山と電気の風景論...

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電気現場 2017・184 電気現場 2017・1 85

新年おめでとうございます。今年の干支は酉年です。引き続き,日本の雄大な山岳と,電力現場の風景を「一石二鳥」に結びつけ,時に温故知新的に日本の地形,文化,歴史まで「鳥瞰」できたら幸いです。

東京電力,関西電力エリアの「京」の名峰本号は,古代・大和から京都・奈良の西の都が位置する由緒ある紀伊半島・大峰山。対照的に「西京」から遷都して鎌倉・江戸に坂東武者が築いた「東京」の伊豆半島最高峰・天城山。この対照的な二座を特集したい。規模,歴史は異なるが,両座は,関西電力,東京電力エリアの名峰である。また両峰とも海岸線や河川が近く,海の幸,山の幸に恵まれており,近年脚光を浴びるミニ水力などを含め自然の地形を活用した発電所が多い。ただし台風豪雨や地震津波などの影響も受けやすいため,電力会社は周到な対策を講じなければならないだろう。●天城山の特徴天城山は伊豆半島の中心部に聳える東西に広がる連山。南端の下田街道からは沼津,小田原に立ちはだかる山峰であった。伊豆半島の天城越えの歴史記録は平安時代で比較的浅い。西の古峠から新山峠に登り河津川に下った記録がある。天城は鎌倉幕府,室町幕府に近い場所でもあり,京都の公家政権から坂東の武家に権力が移り志と実力を蓄えた源氏,北条氏らも商人らとともに往来したのだろう。江戸幕末には維新の志士も

登り,艦隊の米国総領事ハリスも下田玉泉寺から江戸へと天城山越えをした。一方で穏やかな気候と温泉郷に恵まれ,川端康成「伊豆の踊り子」でも天城越えのシーンは印象的だ。周辺には文化人も多く住む。私の思い出といえば,学生のとき大学ゼミで,戸

田に泊まり指導教授や仲間と天城山を眺望しつつ飲み明かしたことや,電力マンとしてフランス原子力庁のご夫妻を車で霧の天城越えをして冷や汗をかいたことなどがある。今回のヤマレコは中世以降の東国武士,近代の文

化人が歩んだ天城山の歴史をかみしめつつ正月休みに出かけた。●大峰山の特筆一方,邪馬台国の最有力地で紀伊半島の大和朝廷,

奈良・京都・難波の皇族・公家・都人・高僧などが往来した修験山の代表は,吉野川から金剛峯寺,熊野古道に連なる大峰山であろう。日本最古の修験山とも言われるゆえんだ。本山は女人禁制の聖地と当時は定められたが,いま本ルートは「山女日記」ドラマのように多くの女性登山客も多い。私も電力マン時代,関西電力に出張しつつ,週末

に吉野の名刹屋敷を訪ね緑のなかに満開の山桜を見入った。また,紀伊半島は電車で,途中のぶら歩きをしつつ一周したこともある。伊勢から入り,新宮や白浜に泊まり,熊野古道を歩き,那智の滝を見て,串本・潮岬も寄った。紀伊半島は日本の地形の変化,歴史の悠久さ・文化の深さが溢れており,行く時々で歴史の息吹を感じ圧倒された。

この紀伊半島は,広大なため全部を見て回るのは困難なため,大和の歴史で修験山として最高峰の大峰山を登山することにした。百名山として人気の大台ヶ原をトレッキングした翌日,大峰山に挑戦した。

天城山の正月トレッキング 1406m (平成26年1月3日)朝10時過ぎに伊東駅からバス停で登山口・天城ゴ

ルフ場11時5分着。体操しウール帽をかぶりストック持ち厚着して出発。山道は好天だが風が吹き,雪が積もり寒い。帰路の裏山コースのトレッキングは日陰で寒く,尻餅三回。体力を使い心地よい汗をかいた。【行程】標高1406m,距離9.5km,標高差362m。11:08 登山口・天城高原ゴルフ場(バス停)。11:23 四辻。11:55 万二郎岳着(1299m)。

二組と10分,山談義。六人家族,山女・山ボーイ。初春の富士山眺望。

12:50 天城山(万三郎岳)。14:05 四柱。14:30 四辻。14:45 登山口。

下山後,クラブハウスで洗面。寒く,熱いカフェラテを飲む。寒風のなか積雪の富士山遠景に。帰りは15時頃発,16時過ぎ伊東駅へ。初春の伊東の野天風呂は正月休みのため入れず「残念,次回に」。市場で鮮魚や干物を手土産に。当日は積雪が

30センチ程度で固まっていたため比較的早く登れた。しかし時には,季節外れの1メートルを超す大雪の場合もあり,天気予報に注意が必要だ。

大峰山への晩秋スノーウォーク 1914m (平成25年11月16日)下市口駅からレンタカーで約一時間で登山口に着

く。駐車場は満車で50台ほどと大峰山の人気ぶりがわかる。信仰の弥山,最高峰の八経ヶ岳を往復。登山口か

ら杉林の道を川沿いに進み,木道橋を渡ると,ひらすら急登。土根道,笹道を経て,修験道を復活させた高僧・聖宝の宿跡を過ぎ,徐々に滑りやすい雪の木道となり弥山まで慎重に進む。弥山神社からは鹿よけの防護柵を2つ越えで八経ヶ岳頂上へ。山小屋は無人であったが,多くの登山者が,小屋

内で談笑しつつ昼食をとっていた。【行程】標高1915m,距離4.5km,標高差821m。5時

間8分(休憩含む)。余裕みて往復7時間程度が一般的。9:20 登山口(行者還トンネル西口)登山届け。10:20 奥駈道出合(5分休憩)。11:27 弥山小屋。11:58 大峰山(八経ヶ岳)頂上(15分軽食)。12:35 弥山神社参拝。

途中,石畳分岐点で10分休憩。14:28 登山口(行者還トンネル西口)。

山と電気の風景論 ⑩「西京」大峰山&「東京」天城山~古代公家・高僧、中世武士・文人の修験道~

セリングビジョン㈱ 代表取締役 岡部 秀也

奈良大和の山岳地帯。大峰山から遠景。 天城山から,伊豆半島相模湾,下田方面を遠望。

弥山神社鳥居。弥山小屋から撮影。

雪の積もった大峰山〈八経ヶ岳〉頂上。

天城山山頂〈万三郎岳〉。

正月,天城山から「一富士」を眺望。

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