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Page 1: 保守支援システムにおける オフィスオートメーションの具体的展開 · は古い機種から最新機種に至るまでの数千機種もの対象と, 更にハードウェア面,ソフトウエア面の複雑に絡んだ障害ま

特集 オフィスオートメーションシステムu.D.C.〔る81.324.014.022:002.55〕‥[る58.581‥る81.32](084・121・035・22)

保守支援システムにおける

オフィスオートメーションの具体的展開DevelopmentofOfficeAutomationSYStemin Maintenance

SupportActivities

コンピュータシステムは,急速な技術の進歩によりその複雑さを増し,これを保

守維持する保守技術者へ要求される技術知識や,膨大な情報が必要となる。これら

を技術面,情報面から支援する保守支援システムを構築してきた。この中で,EDP

化の困難な図形やi英字から成る技術情報をマイクロフィルム化した。更に,積極的

な活用を図るためにコンピュータと結合した検索システムの実用化を推進してきた。

本稿では保守支援の現二伏とマイクロフィルムによるオフィスオートメーションの

展開について述べる。

ll 緒 言

コンピュータは,金融機関などの事務処理,各種の生産管

理,在庫管理などの様々な分野に利用されており,各企業の

中枢を占め,万一障害が発生すると企業内だけの被害にとど

まらず,社会的にも大きな影響を与えるところまできている。

したがって,日常の稼動監視や定期点検などによる予防保

全に万全を期すことはもちろんであるが,万一の障害発生時

には最短時間で修復しなければならない。

一方,コンピュータの技術革新のテンポは著しく,新機種

の開発,高度で複雑なシステムなどに対応して,保守する側

は古い機種から最新機種に至るまでの数千機種もの対象と,

更にハードウェア面,ソフトウエア面の複雑に絡んだ障害ま

で,非常に幅広い対応が必要である。コンピュータシステム

全体を保守維持していくためには,保守員一人一人の能力向

上に加え,これをバックアップする組織的な支援体制が必要

である。

日立電子サービス株式会社は日立製作所と協同し,ASSI

ST(Advanced Service SupportInformation System Tech-

nology)の一環としての縫合保守支援システムを構築してきた。

以下,システムの概要と,その中でのマイクロフィルムの

活用事例について述べる。

臣l 保守支援体制の概略

日立製作所から全国に出荷されたコンピュータを保守する

ために,全国各地に16の主要拠点を中心に約250箇所の拠点を

もち,顧客に信頼される保守サービスを目指して日夜活動し

ている(図l)。

本保守ネットワークは,納入顧客先での保守員の活動を支

援するため,サポートセンターとその支援機器,オンライン情

報網,FAXネットワーク,図形情報を中心とした膨大なマイ

クロフィルムなどを配置した総合的な保守支援システムである。

ASSISTシステムは,図2に示すように技術面を公衆通信

回線で支援する技術支援システムと,必要な情報を迅速に検

索し,保守技術者へ提供する情報支援システムの二つの機能

をもっている。

2.一 枚術支援システム

技術支援システムは,難解な障害に対してサポートセンタ

岡福

〃ガレ

d

注:略語説明

ASS!ST(Advanced

島広

Serv氾e

Suppo「tlnformation

Sys一別羽Teohno10gy)

沢金

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中谷嘉克*

森下賢治*

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札幌

名古屋

台H・〓川

戸水

山1.\ノJ

寿レし上古仰

京菜

横浜

本社

(戸塚)

。β

区= 日立ASSISTネットワーク 本社と各拠点が,特定回線及び公

衆回線で接続されている。

-から日本電信電話公社の公衆電話回線網を介して,顧客先

のコンピュータへ接続し,高度な技術をもった保守技術者が

遠隔操作により,診断・解析を行なうものである。

2.2 情報支援システム

情報支援システムは,保守サービスに必要な各種の情報の

検索機能をその主な内容として,技術支援システム及び現場

*

日立電子サービス株式会社

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294 日立評論 VO+.64 No.4(柑82-4)

小形コンピュータ,ミニコンピュータ

端末,レ′0

保守員携行

中, 大 形 以 上 の

機 種

l

-技

援1

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S V P

(音響カブラ)

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S V P

公衆回線

(保守資料など)マガジン

⊂]

スペシャリスト

l 二∵く二 ;公衆/特定回線+ニニー---ニュJ

___主ゴー__

川TAC

厨マイクロフィルムリーダ

データバンク

注:略語説明 SVP(Service Processor)

NCU(Network Contro=+山t)l/0(入出力装置)

図2 技術支援と情報支援 サポートセンターはASS】STセンターに登

録されている技術情報,稼動情報及び部品情報を活用し,サイト(顧客先)の

機器診断を実施する。・

での保守サービスを情報面から支援するシステムである。

ASSISTセンターに大形コンピュータを置き,オンラインネ

ットワークにより全国をサポートしている。

このシステムは,(1)部品情報,(2)稼動情報,(3)技術情報,

の三つから成り,現場で必一要な情報の大部分をオンラインリ

アルタイムで提供する。

特に技術情報については,その情報が図形情報であること,

大量ではあるが個々の情報はアクセスが頻繁でないことな`ど

の理由から,原始データをマイクロフィルム化した。更に,

検索のためのコンピュータとマイクロフィルムリーダを結合

したCARS(Computer Assisted RetrievalSystem)を構築

し,検索時間の短縮化及びコンピュータの記憶容量の節減に

成功した(図3)。

田 技術情報のマイクロフィルム化

保守現場で使われる情報として大きく分けると,技術情報

(障害事例情報,ハードウェア情報,ソフトウェア情報など)

と管理情報(サービス拠点情報,顧客情報など)に区分される。

これらの情報は,保守ノウハウの貴重な蓄積であり,現状

でも100万件以上あり,今後とも年間数万件以上の増加が見

込まれる。こ叫青報を実際に活用するためには,いかに早く

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必要な情報を見付け出すかにかかっている。

マイクロフィルム化する以前は,これらの保守技術情報を

青焼きし,各保守拠点に配布,ファイルされており,事務所

の貴重なスペースをファイル棚で占有し,必要な情報のアク

セスにも時間がかかったり,管理も大変であった。それにも

増して,これらの情報は図面,画像,漢字を含む文字が多く

コンピュータへ入力したり記憶させることは,巨額の投資を

必要とし,事実上不可能であった。

このような問題を解決するためマイクロフィルムを導入し

た。導入の基本条件として,

\全国保守拠点

址±止

出:

手書に 成

センター

\\、1、

事例

マイクロ

フィルムリーグ

布配\

\/`

周囲

圏圃

HITAC

+-320

CARアダプタ

手書OCR

HITAC

噂30鳳0▼55一丁

⊂〕

う川TAC

中央

コンピュータ

\団データバンク

注:略語説明

OCR(光学文字読取装置),CAR(Computer Ass■StedRetrieval)

図3 CARS(ComputerAssisted RetrievalSystem) 障害事例の

作成は,全国の保守拠点で行なわれ,手書OCRによりデータバンクに登暮童L,

オンライン自動検索を可能とLた。

長 所

費用が安い。

ばらばらにならない。

連続自動検索ができる。

多量一括配布に適している。

少量ずつのファイルの追加・差し替えが容易である。

必要なところだけ取りだせる。

量に関係な〈追加が可

能である。

要求のつど配布,又は部分配布に適している。

\山グ

区14 ロールフィルム

宅…・…′叫…=国

追加・修正がやりにくい。

必要のないところも見

る必要がある。

フイルムがすれて,きずが付きやすい。

費 用 が 高 い

ぱらぱらになり保管が大変である。

1

l1

1

I

l

I

l

l

___+

とシートフイルムの性能比較 ロールフィル

ムは扱いやすいが,情報の追加・修正が困難である。更新方法をエ夫すること

により,これを克服Lた。

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/′「5捨てる

目 次

新目次

デ ー タ

\//

l //

/

追加データ

l終わり

()

終わり

図5 マイクロフィルム上のデータの更新方法 追加データをロー

ルの後に追加L,新Lい目次を差L替えることにより更新する。削除Lたいデ

ータは,新自二欠から削除することにより検索不可能となる。

1

2

3

4

5

6

検索の高速化が可能なこと。

イメージ情報のオンライン自動検索が可能なこと。

保管スペ【スの大幅縮i成が可能なこと。

記録の保全が完全に行なわれること。

記三緑・複製のコストが削i成できること。

配布のためのコストが削ぎ戒できること。

田 応用 例

マイクロフィルム化には,ロールフィルムとシートフイル

ムがある。使用目的により,それぞれ長所,短所がある(図

4)が,.取り扱いやすく,高速検索の可能なロールフィルム

を採用した。その短所て、あるデータの更新については,更新

方法の標準化を図り,克服してきた。

4.1 フイルムの標準化及び更新方法

ロールフィルムを採用することにしたが,情報の中には追

加・修正など更新作業の多いものがあり,情報の管理・更新

方法の解決が重要な課題となった。

このため,原始データの標準化を図り,容易な更新作業方

式と手順書のマニュアル化で社内徹底を図り解決することが

できた。この方式は図5に示すとおりで,新データは今まで

のフイルムの該当部と無関係に,その後につなぎ込むだけで

追加され,不要なデータは新しい目次から削除することによ

マイクロフィルム

内部構成

索引方法

Oi

全 体 索 引

大 分 類 二ま♯

タイトルA 3

保守支援システムにおけるオフィスオートメーションの具体的展開 295

り,旧データは残されていても読み飛ばされ,新データだけ

がアクセスされることになる。

もう一つの標準化として,ロールフィルム内の大量のデー

タ(最大7,000枚)の中から,必要なデータをだれでも容易に

アクセスするために索引方式を統一したことである。まず,

フイルム上の特定のページに全体索引を置き,この索引に従

い項目別小索引を段階的に検索し,目的とする情報をアクセ

スする多段ド皆目次方式を採用し,少ない検索回数により,要

求する情報を検索できるよう工夫した(図6,7)。

4.2 フイルムのオンライン検索

現在,マイクロフィルム化された技術情報をアクセスする

方式として,フイルムリーダだけで検索するオフライン検索

だけではなく,情報の内容によっては複雑な検索キーによる

任意の必要情報を検索する必要があり,CARSによるオンラ

イン検索方式もヨ采用した。

CARSによるオンラインでは,コンピュータにより目的と

する情報をデータバンクから自動検索し,フイルムリーダを

連動させて表示する。端末機として,HITAC L【320オフィス

コンビューータを使用し,フイルムリーダと接続便用している。

検索は端末機のデイス7Uレイ上に表示される検索メニュー

により会話形で必要な情報をリクエストし,マガジン番号と

こま番号を表示する。該当するフイルムマガジンをセットす

るだけで自動検索され,フイルムリーダに段影される。

凶 マイクロフィルムシステム導入の効果

(1)検索時間の短縮

今までと比較し,・平均1拠点での検索時間は約50時間/月

台,大規模拠点で約100時間/月台の時間短縮となった。

(2)保管スペースの縮小

今まで約33m2を占めていた保管スペースが3.3m2になった。

(3)資料化コストの低i成

各主要拠点に配布する書類の青焼き費用とフイルム化費用

は8対1となr),費用は÷になった。

しかし,目に見えた効果として把握することは困難である

が,この支援体制により,現場に出向く保守技術者の精神的

負担を軽i成するとともに,HITAC製品の顧客に対するサービ

スグレードアップに寄与する効果は,図r)知れないものがあ

ると考える。

㊤ iこま‡3

項目別小索引

申 分 頼 こま♯

タイトルB 6

こま♯6

データ

タイトル8

図6 マイクロフィ

ルムの索引方法

例えば.仕)全体索引こま

から大分類タイトルAを

索引,二ま♯3を検索L.

②ニま♯3から申分顆タイ

トルBを索引,こま♯6を

検索し,③こま♯6から目

的とするデータを取得する。

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296 日立評論 VO+.64 No.4(19さ2-4)

支援情報名

障 害・事 例 情 報紙継

Mシリーズ(MT) 鳩′/有

登緑区分

Rev..♯ 承 認 審 査 製 図

現 象 (出来るだ

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本 社HITAC

全国・要拠点中央

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FAX

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川FAX

H】FAX

全国各拠点

図8 FAXオンラインネットワーク構想 中央のコンピュータに登録

されている情報が,人手を介入することなくFAX端末に出力し,データの流通拡

大を図る。

64

事例針順鞘晰叱

害索記りが率な

…㈱柵藷

同 緒 言

今後,コンピュータシステムはハードウェア面,ソフトウ

ェア面ともに一段と高度な信束副生が要求される。一方,その

ための技術情報もますます膨大なものになる。これらの情報

を単にマイクロフィルム化し保管するのではなく,いかに必

要な情報だけを迅速に引き出し,利用者に提供できるかは,

その検索システムの成否にある。

情報支援システムは,昭和55年10月から全国の主要拠点で

運用に入っている。今後は,より高度なデータベースの構築

を行なう中で,いかに各拠点にまで浸透するオンラインネッ

トワークの拡大を図るかが課題である。

(1)FAXオンラインネットワークとの結合

図8に示すように,コンピュータ内の情報を端末機のプリ

ントに人手を介することなく直接各拠点のFAXに送信し,情

報の流通を図る。

(2)パーソナルコンピュータによるCARSの拡大

(3)検索内容のレベルアップ

以上述べてきたように,コンピュータ保守技術者を支える

総合的保守支援システムの拡充を進め,顧客から強い信頼を

かち取るため,よりきめ細かな保守サービスの実現を目指し

て努力を続ける考えである。


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