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野外センサネットワークに関する開発研究 ~環境モニタリングにおける需要と自然環境への設置~ 東京農工大学大学院 工学研究院 大島 浩太

野外センサネットワークに関する開発研究(東京農工大 大島浩太先生)

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3G shield for Arduino. 3G Shield Alliance. Presentation by Kohta Ohshima.

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野外センサネットワークに関する開発研究 ~環境モニタリングにおける需要と自然環境への設置~

東京農工大学大学院 工学研究院

大島 浩太

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背景

無線通信機能を備え、プログラマブルな制御ができ、安価に利用できる様々な機器が登場

– Arduino, mbed, gainer, Funnel I/O(→Arduino Fio), wiring,SunSPOT,MOTEなど

– フィジカルコンピューティングやプロトタイピングで広く活用

無線センサネットワークでの研究利用とプロトタイピングに期待

– 小型なので設置しやすい、安価なので多く設置できる(故障時のリプレースも低コストで可能)

– 無線化することで、手動でセンサデバイスの計測情報を管理する手間を最小化

– 多数設置することで、より詳細な面的な環境情報が取得可能に

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目的

「環境モニタリングを対象とした、野外無線センサネットワークの研究開発」

– 研究としては、“自然環境の変化が通信効率に与える影響を考慮した無線センサネットワークの通信制御”がテーマ

– 実際に作ろうとしているものは、農学分野の研究利用を想定した、環境モニタリング用途の無線センサネットワーク

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「環境モニタリングにおける需要」

「野外に設置する場合の検討ポイント」

本発表の内容

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環境モニタリングにおける需要

無線センサネットワークの適用を想定している自然環境

環境センサは基本的に手動管理、故障時は目視で確認・対応が基本

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FM多摩丘陵

(波丘地)

FM津久井

(平地)

FM唐沢山

(山)

監視カメラ

様々な環境センサ

(スタンドアローン)

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環境モニタリングにおける需要

環境モニタリングシステムに求められること

利用者側のニーズ

– 手間をかけずに遠隔地から環境情報を取得したい

• 手動のデータ回収は面倒&機器故障時のデータ欠落

– 意味のあるデータを「測定」したい

• 「代表性」のある場所、「特定の物体の近辺」などへの設置

システムに関する要件

– バッテリ消費の抑制や充電

• 電源が確保しづらいためバッテリ駆動, 太陽光発電は日照量が…

– 不規則なネットワークトポロジーへの対応

• 測定対象が決まっていると、規則的な設置が難しい

– 耐障害性

• 故障を早期に検知し、対策を取りたい

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環境モニタリングにおける需要

環境モニタリングシステムの要件定義のために…

無線センサネットワークは、利用目的によって開発システムの要件が様々に変化

– 例1:電源が確保でき、設置ノード台数が少ない→Zigbee

による通信で十分

– 例2: 電源が確保できず、設置ノード台数が多い→Zigbee

では不十分…

予め要件を検討したうえで、適切に機能を設計する必要がある

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Coodinator (要電源)

Router (要電源)

End Device (電源不要)

Zigbeeノード種別

Star Mesh Cluster Tree ※End Deviceはスリープ可能

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野外に設置する場合の検討ポイント

耐環境性能

自然環境の変化が通信に与える影響

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耐環境性能

自然環境に設置する場合、機器の故障対策が必要

故障原因は様々

–雨: 水は電子機器の大敵

–風: 落下/転倒などの衝撃

–雷: 落雷が地面を這って電子機器に影響(対策難)

–動物: いたずらされる(対策難)

–虫: センサデバイス内に侵入…機器の動作や計測精度に影響

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耐環境性の確保

耐環境ボックスを利用

–雨: 対策可、風:きちんと設置すれば…

–雷、動物、虫: 抜本的な対策は難しい?

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自然環境の変化が通信に与える影響

2.4GHz帯(ISM帯)電波は水分吸収により減衰

– この周波数帯は、空気中の水蒸気や雨滴の影響は小さいが、周囲の水分量を含む媒質により吸収

–異なる天候下で実施した予備実験において、無線通信効率に顕著な差 • 気温、湿度、太陽放射、人間の活動、etc…様々な要因が影響を与える

–免許不要で安価に利用できるが…

→通信帯域、通信可能距離、被覆率に影響

計測実験を実施してみました

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通信効率計測実験の概要

自然環境に設置した通信効率計測用無線センサノードを長期的に運用

– 2011年05~2012年3月(継続中)

FM多摩丘陵(波丘地)内の平地に3台の計測用センサノードを設置

– 計測用センサノードは15m間隔で設置

• 経験的に良好な通信ができる距離を設定

– 電源は確保し、長期的な運用を可能に

– Linuxの豊富な計測ツールを利用するため、2.4GHz帯の802.11gを使用

– 通信帯域、信号強度、温度、湿度、気圧を計測

• 環境情報センサは一般的に入手しやすいものを利用

11 自然環境の変化が通信に与える影響

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計測用センサノード

耐環境ボックスにネットブックを格納し、ボックス外に暴雨対策を施したセンサデバイスを設置

※意外と壊れにくく、調査期間内は暴風→転倒→水没で1台だけ故障

項目 仕様

Model IdeaPad S10-2

OS Ubuntu 9.04

CPU Inten Atom 1.6GHz

RAM 1024MB

Wi-Fi 802.11b/g (ad-hoc)

Wireless Controller Broadcom BCM4315

Encryption none

耐環境ボックス: WB-13AJ (未来工業)、センサデバイスは自作のケースで耐環境性能を確保

Netbook

センサデバイス

12 自然環境の変化が通信に与える影響

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使用したセンサデバイス

USBインタフェースで接続, Arduino/Wiringでも簡単に利用できる

9600bps 8-N-1接続, 1Hzサンプリング

5cm

USBWeather v2

(SparkFun Electronics)

SHT15 (Temperature, Humidity)

SCP1000 (Atmospheric Pressure, Temperature)

TMP6000 (Light)

型番 計測対象 仕様

SCP1000 atmospheric pressure +/-150 Pascal

temperature +/-0.3 degrees C

SHT15 humidity +/-2 %

13 自然環境の変化が通信に与える影響

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調査地と周辺地形(波丘地)

東京都 八王子市・FM多摩丘陵(農工大演習施設)

計測実験実施場所 (起伏が少ない平地部分)

14 自然環境の変化が通信に与える影響

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計測機器の設置状況

15m

15m

Sensor Node C

Sensor Node B Sensor Node A

15 自然環境の変化が通信に与える影響

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Sensor Node C

Sensor Node B Sensor Node A

ノードの拡大図

固定柱に設置 移動型スタンドに設置

Sensor Node C

Power Supply

Sensor Node B

Power Supply

Sensor Node A 15m

Power Supply

15m

16 自然環境の変化が通信に与える影響

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計測ツールとタイミング

無線信号強度(Level): – iwconfig (Wireless-Tools ver.29)

帯域計測: – IPerf (ver.2.0.4)

使用言語: – Perl (サンプリングとタイミング制御)

– C言語 (センサデバイスとネットブック間のインタフェース)

1秒毎 1秒毎

IEEE 802.11g, 2.4GHz, ad-hoc, 15m/30m

iwconfig

Sensor Node Sensor Node

IPerf (Server)

iwconfig

IPerf (Client)

10秒毎 10秒毎

10秒毎

TCP

センサデバイス センサデバイス

17 自然環境の変化が通信に与える影響

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計測結果 -15m間隔(B~C)- 18

Aが台風による強風で転倒 Aが暴風雨による強風で転倒・故障(水没)

梅雨の期間は非常に不安定、それ以降は比較的安定

台風によるノード転倒中の通信帯域は非常に低く、1台故障中は向上

安定性の傾向はA~B, B~C間で類似(ただし最大・最小値, 変動幅は異なる)

緑線は1時間当たりの平均

黒線は全データをプロット

自然環境の変化が通信に与える影響

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計測結果 -30m間隔(A~C)- Aが台風による強風で転倒 Aが暴風雨による強風で転倒・故障(水没)

15m間隔に比べて30m間隔は全体的に不安定

台風による転倒中は通信帯域が低下

緑線は1時間当たりの平均

黒線は全データをプロット

自然環境の変化が通信に与える影響

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計測結果からの考察

1. 見通しの良い場所で同一距離に設置すると電波減衰傾向は類似

2. 設置距離が長い場合、通信効率は長期的に不安定

3. 長期間の通信効率変動には安定期間と不安定期間が存在

4. 1日程度の短期間の通信効率変動の平均値は安定

5. 障害が発生した場合、通信効率に通常とは異なる変動傾向

6. 遠方ノードとの通信の方が、近隣ノード間に比べて良い通信効率を示す状況が存在

7. 正常な通信が難しくなる程度まで電波が減衰する状況の発生

8. 通信効率と受信電力の変動傾向は類似

20 自然環境の変化が通信に与える影響

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Arduino 3Gシールドへの期待

Zigbee(802.15.4)やWi-Fi(数十m)に比べて、3Gは電波到達範囲が広い(数km)

– ネットワークインフラの整備なしに計測情報をインターネットに送信できる!

– SMSを使って、無線センサネットワークの管理者の携帯電話に直接メールできる!

GPS:位置を特定

GPS:正確な時刻の取得

価格・ランニングコストが手頃!

インタフェースが汎用的

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無線センサネットワークにおける利用に期待

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まとめ

野外センサネットワークの研究開発について、環境モニタリングにおける需要と、野外に設置する場合の検討ポイントについて述べさせて頂きました

「Arduino + センサー + 3Gシールド」という組み合わせは無線センサネットワークに重要な要件を満たすことができる

–長距離通信、ネットワークインフラレス、GPSによる位置と時刻の取得…

今後の3Gシールドの発展に大きく期待

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