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Page 1: No.1332004.5.特集病害虫の総合防除法 · 内に生息する潜在的病害虫や天敵・微生物などの 関係も考えて、防除体系を組立てる。 ④防除体系は、耐性菌・抵抗性の発達や農薬残留

交信撹乱剤

モンディスノ

蝿.

f註

- 1 -

I塾

し創蝋ざ〃’”壁,‐オオタバコガ成虫

スペンサー)静?マユ手

345

111

45

I生ひょうごの炉乏農業編

No.1332004.5.特集病害虫の総合防除法

交信撹乱剤を使ったオオタバコガの防除.

”性フェロモン成分を放出させてオス成虫がメス成虫を探し出せないようにする.〃残留の心配がなく,環境にも優しい”腿

『、

P~K

11

12

オオタバコガ幼虫(フェロ

PC,‘畔酷

16

目特集病害虫の総合防除法

1病害虫の総合防除法

2オオタバコガの交信撹乱剤は

設置量を減らしても効果がある

3合成性フェロモン剤による

ハイマダラノメイガの誘殺消長

4キスジノミハムシに効果の高い薬剤の検討

5生産者減収許容水準からみた

ハクサイ根こぶ病の防除技術の導入分岐点

研究成果の紹介

l薬剤耐性イネいもち病菌の分布と検定法

2病害抵抗性向k資材を用いた

イチゴうどんこ病の発捕抑制

次3カドミウム対策客土施行後

20年以上経過した水旧の安全性

4カーネーション養液土耕における環境にやさしい施肥法

5施設軟弱野菜栽培における化学肥料及び

有機質肥料の反応特性

62003年度の現場後代検定成績からみた極雄牛の特徴

7大豆発芽試験法(寒天法)における

サチユタカの岐適注水量

8111芽淡定のための大豆種子水分の大量調整法

9環状はく皮で垣根整枝ブドウの着色向上

普及'情報

普及が進むカーネーションの養液土耕栽培

901

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はじめに

最近、「食の安全性」を巡る関心が高まる中で、

農産物の安全性を確保するための努力が求められて

いる。

農作物栽培における病害虫の防除は、農産物の生

産安定、安定供給、品質向上の上で重要不可欠であ

る。これまで、食料の安定生産、省力化など今I-lの

食生活に果たしてきた農薬の役割は非常に大きい。

同時に、農薬の危害防止や農薬残留など農産物の安

全性確保、人・動物への悪影響、環境に負荷を与え

ない農業の推進が望まれている。こうした風潮に対

し、生産者の病害虫防除に対する意識も変化してお

り、いろんな防除法を取り入れようとする生産者が

増えている。

総合防除の基本的な考え方

農薬へ術依存そ減じる必要から、農作物病害虫那

策には総合防除の考え方が必要となっている。

総合防除は総合的害虫管理(IntegratedPestMa

nagemennt,IPM)とほぼ同義であり、農薬を主体

とする防除法による環境負荷、農薬残留、薬剤耐性・

抵抗性の発達などの問題に対処するため提唱された

考え方である。具・体的には次のような内容をもって

いる。

①総合防除は病害虫の撲滅ではなく、病害虫密度

を被害許容水準以下に保つことが目的である。

②どのように優れた防除手段でも、長所と短所が

あり万能ではない。したがって、種々の防除手段

を総合的に利用して、相乗効果をめざす。

③特定の病害虫だけ注1-Iすることなく、農生態系

内に生息する潜在的病害虫や天敵・微生物などの

関係も考えて、防除体系を組立てる。

④防除体系は、耐性菌・抵抗性の発達や農薬残留

など長期的、広域的な問題も考慮する。

⑤最大収量を志向するのではなく、防除費用と利

益、利益と危険率を考え、純益の最大化をもたら

す最適収量志向型の防除体系とする。

このような総合防除法の実行に不可欠なのは、経

lL~=ー弓月番印頃&特集

1病害虫の総合防除法

済的被害許容水準及び要防除密度の設定、病害虫密

度のモニタリング技術、個々の防除技術の効果に対

する評価と総合化である。

総合防除の具体的方法

農薬主体の防除が病害虫の存在を否定するのに対

し、病害虫の防除要否の判定を厳格にして必要な防

除にとどめることに主眼をおく。このため、病害虫

の要防除密度を設定し、効果的な防除を行うために

病害虫発生予察を駆使して、発生時期や発生量、被

害量などを予測して効果的な防除を実行する。

防除技術には①作型、品種、肥培管理、輪作、排

水等の耕種的防除法、②防虫ネット(遮断)、黄色

蛍光灯(忌避・誘殺)、紫外線カットブリィルムなど

の物理的防除法、③天敵や措抗微生物などの生物的

防除法、④性フェロモンの利用による防除法、⑤殺

虫・殺菌剤などの化学的防除法がある。病害虫の発

生場面に応じて、これらの防除法を組み合わせ体系

化することが総合防除である。

化学的防除は、効果の安定性、経済性からみて優

れた方法であることは明白である。しかし、作付け

前に病害虫の発生を少なくする工夫、例えば輪作、

抵抗性I品種の選択、接ぎ木栽培、適正な栽植密度、

排水対策などが必要な範開で十分に実行されている

ことが必要である。その上で、防虫ネットや黄色蛍

光灯、性フェロモン剤の利用などを図り、農薬によ

る防除は極力少なくするように努めるが、その使用

を否定するものではない。

今後の展望

病害虫の試験研究の方向は、生産者・消費者ニー

ズに対応した防除や環境保全を意識した農薬に依存

しない防除法の確立が望まれている。

病害虫の総合防除は各種防除手段を組み入れた防

除システムであり、「安心・安全な農産物の安定供

給」から、病害虫防除の胡ましい方向と考えられる。

《』

足立年一(農業技セ・病害虫防除部)

-2-

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試験年次設置量/10a

2オオタバコガの交信撹乱剤は設置量を減らしても効果がある

以上のことから、ダイアモルア剤は設置堂をl/4

まで減らしても通常童に匹敵する効果があることが

明らかになった。

交信撹乱法の注意事項

被害は設悩区外から飛び込む成虫の産卵によって

生じることもあり、一般に設置面積が広いほど交信

撹乱の効果は安定する。試験現場ではディスペンサ

ーが圃場の1カ所に束ねられたまま、あるいは倒れ

た状態で放置されている圃場が半分以上あり、剤の

効果が十分に発揮されているとはいえない状態であ

った。デイスペンサーを圃場ごとにきっちり展開さ

せれば、さらに高い効果が期待できる。

lOaあたりの資材費を試算すると、ダイアモルア

剤50本で約2,500円になる。これは殺虫剤の散布l

~2回分の額とほぼ同じであり、コスト面での大き

な改善である。

総合防除における位置付け

交信柵I1iL剤の使川は害虫密度抑Ilillのベースとなる

手段である。総合防除の考えに従えば、オオタバコ

ガの発生が要防除密度を越えた時は、殺虫剤等の臨

機的な手段を使用する必要があるが、結果として化

学農薬の使用を最小限に抑えることができる。競近

では一剤で数種のガ類野菜害虫を対象とした複合交

信撹乱剤も開発されており、総合防除へさらに取り

組みやすくなると思われる。

八瀬順也(農業技セ・病害虫防除部)

表2交信撹乱剤設置区におけるオオタバコガの交尾率.

交信撹乱剤設置垂の再検討

昆虫の行動制御物質であるフェロモンを利用した

防除手段は、農産物における残留毒性の心配がなく、

環境に対してもきわめて優しい。

現准、防除用フェロモン剤の主流は交信柵乱剤にな

っている。ダイアモルア剤(商品名:コナガコン)

はオオタバコガ用の交信撹乱剤で、デイスペンサー

と呼ばれるプラスティックチューブをポールなどに

固定し圃場に設置して使用する。通常の設世瞳は

200本/lOaとされているが、その量を減らしても十

分に効果があることがこれまでの試験でわかった。

ここでは野菜生》剛↓場における利用のために、ダイ

アモルア剤の効果と利用方法について検討する。

試験の概要

試験は三原郡三原町のレタス生産地梢において20

hii~30haの規模で実施した。まずディスベンサーを

竹棒(長さ60cm)の先端に固定して各Illil場の広さに

応じた本数をまとめて1カ所に置き、その後生産者

自身で圃場内に適血展開・配世してもらった。2001

年に200本/lOaと100本/lOaの効果を、2002年と

2003年にlOO本/lOaと50本/lOaの効果をそれぞれ

比較した。

詔置置を減らした場合の防除効果

フェロモントラップによる調査では、デイスペン

サーの設置以降はその設伽,I:にかかわらずオオタバ

コガの誘引がほとんど見られなくなり、100%近い

誘引阻害効果が得られた(表l)。交尾の有無につ

いて調べたところ、50本/lOaは100本/lOilに比べ

てやや劣るものの交尾率は低く抑えられ、交尾阻害

効果が認められた(表2)。またレタスの被害調盃

結果からは、少発ノヒで判定できなかった2()03年を除

き、商い被害軽減効果が認められた(表3)。

表1交信撹乱剤設置後のフェロモントラップにおける

オオタパコガの誘引数

設置量/10a

-3-

試験年次設置量/10a

*%、各区定植1カ月程度の10圃場.計1000株鯛査の平均

200220032001

9~11月の3カ月間のトラップ1台あたりの誘引数合計

()は誘引阻害率(%)

200本

100本

50本

2(51)

0(47) 0(22)

10(20)

O(45)

2.2(45)

2001

無処理56(50)281(32)422(45)

2001

*%未交尾雌供試法による()は供試個体数

表3レタスにおけるオオタバコガの被害株率一

20022003

7.9無処理84

2.0

0.6

試験年次

ひょうごの農林水産技術No.133(2004.5)

0.6

0.5

0.2無処理428(0)489(0)473(0)

20022003

4.1

1.8

味味味

加加5

5(99.8)

3(99.3)15(96.9)1(99.8)

18(96.3)13(97.3)

味味本

加旧卵

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20

3合成'性フエロモン剤による八イマダラノメイガの誘殺消長

ねらいと成果

ハイマダラノメイガは、近年急激に発生が増加し

ている害虫で、幼虫がダイコン・キャベツ等のアブ

ラナ科野菜の生育初期に寄生して新芽の部分を食害

し、生育が停止したり、結球しなくなるなどの被害

を引き起こす重要害虫である。本虫は、発生に気づ

いてからでは防除が間に合わないため、効果的に防

除するためには発生消長を把握する必要がある。未

交尾の雌成虫を用いたトラップや、誘引植物(クレ

オメ)を用いて発生消長を見る方法もあるが、手間

がかかるという問題がある。そこで、ハイマダラノ

メイガの合成'性フェロモン剤を用いたフェロモント

ラップにより誘殺消長を調査した。2002年は7月以

降誘殺数が大きく増加し、7月3半旬、8月5半旬、

9月6半旬にピークが見られた。2003年は7~9月

の誘殺数が少なく、10月以降誘殺数が大きく増加し

た。

内容

2002~2003年に、合成性フェロモン剤をセット

したファネル型トラップを農業技術センター内の閲

場周辺に設置し、ハイマダラノメイガ成虫の誘殺消

長を調査した(図)。

2002年は、7月に入って誘殺数が大きく増加し、

7月3半旬、8月5半旬、9月6半旬と3回のピー

クが見られた。2003年も2002年同様に農業技術セ

ンター内の圃場周辺にファネル型トラップを設置し

て調査を行った。誘殺消長は、7月~9月までは前

年に比べて誘殺数が非常に少なく推移し、10月に入

り漸増傾向を示し、11月中は前年より誘殺数が多く

なった。2003年は6~8月にかけて雨が多く、9~

11月は気温が高かったことから、このような発生消

長となったと考えられる。

今後の方針

未交尾雌成虫や誘引植物を用いた場合と比較して、

本剤を用いることによりはるかに少ない手間でハイ

マダラノメイガの発生消長を調査することができる。

このことから、本剤は有効利用できるものと考えら

れる。今後の製品化が期待される。

寺H1章(農業技セ・病害虫防除部)

120

J・・「

令100

半旬当たり誘殺頭数

コー・‐20[

副H℃

-4-

4.145.146.147,148.149.1410.1411.14

調査時期(半旬)

司磐ロュロ幽韻‘、_n‘n.出、n函迎H狸 。I-TuLI・UDpに午□0

図ハイマダラノメイガ誘殺数の推移(加西市別府町)

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表チンケンサイ誉録薬剤(散布剤‘200310現在,JPP-NET)

ひょうごの農林水産技術No.133(2004.5)

4キスジノミ八ムシに効果の高い薬剤の検討

ねらいと成果

近年、減農薬志向のIIJで、効率的に農薬を使用し、

薬剤散布回数を減らそうとしている農家が噸えてい

る。しかし、軟弱野菜などのマイナー作物では病害

虫に対する薬剤の登録数が少なく、生産者はその病

害虫対策に苦慮している。チンゲンサイにおいても

アブラムシ類、コナガ、アオムシを除くとほとんど

l病害虫につき1,2剤しか登録がない(表)。

そこで、アブラナ科軟弱野菜栽培で大きな問題と

なっているキスジノミハムシに対し、チンゲンサイ

に作物登録のある薬剤の中から室内試験で防除効果

を検討した。その結果、DDVP乳剤、チオシクラ

ム水和剤、スピノサド水和剤の効果が高く、ついで

アセタミプリド水和剤、シペルメトリン乳剤で効果

が認められた。

内容

(1)試験方法

供試虫は2002年10月10|」にイ'1リrllf伊川谷'11Jのチ

ンゲンサイ栽培農家|lliil場から採集した。薬剤検定は

10ノ114日にチンゲンサイに登録のある薬剤から、現

地の使用状況を重ね合わせて選択した(Ⅸi)。直径

6cmのプラスチックカップを2佃合わせた飼育容器

に、規定濃度に希釈した薬液を処理し、1時間風乾

させたチンゲンサイの葉6枚をいれ、その中に成虫

を6頭放虫した。1薬剤あたり5反復した。15,25、

40,50時間後に、生存および死亡成虫数と肉眼で全

葉の食害痕数を調査した。

(2)結果

最も防除効果の向かった薬剤はチオシクラム水和

剤とDDVP乳剤であった。ついでスピノサド水和

剤で、やや遅効的であったが、100%近い補正死虫

率を示し、被害指数も低く抑えた。シペルメトリン

乳剤とアセタミプリド水利剤は、補正死虫率こそ65

%程度とやや,低かったが、被害指数は10程度と低く

抑えた。クロルフェナピル水和剤は遅効的で、被害

指数は40程度と食害量がやや多く、エマメクチン安

息香酸塩乳剤、イミダクロプリド水和剤と同等で、

やや効果不足と考えられた。IGR系のフルフェノ

クスロン乳剤とテフルベンズロン乳剤、BT水和剤

は防除効果および食害防止効果が全く認められなか

った(図)。

以上の結果より、チオシクラム水和剤やスピノサ

ド水和剤を選択することにより、より多くの害虫に

対して有効である(表)。

今後の方針

登録のない病樗虫に対して散布することは認めら

れていないため、今後適用拡大を図る必要がある。

田中尚智(農業技セ・病害虫防除部)

『へ

蓉竣盈鹸〃や、E

》熱く瓢

寧凝溌鱗三》唖州

秤》科割討》蕊》桝

雷畔》叫州恥州岬》岬》恥》岬》岬》岬一癖一岬致》》

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…坊輔商品名,、.、、

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チオシクラム水和済11●!●ilii●it:。:::

DDVP¥L剤⑪iiiiiiII::;:

スピノサド水矛 ロ 剤 ● 、 ; ④ ! ; ② i ② i i e

アセタミブリド水和剤●●Iiiiii

シぺルメトリン乳剤o・iii;;iクロルフェナピル水和剤;●iiiii

::::,。:::::

エマメクチン安息香酸塩乳剤●:●§;:;:::::ロ:

イミダクロプ リド水和リ●::●;§;§

BT水和剤§●§::!§i;iii

フルフエノク スロン乳剤●i●.:iii:.;§::

テフルベンズロン亭L剤:●i§:iiiiiii

トラロメトリン乳剤●;;i:§:;§;::

クロマフエノジド水和剤:;ョ;§§@

登録害虫数5,5,‘8;,;11,;,:2

認扇騰譲蹴蕊雛溌議瀧議

-5-

俄審脂歎。、,処理区の典杏砿故無処理広り)た瞥痕数1oO

llli正死虫畢(%)…(1-処理区の生存虫準′無処理区の生存虫率)]oO

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律膏

5生産者減収許容水準からみた八クサイ根こぶ病の防除技術の導入分岐点

目的

減農薬化への要望が高まるにつれて、生物農薬等

の新しい技術の開発が急務とされる。開発した防除

技術が生産者に受け入れられ、普及するかどうかの

判断は生産者の意向を強く反映させる必要がある。

特に生物的防除においてその判断の分岐点が重要で

ある。そこで、根こぶ病の発病と減収との関係を調

べ、生産者の意識調査を行い、防除技術導入の可否

の判断基準を作成した。

町、南淡町の一般栽培農家圃場で5年間にわたり、

のべ18圃場において防除試験を行い、根こぶ病によ

るハクサイの被害解析を行った。また、試験圃場設

置地域の生産者108人にハクサイの減収に対する意

識調査を行った。

ルヒ産者の意識調査では50.9%の人から有効回答が

あり、1割(77.4%)~4割(3.8%)まで減収

しても経営的に成り立つとの意見があったが(例

l)、その回答割合から生産者減収許容水準を暫定

的に15%前後に設定するのが妥当と考えられた。収

量と発病度との関係はゆるやかなS字曲線に近似さ

れた(図2)。本曲線を基に、生産者減収許容水準(1

5%減収)の発病度を求めると52と算出された。新

しい防除技術を導入する場合、根こぶ病の発病を発

病度52以下に抑制するかどうかが判断の分岐点であ

ると推察される。

内容

根こぶ病においてはその発病程度と被害との関係、

または生産者の減収に対する意識など暖昧な部分が

多く、開発した防除技術が生産者に受け入れられる

かどうかの判断が困難である。そこで,三原郡三原

〆、

図1生産者によるハクサイ減収許容に対するアンケート調査結果

5000

4500

4000

3500-曾巳

茎3000〆~へ

g2500~=

2000

1500

1000

500

4割減収

今後の展望

本情報は、兵庫県三原郡の年内取り及び1~2月

取りハクサイ産地で適用可能であり、他地域及び作

型については、さらに、検討が必要である。

ハクサイの根こぶ病のみの事例であるが、防除技

術の導入分岐点は他の病害においても設定する必要

があり、より生産者側にたった新技術の開発を今後

も進めていく予定である。

相野公考(農業技セ・病害虫防除部)

3割減収

2割減収 15.ヅ

一一……ー…一…]7741割減収

10C050

回答害11合(%)

-6-

100

蕊鞠

一二一●

○‘夢“

燕評興函撰曇

一.騒

震選○9

050

発病度

図ハクサイの球重に及ぼす根こぶ病発病の影響

Y=-OO165X3+1.8835X2-66.501X+4552.21(R2=0.913)

(52,3867).ロセョ

、飾畿,=亀昌識i理PO追鑑

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表2着色法とPCR法の比較(耐性菌株数)

研究成果の紹介▲凸■伊盈L』■

1薬剤耐I性イネいもち病菌の分布と検定法

ねらいと成果

今日、イネいもち病に対しては長期残効型の舘施

用剤による防除が主体となっている。しかし、2002

年にカルプロバミド剤の効果が低い事例がみられ、

2003年には広範I州で同剤の効力低下が認められた。

効力低下の原閃に薬剤耐性菌が疑われたため、発病

病斑から菌株を採取して検定した。その結果、耐性

菌は県西部。中央部を''1心に広い範囲に分布してい

た。

また、耐性検定法として簡易な着色法の有効性を

検討した。耐性菌率の高い場合は着色法とPCR法

はよく一致したが、混在している場合は両方法に食

い違いがみられた。

内容

l試験の方法

2003年7~9月に葉・穂のいもち病斑から採集し

た321菌株を供試した。PDA培地で25℃7日間前

培養した菌株を薬剤を含む培地に移植し、7日後の

菌そうの着色状態によって耐性を判定した。カルプ

ロパミド・ジクロシメットはいもち病菌のメラニン

合成を阻害することでいもち菌の侵入を妨げ、防除

効果を発揮する。このため感受性菌はメラニンを生

成できず、培地上で菌そうが濃緑色に着色しない点

で判定ができる。この着色法の有効性を検討するた

め、検定菌株の一部249菌株をPIRA-PCR法で

検定し、着色法と比較した。

2耐性菌の分布

両部(姫路市、安富町、新宮町、佐用町、上月町、

南光町)、中央部(加西市、八千代町、小野市、I|’

町、西脇市、明石市)、東部(神戸市、三田市、篠

表1耐性菌率と分布(2003)

山市、青垣町、市島町)、北部(豊岡市、浜坂町、

和田'11町、大屋町、八鹿町、朝来町)に、区分して

耐性菌率を求めた。着色法による耐性菌率は、四部

100%、中央部99%、東部39%、北部47%であった。

PCR法ではそれぞれ100%、92%、6%、3%で

あった。

耐性菌は県下の広い範囲に分布しており、特に西

部、中央部で多いことが判明した(表1)。この背

景には、これらの地域はカルプ ロパ ミド 剤が1997年12

月に登録されてから、比較的早い1999年より防除暦

に採用されて使われていること、卓越した効果から

本出防除が実施されずに同一薬剤の淘汰圧が長期に

わたって働いてきたことによると考えられる。

3検定法

耐性菌の検定法は、操作が簡単で特別の機器類を

必要とせず、しかも宏価であることが望まれる。そ

こで菌そう着色法による検定を試みた。着色法とP

CR法を比べると、11N・性菌率の高い西部、i-l」央部で

は比較的よく一致したが、東部、北部では異なって

いる。このことから、耐性菌と感受性菌が混在する

地域では正確な把握が必要なため、PCR法による

精査が必要であると考えられる(表2)。

今後の方針

いもち病菌の耐性は.ヵ所の遺伝子が変異するこ

とによって獲得されたとされている。着色法では着

色程度に中間を示す附株も認められることから生物

検定による調査法の確立が必要である。また、耐性

閑と感受性菌が混在する地域の発生動向等を把握す

る必要がある。

長冊靖之(農業技セ・病害虫防除部)

検定数

16

20

11

21

11

採集地

場内

西部(H町)

中央部(N市)

東部(S市)

北部(A町)

地域 耐性菌率(%)

着色法PCR法

100100

99.091.9

39.25.9

47.22.5

75.756.2

-7-

法50811

R12

(UP着色法

16

20

11

西部

中央部

東部

北部

県全体

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2病害抵抗'性向上資材を用いたイチゴうどんこ病の発病抑制

ねらいと成果

食の安心・安全志向が求められている中で、殺菌

剤にかわる病害抵抗性向上資材を用いた試験研究を

行ってきた。イチゴに液体ケイ酸カリウム水溶液を

かん注すると、うどんこ病に釧雁りにくくなるが、う

どんこ病発病後では効果がやや劣るため、アミノ酸

の一種のメチオニンとビタミンB2であるリポフラビ

ンの混合水溶液散布を組み合わせて、発病抑制効果

を検討した。うどんこ病初発生から、液体ケイ酸カ

リウム水溶液の自動かん注処理、メチオニンとリボ

フラビン混合水溶液散布処理の組合せで、うどんこ

病の発病を強く抑制することができた。

内容

1試験方法

(1)処理方法

農業技術センター内土耕ビニルハウスにおいて、

2002年10月7日に、イチゴ苗「とよのか」をDBE

DC乳剤1000倍液に瞬間浸漬後、定植した。液体ケ

イ酸カリウム水溶液かん注処理(Si+)区、DL-メ

チオニン(150mg/1)+リボフラビン(10mg/1)

水溶液散布(M+R)区、両処理の組合せ処理(Si

十M+R)区、無処理区、の41Xで3反復、1区6

株とした。’1月6日に初発生を確認後、液体ケイ酸

カリウム水溶液をSiO2として191_|までは約0.29/

nrf/day、それ以降は0.19/nrf/dayでかん水装置

を用いて「|動かん注した。

(M+R)水溶液は、11月7H、11月18日、12月

1日の3回、

ハンドスプレーで葉裏が十分ぬれるよう散布した。

(2)調査方法

発病調査は、M+R散布直前の11月18日、12月1日、

最終散布8日後の12月9日、散布19日後の12月20

日の計4回、各区新展開葉を中心に54小葉について

程度別に発病の有無を調査した。

2結果

図のとおり無処珊Xでは日を追う毎に発病が増加

し、最終調査の12月20F1には発病度で32.7となった。

一方、Si区では発病度13.7,M+R散布区では発病

度167と、かなり発病が抑制された。さらに、組合

せ処理区では、発病抑制効果が高く、最終調査の12

月20Flでも発病度を6.4に抑えた。

今後の方針

DL-メチオニンとリポフラビンは、それぞれア

ミノ酸とビタミンという栄養素であるが、うどんこ

病発病抑制に有効であることから防除に用いるため

には、農薬取締法に基づく登録を検討していく必要

がある。

神頭武嗣(農業技セ・病害虫防除部)

炉貝ら

ー、

5心

4.4

劉望農

5050505C

332211

葉のうどん一」病発病度

配.う.蚤一十単一あ

壷函函画画一、愛一十卜諦・坊

エロ』|・モデトベ十』の

画・雲十境十一の

〕-1..釣印・輔勤‐噌:.深-.接二十冷試

TⅡⅡⅡ撫蝿瞬蕊蕊鞠認識蝉騨・堂一十岸云

需ⅡⅢⅢ傘癖癖癖蝿識識癖・堂一十卜式

・蝿1,.IIi燕撫郷蝿騨蛎騨繍識・堂{+冷丞

や一十雷⑩

》11半幸.あ

予斗十あ削

望雛

罰皇監

馴弓聯

-8-

+あ

11/1812/1112/9112/20111/18112/1112/9112/20111/18112/1,12/9112/20111/18112/1:12/9112/20

調査月日

図液体ケイ酸カリウム水溶液のかん注処理とメチオニンとリボフラピン混合水溶液の散布処理がイチゴうどんこ病の発病に及ぼす影響、バーは標準誤

差を示す

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ひょうごの農林水産技術No.133(2004.5)

3カドミウム対策客十施工後20年以上経過した水田の安全性

ねらいと成果

食品中のカドミウム濃度について従来より厳しい

国際的な基準値(お米の場合、現在の基準値1mg/

kgに対して0.2mg/kgを検討「'1)が設定されよう

としている。そこで、今後の吸収抑制対策に役立て

るために、過去に対策l訓を施|:した水川の土壌断

面を調査し、水稲のカドミウム吸収を検証した。そ

の結果、産米のカドミウム濃度は極めて低く、過去

の客土工法の有効'性、効果の持続性を再確認した。

内 容

対策工事施工後20年以上経過した2水田(Aほ場:

1973年施工、Bほ場:1976年施工)を選定した。

土壌断面調査結果から、旧汚染土層は第4層(表

面から42cm及び34cm)に現れ、当初計両(25cm)

以上に客土厚が確保されている。第1,2,3層は

かなり粘質(LiC)で、鋪3IiIWのち密度(llllll式硬

度計)は20mmを超え、水稲根は第2層まで(表面

から24cm及び19cm)しか観察されない。旧汚染土

層の直上には転圧されたベントナイトが確認される。

両ほ場とも、第3層までの土壌pHは6.9以上の高

いレベルである。汚染土IllYiと杵lJllW(第3IWI1)の両

方に対して床締めが行われたことがうかがわれる(図

l)。

客土時の状態を維持していると考えられる第3層

の土壌''1カドミウム濃度0.06~0.08mg/kgに対

して、第1,2層は0.32~0.37mg/kgである。

長年にわたる水稲や転作作物の栽培により、わずか

ずつ作土層にカドミウムが集積すると考えられた(図

l)。

これらの水Ⅱ|で栽端された水稲「コシヒカリ|の

精玄米''二Iのカドミウム濃皮は0.03mg/kgを超えない。

流通可能規制値0.40mg/kgと比較してもはるかに

低く、現在までのところ安全‘性に問題はない(図2)。

以上、粘質で高pHの川土を用いて、適切な床締

め工法とともに客土厚を30cm以上確保すれば、20

年以上経過しても水稲根は'11汚染土層まで到達しな

い。

普及上の注意事項

本知兇は、客土によるカドミウム吸収抑制対策を

実施する場合に利川できる。

水稲のカドミウム吸収抑制技術の基本である湛水

管理を励行することが望ましい。

また、すき床をこわし土壌構造の発達を促進させ

る転作による畑作物の絞陪をできるだけ避ける等、

水稲根を汚染士屑に到達させない配慮を続けること

が大切である。

桑名健夫(部長(環境))

Aほ場(27年経過)

Bほ場(24年経過) 0

50505050

433221100

。00000000

カドミウム淵度唾/地

60cm

0cm

a等0帝T』丘、

10う.』0今一、-

,,⑭⑭

B作土

s3

胆Ⅳ弧

、⑭④④

押回榊匝拠匝舜回

もb、、

O、

20cm

皿、

40cm

灰色、pH69

皿匝回圃

唖唾砿恥皿距q、

唾唾唾皿誕吹距

○ち密度(m、) 門全量(三混醗分解)Cd濃度(Ing/kg)

図1調査ほ場の土壌断面と各tlWiのち密度、t壌pI-I及びカドミウム濃度

2000年2001年2000年2001年

旧作土

Aほ場Bほ場

図2「コシヒカリ」精玄米のカドミウム濃度

-9-

グダンヱゲ〆。

×□×

×□

末調査

ジグダダダダ】

三参髪

未調査

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4812162024283236404448

(定槌[後週)

カーネーション養液士耕における時期別N吸収量

4カーネーション養液土耕における環境に優しい施肥法

ねらいと成果

カーネーション養液土耕の施肥法は慣行(固形慨

肥)法に比べ環境負荷の少ない方法ではあるが、現

行(従来法)では夏低EC(電気伝導度)、冬高EC

型の施肥管理のみで、過剰施用による養分の排液流

出や土壌への蓄積は大きく、コスト高で環境負荷に

もつながる。また、カーネーションは栽培期間1年

のうち収穫期間7か月の生育・開花並行型であるた

め、過剰な養分蓄積による根系へのストレスを与え

ない栽培管理が必要となる。そこで、安定収量が得

られかつ、環境に配慮したカーネーション養液土耕

のための最適な施肥方法および施肥量について検討

した。その結果、時期別養分吸収量に従って施用す

る方法が、土壌中への養分蓄積が少なく、高収量が

維持できる環境保全型施肥法であった。

内容

1切り花収量と品質

品種「ノラ」を用いてN(図1)、P、K、Ca、

Mgの時期別養分吸収量を算出した。これに基づい

た施肥1倍区の切り花収量は、従来法と比べてやや

増加した。1.5倍区ではさらに若干の増収が得られ

たが、切り花長や.切り花重ではほとんど差がなかつ

た(表)。

2土壌中の硝酸性窒素の推移

時期別養分吸収量に基づいた施肥1倍区の土壌中

の硝酸性窒素(NO3-N)は、栽培終了後の土壌へ

の残存がなく、従来法と比べて過不足少なく推移し

た。吸収量に対して過剰な施肥(1.5倍区)を行う

と、養分の排液や土壌への流出および残存のおそれ

がある(図2)。他の養分についても同様の傾向が

みられた。

以上の結果、土壌中に蓄積している養分も含め施

肥の過剰施用は、切り花収量の増加効果より、養分

の土壌中への蓄積および排液への流出が多くなる可

能性があった。よって、時期別養分吸収量に基づい

た施肥法は、高収量を維持出来る環境保全型施肥法

であることが明らかとなったo

普及上の注意事項

吸収量は気候等により年次変動があるが、設定す

べき施肥量は土壌の持つ緩衝力と土壌溶液を用いた

簡易診断による補正で対応可能であると考えられる。

縛回艶

小河甲(部長(環境))

-←対照区(従来法】

一■ⅡI■一

戸1111Ⅱ画●。兎。ロ。一

(いい一△列琴の一/白く叩v△⑪n》《hUo-4らか〃】(、u

■1▲。■1戸勺I上▽日上

(望星葛)雪要蓉三

鐘に墓づいた肺肥粧に上る切り旅

一一W倍区

5倍区弱鋤記釦賜肥50毛庇

画。。『へ幽巳)

‐←

戸輪

花順位、’切り花長切り花麓茎径b‘( c I n ) ( 質 ) ( 、 、 )

Ⅱ4448

ロ 816 4周■1 $冊OqIO

(週)

定植時

図2時期別養分吸収量に基づいた施肥法による土壌中のNO3-Nの推移*定械時の土壌中のNO副-N量をo(Ing/1009)として換算

338.31番花66.222.43.52番花76.640.34.5

l図'1

対照区(僻乗法)

壷時期荊謹令呪11M

-10-

11V母ル品唇

1.5倍区

(鮒謝馴り施肥区

348.11番花66.723.53.42番 花75.738.24.3

a)

bl

3 5 3 . 0 1 番花62.822.03.42番 花74.637.94.3

1番花:摘心後伸長した分枝を孫花したもの、

2番花:1番花の採花後伸長した分枝を採花Lたもの上位第5節間の中央部最大径

1倍区

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-5.7

-5.5

-49

ひょうごの農林水産技術No.133(20045)

5施設軟弱野菜栽培における化学肥料及び有機質肥料の反応特性

と同量の成分姑を施川した。なお、今回の施肥量は

「環境負荷軽減に'''11」臆した各種作物の施肥基準(平

成15年2〃)」のコマツナの窒素施用量(8kg/10a)

に準じた低い施川j]i:である。また、両区とも石灰質

資材をl作''100kg/lOa、2,3作目50kg/lOa施

用した。

2結果

収量は化学肥料区が有機質肥料区を上回った(表

l)。有機質肥料区は春作では化学肥料区の93%と

差は少ないが、秋作、冬作で71%、41%と大きな差

があった。また、コマツナ''1の硝酸イオンは有機質

肥料区の方が低く、黄化度も低い傾向があった。

化学肥料区土壌では主に硫安の硫酸根の影響によ

りpHが6.6から6.1に低下し、EC(mS/c、)が

0.22から0.45に上#11.したが、有機質肥料区土壌で

は石灰施川の影響によりpHが上昇した。また、秋作、

冬作の有機質肥料Ixでは.IIJ給態窒素(mg/lOOg)

が10.0から17.5まで上昇した。

普及上の注意事項

・施設栽培土壊で有機鷺肥料を用いた場合、石灰施

用によるpHのk界に注意する。

・秋作、冬作で1伽|した'1J.給態窒素は、地温の上昇

期に放州されることが予想され、次の春作では施肥

を抑える必要がある。

望月証(部長(環境))

ねらいと成果

近年、消費者意識を考慮して有機質肥料の使用が

増えている。有機質肥料は微生物により徐々に分解

されるため、肥効が遅いと言われている。今回、施

設軟弱野菜について有機質肥料と迷効性の化学肥料

を同成分量施用して比較し、有機質肥料の特徴を明

らかにすることをロ的とした。その結果、有機質肥

料は化学肥料と比べて、秋作、冬作において収量が

低下し、特に冬作では顕著であった。また、土壌に

対するpHの低下、ECの上昇等の影響は少なく、秋、

冬作において可給態窒素が増加することがわかった。

内容

1方法

総合センター内ガラス温室でコマッナ(品種コソ

デ)を用いたプランター試験を実施した。供試土壌

は粘質土壌であり、有機質肥料区と化学肥料区を設

け、春作(6/18は種、7/12収機)、秋作(9/19

は種、10/11収穫)、冬作(10/31は碗、12/25収穫)

を、l区3連で実施した。有機質肥料区は、主原料

が魚かすである混合有機質肥料(N-P205-K20=7.

7-3.3-2)50kg/10a、菜柵Ⅲかす(N-P205-

K20=6.1-2.6-1.7)lOOkg/10aを施川し、投

入成分量はN:P205:K20=8.8:4:2(kg/

lOa)であった。化学肥料区の投入戯は、速効性の

硫安、過リン酸石灰、塩加を用いて、有機質肥料区

F詞

表-1コマツナの収量および品質

※化学肥料区の収量を100とした場合の相対値

68.4

70‘5

70.2

試験区作付収遥相対値※硝酸イオン葉色黄化度(E/20株)ppm L 値 a 値 b 値 ( L * b / - a )

備考'》:Truog法2》:30°C28日間土壌水分60%培蕊後の窒素無機化量一培養前の硝酸態窒素量

-11-

化学肥料区 作作作

春秋冬

331

281

191

100

100

100

2600

952

468

35.C

34.3

33.6

-5.6

-4.5

-42

10.8

9.8

90

67.9

74.0

720

T-N

0227

有機質肥料区 作作作

春秋冬

mm8

327

93

71

41

'600

283

347

35.6

36.0

345

21

19

23

11.0

10.8

99

0.1987.0 0 - 1 5 4 6 4 1 4 7 5 8 2 3 9 7 1 0 . 0 0 . 6 4 - 9

0.1847.10.164791435223961381.16.1

0.2147.20.19551141542610017.50.16J

pH(H20)-

6.6

0.2276.6 0 . 2 2 4 3 4 1 4 1 6 7 2 1 1 0 4 1 1 . 6

表2コマツナ作付跡土壌の化学性

T-C

作イ寸前3.60

春作3.32化学肥料区秋作3.39

冬一作3.37

作付前3.60

春作3.17有機質肥料区秋作3.02

冬作3.31

442

474

5,3

交換性陽ゴオン(mg/1909)_一夏給蝦(可給態(mg/100贋)

CaOMgOKZONaoOリン酸')窒素z)434141672110411.6

水溶性(Ing/100頁)

NO3-NSO44.710.4

0.7328

0.458.0

0.182.6

4710-4

027

0.370-45

EC

mS/cnn

O22

6.3

6.1

6.1

147

14C

137

476

544

98

103

104

6.8

1q・1

9-9

0.201

0.203

0.217

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-20 020

図種雄牛の育種価分布状況(2004年2月)

62003年度の現場後代検定成績からみた種雄牛の特徴

ねらいと成果

肉質、肉量ともに優秀な種雄牛を造成するために

現場後代検定法を実施している。2003年度は鶴田土

井、北本土井、北桜波、照波土井、鶴仁土井、光照

土井、光安土井の検定が終了した。検定成績をもと

に育種価を算出したところ、照波土井、鶴イーー鷺土井、

初の養父郡産種雄牛として注'二'されていた光照土井、

光安土井が優秀な産肉能力を持っていることが判明

し、今後の活躍が期待される。

内容

現場後代検定法は、1種雄牛当たり16頭の産子(去

勢牛)を検定調査'|:とし、肥育農家と農業技術センタ

ーで8頭ずつ肥育して得られた枝肉成績から種雄牛

の産肉能力を判定するものである。2003年度に検定

が終了した種雄牛についてその概要を表に示す。

枝肉重量は鶴田土井、照波土井、鶴仁土井、光照

土井で平均390kg以上となったが、光安土井はかな

り期待値を下回った。脂肪交雑平均値では光照土井

が6.1、光安土井が5.9,照波土井が5.7と高い成

績であった。特に光照土井はA-4以上が93.8%で

あり過去の検定成績と比べ最高であった。これらの

成績をもとに育種価を算出し、枝肉重量と脂肪交雑

について図に示した。鶴仁土井の枝肉重量は第2安

鶴土井の息牛では最高であり、脂肪交雑では光安土

井、光照土井、照波土井の評価が高かった。

今後の方針

光照土jl:、鶴仁土井、光安土非、照波土井は2004

年度から供用するが、光安土井は遺伝病の関係上条

件付きの供用となる。今後ともさらに優秀な種雄牛

を造成するためにより一層の検定精度の向上を図る。

野田昌伸(北部農技・畜産部)

臼、

表現場後代検定枝肉成績の概要(平均値)

-12-

壷40

種雄牛枝肉重量ロース芯面積バラ厚皮下脂肪厚脂肪交雑

-60

鶴田土井

北本土井

北桜波

照波土井

鶴仁土井

光照土井

光安土井

48cm‐

49

52

54

51

54

53

6.6CIT

6.5

6.5

6.9

7.1

7.0

6.4

7667919

●■け●bp国

4445465

393kg

376

372

393

396

397

355

2.7cm

2.5

23

2.5

2.4

2.4

2.2

8KO

脂肪交差基準壷

16

40

戸唱、

1-喝

1-4

I届!

1-2

11

IKO

0】9 ||競田士井

国北桜波

眼9

6YH

坪井》

土.弁・

圭安・土

光翌

■《串■

■第2照久土井

■豊 菊 波 ■ 鶴 雅 土 井

■砿

北; 土井

菊俊土井■

曲■■■■■■ロ■■■■、■■M■q

福俊土井

光照土井

閥山土井

照波土井■

■●台■甲■④守守●p寺■勺■■やp●。①や甲再p●▼■■①p●■マ‐。P●●勺包勺勺や1▼■■■■■■-画-■曲■=由■■凸&△凸

:■幽仁土井

■福芳土井

枝肉重量(kg)

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生育遅れ

発生率%

ひょうごの農林水産技術No.133(2004.5)

7大豆発芽試験法(寒天法)におけるサチユタカの最適注水室

ねらいと成果

大豆種子の発芽試験の発芽床には、主要農作物種

子の審査法の中で、、砂またはろ紙を川いるよう定め

られている。しかし、具体的内容が示されておらず、

大豆は発芽時の酸素要求量が大きいので.砂の水分管

理が難しく、発芽の不揃い、かび、腐敗が発生しや

すい。一方、ろ紙を用いる場合、一瞬きめ細かい水

分管理と熟練を要する。

そこで、水分管理が容易で、安定した発芽率が得

られる寒天法を開発した。ただし、同法では注水量

により発芽率が変動するため、品種に応じた注水量

の設定が必要である。

本試験では2001年に奨励品種に採用された「サチ

ユタカ」に寒天法を適用する場合の蝦適注水量につ

いて検討した。その結果、注水量は40mlが適当と考

えられた。

内容

1.試験方法

発芽までの手順は以下(①~④)の通りであり、

概略を図に示した。

①透明プラスチック製容器(16cm×12cm×5cm)

に、0.7%寒天液を300,1分注して冷却間化させる。

②この発芽床に大豆100粒(2001年産サチユタカ:

百粒重39.99)を播種し、試験区の設定量に応じて

蒸留水を注水する。③注水後の容器を5個、大型プ

ラスチック容器(40cm×28cm×11cm)に入れ、

ビニールで稜い、4隅とIlilM14ヵ所をテープで止め

る。④25℃、照光条件下で発芽させる。

対照として憤行の方法(砂を発芽床とし、底、給

水を行う)による区を設定した。

これらの発芽率と障害粒発生率を訓査した。なお、

子葉の間から初/k葉が,mm以上伸び、一次根が十

分かつ健全に発達した粒を発芽とした。

2.結果

注水量30ml以|、・では水分不足による発芽率の低下

および生育遅れが'1立ち、生育遅れに伴うかびも認

められた。逆に、注水量50mlでは過湿による発芽率

の低下および不発芽、かび、生育遅れが顕著になっ

た。一方、注水量40mlでは生育遅れ、かび、不発芽

の発生が少なく、もっとも高く、かつ'慣行並みの発

芽率が得られた(表)。

普及上の留意事項

これまでの試験成綴では、最適注水量は粒大(肯

粒重)にほぼ比例している。従って、栽培法や品種

等によって百粒重の異なる場合も本法に準じ、最適

注水量を求めていくことが出来る。

衆山康男(農業技セ・作物部.原種農場)

伊嘩

発芽率

(8日目)%

40,1

T5cIII

、|,

子(100粒)一一一一一一一一一一一一一一~、~、f・bllIhr-1r-1『~1『。,

畠■■

『1Iへ

l 〆 、 II6cIIl

I 、 / I

図.寒天を発芽床とした大豆菰子発芽拭験

表.寒天法における注水戯が大豆サチユタカの発芽と障害粒発生に及ぼす形珊

~?卒,-.,’

40,1

発芽床の素材

注水卜it

ml/100粒

発芽率(5日目)

砂(価行)底面給水81c92c4.7ab2.5a1.6NS1.9NS

隙答粒発生串%

-13-

注)異符号間は5%水鵬で有意差があることを示す。NSは有漁差がないことを示す。

かび厩敗不発芽

子(100粒)菅一一三一~ご‐~二llIhfl『!

寒天 COCC

345

23a

63b

80c

70b

773

84i】

94c

86i]

10.4b

9.7b

3,lH

7-Rb

5.0bC

4.4b

1.3a

6.Rc

1.9NS

0.9NS

0.9NS

0.9N9

3.4NS

1.9NS

1.6NS

4.7NS

/|、

、l/ 0.7%寒天30Omi

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00000

09876

1出芽一手(%)

8出芽安定のための大豆種子水分の大量調薬法

ねらいと成果

大豆栽培において、出芽揃いを良くして初期生育

を旺盛にすることは、収量の確保や雑草の発生を抑

制するために極めて重要である。そのために、あら

かじめ種子水分を15%程度に調整して、種子の発芽

〃を高めておくことが有効であることが知られてい

る。ところが、その調整方法は比較的少量のものに

対応しているに過ぎない。そこで、大量の種子を扱

う現場向けに、簡便かつ大量に水分調整する方法を

検討したところ、播種前に種子重量のl~2%の水を

加えてから水稲用育苗箱に詰めて積み重ねることで、

簡便かつ大量に種子水分を調整する方法が確立でき

た。また、適切な播種条件になるまで保存すること

も可能であった。

内容

大豆種子10kgに対して水100~2009を、大容量

の平型容器に殺菌剤や忌避剤と同時に加え、すばや

く均一に撹排する。目標とする水分含有率は15%以

下なので、加水前の種子水分が高い場合は、加水最

を少なめにしておく。そして、撹枠した種子をおよ

そ4~4.5L(種子水分15%で約3.1~3.5kg)ごと

に水稲用育苗箱に均一に広げた後、種子の入った育

苗箱を冷暗所に積み上げてから防水シートで覆って、

水分の蒸発を防ぎながら保存する(図1)。

保存期間は、冷暗所であれば2週間程度経過して

も問題ない(図3)。大豆種子の風乾重に対して1

~2%の水を加えて、種子水分を1~2%程度高め

るだけで、発芽に最適な種子水分といわれている15

%に至らなくても、十分に発芽能力が高iまる(図2,

3)。

普及上の注意事項

殺菌剤や忌避剤を同時に加えると、保存時の雑菌

の繁殖を抑える効果も期待できる。種子水分調整時

に生じた裂皮粒、割れ粒等を取り除けば、発芽率は

さらに高まる。播種時に土壌が乾燥している場合は、

適湿な条件よりも出芽が遅れるが、乾燥条件が著し

く続かない限り、種子水分の調整効果に変わりはな

いo

牛尾昭浩(農業技セ・作物部)

柄角ら

'鴬撤10kglOO~200ml

爵溌[:

水稲用育苗箱に

4~4.5L(3.1~3.5kg)/箱

積み上Iずて

防水シートで可登う

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亡〉鐸魚・』:、.“f、ざ.…、.'、.-ザ

駕篭...;.:麹.,・

加水、撹j牢.

図1大豆種子の水分の大量調整手順

lOC

一一

水対:『…:一……郡::,

■画一一垂

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一帥・鴬・粂爵、蕊蕊

一心二.列「熱鶏

心繍繍一鰯

分調整

B召

嘉蕊

!●

O----や--卓一一・つ

00000

8642

出芽率(%)

二J

’ダ

…○..‐対照(9.G

水分調整(12.6)

鍵3日後(6/22)蕎種15日後(7/4)播種

水分調整後日数

図3種子水分調整処理後経過日数の違いが出芽率に及ぼす影響

注)水分調整:6月19日調査日:播種7日後図中のカッコ内は播種時の種子水分含有率

-14-

§鍵0246810

播種後日数

図2種子水分調整が出芽率の推移に及ぼす影響注)水分調整:6月19日播種日:7月4日

図中のカッコ内は播種時の種子水分含有率

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ひょうごの農林水産技術No.-133(2004.5)

-15-

9環状はく皮で垣根整枝ブドウの着色向上

ねらいと成果

ブドウ「ピオーネ」などの大粒系I品種は樹勢が旺

盛で、着色不良などの品質低下を招きやすい。本県

で開発した垣根整枝は従来の平棚整枝に比べて、上

を向く作業がほとんどなく、主な栽靖管理が楽な姿

勢で行えるものの、結果枝を斜め上方に誘引するた

め、樹勢が強くなりやすく、着色向上が課題となっ

ている。

そこで、垣根整枝ブドウにおける環状はく皮処理

が果実品質、枝の生育に及ぼす影響について検討し

た。その結果、環状はく皮処理は果実の着色を明ら

かに向上させた。また、処理によ州l梢の伸長・発

生を抑制したが、樹勢の低下等の悪影郷は認められ

なかった。

内容

供試樹・は垣根整枝(根域制限、短梢せん定、ジベ

レリン処理による無核化栽培)の9年生ピオーネと

8~10年生紅瑞宝を川いた。環状はく皮処理は満開

後約351二Iに主幹部を、2~3cmI隅でリング状に樹

皮を剥ぎ取った。ピオーネは2000年、紅瑞宝は200

1~2003年に処理した。なお、結実管理は主枝1m

あたり約6房に調整し、1果房35粒程度に摘粒した。

ピオーネの環状はく皮区は無処理区に比べて、果皮

色が明らかに優れ、糖度も向かった(表1)。果房

軍、果粒重および酸含量は処Ⅲ収間に大きな差がな

かった。紅瑞求についても、蒜色が無処理区に比べ

て優れた(衣2、図)。ピオーネの結果枝当たりの

総副梢長は環状はく皮区が無処理区に比べて明らか

に短く、副梢本数も少なかった(表3)。また、紅

瑞宝でもピオーネと同様の傾向であった。枝長、枝

径および登熟率は両品種とも、処理区間に大きな差

がなく、樹勢の低下は認められなかった。

普及上の注意事項

環状はく皮処理は切り出しナイフ等を用いて、形

成層が残らないよう樹皮を剥ぎ取り、はく皮部はビ

ニルテープ等で覆って保護し、癒合を‘促す。処理は

樹勢が強い樹を対象とし、収稚適期は着色だけでな

く食味で判定して早取りにならないよう注意する。

福井謙一郎(加西普及センター.(''1園芸部))

『一癖

Lu

表2環状はく皮処理が垣根整枝「紅瑞宝」の果実品質に及ぼす影響(2001~2003)

表1環状はく皮処理が垣根整枝「ピオーネ」の果実品質に及ぼす影響(2000)

、‐R‐** rLS*ns

試験“雷果皮

色')

糖度

(Brix)

果粒重

(9)

果粒重

(9)

果皮

蝋色')

糖度

(Brix)

l)表1と同じ

2)*は5%で有意

環状はく皮

無処理

環状はく皮

無処理

373

360

11.1

11.3

4.2

26

18.6

18.2

571

591

14.2

155

8.3

6.7

20.2

19-3

**

44

117

94

9C

有意性2)ns有意性2),rLs

図垣根整枝「紅瑞宝」の環状はく皮処理果(上段)と無処理果(下段)

14612.7

142120

l)総副梢長はl結果枝当たり

2)**、*はそれぞれ1%、5%で有意

表3環状はく皮処理が垣根整枝「ピオーネ」の枝

の生育に及ぼす影響(2000)

副梢

本数

環状はく皮

無処理

l)農水省旧果樹試基準のカラーチャート値(数字が大きいほど着色良好)

2)**、*はそれぞれ1%、5%で有意

1.9

28

有意,性2)、.s、ns.n.s

試験区濡枝径

(m、)

登熟率

(%)

総副梢

長(c、)')

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夢、」

普 及情報

普及が進むカーネーションの養液土耕栽培

はじめに

養液土耕栽培は、多肥栽培するカーネーションに

とって、非常に合理的で省力かつ安価にできる技術

として、ひょうご花のメロディー構想推進強化事業

などを活用して淡路のカーネーション農家に急速に

広まっている。

養液土耕栽培とは

従来の栽培畝に点滴チューブを2~3本敷設し、

所定濃度に薄めた液肥を自動的に点滴施用する方法

である。施肥潅水に要する労働時間が従来の約10分

の1に短縮でき、反射マノレチを張ることで高温期地

温上昇をおさえられ、生育がスムーズになって2割

程度の収量アップが見込まれる。コントローラーや

液肥混入機などlOa当たりの諸費用は約150万円であ

る、点滴チューブと配管を追加することで、一つの

システムで最大50a程度の面積をカバーすることが

可能である。最近では、小面積用の安価なシステム

も発売されている。

淡路での普及状況

最初に導入されたのは、1998年度東浦町の1戸16

a。淡路農業技術センターの研究成果を見て早速に

取り組んだ。その後の導入経過は例のとおり。2004

年度には、農家数、而積とも島内の約3分の1とな

り、主要な農家のほとんどが養液土耕栽培となる見

込みである。千m②

養液土耕栽培の効果と問題点

養液土耕栽培と従来の栽培を比較すると、エクセ

リアのように豊産性品種では、収量・品質ともさほ

ど変わらないが、フランセスコのような中生品種で

は品質よりも収量の増加が期待される(表)。しか

し、収量が増えても茎が細くなる傾向にあるので、

むやみに切花本数を増やすことは危険である。養液

土耕栽培は、カーネーションの生理によくあってい

るため、ややもすると生育が旺盛になりすぎて茎が

伸びたり、がく割れを洲き起こして、品質を悪くす

ることがある。機械にたよらず、天候や生育状況を

見て操作する必要がある。

11J

へ、

表・切花数比較(P,フランセスコ)

120

100

80

-16-

A氏

13年14年

B氏

18年14年

(|笥司(養液土耕ウ(慣行)(養液士I朔

彪毒'16農②1-002A4

定植日6月中旬6月上旬6月下旬6月下ン旬

収穫8/268/198/299/2期間~5/22~5/14~5/27~6/3

切花数677.0676.0667.0784.2体/坪)

ひょうごの農林水産技術Nol33

平成,6年5月,,,(隔月刊)兵庫県立農林水産技術総合センター(0790)47-2400

1部250円(申込先.県立農林水産技術総合センター)

おわりに

普及センターでは、養液土耕栽培導入をきっかけ

に新技術栽培研究会を組織し、定期的な研修会や関

係機関による指導チームを結成して巡凹指導を行い、

技術向上を図っている。

門地哲弘(北淡路農業改良稗及センター)

図2指導チームによる巡回指導

989900年豊1020304

図1カーネーション養液土耕栽培の推移

70

000

42

00210

60

50

戸数

0043恩6c


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