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今回のポイント 注意義務 公平義務 3つの信託 自己信託 目的信託 限定責任信託
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Uniform Prudent Investor Act 1条 プルーデント・インヴェスター・ルール 2条 注意義務の基準・ポートフォリオ戦略・リスクとリターン
に関する目標3条 分散投資 (Diversification) 4条 受託者として業務開始後合理的期間内にルール遵守の義務 5条 忠実義務 (Loyalty)6条 公平義務 (Impartiality)7条 投資に関する費用 (Investment Costs)8条 コンプライアンスの判断時期 (Reviewing
Compliance)9条 投資および管理機能の委任
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アメリカにおけるルールの変遷1 court list rule の時代 裁判所リスト・ルール2 legal list rule の時代 法定リスト・ルール3 prudent man rule の時代 プルーデント・マン(慎重人)・ルール4 prudent investor rule の時代 プルーデント・インベスター・ルール 合理的な投資家ルール
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わが国への示唆1 善管注意義務の問題点 注意義務の基準は? 他人か自己のものか? 行為指針としての機能は? 受託者から見ると?? アメリカでは公益団体のところから 日本では?2 信託のリスクの開示と丁寧な説明
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信託法旧法 4条 20条 21条 大正11年勅令5
条教材199頁 要綱案第19 大きな変更はなし(自己執行義務は除く)新信託法29条 注意義務28条 (受託者の権限の中に)第三者への委託
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大阪高判2005・3・30 金融商事判例1215号12頁1 年金信託→年金信託の仕組み2 厚生年金基金の理事 v 信託銀行3 合同運用義務違反4 アセット・ミックス義務違反 50%→5
8.5%◆ 事案◆ 判決の論理・信託法の論理◆ プルーデント・インヴェスター・ルールなら?
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大阪高裁判決2005年事案: 1970年 年金信託契約 30億円の運用 1997年 運用割合の覚え書き 2000年 5億円で19ファン
ド立ち上げ ITへの集中運用 3億円弱に減少1審は受益者勝訴 2審で逆転
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判決の論理 信託の論理判決→もっぱら信託契約の解釈 当事者の意思
これがアメリカであれば・・・
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アメリカでの善管注意義務1 McGinley v. Bank of America (Kan.2005)
エンロン株への集中について義務違反なし2 Fifth Third Bank v. Firstar Bank (Ohio 2006)
P&G 株への集中について義務違反あり
信託条項で書かれていることの意味善管注意義務=任意規定とはいっても、一定の限界
わが国では? 条項の絶対視、一般条項しかない弱さ
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McGinley v. Bank of America, 109 P.3d 1146 (Kan.2005)
1990 年撤回可能信託の設定。最終的な投資決定権限も留保。エンロン株1500株。9年余で株式分割で9500株に。信託財産の77%、80万ドル弱に。2000年に銀行内で分散投資の助言あり。担当者は動かず。2001年12月エンロン崩壊。
カンザス州裁判所は3審とも銀行の勝ち。 自己決定=自己責任? 契約で書いてある
から?
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Fifth Third Bank v. Firstar Bank, N.A. 2006 WL 2520329 (Ohio App. 1 Dist.), 2006 -Ohio- 4506
P & G株200万ドル相当。委託者は創始者の孫。1年後に株式下落で価値が半分に。 裁判所は分散投資義務違反を認め、受託者に損害
賠償 104 万ドルを命ずる。信託条項には、受託者は元々の信託財産を保持する
権限と、価値の下落に対し法的責任なしとする条項あり。→ Wood v. U.S. Bank N.A., 828 NE2d 1072 (2005) では、分散投資義務免除はより明確な文言がないと不可と判示。上訴審でも受託者敗訴。
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In re Will of Dumont, 4 Misc.3d 1003 (A), In re Chase Manhattan Bank, 26 A.D.3d 824 (N.Y. 2006)
Kodak 株だけを集中して保持。保持する権限と分散投資義務を免除する条項あり。ただし、 compelling reason ある場合は別と規定。
1 審→ 2100 万ドルの賠償を命じ、配当が十分でなく十分な収益がないことが、 compelling reason だとした。 2 審ではそれを破棄。
しかし、 1973 年時点では imprudent と言えないという理由であり、信託条項があるから問題なしという理由ではない。
Prudence の判断は残る。
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大阪高裁判決に戻ると契約の解釈 善管注意義務の任意規定化で、今後もその
傾向が残るように見えるが・・・ しかし、オハイオやニューヨークのように
prudence の基準が歯止めとなって、契約=自己責任にならない可能性もある
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公平義務1 アメリカでの一例 Matter of Chase Manhattan Bank (NY 2006)
2 アメリカで問題となる状況 複数で異質の受益者の存在 ①投資運用の方針決定時 ②収益か元本か ③費用や報酬の負担は
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In re Chase Manhattan Bank
846 N.E.2d 806 ( NY, March 30, 2006 )父が設定した信託 .制限行為能力者の娘。娘が生き
ている間は収益は娘に、残りの元本は大学他の公益法人に (CRAT = charitable remainder annuity trust)
娘はほとんど費消せず、80万ドルが残る収益なら娘の無遺言相続人へ、しかし大学らが異議申し立て。受託者の銀行は、相続人へ分配しようとするのを1審2審は支持、最高裁で逆転。
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公平義務日本でこれまで問題とならなかった理由
今後の課題 しかし、条文自体は何も示さず
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まとめ わが国の課題1 受託者責任の概念の明確化 善管注意義務・誠実義務 忠実義務・情報関連義務の不明確性2 強行規定・任意規定 営業信託・年金信託→規制の必要 一般の信託法理→私法としての任意 規定であることとその限界3 受託者責任が理解されないままでの信託 拡大の危険→契約的思考・取引的思考の貫徹 実は依存型の信託にまで、自己責任
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自己信託 宣言信託第二条 この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目
的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
2 この法律において「信託行為」とは、次の各号に掲げる信託の区分に応じ、当該各号に定めるものをいう。
一 次条第一号に掲げる方法による信託 同号の信託契約 二 次条第二号に掲げる方法による信託 同号の遺言 三 次条第三号に掲げる方法による信託 同号の書面又は電磁的記録(同号に規定する電磁的記録をい
う。)によってする意思表示第三条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。 三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成
のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法
第四条 3 前条第三号に掲げる方法によってされる信託は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。
一 公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成
二 公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては、その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知
4 前三項の規定にかかわらず、信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。
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自己信託 利用法と効果
S T(=S) B
商事信託 業法的規制 T=株式会社 民事信託 業概念の壁 反復継続性 効果は?
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目的信託第258条1項は、「受益者の定め(受益者
を定める方法の定めを含む。以下同じ。)のない信託は、第3条第1号又は第2号に掲げる方法によってすることができる」
従来の目的信託 公益信託 S T Bはなく代わりに公益目
的
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公益信託日本 主務官庁による規制アメリカ IRC(税法上の事後規制)
公益信託の効果1) rule against perpetuities (永久拘束禁止則)
2) cy pres 法理(シープレ法理=できるだけ近いものにする法理)
3)税制上の恩典
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非公益の目的信託 利用法 従来は、徳義的信託
商事信託での利用
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限定責任信託2条 この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法の
いずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
12 この法律において「限定責任信託」とは、受託者が当該信託のすべての信託財産責任負担債務について信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいう。
216条 限定責任信託は、信託行為においてそのすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の定めをし、第232条の定めるところにより登記をすることによって、限定責任信託としての効力を生ずる。