「耐熱金属材料第123委員会」活動状況報告
⑴ 設置年月:昭和32年4月
⑵ 委員⻑名(所属職名):竹山 雅夫(東京工業大学大学院理工学研究科・教授)
(期間:平成25年4月〜現在に至る)
⑶ 委 員 数:143名(学界委員51名・産業界委員92名)
1.委員会趣旨・目的 東⽇本大震災による原発事故を経て、我国のエネ
ルギー政策が見直される中、エネルギーの安定供給
の観点から今後火力発電の重要性は増大する。特
に、運転温度の高温化による発電効率の一層の向上
は喫緊の課題である。また、航空機及び自動車用エ
ンジンの軽量化・高温化は資源の有効利用の観点か
ら不可避である。これらの実現には高温構造部材の
耐用温度の上昇が重要となる。
本委員会は昭和32年以来、58年間、我国の高温
構造部材の高温強度向上と耐用温度の高温化に対し
て先導的役割を果たしてきた。特に、耐熱鋼におい
て、欧米を凌ぐ蒸気タービン運転温度の実現に対し
て当委員会の果たした役割は甚大である。このよう
な貢献は、産官学で有意義な討論を繰り返してきた
ことによる。当委員会の活動目的は優れた研究成果
を出すことのみならず、世界をリードする多くの人
材を育成することにもある。今後は先進耐熱材料や
耐環境特性分野への研究拡大を推進し、耐熱材料の
分野において世界の先導的役割を果たす。
2.活動概要・実績 ・概要:年3回の研究会、年1回の討論会を基礎
とし、27年度は国際会議を主催した。
・講演会・見学会(平成27年10月21⽇):株式
会社IHI瑞穂工場の見学と、「航空エンジン用
材料の動向」と題する講演会を開催した(出席
者27名(内産業会委員22名))。本見学会は、
当委員会の本委員会を兼ねており、協力企業を
中心とした本委員のみが出席している。
・研究会:4分科会(耐熱鋼、超合⾦、先進耐
熱・プロセス、耐環境特性)において3回の研
究会を開催し、計187件の研究発表を行ない、
活発な議論を行なった。7月期研究会(主催し
た国際会議HiMAT-2015と兼ねた。平成27年6
月30⽇-7月1⽇):出席者233名(内産業会委員
83 名 )、 オ ー ラ ル 106 件 ( Plenary6 件 /
Keynote13件)ポスター44件、参加国数14カ
国;11月期研究会・討論会(平成27年11月9
〜10⽇):出席者63名(内産業会委員42名)、
発表24件;3月期研究会(平成28年3月3〜4
⽇):出席者66名(内産業会委員44名)、発表
13件。11月期は討論会「先進超々臨界圧火力
発電プラント用候補材料Ni基合⾦の現状と課
題」(発表10件)を行い、Ni基耐熱⾦属材料に
おける考慮すべき因子についての課題を集中討
議した。
・国際交流1:平成27年6月29⽇〜7月3⽇に、当
委員会主催の123HiMAT-2015 “The 1st In-
ternational Conference on Advanced High-
Temperature Materials Technology for Sus-
tainable and Reliable Power Engineering”を
北海道大学(札幌市)にて開催した。開催に伴
い、⽇本学術振興会国際会議補助⾦及び池谷科
学技術振興財団に援助申請をし、それぞれから
250万円、50万円の援助を頂いた。開催にあた
って、国際交流・若手人材育成の施策として東
南アジアから11名の若手研究者(うち学生7
名)を招待した。
・国際交流2:平成28年8月28⽇〜9月2⽇に、当
委員会主催“5th International Workshop on
Titanium Aluminides”を東京工業大学(東
京)にて開催する。このワークショップは、航
空機材料として最も注目を集めているTiAl⾦属
間化合物材料に特化したものであり、先進耐
熱・プロセス及び耐環境特性両分科会が中心と
なり、その基礎、応用、プロセスについて世界
の著名な研究者、技術者が一同に介する会議で
ある。その国際ワークショップに向け、国際ワ
ークショップ組織委員会、財務委員会、実行委
員会を設け、組織・財務・実行委員会合同会議
を研究会に合わせて開催し、運営の方針を固め
るとともに、本会議に向けての本格的な準備を
行 っ た 。 本 国 際 ワ ー ク シ ョ ッ プ の 詳 細 は
http://tial-ws2016-tokyo. mtl.titech. ac. jp/
に掲載している。現在、講演申し込みを受け付
け中である。開催に伴い、⽇本学術振興会国際
会議補助⾦に援助申請をし、239万円の援助を
頂いた。
・若手育成1:123HiMAT-2015国際会議に付随
して、本分野の若手研究者、技術者の育成を目
標とした教育セミナー(Interactive Educa-
tional Seminar)を開催した。世界的に著名な
講師3名を招聘し、耐熱合⾦設計、クリープ機
構、高温腐食の3テーマについて講義して頂い
た。
・ 5th International Workshop on Titanium
Aluminidesにおいても、本分野の若手研究
者、技術者の育成を目標とした教育セミナー
(Interactive Educational Seminar)を世界的
に著名な講師3名を招聘して開催する。
3.活動の成果 ・研究会、討論会の発表内容は「耐熱⾦属材料第
123委員会研究報告」に論文としてまとめ、研
究会毎に発刊している。平成27年6月25⽇には
56巻2号(208頁)を350部、10月30⽇には56
巻3号(329頁)を180部、平成28年2月25⽇
には57巻1号(119頁)を180部発行した。総
頁数は656頁である。
・123HiMAT-2015のプロシーディングを発行し
た。
Proceedings of The 1st International Con-
ference on Advanced High-Temperature
Materials Technology for Sustainable and
Reliable Power Engineering (123HiMAT-
2015),
ISBN 978-4-9908874-0-7,発行部数350部
・上記国際会議に付随して開催したInteractive
Educational Seminarの講義の様子を撮影し、
若手教育用ビデオとして協力会会員にDVDを
配布した。
4.今後の活動方針 平成25年度から5年間において、上述した4分科
会の活動を継続発展させつつ、平成28年にはTiAl
⾦属間化合物についての国際会議を主催する。特に
注力するのは若手研究者、技術者の育成と国際交流
である。我国が耐熱材料の分野において世界をリー
ドするためには、若手研究・技術者の育成は必須で
ある。産業協力会には20代、30代の研究者の委員
への積極登用を要請すると共に、官・学にも次代を
担う若手委員を抜擢し、本会の研究会を若手の研鑽
の場として、産官学一体となって委員会活動を推進
する。また、国際会議(平成28年度開催の5th In-
ternational Workshop on Titanium Aluminides
(8/28-9/2東工大)を主催するとともに、主要な国
際会議2016 MRS Fall Meeting & Exhibit (11/27-
12/2, Boston, Massachusetts, USA),8th Inter-
national Conference on Advances in Materials
Technology for Fossil Power Plants(10/10-14,
Algarve, Portugal)に委員を派遣し、世界の動向
を適時把握して、当委員会が常に世界の耐熱材料の
最先端に位置すべく、情報の収集・発信活動を積極
的に行なう。そのために、協力会企業(現状約43
社)をさらに増やす活動も継続して行なう。