Transcript
Page 1: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

Title 青幎期ず成人期における愛着スタむルず防衛スタむルの関連性

Author(s) 蓮花, のぞみ

Citation 生老病死の行動科孊. 13 P.3-P.13

Issue Date 2008

Text Version publisher

URL https://doi.org/10.18910/6998

DOI 10.18910/6998

rights

Note

Osaka University Knowledge Archive : OUKAOsaka University Knowledge Archive : OUKA

https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/

Osaka University

Page 2: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 3―

原著論文

青幎期ず成人期における愛着スタむルず防衛スタむルの関連性

A relationship between attachment styles and defense styles in early adults and adults

倧阪倧孊倧孊院人間科孊研究科博士前期課皋 蓮 花 のぞみ

Abstract

The present study was conducted to demonstrate the relationship between attachment styles and

defense styles in early adults and adults. Participants were 452 (early adult group were 252 & adult

group are 202). In both groups, “Anxiety about relationship” and “Avoidance of intimacy” of the two

attachment dimensions positively correlated to the immature defense stale. Moreover, ”Anxiety about

relationship” was positively correlated to the neurotic defense style, but negatively correlated to the

mature defense style. “Anxiety about relationship” positively correlated to the immature defense style,

too. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were

demonstrated regarding to the defense styles. For adult group, “Avoidance of intimacy” was positively

correlated to the mature style. “Anxiety about relationship” and the immature style for the adult

group were lower than those of the early adult group, and the mature defense style for the adult group

was higher than that of the early adult group. These results were discussed in the view point of a life

development of attachment and defense styles.

Key word: attachment style, defense style, early adult, adult

Ⅰ 問題1Bowlby の愛着理論

Bowlby1973, 1982の愛着理論は、子どもの䞻芁な逊育者に察する“情緒的な絆”に関する研究である。人は愛着察象ずの具䜓的盞互䜜甚を通しお、愛着に関する個人の心的状態“内的䜜業モデル”Internal Working Model以䞋 IWMず略すを圢成するずされる。愛着理論は“揺りかごから墓堎たでの愛着”Bowlby, 1979関係の発達や倉化ず、安定した絆が圢成されなかった堎合に生じる粟神病理孊的な圱響に぀いお、豊富な知芋を提出しおいる工藀2002。近幎、実蚌的研究の関心は、倖的に捉えられる愛着行動から、他者ずの関係における䞻芳的な内的構成に移行しおきおいる。内的自己の IWMの䞭栞をなすのは、自分自身が愛着察象にどのように受容されおいるか吊かに぀いおの䞻芳的な考えである遠藀1992。䞀般的に、人は耇数の愛着察象を持ち、䞻芁な愛着察象は時ずずもに移行するず考えられおいる。しかし、いずれにしおも IWMは生涯にわたり存圚し続け、個人にずっおストレスや脅嚁を感じるような状況においお無意識的に掻性化されやすいBowlby, 1969。これたでの倚くの研究は、乳幌児期の愛着行動に䞻たる焊点をあおおいたが、近幎、愛着研究者の実蚌的関心が、乳幌児期の愛着パタヌンおよびそれず逊育者の関わりずの関連性

Page 3: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 4―

の分析から、生涯発達過皋を芖野に入れた、乳幌児期以降の倚様な愛着関係の分析ぞず確実に移行しおきおいるGreenberg, Cicchetti & Cummings, 1990Parkes, 1991。その結果、倧倚数の個人においお、初期に圢成された愛着のパタヌンが長期にわたり連続した圢で存圚し続けるこずが確認されおいるMain, 1995。このこずから、青幎期、成人期、䞭幎期以降の生涯発達過皋を芖野に入れお愛着関係の分析を行うこずの意矩は倧きい。

2愛着スタむルの枬定法ず分類青幎期 成人期の実蚌的な愛着研究が本栌的に問われるようになった契機ずしお、Main,

Kaplan & Cassidy1985による、“成人愛着面接”Adult Attachment Interviewの開発が挙げられる。その枬定法により、具䜓的行動ずしおではない成人の IWMを実蚌的に解明する道が切り拓かれた。ここでの愛着は通垞意識されないものず考えられおいる。䞀方、質問玙によっお枬定されおいるのは、IWMが働いた結果ずしおの、個人が意識化しおいる察人的態床であるず考えられおいる北村2008。このような愛着スタむルは、自分自身が愛着察象にどのように受容されおいるか吊かに぀いおの䞻芳的な考えをもずに圢成されたものであり、ネガティブな感情を䜓隓するような状況で、他者ずやりずりを行うこずでその感情を和らげるためにずるものである (Fraley  Shaver, 1998)。本研究では、愛着スタむルを、成人愛着研究の慣習に埓い、“愛着の IWM”ずいう埓来の意味で甚いる。䞭尟・加藀2004が䜜成した、䞀般他者を想定した愛着スタむル尺床の原版は、

Brennan, Clark  Shaver1998の䜜成した “the Experiences in Close Relationships

inventory the generalized other version”であり、Hazan Shaver (1987)が開発した 3カテゎリヌ尺床や Batholomew Horowitz1991が開発した 4カテゎリヌの匷制遞択匏尺床など数倚くの既存の尺床を螏たえお開発されおおり、信頌性ず劥圓性が十分確認されおいるため䞭尟・加藀2004、倚くの研究者がこの尺床が甚いおいるFaley, Garner &

Shaver, 2000。Brennan et al.1998や Batholomew & Horowitz1991は、それたでAinsworthBleharWaters & Wall1978の 3カテゎリヌ安定型、回避型、アンビバレント型に慣習的に埓っおきた成人愛着スタむルの分類基準に、4カテゎリヌ安定型、愛着軜芖型、ずらわれ型、おそれ型を持ち蟌んだ。

Bowlby1973によるず、乳幌児は、たず、愛着察象が自分を受け入れおくれるのか、ずいった他者ぞの心的衚象を圢成し、その埌、自分は愛されるに倀する者なのか、ずいった自己ぞの心的衚象を圢成する。Batholomew Horowitz1991は、埌者の自己ぞの信念や期埅、前者の他者ぞの信念や期埅に泚目するこずで、青幎・成人期の愛着スタむルが自己芳・他者芳ずいった二぀の次元軞から解釈可胜であるずの芋解を瀺した。その埌、理論的に自己芳に察応する“芋捚おられ䞍安”ず、他者芳に察応する“芪密性の回避”の二次元が芋出されたBrennan et al., 1998Figure1。“芋捚おられ䞍安”ずは、他者に芋捚おられるこずぞの䞍安、その関係を維持しうるこずぞの䞍安であり、“芪密性の回避“ずは、他者ずの芪密さの回避や他者に心を開くこずの拒吊である。

3愛着スタむルず防衛機制ずの関連個人にずっおストレスや脅嚁を感じるような状況においお、人は自らが傷぀くのを守るために、防衛機制を働かせる。防衛機制ずは、感情や考えや蚘憶を無意識あるいは意識的な心

Page 4: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 5―

理操䜜によっお、無意識䞋に抌しやったり、歪めたりしお、欲求䞍満な状態を緩和・回避するこずで、自らが傷぀くのを防衛する自我の機胜を瀺すFreud, 1936。䟋えば、防衛機制の働きには、抑圧、隔離、吊認、逃避、退行、反動圢成などが挙げられる。䞍安定な愛着スタむルを持っおいるにもかかわらず、防衛機制を働かせるこずで、䞀芋するず瀟䌚に適応できおいるず捉えられる堎合や、䞀般的には䞍適応な行動が実は自らを守るために必芁な防衛機制を働かせた結果生じおいる堎合が考えられる。たた、安定した愛着スタむルの人でも日垞生掻の䞭で独自の防衛機制が働いおいる。衚面䞊に珟れる行動だけではなく、その背景を理解するためにも、防衛機制を把握する詊みは重芁である。䞍安定な愛着スタむルである愛着軜芖型、ずらわれ型、おそれ型に関しお、工藀2002によるず、愛着軜芖型の人は、愛着察象から拒絶される䞍安や恐れを感じず、愛着関係を吊認、軜芖し、芪密な関係を攻撃的に拒む。他方、ずらわれ型の人は、他者ずの芪密な関係を垌求しそれが無くなるこずぞの䞍安を匷く持ち、垞に他者ずの関係を維持し、距離を近づけようずするず考えられおいる。たた、おそれ型は、愛着軜芖型の人々のように衚面的には他者から䞀定の距離をずり芪密な関係を持たないずいう特城を持ちながら、他方ではずらわれ型の人々のように芪密な関係を求めおいる。しかし、おそれ型は他者から拒吊される䞍安を感じおおり、愛着や぀ながりを求める気持ちは倱われおおらず、むしろそうした関係を䜕ずか維持するために、自らの苊痛や葛藀、䞍満などを自分の䞭に抱え蟌み、他者に向けないように抑制しおいる、ずされる。以䞊のように、葛藀状況やネガティブな状況䞋で、どの愛着スタむルも、同じように防衛機制を働かせるずはいえ、その甚いる防衛機制の内容は異なるこずが瀺唆されおいる。理論的には、愛着行動には様々な防衛機制が働いおいるず考えられおいるが、愛着スタむルず防衛機制に関する実蚌研究は党くなされおいないのが珟状であるため、愛着スタむルず防衛機制の関連性を実蚌的に研究するこずの意矩が倧きいずいえる。

4防衛機制研究に぀いお近幎、欧米では防衛機制は実隓的なアプロヌチによっお研究されおきおいるHentschel

et al.、1993。しかし、日本では、防衛機制ずいう蚀葉自䜓は倚くの堎面で甚いられおきたものの、抂念の敎理に関しお十分に敎理されおおらず、防衛機制の研究も少ない䞭西1999。防衛機制は心理臚床の珟堎で芳察されおきたが、評定者間の信頌性の䜎さずいう問

Figure  Brennan ら1998による愛着スタむルの分類

芋捚おられ䞍安䜎

芋捚おられ䞍安高

芪密性の回避䜎芪密性の回避高

Page 5: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 6―

題があった。防衛機制の実蚌的研究のためには、防衛機制が客芳的に枬定されなければならない。そうでなければ他の研究者が、結果を远詊するこずができず、事実を確認できないからである。埓来からの枬定方法には、倧別しお、質問玙、投圱法、サブリミナル・アプロヌチ、面接法などがある。その䞭で、近幎質問玙法が発展しおきた。防衛機制を特定する際の評定者間信頌性ずいう問題を克服するために、

Bond, Gardner, Christian & Sigal1983は“The Defense Style Questionnaire”ずいう質問玙を発衚した。この防衛スタむル尺床は、防衛機制を盎接枬定するわけではなく、倖からの刺激ぞの察応の自己評䟡によっお、無意識に機胜する防衛機制を探るものである。防衛スタむルずは、葛藀状況に察凊する際に、意識的にせよ無意識的にせよ、自らが傷぀くのを防衛するために甚いられる特城的なスタむルである䞭西1999。防衛スタむル尺床の日本語版 DSQ42は、質問項目が 88あった 1984幎版の DSQBond, 1986の改良版Andrews, Sighn & Bond, 1993をもずに、䜜成された䞭西1998。

Bond(1986)によるず、質問玙には限界があるが、暙準化された圢でどの防衛がどの皋床存圚するのかを枬定でき、様々な粟神病理たたは粟神的健康床氎準を区別できる分岐点を探る可胜性を開くこずになる。防衛機制は無意識の機胜であり、自己申告では枬定できないずいう批刀もある。これらの批刀に察しお、Bond et al.1983は䞉぀の理由を挙げお反論しおいる䞭西1999。すなわち、1時ずしお防衛はその圹割を果たすこずができず、人々は容認できない衝動や通垞なされるその衝動ぞの防衛スタむルに気付くこずができる、2防衛が起こっおいる時に気付かなくずも、回りの人間からたびたび自分の防衛機制に぀いお指摘される、3自分にずっおの防衛的行動が取れない時に、䞍安や抑う぀を感じたこずを蚘憶しおいるこずがありうる、ずいう 3点である。防衛スタむル尺床は䜕床も改良が行なわれ、様々な研究でその劥圓性が報告されおいる。䟋えば、人栌障害ずの関連 (Johnson,

Bornstein & Krukonis, 1992)や、気質や性栌ずの関連Mulder, Joyce, Sellman, Sullivan

& Cloninger, 1996で、有意な盞関が芋られるこずが報告されおいる。

Ⅱ 目的本研究では、愛着の生涯発達過皋を芖野に入れ、青幎期ず成人期を察象ずしお、各愛着スタむル特有の防衛スタむルに぀いお実蚌的に明らかにするこずを目的ずする。愛着スタむルず防衛スタむルは、理論的には関連が瀺唆されおいるが、実蚌的研究は党くなされおいないため、愛着スタむルず防衛スタむルの関連を明らかにするこずは意矩があるずいえる。本研究では、愛着スタむルの 2次元である“芋捚おられ䞍安”ず“芪密性の回避”が、防衛スタむルの 3぀の䞋䜍抂念である“未熟な防衛スタむル”及び“神経症的な防衛スタむル”、“成熟した防衛スタむル”ずの間にどのような関連があるかを怜蚎する。

Ⅲ 方法1調査察象 調査察象者は、党䜓は 458名であった青幎期 256名、成人期 202名。青幎期の調査察象者は、倧孊生であり、男性 77名、女性 175名、性別無蚘入 4名、平均幎霢は20.63歳SD 2.74であった。成人期の調査察象者は、倧孊生の子どもを持぀母芪であり、女性 202名、平均幎霢は 49.82歳SD 4.16であった。2手続き 青幎期の察象者に察しお、倧孊の授業においお質問玙を配垃しお実行した。成

Page 6: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 7―

人期の察象者に察しお、同じ孊生に母芪圚宅の䜏所を蚘入する封筒、母芪が子どもの自筆であるず確認できる眲名かメッセヌゞを蚘入する䟝頌曞を配垃し、蚘入しおもらい、郵送調査を実斜した。郵送調査による有効回収率は 86.0であった235名䞭 202名。

3調査時期 2006幎 10月末 11月䞊旬に調査を行い、11月末に回収を行った。

4質問玙の構成(1)属性 個人属性ずしお、幎霢ず性別ぞの回答を求めた。(2)倚項目匏愛着スタむル尺床芪密な察人関係党般版以䞋 ECR-GOず略す䞭尟 加藀2004が䜜成した、䞀般他者を想定した芪密な察人関係党般の䞭で珟れる愛着スタむルを枬定するための倚項目匏尺床36項目であり、Brennan, Clark Shaver,

1998の“the Experiences in Close Relationships inventory the generalized other

version”を参考に䜜成された。成人の愛着スタむルを構成する次元ずしお、“芋捚おられ䞍安”ず、“芪密性の回避”の 2次元が芋出されおいる。“芋捚おられ䞍安”項目䟋「私が人のこずを倧切に思うほどには、人が私のこずを倧切に思っおないのではないかず私は心配する」ず“芪密性の回避”項目䟋「私は人ずあたりに芪密になるこずがどちらかずいうず奜きではない」は、各 18項目で構成されおいる。尺床の評定は、7件法“1党く圓おはたらない”“7非垞によく圓おはたる”を甚いた。(3)防衛スタむル尺床以䞋 DSQず略す䞭西1998が䜜成した、自己申告匏の防衛スタむル尺床42項目であり、Andrews,

Singh Bond1993の“Defense Style Questionnaire”を参考に䜜成された。DSQは3぀の䞊䜍抂念からなる 20の防衛スタむル未熟な防衛投圱、受動攻撃、行動化、隔離、䟡倀䞋げ、自閉的空想、吊認、眮き換え、解離、分裂、合理化、身䜓化神経症的な防衛打ち消し、゚セ愛他䞻矩、理想化、反動圢成成熟した防衛昇華、ナヌモア、予枬、抑制虚停尺床をそれぞれ 2項目で刀定するものである。“未熟な防衛”項目䟋「行動化 䜕かに悩たされおいる時には、しばしば衝動的に行動する」及び“神経症的な防衛”項目䟋「反動圢成 圓然怒りを感じるべき人に察しお、自分がずおも芪切であるこずにしばしば気が぀く」、“成熟した防衛”項目䟋「昇華 䞍快を抑えるために䜕か建蚭的か぀創造的なこずをする」で構成されおいる。尺床の評定は 9件法“1私に党然圓おはたらない”“7私に党く圓おはたる”を甚いた。

Ⅳ 結果1愛着スタむル尺床ず防衛スタむル尺床の構成1愛着スタむル尺床の信頌性愛着スタむル ECR-GO尺床 36項目に぀いお、ECR-GOを甚いた埓来の研究䞭尟・加藀

2004ず同様、 理論䞊、“芋捚おられ䞍安”ず“芪密性の回避”の 2因子構造が劥圓であるず考えた。埓来の研究に埓っお、重み付けのない最小二乗法・Varimax回転による因子分析を行ったずころ、想定通りの因子構造ずなり、因子劥圓性が確認された。内的敎合性を怜蚎するために各䞋䜍尺床の α係数を算出したずころ、“芋捚おられ䞍安”で α.91、“芪密性の回避”で α.91ず高い信頌性が埗られた。

Page 7: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 8―

2)防衛スタむル尺床の信頌性先行研究を基に、3぀の䞋䜍抂念“未熟な防衛”“神経症的な防衛”“成熟した防衛”に分

類した。内的敎合性を怜蚎するために、各 3氎準のα係数を算出した。“未熟な防衛”はα .75、“神経症的な防衛”は α.57、“成熟した防衛”は α.59ずなった。埌者の 2぀の䞋䜍抂念の信頌性はそれほど高くはない。本研究の察象者の人数の少なさに原因が考えられる。DSQ

は暙準化された防衛機制尺床であり、先行研究により䞀定の劥圓性も確認されおいるため、本研究では DSQを甚いお分析を行った。

2愛着スタむルず防衛スタむルの幎代による怜蚎青幎期矀ず成人期矀間の差の怜蚎を行うために、ECR-GO尺床の各因子埗点ず、DSQå°º

床の各埗点に぀いお怜定を行ったTable1。その結果、ECR-GOの“芋捚おられ䞍安”に぀いお、青幎期は成人期よりも有意に高い埗点を瀺したt4467.95, p<.001。䞀方、“芪密性の回避”に぀いおは、矀間の埗点差は有意ではなかったt425.95, n.s.。次に、DSQに関しおは、“未熟な防衛”に぀いお、青幎期は成人期よりも有意に高い埗点を瀺したt4424.20, p<.001。䞀方、“成熟した防衛”に぀いお、青幎期は成人期よりも有意に䜎い埗点を瀺したt4502.55, p<.05。“神経症的な防衛”に぀いおは矀間の埗点差は有意ではなかったt4491.13, n.s.。したがっお、青幎期は成人期よりも芋捚おられ䞍安が高いこずが明らかずなった。たた、青幎期は成人期よりも未熟な防衛スタむルが匷い䞀方、成熟した防衛スタむルが匱いこずが瀺された。

3愛着スタむルず防衛スタむルの関係愛着スタむルず特有の防衛スタむルには関連があるかを明らかにするために、Pearsonの

積率盞関係数を算出した。䞊蚘より愛着スタむルず防衛スタむルに関しお、青幎期ず成人期間で明らかな差が確認されたため、本研究では青幎期の堎合ず成人期の堎合を別々に分析を行った。1青幎期の堎合青幎期矀においお、ECR-GOず DSQずの関連に぀いお Table2に瀺す。“芋捚おられ䞍

尺床名 青幎期の平均倀SD 成人期の平均倀SD 危険率愛着スタむル ECR-GO

芋捚おられ䞍安 3.56.88 2.90.84 p<.001

芪密性の回避 3.57.95 3.49.81 n.s.

防衛スタむル DSQ

未熟な防衛 4.09.77 3.78.76 p<.001

神経症的な防衛 4.32.96 4.431.02 n.s.

成熟した防衛 4.98.98 5.22.98 p<.05

Table1 愛着スタむル尺床ず防衛スタむル尺床埗点

Page 8: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 9―

安”は“未熟な防衛”、“神経症的な防衛”ずの間に、䞭皋床の正の有意な盞関順に r.42,

p<.01 r.36, p<.01が埗られた。䞀方、“成熟した防衛”ずの間には、負の有意な盞関r.21, p<.01が埗られた。たた、“芪密性の回避”は“未熟な防衛”ずの間に、䞭皋床の正の有意な盞関r.39, p<.01が芋られた。“芪密性の回避”ず“神経症的な防衛”ず“成熟した防衛”ずの間の盞関は有意ではなかった。぀たり、芋捚おられ䞍安の高い人は、未熟な防衛スタむルず神経症的な防衛スタむルが匷く、成熟した防衛スタむルが匱いこずが明らかずなった。䞀方、芪密性の回避の高い人は、未熟な防衛スタむルが匷いこずが瀺された。しかし、芪密性の回避ず神経症的な防衛スタむル及び成熟した防衛スタむル防衛ずの関連は芋出されなかった。2成人期の堎合成人期矀においお、ECR-GOず DSQずの関連に぀いお Table3に瀺す。“芋捚おられ䞍安”は“未熟な防衛”ずの間に、やや匷い正の有意な盞関r.56, p<.01、“神経症的な防衛”ずの間に、䞭皋床の正の盞関r.43, p<.01が埗られた。䞀方、“成熟した防衛”ずの間には、負の有意な盞関r.25, p<.01が埗られた。たた、“芪密性の回避”は“未熟な防衛”ずの間に、正の有意な盞関r.27, p<.01が芋られた。䞀方、“成熟した防衛”ずの間には、やや匱い負の有意な盞関r.16, p<.05が埗られた。“芪密性の回避”ず“神経症的な防衛”ずの間の盞関は有意ではなかった。぀たり、芋捚おられ䞍安の高い人は、未熟な防衛スタむルず神経症的な防衛スタむルが匷く、成熟した防衛スタむルが匱いこずが明らかずなった。䞀方、芪密性の回避の高い人は、未熟な防衛スタむルが匷く、成熟した防衛スタむルが匱いこずが瀺された。芪密性の回避ず神経症的な防衛スタむルずの関連は芋出されなかった。

⅀考察本研究結果より、愛着スタむルず防衛スタむルの倉数間には、抂ね関連が認められた。たず、党䜓ずしお、愛着スタむルの䞡因子である芋捚おられ䞍安の高い人も芪密性の回避の高い人も、未熟な防衛スタむルが匷いずいう関連が明らかになった。さらに、芋捚おられ䞍安の高い人は、未熟な防衛スタむルに加えお神経症的な防衛スタむルも高い䞀方、成熟した防衛スタむルが䜎いずいった特城が瀺された。぀たり、安定した愛着スタむルず䞍安定な愛着スタむルの甚いる防衛スタむルには明らかな差があるこずが瀺された。安定スタむルを持぀人は、他者の察人関係においお葛藀が生じた時でも、䞊手に防衛スタむルを甚いお、感情をコント

芋捚おられ䞍安 芪密性の回避未熟な防衛 .42 .39

神経症的な防衛 .36 .10

成熟した防衛 .21 .11p<.05p<.01

芋捚おられ䞍安 芪密性の回避未熟な防衛 .56 .27

神経症的な防衛 .43 .11

成熟した防衛 .25 .16

p<.05p<.01

Table2 青幎期矀のECR-GOずDSQの盞関分析結果

Table3 成人期矀のECR-GOずDSQの盞関分析結果

Page 9: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 10 ―

ロヌルしお察応し、瀟䌚的に適応した行動を取る。䞀方、䞍安定な愛着スタむルを持぀人は、同じような葛藀状況に、未熟な防衛スタむルや神経症的な防衛スタむルを甚いお察凊し、結果ずしお、瀟䌚的に䞍適応な行動を取るこずが考えられる。ネガティブな状況䞋で、同じように防衛スタむルを甚いたずしおも、未熟な防衛スタむルか成熟した防衛スタむルを甚いおいるのかによっお、行動は倧きく異なる。このように、愛着スタむルず防衛スタむルを怜蚎するこずで、衚面䞊の行動を理解するこずは重芁であり、愛着スタむルず防衛スタむルの関連を実蚌的に瀺したこずが本研究の意矩ずいえる。青幎期ず成人期の愛着スタむルず防衛スタむルの関連の仕方は、ほが同様の結果が埗られた。しかし、青幎期ず成人期に関しお個別に芋た堎合、次のような違いが芋られた。青幎期に関しお、芪密性の回避ず神経症的な防衛スタむル及び成熟した防衛スタむルは関連がなかった䞀方、成人期に関しお、芪密性の回避の高い人は、成熟した防衛スタむルが匱いずいった関連が明らかになった。぀たり、成人期においお、他者ずの芪密さを回避したり拒吊する傟向の高い人は、成熟した防衛スタむルが匱いずいった特城が明らかになった。次に、幎代による差の分析結果を怜蚎する。愛着スタむルに関しお、成人期は青幎期よりも芋捚おられ䞍安が䜎いこずが瀺されおいる。぀たり、成人期は青幎期よりも、他者ず芪密になるこずや、その関係が無くなるこずぞの䞍安を持぀こずは少ないため、安定した愛着スタむルをも぀傟向が高いずいえる。成人期たでに特定の他者ずの芪密な関係を築くこずが出来おいる人は、そうでない人よりも愛着スタむルが安定しおいる可胜性がある。たた、䞍安定な愛着スタむルは容易に倉えるこずが出来ないず理論䞊蚀われおいるが、幎霢に䌎っお、もしくは経隓を通しお倉容する可胜性はあるだろう。防衛スタむルに関しお、成人期は青幎期よりも未熟な防衛スタむルが匱く、反察に成熟した防衛スタむルが匷いこずが明らかになった。幎代が䜎いほど、欲求䞍満な状態や葛藀状況に察凊する際、幌い頃に自らが傷぀くこずを防ぐために身に぀けた単玔な、もしくは無意識的な防衛スタむルを習慣的に甚いおいるのではないかず考えられる。成熟した防衛は、䞍快を抑えるために䜕か建蚭的なこずをするずいった昇華、苊しい状況でもその面癜い偎面を芋぀けるずいったナヌモア、困難な状況の内容を予枬し察策を立おるずいった予枬、掻動の劚げになるような感情を抑えるずいった抑制など、どちらかずいうず意識的に自らの心理状態を操䜜する特城が芋られる。幎代が䞊がるに぀れ、このような防衛を身に぀けおいく可胜性が考えられる。たた、芪密性の回避ず神経症的な防衛は幎代による差が芋られなかったこずから、他者ずの芪密さを回避したり拒吊する傟向、打ち消しや愛他䞻矩、理想化、反動圢成で構成されおいる神経症的な防衛スタむルは、幎代以倖の個人内芁因が関連する可胜性があるず考えられる。

Ⅵ 今埌の課題ず展望本研究は、青幎期ず成人期における愛着スタむルず防衛スタむルに関する暪断研究である。幎霢に䌎っお䞍安定だった愛着スタむルから安定した愛着スタむルぞの移行するのか、さらには未熟な防衛スタむルから成熟した防衛スタむルぞず移行するどうかを怜蚎するためには、青幎期から成人期にかけお愛着スタむルず防衛スタむルに関する瞊断研究が必芁ずなる。幎霢に䌎っお、もしくは経隓を通しお、愛着スタむルが倉容する可胜性が考えられるため、成人愛着スタむルの生涯発達に぀いお、曎なる怜蚎が望たれる。特に、䞭幎期以降の察象者

Page 10: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 11 ―

による研究報告は数少なく、高霢期に察する研究はほずんどなされおいない。今埌、愛着スタむルの生涯発達を考慮しお、䞭幎期・高霢期に着目しお研究するこずが期埅される。本研究では、青幎期ず成人期の幎代を察象に怜蚎を行ったが、青幎期矀は男女である䞀方、成人期矀の属性が女性のみであるため、サンプリングに基づく結果の䞀般性には慎重であるべきであり、今埌サンプリング手法の改善などの研究手法を工倫するこずで察象者局を広げ、より劥圓な研究ぞず結び぀けたい。次に、防衛機制に関しお、本研究では質問玙ずいう䞀定の客芳性を有する枬定法を甚いお分析した。しかし、DSQ尺床に関しおは、さらに正確に枬定するために統蚈分析手法を改良したり、その他の防衛機制テストずの䜵甚や質問玙項目を加えおより優れた枬定尺床を開発するなど、有効な掻甚法を研究するこずが今埌の防衛機制研究の進展のために重芁である。たた、䞭西1998によるず、9件法で回答者が苊劎するずいう意芋は聞かれおいないず述べられおいたが、本研究では回答数が倚く時間がかかり、調査察象者が疲れおしたった。それゆえ、5件法や 7件法に倉曎しお、調査する必芁性もある。䞀芋しただけではわからない行動の裏に隠された防衛機制に関しお、理論的・個別的な怜蚎だけでなく、防衛機制研究に実蚌的関心が向けられるべきだず思われる。

謝 蟞本研究を行うに圓たっお、倚倧なる支揎ず助蚀を䞋さった神戞倧孊倧孊院の吉田圭吟先生、甲南女子倧孊倧孊院の䜐藀眞子先生に、深く感謝の意を衚したす。たた、ご協力䞋さいたした協力者の方には厚く埡瀌申し䞊げたす。

匕甚文献Ainsworth, M. D. S., Blehar, M. C., Waters, E., & Wall, S. 1978 Patterns of attachment

A psychological study of strange situation Hillsdale, NJ: Erbaum.

Andrews, G., Sigh, M., & Bond, M. 1993 The Defense Style Questionnaire. The Journal

of Nervous and Mental Disease 181(4) Pp.246-256

Batholomew, K., & Horowitz, L. M. 1991 Attachment styles among young adults: A test

of a four-category model Journal of Personality and Social Psychology 61 Pp.226-

244

Bond, M., Gardner, S. T., Christian,J., & Sigal, J. 1983 Empirical study of self-rated

defense styles Archives of General Psychiatry 40 Pp.333-338

Bond. M. 1986 Bond's defense Style Questionnaire (1984 version). Vaillant GE (Ed)

Empirical Studies of Ego Mechanisms of Defense. Washington DC: American

Psychiatric Press.

Bornstein, R. F., Greenberg, R. P., Leone, D. R., & Galley, D. J. 1990 Defense-mechanism

correlates of orality. Journal of the American Academy of Psychoanalysis, 18,

Pp.654-666.

Bowlby, J. 1973 Attachment and loss: Vol.2, Separation. New York: Basic Books.

Bowlby, J. 1980 BY ethology out of psycho-analysis-an experiment In Inter-Breeding.

Animal Behaviour, 28, Pp.649-656.

Page 11: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 12 ―

Bowlby, J. 1982 Attachment and loss. Vol,1.Attachment. New York:Basic Books. 黒田実郎蚳 1976 母子関係の理論愛着行動 岩厎孊術出版瀟

Brennan, K. A., Clark, C. L., & Shaver, P. R. 1998 Self-report measurement of

adult attachment: an integrative overview. In J.A.Simpson&W.S.Rholes(Eds.)

Attachment theory and close relationships. New york:The Guilford Press Pp.46-76

Bretherton, I. 1990 Communication patterns internal working models and the

intergenerational transmission of attachment relationships. Infant Mental Health

Journal, 11, Pp.237-252.

遠藀利圊 1992 内的䜜業モデルず愛着の䞖代間䌝達 東京倧孊教育孊郚玀芁 32 Pp.203-

220

Fraley, R. C. & P. R. Shaver 1998 Airport separations: A naturalistic study of adult

attachment dynamics in separating couples. Journal of Personality and Social

Psychology, 75, Pp.1198-1212.

Fraley, R. C., Garner, J. P.,  Shaver, P. R. 2000 Adult attachment and the defensive

regulation of attention and memory: Examining the role of preemptive and

postemptive defensive processes Journal of Personality and Social Psychology 78

Pp.350-365

Greenberg, M. T., Cicchetti, D., & Cummings, E. M. 1990 Attachment in the preschool

years. Chicago (Eds.): The University of Chicago Press.

Grossmann, K., Fremmer-Bombik, E., Rudolph, J., & Grossmann, K. E. 1988 Maternal

attachment representationa as related to patterns of infant-mother and maternal

care during/the first year. In R.A. Hinde, & J.Stevenson-Hinde (Eds.), Relationships

within families;Mutual influences. Oxford: Clarendon Press.

Hentschel, U., Ehlers, W., & Peter, R. 1993 The measurement of defense mechanisms

by self-report questionnaires. In U.Hentschel, G. J. W. Smith, W. Ethlers, & J. G.

Draguns (Eds.), The concept of defense mechanisms in contemporary psychology:

Theoretical, research, and clinical perspectives (Pp.53-86). New York: Springer-

Verlag.

Johnson, J. G., R. F. Bornstein & A. B. Krukonis 1992 Defense styles as predictors OF

personality-disorder symptomatology. Journal of Personality Disorders, 6, Pp.408-

416.

工藀晋平 2002 芋立おにおける愛着理論の芳点の適甚に぀いおおそれ型の事䟋を通しおの詊論 九州倧孊心理孊研究 3 Pp.129-136

Main, M., N. Kaplan & J. Cassidy 1985 Security in infancy, childhood and adulthood

– a move to the level of representation. Monographs of the Society for Research in

Child Development, 50, Pp.66-104.

Mulder, R. T., P. R. Joyce, J. D. Sellman, P. F. Sullivan & C. R. Cloninger 1996 Towards

an understanding of defense style in terms of temperament and character. Acta

Psychiatrica Scandinavica, 93, Pp.99-104.

䞭西公䞀郎 1998 The Defense Style Questionnaire日本語版DSQ42日本での防衛機

Page 12: Osaka University Knowledge Archive : OUKAtoo. The obvious differences between secure attachment style and insecure attachment styles were demonstrated regarding to the defense styles

― 13 ―

制研究のために 瀟䌚孊研究科玀芁 47 Pp.27-33

䞭西公䞀郎 1999 防衛機制の抂念ず枬定 心理孊評論 42(3) Pp.261-271

䞭尟達銬・加藀和生 2003 成人愛着スタむル尺床間にはどのような関連があるのだろうか 4カテゎリヌ匷制遞択匏倚項目匏ず 3カテゎリヌ倚項目匏ずの察応性 九州倧孊心理孊研究 4 Pp.57-66

䞭尟達銬・加藀和生 2004 “䞀般他者”を想定した愛着スタむル尺床の信頌性ず劥圓性の怜蚎 九州倧孊心理孊研究 5 Pp.19-27

Parkes, C. M., Stevenson-Hinde. J., & Marris, P. 1990 Attachment across the life cycle.

Eds New York: Routledge.


Recommended