くし 総診ニ ー レター No - tiiki.umin.jp ·...

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 皆さん、こんにちは。徳島大学の谷です。この度、とくしま総診ニュースレターNo.19を発行しましたのでお届けいたします。徳島大学大学院に徳島県の寄附講座として総合診療医学分野(設置当時は地域医療学分野)が誕生したのが平成19年(2007年)10月、そして徳島大学病院に総合診療部が誕生したのが平成29年(2017年)年4月であり、現在はその両輪で地域医療および総合診療に関わっております。総合診療医学分野は県南の地域医療に貢献しながら地域医療に情熱を持つ人材育成を目指した教育活動および研究活動に取り組んでおり、総合診療部は徳島大学病院において総合診療を実践しつつ、県内医療機関との診療連携に努め、総合診療専門医制度の基幹病院としての役割を担っております。 2018年4月に始まった新専門医制度において、19番目の基本領域専門医として総合診療専門医が加えられ、2018年度に2名、2019年度に1名の専攻医が我々の研修プログラムでの研修を開始しました。総合診療専門医取得後のSubspecialtyが課題になっていましたが、最近日本プライマリ・ケア連合学会が2020年度から新・家庭医療専門医制度を導入することとなりました。新・家庭医専門医制度は1階である総合診療専門医の2階部分に位置し、家庭医療のさらなる研修を行うことで、地域で家庭医療領域でリーダーシップを発揮できる人材を育成します。家庭医療学についての深い理解を基盤として、良質なプライマリ・ケアを提供することができ、WONCA(世界家庭医機構)の研修プログラム認証を受け国際標準の能力とキャリアを提供するものとなります。 新・家庭医療専門医以外のSubspecialtyも提示されています。ひとつは病院総合診療専門医であり、日本病院総合診療医学会が関わって、病院において高い総合診療能力を発揮する病院総合医を育成します。2019年9月に佐賀市で開催された第18回日本病院総合診療医学会でもその専門医制度が話題となっていました。もう一つは在宅医療と緩和医

療であり、それぞれ在宅医療学会及び緩和学会が関わることになります。さらに、総合診療専門医を取得した後、基本領域の18の専門医、すなわち内科や救急専門医を目指す道も現在検討されております。 総合診療に関わらず臨床医の道を進む若い医師にとって専門医資格の取得は欠かせない目標となるでしょう。ただ、自分自身が研修医であった頃を思い出してみると、必ずしもそれだけが目標ではないと思います。私は学生時代に柔道に励んでおりました。柔道には高段者を目指すという目標もありますが、若い頃はその欲はあまりなく、早く強くなりたい、大会で好成績を目指したい、鋭い技を身に着けたいという気持ちをより強く持っていました。段の資格の重要性は柔道の実力のピークを越えてから感じるようになったものでした。医療においても若い医師には一年でも早く専門医の資格を取るということよりも、基本的な診療能力をしっかり身に着け、患者さんに信頼される人格を形成することを優先し、しかも医師不足に困っている地域医療に貢献するという気持ちを高めていただきたいと願っております。 我々の教室では、総合診療専門医・家庭医療専門医の取得を目指しながらも、地域医療に貢献できる総合診療能力などの資質を備えた医師を育成しております。その指導の資格である家庭医療専門医も4名在籍しております。2017年4月に徳島大学病院に新設された総合診療部では県内の地域医療機関と連携した総合診療を実践し、総合診療医を目指す若い医師、研修医及び学生教育の拠点となっております。また、県内の地域医療機関を現場として、地域医療に貢献しながら自らの総合診療能力を目指すシステム作りも徐々に出来上がりつつあります。総合診療医・家庭医を目指したい医師の皆さんは、ぜひ我々の教室員になってその願いをかなえていただきたいと思います。皆さんの参加を心よりお待ちしております。

とくしま総診ニュースレターGeneral Medicine and Primary Care Department of General MedicineNo.19

2019年11月10日

徳島大学病院 徳島大学大学院医歯薬学研究部

ご 挨 拶

国際標準の総合診療医・家庭医を目指す徳島大学病院総合診療部/大学院総合診療医学分野

特任教授 谷 憲治

1

学生スタッフサークル(T-CoM 地域医療研究会)

講義・実習(総合診療・地域医療)

徳島大学病院プライマリ・ケアコース地域医療研修

① 南阿波総合診療専門研修PG② 徳島大学AWA広域総合診療  専門研修PG

総合診療専門研修プログラム

総合診療能力への関心・情熱

医学生 初期研修医 後期研修医(専攻医)

当教室は総合診療専門医の資格と総合診療能力の修得をめざす医師を募集しています。 当教室は総合診療専門医の資格と総合診療能力の修得をめざす医師を募集しています。専門研修の主体は県内の医療機関ですが、亀田ファミリークリニック館山や八戸市立市民病院、東京ベイ浦安市川医療センター、みどりヶ丘病院等で県外研修を行い将来の徳島の医療への貢献を予定している医師もいます。総合診療・地域医療に高い関心や情熱を持つ医学生は学生スタッフとして当分野とつながりを持ち、週2回のWebを用いた医局会や様々な全国的な研修会・実習に参加することができます。詳細は教室HPの教室員募集をご覧ください。→h�p://www.tiiki.umin.jp/

目指せ総合診療医

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とくしま総診ニュースレターNo.19 2019年11月10日

[編集・発行]

徳島大学病院総合診療部・徳島大学大学院医歯薬学研究部総合診療医学分野770-8503 徳島市蔵本町3丁目18-15 Tel/Fax: 088-633-9656/088-633-9687教室ホームページ: http://www.tiiki.umin.jp/ E-mail: taniken@tokushima-u.ac.jp

 海部病院では以下の医療活動を通して、徳島県南地域の貢献に努めている。〈臨床〉都市部のように多彩な診療科がない中、総合診療医としての対応領域の幅広さ・多職種連携の調整力をもって、患者の必要に広く応じた外来・入院診療を行っている。救急はどんな症例も断らず対応している。化学療法も地理的理由で諦めなくてもよいよう、都市部の専門診療科医師との連携により標準治療が当院で継続できる体制にしている。終末期患者のケアも、訪問看護師らと協働しながら外来・入院・在宅診療をシームレスに実践し、安心した療養や看取りの支援をしている。小児患者がきても大概は小児科医に遜色ない細やかな診療・指導ができる。また不登校などの思春期問題にも対応している。〈院外活動〉地域の健康問題の同定や改善には、地域に溶け込むことが重要と考え、地元イベントに参加したり、地域おこし協力隊と友達になったり、地元の介護職たちと有志の楽しい勉強会を立ち上げた。保健所や郡医師会と協力した在宅医療推進やアドバンス・ケア・プランニングの講演や、地元のこども園や学校での保健授業や保護者教室など、月1回以上の健康教室も実施している。〈研究・教育〉徳島大学研究室配属生とともに海部郡における在宅診療や終末期ケアの研究・発表を毎年行っている。地域医療研修のため毎月訪れる医学生・初期研修医たちには、講義や上記活動参加を通して楽しく地域医療に触れてもらい後進の育成に努めている。

 現在私は、週の2日半を美波病院での診療支援として派遣されています。美波病院は旧由岐町内にあり、南海トラフ地震での津波対策として免震構造の病院として2016年3月より高台移転した新しい病院です。入院患者様は高齢者が多く、感染症治療や悪性疾患のターミナルケア、高次基幹病院からの退院前のリハビリテーションのための入院が多くを占めております。 また前述のごとく、当地域は南海トラフ地震の際には徳島で最も高い津波が予想される地域の一つであり、美波病院は災害対策にも力を入れています。 地域住民との災害対策に対するコミュニケーションを図るためのイベントをこれまでも行ってきました。熊本地震、メキシコのチアパス地震、西日本豪雨災害、北海道胆振東部地震での私の緊急支援活動を積極的にサポートしてくださったのみならず、西日本豪雨災害においては病院看護師を岡山県真備町の避難所に派遣するなど災害現場経験を積んだ職員を育成、さらには南海トラフ地震を想定した災害訓練を定期的に行い、この11月には岡山県の倉敷中央病院や福山医療センターとの協働災害訓練も予定されております。 以上のように地域に根ざした新病院ですが、地方病院ならではの医師不足問題解消が現在喫緊の課題となっています。微力ではありますが、私の診療支援がその一助となっていたら嬉しく思います。

 徳島県中部の那賀町の地域医療に貢献している上那賀病院の鬼頭秀樹院長からの要望により、当教室の谷憲治教授が同院において月に一回の外来診療を行うことで同町の地域医療に貢献しています。谷教授の専門領域である呼吸器疾患と膠原病・リウマチ疾患の診療を主に担当しております。2016年5月から開始し、3年半が経過した現在、3時間で10~15名の患者さんの診療にあたっております。上那賀病院のような小規模の地域医療機関において最も求められる医師は総合診療医ですが、各領域の専門診療医が定期的な巡回診療を行うことでその溝を埋めることが可能となります。徳島大学病院から上那賀病院までは自家用車で片道2時間近い時間を要します。逆に考えると、那賀町の患者の皆さんはそれだけの時間を使って大病院の専門医に通院しているということです。月に1度の頻度ではありますが、呼吸器疾患や膠原病・リウマチ疾患を持つ患者さんにとっては地元に専門医が来てくれるということでわざわざ町外まで専門医を求めて受診しなくても済むようになったと言えます。また、上那賀病院は少ない医師数の中、徳島大学の医学生実習を積極的に受け入れていただいております。当教室では、医師不足に悩む地域医療機関に少しでもお役に立てるように頑張っていきたいと思っております。

教室員による地域医療貢献

徳島県立海部病院 総合診療科

河南 真吾 助教

美波町立美波病院 内科

鈴記 好博 助教

那賀町立上那賀病院

谷 憲治 教授

活動報告2019年4月~ 2019年10月

今年は京都市で開催されました。教室からは6題の発表を行い、谷教授は学生セッションの座長を務めました。スタッフでは河南先生がPC連合学会で、山口先生がWONCAでの発表を行いました。昨年度の研究室配属生4人も発表し、その中で大塚君が見事に優秀演題賞を獲得しました。全国の総合診療医・家庭医の皆さんとの交流を深めることができ有意義な2日間となりました。谷教授は、全国地域医療教育協議会の世話人メンバーとして、世話人会にも出席し、今年度の活動について議論を交わしました。

5月18日・19日第10回日本プライマリ・ケア連合学会学術集会

満開の桜のもと、徳島大学の入学式が行われ、医学部医学科の同窓会である青藍会による歓迎会で、今年も谷先生が新入生への歓迎の言葉を述べました。優れた診療能力を持った医師や世界レベルの医学研究者を目指しながらも、地域医療にも貢献できる人間性を備えた医師になれるように学生時代に様々な経験を積んでください。

4月6日 青藍会新入生歓迎会

今年も徳島大学病院卒後臨床研修センターが主催する徳島大学病院研修プログラム説明会にブースを出して参加しました。大学の各診療科とその関連病院とともに、総合診療部・総合診療医学分野が取り組む総合医の育成および総合診療専門医の育成システムを、医学生や研修医に紹介しました。徳島大学の医学生や研修医を中心に多数の訪問者がブースに立ち寄ってくれ、山口准教授、大倉助教、稲葉助教、近藤助教そして谷教授が担当して説明しました。

6月29日徳島大学病院プログラム説明会

第6回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会

中国・四国支部学術集会のシンポジウム「災害時における呼吸器疾患サポート体制」で当医局の鈴記好博助教がシンポジストとして、「南海トラフ地震 ―呼吸器疾患患者に想定される受難―」と題した講演を行いました。在宅酸素を提供する企業や徳島の行政の方 と々ともに、災害時における呼吸器診療の問題点とその対応について議論されました。

6月8日 第6回 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会中国四国支部学術集会

教室員である稲葉夫妻の幹事で、念願の教室員によるファミリーBBQを開催しました。全員のスタッフが集まれなかったのは残念でしたが、普段は会う機会の少ないスタッフの家族同士の楽しい交流会になりました。リーベフラウのおいしい肉とソーセージ、そしてアイスクリームは最高でした。また、お店が飼育しているヤギが双子の赤ちゃんを出産するというシーンにも偶然出会うことができ、スタッフと家族で生命誕生という感動の瞬間を見ることができました。

7月20日ファミリーBBQ

恒例の徳島地域医療教育研究会(第24回)をクレメントホテル徳島で開催しました。今回は、T-CoM医学生、地域医療に関わる先生方、当分野のスタッフ、計51名が参加し、今年の4月~6月の選択実習で当教室主催の地域医療実習を実践した医学科6年生8名による実習報告会を行いました。その後は懇親会も開催され、地域医療の現場と医学生教育に関わる先生方と地域医療に関心の高い医学生との交流の場ともなりました。

7月7日 第24回 徳島地域医療教育研究会

今年の西医体は大阪府堺市で開催されました。徳島大学医学部柔道部は、予選リーグを勝ち抜き、決勝トーナメントに上がりました。準々決勝、準決勝も勝ちあがり、決勝ではライバル愛媛大学を4対1で破り見事優勝を飾りました。昨年に続いての連続優勝、この6年間で4回の優勝を勝ち取りました。谷先生も徳島大学柔道部部長として応援にかけつけ、OBたちの応援も選手を後押しする形となりました。

8月11日西日本医科学生柔道大会

恒例の徳島医学会が徳島県医師会館で開催され、教室員で専攻医(総合診療専門研修中)の近藤先生が総合診療部の開設2年間の新患症例をまとめたポスター発表を行いました。また、今年の4月に総合診療部で研修を行った研修医2年目の多田先生が総合診療部が経験した金属アレルギーの症例報告を行いました。

8月4日 第259回 徳島医学会

第19回 日本病院総合診療医学会が佐賀市で開催され、谷教授と鈴記助教が参加しました。谷教授は研修医セッションの座長を務めました。当学会が主体として計画している病院総合診療専門医の資格は新専門医制度の総合診療専門医のSubspecialtyとして位置づけられる予定になっており、今回の学会でも大きな話題となっておりました。

9月14日・15日第19回 日本病院総合診療医学会・学術集会

徳島大学病院患者支援センターの副センター長を併任する谷教授は、センタースタッフの看護師、ソーシャルワーカー、事務職員とともに定期的に関連医療機関を訪問しております。学生教育の地域医療実習などで交流を続けている様々な県内医療機関とは、この取り組みを通じて診療面における病病あるいは病診連携を深める橋渡しの役割も担っております。

9月12日 患者支援センター医療機関訪問

徳島大学病院総合診療部と県立中央病院総合診療科が総合診療合同カンファレンスを定期的に開催しております。第4回目の今回は、県立中央病院の会議室で開催され、徳島大学病院総合診療部のスタッフ、県中のER/総診のスタッフとともに県中の研修医も大勢参加しました。総合メディカルゾーンの連携の推進とともに、県下の総合診療領域の発展にも努めてまいります。

9月20日総合メディカルゾーン総診カンファレンス

谷教授が主催を務める徳島リウマチ医の会も第52回目を迎えました。今回は当教室の研究室配属生(長瀬君、金森さん)と取り組んできた「関節リウマチの発症と進行に関わる環境因子」と題した発表を谷教授が行いました。最近の関節リウマチの治療薬の進歩には著しいものがありますが、本症の発症と進行に関わる生活環境因子を制御することで疾患をコントロールできる可能性があり、予防という点からも総合診療医が果たす役割と考えております。

9月19日 第52回 徳島リウマチ医の会

那賀町と鬼頭院長からの強い要望を受け、谷教授が自身の専門領域を生かし、3年半前から上那賀病院に呼吸器・膠原病専門外来を開設して月に1回の診療を行っております。この診療によって那賀町在住の呼吸器・膠原病患者さんは住居のある那賀町で専門診療を受けることができるようになりました。診療予定は那賀町の広報で毎月紹介されていることもあり、毎回多くの患者さんが受診されます。

10月3日上那賀病院診療

10月1日、徳島大学と地域共創センター主催の「徳島健康寿命からだカレッジ」が開講し、健康寿命の延伸とそれに係る地域ボランティアならびに地域リーダーの育成が始まりました。初日のこの日は、谷教授が県内各地から集まった35名の生徒に対して、基礎課程の授業として「加齢と病気・健康寿命と加齢と病気」と題した講義を行いました。

10月1日 とくしま健康寿命からだカレッジ

10月13日 - 20日 長野県台風19号災害緊急医療支援

10月24日・25日 第58回 全国自治体病院学会

当教室員である鈴記好博助教が、特定非営利活動法人AMDAの災害緊急医療支援で、台風19号で千曲川が決壊し大きな被害が出た長野県内で最大避難所である豊野西小学校に入り、10 / 13-20の間活動してまいりました。鈴記先生のチームは、避難者への健康相談の対応や避難所の環境整備を行い、災害関連死予防に努められました。

第58回全国自治体病院学会が徳島で開催されました。谷教授が、川人専攻医も参加のもと「地域医療教育の点と線」のタイトルで90分間の特別講演を行うとともに、宮崎大学の吉村学先生の特別講演の座長や地域包括ケアをテーマにしたシンポジストも担当しました。河南先生も一般演題の座長を務めました。

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