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睡眠時無呼吸症候群 Sleep Apnea Syndrome:SAS
日本人の5人に1人が睡眠障害!
• 厚生労働省の調査によれば日本人の5人に1人は何らかの睡眠障害を自覚しているということですが、半数以上の人が睡眠の質に満足していないともいわれています。睡眠障害にはさまざまなものがありますが、日本睡眠学会によれば不眠症の定義は 1. 夜間なかなか眠りにつけず、寝付くのに普段より2時間以上かかる。 2. 眠りに入っても夜中に目が覚めやすく、2回以上の覚醒がある。 3. 朝、いつもよりも2時間以上早く目が覚める。 4. 朝起きた時にぐっすり眠った感じがしない。これらの症状がしばしば起こって1ヶ月以上続くこととあります。また過眠症は 5. 日中に過剰な眠気または実際に眠り込むことが毎日の様に繰り返して見られる状態で、少なくとも1ケ月間は持続し、そのため社会生活または職業的機能が妨げられ、あるいは自らが苦痛であると感じるもの。
眠りの良い循環と悪い循環
悪い目覚め
日中に 眠気
昼寝 居眠り
睡眠欲求 低下
不眠
熟睡
よい目覚め
日中に 眠気なし
睡眠要求 増大
断眠効果 ○短い昼寝
○夜は暗めに
×カフェイン ×ニコチン ×テレビ,携帯,パソコン
×アルコール ×遮光カーテン
○朝ごはん
○活動
睡眠時無呼吸症候群 (Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは
• 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、無呼吸に伴う酸素不足と再呼吸時の急激な血液酸素濃度の上昇、無呼吸時の胸腔内圧低下、呼吸再開の際に生じる頻回の覚醒反応による中途覚醒や細切れ睡眠が特徴です。
• 酸素不足や急激な酸素飽和度の上昇は動脈硬化による心筋梗塞や脳血管障害を伴い、交感神経を介して高血圧や糖尿病の発症・悪化を引き起こします。
• さらに、繰り返す無呼吸に伴う胸腔内圧の低下は心筋肥大を生じたり、夜間の排尿回数を多くします。
• 一方、細切れ睡眠では寝不足となり、交通事故や職場災害の原因になります。
• このようにOSASはメタボリック症候群や生活習慣病の悪化、QOLの低下や大きな社会的な事故に関係します。 4
睡眠時無呼吸症候群 (Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは
• 睡眠中に10秒以上の呼吸が停止(無呼吸)が5回以上繰り返される病気です。
• いびきを伴う肥満者に多く,高血圧の合併率が高い疾患.
• 主に、いびきや昼間の過度の眠気(Excessive day>me sleepiness;EDS)や疲労感、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状がある。
• SASは生活習慣病と密接に関係しており、放置すると生命の危険に及ぶこともある。
• SAS特有の眠気は交通事故を起こす危険もあり、早期に適切な治療をすることが大切。例:平成の2.26事件
• 米国睡眠学会(AASM)の定義
– EDSもしくは閉塞性無呼吸に起因する様々な症候のいくつかを伴い,かつ無呼吸低呼吸指数 (apnea hypopnea index;AHI)≧5
• 無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea index, AHI) – 睡眠1時間当たり無呼吸と低呼吸を合わせた回数
平成の二.二六事件
• 2003年(H15年)2月26日、山陽新幹線ひかりで運転中の運転士が居眠りをして最高時速280kmで8分間走り続け、自動列車制御装置ATCが作動して、列車が急停車した事件は運転士が重症の閉塞性SASに罹患していたことが判明し, 社会的に高い関心を呼んだ。
• この事件で初めて多くの国民が閉塞性SASが昼間眠気の原因となる疾患であり、交通事故で社会的に大きな影響を持つ疾患であることを認識するに至った。
• この事件は日本の睡眠医療に極めて大きなインパクトを与え、国土交通省が閉塞性SASの啓発と検診に力を注ぐようになった。
OSAS 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
疫学 • 有病率
– 30~60歳の男性の4%、女性の2%(米国)
• 自覚症状のない睡眠呼吸障害SDBも含めると、
男性の24%、女性の9%
– 日本人は肥満が軽い割にSASやSDBが多い
• モンゴロイド特有の咽頭形態や顎顔面形態が発症に関与している
• 男性の3.3%,女性の0.5%
– 何らかの治療の必要な患者は200万人、しかるにCPAP患者10万人に満たない
– いびきの頻度19~21%⇒SASの潜在患者は5人に1人
9
" 自覚症状の有無を問わずAHI≧5のもの
" 閉塞型呼吸イベント優位のものを閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)
" 中枢型呼吸イベント優位のものを中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
" 睡眠時無呼吸症候群の殆どは閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)である
無呼吸(低呼吸)時に
呼吸努力も停止
中枢性CO2化学受容体の感受性変
化・循環遅延などが原因
気流
胸部
腹部
酸素飽和度
呼吸努力があるにもかかわらず
無呼吸(低呼吸)が起こる
睡眠時の上気道閉塞が原因
気流
胸部
腹部
酸素飽和度
睡眠呼吸障害(SDB)とは
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(JCS2010 )より
SASの重症度
AHI 眠気
正常 <5 なし
軽度 5≦ <15
あまり集中していないときに思いがけず眠気や気づかずに眠ってしまうエピソードがおこる(テレビを見ているときや読書,乗客として旅行しているときなど)
中等度 15≦ <30
多少集中が必要なときに思いがけず眠気や気づかずに眠ってしまうエピソードがおこる(コントロール不能な眠気がコンサート,会議,発表などに参加しているときにおこる)
重度 30≦ かなり集中が必要なときに思いがけず眠気や気づかずに眠ってしまうエピソードがおこる(コントロール不能な眠気が食事中,皆瀬注,歩行中,運転中などにおこる)
超重症 60≦
合併症
• SASによる睡眠中の低酸素血症や高炭酸ガス血症は、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病と密接な関係があり、様々な合併症を高率に引き起こすことが報告されています。合併症は多岐にわたり、高血圧、多血症、不整脈、虚血性心疾患、心不全、脳血管障害、糖尿病、肺高血圧症、インポテンツなどが代表的なものとして上げられます。
• 米国の調査では、健常人と比べSAS患者さんでは高血圧は2倍、虚血性心疾患は3倍、脳血管疾患は4倍、糖尿病は1.5倍発症する可能性が高いと報告されています。
• 肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症の「死の四重奏」に「SAS」を加え、「死の五重奏」!?
• Cheyne-‐Stokes 呼吸(CSR)はSDBの一種で,CSRを伴う中枢性SASが心不全患者の30~60%,OSASが5~32%合併する
1.Nieto FJ,Young TB,Lind BK.JAMA 2000;283:1829-1836 2.Mooe T, Rabben T, Wiklund U.Chest 1996;109:569-663 3.Bassetti C, Aldrich MS.Sleep 1999;22:217-223 4.Punjabi NM, Shahar E, Redline S.Am J Epidemiol 2004;160:521-530
OSASの症状
いびき 日中の眠気
起床時の
頭痛
熟睡感がない
眠っている間に呼吸が止まる
Epworthの眠気テスト(ESS)
状況 点数
1.座って読書しているとき(新聞、雑誌、本、書類など) 2.座ってテレビを見ているとき 3.会議、映画館、劇場などで静かに座っているとき 4.乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき 5.午後に横になって、休息をとっているとき 6.座って人と話をしているとき 7.昼食をとった後(飲酒なし)、静かに座っているとき 8.座って手紙や書類などを書いているとき
0、 1、 2、 3 0 、1、 2、 3 0、 1、 2、 3 0、 1、 2、 3 0、 1、 2、 3 0、 1、 2、 3 0、 1、 2、 3 0、 1、 2、 3
総点
0:うとうとする可能性はほとんどない。 1:うとうとする可能性は少しある。
2:うとうとする可能性は半々くらい。 3:うとうとする可能性が高い。 10点未満 正常 11〜14点 軽度の眠気 15〜18点 中等度の眠気 19点以上 高度の眠気
検査の流れ
1
測定項目:SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)
脈拍
2
測定項目:SpO2/脈拍/呼吸の状態/心電図
3
測定項目:脳波/SpO2/脈拍/呼吸の状態/心電図等
ポリソムノグラフィー(Polysomnography:PSG)
" 痛みは伴わない " 寝返りやベッド上で 起き上がる事も可能
" トイレに行くことも出来る
脳波 (EEG)
眼球運動 (EOG)
頤筋筋電図(EMG)
いびき音センサー(マイク)
パルスオキシメーター
気流センサー
睡眠状態
胸部バンド
腹部バンド
呼吸状態
体位センサー
下肢センサー
睡眠障害対処12 の指針
• 1 睡眠時間は人それぞれ,日中の眠気で困らなければ十分.
• 2 刺激物を避け,眠る前には自分なりのリラックス法.
• 3 眠たくなってから床に就く,就床時刻にこだわりすぎない.
• 4 同じ時刻に毎日起床.
• 5 光の利用でよい睡眠.
• 6 規則正しい3度の食事と,規則的な運動.
• 7 昼寝をするなら15時前の20~30分.
• 8 眠りが浅いときには,むしろ積極的に遅寝・早起きに.
• 9 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意.
• 10 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に.
• 11 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと.
• 12 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全.
厚生労働省精神・神経疾患研究委託費睡眠障害の 診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班平成13 年度研究報告書
睡眠の質を高めるための「7つの生活習慣」
1. 「眠る時間」より「起きる時間」にこだわる
2. 部屋のカーテンを10㎝開けて眠る 3. 朝食と昼食を1日のスケジュールから外さない 4. テレビのニュースは朝に見る
5. 夜遅い食事は少なめに摂る 6. 眠たくなったらベッドに入る 7. それでも眠れないときのストレッチ
宮崎総一郎 脳に効く「睡眠学」 角川新書
OSASの治療法
• 生活習慣の指導-‐-‐-‐肥満の是正 – ダイエット、運動療法、アルコールの制限、禁煙
• 睡眠衛生指導・睡眠習慣の改善 – 睡眠薬の禁止・制限、抱き枕(側臥位)睡眠
• CPAP (Con>nuous Posi>ve Airway Pressure)-‐-‐-‐在宅治療
– 睡眠時無呼吸症候群の治療器で、寝ているときに鼻にマスクを装着し、空気を送り込んで、気道を押し広げてのどの塞がりを防ぎ、睡眠時無呼吸を予防します。カタカナで「シーパップ」といわます。
– 持続的陽圧呼吸法
– AHI≧20 がCPAP の適応
• 耳鼻科的治療 手術的に咽頭や口蓋垂の形成を行い、上気道を拡張する方法です
• 歯科的治療 受け口になるようにマウスピースを作製し、咽頭部分を拡張します
CPAPの治療効果
• 無呼吸・低呼吸・いびきの消失
• 血液ガスの改善
• 睡眠の質の向上
• 日中の眠気などADLの改善
• 高血圧や狭心症など合併症の改善
閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)患者の生命予後
• 対象:無治療の男性OSA患者
• 方法:OSA患者をAI(無呼吸指数)が20以下の群(n=142)とAI が20を超える群
(n=104)に分け、8年間の累積生存率を算出。
• 結果:AI>20群は、AI≦20群より死亡率が高かった。
〔Jiang He,et al;Chest 94 9- 14 , 1988〕
p<0.05
AI≦20 (n=142)
AI>20回 (n=104)
睡眠障害は万病のもと! 睡眠時無呼吸症候群は億万病のもと!!!
生活習慣病 肥満 糖尿病 高血圧
脳血管障害
虚血性心疾患
2013年11月から当院でも睡眠呼吸障害(SAS)外来が始まりました.
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