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2017.3.17 CAP後の心不全リスク

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INTRODUCTION

○CAP ( community aquired pneumoniae )CAP はアメリカの主要な死因のうち 7 位を占める→  医療費は年間 90 億ドル  入院数は年間 60 万人CAP は急性疾患とみなされることが多いBut  長期間にわたるリスクは実は大きい例) 5 年間の死亡率は 5 割ほど up  再び肺炎に罹患するリスクは健常人の約 2 倍

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INTRODUCTION

心不全は CAP 患者においてたびたび認められる主要な心血管疾患の一つ※ 肺炎が心不全に寄与するメカニズム・心筋の機能の減弱・酸素需要の増加・頻脈による心拍出量の減少・その他循環器系の問題の発生→ これらにより心負荷増大

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INTRODUCTION

今までも肺炎と心不全の関連について調べた論文はいくつか存在する→ これらは以下の点で limitation がかかっている・既存の心不全の増悪と新規の心不全の発症を区別できていない・サンプルの偏り(高齢者のみなど)・フォロー期間が短い(入院中のみなど)・コントロール群が同じ医療機関から選定されていないetc…

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INTRODUCTION

CAP が肺炎のない患者と比較して短期間 or 長期間に わたって真に心不全の発生を増加させているかは  いまだ定かではない。また、年齢や CAP の重症度に応じてリスクが変化するかどうかも定かではない。→ 肺炎患者のコホートと、年齢と性別をマッチさせた非肺炎のコントロール群を集めて検証を行った

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METHOD

◎Patient With Pneumoniaeカナダのアルバータ州にあるエドモントンの 6 つの 病院または 7 つの救急施設に 2000 年~ 2002 年の間に 受診した 17 歳以上の CAP 患者を研究対象として登録ただし、以下の者は除外・結核患者・嚢胞性線維症の患者・免疫不全患者(例:ステロイド内服者)・妊婦

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METHOD

◎Patient With Pneumoniae肺炎患者はすべて治療を行う医師によってレントゲン写真を確認されており、以下から少なくとも 2 種類の症状があるものとされた症状: 咳、胸膜性の胸痛、頻呼吸、

38 度以上の発熱、肺雑音 or 気管支呼吸音患者は有効なクリニカルパスに沿って治療が施された

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METHOD

◎Matched Controlそれぞれの肺炎患者に対し、性別および年齢をマッチさせたコントロールを最大 5 例までマッチさせた。さらにコントロール群には以下のことが要求された・肺炎群が罹患しているときに生存していること・肺炎群と同じ治療機関にいること(入院患者では同じ病院にいること 外来患者では同じ救急部門を受診していること)・ CAP 罹患歴がないこと

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METHOD

◎OutcomesPrimary outcome :心不全の発症( 2012 年 3月までにおける、最初の肺炎を発症した後に入院を有した心不全全てを定義)心不全の発生のリスクを以下に分けて評価  short term (退院から 90日以内)  intermediate term (退院から 1 年以内)複合エンドポイントとして心不全の発生+全死因死亡

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METHOD

◎Outcomes心不全で入院したかどうかということは ICD-10-CM 150あるいは ICD-9-CM 428.x のコードを用いて調査された。(それゆえ、患者の疾患コードが管理データベースに登録されていないと追跡できないことになる)

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METHOD

◎Statistical Analysis肺炎が起きてから心不全による入院が生じたまでの 時間を Kaplan-Meier カーブで表現肺炎群とコントロール群とで outcome を評価するため、多変量 Cox 比例ハザード解析を使用併存症に関しては Elixhauser共存症指数を用いて評価

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RESULT

6874 人の CAP 患者を登録→ 以下の例は除外 ・院内死亡( 314 人) ・心不全既往( 857 人) ・入院中に心不全発症( 309 人)さらにマッチするコントロール群がなかった 386 人、診断のための管理データベースがなかった 22 人が除外された。→ 肺炎( CAP )群: 4988 人 コントロール群: 23060 人

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RESULT

フォローアップの中央値は 9.9 年フォローアップの最大値は 11.4 年肺炎患者の平均年齢は 55 歳1762 人( 35.3% )は 65 歳以上63.4% は外来管理肺炎患者とコントロール群は性別では均等に分散コントロール群で若年傾向( 53 vs 55,P<0.001 )コントロール群の方が併存症が少ない傾向にあった

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RESULT

年齢性別

入院 or 外来フォロー期間

併存症

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RESULT

Primary outcome(心不全の発生)肺炎患者: 592 人( 11.9% )Control 群: 1712 人( 7.4% )→言い換えると、 肺炎患者では年間 100 人に対し 1.7 人 コントロール群では年間 100 人に対し 0.9 人 が心不全を発症する。

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RESULT

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RESULT

調整ハザード比を算出しても、肺炎患者はコントロール群と比較して心不全の発症率はより高いということがいえる 調整ハザード比: 1.61  95%信頼区間: 1.44 ~ 1.81  P value : P< 0.001 )※ これは入院管理、外来管理にかかわらず同様

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RESULT

同様の結果はフォロー期間にかかわらず言える。90日以内: 1.4% vs0.6%;調整 HR 1.52; 95%CI 1.08-2.13;P=0.0151 年以内: 3.3% vs1.4%;調整 HR 1.86; 95% CI 1.50-2.32;P<0.001

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RESULT

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RESULT

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RESULT

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RESULT

65 歳以下と 65 歳より上で分けた場合年齢にかかわらず心不全リスクは上昇○65 歳以下の肺炎患者絶対リスクの上昇は小さい( 4.8%vs2.2%;+ 2.6%)相対リスクの上昇は大きい( HR 1.98; 1.55-2.53 )○65 歳より高齢の肺炎患者絶対リスクの上昇は大きい( 24.8% vs18.9%;+5.9%)相対リスクの上昇は小さい( HR 1.55; 1.36-1.77 )

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RESULT

○全死因死亡肺炎群: 1917 人( 38.4%)コントロール群: 5509 人( 23.9%)○複合エンドポイント(心不全発症と全死因死亡)肺炎群: 2035 人( 40.8%)コントロール群: 6041 人( 26.2%)(調節 HR 1.53; 95%CI 1.44-1.63; P<0.001 )

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RESULT

○感度分析以下の条件で感度分析を行った

①肺炎発症時に心不全を発症した群を含む場合②最初 1 年で心不全を発症した群を除外した場合③心不全関連イベントで救急部を受診した例を含む場合④肺炎による脳卒中のリスクを算出した場合⑤肺炎による骨折のリスクを算出した場合

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RESULT

○感度分析以下の条件で感度分析を行った

⑥利尿薬を使用している肺炎患者を除外した場合⑦競合リスク回帰分析に当てはめた場合⑧肺炎球菌菌血症を来した例で解析した場合⑨肺炎球菌以外の菌血症を来した例で解析した場合

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RESULT条件 調整

HR95% CI P value

①肺炎発症時に心不全を発症した群を含む場合 1.82 1.65-2.01 P<0.001

②最初 1 年で心不全を発症した群を除外した場合 1.44 1.28-1.61

③心不全関連 event で救急部を受診した例を含む場合 1.62 1.45-1.80 P<0.001

④肺炎による脳卒中のリスクを算出した場合 1.02

⑤肺炎による骨折のリスクを算出した場合 1.14

⑥利尿薬を使用している肺炎患者を除外した場合 1.39 1.25-1.55

⑦競合リスク回帰分析に当てはめた場合 1.37

⑧肺炎球菌菌血症を来した例で解析した場合 2.40 1.08-5.30

⑨肺炎球菌以外の菌血症を来した例で解析した場合 0.89 0.32-2.40

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DISCUSSION

CAP後の心不全の 10 年間発生リスクは約 12%※ コントロール群では 7.4%→ 心不全の発症リスクはコントロール群と比較して   相対リスクで 5 割以上上昇肺炎後の心不全発症リスクの上昇は退院から比較的早期( 90日以内)でより認められやすい※ 長期間フォローにおいてもリスクの上昇は認める

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DISCUSSION

高齢者における心不全リスクはよく認識されており、 今回のデータでも確かめられている→ さらに今回のデータでは若い世代でもリスクの上昇が観察された特に入院で管理された若い肺炎患者では心不全のリスクはコントロール群と比べて約 3 倍の相対リスクおよび絶対リスクの上昇を認める( supply table.1参照)

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DISCUSSION

高齢患者においては最も高い絶対リスクの上昇を認めたしかし、肺炎の心不全に対する相対リスクの上昇が最も大きかったのは入院であろうと外来であろうと若年患者であったことは注目に値する

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DISCUSSION

○Comparison with other studiesこれまでにも肺炎後の心不全リスクに関して長期間にわたって評価を行った研究はいくつか存在する。それらは以下の点で limitation がかかっている。・ 1 年間の outcome しか評価されていない・ outcome が心不全関連死しか扱われていない既存のメタアナリシスと結果が食い違うのも以下のlimitation の存在のせいと考えられる・サンプルサイズが小さいコホートが用いられている・既存の心不全の増悪も今回の研究でいう「 incident of heart failure」に含まれている

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DISCUSSION

○Strengths and limitations of study肺炎の心機能への影響は以下のように考えられている肺炎

・全身の酸化ストレス・炎症マーカー(循環サイトカインなど)の上昇

・血栓形成・アテローム硬化性プラークの不安定化・血管内皮障害

・虚血性心疾患・心房細動・心室機能低下

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DISCUSSION

○Strengths and limitations of study・ CAP が真にそれのみで心不全を起こすかどうか・心不全が単に急性肺炎がトリガーとなって生じたcardiac cascade の最終段階なのか上記についてはいまだ定かではない。

今回の研究の主要な limitation は こうした潜在的なメカニズムおよび 肺炎に関連した心不全の発生原因を調査できていないということが挙げられる。

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DISCUSSION

○Strengths and limitations of study他の limitation としては以下が挙げられる。・免疫不全患者といった high risk 患者が含まれていない・心不全の診断が臨床データではなく管理データ( ICD-10-CM 150 など)に基づく・診断が管理コードなため、心不全の程度を評価することができなかった※ ただし、管理データにおける心不全のコードは  高い妥当性が認められており、臨床記録と比較して高い陽性・陰性的中率を誇る

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CONCLUSION

CAP 患者では将来的な心不全発症のリスクが上昇することが示された。高齢患者が心不全のハイリスクと考えられることが多いが、今回の研究では一般的にはハイリスクと思われていない若年者にもリスクが及ぶということが示された。しかし、肺炎というものが単にハイリスク群を示すマーカーであるかどうか、あるいは肺炎が心疾患や心不全の進展に関する未解明のメカニズムと関連しているのかどうかということはまだ定かではない。

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CONCLUSION

CAP での入院から退院した後には心不全予防用のケアプランが是認されるべきであるといえる。(例:心血管疾患のリスク因子に対する一次予防策)とりわけ肺炎と心血管疾患いずれのリスクも高い人(高齢者や喫煙者など)では、肺炎の予防に対する注意意識の増加(肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなど)も重要である。前の肺炎に続いて生じた頻呼吸や喘鳴などの病歴が他の気道感染症ではなく、心不全の新規発症によるものである可能性があることは患者とその主治医は念頭に置いておくべき知識であろう。