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NTT技術ジャーナル 2018.140

スポーツ ・ 観光をテーマとした ビジネス創出

NTTコムウェアでは,2017年度より新規ビジネス領域として,スポーツ ・ 観光をテーマとしたビジネス創出に取り組んでいます. NTTコムウェアは通信サービスを支えるための大規模システムの開発を行うSIerとして,これまで受託型のビジネスを行ってきましたが,受託型ビジネスの成熟とともに新たなビジネスへの展開が必要となってきています.

そのような中,NTTグループは2020年に向けてスポーツの分野で新たなビジネス展開が望まれています.また,外部環境においても,「日本再興計画2016」に示されたように,スポーツビジネスの市場規模は,2025年までに現状の3倍となる15兆円に向けて成長が促される分野です.

一方,観光の分野では2016年に初めて2000万人を超えた外国人観光客が,その後も増加を続け数年以内には3000万人,そして2025年までには,政府の目標である4000万人を超えると予想されています.外国人観光客によってもたらされるインバウンド需要も2025年ごろまでに現状の3倍に成長するといわれており,スポーツビジネスと同様に今後,急成長が見込まれる市場となっています.

この2つの急成長市場にアプローチすることで,NTTコムウェアとしての今後,10年,20年を担う新しいビジネスを創り出すことを目標に活動をしています.

最近のトレンド

2016年リオデジャネイロオリンピックでは,360度カメラの試験導入など新たな技術のチャレンジがなされました.このように,新たな取り組みが具現化され競技の開催と同時に展開されるのが醍醐味でもあります.

2020年に東京で開催されるビッグイベントでも最新の技術〔ロボット,ドローン,AI(人工知能)など〕を活用した,驚くようなサービスが展開されるかもしれません.

最近では,スポーツ観戦の際にICTを組み合わせる事例が多く見られるようになってきており,選手の活動量のトラッキングや複数台のカメラを活用したマルチアングルでの映像視聴などのサービスもさまざまな場面で実績が出てきています.NTTグループでもサービス展開の協力などを通じて,皆様が利用可能なサービスとするためのサポートを実施しており,これらの中から新たなスポーツの視聴体験を提供するサービスが出てくる可能性があります.

さらに今後の成長分野として注目されているのが,参加型のスポーツです.これまで,プロ野球やJリーグのように,日本トップ,世界トップレベルの技術を持った限られた選手が競技を行い,それを観戦するスタイルがスポーツビジネスの定番となっていましたが,近年の健康志向などを背景に,競うスポーツではなく,参加して楽しむスポーツが脚光を浴びています.特にスポーツツーリズムと呼ばれるような,スポーツイベントと旅行が組み合わさった新たな形態も登場しており,競技人口の拡大とともに市場が成長しています.具体的なスポーツでは,マラソンやトライアスロン,自転車レースなど,その土地ならではの地形,環境を活用したスポーツが人気です.例えば,沖縄県の宮古島では毎年,マラソンやトライアスロンが行われており,島という地理的な特徴からイベントへの参加者は前日から宿泊し,イベント翌日まで滞在し島民との交流を図るなど,単にスポーツを行う以上の体験を得られると人気になっています.

NTTコムウェアのサービス紹介

NTTコムウェアでは,スポーツの観戦体験,観光での感動体験などをICTを活用してより高めるためのサービス

from NTTコムウェア

スポーツの新たな楽しみ方をICTで変革

NTTコムウェアが取り組む新規ビジネス領域のスポーツ・観光関連ビジネスは,2020年のビッグイベント開催をきっかけに拡大が予想されている領域です.スポーツビジネス,インバウンドビジネスなどNTTグループをはじめ,さまざまな分野で話題になっています.ここでは今後盛り上がっていくスポーツ・観光関連ビジネスについて世の中のトレンドとともに,NTTコムウェアのICT活用の取り組みを紹介します.

NTT技術ジャーナル 2018.1 41

を展開しています.その1つが,「スライドナビ」です(図1).この技術は,多数のスマートフォン,タブレットの画面を容易に同期させ,必要なコンテンツを配信することができる技術です.特に専用アプリケーションなどを使用せずに,観客自身の端末を利用できるため,専用端末や特別な環境が必要な類似サービスと比較して,導入や維持にかかるコストを削減し,多くのシーンで利用可能となるところが特長です.

あらかじめ指定されたURLに接続を行うと,コンテンツが表示されます.表示するコンテンツは,端末の言語設定または言語選択によって,複数の言語を切り換えて表示を行う,いわゆる多言語表示が可能です(図 2).また,非同期モードでは表示されているコンテンツを観客自らが自由に閲覧できますが,制御用端末で同期モードを選択すると,コンテンツの表示制御が制御用端末と同期をとることとなり,一斉コンテンツ配信が可能となります.

つまり,スマートフォン,タブレットを活用したコンテンツ同期型での情報配信が可能となり,スポーツ分野ではスタジアム内での会場案内,競技ルールの配信などが可能となります.また,観光分野では劇場や博物館などでのシーンや展示物のデジタル解説が可能となります.特に「スライドナビ」では,大規模なスタジアムなどでの利用を想定

した多数の端末(数千〜数万の端末)を同時に制御するための技術や,劇場などの利用を想定して観客や演者の妨げにならないように照度 ・ 明度をコントロールするなどの特許出願中の技術が多数組み込まれており,スポーツや観光分野のさまざまなシーンで利用できるサービスとなっています.「スライドナビ」はすでにいくつかの劇場で導入されて

おり,外国人向けの字幕解説や観劇ガイドなどに活用されています.これまでの取り組みのうち2つの事例を紹介します.

サービス活用事例

■スポーツ関連の事例2017年2月に札幌市を会場として実施された「冬季ア

ジア大会」では,アイスホッケー競技におけるルール解説として利用されました.アイスホッケーは,氷上の格闘技と呼ばれるほど激しいスポーツとして有名ですが,ルールが複雑で,競技の楽しみが伝わりにくいという課題がありました.そこで,「スライドナビ」サービスを活用してルール解説を導入することで,冬季アジア大会を観戦する普段アイスホッケーを見慣れていない観客が楽しむための情報

図 1  スライドナビの概要

スポーツや演劇をより楽しむために,手元のタブレット・スマートフォンを活用して,今起きていることを手元で解説することで感動体験をお届けします.

専用アプリ不要

多言語での同時配信

数人~数万人の利用に対応

NTT技術ジャーナル 2018.142

配信を行うことで,これまでにない新しい観戦体験の提供を図りました.

実際の導入にあたっては,競技関係者,会場関係者の皆様と連携を図り,すでに導入済みの会場内パネルを活用した簡易的なルール解説(ファールなどのタイトルと概要のみが表示されるもの)と連携して,ルール内容の詳細を配信することとなりました.試合中は,オペレータを会場内に配置し,「スライドナビ」の特長である多数の端末の画面を同期させる技術を活用して,観客の手元に試合の展開に合わせたリアルタイムでのルール解説を実施しました.大会期間中で約3000名の利用があり,SNS上などで多くの好評の声をいただきました.■観光関連の事例

日本の伝統芸能である「能」を外国人観光客にも観劇してもらえるように多言語での字幕解説を実施しています.能の台本である謡曲を管理 ・ 出版している出版社をパートナーとして,各地の能楽堂で実演される能舞台に合わせ

て,字幕による解説を提供するサービスとなっています.能楽堂ではこれまで,ワイヤレス型のイヤホンガイドを使った要約解説サービスなどが展開されていましたが,音漏れや音声のみによる説明では解説内容が限られるなどの課題があり,外国人観光客を取り込むためにさらなる工夫が必要な状況でした.「スライドナビ」では音声を使わず,文字やイラストを活用した解説が可能となるため,劇場内の運営側にも,利用する観客にも,非常に高い評価を得ることにつながりました.

劇場での導入パターンについては,コンテンツをすべてクラウドへ格納し,インターネットを通じてサービス提供を行うクラウド型サービス提供形式と,劇場内に設置した専用Wi-Fiを利用したローカル型サービス提供形式の2つのメニューが用意されています(図 3).特に,演劇などでは台本の著作権管理などが非常に重要な場合には,劇場内だけに閉じたサービス提供が可能な点は他社の類似サービスとの大きな差別化になっています.また,NTT東日

英語

画面同期

画面同期

画面同期画面同期

日本語韓国語

韓国語

日本語

日本語

英語

英語

中国語

中国語

親機端末 サーバ

日本語 英語 中国語 韓国語

コンテンツ:あらかじめ準備をしている多言語による配信情報

事前に多言語のコンテンツを登録

子機端末 (スマートフォン・タブレット・PC・サイネージ)

図 2  多言語表示と一斉コンテンツ配信

複数のタブレットやスマートフォンの画面を多言語で一括同期させることができるサービス

親機端末でページをめくると子機端末で多言語で同期してめくられる(特許出願中)

日本語

NTTコムウェアfrom

NTT技術ジャーナル 2018.1 43

本が提供する「ギガらくWi-Fi」と組み合わせたサービス提供事例も出てきており,NTTグループと連携した新たなサービス展開としても実績があります.今後のサービス拡大とともにNTTグループのさまざまな商材と連携した展開を模索していきたいと思います.

今後の展開

NTTコムウェアでは,スポーツ ・ 観光で得られる感動体験にICTを活用することで,さまざまな人々に届けるためのサービスを今後も展開していきたいと思います.特に,2020年に向けて,これから盛り上がるさまざまなスポーツに注目して,スポーツの活性化とともにビジネス展開を行っていきたいと思います.スポーツ分野では「ファン向け」「選手向け」「運営者向け」の3つの領域がビジネス領域として位置付けられますが,より多くの利用者にICTを利用して,スポーツを「楽しい」と再発見してもら

うために「ファン向け」サービスを入り口として展開していきたいと考えています.

2年後に迫った2020年,さらにはその先に続く未来の世界に向けて,NTTコムウェアは多様なビジネスパートナーと連携して,新たなサービスを協創することをめざしています.

◆問い合わせ先NTTコムウェア ビジネスインキュベーション本部 ビジネスインキュベーション部TEL 03-5796-3411FAX 03-5796-0103E-mail nakazato.hidenori nttcom.co.jp

劇場

LAN

図 3  サービス提供形式

(a) クラウド型サービス提供形式 (b) ローカル型サービス提供形式

CMS: Contents Management System

親ガイド端末Android/iOS

子端末Android/iOS

子端末Android/iOS

LTE/3G

子端末Android/iOS

子端末Android/iOS

親ガイド端末Android/iOS

キャリー型Wi-Fi アクセスポイント

〈推奨仕様〉・ブラウザ:Chrome 

サービス提供者クラウド上に構築

コンテンツコンテンツデータベース

トリガーインタフェース

大規模CMS

Webアプリケーション

運用GUI

複数VM+ロードパランサ

屋外・大規模劇場

インターネット

インターネット

〈推奨仕様〉・ブラウザ:Chrome 

サービス提供者マイクロサーバ

コンテンツ

コンテンツデータベース

CMSWebアプリケーション

LAN

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