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ジョルジェット・ムルヘアルーモス CEO2015年6月8日
子どもが家庭で暮らす社会に向けてのみちしるべ
中央・東ヨーロッパの経験から
子どもの施設養育
世界的な課題
施設は、「孤児」の世話をするために設立された。
ヨーロッパで施設に入所する子どもの
90%以上は孤児ではない
(全世界では80%)
• 施設への入所が悪影響を及ぼすことは科学的に証明されている
• 初期段階の脳の発達に与える大きな影響
• あらゆる種類の虐待リスクの増加
• 死亡リスクの増加(特に障害のある子ども)
• 子どもにとって非常にきびしい結果をもたらす
施設への入所が子どもに与える影響
ブカレストで行われた研究による画像は施設に入所している子どもの脳で
電気的活動が低下していることを示している。オレンジの部分は電気的活動が高まっていることを示している。
EEGのレベル:施設に入所している子ども
EEGのレベル:施設に入所した経験のない子ども
施設で幼年期を過ごした成人は:
売春行為に関わる可能性が、同年代より10倍高い
犯罪歴を持つ可能性が40倍高い
自殺する可能性が500倍高い
障害がある子どもについての結果
ある研究では、ヨーロッパにおける施設で養育されて
いる3歳未満の子どもについて以下のことが分かった:
• 障害がない子どもで亡くなったのは0.29%
• 障害がある子どもで亡くなったのは28%
障害がある子どもの施設で死亡する確率は、
障害がない子どもよりも100倍高い。
これほど厳しい結果が子どもにみられるのはなぜか?
• 子どもは、健全な発達に不可欠な愛着(アタッチメント)を形成することができない
• 人件費が高いため、子どもとの時間が限られている
• 子どもの個別のニーズに対応することができない
• 子どもの行動をコントロールするための虐待的な方法
• 地域社会からの隔絶―子どもは外の世界で生きていくためのスキルを学ぶことができない
• 施設を巣立つ際に、家族や社会のネットワークがない
• 愛情や親愛の情に飢えているため、虐待や搾取の対象になりやすい
問題の大きさ
世界には、800万人の子どもが施設で養育されている
数字で見る世界の現状
5.5
16
49
21
39
0
10
20
30
40
50
60
イングランド 日本 チェコ共和国 ブルガリア モルドバ
施設に養育されている子どもの数(1万人あたり)
0~18歳の子どもの数
0 0
7
38
29
0
5
10
15
20
25
30
35
40
イングランド スウェーデン 日本 チェコ共和国 ブルガリア
施設に養育されている乳児の数(1万人あたり)
0~3歳児の数
0 0
施設から家庭への移行を成し遂げるには…
施設に代わる地域サービスの開発
子どもが施設に入所することを防ぐ
現在、施設で養育されているすべての子どもを、
家庭を基盤とする養育に移行する
使用目的を明確にして資源を移行する
大きな変革を実施するための能力と専門知識
考え方、政策、実践を変える
考え方や実践を変えるにあたり、子どもと家族が主導的な役割を担えるようにする
ルーモスの活動国家レベル
モルドバの例
モルドバにおける施設の子どもの数(2007年~2014年)
フロレシュティにおける施設の子どもの数(2007年~2014年)
ヤロベニ郡における施設の子どもの数(2007~2014年)
キシナウの第二施設の子どもの数(2007年~2014年)
オルゲイにおける施設の子どもの数(2007年~2014年)
モルドバで里親が養育する子どもの数
282
372
421440
581
660
735
850
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
ヤロベニ地区で里親が養育する子どもの数
3
6 6 6 6
12
18
28
0
5
10
15
20
25
30
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
フロレシュティ地区で里親が養育する子どもの数
9 9
13 13
19
37
45
60
0
10
20
30
40
50
60
70
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
インクルーシブ教育と特殊教育を受けている障害児の数(モルドバ)
3148
2549
2300
1807
1538
1253
1604
2258
4495
7660
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2010-2011 2011-2012 2012-2013 2013-2014 2014-2015
寄宿制の特殊学校 インクルーシブ教育を実施している普通校
51%家族から離れ寄宿制の特殊学校で教育を受ける障害児の数は5年間で51%減尐
511%インクルーシブ教育を実施する普通校で教育を受ける障害児の数は5年間で511%増加
長期的な視点で見るコスト削減
モルドバの事例
措置先による子ども1人あたりの年間コスト(単位:ユーロ)
4100 3881
3382
475
831
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
4500
Cost per child per year
子ども1人
あたりの年間コスト
施設 小規模のグループホーム
里親 家庭支援 インクルーシブ教育
子ども1人あたり12年間のコスト(単位:ユーロ)
49200 46572
40584
1425
9972
0
10000
20000
30000
40000
50000
60000
Cost per child over 12 year period
施設 小規模のグループホーム
里親 家庭支援 インクルーシブ教育
子ども1
人あたり12年間のコスト
2つの養育を子ども1万3千人で比較すると
施設で1万3000人の子どもを養育する費用は6億3,960万ユーロ
地域社会で1万3000人の子どもを養育するコストは7,940万5,950ユーロ施設で世話をする場合のわずか12%
節約した資金を投資して:
全国の学校の40%でインクルーシブ教育が導入された
乳児死亡率が千人あたり14人から千人あたり9人に減尐した
ブルガリアの事例
ブルガリアにおける施設の子どもの数
6730
5695
4755
4122
31132721
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
2009 2010 2011 2012 2013 2014
24552319
2087
1204
975
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
2010 2011 2012 2013 2014施設に収容されている乳幼児数
ブルガリアにおける施設の乳幼児の数
ブルガリアで里親に養育される子どもの数
221391
580
1943
2304
0
500
1000
1500
2000
2500
2010 2011 2012 2013 2014
里親に育てられている子どもの数
ブルガリアで施設に入所する子どもの数3170
2930 28552708
2099
1044
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
2009 2010 2011 2012 2013 2014
ブルガリアで施設に入所する子どもの数
ブルガリアにおける里親委託、施設入所となった子どもの比率
27%
41.5%
73%
58.5%
0
10
20
30
40
50
60
70
80
2012 2013
里親委託の比率 施設入所の比率
チェコ共和国の事例
チェコ共和国における施設の子どもの数
チェコ共和国で施設に入所する子どもの数
3.1
3.8
4.8
5.1
5.6
6.2
6.6
6.7
6.8
8.1
8.4
9.0
10.9
14.4
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0
児童施設(children home)に入所した3歳~18歳の
子どもの数(子ども10,000人あたり、2012/2013年)
ウースーチー州
カルロヴィ・ヴァリ州
南ボヘミア州
モラヴィア・スレスコ州
リベレツ州
ヴィソチナ州
中央ボヘミア州
チェコ共和国(全国)
ズリーン州
プレゼニ州
南モラヴィア州
オロモウツ州
パルドゥビツェ州
フラデツ・クラーロヴェー州
4,6134,884
5,174
5,727
6,7227,021
7,463 7,651
8,606
9,771
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
Foster care里親ケア
チェコ共和国で、里親または後見人に養育される子どもの数
0 329
108
302
498
0
100
200
300
400
500
600
2011/01/01 2012/01/01 2013/01/01 2014/01/01 2015/01/01
チェコ共和国で
短期里親のケアを受けた子どもの数
近年、地域に根差した家庭支援サービスが顕著に伸びている
76
322
0
50
100
150
200
250
300
350
2006 2014
チェコ共和国における子どもの
いる家族に提供される公認の
社会活性化サービスの数
20
200
0
50
100
150
200
250
2006 2014
パルドゥビツェ州における子ども
のいる家族に提供される
社会活性化サービスによる支援
を受けている家族の数(推定)
予防的ソーシャルワークの増加は、すでに児童ホームに影響を与えている
パルドゥビツェ州で児童ホームに入所する子どもの数は著しく減尐している
2012から2013に児童ホームに入所した未就学児童はいない
56
17
0
10
20
30
40
50
60
2004/2005 2012/2013
パルドゥビツェ州で児童施設
に入所した子どもの数
1618 18 18
810
6
14
00
5
10
15
20
25
20
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
20
11
20
12
20
13
パルドゥビツェ州で児童施設
に入所した未就学児童数
障害のある子どもを持つ家族を支援する、地域を基盤としたサービスも増加している
2,703
2,984 2,933
3,779
2000
2200
2400
2600
2800
3000
3200
3400
3600
3800
4000
2009 2010 2011 2012
チェコ共和国の早期介入(raná péče :プラハの
コミュニティーサービス)の利用者数 :
障害のある子どもを持つ家族のため、地域社会が提供する支援サービスの向上により、障害児施設に入所する子どもの数が4年間で30%減尐
1063
926
834
769
600
650
700
750
800
850
900
950
1000
1050
1100
2009 2010 2011 2012
障害児施設の子どもの数 障害のある子どもを持つ家族を支援する社会サービスの数
障害のある子どもを持つ家族を支援する公認サービスの数
出典:労働・社会政策省
各種のサービスと提供コスト
1 040 (29,000)
8 850 (245,000)
15 700 (430,000)
10 900 (299,000)
22 400 (614,000)
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
1措置/ベッド当たりの年間コスト
(単位はユーロとチェコ・コルナ)
乳児院(パルドゥビツェ州)
児童施設
短期里親ケア
長期里親ケア
地域ベースの家庭支援サービス
「標準的」ケースにおけるコスト
乳児院に4か月間措置する場合
短期里親ケアに4か月間措置する場合
2年間の地域ベースの家庭支援サービスの場合
7 467 (204 tis.)
5 233 (144 tis.)
2 080 (57 tis.)
地域を基盤としたシステム:乳児院のベッド85床に代わる措置
8
358 (9 820)9
42 (1 163)24
25 (684)
4 6 (168)
25 (141)
26 408 (11 185)
8 71 (1 940)
4 63 (1 721)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
代替措置/支援、その数とコスト
Foster care for children with disabilities
Long term foster care
Short term foster care
Home with support of early intervention and family supportHome with support of early intervention service
Home with family support
障害のある子どものための里親
長期里親
短期里親
家庭に早期介入サービスと家庭支援サービスを提供
家庭に初期介入サービスを提供
家庭に家庭支援サービスを提
措置数 年間コスト(単位は1000ユーロと1000チェコ・コルナ)
現行制度と新制度の年間予算
1 748(47 900)
979(26 825)
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
1,600
1,800
2,000
乳児院と代替措置の年間コスト(単位は1000ユー
ロとチェコ・コルナ)
乳児院のベッド85床
地域を基盤としたシステム
新制度では、同じ予算でもっと多くの子どもを支援することができる
地域を基盤とするシステムの方が低コストである
年間で、約77万ユーロ(2110万コルナ)の
節約が可能
この金額で約740の
家族が、地域を基盤とした家族支援サービスを受けることが
可能
100 100
740
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
同予算で支援できる子どもの数
Children yearly served thanks to the beds in baby homes
Children in the community supported thanks to lower costs of alternative placements/services
より低いコストで提供される代替措置と支援サービスを受ける地域社会の子どもの数
乳児院のベッドで年間支援を受ける子どもの数
そのため、同じ予算で支援できる子どもの数が増える
乳児院ではベッド85床 地域を基盤としたシステム
里親の種類(その1)
里親には数種類のタイプがある:
緊急里親
子どもが数日間安全に宿泊できる場所が必要な場合
短期里親
子どもの将来プランを検討しつつ、数週間から数ヶ月間里親の元でケアする場合
短期休暇(ショートステイ)
障害や特殊なニーズ、問題行動などをのある子どもが、事前に立てた計画に沿って定期的に里親家族に短期間滞在し、両親は短期休暇をとる場合
送致里親
裁判所が若者を専門の訓練を受けた里親の元に送致する場合
長期および永続的里親
自身の家族と定期的に連絡を取り合っている一部の子どもを養子縁組するのは
適切ではなく、このような場合は長期間、里親ケアに委ねる
「家族と友人」あるいは「親戚」による里親ケア
地方当局が措置するケースで子どもとすでに顔見知りの人物が里親となる場合。この方法は子どもにとって良い効果をもたらす。
個人による里親ケア
両親が個人的に手配をし、近親者でもなく保護責任もない個人が里親として
27日以上子どもを養育する場合。この取り決めについては地方当局への報告が必要で、当局が子どもの福祉をチェックするためこの里親家庭を訪問する。
里親ケアの種類(その2)
母親と乳児の措置
母親と乳児を受け入れる特別な里親への措置。
里親は、母親が親としてのスキルを習得するために必要な安定した環境、アドバイス、支援を提供する。
母親が長期的に自力で子どものニーズを満たしていくことができるかどうかの評価に里親が参加することもある。
里親ケアの種類(その3)
治療的里親
• これは、情緒的な問題や挑発的な行動のみられる子どもや若者の
ニーズに応えるための専門的な里親である
• 多次元治療里親(MTFC)やKeepを含む様々なモデル
• 子どもと里親両方に対し、治療的サポートや24時間体制の支援が提供される
• 年長の子どもの場合、一般的な里親ケアになじめない子どもについては
小規模施設ケアの代替モデルとして利用可能
里親ケアの種類(その4)
資源の移行計画
施設に代わるためには、幅広い地域を基盤としたサービスが必要
ほとんどが安価である
一部はより高価である
なぜ、施設のコストは高いのか?
24時間体制のケア→
多くの人員が必要
建物のメンテナンス費用
ケアを必要とする子ども以外も施設に
多くの子どもを入所させる金銭的誘因(子ども1人ごとの予算)
施設には「規模の経済(スケールメリット)」が働くとの根強い考え
多くの子どもを集めれば、コストは削減できる
しかし証拠はその逆を示している
一般的な施設は、ユーザー1人あたり600ポンド
ペアレンティングプログラム(例えばトリプルP:前向き子育てプログラム):1家族あたり900~1,000
PEIP:親1人あたり1,200~3,000ポンド
Family Nurse Partnerships, Family Functional Therapy &KEEP:1家族当たり年間3,000ポンド
Multi Systematic Therapy:介入1回あたり3~1万ポンド
家族への介入サービス:1家族あたり年間8~2万ポンド
里親養育を受ける子どもの場合:1年の支援コスト25,000ポンド(プラス追加サービス分)
多次元治療里親ケア(MTFC):トータルパッケージで7万ポンド
子供や若者が適切な
時期に正しい支援サー
ビスを受けることが重
要である。以下の数字
は、その重要性を示す
目的である
施設でケアを受ける子どもの場合:12万5千ポンド+1年の配置コスト
安全なアコモデーションでケアを受ける子どもの場合:13万4千ポンド+1年の配置コスト
子どもが成長するにしたがって、コストは増加する。ヘルスケアや刑事司法制度などの関連コストの増加により、費用対効果を向上させるには共同で取り組む事業が重要なコアであることが分かる
Cost
一般的な学校は、生徒1人あたり5400ポンド
ニーズ評価の重要性
情報サービス:電話によるヘルプラインサービスは約34ポンド、デジタルサービスは約2ポンド
危機に瀕している子どもの世話にあたっている小規模なグループに対する介入コストは比較的高い
子供1人/1家族当たりのコスト
施設には地域サービスに再投資できる3種類の資源がある
資金(年間予算と寄付金)
人的資源(施設職員)
物的資源(建物、土地、車、設備)
成果
施設から里親への移行に伴い、子どもの発達に以下のような改善が見られた
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
身長 歩行 会話 認知
平均/措置された時点
平均/現在
施設入所時から里親ケアに移行した際の行動の変化
0 20 40 60
おねしょ
食事に関わる問題
悪夢
虚言
窃盗
攻撃性
自傷行為
非常に頻繁に起こる
(現在)
非常に頻繁に起こる
(移行直後)
プラハのホームレスを対象にした研究*:
• ホームレスの若者には施設養護経験者が多い
• ホームレスの若者の中には、里親養育の経験者はほとんどいない
*出典: PRUDKÝ, L. a ŠMÍDOVÁ, M. Kudy ke dnu: analýza charakteristik klientů Naděje, o.s., středisko
Praha, Bolzanova. Vyd. 1. Praha: Socioklub, [2010] dotisk, 135 s. Sešity pro sociální politiku. ISBN
9788086140681.
チェコ共和国おける施設養護と里親養育の結果
-施設所長
私たちの子どもは必要なものは全て持っている。テレビ、インターネット、エアコン、ミニバーも。最高の教師も揃っている。彼らは米国、オーストリア、スイスにも訪問する。もし自宅にいたなら、どんなものが手に入るというのですか?
物が家族の愛情と世話に取って代われるとの確信