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kenichiroyamada
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6章 戦略的マーケティング意思決定モデル
コンテンツ
・ イントロダクション ・ 市場参入・撤退の決定 早期参入の利点 市場シェアへの影響 意思決定 新製品タイプ別 参入タイミング 市場参入を遅らせた例
・ 決定木分析 選択肢の追加 情報の価値 応用
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※テキストに書かれている順序との相違があり、スライドの内容の殆どは意訳で加筆もあります。
・ 経験共有モデル (PIMS) ・ 製品ポートフォリオモデル BCGアプローチ GE・マッキンゼーアプローチ ・ 階層分析法 (AHP) ・ 競争 戦略のアナロジー ・ まとめ
イントロダクション
この章の主な内容:戦略に関する課題とツール ① 市場参入・撤退: → いつ参入(投資)、撤退(売却)するべきか → 決定木分析 ② 経験共有モデル: → 成功者から学び(ベンチマーク)、どのように己の戦略を改善するべきか
③ 製品ポートフォリオモデル、階層分析法 → どのように製品(ビジネス)をマネジメント(リソース配分と優先順位)するか
④ 競争: → 市場の特性と競争相手の反応の理解
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戦略的なマーケティング意思決定:長期的に最善な資源配分は?
① 市場参入・撤退: 早期参入の利点
早期参入の利点(ファーストムーバーアドバンテージ)
☺ 技術的リーダーシップの獲得: ・ 学習曲線における経験カーブ効果 ・ R&Dの成功、特許など
☺ 資源不足の回避: ・ 貴重な原料、流通チャネル、棚スペース、熟練した人員など
☺ スイッチングコストと買い手のリスク回避: ・ 現使用品からの切り替えを妨げる ・ 遅い参入はスイッチングコストの負担と、高価値の供給を求められる
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市場開拓・参入の意思決定は、参入時期によるメリットを考慮し行われるべきである。
① 市場参入・撤退: 市場シェアへの影響
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早期参入は、製品クオリティ、製品ラインの幅、価格、コストに作用し、 その結果、マーケットシェアに影響を与える。
参入時期の違いによるマーケットシェア: 市場開拓者 > アーリーフォロワー > レイトフォロワー
参入時期と市場占有率の通則:
1) 成熟した産業財の市場では、参入順位と市場シェアは負の関係 2) 消費財において、大まかに次の関係性が成り立つ
フォロワーの予測シェア市場開拓者のシェア = 1
フォロワーの参入順位
3) 市場が成熟するにつれ、市場開拓者のシェア優位は徐々に減少する
① 市場参入・撤退: 意思決定
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→ 参入のわずかな好機がある場合(例:競争が弱いが開発費高)、 低パフォーマンス製品をより速く開発するのが最適である。
→ 時期以外の点も考慮すべきである。 ・ 消費者の反応 ・ 競争相手の反応 ・ 市場の進化 など
新製品タイプ別 参入タイミング(産業財)
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オリジナル新製品(ORNPs): 技術革新などによって生まれた今までにない製品 リフォームド新製品(RFNPs): 既存品の改良(機能拡張、コスト削減など)
■参入時期の引延し期間と、参入から1年後の市場シェアの関係
市場の発展
・ORNPsは、技術的に可能でも、参入を遅らせた方がよい。
・RFNPsは、参入時期を遅らせれば遅らせるほど、1年後のシェアが下がる。
市場参入を遅らせた例(消費財: 太陽電池の例)
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1980年代、米国エネルギー省(DoE)は、 10年後の太陽電池の普及・拡大のため、企業への資金供給を検討していた。 しかし、当時の太陽電池技術は未だ発展途上であり(火災リスクなど)、調査の結果DoEは資金供給を5年遅らせた。 未成熟の市場には、バグなどの技術未発達によるリスクがある。 参入時期を遅らせることで、資金を効率的に活用できる事もある。
製品の革新度、市場の成熟レベル、財の種類により、ベストな参入時期は異なる。 判断手法
→ 決定木分析:次のスライド。 → その他:7章で解説。
決定木分析
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分析の手順: 1. 問題を構造化する 一般的な目的を定め、可能な選択肢(或いは制約)を洗い出す。 おこりえる結果を正しい順序に並べる。
2. 選択結果の確率(p)を決定 主観的な値、または過去の経験等。
3. 選択結果の価値(Payoff)決定
4. 分析実行 後ろ向きにおこりえる結果から選択肢の平均価値を計算していき、高いものを選ぶ。
決定木が有効な状況: 意思決定では一連の流れの中で、複数の選択をしなければならない。しかし外部の影響を受けるため、最終的な結果が定かでない。
Payoff - cost Payoff - cost
C
Payoff - cost
選択1 D
樹形図 D: デシジョンノード(選択可能) C: チャンスノード(選択不可能)
決定木分析:例1
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ある会社が新製品を作るべきか悩んでいる。 ※コストはゼロと仮定
選択肢 起こりえる結果 ($) 条件付確率
新製品を作る 高収益 (+100) 0.4
低収益 (-50) 0.6
新製品を作らない 収益なし (0) 1.0
樹形図 予想価値の計算
新製品を作った場合: C1 = 100×0.4 + -50×0.6 = 10
新製品を作くらない場合: C2= 0×1.0 = 0
∴「新製品を作る」選択のほうが良い
D = Max[C1, C2] = C1 = 10
決定木分析:例2
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新製品を導入前に$16を支払い、市場調査を行うか悩んでいる。 前提:過去の経験(既知)
収益 調査結果 条件付確率
高収益 p=0.4
良い 0.6
中間 0.3
悪い 0.1
低収益 p=0.6
良い 0.1
中間 0.3
悪い 0.6
個々の選択結果の確率を計算する
p(良い) p(中間) p(悪い)
p(高収益|良い) p(高収益|中間) p(高収益|悪い) p(低収益|良い) p(低収益|中間) p(低収益|悪い)
全確率の定理: 𝑝 𝐴
= Σ 𝑝(𝐴 ∩ 𝐵𝑘) = Σ 𝑝(𝐴|𝐵𝑘) 𝐵𝑘
ベイズの定理: 𝑝 𝐵|𝐴
=𝑝(𝐴|𝐵)𝑝 𝐵
𝑝(𝐴)
樹形図(市場調査を行った場合)
■ 「新製品投入を遅らせる」選択肢を追加する。 デシジョンノードに選択肢を追加し、チャンスノードに起こりえる結果を描く。 例) パイオニアになれず低収益の結果(p=0.2, Payoff=10) 例) より良いクオリティの製品を作ることができ高収益 (p=0.8, Payoff=200)
決定木分析:選択肢の追加
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C’ Payoff = 10
Payoff = 200
■ サンプル情報の価値: 会社が市場調査を行う事に対して中立な調査コスト 「C調査しない場合=C調査した場合」となるような額(この場合$14)
■ 完全情報の価値: “絶対当たる”架空の市場調査コスト(これ以上高かったら支払うべきでないというコストの目安)
即ち、𝑝 良い調査結果 高収益 = 1, 𝑝 悪い調査結果 低収益 = 1. 且つ、𝑝(良い調査結果) = 𝑝(高収益).
決定木分析:情報の価値
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C 新製品を作らない (p=1) C = 10
C
C 市場調査を行う
D
高収益 (p=1) 100 - R
0 - R
樹形図:完全情報の例 R = 完全情報のコスト 価値の計算
C調査した場合 = 0.4×(100-R)+0.6×(-R) = 40-R
C調査しない場合 = 10
∴R = 40-10 = 30
■ 機会費用(損失)の算出 行動を行わなかった時のコストは?
■ 大規模のプロジェクト、ビジネスレベルの意思決定 商品の収益が他の製品の収益に依存(相互関係)しており、 選択が複数の商品の売り上げに影響する場合など。
■ 財務会計指標の予測 年間収益、キャッシュフロー、ROI、現在価値、など。
■ 競合の反応を意識したアナウンスメント 値上げの公表、ベイパーウェア(アイデアのみで実現しない)の発表価値。 → 本当は作らないけど「こんな製品をつくります!」と発表するだけ。
決定木分析:応用
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② 経験共有モデル (PIMS*)
1:PAR回帰モデルの開発(ROIの重回帰分析) [EXHIBIT6.3]
2:市場選択、戦略と収益の関係性についての研究 [EXHIBIT6.4]
3:参加企業へのレポートの提供 [EXHIBIT6.5]
Cons:データの収集方法と分析モデルの構造に疑問 10年以上前のデータで現在の市場の何がわかる? Pros:戦略への実用ではなく、ベンチマークとしての使用。 どのような企業が収益を上げていたか、歴史を振り返るツールとして使える。
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1960年、GEの内部分析からスタートした研究。多彩な事業部門の経験データ(業績、経営指標など)を蓄積し、収益の決定要素を分析・提供する。
*「profit impact of marketing strategy」の略。1事業につき、約100項目のデータを聴取する。 1980年代中頃には、およそ450企業の3000事業のデータを有する。http://pimsonline.com/によると、参加事業数は変わらず。 インターネットなど他の情報ソースの発達と共に、あまり利用されなくなった(?) 。
③ 製品ポートフォリオモデル
モデルの分類
1.標準的な製品モデル: 市場ポジション(シェア)は、競争構造と製品ライフ・サイクルステージに依存すると仮定 BCGアプローチ、GEマッキンゼーアプローチなど
2.カスタマイズモデル: 次元数を事前指定せず、ユーザーが選択する 例)製品パフォーマンスマトリクス:業界売上、会社の売上、シェア、収益性など
3.金融モデル: 金融商品のポートフォリオモデル 許容できるリスクレベルでリターンが最大となるような商品の組合せを探すことが目的 ビジネスへの応用が試されてきたが、モデルが必要とするデータの性質上難しい → 収益率と、収益率の分散と、他事業との相関など
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BCGアプローチ (Growth-share matrix)
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ボストンコンサルティンググループが提唱した標準的な製品モデルで、縦軸「市場成長率」、横軸に「相対市場シェア」をとり、事業を分析。
●縦軸:各事業の市場成長率 図では10%を基準に高成長、低成長としている。
●横軸:相対市場シェア 業界1位との比で算出する。 例、0.4であれば、業界トップの4割に相当。 自社が業界トップならば2位との比をとる。
●円の面積:事業収益/総収益比
・市場シェアが大きいと、高収益性。
・高成長分野は多くの資金が必要。
BCGアプローチ (Growth-share matrix)
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時間と共に、事業の位置は変化 例、③→①→②→④ ほとんどの事業は、③から始まり、成功すれば①になれる。市場の成長がスローダウンすれば②へ移動し、製品ライフサイクルの終わりと共に、④となる。 4つの基本的な戦略 1. シェア拡大のため短期的な収益を犠牲
にする。 2. 現在のポジションを維持する。 3. 長期は気にせず、利益を収穫する 4. 事業を整理し、資金を他に割り当てる。
①スター (花形)
高成長のため、キャッシュが必要。最終的には金のなる木に変わる。
②キャッシュカウ (金のなる木)
低成長であるが、利益が大きく、他の事業の低収益を補う。
③クエスチョンマーク (問題児)
高度成長市場にあるシェアの小さい事業で、シェアを伸ばすためには多くの資金が必要。
④ドッグ (負け犬)
事業を継続していけるだけの収益はあるが、今後伸びるとは限らない。
メリット・デメリット
☺ 理解するのが容易。 ☹ シンプルすぎ。
GE・マッキンゼーアプローチ
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GE・マッキンゼーが提唱した、 BCGアプローチの欠点を補った標準的なモデル。「業界の魅力度」と「自社の強み」の2次元で分析。
●右上の3セル: 投資を増やし、成長を期待できる事業
●左下の3セル: 全体的に魅力度が低く、撤退を検討すべき
●対角線上の3セル: 全体的に魅力度が中程度で、選択的に事業強化の方針を検討すべき
メリット・デメリット
☺ 理解が容易。使いやすい。 ☹ 特定の事業だけに対して重要 な環境成分を見落とす可能性
GE・マッキンゼーアプローチ
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・ 各軸の要素は、重み付けされた任意の成分で構成される。 例) 「業界の魅力度」:市場規模、市場成長率、競争度など 例) 「自社の強み」:市場シェア、シェア成長率、製品クオリティなど
フォードの例(トラック事業における国別魅力度)
※BCGアプローチの
次元
・ 課題を論理的に整理できるが、選択肢の量的評価が困難なとき。 ・ 主観的なデータを、客観的なスコアに変換できる。
分析の手順: 1. 問題を階層として構造化する 選択肢と、評価基準(要因)を洗い出す。
2. 評価基準の重要度を一対比較する。 各階層ごとに、上の階層の要因に対しての重要度を9スケールで測る。
3. 評価基準の重み(重要度係数)と、選択肢の総合得点を計算。 手順2で得られた重要度行列を次のように定義し、重要度係数(w)を計算する。
階層分析法 (Analytic Hierarchy Process)
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選択肢を任意の評価基準でスコア化し、総合的に測る方法
最終目標
要因1 要因2
選択肢3 選択肢1 選択肢2
要因1,1 要因1,2
要因の全体的な重要度、 または選択肢の総合得点は、 重要度係数(w)の乗算の和となる。
ランチのお店は?
価格 料理のタイプ
和食 フレンチ
④ 競争
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・ 完全競争・独占 → ミクロ経済理論 ・ 寡占 → 殆どの市場には競争があり、シンプルな解決策はない 理由:競争相手と対抗手段の一連を考慮することはほぼ不可能
1:競争相手間の相互依存を無いものとする 古典的反応関数仮説:ライバルの行動は変化しないと仮定し、価格を決定。 Cons:非現実的な結果を推測するだけで、適切ではない。 Pros:おおよその市場の動きを見積もることができる。
2:相手は経済的且つ合理的で、最大効用となる行動をとる ゲーム理論:競争環境の根本問題の解決・理解に役立つ(かも)と考えている人は多い。 Cons:ゲーム理論の結果は、仮定、情報量、相手の分析手腕、未知の要因に依存。 Pros:競争構造・行動のインサイト発見のために重要である。
可能な手段を組合せ、競争環境を理解し最善策を立てるしかない。
④ 競争
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3:競争を生む8つの要因* 多くの産業に共通する要因で実証されているもの: 1)高い固定費は、競争を促進する。 2)安い保管コストは、競争反応を減らす。 3)需要が伸びている場合は、競争反応を弱くする。 4)大企業は価格競争を避ける。
競合企業の数とサイズ 生産能力拡張の可能性
市場成長率 会社の市場重要性
費用構造と保管コスト 競争者の多様性
製品差別化広がり 撤退障壁の大きさ
* マイケルポーター (1980), “Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors”, Macmillan, New York.
4:リアクションマトリクス あるアクションに対しての、相手のリアクションの弾性値(または確率)の表 例)企業1と企業2が、価格(P)と広告(A) で競争している。
弾性値(η)の推定
・ マトリクスの対角成分は、直接的な反応の弾性値 例)価格変化に対する、価格のリアクション ・ それ以外の成分は、間接的な反応で、ラグを伴う事が実証されている 例)価格変化に対する、広告のリアクション
④ 競争
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即ちマーケットは競争環境の下、企業の直接的な行動と、競合相手のリアクションの結果により成長する。
ηP1P2=b1、ηP1P2=b2、・・・