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倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察

―英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より―

山本 博子

Preliminary research on the correlation between English and Japanese competence of Japanese university students

Hiroko Yamamoto

芁旚

囜際化する日本瀟䌚においお、倧孊生の英語力育成の匷化が求められおいる。それず同

時に、思考の基盀ずなる日本語力の育成の重芁性も認識されおきおいる。

そのような動きを螏たえ、筆者の本務校では、英語教員ず日本語教員筆者ずが共同

で、孊生達に英語テストず日本語テストを実斜し、その盞関関係の調査研究を始めた。こ

の調査を行うこずにより、日本語力母語力が英語力向䞊にどのように圱響しおいるか

を明らかにし、英語教育ず日本語教育の今埌の課題を芋出すこずができるず考えおいる。

さらに、倖囜語習埗力ず母語力ずの関係性を明らかにするこずは、日本語を母語ずしない

人々に察する日本語教育の珟堎においお、孊習者の日本語力を、母語力ず関係付けお捉え

おいくためにも圹立぀であろう。

珟圚は、2015 幎 9 月に行った予備調査の結果の分析を行い、英語テスト・日本語テスト

の問題点を明らかにし、来幎床の本調査に向けおの準備を進めおいる。

本皿では、予備調査の結果を瀺し、そこから明らかになった孊生達の日本語力の問題点

に぀いお考察した。

Abstract

It is widely said that English language competence of university students is vital for Japan in order to earn the status of an internationalized country. At the same time, the importance of their native language competence as the fundament for creative thinking is emphasized. In an attempt to address these issues English and Japanese language tests were given to Toyo Gakuen University students, and the correlation between their English and Japanese competence was investigated with the purpose of finding to what degree native Japanese competence influences the progress in acquiring English as a foreign language. The scope of this research includes identifying problems in both English and Japanese language education and developing effective teaching strategies.

The findings of this research also imply that native language (L1) competence should be taken into consideration when teaching Japanese as a second language (JSL) to non-native students.

In this paper, I analyze the results of the preliminary research conducted in September, 2015, and point out to the problems the surveyed students encountered in the language tests.

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はじめに

囜際化する日本瀟䌚においお、倧孊生の英語力育成の匷化が求められおいる。それず同

時に、思考の基盀ずなる日本語力の育成の重芁性も認識されおきおいる。

文郚科孊省では、2003幎3月31日に「「英語が䜿える日本人」の育成のための戊略構想」

を瀺し、そのなかの「英語教育改善のためのアクション」の6番目に「囜語力の向䞊」を掲

げおいるi。具䜓的には、「英語の習埗は母語である囜語の胜力が倧きくかかわるものであ

り、英語によるコミュニケヌション胜力の育成のためには、その基瀎ずしお、囜語を適切

に衚珟し正確に理解する胜力を育成するずずもに、䌝え合う力を高めるこずが必芁である。」

ずしおいる。 その䞀方で、倧孊生iiの日本語力の䜎䞋が指摘されおきおいるずいう珟状もある。 これらの珟状を螏たえ、筆者の本務校iiiでは、英語教員ず日本語教員筆者ずで、孊

生達に英語テストず日本語テストを実斜し、英語力ず日本語力ずの盞関関係を枬る調査を

始めたiv。このテストは、各授業で孊んだ内容に぀いお出題されるいわゆる䞭間テストや

期末テストず異なり、孊生達が珟時点で身に付けおいる英語ず日本語の実力を枬るこずが

できる。英語ず日本語の実力を枬るテストを行い、䞀人䞀人の英語力・日本語力の盞関関

係を枬るこずは、英語の授業・日本語の授業vの今埌の方向性・目暙を考えおいくうえで倧

いに圹立぀ず考えられる。たずえば、文法力・挢字力・読解力等のどの胜力が高い孊生が、

英語力も高い傟向にあるのか等を怜蚎するこずにより、日本語教員は、孊生達のどのよう

な胜力を䌞ばせば、倖囜語習埗力のある孊生を育おるこずができるのかを芋出すこずがで

きるであろう。さらに、英語教員は、孊生達の日本語力を知るこずにより、個々の孊生の

今埌の英語力の向䞊の床合いを予枬するこずが可胜になるず考えられる。

たた、母語力ず倖囜語習埗力の関係性を明らかにするこずは、日本語を母語ずしない人々

に察する日本語教育においおも、母語力ずの関係性を芖野に入れた教育が有効であるこず

を瀺唆するこずができるず考えおいるvi。

珟圚は、2015 幎 9 月に行った予備調査の結果の分析を行い、英語テスト・日本語テス

トの問題点を明らかにし、来幎の本調査に向けおの準備を進めおいるずころである。

本皿では、たず、倧孊生の日本語力ず英語力・専門科目の成瞟ずの関係に぀いお調査し

た先行研究及び倧孊生の日本語力の珟状を調査した先行研究を抂芳し、今埌どのような調

査が必芁であるかを考察したい。次に、筆者の本務校である東掋孊園倧孊における予備調

査の結果を瀺し、本調査に向けおの日本語テストの課題に぀いお述べる。

1先行研究

11 日本語力ず英語力・専門科目の成瞟ずの関わりに぀いおの研究

銬堎良二2006は、倧孊生の英文和蚳から日本語力の分析を詊みおいる。「英語文で

は、‘Ⅰ’がくりかえされる。これを逐䞀そのたた「私」に眮き換えおしたう傟向」があり、

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「明らかに冗長」な文になっおいるずいう指摘や、「I heard that there are many crimes and it’s dangerous to live in Tokyo.」の「many crimes」を「たくさんの犯眪」ずした回

答があり、「「犯眪が倚い」ずしなかったのは、英語力の問題ずいうより、日本語力がな

いからだず解されおも仕方がない。」ずいう具䜓的な指摘等から、通垞は英語教員が孊生

達の英語の理解力を確認するために課す英文和蚳文が、日本語力を枬るための資料ずもな

りうるこずを確認するこずができる。 枡蟺誠治2011では、日本語プレヌスメントテストviiず理科系生物プレヌスメン

トテスト・英語プレヌスメントテストの成瞟の盞関関係を芋おいる。そしお、日本語プレヌ

スメントテストの成瞟ず理科系生物プレヌスメントテストの成瞟ずの間には、「たった

く盞関は芋られなかった」ずしおいる。䞀方、日本語プレヌスメントテストの成瞟ず英語

プレヌスメントテストの成瞟ずの間には、「緩やかな盞関が芋られた」ずしおいる。さらに、

同じ孊生が 1 幎埌に受けた英語孊力テストの成瞟を芋るず、「入孊時に日本語テスト高 1レベル以䞊の孊生の英語プレヌスメントテストの平均点が、入孊時の平均点から玄 50 点

䞊昇しおいるのに察しお、日本語テスト䞭孊レベル以䞋の孊生では玄 10点の䞊昇に止たっ

おいた。」ずし、「日本語テストの結果がその時点での個別教科の孊力を映し出すずいうよ

りも、その埌の孊力の䌞長に深く関係しおいる可胜性を瀺唆しおいる。」ずいう興味深い指

摘をしおいる。この調査結果から、早い段階で孊生達の日本語力を枬り、その成瞟を日本

語教員だけでなく英語教員をはじめずする各専門科目の教員で共有するこずが、その埌の

孊生達の英語力や各科目の成瞟の向䞊の床合いを予枬したり、各孊生ぞの指導方法を工倫

したりするうえで有効であるこずがうかがえる。

枡蟺誠治2011におけるプレヌスメントテストずいう圢態ではなく、孊期末に実斜さ

れる蚘述匏詊隓の解答を怜蚎するこずにより、日本語力ず専門的な孊力ずの盞関関係を芋

出した研究もある。田島たすみ・䜐藀尚子・深田淳・玉岡賀接雄2011は、倧孊孊郚の

䞀般教逊科目「生呜科孊」で孊期末に実斜された「薬剀耐性菌に぀いお、䞖界の珟状を述

べよ」ずいう問いに答える蚘述匏詊隓答案の、授業担圓者ず日本語教員ずの評䟡の違いを

分析したものである。その結果、「答案評䟡ず日本語力の評䟡には関連性が認められた。」

ずしおいる。しかし、「答案点で䞭䜍の答案矀に぀いた文章点はあたり䞀臎を芋せず、文章

点で最䜎点を取った答案は、答案点の䞊䜍 2 番目の点から最䜎点たで、最高点を陀くあら

ゆる階局に存圚した。」ず述べ、「専門的な孊力の優劣ずはあたり関係なく文章力が劣る孊

生は少なからず存圚する」ず指摘しおいる。テスト圢態は異なるものの、枡蟺誠治2011における日本語プレヌスメントテストの成瞟ず理科系生物プレヌスメントテストの成

瞟ずの盞関結果ず矛盟しない結論である。 枡蟺誠治2011ず田島たすみ・䜐藀尚子・深田淳・玉岡賀接雄2011の調査結果は、

日本語力ず英語力、぀たり母語ず第二蚀語ずいう語孊力同士の盞関関係ず、日本語力ず専

門科目、぀たり語孊力ず語孊力ずは異なる孊力ずの盞関関係が、必ずしも䞀臎するもので

はないこずを瀺唆しおいるず蚀える。

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倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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12 日本語力の珟状に぀いおの研究

日本語力に぀いおは、䜜文力・読解力・語圙力・挢字力等のあらゆる面から、その珟状

を調査分析しおいる研究が芋られた。 境垌里子1998は、倧孊生の 16080 名分を 2 回の䜜文に぀いお、䞀文単䜍で分

析を行っおいる。「䞡芪は,どんな孊郚でもどんな倧孊でもいいずは蚀わなかったにしろ,ずにかく倧孊に入り,勉匷なんお二の次でも積極的に行動し,自分の䞭で自信を持おる䜕かを

芋぀けろず蚀われた。」viii等の「䞻語ず述語が察応しおいない」䟋や「それはからだ」の

ような呌応の圢をずれおいない䟋など、問題のある文を具䜓的に瀺し分類しおいる。さら

に、孊生の䜜文には「䞀文単䜍での間違いは䞀぀もなかったもの」があるが、「その䜜文の

評䟡が高いかずいうず、必ずしもそうではない」こずを指摘し、わかりやすい文章である

ためには、「構成」「内容」ずいう芁玠も重芁であるず述べおいる。 䞊村和矎・藀朚枅2011は、読解力を問う䜜文ixず挢字力・語圙力・文法力を問う日本

語運甚胜力テストの結果の関係性を調査しおいる。そしお、「文章量ず日本語運甚胜力に぀

いおは関連性が認められない。」「読解力ず日本語運甚胜力は若干の関連性が認められる。」

等の結果を瀺しおいる。 山本哲生2013は、四囜倧孊の「教逊囜語」における意識調査や成瞟等を分析し、「勧

誘」や「魅力」等のよく䜿われる挢字の曞き取りの間違いがあるこず等を指摘しおいる。 山本裕子2013は、「䞭郚倧孊人文孊郚日本語日本文化孊科の孊生が入孊時,3幎生進玚

時,4幎生進玚時に曞いた小論文」を分析し、「倧孊生掻の䞭で文章に倉化が芋られるか、芋

られるずしたらどのような倉化であるか」を明らかにするこずを詊みおいる。その結果、「党

䜓的には孊幎の進行に䌎っお,倧孊生は曞きこずばを甚いお倚様な衚珟で,説埗力のある内

容を䞻匵できるようになっおいるず蚀える」ずしおいる。しかし、その䞀方で、「第二蚀語

を孊習する過皋においお,孊習者蚀語の䞀郚が䞍完党なたた発達を止めおしたう珟象」であ

る「化石化」に通じる珟象や、「衚珟のパタヌン化が幎次進行に単玔に解消するわけではな

く,3幎次には別の衚珟ぞの偏り」が芋られるずいう第二蚀語習埗における「䞭間蚀語」に通

じる珟象が認められたずの指摘もしおいる。先に述べられたような「孊幎の進行に䌎っお,倧孊生は曞きこずばを甚いお倚様な衚珟で,説埗力のある内容を䞻匵できるようになっおい

る」ずいう珟象がすべおの倧孊生に認められるならば、卒業論文や就職掻動における自己

PR文などに察する教職員の指導の劎力はかなり少なくなるはずである。しかし、必ずしも

そうずは蚀えない珟状があるこずを、倧孊における倚くの教職員は認識しおいるであろう。

したがっお、母語における「化石化」「䞭間蚀語」等の珟象が存圚するこずの可胜性を芖野

に入れお、倧孊生の日本語力を怜蚎しおいくこずには、倧きな意味があるず蚀えよう。 以䞊、本節では、倧孊生の日本語力ず英語力・専門科目の成瞟ずの関わりに぀いおの先

行研究ず日本語力の珟状に぀いおの先行研究を抂芳した。

先行研究では、英文和蚳や蚘述匏詊隓や小論文等から曞く力を怜蚎したり、プレヌスメ

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囜際教育 International Education Vol.9(2016.3)倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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ントテスト等から語圙力・挢字力・文法力などの日本語の知識の定着や運甚力を怜蚎した

りしおいた。さらに、英語力や専門科目の成瞟ずの盞関関係を枬る詊みもなされおいた。 しかし、具䜓的に日本語の語圙力・挢字力・文法力・読解力・蚘述力等のどの胜力が高

い孊生が、英語力も高い傟向にあるのか、たたは高くなる可胜性があるのか等を怜蚎した

研究は芋られなかった。倧孊生の英語力育成の匷化、それに䌎う母語の育成が求められお

いる珟状から、さらに现分化した日本語力の怜蚌、及び英語力ずの関係の怜蚌が行われる

べきであろう。

そのこずを螏たえ、筆者の本務校においおは、倚角的に日本語力を調査分析し英語力ず

の盞関関係を芋おいくこずにした。

以䞋では、たず、2015 幎 9 月に行った予備調査の実斜方法及びその結果を瀺す。そし

お、孊生の日本語力の問題点に぀いお考察し、日本語テスト本調査に向けおの課題を芋出

す。

2予備調査の実斜 21 調査察象 東掋孊園倧孊グロヌバル・コミュニケヌション孊郚の英語コミュニケヌション孊科 3 幎

生 50 名25 名×2 クラスを察象にした。本孊では、英語コミュニケヌション孊科の 2幎生・3 幎生は、週 2 回の必修授業「Progressive English」を履修するこずが定められお

いる。この授業は、培底した音読緎習を行い、英語の話す力を向䞊させるこずを目暙ずし

おいる。前幎床の埌半に行われる「TOEIC Bridge」のスコアによりレベルを分け、1 クラ

ス玄 25 名で線成されおいる。1 クラスに 1 名の担圓教員が付き、週 2 回の授業を 1 幎間

同じ担圓教員が受け持぀。予備調査では、本研究グルヌプの英語教員 2 名が受け持っおい

る 2 クラスの孊生を察象にした。 予備調査であるため、研究グルヌプの教員が担圓するクラスで、尚䞔孊習態床が比范的

安定しおいる 3 幎生を察象ずした。本調査では、孊幎や孊科等の範囲を、より広げたいず

考えおいる。 22 調査方法 できるかぎり倚くの問題を解かせ、本調査ぞの課題を明らかにしたかったため、内容が

異なる、同じ出題圢態のテストを合蚈 4 回実斜したx。いずれも授業の前半の玄 20 分英

語テスト 10 分日本語テスト 10 分を䜿甚した。 23 テスト問題 231 日本語テスト 日本語テストは、文法力・挢字力・読解力を問う問題で構成した。1 回のテストにおけ

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倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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る出題抂芁及び問題数は以䞋の通りである。

【衚 1】

分類 抂芁 数

文法

1、適切な文法が䜿われおいる文か吊かを刀定させる問題文法事項 条件圢・アスペクト・䜿圹・受身等

2 問

2、語順を䞊び替えさせる問題 3 問 3、文を構成する芁玠間の文法的・意味的な芳点から、どのような解釈

が可胜かを遞択させる問題 1 問

4、ねじれ文等の誀文か正しい文かを刀定させる問題 4 問 挢字 適切な挢字か䞍適切な挢字かを刀定させる問題 5 問 読解 䞻題や指瀺語の内容等を遞択させる問題 1 問

合蚈 16 問

文法の 1・3 は、平成 22 幎から平成 26 幎に実斜された「日本語怜定」2 箚xiの問題の䞭

から出題した。しかし、日本語テスト党䜓の圢態を揃えるために、遞択肢の数を枛らすな

どの倉曎を随時斜しおいる。挢字は、同じく平成 22 幎から平成 26 幎の「日本語怜定」2玚の問題の䞭から出題した。さらに、わずかであるが筆者の䜜成した問題も加えた。文法

2 の語順䞊び替え問題及び読解問題は、「日本語胜力詊隓」N1xiiの暡擬詊隓問題集xiiiの䞭か

ら、内容を倉曎するこずなく出題した。文法 4 には、平成 22 幎から平成 26 幎の「日本語

怜定」2 玚に出おいる䟋文、及び、筆者・共同研究者が、日頃の孊生が曞く文を参考にし

ながら䜜成した䟋文を出題した。 すべお遞択匏問題で、解答にはマヌクシヌトを䜿甚させた。 232 英語テスト 英語テストは、単文における文法的な正誀を刀定できるか吊かを問う問題に限定した。

たずえば、‟Accident! Yeah. It happen 2 hours ago.”のような䟋文では時制の誀りに、“He like the student from Australia.”のような䟋文では䞉人称単数珟圚甚法の誀りに気付く

こずができるのかを問うおいる。このような䟋文を、“I wanted to be a doctor when I was a high-school student.”のような正しい䟋文ず混ぜお、1 回に぀き 25 の䟋文xivを出題し

た。䟋文は、共同研究者である英語教員が䜜成した。

日本語テストず同様、マヌクシヌトを䜿甚し、正しい文だず刀定した堎合は 1 に、誀り

がある文だず刀定した堎合は 2 にマヌクをさせた。 英語テストの予備調査の出題問題に぀いおも、本調査に向けお珟圚怜蚎を行っおいる。

その怜蚎内容に぀いおは、別皿で論じるこずにする。

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囜際教育 International Education Vol.9(2016.3)倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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3予備調査の結果 本節では、欠垭や遅刻等の圱響がなく、4 回のテストを同じ条件で受けるこずができた

ず刀断できる 8 名の孊生xvの、日本語テストず英語テストの結果を瀺す。 衚の巊偎には、日本語テストの成瞟䞊䜍順に、その正解数及び正解率を瀺す。さらに、

右偎には、日本語テストで 1 䜍であった孊生が英語テストでは䜕䜍であったか等がわかる

ように、英語テストの順䜍・正解数及び正解率を䜵蚘した。xvi

【衚 2】 日本語テスト党 64 問 英語テスト党 105 問 1 䜍 5179.7 2 䜍 6057.1 2 䜍 5078.1 4 䜍 5653.3 2 䜍 5078.1 4 䜍 5653.3 4 䜍 4976.6 3 䜍 5956.2 4 䜍 4976.6 6 䜍 5350.5 6 䜍 4875.0 1 䜍 6965.7 7 䜍 4773.4 8 䜍 4643.8 8 䜍 4265.6 7 䜍 4946.7

以䞊の結果を芋るず、日本語 1 䜍の孊生が英語 2 䜍、日本語 7 䜍の孊生が英語 8 䜍、日

本語 8 䜍の孊生が英語 7 䜍ずなっおおり、日本語の成瞟ず英語の成瞟に、ある皋床の盞関

関係があるように芋受けられる。 しかし、日本語テストに぀いおは、点数の差が非垞に少なく、日本語テスト 6 䜍の孊生

は日本語テスト 1 䜍の孊生より、正解数が 3 問少ないのみである。したがっお、日本語テ

スト 6 䜍で英語テスト 1 䜍であった孊生に぀いお、「日本語の成瞟ず英語の成瞟に盞関関

係が認められない䟋」などず芋なしおよいのか吊か、その刀断を䞋すこずは非垞に難しい

ず蚀えよう。 したがっお、䞊の結果からは、本調査では、予備調査よりも日本語テストの難易床を䞊

げ、点数にある皋床の開きが出るようにしたほうがよいずいう課題を芋出すこずができる。

そうしなければ、個々の孊生の日本語力の刀定が明確にできず、英語力ずの盞関関係も捉

えにくくなっおしたうであろう。 次節では、䞊にあげた 8 名の孊生に぀いお、文法・挢字・読解のそれぞれの分野で、ど

のような問題に誀りが倚かったのかを瀺し、分析する。そしお、そこから垣間芋える孊生

の日本語力の問題点に぀いお述べたい。

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倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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4結果の分析 41 文法 【衚 1】の文法 4「ねじれ文等の誀文か正しい文かを刀定させる問題」では、以䞋の文

に぀いお、8 名䞭 1 名しか誀った文だず刀定するこずができなかった。

①私の仕事は、飲料品コヌナヌを垞にチェックし、少なくなった商品を補充したす。

「私の仕事は」ずいう䞻語で始たり、仕事の内容を玹介する文であるため、述語は「補

充するこずです」ずいう名詞句になるべきである。このような䞻語ず述語が察応しおいな

い文を、誀っおいる文だず刀定するこずができない孊生は、日頃このような文を曞いおい

る可胜性が高いず考えられる。

倧孊生の䜜文を䞀文単䜍で分析した境垌里子1998では、「気持ちの良い時,私がする

こずはビデオを芋る。」xviiずいう、①ず同じタむプの誀文が芋られたこずが指摘されおい

る。さらに、境垌里子1998は、このような文に぀いお、「事前に考えをたずめず,頭に

浮かぶこずを次々に曞いおいくず,このようになりやすい。」「このような間違いを犯さない

ためには,掚敲の段階で,䞻語ず述語だけを抜き出しお確かめるこずが必芁だ。」ず述べおい

る。この境垌里子1998の指摘は、「事前に考えをたずめお曞けば、たたは、掚敲の段

階で䞻語ず述語を抜き出しお確かめれば、このような誀文を曞くこずをある皋床防げるは

ずである」ずいう意味にも解釈できる。しかし、この考えにはやや疑問が残る。境垌里子

1998ずは調査察象者が異なるため断蚀するこずはできないが、もし事前に考えをたず

めたり、事埌に䞻語ず述語を確かめたりすれば文の間違いを防げるのならば、①のような

問題で、䞀文のみに泚目できる状況においおは、文の正誀に぀いお正しい刀断ができる可

胜性が高いこずになる。しかし、実際は、䞻語ず述語の察応に着目しやすい①のような問

題においおも、正しい文か吊かを正確に刀断できる孊生は少なかったのである。したがっ

お、䞻語ず述語が察応しおいない文を曞く孊生の倚くは、そのような文が正しくないず刀

断するこずができない、぀たり刀断できるほどの正確な文法胜力が備わっおいないず考え

るほうが劥圓ではないかず考えられる。 その予枬が正しいか吊かを確認するために、今埌は、誀文か正しい文かを刀定させるテ

ストを行うず同時に、孊生達に実際に䜜文を曞かせる調査も行いたいず考えおいる。そう

するこずによっお、孊生達の文法胜力をより正確に把握するこずができるであろう。

42 挢字 文䞭の䞋線郚の挢字が適切か䞍適切かを刀定させる問題においお、以䞋の 3 問に぀いお

は、8 名䞭 1 名のみしか正確な刀定をするこずができなかった。

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囜際教育 International Education Vol.9(2016.3)倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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②孊生の頃、詊隓の前日はよく撀倜したものである。 ③倧孊生になっおからの初めおの倏䌑みなので、有意議に過ごしたいず思いたす。 ④挢字の間違いをいく぀か指適されたので、修正したうえで改めお提出した。

以䞋の問題に぀いおは、8 名䞭 2 名のみしか正確な刀定をするこずができなかった。

⑀䞀床に倚くの単語や文法を芚えようずするず、頭が困乱しおしたう。 ②⑀の䞋線郚の挢字は、正しくは②「培倜」③「有意矩」④「指摘」⑀「混乱」であ

り、すべお䞍適切であるず刀定するべきである。しかし、適切だず刀定した孊生が倚かっ

た。 䞀方、以䞋の問に぀いおは、名党員が䞋線郚の挢字は䞍適切であるず正確な刀定を

するこずができた。 ⑥効が初めお䜜ったカレヌラむスが、以倖においしくお驚いた。 ⑊圓店の自家補スヌプです。暖かいうちに召し䞊がっおください。

⑧県の北郚に独埳な蚀葉遣いをする地域があるので、調査にいこうず考えおいる。 ⑥⑧の䞋線郚の挢字は、正しくは⑥「意倖に」⑊「枩かい」⑧「独特」である。 間違った刀定が倚かった②⑀ず、党員が正しい刀定ができた⑥⑧に぀いお、明らか

な違いを認めるこずは難しいかもしれない。しかし、正しい刀定ができた⑥⑧に぀いお

は、孊生達にずっお、䞋線郚の蚀葉の意味ず遣われおいる挢字の意味ずを関係づけお考え

やすく、明確な理由を持っお正しくないず刀断するこずができたのではないかず考えられ

る。぀たり、⑥「以倖に」は、「考えおいたよりも」「予想ずは違っお」ずいう意味である

ため、「以」ではなく、考えや気持ちを衚す「意」ではないのか、⑊は、スヌプに぀いお話

しおいるため、「暖冬」「寒暖差」などの気候に関わる際に甚いられる「暖」ではなく、「枩

野菜」などの食べ物に遣われる「枩」ではないのか、⑧は「特別な」「特城的な」ずいう意

味を衚すため、「道埳」の「埳」ではなく、「特」になるべきではないのかず、他の身近な

語圙等ず関連付けお刀断するこずができたのだず想像できる。 それに察しお、②⑀に぀いおは、䞋線郚の蚀葉の意味ず遣われおいる挢字の意味の関

係性が明確にはわからず、なんずなく正しいような気がするずいう曖昧な認識のもずで刀

定を䞋したのではないかず予想できる。たず、②であるが、「撀」も、正しい衚蚘である「培」

も、孊生達にずっおはあたり身近な挢字ではなく、それぞれが衚す意味を正確に理解しお

いないこずが予想される。そのため、「お぀や」には、「撀去」や「撀退」に甚いる「撀」

ではなく、「培底」「貫培」などの「貫き通す」意味の「培」が甚いられるべきであるずい

う明確な意味付けができなかったのだず考えられる。③の「ゆういぎ」は、意味や䟡倀が

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倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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あるこずを衚すため、「有意矩」ず曞くべきである。しかし、「矩」も「議」も、「講矩」や

「議論」等、孊ぶこずや話すこずに関係する蚀葉に甚いられる挢字であるため、孊生達は

それぞれの個別の意味を認識する機䌚を持たずにいるのだず考えられる。④の「しおき」

は、「間違いを取り䞊げお瀺す」ずいう意味があるため、「摘たむ」の「摘」を甚いるべき

である。しかし、「摘」よりも、「適切」「適圓」などの蚀葉で日頃甚いおいる「適」のほう

が、孊生達にずっおは身近な挢字であろう。さらに、「しおき」ずいう行為を、間違いを修

正し「適切な」方向に導くものであるず認識しおいれば、「適」ずいう挢字を甚いるこずに

党く違和感を持たなかった可胜性もある。⑀に぀いおも、「こんらん」は苊しく困る状況で

あり、「困難」等、「困」が遣われおいる孊生達にずっお比范的身近だず考えられる蚀葉も

あるため、「困乱」を正しい衚蚘だず認識したのであろう。 境垌里子1998では、孊生の䜜文における誀字の䟋ずしお「困乱」が挙げられおいる。

本予備調査で「困乱」や「指適」を間違いだず刀定できなかった孊生達も、実際に「こん

らん」や「しおき」ずいう蚀葉を䜜文等で曞く際に、より身近な字である「困」や「適」

を甚いおいる可胜性がある。

43 読解 資料ずしお掲げおいる文章及び問いを、「以䞋の文章を読んで、埌の問いに察する答えず

しお最も良いものを、14 から遞びなさい。」ずいう問題文を付しお、4 回に分けお出題

した。xviii 第 1 回・第 4 回の問題はそれぞれ 3 名のみしか正答が遞べず、第 2 回・第 3 回の問題は

それぞれ 5 名・6 名が正答を遞ぶこずができた。なぜ、問題によっおこのような違いが出

たのかを考えおみたい。 最も正解者の倚かった第 3 回の問題に぀いおは、本文の最埌の文の点線郚xix「あぐらを

かいおきたずいうわけではないのです」ずいう郚分ず、遞択肢 3 の「人間が思うほど楜を

しおいるばかりではない」ずいう郚分が同じ意味を衚しおいるため、文章の内容をあたり

深く読み蟌んでいなくおも、たたは理解しおいなくおも、筆者の説明ずしお正しいものは

3 であるず刀断しやすかったのではないかず考えられる。たた、第 2 回の問題に぀いおも、

本文の最埌の文の点線郚「達成可胜だずいう芋通しがある」ずいう郚分ず、遞択肢 2 の「到

達可胜な目暙ずいうこずである」ずいう郚分に、「達成可胜」「到達可胜」ずいうほが同じ

意味を衚す蚀葉があるため、 に入る蚀葉、぀たり筆者がこの文章で蚀いたいこず

ずしお、比范的容易に 2 を遞ぶこずができたのであろう。 䞀方、第 1 回の問題に぀いおは、「そういうこずずは、どういうこずか。」ず、最埌の䞀

文自䜓の内容を問う問題になっおいるため、第 3 回・第 2 回のように最埌の䞀文を頌りに

正答を芋぀け出すずいうこずができなかったずいうこずが、正解者が少ない理由であろう。

しかし、最埌から二文目の「そうした犠牲を払っおもなお実行する䟡倀のあるこずだず刀

断したならば実行する。」を意識しお読むこずができおいれば、「そういうこず」の指し瀺

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しおいる内容がわかり、同じ内容が同じ蚀葉を甚いお曞かれおいる 1 を、正答ずしお遞ぶ

こずができたはずである。しかし、䞍正解であった孊生達は、党員 2 を遞んでいる。おそ

らく、最埌の䞀文にある「経枈的な行動」ず、「金ず時間に芋合った成果を予枬」ずいう蚀

葉に関連性を芋出し 2 を遞んだのだず考えられる。しかし、指瀺語の内容を問うおいるの

であるから、指瀺語のある文に泚目するのではなく、その前の文に着目するべきである。

この問題の誀りの傟向から、孊生達が、文の前埌を関係付けながら文章を読み進めるこず

ができおいないこずがうかがえる。 第 4 回の問題に぀いおも、「脳ずコンピュヌタヌの䌌おいるずころはどこか。」ずいう問

いであるため、脳に぀いおの説明ずコンピュヌタヌに぀いおの説明を、自分なりに関係付

けたうえで正答を遞ばなければならず、第 3 回の「筆者の説明ず合っおいるものはどれか。」

のような䞀文レベルでも正答を導き出せる問題よりも難しかったのだず考えられる。4 名

が 3「シナップスのような結び目があるずころ」を、1 名が 2「蚈算や蚘憶できるずころ」

を遞んでおり、「シナップス」や「蚈算や蚘憶」ずいう 2 回出おくる蚀葉に圱響されお遞

択したこずがうかがえる。正答である 1 の「基本の芁玠が網のように」ずいう衚珟は本文

では䜿われおおらず、脳ずコンピュヌタヌのそれぞれに぀いおの説明を理解し、「基本の芁

玠が網のように結ばれおいる」が、䞡者の特城をたずめお衚しおいる文であるずいうこず

が芋出せなければ、1 は遞べなかったのであろう。この問題からも、文ず文、情報ず情報

ずを関係付けお読み、考察するこずが、孊生達にずっおは難しいこずがわかる。

以䞊のような読解問題の結果から、日本語の授業xxや専門科目の授業においお、孊生達

に「読む」ずいう掻動を行わせる際には、䞀぀の文や䞀぀の情報だけを理解させるのでは

なく、前埌の文や、いく぀かの情報を結び付けながら読たせ、考えさせる緎習を行わなけ

ればならないこずがわかる。そのような習慣を身に付けなければ、むンパクトのある情報

のみに圱響を受け、短絡的で浅い考察しかできなくなっおしたうであろう。

おわりに

以䞊、本皿では、筆者の本務校における、日本語を母語ずする孊生を察象にした日本語

テストの予備調査の結果を分析した。分析察象者は非垞に少なかったが、孊生達の誀文・

誀字、さらには読解の仕方の傟向をうかがい知るこずができた。

本調査では、遞択問題だけでなく、実際に孊生に䜜文を曞かせる、文章を芁玄させる等

のテストも行いたいず考えおいる。遞択問題ずいう限られた条件のなかでのテストよりも、

より実態に沿った日本語力の問題点を明らかにするこずができるであろう。

たた、予備調査では、孊生達の語圙力を問うテストは行わなかった。しかし、筆者が授

業をしおいる際に、同じ孊幎の孊生であっおも、語圙量に差があるこずを実感しおいる。

したがっお、今埌は孊生達の語圙力を枬る調査も行いたい。

そしお、挢字・語圙等の知識量ず、文法力・読解力・䜜文力等の運甚胜力のどうような

芁玠が、英語力ず盞関関係を持぀のかを明らかにしたいず考えおいる。

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資料読解問題

【第 1 回】

限られた時間や財産ではすべおの目暙を達成できないずするず、䜕かを行うずきに犠牲になっおいるの

は、突き詰めおみれば、それによっお実珟できなくなる別の目暙なのです。お金や時間はこうした犠牲を

蚈る䞊での倧切な目安ではありたすが、それだけでは刀断が䞍正確になる恐れがありたす。䞀぀のこずを

実行する前に、それを行う替わりに䜕ができなくなり䜕が手にはいらなくなるかをきちんず考える。そう

した犠牲を払っおもなお実行する䟡倀のあるこずだず刀断したならば実行する。経枈的な行動ずは、結局

はそういうこずです。

南山倧孊経枈孊郚『倧人になるための経枈孊入門』日本攟送出版協䌚による

・そういうこずずは、どういうこずか。

○1 ある目暙を犠牲にしおもなお実珟させたい目暙だけを実行するこず

2 金や時間に芋合った成果を予枬しお、目暙に向け実行するこず

3 金や時間ずいう犠牲を払っおも、なんずか目暙を実行するこず

4 目暙が達成できなくなるずいうリスクを頭にいれながら実行するこず

【第 2 回】

目暙を蚭定するずきに考慮すべき点の第䞀は、 。

新入瀟員に毎月車を十台販売せよず目暙を䞎えた堎合、圌は目暙を達成できない自分がなさけなくなり、

倚分、喫茶店で終日時間を぀ぶすようになるだろう。぀たり、胜力以䞊の目暙はメンバヌにフラストレヌ

ションを䞎えるだけである。フラストレヌションが慢性化するず、やる気がなくなるのがふ぀うである。

やる気ずいうのは努力すれば達成可胜だずいう芋通しがある堎合に出おくるものである。

國分康孝『リヌダヌシップの心理孊』講談瀟による

・ に入るのはどれか。

1 客芳的で明確な目暙ずいうこずである

○2 到達可胜な目暙ずいうこずである

3 慢性的なフラストレヌションを䞎える目暙ずいうこずである

4 胜力以䞊の目暙ずいうこずである

【第 3 回】

われわれ人間から芋れば、カッコりの托卵たくらん

は、芪らしからぬ、非垞に愛情に欠けた行為に映りたす。他

皮の鳥の巣に卵を眮き、ひなに他の卵を蹎萜すこずたでさせお、たんたず仮芪に自分の子を育おさせるの

ですから、どうしおも、怠け者、ひきょう者ずいったむメヌゞで芋おしたいたす。

䞀方、托卵行為は、カッコりず托卵される偎ずの長い攻防戊の産物でもありたす。托卵先ずなった鳥た

ちは卵を芋分けるなどの知恵を数十幎かけお身に぀けたす。カッコりもそれに応じお技術を磚いおきたの

であり、ただ子育おを攟棄し、あぐらをかいおきたずいうわけではないのです。

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・筆者の説明ず合っおいるものはどれか。

1 托卵される鳥ずカッコりは双方に利点のある繁殖方法をずっおいる。

2 カッコりは、他の動物がするような無償の愛に基づいた子育おをしない。

○3 カッコりは他の鳥に子育おをさせるが、人間が思うほど楜をしおいるばかりではない。

4 鳥類は、巣の卵が他皮の鳥の卵だず分かるず子育おをやめるずいう習性を持぀。

【第 4 回】

脳ずコンピュヌタヌが䌌おいるのは、いずれも蚈算や蚘憶ができるからだ、ず思っおいる人がいたす。

しかし、蚈算や蚘憶をするのはあくたでも脳であっお、コンピュヌタヌは゜ロバンやメモ甚玙のような道

具に過ぎないのです。䞡者が䌌おいるのは、その基本的な仕組みです。

脳の䞻圹は神経现胞ですが、その现胞からは现くお長い神経繊維ずいう糞が出おいたす。そしお、その

神経现胞の先端は別の神経现胞に接觊するずいう圢で、次々ず぀ながっおゆきたす。その接觊するずころ

をシナップスずよんでいたす。぀たり、脳は神経现胞たたはシナップスを結び目ずした巚倧な神経網ず蚀

うこずができたす。その点が、倚数の玠子は配線で結ばれおいるコンピュヌタヌず䌌おいるのです。

千葉康則『ヒトはなぜ倢を芋るのか』PHP 研究所による

・脳ずコンピュヌタヌの䌌おいるずころはどこか。

○1 基本の芁玠が網のように結ばれおいるずころ

2 蚈算や蚘憶できるずころ

3 シナップスのような結び目があるずころ

4 メモ甚玙のような道具であるずころ

泚 i 「6.囜語力の向䞊」以倖の「英語教育改善のためのアクション」ずしお、「1.英語の授業の改善」「2.

英語教員の指導力向䞊及び指導䜓制の充実」「3.英語孊習ぞのモティベヌションの向䞊」「4.入孊者遞

抜等における評䟡の改善」「5.小孊校の英䌚話掻動の支揎」「7.実践的研究の掚進」が挙げられおいる。 ii 本皿における「倧孊生」「孊生」ずは、日本語を母語ずする者を指す。 iii 東掋孊園倧孊東京郜文京区にある私立倧孊である。グロヌバル・コミュニケヌション孊郚・人間科

孊郚・珟代経営孊郚の 3 孊郚から成る。筆者は、グロヌバル・コミュニケヌション孊郚の専任講垫で

ある。 iv 東掋孊園倧孊・平成 27 幎床特別研究「第二蚀語習埗ぞの孊習者母語胜力の盞関関係の怜蚌に関する

研究」研究代衚者䟝田悠介英語教員・研究分担者䞋山幞成英語教員、筆者日本語教員 v ここでの「日本語の授業」ずは、東掋孊園倧孊における孊郚 1 幎生の必修授業「教逊基瀎挔習」及び

孊郚 2 幎生を察象にした遞択授業「日本語衚珟法」を指す。「教逊基瀎挔習」では、倧孊生ずしお必芁

な論理的な曞き方・話し方を育おるこずを目暙ずしおいる。「日本語衚珟法」では、論理的な曞き方・

話し方を育成するず同時に、倧孊生ずしお必芁な語圙力・挢字力・読解力を向䞊させるこずを目暙ずし

おいる。

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倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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vi 実際に、筆者が倖囜人に日本語を教える際も母語の圱響を感じさせられるこずがある。具䜓的には、

母囜での䞭孊・高校時代に母語による論理的な文章を読んだ経隓がなく、論理的な文章を曞いた経隓も

ないであろう孊習者は、日本語の語圙力・文法力をある皋床身に付け、流暢に䌚話ができおも、日本の

倧孊で教育を受けるために必芁な読解力や文章力を身に付けるこずが困難であるように芋受けられる。

䞀方、母囜での䞭孊・高校時代に高床な文章の読解、小論文の䜜成、口頭での論理的な意芋衚明等の蚓

緎をし、なおか぀䞀定の評䟡を埗おきたず蚀える孊習者は、日本語の語圙力・文法力をある皋床身に付

ければ、的確に情報を収集し、自らの意芋・考察を客芳的・論理的に曞き、述べるこずができるように

なるず芋受けられる。 vii ここでの「日本語プレヌスメントテスト」ずは、「小野博氏が䞭心ずなりメディア教育開発センタヌ

が開発した「プレヌスメントテスト」の䞭の「日本語」に関するテスト」であり、「単語力をみるこず

によっお日本語の理解胜力を倧たかに把握」するものであるずしおいる。 viii 読点「,」及び䞋線は、境垌里子1998の通りである。 ix 課題文に぀いおの「もう䞀床読み返しお,あなたが印象に残った文たたは文章はどの郚分でしたか。

たた,印象に残ったのはなぜですか。」ずいう蚭問に答えるかたちでの䜜文である。「課題図曞のテヌマ

である「続けるこず」をポむントずしお読み取るこずができおいる」堎合に、読解力があるず刀定しお

いる。 x 2 クラスずも同じ曜日の同じ時限に開講されおいるため、予備調査は、䞡クラスずも、2015 幎 9 月

15 日火曜日・2 限、17 日朚曜日・2 限、24 日朚曜日・2 限、29 日火曜日・2 限に実斜

した。 xi 「日本語怜定」東京曞籍ずは、日本語の総合的な胜力1 敬語、2 文法蚀葉のきたり、3 語圙、

4 蚀葉の意味、5 衚蚘、6 挢字を枬る、日本語母語話者を察象にした怜定詊隓である。7 玚小孊 2幎修了皋床レベルから 1 玚瀟䌚人レベルたでの受怜玚が蚭けられおおり、2 玚は「倧孊卒業皋床

レベル」ずされおいる。 xii 「日本語胜力詊隓」ずは、日本語の蚀語知識文字・語圙・文法・読解力・聎解力を枬る、日本語

を母語ずしない人を察象にした詊隓である。N5基本的な日本語をある皋床理解するこずができる

から N1幅広い堎面で䜿われる日本語を理解するこずができるたでの受怜玚が蚭けられおいる。 xiii 『日本語胜力詊隓スヌパヌ暡詊 N1』2014 幎,アルク・『日本語胜力詊隓 完党暡詊 N1』2012

幎, J リサヌチ出版 xiv 4 回目のみ、30 の䟋文を出題した。 xv 予備調査では、倫理的な配慮から、孊生に察しお、調査察象者ずしお分析されるこずを拒吊する暩利

を䞎えた。実際に拒吊をした孊生もいたため、分析察象にできる人数が非垞に少なくなっおしたった。 xvi 日本語テストの党問題数は、16 問×4 回で 64 問である。 英語テストの党問題数は、1 回目から 3

回目のテストが各 25 問、4 回目が 30 問であったため、105 問である。正解率は、小数点第 2 䜍で四捚

五入しおいる。 xvii 読点「,」及び䞋線は、境垌里子1998の通りである。 xviii 第 1 回・第 2 回・第 4 回は『日本語胜力詊隓スヌパヌ暡詊 N1』2014 幎,アルクに、第 3 回は『日

本語胜力詊隓 完党暡詊 N1』2012 幎, J リサヌチ出版に出題されおいる読解問題である。問

題文における棒線やふりがな、匕甚文献の蚘茉の有無等は、問題集の通りである。ただし、それぞ

れの読解問題に付されおいる問題集内における通し番号に぀いおは、䟿宜䞊省いた。 xix 読解文や遞択文における点線及び波線は、本皿筆者が付したものである。たた、それぞれの問題の正

答番号に、䟿宜䞊〇を付しおいる。 xx ここでの「日本語の授業」ずは、泚ⅎで瀺した日本語の授業ず同じものを指す。

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囜際教育 International Education Vol.9(2016.3)倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より

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倧孊生の日本語力に぀いおの䞀考察英語力ず日本語力の盞関関係を枬る予備調査より


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