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天然ガストラックの普及推進について 〒163 1519 東京都新宿区西新宿 1 丁目 6 番 1 号 新宿エルタワー 19F  TEL 03 5323 7109(代) ホームページ : h ttp://www.jta.or.jp/ 本冊子は、(公社)全日本トラック協会内に設置された「CNG トラック普及推進委員会」(委員長:慶應義塾大学理 工学部飯田訓正教授)において取りまとめられた内容を抜粋して作成しました。 天然ガス価格の一層の低廉化 天然ガススタンドの本格整備等 ① 利用しやすいスタンドネットワ-クの整備促進 「燃料充填カ-ドの共通化」、「充填速度及び1充填当たりの航続距離の 向上」等の利便向上 天然ガストラック供給体制の拡大及び性能向上等 ① 自動車メーカー、改造メーカーにおける車両の供給能力の拡大・強化及 び大型天然ガストラックの生産、市場投入への積極的取り組み ② エンジン出力向上、燃費改善、耐久信頼性等の天然ガストラックの性能 向上 ③ 修理 ・ 保守体制の強化等 荷主、地域等との連携及び運送事業者の自助努力による普及促進 国の果たすべき役割 ① トラック輸送分野における天然ガスの本格的利用促進についての明確な 方針樹立 ② 天然ガストラック普及促進のための効果的な支援措置の実施 ③ 車両やガス容器、スタンド等に関する規制緩和 1 2 3 4 5 天然ガストラック普及促進のための個別課題と提言 201306.2000

天然ガス価格の一層の低廉化 1 天然ガススタンドの …œ¬冊子は、(公社)全日本トラック協会内に設置された「CNGトラック普及推進委員会」(委員長:慶應義塾大学理

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天然ガストラックの普及推進について

〒163 − 1519 東京都新宿区西新宿 1 丁目 6 番 1 号新宿エルタワー 19F  TEL 03 − 5323 − 7109(代)ホームページ : h t t p : / / w w w . j t a . o r . j p /

本冊子は、(公社)全日本トラック協会内に設置された「CNG トラック普及推進委員会」(委員長:慶應義塾大学理工学部飯田訓正教授)において取りまとめられた内容を抜粋して作成しました。

  天然ガス価格の一層の低廉化

  天然ガススタンドの本格整備等 ① 利用しやすいスタンドネットワ-クの整備促進 ② 「燃料充填カ-ドの共通化」、「充填速度及び1充填当たりの航続距離の

向上」等の利便向上

  天然ガストラック供給体制の拡大及び性能向上等 ① 自動車メーカー、改造メーカーにおける車両の供給能力の拡大・強化及

び大型天然ガストラックの生産、市場投入への積極的取り組み ② エンジン出力向上、燃費改善、耐久信頼性等の天然ガストラックの性能

向上 ③ 修理 ・ 保守体制の強化等

  ‌‌荷主、地域等との連携及び運送事業者の自助努力による普及促進

  国の果たすべき役割 ① トラック輸送分野における天然ガスの本格的利用促進についての明確な

方針樹立 ② 天然ガストラック普及促進のための効果的な支援措置の実施 ③ 車両やガス容器、スタンド等に関する規制緩和

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天然ガストラック普及促進のための個別課題と提言

201306.2000

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‌‌‌はじめに トラック輸送は利便性が高く、機動性に優れており、国内物流の基幹的役割を担っています。そのトラックに使用される燃料(軽油)は、中東から輸入される原油にほぼ 100%依存しています。このため経済活動や国民生活を支えるトラックの輸送力確保に向け、石油に代わる燃料やその車両の確保など、エネルギーセキュリティ対策が重要です。また、トラック運送業界は、年間 1,700 万キロリットルもの大量の燃料を使用していることから、排出ガス対策や CO2 排出抑制などの環境対策も重要な課題です。 このような状況のなかで、現状では唯一の代替燃料の選択肢であると考えられ、運送事業における実用的な環境車として期待される天然ガストラックについて、現状の課題や今後の普及方策について検討しました。

‌‌‌物流の主役を担うトラックとエネルギー‌

国内貨物輸送におけるトラックの大きな役割 国内貨物輸送におけるトラックの輸送分担率は、9 割以上を占めており、なかでも営業用トラックは消費関連貨物をはじめ、建設関連貨物、生産関連貨物など多様な貨物をバランス良く輸送しています。

原油価格の上昇 わが国の石油は、中東からの輸入に8割以上を依存しており、原油価格も地政学的リスクや近年の投機マネーによって、大きく変動しています。また、埋蔵量の減少と消費量の増加に伴い、原油価格の長期的トレンドも上昇傾向にあります。

運輸部門の高い石油依存度とエネルギーセキュリティ 乗用車などを含め、わが国の運輸部門のエネルギーはほとんど全てを石油に依存しています。特に、トラックには、電気自動車などのように革新的技術の導入の見込みもないことから、トラックの安定的な輸送の確保に向け、天然ガストラックによる代替燃料等エネルギーセキュリティ対策が重要なポイントとなります。

営業用

消費関連貨物 建設関連貨物 生産関連貨物

自家用航空 1鉄道 40海運 360

合計 4,898(単位:百万トン)

91.8%

38.2% 28.6% 33.2%

9.0% 67.7% 23.3%

8.2%(海運・鉄道・航空の合計)

平成23年度輸送機関別分担率(トンベース)(資料:国土交通省)

営業用・自家用別品目別輸送トン数の構成比(資料:平成23年度国土交通省「自動車輸送統計年報」)

トラック 4,497

中東依存度85.1%(2011年度)

原子力

水力・揚水

新エネルギー等

電力

天然ガス・都市ガス

石炭・石炭製品

石油系

発 電0

20

40

60

80

100

製造業 家 庭 運 輸

構成比(%)

石油系

自動車約9割

鉄道船舶航空

約1割

石油系約98%

サウジアラビア31.1%

アラブ首長国連邦22.5%

カタール10.2%

イラン7.8%

クウェート7.0%

ロシア4.1%

インドネシア3.5%

オマーン 2.3%

イラク 2.2%

ベトナム 1.7%

2011年度輸入量209,173千㎘

スーダン 1.2%オーストラリア 0.8%マレーシア 0.7%

その他4.9%

日本の原油の輸入元(資料:エネルギー白書2012)

部門別エネルギー別消費エネルギー割合(資料:エネルギー白書2012)

原油価格の推移と地政学的リスク

出典 : EIA, Weekly Cushing. OK WTI Spot Price FOB : BP,Statistical Review of World Energy(2006) : 新・国家エネルギー戦略2006年5月 注) 1972年から1982年はアラビアンライト価格 1983年からはWTI(NY原油)価格

2008.7.11史上最高値を記録147.27ドル/バレル

2011.3.11東日本大震災

湾岸戦争時の最高値:41.15ドル/バレル

第二次オイルショック時の最高値:34ドル/バレル

第一次オイルショック時の最高値:11.65ドル/バレル

2003.3.20米国主導のイラク攻撃開始

2001.9.11米国同時多発テロ事件

90.8.2イラクのクウェート侵攻

79.2.11イラン暫定革命政府樹立

73.10第4次中東戦争勃発

安定期1~2ドル/バレル

時代

第一の構造変化石油ショックへの対応

安定期13~19ドル/バレル時代

第二の構造変化構造的な需給逼迫

80.9.9イラン・イラク戦争勃発

原油価格(ドル/バレル)

1970

150

140

130

120

110

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

01975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

原油価格の推移と地政学的リスク

4 5

イラン3,300,000

パキスタン3,100,000

バングラデシュ200,000

アルゼンチン2,172,768

ブラジル1,730,223

インド1,500,000

中国1,500,000

イタリア746,470

ウクライナ388,000

コロンビア387,250

アメリカ112,000

タイ352,652エジプト

178,000

ペルー136,662ボリビア140,400

ベネズエラ105,890

ドイツ95,162

ロシア86,012

日本42,590

ウズベキスタン310,000アルメニア

244,000

ブルガリア61,256

マレーシア53,783

世界の天然ガス自動車普及状況概要(出典:「The Gas Vehicles Report」2013年3月号)

合計約1,720万台

 代替燃料としての天然ガスへの期待‌‌

シェールガス等非在来型天然ガスの埋蔵地域は世界中に分布 在来型の天然ガスを含む可採年数は少なくとも 160 年になると推定されています。埋蔵地域も世界中に分布しており、代替燃料としての天然ガスへの期待が大きくなっています。

米国ではシェールガス革命で、天然ガス価格が今後さらに安価に 日本でも天然ガスの輸入先多角化に向け、2017 年にもこれらの安価な天然ガスの導入の可能性があります。

原油及び天然ガス(在来型、非在来型)の埋蔵地域

(資料:エネルギー白書2012) (資料:エネルギー白書2012)<在来型> <非在来型(シェールガス等)>

天然ガスの埋蔵地域原油の埋蔵地域

(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構石油調査部資料(2012.6.14)を参考に作成)

欧州ユーラシア旧ソ連10.1%

アジア・大洋州3.3%

米州22.7%

アフリカ9.5% 1兆3,832億

バレル(可採年数46年)

中東54.4%

アジア・大洋州9%

欧州ユーラシア旧ソ連34%

北米5%中南米4%

確認埋蔵量187兆㎥ 中東

40%

アフリカ8%

技術的回収可能量230.3兆㎥

北米25.3%

中南米10.6%

中東アフリカ13.6%

欧州ユーラシア旧ソ連20.7%

アジア・大洋州29.7%

0

5

10

15

20

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1994

/01

1995

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1997

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2010

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2011

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2012

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2013

/01

天然ガス 原油

0

1

2

3

4

2000 2008 2015 2025 2035

軽油

天然ガス

予 測

△50%

実 績

米国における天然ガス価格の推移(出典:米国エネルギー省EIA, NYMEX)

米国における天然ガス価格の予測事例(出典:米国エネルギー省EIA, Annual Energy Outlook2010)

※ 注)100万BTU当たりの価格(ドル)    BTU:British Thermal Unit(英熱量単位)

価格

(ド

ル/M

MBT

U)※

2008年基準のドル/ガロン(天然ガスは軽油と熱量合わせ)

天然ガス自動車は、天然ガスの産出国を中心に世界で 1,720 万台普及 世界では、天然ガスの産出国を中心に、年間 200 万台以上のペースで増加しています。

国内の天然ガストラック普及台数は2万台程度 国内における天然ガス自動車の普及台数は、平成 25 年 3 月末で 42,590 台で、そのうち天然ガストラックの普及台数は 18,683 台(普及率約 0.8%)です。また、充填所は 314 箇所整備されています。

7,811

12,012

16,561

20,638

24,263

27,605

31,462

34,203

37,11738,861

42,59041,463

40,429

5,2523,640

2,093

314321

333342344

327324311

288

270

224

181

138

107

82

62

0 2,000 4,000 6,000 8,000

10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 22,000 24,000 26,000 28,000 30,000 32,000 34,000 36,000 38,000 40,000 42,000 44,000

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

年 度

0

50

100

150

200

250

300

350 乗用車小型貨物(バン)軽自動車トラック塵芥車バスフォークリフト等合計急速充填所

天然ガス自動車数

国内の天然ガス自動車等の普及状況概要(出典:(一社)日本ガス協会ホームページ)

天然ガススタンド数

6 7

 環境問題への天然ガストラックの貢献

  天然ガスは、燃料自体の特性として、燃焼時の CO2 排出量が少なく、粒子状物質、硫黄酸化物の排出がないクリーンな燃料です。

 天然ガストラック普及への課題‌‌

 天然ガストラックは、現行のポスト新長期規制の排出ガス規制値を大幅に下回り、今後の規制にも十分に対応が可能です。

特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令平成22年3月31日改正、4月1日施行より作成

0

20

40

60

80

100

軽 油 ガソリン 天然ガス0

20

40

60

80

72.7

100.0 97.9

0

20

40

60

80

100

粒子状物質 硫黄酸化物0

20

40

60

80

ほぼゼロ ほぼゼロ

天然ガスからの粒子状物質、硫黄酸化物燃料の発熱量あたりのCO2発生量割合

CO2発生量割合(%)

注)軽油=100とする指数で表示

発生量割合(%)

窒素酸化物(NOx)g/kWh

0

0.05

0 0.5 1.5 2.5

新長期規制0.027

0.7

0.01

次期規制答申

ポスト新長期規制

0.2 (0.4)

(次期規制答申のNOx0.4g/kWhは、現行規制0.23g/kWhに相当)

小型天然ガストラック

大型天然ガストラック(改造)

0.01

粒子状物質(PM)g/kWh

(第3回CNGトラック普及推進委員会発表資料)

(いすゞ自動車ホームページ)

(H28年末までに実施)

1.0

(H21年規制(現行))

(H17年)

2.0

重量車排出ガス規制値と天然ガストラックのNOx及びPM排出量レベル

経済性 高価な修理・保守費用

耐久信頼性の向上

高価な車両価格

出力・燃費性能の向上

インセンティブ、公的補助、規制緩和等の必要性

修理体制の整備

実用性利便性

経済性

天然ガス価格の低廉化

スタンド数の増加

運営費補助や法定検査コストの低廉化等によるスタンド運営の健全化

燃料充填カードの共通化等の充填利便性の向上

利便性

燃料 ・インフラに係る主な課題

車両に係る主な課題

規制緩和の必要性・�国際標準との整合を図り、わが国の天然ガスの便益と円滑な利用に向け、車両及び部品に関わる規制緩和が必要です。

・�燃料インフラに関わる規制緩和により、天然ガススタンドの運営改善、効率的運用等による天然ガス価格低下、充填時の利便性改善(充填時間の短縮、混雑緩和)等につながります。