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kiyoshi-kurihara
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自己紹介
日本 IBM で SE を 14 年、ガートナージャパンで IT 業界アナリストを 10 年経験の後、弁理士兼 IT コンサルタントとして独立( 11 年目)
最近の主な業務内容
ソフトウェア開発会社 / スタートアップ企業向けの知財コンサルティング、特許出願代理
商標登録出願代理
VC 向けの特許調査/知財デューデリジェンス
特許訴訟事件の裏方支援
「 Yahoo! ニュース個人」を中心に情報発信
金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科客員教授
東京大学工学部卒、 MIT 計算機科学科修士課程修了216/07/11
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主な訳書
16/07/11
「ライフサイクル イノベーション」 ジェフリー・ムーア著• ビジネス書の古典的名著「キャズム」の著者による、企業がイノベーションを継続
的に行なっていくためのフレームワークの提言
「イノベーションへの解 実践編」 スコット・アンソニー他著• 「イノベーションのジレンマ」で知られるハーバードビジネススクール教授クレイ
トン・クリステンセンが設立したコンサルティング会社のパートナーによる著書• 一般企業における「破壊的イノベーション理論」の実践についての豊富な事例とフ
レームワーク、ツールによる解説
「デジタルネイティブが世界を変える」 ドン・タプスコット著• 「ウィキノミクス」の著者による社会トレンド分析• デジタル・テクノロジーに囲まれて育ってきた世代が成人になることで、社会・教
育・ビジネス・政治・家庭がどのように変化してきたかを膨大なデータに基づき分析
「戦略的データマネジメント」トーマス・レドマン著• データ管理テクノロジーではなくデータそのものにフォーカスした実践的ガイド• 著者の長年のコンサルティング経験に基づく豊富な事例と具体的指針を提供
「エスケープ・ベロシティ」ジェフリー・ムーア著• 「キャズム」のジェフリー・ムーアによるイノベーション指南書• 過去の著作の集大成として 13 の戦略フレームワークを提言
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最新の翻訳書のご紹介
16/07/11 4
『インテンション・エコノミー』(ドク・サールズ著)
”Linux Journal” のシニア・エディターであるオープンソース界のオピニオン・リーダーによる初の単著
企業が顧客の関心を惹くことが中心の「アテンション・エコノミー」から、顧客が購入の意思を企業に効率的に伝える「インテンション・エコノミー」へのパラダイムシフトを大胆に予測
CRM に対応する顧客側のカウンターパートVRM ( Vendor Relationship Management )の必要性を提言
「ビッグデータ」、 CRM 、ソーシャルの先にある世界を知るための本
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アジェンダ
Oracle vs Google裁判の概要
米国著作権法における「フェアユースの概念」
API は著作権法で保護されるべきか
516/07/11
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Oracle vs Google裁判の論点
特許権侵害Oracle が Sun買収に伴い獲得した特許権に基づく
Java ライブラリ実装コード本体の無断複製rangeCheck() (※わずか 9 行)
その他のドキュメンテーション
Java API の著作権侵害API は著作権で保護されるか?
API の無断流用はフェアユースにあたるか?
616/07/11
本日の中心トピック
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Oracle vs Google裁判のタイムフレーム
16/07/11 7
2010 年 1月 ( Oracle が Sun を買収)
2010 年 8月 Oracle が Google を北カリフォルニア連邦地裁に提訴
2012 年 5月 Google 特許非侵害の判決(確定)
2012 年 5月 API は著作権法の保護対象外との判決→ Oracle控訴
2014 年 5月 API は著作権法で保護されるとの控訴審判決
2014 年 10月 Google 最高裁に上告
2016 年 6月 Google の行為はフェアユースに当たるとの評決 ( Oracle控訴の方針)
2015 年 6月 上告棄却 ( API は著作権法で保護されることが確定)
← イマココ
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評決文
16/07/11 8
Google は、 Java2 SEの宣言コードと SSO を利用したことが著作権法上の「フェアユース」にあたると十分な証拠を示しましたか?
※ SSO: Structure, Sequence,Organization
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法律議論における注意点
解釈論と立法論は関連する部分もあるが両者を混同しないことが重要
本講演のほとんどは解釈論の話(最後にちょっとだけ立法論の話)
916/07/11
立法論解釈論
現在の法律(制度)をどう解釈(適用)すべきか
そもそも法律(制度)はどのようで
あるべきか
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著作権法をひとことでいうと ... 著作物(創作的表現)の利用について、一定期間の独占権を与えることで、社会全体における著作物の利用とのバランスを取りながら、著作者を保護するための法律
10
著作物の保護 著作物の利用
16/07/11
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著作権制度の大原則
著作物を創作した人には著作権(著作物の利用を独占的にコントロールできる権利)が自動的に生じる
この原則はベルヌ条約の要請によるものなのでほぼ万国共通であり、法改正によって原則を変えることは困難
利用とは「複製」、「公衆送信」、「譲渡」等を指す
権利を制限する規定が存在する(国により多少異なる)
著作権法は表現を保護するものであって、アイデアを保護するものではない(二分論)
表現とアイデアが常に明確に分離可能であるとは限らない(特にコンピュータープログラムについてはそれが言える)
1116/07/11
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「超そもそも論」
なぜコンピューター・プログラムは著作権法で保護されるのか?本来、著作権法は音楽・美術・文学等に関連した法律であり、技術産業とは縁が薄かった
日本の著作権法における著作物の定義「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」( 2条 1項1号)
1980 年代にコンピューター・プログラムの保護が急務であった時に、政策的に「文芸の著作物」として保護することが決められたわが国は特別法による保護を主張していたが米国の圧力働き
かけにより断念ベルヌ条約による国際的調和を早期に実現する以上、やむを得ない決断であったとも言える
1216/07/11
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著作権の例外規定:日本と米国の違い
16/07/11 13
例外
原則 著作物の利用(複製、公衆送信、譲渡等)には著作権者の許諾が必要
日本 米国
法文に明記された権利制限規定にしたがう
「公正な利用」であれば著作権が制限される
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米国著作権法フェアユース規定
第 107条 排他的権利の制限:フェア・ユース
..批評、解説、ニュース報道、教授 (..) 、研究または調査等を目
的とする著作権のある著作物のフェア・ユース (..) は、著作権の
侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを
判断する場合に考慮すべき要素は、以下のものを含む。(1)使用の目的および性質 (使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む )。(2) 著作権のある著作物の性質。(3) 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性。(4) 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響。
1416/07/11
実際にはこの要素が重要視されることが多い
要は、社会的にメリットがあると判断されれば著作権は制限され得る
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著作権例外規定の日米比較
1516/07/11
家庭でテレビ番組を録画しても著作権侵害にならない理由
著作権法 30条に「私的使用目的の複製は使用をする者が複製すれば自由に行なえる」と書い
てあるから
日本
通称「ベータマックス裁判」においてタイムシフト録画はフェアユースであるとの最高裁判決
が出されたから(後に、 Audio Home Recording Act等
で法制化)
米国
○ 予測可能性が高い 社会・技術の変化に迅速に対応
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フェアユースに関する Oracle と Google の言い分
16/07/11 16
参考: "How Oracle made its case against Google, in pictures" ( arstechnica.com )
Oracle の言い分Google の言い分
「 Google は Android から420億ドルもの広告料収益を受けている」
「フェアユースは本来、報道、教育、研究などに適用されるもの」
「 Google はスマホ市場での遅れを取り戻すために、 Java API を流用した」
「 API の再利用はイノベーションの源泉」
「 Java は( API を含め)最初からフリーでオープンなものとして構築された、これにより産業と社会は大きな恩恵を受けた」(証人ジョナサン・シュワルツ)「 Oracle はスマホ市場で競合しておらずライセンス収益を求めているだけである」
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API のコピーは「フェアユース」とすべきか
1716/07/11
Google側立場 Oracle側立場
API もソフトウェアであり、商業目的で勝手にコピーするのはフェアユース
ではない
互換プラットフォーム構築を目的とする限りAPI流用はフェ
アーユース
API の活用により新たなイノ
ベーションが生まれて産業が発達するのであればフェアユース
今回の陪審員の見解(おそらく)
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個人的感想
栗原の個人的立ち位置:コンピューター・プログラムの著作権侵害は、実装コードの
大量デッドコピーに限定されるべき
そもそも、ソフトウェアの SSO ( Structure, Sequence,Organization )は著作権法で保護されるべきではない(∵アイデアだから、他の工業製品とのバランスが取れないから)
互換プラットフォーム構築のための API の流用は絶対に制限されるべきではない(ただし、今回のケースは完全な互換プラットフォーム構築を目的としているとは言いがたい)
仮に、控訴審で Google が敗訴しても「互換プラットフォーム構築を目的としていればフェアユース」という判例が得られれば問題なし
1816/07/11
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論点 1:著作権保護除外とフェアユースの違い
仮に API は著作物ではない(または、著作物だが著作権法の保護対象ではない)とされた場合:あらゆるケースで、 API の流用が著作権法上の問題となるこ
とはない
今回のようにフェアユースとして権利制限された場合:著作権侵害が成立するかしないかはケースバイケースで判断
される
互換プラットフォームの構築が(いわゆるクリーンルーム開発であっても)「フェア」ではない(ゆえに、著作権侵害とされる)ケースがあり得る?
• どんなケース?:たとえば、スタートアップ企業のプラットフォームを大企業が「ハイジャック」して制御権を奪ってしまった場合(ただし、著作権でカバーすべき問題か個人的には疑問) 1916/07/11
TechVisor.JP
論点 2:「 API 設計」の苦労は報われないの?
クリエイティブで創作努力(「額に汗」)が必要な知的財産が常に著作権法で守られるわけではない例:
• データそのもの(市場調査データ等)• 大量生産工業製品(クルマの設計等)(意匠権・特許権による
保護はまた別)• プログラミング言語やプロトコルの仕様
そもそも著作権法でどのような保護を与えるかは、産業政策的に決定すべきという考え方が主流(インセンティブ論)そもそも情報の流通は自由であるべきであり、どうしても保
護が必要な場合のみ著作権を適用すべきという考え方人間の創作活動は天賦の「人権」として無条件に保護すべき
という考え方(自然権論)もないわけではないが、今日のデジタルの世界では適用しにくい
2016/07/11
TechVisor.JP
論点3: もしこの裁判が日本で行なわれていたら?
日本の著作権制度には「フェアユース」の考え方がほとんどない
著作権法 10条 3号に「(著作権による保護は)プログラム言語、規約及び解法に及ばない」との規定がある
Java API の仕様はプログラム言語の一部として保護対象外となる?
API の仕様はアイデアにすぎないとして著作物ではないとされる?
2116/07/11
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論点 4:陪審員裁判であったことの影響
米国の民事裁判は原告が要求すれば知財等の専門領域の裁判でも陪審員(=技術の素人)によって行なわれる裁判官は、陪審員評決を否定・修正することもできる
( JMOL )が、多くの場合評決がそのまま判決となる
陪審員のセンチメントに訴えることが訴訟戦略の重要ポイント
個人的感覚:Google が Oracle の資産を流用して不当に儲けているという
シナリオは一般人には響きにくいのでは? Google は便利なサービスを無料で提供し、 Oracle は企業向けに高額なソフトウェアを売っている会社というイメージが強そうなので不利では?
2216/07/11
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論点5:「標準の汚染」問題
Google が Java 標準とはずれた実装、標準の勝手な変更を行なうことで Java コミュニティにダメージをもたらしているのでは?という意見もある
栗原個人的見解: もしそのような問題が生じているのであれば、 API の著作権保護ではなく、もっと別の枠組み(不正競争、独占禁止)等で規制すべきではないか?
2316/07/11