察された(図 3-E)。
2.蛍光二重免疫組織化学
(1)オレキシン-A とオキシトシンの蛍光二重
免疫組織化学
室傍核では、オキシトシン免疫陽性細胞体の
集団の中にオレキシン-A 免疫陽性神経線維が
多数投射している様子がみられ(図 4-A)、内側
部や腹側部の第 3 脳室の近傍にあるオキシトシ
ン免疫陽性細胞体にもオレキシン-A 免疫陽性
神経線維が終末している様子が観察された(図
4-B)。また、大細胞性領域のオキシトシン免疫
陽性細胞へのオレキシン-A 免疫陽性神経線維
の近接がいくつか観察された(図 4-C)。
視索上核においては、オキシトシン免疫陽性
細胞体の集団の周囲を取り囲むようにオレキシ
ン-A 免疫陽性神経線維が分布しており、一部が
神経核内へ投射し(図 5-A)、オキシトシン免疫
陽性細胞体に近接している様子が観察された
(図 5-B)。
一方、オレキシン-A 免疫陽性細胞体が分布す
る視床下部外側野には、オキシトシン免疫陽性
細胞体もわずかながら散在しており、両者は近
い位置に分布している様子が観察された(図
6-A)。これらの免疫陽性細胞体の隣接は、脳弓
の外側において観察され、オキシトシン免疫陽
性細胞は、長い神経突起をオレキシン-A 免疫陽
性細胞の近傍まで伸長している様子が観察され
た(図 6-B,C)。さらに、脳弓の外側の領域にお
いては、正中隆起へ向かうオキシトシン免疫陽
性神経線維が、背外側から腹内側に向かって走
行しており、一部、線維束を離れて投射する免
疫陽性神経線維も観察された。この脳弓の外側
の限られた領域において、尐数ながらオキシト
シン免疫陽性神経線維がオレキシン-A 免疫陽
性細胞体に近接する様子が観察された(図 6-C)。
(2)オレキシン-A とバソプレシン蛍光二重免
疫組織化学
室傍核のバソプレシン免疫陽性細胞体の集団
内にオレキシン-A 免疫陽性神経線維が多数投
射しているのが観察された(図 7-A)。室傍核の
内側部(図 7-B)、及び外側部(図 7-C)におい
て、バソプレシン免疫陽性細胞体に、オレキシ
ン-A 免疫陽性神経線維が近接している様子が
観察された。
視索上核でも、オレキシン-A 免疫陽性神経線
維は、バソプレシン免疫陽性細胞の集団内に投
射しており(図 8-A)、バソプレシン免疫陽性細
胞体に近接している様子が観察された(図 8-B)。
また、視交叉上核では、バソプレシン免疫陽
性細胞が分布する腹内側部をオレキシン-A 免
疫陽性神経線維が走行しており(図 9-A)、なか
には、バソプレシン免疫陽性細胞体に近接する
93
オレキシン-A 免疫陽性神経線維の存在も観察
された(図 9-B)。
一方、オレキシン-A 免疫陽性細胞体が分布す
る視床下部外側野では、オキシトシンの場合と
同様に、バソプレシン免疫陽性細胞体もわずか
ながら散在し、オレキシン-A 免疫陽性細胞体と
隣接していた(図 10-A)。これらの免疫陽性細
胞体の隣接は、脳弓の外側において観察され、
バソプレシン免疫陽性細胞も長い神経突起をオ
レキシン-A 免疫陽性細胞の近傍まで伸長して
いる様子が観察された(図 10-B)。さらに、正
中隆起へ向かうバソプレシン免疫陽性神経線維
が、脳弓の外側を走行しており、一部、線維束
を離れて分布する様子が観察された。しかし、
オレキシン-A 免疫陽性細胞体に近接するバソ
プレシン免疫陽性神経線維は、ほとんど観察さ
れなかった。
Ⅳ.考察
本研究では、オレキシンのアイソフォームであ
るオレキシン-A、およびオキシトシン、バソプレ
シンのそれぞれに対する特異的抗体を用いて、
各々のペプチドニューロンの細胞分布と軸索投射
を詳細に観察した。さらに、オレキシン-A とオキ
シトシン、もしくはオレキシン-A とバソプレシン
の組み合わせによる蛍光二重免疫組織染色を行い、
細胞分布と軸索投射における空間的な相関を詳細
に調べた。
オキシトシン免疫組織染色の結果から、オキシ
トシン免疫陽性細胞は視床下部の室傍核や視索上
核だけでなく、視床下部外側野の吻側部にも多数
散在していた。また、オキシトシン免疫陽性神経
線維も視床下部外側野の脳弓周辺を走行している
ことが観察された。これらの結果は、バソプレシ
ン免疫組織染色においても同様に観察された。オ
レキシン-A 免疫陽性細胞は視床下部外側野の脳
弓周囲に局在するため、オキシトシンおよびバソ
プレシンの産生ニューロンは、視床下部外側野に
おいて、オレキシン-A ニューロンと相互に作用す
る可能性が考えられた。一方で、オレキシン-A 免
疫組織染色における免疫陽性神経線維は、オキシ
トシン、バソプレシンニューロンがともに存在す
る視床下部の室傍核、視索上核、あるいはバソプ
レシンニューロンの存在する視交叉上核などに投
射していることが確認された。この室傍核におけ
るオレキシン-A 免疫陽性線維は、Nissl 染色によ
り同定された大細胞性領域および小細胞性領域に
ともに豊富に存在していた。以上のように、オレ
キシン-A とオキシトシンおよびバソプレシンが
相互作用し得る領域が同定できたので、正確な位
置関係を把握するために蛍光二重免疫組織染色を
行った。
オレキシン-A とオキシトシン、あるいはオレキ
シン-A とバソプレシンの組合せに対する蛍光二
重免疫組織染色の結果から、視床下部の室傍核お
よび視索上核に投射するオレキシン-A 免疫陽性
線維は、神経核内のオキシトシンやバソプレシン
の免疫陽性細胞集団の中へ投射し、これらの神経
細胞体に近接していることが観察された。視床下
部室傍核および視索上核のオキシトシンやバソプ
レシンニューロンには、ともにオレキシン1受容
体(OX1R)を発現する細胞があることが報告され
ており 23)、本結果は、オレキシンニューロンが、室
傍核および視索上核のオキシトシンやバソプレシ
ンニューロンに直接シナプス性の情報伝達を行っ
ていることを示唆するものである。興味深いこと
に、室傍核においては大細胞性、小細胞性領域に
かかわらず、オキシトシンやバソプレシン免疫陽
性細胞体に近接するオレキシン-A 免疫陽性線維
が観察された。室傍核大細胞性領域のオキシトシ
ンやバソプレシンニューロンは、下垂体後葉へ投
射し、直接血中にホルモン分泌する。しかしなが
ら、小細胞性領域に存在する一部のオキシトシン
やバソプレシンニューロンは正中隆起へ投射し、
門脈を介して下垂体前葉に作用することが知られ
ており、その主な作用とはストレス応答系であ
る、 ”HPA axis” の下垂体前葉 ACTH 細胞の分泌
を促進することである 24)。オレキシンニューロン
もまた様々な種類のストレスやグルココルチコイ
ドの影響を受けて cFos 活性やオレキシン発現量
を増加させることが知られている 8・25-27)。逆に、
オレキシン-A の脳室内投与は ACTH やコルチコス
テロンの血中濃度を増加させることも報告されて
おり、この作用には室傍核 CRH ニューロンの関与
が報告されている 28・29)。本研究の結果は、これら
の報告に加え、オレキシン-A が室傍核のオキシト
シンやバソプレシンニューロンを介してストレス
応答系へ関与する可能性を新たに示唆するもので
ある。
室傍核小細胞性の領域に存在するオキシトシン
94
やバソプレシンニューロンからは下垂体以外にも
海馬や延髄、脊髄などの中枢神経系内への投射が
知られており、記憶や学習、社会行動、性的行動、
摂食行動などに重要な役割を果たしている 30)。と
りわけ脳幹、脊髄へ投射するオキシトシンニュー
ロンは、勃起や交尾などの性行動にも関与してい
ることや 31)、エネルギー状態に応じた摂食量の調
節に関与していることが報告されている 32)。一方、
オレキシンはその名の由来のように摂食亢進物質
としての生理作用を持っている 1)。オレキシンは
視床下部弓状核の同じく摂食亢進物質である NPY
を産生するニューロンに投射しており、オレキシ
ンによる摂食亢進には NPY ニューロンを介する経
路が関与することが報告されている 33)。本研究の
結果は、このことに加えて、オレキシンニューロ
ンが直接、オキシトシンやバソプレシンニューロ
ンの摂食や飲水に関する働きに関与している可能
性を示唆している。また、オレキシンニューロン
は、雄ラットにおける性行動(交尾)の発現に関
わっていることが報告されている 11)。この報告に
よれば、オレキシンニューロンは性行動を誘起す
る中脳の腹側被蓋野のドーパミンニューロンへ直
接投射している。オキシトシンニューロンもまた
中脳腹側被蓋野のドーパミンニューロンへの投射
と性行動への関与が報告されている 31)。本研究で
は、オレキシンニューロンが室傍核オキシトシン
ニューロンに投射していることが確認されたこと
から、これらの性行動を誘起する2つの経路に連
絡がある可能性も示唆された。
視床下部室傍核だけでなく、視索上核のオキシ
トシンやバソプレシンニューロンは下垂体以外に
も、とくに中隔野や分界条床核、扁桃体などに投
射していることが知られ、様々なストレスに対し
て反応性を示すことが知られている 34)。視索上核
のオキシトシンやバソプレシン免疫陽性神経細胞
にもオレキシン-A 免疫陽性神経線維の近接が観
察されたことは、視索上核を介したオレキシン-A
のストレス応答系や辺縁系への関与を示唆してい
ると考えることが出来る。
一方、オレキシンニューロンの細胞体が局在す
る視床下部外側野におけるバソプレシンやオキシ
トシン免疫陽性神経線維の主要な走行は、脳弓周
囲の外側領域に限られた。これらのオキシトシン
やバソプレシン免疫神経陽性線維は正中隆起や下
垂体後葉に投射する神経束であるが、その一部が
視床下部外側野に投射している様子も観察された。
この領域はオレキシンニューロンの分布の一部の
細胞集団に限られており、数は多くないものの、
オレキシンニューロンの細胞体へのオキシトシン
やバソプレシンの免疫陽性神経線維の近接が見ら
れ、直接的なシナプスが存在する可能性も示され
た。また、本研究では、オレキシンニューロンと
オキシトシンやバソプレシンニューロンの細胞体
が、視床下部外側野において空間的に非常に近い
関係にあることを明らかにし、これらのオキシト
シンやバソプレシンニューロンが長い神経突起を
伸長していることを観察した。オレキシンニュー
ロンはバソプレシン受容体(V1aR)を発現してお
り、バソプレシンがオレキシンニューロンを介し
て飲水行動を誘起していることを示唆する報告が
あるため 18)、シナプスを形成している可能性はあ
る。しかしながら、数が尐ないため、バソプレシ
ンは他の様式でもオレキシンニューロンに作用し
ていることも考えられる。一つには、バソプレシ
ンは他のバソプレシン受容体を有する細胞を介し
て間接的にオレキシンニューロンに作用している
ことが考えられる。もう一つには、バソプレシン
やオキシトシンは神経伝達物質として樹状突起か
らも細胞外液中へ放出されることから 35)、オレキ
シンニューロンの細胞体の局在する視床下部外側
野において液性の情報伝達が行われていることも
考えられる。
オレキシンのもう一つの重要な生理的役割には
睡眠覚醒リズムの形成が知られており、脳幹の覚
醒系に軸索を投射し、覚醒もしくは睡眠の状態の
維持に働いていると考えられている 36)。このため、
オレキシンが生体時計の中枢である視交叉上核か
らの投射を受け、睡眠時間の調節を受けていると
いう説は道理にかなっている。本研究の結果から
は、逆にオレキシン-A 免疫陽性神経線維の視交叉
上核への投射も観察された。脳スライス標本を用
いた電気生理学的研究によれば、オレキシンの投
与は、視交叉上核の 80%近い神経細胞の発火頻度
とパターンを多くは抑制性に変化させることが報
告がされており、オレキシンが視交叉上核へ作用
し得ることを強く示唆している 37)。本研究は、視
交叉上核に投射するオレキシンニューロンの尐な
くとも一部は、腹内側部にあるバソプレシンニュー
ロンに直接入力する様子を示した。脳内に広汎に
投射し、行動の方向性を制御しているオレキシン
95
ニューロンが、様々な生体リズムに多大な影響を
与えている視交叉上核へ入力している意義は大き
い。例えば、視交叉上核からは生殖関連ニューロ
ンのある内側視索前野へは投射があり、視交叉上
核の破壊はゴナドトロピン放出ホルモンの合成と
放出を低下させることが報告されているが 38)、オ
レキシンの生理作用の一つとして、ゴナドトロピ
ン放出ホルモンの分泌を制御することも報告され
ており 10)、これに視交叉上核を介する経路が関与
している可能性などが考えられる。
これまで視床下部外側野のオレキシンニューロ
ンは、同じ視床下部の室傍核や視索上核、視交叉
上核へ投射していることが報告されていた。本研
究は、これらの神経核に投射するオレキシン-A の
軸索が、オキシトシンやバソプレシンニューロン
の細胞集団の細胞体に近接することを、蛍光二重
免疫組織染色を用いて示した。逆に、オレキシン-A
ニューロンの細胞体に近接するオキシトシン免疫
陽性神経線維は尐なく、バソプレシン免疫陽性神
経線維についてはほとんど見られなかった。オレ
キシンニューロンは、弓状核などからエネルギー
代謝の状態に関する情報を、視交叉上核からは概
日リズムの入力を、ストレス応答系や辺縁系から
は危機的な環境情報や情動に関する情報を受け取っ
ていると考えられる。
本研究の今回の結果は、これらの生理学的作用
を考える上で、直接的な神経回路形成の可能性を
示唆するものであり、機能形態学的見地から重要
な所見を得ることが出来たと考える。今後、この
直接的神経回路を介した生理学的機能発現にオレ
キシン-オキシトシン神経連関、あるいはオレキシ
ン-バソプレシン神経連関が深く関与するかを解
明し、そのことが高次脳機能調節に及ぼす影響、
意義を深く検索することが重要なことであると思
われた。
Ⅴ.結論
室傍核、視索上核および視交叉上核に投射する
オレキシン-A 神経線維は、オキシトシンニューロ
ンやバソプレシンニューロンの細胞体に近接して
いることが明らかになった。逆に、視床下部外側
野のオレキシンニューロンに近接するオキシトシ
ンやバソプレシンの神経線維はあまり観察されな
かった。また、視床下部外側野においては、オレ
キシン-A、オキシトシン、バソプレシンの産生ニュー
ロンの一部が空間的に非常に近い位置関係にある
ことが明らかになった。これらの形態学的知見は、
オレキシンとオキシトシン、バソプレシンが共通
の生理機能において相互作用する神経回路として
の基盤を提示するものである。
Ⅵ.謝辞
本研究の遂行にあたり、直接の指導を賜りまし
た日本医科大学大学院医学研究科生体制御形態科
学分野の小澤一史教授及び澤井信彦先生に心から
感謝申し上げます。また、このような研究の機会
を与えて下さった東京医療福祉専門学校の関係各
位に心から感謝致します。
Ⅶ.文献
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98
図1
酵素抗体法を用いたオキシトシン免疫染色像。室傍核や視索上核に観察されるオキシトシン免疫陽性細胞体の分
布像(A)と、室傍核(B)、視索上核(C)、nucleus circularis(D)、脳弓周囲(E)における分布の拡大像。視床
下部外側野を通過し、正中隆起に向かうオキシトシン免疫陽性神経線維が観察される(F)。 NC: nucleus circularis,
PVN: paraventricular nucleus(室傍核), SON: supraoptic nucleus(視索上核), f: fornix(脳弓)
Scale bar = 500µm(A,F)、200µm(B,C,D)、400µm(E)
99
図2
酵素抗体法を用いたバソプレシン免疫染色像。視交叉上核と視索上核(A)と、室傍核と視索上核に観察されるバソ
プレシン免疫陽性細胞体の分布像(B)、および視索上核(C)、室傍核(D)、視交叉上核(E)、nucleus circularis
(F)における分布の拡大像を示す。視床下部外側野を通過し、正中隆起へ向かうバソプレシン免疫陽性神経線維が
観察される(G)。 PVN: paraventricular nucleus(室傍核), SON: supraoptic nucleus(視索上核), SCN:
suprachiasmatic nucleus(視交叉上核), f: fornix(脳弓) Scale bar= 500µm(A,B,G)、200µm(C,D,E,F)
100
図3
酵素抗体法を用いたオレキシン-A免疫染色像。視床下部外側野におけるオレキシン-A免疫陽性細胞体の分布像(A)
を示す。室傍核(B)、視索上核(C)、視交叉上核(D)、nucleus circularis(E)における免疫陽性線維の走行と
Nissl 染色を示す。室傍核においては大小細胞群ともに、免疫陽性線維の終末様な走行が見られた。 f: fornix(脳
弓), OC: optic chiasm(視交叉), 3V: 3rd ventricle(第3脳室) Scale bar= 500µm(A)、100µm(B,C,D,E)
101
図4
室傍核におけるオレキシン-A(赤)とオキシトシン(緑)の蛍光二重免疫組織化学像(A)。オレキシン-A免疫陽性
神経線維が近接する第三脳室近傍のオキシトシン免疫陽性細胞(B)、および外側部内のオキシトシン免疫陽性細胞
(C)の拡大像を示す。 3V: 3rd ventricle(第3脳室) Scale bar= 100µm(A)、50µm(B,C)
102
図5
視索上核におけるオレキシン-A(赤)とオキシトシン(緑)の蛍光二重免疫組織化学像(A)。近接するオキシトシ
ン免疫陽性細胞とオレキシン-A免疫陽性神経線維の拡大像(B)を示す。 OC: optic chiasm(視交叉)
Scale bar= 100µm(A)、50µm(B)
103
図6
視床下部外側野におけるオレキシン-A(赤)とオキシトシン(緑)の蛍光二重免疫組織化学像(A)。脳弓の背外側
(B)、腹外側(C)においてオキシトシン免疫陽性細胞(矢頭)とオレキシン-A 免疫陽性細胞(矢印)が隣接して
いる。 f: fornix(脳弓) Scale bar= 200µm(A)、100µm(B,C)
104
図7
室傍核におけるオレキシン-A(赤)とバゾプレシン(緑)の蛍光二重免疫組織化学像(A)。オレキシン-A免疫陽性
神経線維が近接する室傍核内側部のバゾプレシン免疫陽性細胞体(B)、および室傍核外側のバソプレシン陽性細胞
体(C)の拡大像を示す。 Scale bar= 100µm(A)、50µm(B,C)
105
図8
視索上核におけるオレキシン-A(赤)とバゾプレシン(緑)の蛍光二重免疫組織化学像(A)。近接するバゾプレシ
ン免疫陽性細胞とオレキシン-A免疫陽性神経線維の拡大像(B)を示す。 OC: optic chiasm(視交叉)
Scale bar= 100µm(A)、50µm(B)
106
図9
視交叉上核におけるオレキシン-A(赤)とバゾプレシン(緑)の蛍光二重免疫組織化学像(A)。バゾプレシン近接
する免疫陽性細胞とオレキシン-A免疫陽性神経線維の拡大像(B)を示す。 3V: 3rd ventricle(第3脳室)
Scale bar=100µm(A)、50µm(B)
107
図 10
視床下部外側野におけるオレキシン-A(赤)とバゾプレシン(緑)の蛍光二重免疫組織化学像(A)。脳弓の背側に
おいてオレキシン-A免疫陽性細胞(矢印)とバソプレシン免疫陽性細胞(矢頭)が隣接している(B)。
f: fornix(脳弓) Scale bar= 200µm(A)、100µm(B,C)