輸血後鉄過剰症
作成:西伊豆健育会病院 中島俊和 西村光滋監修:神戸大学附属病院 森寛行
Clinical Question 2017年6月19日
分野 :代謝テーマ:治療
症例
長期間の輸血で鉄過剰の障害について学んだ記憶があるなぁ・・
どうやって管理したらいいんだろう?
Clinical Question
輸血後鉄過剰症
輸血後鉄過剰症
血清フェリチンは、鉄過剰以外にも炎症・膠原病、腫瘍、成人Still病、血球貪食症候群、肝疾患など多くの病態の影響をうけ変動する。そのため、複数回の測定を行い、輸血歴その他の検査所見を加味して総合的に判断することが必要。
以下、輸血後鉄過剰症の診療ガイド(平成20年度)とする
研究代表者 小澤敬也 輸血後鉄過剰症の診療ガイド 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造血障害に関する調査研究班 平成20 年度
鉄を体外に積極的に排出
させる機能は存在しない。
赤血球輸血1単位中には
(赤血球濃厚液約140ml)
約100㎎の鉄が含まれる。
容易に鉄過剰状態
症状
輸血後鉄過剰症の診療ガイド(平成20年度)
写真は皮膚のhyperpigmentation(右)
鉄キレート療法による予後改善
*IPSS (international prognositc scoring system)
鉄キレート療法による予後改善
輸血を要するMDS患者へのキレート療法について
現時点では前向きランダム化試験による強いエビデンスはない
ケース毎によく考える必要あり
輸血後鉄過剰症の診療ガイド
輸血後鉄過剰を考慮する対象患者
様々な原因による骨髄不全で輸血依存となり、かつ1年以上の余命が期待できる例
輸血後鉄過剰症診断基準
総赤血球輸血量20単位(小児の場合、ヒト赤血球濃厚液50ml/体重Kg)以上及び血清フェリチン値500ng/ml以上
輸血後鉄過剰症の診療ガイド(平成20年度)
輸血後鉄過剰症の診療ガイド
鉄キレート療法開始基準
輸血後鉄過剰症において、下記の1と2を考慮して鉄キレート療法を開始(1)総赤血球輸血量40単位
(小児の場合、ヒト赤血球濃厚液100ml/体重Kg)以上(2)連続する2回の測定で(2か月間以上にわたって)
血清フェリチン値>1000ng/ml
輸血後鉄過剰症の診療ガイド(平成20年度)
輸血後鉄過剰症の診療ガイド
鉄キレート療法開始基準の解説
下記のような場合は、鉄キレート療法の開始にあたり、総輸血量及び血清フェリチン値の両方を考慮し、総合的に判断➢ 慢性的な出血や溶血を伴う場合➢ 現在輸血を受けていない場合
(造血幹細胞移植、薬物療法が奏功した例)➢ 輸血とは無関係に血清フェリチン値が慢性的に高値
を示す合併症がある場合(still病、血球貪食症候群 悪性腫瘍など)
輸血後鉄過剰症の診療ガイド(平成20年度)
輸血後鉄過剰症の診療ガイド
維持基準
鉄キレート剤により、血清フェリチンを500-1000ng/mlに維持する
輸血後鉄過剰症の診療ガイド(平成20年度)
鉄過剰の評価法
Int J Hematol Oncol Stem Cell Res. 2016 Oct 1; 10(4): 239–247. A Review on Iron Chelators in Treatment of Iron Overload Syndromes
鉄キレート療法
薬の比較
Int J Hematol Oncol Stem Cell Res. 2016 Oct 1; 10(4): 239–247. A Review on Iron Chelators in Treatment of Iron Overload Syndromes
デフェロキサミン(注射薬)の効果
連日投与と比較して間欠的投与は効果が落ちるため使用しにくい
薬価
症例
前医では2単位/weekのペースで8か月以上にわたって輸血されており、合計40単位以上の赤血球が輸血されていると考えられる。
IPSSではlow riskに分類。
血清フェリチン値 1回目1360ng/ml2回目1273ng/ml
症例
患者に輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法について説明した。約10万円/月の費用(3割負担なら約3万3千円/月)のため鉄キレート治療を希望され、デフェロシロクス内服を開始することとなった。
症例
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