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May 11, 2018 金曜5限第 203 演習室
(4:55~)
学部松島斉ゼミ(通年) 「ゲーム理論」
繰り返しゲーム イントロ、論点、問題提起など
以下必読
・ゲームアート第 2 章キュレーション2「経済の秩序と繁栄とインセンティブ」 ・ゲームアート第 11 章「繰り返しゲームと感情」
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1.協調と非協調 寡占市場: カルテル オークション: 談合 共有地の悲劇(Tragedy of Commons) ……
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囚人のジレンマ
C D C (cooperation) 1 1 - k 1 + g
D (defection) 1 + g - k 0 0
0g 0k g k
D は優位戦略:利得ベクトル(0,0)実現 しかし
戦略プロファイル(C, C)はパレート優位
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明文化された契約
「D をとったら罰金払え」
法的強制力が必要 cf. 国際間取引 違法な取り決め
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2.暗黙の協調
ゼミの基本テーマ
明文化された契約がなくても 自己実現的に(Self-fulfilling、均衡行動として)協調できるか?
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長期的関係
今日 Defection すると Instantaneous Gain を獲得 しかし明日以降相手から報復を受け Future Loss が発生
「Instantaneous Gain < Future Loss」
⇒ 暗黙に協調しよう(C を選択しよう)!
C D C (cooperation) 1 1 - k 1 + g
D (defection) 1 + g - k 0 0
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3. 事例、歴史
寡占市場におけるカルテル:鉄道、石油、ビタミン…… オークションにおけるカルテル(談合、DANGO) 村八分(Ostracism):地中海交易(マグリブ商人)、株仲間 法制度ビジネス:シャンパーニュ大市(中世欧) …………
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・Marshall and Marx, The Economics of Collusion: Cartel and Bidding Rings (2012) ・ 「市場を創る」マクミラン第 5 章(DANGO) ・ 「コアテキスト経済史」岡崎哲二第 5 章(マグレブ商人、株仲間) ・ Klemperer, Auctions: Theory and Practice, Part D(電波オークションにおけるカ
ルテル) ・ A1 メカニズムデザイン:オークションにおけるカルテル
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4.モニタリング
相手の選択が全く観察できないと協調不可能
完全モニタリング: 観察される 不完全モニタリング: 観察されない。しかし、何らかの情報を観察できる 私的モニタリング: 情報は私的に観察 公的モニタリング: 情報は公的に観察 頻繁なコミュニケーションで情報共有 狭義の暗黙の協調: 私的情報、頻繁なコミュニケーションなし カルテル破り(Secret Price Cuts) 明示的な暗黙の協調: 公的情報、あるいはひんぱんなコミュニケーション ただし法的拘束力のある明文化された契約なし
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5.独占禁止法(反トラスト法、競争法)
現実社会において、カルテル維持のためには 公的情報あるいはひんぱんなコミュニケーションが不可欠とされている
コミュニケーションが発覚すると厳しい処分
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6.トリガー戦略(Grim-Trigger Strategy)
反トラスト法が想定している 現実でとられているとされている戦略パターン
・自分から率先しては D を選択しない ・相手が C を撮り続ける限り C を選択する ・相手が D をとると以降自分は D を撮り続ける
あるいは 有限期間トリガー戦略(レジームスイッチ)
Cooperative Phase と Punishment Phase(有限期間(D, D)プレイ)
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6.繰り返しゲーム
フォーク定理 長期的関係においては
様々な戦略行動、様々な利得配分が ナッシュ均衡(完全均衡)として成立する
暗黙の協調が(非協力ゲームの)均衡として成立 しかし均衡は複数存在(協調、非協調)
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完全モニタリング: Folk Theorem OK 不完全公的モニタリング: Folk Theorem OK 不完全私的モニタリング: Folk Theorem OK!!!
Takuo Sugaya : “The Folk Theorem in in Repeated Games with Private Monitoring https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=sites&srcid=ZGVmYXVsdGRvbWFpbnx0YWt1b3N1Z2F5YXxneDoxMTMwOTlkNDhhNWM4Yw
ひんぱんなコミュニケーションがなくても、フォーク定理が成立!
現実の反トラスト法は今のままでいいの?
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7.実験経済学によるアプローチ(1)
Axelrod(進化生物学者)による Round Robin Tournament Experiment
被験者に繰り返しゲームの戦略を提案してもらう
PC で対戦させる
どんな戦略が一番強い? トリガー?
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Tit-For-Tat Strategy(しっぺ返し、TFT) が総当たり戦で一番パフォーマンスがよかった!
TFT とは?
相手が前期にとった行動とおなじことをする C⇒C D⇒D
大評判:TFT が世界を救う!
しかしゲーム理論家からはブーイング
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8.実験経済学によるアプローチ(2)
Laboratory Experiments
被験者を集めて、実際に繰り返しゲームをプレイしてもらう (時間を通じて C か D かを随時入力してもらう)
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Kayaba, Matsushima, Toyama, “Accuracy and Retaliation in Repeated Games with Imperfect Private Monitoring: Experiments”, 2018 実際の選択の入力パターンから どのような戦略をとっていたかを割り出してみる どのような戦略が多くの被験者の行動にフィットするか? トリガーか? TFT か?
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Generous Tit-For Tat(寛容なしっぺ返し、GTFT)
相手が C をとった時の方が D をとった時より C を高い確率でとる
(相手が D をとったからといって必ずしも D をとるわけでない寛容な態度)
非常に多くの被験者が GTFT をプレイしていた!
現実と理論、現実と実験に隔たり(理由は???)
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9.長く続くカルテル、終息するカルテル
Igami and Sugaya, “Measuring the Incentive to Collude: The Vitamin Cartels, 1990-1999” https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2889837
カルテル外企業(中国企業)が参入すると カルテルこわれやすくなる
カルテル内に暗黙の掟?
カルテル外企業の参入によって掟が壊れる?
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10.有限?無限?
長期的関係が永遠に続く:物理的には非現実的
「長期的関係が永遠に続く」という Perception(知覚)
cf. 「長期的関係には終わりがある」という Perception
後方帰納法により暗黙の協調は不成立: 最初から協力しないが唯一の均衡
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Reputation Theory(評判のゲーム理論) 有限回で終わりがある perception でも協調が起こる
Tadelis Chapter 17 “Building a Reputation”
相手は私をどう見ているのか? 「トリガー戦略をプレイする人」?(自分からは D をとらない、いい人)
あるいは 「合理的な人」?
C を撮り続けることで
相手に自分のことをトリガー(よい人)と思い込ませる よりよい暗黙の協調の関係作りの一案
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11.評価(評判?)の経済学
事前の評価 VS 事後の評価
評価のタイミング
評価をコントロールする (ネットオークション、ウーバー)
不必要な規制の撤廃、新しい政策立案
小泉構造改革特区 VS 安倍国家戦略特区
(社会実験(RCT)、評価委員会)
サンスティーン「シンプルな政府」 ウォーラー・ヤンガー「評価の経済学」 ゲームアート第 12 章 ミルグロム・ロバーツ「組織の経済学」第 5 章(デビアス社のダイヤモンド原石取引)
とりあえず以上
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