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人工知能学会誌 20155月号 特集「イノベーションとAI研究」 清田 陽司(株式会社ネクスト) 谷田 泰郎(シナジーマーケティング株式会社) 榊 剛史(株式会社ホットリンク) 1

人工知能学会誌 2015年5月号 特集「イノベーションとAI研究」

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人工知能学会誌 2015年5月号 特集「イノベーションとAI研究」

清田 陽司(株式会社ネクスト)

谷田 泰郎(シナジーマーケティング株式会社)

榊 剛史(株式会社ホットリンク)

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特集企画の趣旨

イノベーション創出の現場で直面している課題、実践されている方法論の共有

–役割の違いから生じる意見の食い違い

–シーズとニーズの間にある「壁」

→ 2つの「軸」を設定して、イノベーションの課題や解決策を俯瞰

– さまざまな役割の人々からの視点を網羅

–シーズとニーズが結びつくプロセス(シーズ主導、ニーズ主導など)

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記事リスト(8編) 吉井伸一郎氏(サイジニア株式会社)

「実ビジネスによって磨かれる学術研究」

森正弥氏(楽天株式会社 楽天技術研究所)

「ビッグデータ時代におけるE-CommerceでのAI技術活用」

福田一郎氏、鈴木俊裕氏、善明晃由氏、高野雅典氏、藤坂祐介氏(株式会社サイバーエージェント)

「サイバーエージェントのデータ活用のためのR&D体制と取り組み」

佐藤聡氏(株式会社クロスコンパス)

「企業における人工知能技術への取り組み」

後迫彰氏(シナジーマーケティング株式会社)

「イノベーションの事業化に関する一考察」

伊藤貴之氏(お茶の水女子大学)

「イノベーションのための産学連携と基礎教育に関する一考察」

榊、内山幸喜氏(株式会社ホットリンク)

「大規模データ解析における大学から企業への技術移転の事例分析」

谷田(シナジーマーケティング株式会社)

「コミュニケーション・イノベーションへの挑戦」 3

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特集全体で 浮かび上がってきたテーマ

• イノベーション創出にかかわる人々の役割

• シーズ主導 or ニーズ主導

• 人材・スキルの課題

• データの課題

• 産学連携の課題

• AIへの懸念の課題

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イノベーション創出にかかわる 人々の役割

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執筆者の方々の「役割」

• サイジニア(株) 吉井氏

大学の研究者(複雑系ネットワーク、レコメンデーション) → 起業 → 研究開発・営業・経営 → 上場

• 楽天(株) 森氏

AI技術とビッグデータに関連した領域のR&D組織(楽天技術研究所)のマネジメント

• (株)サイバーエージェント 福田氏、鈴木氏、善明氏、高野氏、藤坂氏

自社のビッグデータ活用を主な目的としたR&D組織(秋葉原ラボ)において、オープン

ソースソフトウェアを活用したインフラ構築およびユーザ行動データの研究開発

• (株)クロスコンパス 佐藤氏

AI技術商用化をミッションとした東工大発ベンチャーの起業 → deep learningを中心としたAI技術を多数の企業の問題解決に適用

• シナジーマーケティング(株) 後迫氏

企業向け営業の現場での潜在的ニーズの発見→企業内での新規事業の立ち上げと推進

• お茶の水女子大学 伊藤氏

IBM研究員(在外研究の経験)→大学教員、

多数の産学連携研究や学生教育、インターンシップ活動へのかかわり

• (株)ホットリンク 内山氏

ベンチャー創業→早期から大学からの技術

移転の重要性に着目、数多くの技術移転の事例を経験

※特集企画者(清田・谷田・榊)

大学・研究機関での研究活動 → 新興IT企業のR&D組織での研究開発

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役割によるAI技術への期待の違い (佐藤氏による観察)

• 経営層

–人件費削減、ベテランのノウハウ継承、企業内データの活用によるビジネス価値の創出、..

• 営業部門

–売上予測

• 技術部門

–データ特徴量の定義、特徴量の抽出

※「流れに取り残される」という危機感

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役割の異なる人々が 「共創」するためのヒント

• ビジョンの共有 – 産学連携研究: 大学と企業の双方が最終的に満足できる成果物のイメージ共有 (伊藤氏)

– 新規事業立上げ: ビジョンの共有と共感がなされる組織文化が必要 (後迫氏)

– 経営理念の重要性、営業・生産・R&Dなどの各部門が同じ理解をもつ (谷田)

• 議論のプラットフォームづくり

– 多様なスキルをもつ人材が理解しあう難しさに対処するため、組織横断的な情報共有の仕組み(ツールや社交クラブ的な仕組み)の提供が必要 (森氏)

– 漠然とした暗黙知的な共通理解ではなく、定量化・可視化されたデータを「軸」として設定し、議論を成り立たせることが必要 (後迫氏)

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• 多様なステークホルダを「巻き込む」仕掛けづくり – 製品開発のプロセスで「コンセプトづくり」→「プロトタイピング」→「本開発」という段階を踏みながら賛同者を増やしていく (後迫氏)

– 案件を通じて販売部門・生産部門を巻き込んで共同体験を重ねる (後迫氏)

– セミナーや広報を通じた地道な情報発信の継続によるブランディング (後迫氏)

– R&Dへのフィードバックと改善のプロセスが迅速に行われる体制の整備 (榊・内山氏)

– 大学が企業のインターンシップ、ハッカソン、セミナーなどの開催に積極的に協力する (伊藤氏)

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イノベーションをさまたげる 役割間の相互理解の「不足」

• 伊藤氏: 大学から企業への要望 – ビジョン共有 (前述)

– 成果物が使われるコンテキストなどの情報の共有

– 学会発表(=大学の重要ミッション)をさまたげない

• 後迫氏: 企業内の新規事業推進に特有の課題 – 既存事業が盤石である場合に感じる「肩身の狭さ」

– 既存事業の過去の成功体験がイノベーションを阻害する危険性

• cf. Govindarajan, V., Trimble, R.C.:Ten Rules for Strategic Innovators(2005)

– 過去の成功体験の「忘却」、既存事業のリソースの「借用」、成功確率を高めるための「学習」が必要

• 谷田: 企業内のコミュニケーションの問題 – 組織の肥大化によるエンジニア-営業の分断、時間軸の違い、研究開発活動への関心の低さ… • 経営理念の理解、企業風土の醸成、経営と研究開発の戦略の一貫性、…などが必要

– 研究開発部門の独立性を注意深く保つ必要性 • 内部コミュニケーション量だけを増やそうとすると、結果の見えやすい業務にリソースが割かれ、研究者の創造性を蝕む

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ビジネス発展のプロセス (シーズ主導 OR ニーズ主導)

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浮かび上がってきた「型」

1. シーズを出発点とした循環型

–シーズが小さなニーズを引き出すところから出発し、その事例から導かれたニーズが新たなシーズを発掘する

2. シーズ主導とニーズ主導の併用型

–状況に忚じて適宜組み合わせ

3. ニーズを軸とした多数のシーズの結集型

–ニーズの定義が先行

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(1) シーズを出発点とした循環型

• 福田氏ら – Hadoopというシーズが企業内ビッグデータを活用したいというニーズにマッチ → データが集まることで別にニーズが発掘され、そのニーズを満たすために新たなシーズを発掘

• 後迫氏

– 企業向け営業現場での潜在ニーズ観察から生まれたシーズが起点→ 製品展開によって企業のニーズを尐しづつ満たし、さらに新たなシーズを製品に取り込む

• 佐藤氏 – state-of-the-artな機械学習手法の企業向け適用のプロセスの中で、「最適な特徴量を見つける」難しさを認識 → deep learningというシーズの可能性に早い段階で気づき、リソースを集中投入できた

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(2) シーズ主導とニーズ主導の併用型

• 榊・内山氏

– 「研究体制」「シーズの状態」「ニーズの状態」によって、適切な組み合わせは異なる

– 小規模組織ではシーズとニーズの両方を理解できる人材が組織内に必要

– 大規模組織ではニーズのコントロールとR&Dへのフィードバックがなされる体制が必要 • コンサルティングチームの配置、研究者の出向など

• 谷田 – シーズ主導型研究は小さな戦力で夢を追う

– ニーズ主導型研究は企業親和性が高く投資対効果が期待できるテーマを選ぶ

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(3)ニーズを軸とした 多数のシーズの結集型

• 森氏 – 多種多様なAIシーズがE-commerceの現場ではすでに活用されている(自然言語処理、画像認識、音楽・音声認識、機械学習など)

– プラットフォーム型のサービスではニーズ主導になりやすい • 個別のAIシーズ適用がビジネスの経済圏として全体協調

– バーチャルアシスタント(AIシーズの統合発展)的アプローチの限界

• 吉井氏(シリコンバレーVCからの資金調達経験をもとに) – VCの視点では、「どんな問題を解決しようとしているのか」すなわちニーズの定義が最重要

– 技術シーズは必要に忚じて調達 • 極論すればシーズはコモディティ

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シーズ主導とニーズ主導のバランス

• 伊藤氏: 日本の大学の研究教育体制について – 海外と比較してシーズ主導の傾向が強い → イノベーションを生み出す実力不足の一因? • Visual Analytics(ニーズ主導の学術コミュニティ)の例: 日本でこの話をすると、各要素技術の理論的新規性だけに関心がもたれ、話がかみあわない

– 研究に着手する時期が異例に早い(シーズ志向の学生向き) • 海外では大学院5年間のうち前半は基礎教育中心

– ニーズ主導研究の価値も認めるような価値観の多様化が必要 • 「新規性は後からついてくる」

• 谷田: 企業のR&Dでシーズ主導研究に取り組む意義 – あるテーマが生む成果や効果を予測するのは難しい

– 研究者個人が信じる方向に走らせてみるアプローチも必要

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人材・スキルをめぐる課題

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ニーズ主導のイノベーションに 必要なスキル(伊藤氏)

• 日本の大学の学生には、「現実社会から問題を発見し解決手段を導く能力」が足りない?

– 海外: 「プロジェクト研究にて与えられる命題の多くは,当初は一見学術的価値がないルーチンワークであるかのように見える.しかしその中から問題を発見して解決することは可能だし,むしろその研究成果が就職活動時に高く評価されることもある.」

– 日本: 「採用面接に来た学生たちは,優秀で誠実でコミュニケーション能力も高い.ただ,現実社会から問題を発見し解決手段を導く能力が足りない.」

• 海外の教育体制の優れた点 – 演習科目の充実、インターンシップ体験の重視、基礎教育の充実

• 日本の教育体制の特徴 – 研究に早期から着手 → 尖った才能をもつ学生が活躍(シーズ指向)

– 学部3年生が就活に忙殺される(海外ではインターンシップ体験) 18

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日本の大学における現実解(伊藤氏)

大学のリソース不足問題は簡単に解決できないものの、弱点を補うための工夫はできるのではないか?

• 学生の実習体験のための産学連携 – インターンシップ体験した学生へのアンケート → ソフトウェア工学、ITシステム管理など、大学での研究活動にも役立つ経験をした

– 日本のIT企業でも、正社員がメンターとしてきっちり指導し、学生の本質的スキルを高める業務を経験するケースを多々見聞きする

– 教員としては、短期的には学生が離れるのは痛いかもしれないが、たくましくなって帰ってきてくれれば、教員にとっても収穫になるはず

– 共同研究だけでなく、インターンシップも産学連携の一環

• 基礎教育の堅持 – 基礎教育で得られる知識こそが、ニーズ主導イノベーションを下支え

– 学生アンケート「研究に着手するまで基礎知識の重要性が理解できなかった」 → 数学的素養を必要とするプログラミング実習の実施、IT基盤知識の重要性を実感できるインターンシップを勧めるなど

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女子大学に勤務して 感じること(伊藤氏)

• IT分野での女性の活躍は世界共通の課題認識 – ACMなどで女性にフォーカスした多数の論文や記事が発表

• お茶の水女子大でのアンケート – 情報系への進学動機: 情報科学への興味、就職状況の良さなど

– 海外と比べると、「周囲の勧め」「学習体験」という動機が尐ない? • 高校の受験指導で、文系への進学が優遇される傾向

• 学際的・融合的な興味が強い傾向がある? – ニーズ指向への興味

• コミュニティ形成の効果 – IT従事者の男女差: 「スキルへの自信」「言葉遣い」 (McKinney et al. 2008)

– 女子学生限定のインターンシップ、ハッカソンなどへの開催協力 → 理解・共感を得て、自信・モチベーション向上につながることを期待

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多様なスキルをもった 人材どうしの連携(森氏)

• 連携への障害

–組織の慣例上、多様な人材を一組織に集めることは難しい

–領域が異なる専門家どうしが相互理解することの難しさ

• 障害を乗り越えるため、連携力を底上げする

– 横断的な情報共有の仕組み

– 多様な人材が交流できる社交クラブ的な仕組み

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イノベーティブなサービスを新規事業として立ち上げるためのスキル (後迫氏)

• イノベーションにつながる課題の発見

–定性的な知見を多数集めて定量化できるスキル

• 多様なステークホルダーの巻き込み

–共同体験や支援を通じて関連メンバーをモチベートできるスキル

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研究者の「やる気」と 「創造性」の発揮(谷田)

• 研究者の課題: 「やる気」の源となる貢献につながる社会性の部分が見えづらい

→ それぞれの研究者の欲求を注意深く観察した上でのマネジメントが必要とされる

• 創造性を高めるための意識のコントロールや習慣づけ

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データをめぐる課題

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AI研究とデータの密接な関係

• 現代のインターネットビジネスの文脈でAI研究とビッグデータは密接な関係にある(森氏)

• Hadoopを中心としたデータプラットフォームが、コンシューマー向けサービスのイノベーションに大きな役割(福田氏ら)

• 「データを共有できるか否か」がイノベーションの成否に関わる – プライバシー保護の壁(佐藤氏)

– 議論を成り立たせる「軸」としてのデータの存在(後迫氏)

– 技術移転では「大規模データが社内ですぐに利用可能な形で蓄積されている」ことが成功要因の一つ(榊・内山氏)

• データの多様性と量がもたらす困難(森氏) – 機械学習の適用で過学習やノイズを回避するために試行錯誤が必要

– 計算量の爆発に対処するため、分散処理、HPC技術などを適用する必要性

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「データの科学」の時代(吉井氏)

企業のR&Dのあり方自体も変化している

• Netflix Prizeの事例

– Prizeの成果はサービスに採用されなかった

– 研究用に取り出されたデータサブセットに対して最適化を図っても、サービス運用の過程でユーザ行動パターンが変化するため、実用に耐えない

• AI研究が実世界のイノベーションにつながるために必要なこと

– 最初から実環境(=マーケットからのリアルタイムなフィードバックが得られる環境)での研究開発が重要

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産学連携をめぐる課題

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産学連携でイノベーションを 創出するための提案(伊藤氏)

• 日本の産業界への提案(前述) – ビジョンの共有(成果物のイメージ)

– 情報の共有(成果物が使われるコンテキスト)

– 学会発表を妨げない(大学のミッション遂行、学生の研究参加を阻害しかねない)

• 産学連携の多様化としてのインターンシップ – ニーズ主導のイノベーションの促進

– 学生への有益な体験の提供

– 大学と企業はお互いに歩み寄って建設的に行動すべき

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研究目的でのデータ提供(森氏)

• 広く知見を集めるためにデータ提供 – 一企業では所有データをとうてい活用できない

– プライバシーや権利関係をクリアした上で、アカデミアに研究目的で提供

• 国立情報学研究所(NII)リポジトリ – http://www.nii.ac.jp/cscenter/idr/datalist.html

– 楽天、ヤフー、ドワンゴ、リクルートなどが自社データを研究目的に提供

– 楽天のデータは70以上の大学・研究機関で利用されている

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大学から企業への技術移転を 促進するための行動指針案(榊・内山氏)

ホットリンク社での6事例を分析

• 成功要因

– 大規模データが社内ですぐに利用可能な形で蓄積されていること(前述)

– R&Dチームへの適切なフィードバック

• 行動指針案

– 容易にアクセス可能な形でデータを蓄積

– 小規模組織: 研究シーズとビジネスニーズの両方を理解できる人材を配置

– 中・大規模組織: R&D チームからシーズについて学び、顧客のニーズをコントロールするコンサルチームを配置

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アカデミアとビジネスの「軸」を 互いに近づける(吉井氏)

• イノベーションの理想と現実

–学術的レベル高&ビジネスにならない

–ビジネスになる&学術的レベル低い

• アカデミア軸とビジネス軸を固定して「面積を最大化」するのではなく、軸を互いに近づける

• アカデミア軸を深化させつつ、変動するビジネス軸とすり合わせする研究姿勢を貫く研究者が大学から登場すると面白い

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AIへの懸念をめぐる課題

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AIへのネガティブなイメージ

• フィクション作品などによって形成されたイメージが、人々に抵抗感を抱かせる? (佐藤氏)

• 「不気味の谷」: サービスへのAI技術適用が、顧客目線から見ると嫌悪感を誘発 (森氏)

–プライバシー侵害への不安

• AI技術が人間の活動領域に進出することで雇用が奪われる懸念 (森氏)

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プライバシーへの配慮 (森氏)

• 顧客とのコミュニケーション

–データ活用状況の開示

–利用許諾の明示的な取得

• 「不気味の谷」への配慮

–技術適用の仕方や内容に制限を設ける

• 必要とされる人材

–プライバシー問題、各種法令に詳しい人材

–顧客との対話戦略をもった広報担当の人材

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人間とAI技術のあるべき姿の再考 (森氏)

• AIに限らずIT技術は人の仕事を代替していく

• 人間とAIの新たなコラボレーションを探る必要がある

–人間の創造性を最大限に発揮するには?

• ヒント

–斬新なビジネスモデルの考案はAIでは無理

–動画配信サービスVikiの字幕付与: シーン分割は自動(音声認識)で、字幕は人間で

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まとめ

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AI研究の発展の歴史

AI研究の発達とビジネスの発達は切っても切れない関係

• 特徴抽出(定量化): データ量の増大が統計・確率モデルによる機械学習アプローチを一般化した

• 全体俯瞰(可視化など): 当初は工学的アプローチが主流 → 理学的アプローチ(物理学、確率)の導入で発展

• モデリング(知見獲得など): 当初は理学的アプローチ(ホワイトボックス)が主流 → 工学的アプローチ(カーネル法、deep learningなどブラックボックス手法)の導入で発展

• 忚用(実用サービス構築): AIの要素技術の発展が新たなビジネスを生み、そのビジネスが生み出すデータが別のAI要素技術を適用可能とするサイクル

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イノベーションとAI研究のフロンティア

• AI研究の適用範囲の中心にいるのはヒト

– ヒトが動くところには必ず適用可能性があり、実現しやすいところから範囲を拡大しつづけている

–ビッグデータはヒトが生きて行動することで生まれている

• ヒトの行動はディジタル化されていない部分のほうが圧倒的に多い

– そこに本質的な答えがあるだろう

– 新興IT企業のR&Dでは投資が難しいと感じる

– 大学と企業のスムーズな連携の土壌が形成されることによるブレークスルーを期待

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