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NEJM October 20,2016

2017.1.13 失神患者のpe有病率

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NEJM  October 20,2016

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Background失神( syncope)は急速発症、短時間の持続、自然回復する、一時的な脳の血流低下が原因と考えられる、瞬間的な意識消失と定義される。分類としては神経性(血管迷走神経性、状況性、頚動脈洞性など)、起立性低血圧(薬剤性、自律神経不全、血管内 volumeの不足など)、心血管系(不整脈、心血管系疾患、 PEなど)。失神で入院した患者において PEを診断する厳密なスタディは不足している。国際ガイドラインでも PEの診断ワークアップについてあまり重きをおいていない。

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今後、患者が失神で入院した時、 PEが可能性としてあると考えることがまれになってしまう。このスタディでは、失神の原因となる他の病態の有無にかかわらず、初発の失神で入院した患者で PEの評価のための診断ワークアップを行った。

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MethodsStudy design and oversight 18歳以上で初発の失神患者において PEの有病率を調べた横断研究。失神で救急外来を受診し、参加した病院( 2の大学病院、 9の大学以外の病院)に入院した患者。入院の理由は転落に関連した外傷、重症、失神の原因が説明できない、心血管系の可能性が高い、であった。以前に失神の既往がある例、抗凝固療法を受けている例、妊婦は除外された。

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MethodsStudy assessments入院して 48時間以内に評価を行った。ワークアップは European Society of Cardiologyのガイドライン 2014に基づいた。現病歴には自律神経系の前駆症状(冷汗、蒼白、嘔気)や心疾患の有無、最近の出血、血管内 volumeの不足や静脈系への pooling、新規あるいはより強い高圧薬、頻脈や徐脈になりうる薬剤への暴露を含んだ。

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下肢の痛みや腫脹、 DVTのリスクファクター(最近の手術、外傷、 3ヶ月以内の感染症、現在進行中のホルモン療法、 1週間以上の拘束、癌(再発、転移、 6ヶ月以内に化学療法や放射線治療を受けた)、 DVTの既往)の有無を聞いた。不整脈、頻脈( >100/min)、弁膜症、低血圧( >110mmHg)、自律神経系の機能不全、頻呼吸( >20/min)、下肢の腫脹や発赤の評価をされた。胸部 Xp、心電図、動脈血液ガス、 Dダイマーを含む血液検査を行い、臨床的に疑わしい場合は頚動脈洞マッサージ、 Tilt試験、エコー、 24時間ホルター心電図を施行した。

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Ascertainment of pulmonary embolism PEの存在は、Wells scoreと Dダイマー値に基づいて評価された。 Dダイマーのカットオフ値は 250µg/mlあるいは 500µg/ml。

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Unlikelyかつ Dダイマー陰性→それ以上の検査なし、 PEは除外 likelyまたは Dダイマー陽性→肺アンギオあるいは換気血流肺スキャン(重度の腎不全、造影剤アレルギーの患者) PEの診断は、 肺アンギオ :血管腔内の造影効果の完全欠損 換気血流肺スキャン :区域の 75%以上の血流欠損

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Statistical analysisサンプルサイズは 550人。名義変数に対してはカイ二乗検定、連続変数に対してはt検定を用いた。オッズ比、 95%信頼区間の計算にはロジスティック回帰モデルを使用した。

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Results 2012年 3月~ 2014年 10月失神で救急外来を受診した 2584人

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Prevalence of plumonary embolism 230人中  135人( 58.7%)  Dダイマー陽性  3人( 1.3%) Wells score高値  92人( 40%)  Dダイマー陽性かつWells score高値

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肺アンギオをした 180人中 72人( 40%)が PE換気血流肺スキャンをした 49人中 24人( 49%)が PE

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Thrombotic burden肺アンギオによる診断例 72人中  30人( 41.7%) 主肺動脈  18人( 25%) 葉肺動脈  19人( 26.4%) 区域肺動脈  5人( 6.9%) 亜区域肺動脈 

に塞栓

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換気血流肺スキャンによる診断例 24人中  4人( 16.7%) 両肺の 50%以上  8人( 33.3%) 両肺の 26~ 50%  12人( 50%) 両肺の 1~ 25%

 

で血流欠損

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死亡した 1例では、剖検の結果両側の主肺動脈に血栓を認めた。

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Additional observations原因不明の失神患者 205人中、 52人( 25.4%)で PEあり。原因がはっきりしている失神患者 355人中、 45人( 12.7%)で PEあり。この 45人中 31人は肺アンギオで葉肺動脈あるいはそれより中枢側に血栓、換気血流肺スキャンで両肺の 25%以上の欠損あり。

Table2

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Additional observations原因不明の失神患者 205人中、 52人( 25.4%)で PEあり。原因がはっきりしている失神患者 355人中、 45人( 12.7%)で PEあり。この 45人中 31人は肺アンギオで葉肺動脈あるいはそれより中枢側に血栓、換気血流肺スキャンで両肺の 25%以上の欠損あり。

Table2

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Additional observations原因不明の失神患者 205人中、 52人( 25.4%)で PEあり。原因がはっきりしている失神患者 355人中、 45人( 12.7%)で PEあり。この 45人中 31人は肺アンギオで葉肺動脈あるいはそれより中枢側に血栓、換気血流肺スキャンで両肺の 25%以上の欠損あり。

Table2

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Additional observations原因不明の失神患者 205人中、 52人( 25.4%)で PEあり。原因がはっきりしている失神患者 355人中、 45人( 12.7%)で PEあり。この 45人中 31人は肺アンギオで葉肺動脈あるいはそれより中枢側に血栓、換気血流肺スキャンで両肺の 25%以上の欠損あり。

Table2

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PEが同定された 97人中、 24人( 24.7%)では臨床的な徴候なし。

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Discussion今回のスタディでは PEは約 6人に 1人( 17.3%)の割合で存在していた。原因不明の失神患者の中で PEは一番多い原因であったが、他に失神の原因が分かっている患者でも約 13%に PEがあった。呼吸困難、頻脈、低血圧、 DVTの臨床症状は、癌と同様に PEの可能性を上げる。これらの症状はないが、検査にて判明する PEの割合は無視できない。

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Limitation外来患者や、入院が不必要と考えられた患者を含んでいない。失神の診断は他人による判断であり、しばしば医学的なトレーニングを受けていない人の判断によることがある。診断ワークアップは国際ガイドラインに基づいたが、具体的なワークアップは指示されなかった。画像評価は Dダイマー陽性例、Wells score高値例でのみ行われた。 DVTの客観的評価はされなかった。

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失神の他の原因に対する調査は参加した医師に任されたため、過小報告となっていたかもしれない。そして、これは 205人で失神の明確な原因が同定できなかったことの責任の一部となりうる。以前に失神歴があったり抗凝固療法を受けている患者では本スタディの結果は適切でない。 PEの診断後の治療方針や患者のフォローアップに関する情報を集めていない。

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Discusion私たちのコホート研究では、肺アンギオによって PEと診断された 73人中 49人( 67.1%)で、血栓の最中枢の局在は主肺動脈あるいは葉肺動脈であった。同様に、換気血流肺スキャンで PEと診断された 24人中 12人( 50%)が、全肺面積の 25%以上の血流欠損があった。これらの結果から、 PE患者の少なくとも半数において、血栓が突然の血流障害をきたして意識消失をきたすのに十分な大きさであると分かった。

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一方、約 40%では肺血流障害は少なかった。これは、失神の標準的な評価方法がなく、軽度の PEが他の見逃された状態と相まって失神を起こしていたかもしれない。しかし、一度 PEになると他の機序(血管抑制神経や心抑制系)が失神の発生に拍車をかけるかもしれない。さらに、血栓が静脈系から肺循環に入る時、心臓を通過した際に不整脈を起こすかもしれない。

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Conclusion初発の失神で入院した、抗凝固療法を受けていない患者において、 PEは 17.3%(約 6人に 1人)でみられる。失神の原因が分からない患者において、 PEの割合は最も高い。