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薬物乱用防止教育の あり方について

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薬物乱用防止教育の あり方について. ~進め方と話すポイント~. 学校保健の領域・内容. 1 、保健教育    ①保健学習・・・体育科の保健、保健体育の保健学習              関連教科における保健学習              総合学習における保健学習    ②保健指導・・・学級活動における保健指導              学校行事における保健指導 2 、保健管理    ①対人管理       ・心身の管理・・・健康観察、健康診断、健康相談       ・生活の管理・・・学校生活の管理    ②対物管理 - PowerPoint PPT Presentation

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Page 1: 薬物乱用防止教育の あり方について

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薬物乱用防止教育の薬物乱用防止教育のあり方についてあり方について

薬物乱用防止教育の薬物乱用防止教育のあり方についてあり方について~進め方と話すポイント~

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学校保健の領域・内容1、保健教育   ①保健学習・・・体育科の保健、保健体育の保健学習             関連教科における保健学習             総合学習における保健学習   ②保健指導・・・学級活動における保健指導             学校行事における保健指導2、保健管理   ①対人管理      ・心身の管理・・・健康観察、健康診断、健康相談

      ・生活の管理・・・学校生活の管理   ②対物管理      ・学校環境の管理・・・学校環境の衛生検査管理

3、組織活動・・・学校保健委員会

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学校薬剤師に期待される役割•学校環境衛生の維持管理•薬物乱用防止教育、医薬品の適正使用のための教育

•学校と地域の医療機関などとの連携•保健教育などへの助言    環境衛生    薬事衛生「薬の正しい使い方」    薬物乱用防止、禁煙教室など

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「薬物乱用防止教室」学校側の理解が不可欠(コミュニケーション)  薬物乱用防止教育の必要性  学校薬剤師が担当する          保健委員会での発言          定期検査における指導助言

   学校側:薬剤師をいつも見ているという認識で   学校長:お願いしても大丈夫! と思わせる 

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学校へのプレゼンテーション( 1)薬剤師が行う「薬物乱用防止教室」のポイント   1、薬の専門家   2、「薬物乱用」に止まらず、医薬品の正しい使い方や    禁煙学習に発展できる   3、学校保健の視点から総合的な話が可能で学校の    当事者である

  カリキャラム例として       禁煙教室(小 5)―薬物乱用防止(小 6)       薬物乱用防止(中 1)―感染症予防(中

3)       薬物乱用防止(高 1)―エイズついて(高

2)       クスリの正しい使い方―薬物乱用防止

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学校へのプレゼンテーション( 2)

■ 30分程度の時間で一通り説明(練習しておく)■ プレゼンテーションでの必要事項    1) 学校における取組み状況を確認(聞く)  

      2) 当日のプレゼン資料    3) 協力体制  薬剤師ー担任ー養護教諭    4) 授業の進め方、形式    5) 授業での教材・・・パワーポイント、CD        ※相手は、担任、生徒指導担当教諭

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≪1 コマ― 60 分の流れ≫      1 、ビデオ「君の脳が狙われている」        財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センター 約 15 分   2 、ビデオ内容に即した講義  20 分   3 、質疑他  10分

≪ 準備≫   学校の方で準備      ◇禁煙のパンフレット ( 文部科学省作成 )      ◇プリント ( メールで添付したもの→ 2 枚 )   機材      ◇ビデオ      ◇ホワイトボード      ◇プロジェクター

   豊田 当日持参      ◆小冊子「薬物乱用防止マニユアル Q & A 」      ◆ビデオ

高等学校へのプレゼンテーション

(例)

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○○高等学校 2年生 -研修                                       

   学校薬剤師 豊田良夫       私たちを取り巻く薬物のワナとエイズ環境について

―いつどこで まきこまれるか予測不能―

◎はじめに   薬物の本質と注意点     脳を破壊・・・回復しない     社会としての受け皿がない

   ◆薬物使用は一部の人の話か       ちょっとした好奇心・・・・シンナーに始まりカラダが蝕まれ身も心も破壊       最後は売人になる

   ◆薬物汚染させるには、中学・高校生の女性が最適!            大人の場合との違い            男性との違い

   ◆日本におけるエイズ感染の実態            木原レポートより                    現代の中高生がセックスをどう考えるか・・・ 15 歳の解禁                    なぜ日本は水平感染か                    感染者がどこにでもいる?           感染者の暴走

   ◆アナログ的思考のすすめ        例 ) 歯が痛い             →痛み止め             →虫歯 (原因 )の治療       ◆最低限の知識とリスク◎おわりに   自然観、倫理観、家族観・・・・人格

授業資料(高等学校)

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薬物乱用防止教室         1 、薬物の歴史的背景

     2 、「薬物乱用」とは

     3 、ドーピング

     4 、「合法ドラック」とは

     5 、薬物依存        ●精神依存          ●身体依存

     6 、キーワード        「フラッシュバック」        「脳関関門」

中学校でのワーク形式授業

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◆薬物乱用防止教室 レポート◆

○○高等学校   年   クラス  氏名           .                     1、一番印象に残った点

2、自分が理解していたことが違っていたところ  さらに聞いてみたい、深く調べてみたいと思ったところ  まったく知らなかったところ

3、今日の話を聞いて、実行してみたいと思うところ

・授業終了後レポート提出

・保健委員会で報告

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◆禁煙教室(クイズ形式 )1、たばこの煙に含まれる毒性があるといわれている  物質の種類                 種類

2、3つの毒  ①      ②       ③       .                     キーワード

3、主流煙と副流煙 毒性が強いのは

4、成長期に与える大きなリスク    ・男性    ・女性    ・自分だけ

5、今なぜ禁煙か

中学校でのワーク形式授業

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指導者としての基本的知識

•薬物乱用とは ( 概念 )•関連の法律及びその内容•乱用される薬物について•ライフスキルの概念•児童、生徒からの質問回答

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小学校でよく利用する教材小学校でよく利用する教材

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喫煙・薬物乱用防止学習ダメ、ゼッタイ!  自分を大切に!

京都市立修学院第 2小学校

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Q-1. タバコの煙の毒 ( 有害物質 )を 3つ上げてください1. ニ○チ○2.○ ー○3.○ 酸化○○

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Q-2.「ニコチン」とは・・・ ?

血液の流れを ( )、心臓や血管の病気になりやすくなります

タバコを「自分の意志でやめられなくなる」→○○○性をもっています

 

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Q-3.「タール」とは・・・ ?

黒くてネバッとしています ( )の中をよごします

「発○○物質」をつくるもとと 言われています

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Q-4.「一酸化炭素」とは・・・ ?

血液中の「ヘモグロビン」と、くっついてしまう→酸素を運ばなくなる

カラダの中が酸素 (     )になるカラダの中で酸素を最も必要としているところは (          )

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くすり「医薬品」と「薬物」との違い医薬品・・・病気などを治すために       正しくきめられた量を       守って飲むもの薬 物・・・ゼッタイに持っても、          使ってもいけないもの

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薬物を使うとどうなるか   「○」か「 ×」で応えてください

歯は・・・・とける脳は・・・かわらないモノが・・・ゆがんで見える物事の判断が・・・できるやめたくても・・・いつでもやめられる

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薬物中毒 (シンナーなど )

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参 考 資 料

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                                                    20文科ス第 639号                                                   平成 20年 9月 17日各都道府県知事          各都道府県教育委員会教育長各指定都市教育委員会教育長  殿各国公私立大学長各国公私立高等専門学校長                              文部科学省スポーツ・青少年局長 山中 伸一

                  薬物乱用防止教育の充実について(通知)

 児童隼徒の薬物乱用防止に関する取り組みについては、薬物乱用防止五か年戦略(平成 10年 5月 26日薬物乱用対策推進本部決定)及び薬物乱用防止新五か年戦略(平成15年 7月 29日薬物乱用対策推進本部決定)を踏まえ、青少年の覚せい剤等の薬物乱用防止に関する指導のより一層の徹底を図るようお願いしているところであります。 薬物乱用対策推進本部においては、青少年、特に中学生及び高校生の覚せい剤事犯検挙者は過去 10年間の取組により減少傾向が認められるものの、近年我が国において増加傾向にある大麻やMDMA等合 成麻薬事犯の検挙者の 6~ 7割が未成年及び 20歳代の若者であり、青少年を中心に乱用の状況がうかがえることが指摘されており、総合的な対策を推進し、薬物乱用の根絶に向けた継続的な取組を図る必要があるとの認識を示しています。 こうした状況を踏まえ、このたび、薬物乱用対策推進本部では、別添のとおり「第三次薬物乱用防止五か年戦略」を決定しました。

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 第三次薬物乱用防止五か年戦略においては、中学生及び高校生を中心に薬物乱用の有害性・危険性の啓発を継続し、特に地域の実情や児童生徒等の発達段階を踏まえ、大麻やMDMA等合成麻薬の有害性・危険性に関する指導の充実を図るなど「青少年による薬物乱用の根絶及び薬物乱用を拒絶する規範意識の向上」を目標の一つに掲げ、中でも「大学等の学生に対する薬物乱用防止のため、大学等に対し入学時のガイダンスの活用を促し、その際に活用できる啓発資料を作成するなどの啓発の強化を図る。」など、学校における薬物乱用防止教育を一層推進することを求めております。 ついては、貴職におかれては、このたびの「第三次薬物乱用防止五か年戦略」を踏まえ、下記事項に留意するとともに、域内の市区町村教育委員会、管下の学校等の関係機関に対して本内容の周知を図り、青少年の薬物乱用防止に関するより一層の指導の徹底を図られますようお願いいたします。                               記1 小学校、中学校及び高等学校等においては、児童生徒への薬物乱用防止教育の充実の ため、「体育」、「保健体育」、「道徳」、「特別活動」における指導に加え、「総合的な学習の時 間」の例示として示されている「健康」に関する横断的・総合的な課題についての学習活動等 も活用しながら、学校の教育活動全体を通じて指導すること。2 すべての中学校及び高等学校において、年に 1回は「薬物乱用防止教室」を開催するとと   もに、地域の実情に応じて小学校においても「薬物乱用防止教室」の開催に努め、警察職員、  麻薬取締官 OB、学校薬剤師等の協力を得つつ、その指導の一層の充実を図ること。なお  「薬物乱用防止教室」は、学校保健計画において位置付け実施するものとし、薬物等に関す  る専門的な知識を有する外部講師による指導が望ましいものの、国や教育委員会等が開催 する研修会等において研修を受けた薬物乱用防止教育に造けいの深い指導的な教員の活 用も考えられる。

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                                記

3 地方公共団体においては、児童生徒に正しい知識を習得させるため、薬物乱用防止に関 する児童生徒用教材、教師用指導資料等を、適宜作成・配布するよう努めること。

4 地方公共団体においては、国、地方公共団体等において作成・配付した教材等の活用の 促進を図るための周知に努めるとともに、教材等の使用について関係機関との連携の充実 を図ること。

5 効果的な実践のための指導の充実を図るため、教員や薬物乱用防止教室の指導者に対   する効果的な研修の機会の拡充を図ること。

6 児童生徒等の薬物等の認識の定着、薬物乱用の実態等について調査分析の実施に努め ること。

7 学校警察連絡協議会等において、少年の薬物乱用の実態、薬物の有害性・危険性等につ いて情報提供を行うとともに、薬物乱用を把握した場合の早期連絡の要請等、学校関係者 等との連携を一層強化すること。

8 大学等においては、入学時のガイダンスなど様々な機会を通じ大学等の学生 !こ対して薬 物乱用防止に係る啓発及び指導の徹底に努めること。

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青少年の薬物汚染の現状と背景-若者の薬物汚染予防のために-                               水 谷  修 

・はじめに 現在、青少年の薬物汚染の問題は、大きな社会問題となり、私たち教育の現場においても避けて通ることのできない問題となっています。いくつかの中学生や高校生に対するアンケート調査の結果を見ても、多くの青少年が薬物の魔の手が身近に迫ってきていることをはっきりと認識しています。たとえば、 1998年に桜美林大学の小宮山要先生が、東京都内で中高生を対象として行った調査では、実に 30%におよぶ高校生、 10%におよぶ中学生が、友人に薬物を乱用しているものがいると解答しております。また、神奈川県藤沢市が 1998年に実施した調査でも、高校生の 10.2%、中学生の 2.6%、小学校 5・ 6年生の 0.9%が、友人に薬物を乱用する

ものがいると答えています。 しかし、その一方で、社会のこの問題に対する意識は希薄であり、多くの人たちが、一部の地域の一部の若者たちの問題としてしか捉えていません。教育現場についても、同様のことが言えます。本来、生徒たち一人一人に、薬物を自ら拒むカを育てるべきであるにもかかわらず、ただ、声を大にして「薬物は怖い、絶対に近づいてはならない。人間を止めることになるぞ。」と

叫んでいるだけではないでしょうか。 今や、若者たちはテレビや雑誌、本などの様々なメディアから、薬物に関する多くのいい加減な情報を手に入れています。しかも、それらの情報のほとんどは、興味や関心を煽り、薬物を試してみたくさせるような内容です。そして、若者たちの周りには、様々なドラッグが、その魔の

手を広げています。

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 私は、現在まで約 11年にわたり、薬物を乱用した 2000人以上の若者たちと関わってきました。しかし、そのうち 16名の若者を事故や自殺で失い、約 3割の若者を精神病院や刑務所の橿の中に失いました。今でも私とともに薬物を止め続けている若者は、3割に過ぎません。残りの若者は、現在もどこかで薬物の乱用を続けています。こんな私に、薬物汚染予防を語る資格などないのかもしれませんが、しかし、現在の日本では、こんな私すら数少ない青少年の薬物汚染の現状を知る一人です。 以下のレポートは、私が、この 11年間で学んだことの抄訳です。これが、青少年と直接関っている多くの人の目に触れ、その活動の手助けとなってくれることを、心から願います。・日本における主な薬物乱用の歴史 日本の薬物乱用の歴史は、第二次世界大戦後に始まります。たしかに、それ以前にも、江戸時代から阿片の密輸や乱用は、歴史に跡をとどめてはいますが、ごくごく少数のまれな事例でした。 戦後の薬物乱用の歴史は、薬物全体について見るならば、現在までに 5回の汚染期をむかています。覚せい剤についてのみ見ても、 3回の乱用期がありました。そして、戦後最初の汚染期を除いて、すべての時期の薬物乱用には暴力団が関わっています。 下記の表を見てわかる通り、現在は、日本の薬物乱用の歴史の中でも、最も多くの種類の薬物が量的にも非常に多く出回り、価格的にも比較的安価で供給されている時代です。また、かつての乱用期には、薬物の需要と供給の問題から都市部を中心として乱用が進みましたが、現在は、日本のほとんどの地域に広がっています。また、私の扱った 1000以上のケースや専門病院の症例を見ても、乱用者はかつて、一定の生活環境の特異性がありましたが、現在は、あらゆる生活環境の人聞へとしかも若年層へと広がってきています。

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年  代 主な乱用薬物 主な乱用者1945年以前 麻薬(アヘン・モルヒネ) 少数の特定乱用者1945 ~  1956年 第一次薬物汚染期(第一次覚せい剤乱用期)

覚せい剤(ヒロポン)青少年

1960 ~  1964年 第二次薬物汚染期麻薬(ヘロイン)

青壮年

1960 ~  1964年 睡眠薬(ハイミナールなど) 青少年1963 ~  1967年 鎮痛剤(ナロンなど)

抗不安剤 筋弛緩剤青少年

1967 ~ 現在 第三次薬物汚染期有機溶剤(シンナー・トルエン・ボンド)

青少年(低年齢化)

1970 ~ 現在 第四次薬物汚染期(第二次覚せい剤乱用期)覚せい剤(シャブ)

青壮年(主婦層に広がる)

1975 ~ 現在 幻覚剤(大麻・LSDなど) 青壮年1992 ~ 現在 ガス 青少年(低年齢化)1994 ~ 現在 第五次薬物汚染期(第三次覚せい剤乱用期)

覚せい剤(スピード・S・アイス・やせ薬)大麻(マリファナ・ガンジャ・チョコなど)MDMA・ヤーバーなどマジックマッシュルームなど脱法ドラッグ

青少年(中高生)

図1 日本の薬物乱用の歴史

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3.「第五次薬物汚染期(第三次覚せい剤乱用期)」の実態 今回の「第五次薬物汚染期(第三次覚せい剤乱用期)」は、私の体験から見て、現在までを四つの段階に分けることができます。 第一段階は、 1994年の秋にはじまりました。この年は、ポケットベルや携帯電話が急速に高校生をはじめとする若者たちの間に広まっていった時期です。当時、ポケットベルにメッセージを入れたり、携帯電話に連絡をすることは、多額の電話料がかかりました。そのため、偽造テレホンカードが、若者たちの問で使用されるようになりました。

 この偽造テレホンカードは、繁華街や駅周辺で、アジア系の不法滞在外国人によって、三枚千円程度で密売されていました。彼らのもとに、暴力団から覚せい剤や大麻が流れ、若者たちを対象として密売されました。私は、この時期まで、一部の劣悪な環境の特殊な若者を除いて、日本の若者が、覚せい剤に汚染されることはないだろうと考えていました。それは、日本で密売される覚せい剤のほとんどすべてに暴力団が関わっており、若者の暴力団に対する恐怖心が、抑止力となると考えていたからです。ところが、不法滞在の外国人が、暴力団と若者の間のパイプ役をつとめてしまいました。そして、彼らは、二つの悪さをしてくれました。一つは、「あぶり」という新しい覚せい剤の使用法を広めたことです。これまで、覚せい剤は「ポンプ」と呼ばれる注射で血管に入れて乱用することが主流でした。ところが、彼らは、アルミホイルやガラスの器に覚せい剤を入れライターであぶり、その気化した蒸気を吸引するという、新しい乱用法を若者たちに広めていったのです。このため、注射には抵抗のある若者たちも乱用へとどんどん引き込まれていきました。二つ目は、覚せい剤に、「スピード」・「エス」・「アイス」・「やせ薬」などの新しい名前をつけたことです。覚せい剤という名称に暗い恐怖感を感じる若者たちも、「スピード」や「エス」という名前にひかれ、ファッション感覚で覚せい剤を乱用しはじめました。

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 第二段階は、関東周辺の都市部では、 1996年頃からはじまりました。薬物、特に覚せい剤を覚えその魔力にとりつかれた若者たちは、それを定期的に乱用するためには、多額のお金を必要としました。 女子の場合は、先輩の健康保険証を借り、年齢を偽って、ファッションヘルスなどの風俗の仕事をして金を稼いだり、「援助交際」などというとんでもない名前の付いた売春で金を手に入れました。実際にこの時期に、神奈川県や静岡県、東京都や埼玉県などの多くの都道府県で、このケースで多くの女子高校生が警察によって摘発されています。 ところが、このような手段で安易に多額の金を手に入れることのできない男子の場合は、自らが「売人」となっていきました。そして、自らが通う学校内や、自らが小中学校時代を過ごし居住している地域へと戻り、仲間や後輩の中学生に薬物を密売していきました。 こうして、薬物特に覚せい剤が、地域社会や学校内へと広がっていきました。若者の場合、薬物乱用は、非常に伝染力の強い伝染病です。若者たちは、多くの場合集団を作り、集団で行動します。そこに、薬物が流入した場合、大人たちの場合とは異なり、あっという間にその集団の中で乱用が伝染していきます。これが、今回の汚染期の怖さでもあります。

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 第三段階は、 1997年の末頃からはじまりました。地域社会の中で「売人」と化した高校生などの若者から薬物乱用を教えられた中学生(女子中学生の場合が多い)の一部が、薬物乱用の常習者となりはじめました。彼らは、どのようにして、薬物を手に入れるための金を手に入れているのでしょう。女子中学生の場合は、テレホンクラブや伝言ダイアルを通した売春、男子中学生の場合は、窃盗や強盗などの犯罪を犯しています。これは、今後さらに増加していくと、私は、確信しています。 関東地方や中部地方の主要都市部では、もうすでに第四段階に入っています。すなわち、各地域に若者の「売人」が存在し、この「売人」が、暴力団との薬物のパイプ役を果たすことで、地域の若者たちの問に、シンナーや覚せい剤が広まっていっています。このケースの「売人」のほとんどは、今回の汚染期の前半に薬物を覚えた若者たちで、自らが乱用する薬物を手に入れるために「売人」になっています。このケースでは、「売人」が、地域社会の中に沈みこんでいるため、「町売り」などのケースと異なり、非常に気付きにくく摘発しにくいです。そのため、まだまだ具体的数値には表れていませんが、 2000年にかけて大きな問題となってくるでしょう。

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4.第五次薬物汚染期(第三次覚せい剤乱用期)」の問題点 今回の汚染期の問題点は、中学生・高校生を中心とする若者たちの、覚せい剤をはじめとする様々な薬物の乱用です。 若年期の若者の薬物乱用は、その身体や精神の成長を止め破壊していくことから、成人の場合より、短期間に重い症状が現れることが多く、また乱胴者の人生に一生消えない大きな傷を残します。薬物は、どのようなものでも二つの顔を持っています。一つ目の顔は、微笑みかける天使の顔です。薬物は、種類によって程度や効果は違いますが、人間に確実に快感をもたらします。他者や家族・社会は、私たちを裏切り苦痛を与えることがありますが、薬物は、その初期の乱用の段階では絶対に裏切りません。ある種の薬物は陶酔感を、またある種の薬物は多幸感や興奮をもたらします。そのため、一度でも乱用してしまうと、その誘惑を断ち切ることは困難です。特に、日頃つらい状況にいる人間ほど、あっという間にその魔の手に捕まっていきます。 薬物の二つ目の顔は、不気味に笑う死に神の顔です。薬物の乱用は、人間を確実に破滅へと導きます。社会からはじき出し、友人や愛する家族を奪うだけでなく、それを乱用する人間の人間性を破壊し、三つの死、すなわち心の死、頭の死、身体の死をもたらします。 私たち大人の場合は、多くの場合、自らの生活や家族を守ることを一つの物差しとして、この二つの顔を秤にかけ、守るべき家族や社会的地位、将来を考え、薬物の魔の手から自らを守っています。しかし、若さから自らを見失い、現代の繁栄の陰で、様々な寂しさから刹那的に生きる今の若者たちにとって大切なものは、今この瞬間の快楽です。家庭や学校で様々に挿圧されている彼らにとって、守るべきものはあまりにも少ないのです。彼らは、薬物の一つ目の顔にのみ目を向け、安易に薬物の乱用へと走っていきます。そして、哀しいことに精神的に純粋でそのため傷だらけとなっている若者ほど、薬物に依存し自らを滅ぼしていきます。

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 今回の汚染期の最大の問題点は、若者の問では、「薬物乱用は伝染病である」ということです。集団で行動する彼らの一人が、薬物に汚染されるとあっという間にその集団に汚染が広がっていきます。こうして、 1995年頃から若者たちの薬物乱用が広まってきました。 また、この問題に関わるすべての人間が忘れてはならないことは、「薬物依存は、薬物依存症という病気である」ということです。現在まで、摘発あるいは補導された薬物乱用の若者たちは、学校や家庭、警察や司法機関で指導をうけました。しかし、この依存症という病気を治すための治療は、ほとんどの場合受けていません。私も多くの失敗をしてきましたが、薬物依存症は、愛のカや罰で治すことはほとんどの場合できません。

 ところが、薬物依存症を治療する医療機関や更生施設は、アルコールに関してのものを除いて、日本にはほとんどありません。医療機関で言うならば、薬物の解毒・断薬の動機付け・家族への指導・更生プログラムをきちんと持っている機関は、私が知っている限りでは、全国に 4カ所しかありません。しかも、それらの機関ですら、その内容は、まだまだ不十分です。たとえば、中学生の薬物依存症者に入院まで含めて対応できる医療機関は、一つもありません。また、更生施設については、もっと悲惨です。公的なものは日本には存在しません。民間では、 NA(ナルコティク・アノニマス)、MAC(マック)、 DARC(ダルク)が、精力的に活動していますが、どこも資金的に厳しく、特に DARCに対しては、社会的認知さえままならない状況です。 また、この問題に専門的に関わることのできる専門家も、日本には、ほとんど存在しません。一日も早く、医療や更生保護、司法、福祉、教育などの様々な場に専門家を養成し配置していくことが求められています。

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図2  薬物の種類

抑制系(ダウナー) アルコール・ヘロイン・睡眠薬・精神安定剤・シンナー・マリファナ・ガス・市販薬など

興奮系(アッパー) 覚せい剤・MDMA・コカイン・咳止めシロップ・タバコ・市販薬など

幻覚系(サイケデリック)

LSD・マリファナ・シンナー・マジックマッシュルームなど

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5.薬物の種類 薬物は、その身体への作用から大きく上記の三つに区分することができます。 一つは、抑制作用を持つものであり、若者たちからダウナーと呼ばれています。この種の薬物は、乱用によって感覚・思考・行動機能が鈍化します。しかし、この種類のものでも、多量に乱用したり長期にわたって乱用を続けることにより、興奮作用を引き起こしたり、感覚の鋭敏化や幻覚をもたらします。 二つ目は、興奮作用を持つもので、若者たちからはアッパーと呼ばれています。覚せい剤が特に有名であり、乱用によって高揚感や万能感を導きます。 三つ目は、幻覚作用を持つもので、若者たちからはサイケデリックと呼ばれています。これらを乱用すると、感覚が鋭敏化し、様々な幻覚を生み出します。また、興奮作用や抑制作用を持つ薬物においても、継続的な乱用によって幻覚を見るようになることもわかっています。 この説明でもわかるように、上記の区分は、あくまでも乱用初期の作用から分類したものです。いずれの薬物も、長期のあるいは継続的な乱用によっては、様々な複合的な作用を引き起こします。しかし、いずれのドラッグにも共通するのは、私たちの大脳中枢に直接作用して、私たちの意志とは無関係に様々な状態を作り出すということです。それは、多幸感や陶酔感であったり、万能感や幻覚であったりしますが、いずれにしても強烈な快感を伴う快体験であり、乱用した人の心の不安感や痛みを忘れさせてくれます。 ただし、それは最初だけで、後には死へのまっすぐな道があるだけです。 また、ほとんどのドラッグは、耐性というやっかいな性質を持っています。それは、乱用者が、そのドラッグに慣れてしまうということです。つまり、乱用を繰り返していくと、それまでのように快体験を得るためには、さらに多くのドラッグをさらに頻繁に乱用するしかなくなるのです。それとともに、ドラッグが切れた状態では、不安や不快感でたまらなくなります。 こうして、ドラッグの乱用者は、ドラッグなしでは生きることが出来なくなります。これが、依存症の状態です。あらゆるドラッグは、乱用すればこの依存症に陥ります。こうして、乱用者は、乱用を繰り返し、確実に廃人となるか、肉体的な死を迎えることとなります。

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6.主な薬物の薬理作用 薬物は、その乱用が、法律によって禁止または制限されている薬でかつ依存性を持つ薬と定義されます。特にこの依存性が、薬物の最も大きい問題点であり、人間を破滅へと導いていく原因です。 薬物の薬理作用を見ていく場合、この依存性を一つ一つの薬物についてきちんと見ていくことが重要です。まず、依存ということばをきちんと理解してください。依存というのは、あるものがなくてはならない、ないと不快になる状況を指します。 この依存には、二通りあります。 一つは、精神的依存です。これは、心の依存と考えるといいと思います。一度、薬物を乱用してしまうと、その時の快感や充足感が、脳の記憶中枢に刷り込まれてしまいます。そして、その快感や充足感を再度求める欲望が生じます。これが、精神的依存です。 もう一つは、身体的依存です。これは、身体の依存と考えるといいと思います。一部の薬物は、乱用を続けていくと、からだの中にこの薬物の成分が入っていないと、さまざまな禁断症状を引き起こします。それは、いらいらであったり、手足の震えであったり、七転八倒の苦しみであったりします。この、禁断症状は、再度その薬物を乱用すれば収まります。

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興奮系薬物 中枢作用

精神依存

身体依存

薬理作用 大量乱用時 禁断症状 乱用法

アヘンモルヒネコデインヘロイン

抑制麻酔

強い 強い多幸感  居眠り呼吸抑制縮瞳  嘔吐

呼吸困難体温低下昏睡  死亡

食欲不振過敏症けいれん吐き気

経口喫煙注射

睡眠薬類

覚せい剤コカインMDMA

抑制催眠

強い 強い呼吸低下体温低下散瞳 弱い頻脈昏睡  死亡

不安  振せん精神錯乱  けいれん死亡

なし 経口

有機溶剤・ガス

シンナートルエンボンド(ガス)

抑制幻覚

中度 なし多幸感  陶酔ラリるしびれ感

無気力  不安幻覚・健忘吐き気  食欲不振体重減少  脳波異常死亡

なし 吸引

酒類

アルコール 抑制 中度 中度言葉のもつれ混迷  泥酔

散瞳  頻脈昏睡  嘔吐死亡

不安 不眠振せん精神錯乱死亡

経口

図3  抑制系薬物の薬理作用 

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興奮系薬物 中枢作用

精神依存

身体依存

薬理作用 大量乱用時 禁断症状 乱用法

興奮剤

覚せい剤コカインMDMA

興奮幻覚

強い なし機敏性大興奮多幸感散瞳・心拍増血圧上昇食欲減退不眠

激論体温上昇幻覚けいれん死亡

なし 経口喫煙注射

ニコチン

タバコ 興奮 中度 中度血圧上昇興奮心拍数増食欲減退

肺の痛みのどの痛み味覚低下嗅覚低下脳機能低下

イライラ集中力低下

喫煙

図4 興奮系薬物の薬理作用 

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幻覚系薬物 中枢作用

精神依存

身体依存

薬理作用 大量乱用時

禁断症状

乱用法

LSD

メカスリンPCP

幻覚興奮

中度 なし 幻覚幻視時空感覚喪失

幻覚の継続精神異常死亡

無気力長期睡眠過敏症死亡

経口喫煙

マリファナガンジャハッシッシマジックマッシュルーム

幻覚抑制

中度 なし 多幸感リラックッス食欲増

疲労誇大妄想精神異常

不眠症活発食欲不振

喫煙

図5 幻覚系薬物の薬理作用 

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生態的的類型 乱用動機 乱用形態 依存形態 問題性 治 療

1.単純遊び型

好奇心 集団吸入 機械的吸入 脱線的 家庭・学校内での処遇改善

2.非行型 非行集団の仲間意識

集団吸入単独吸入

機械的吸入脅迫的吸入

反社会的 少年保護専門職による治療

3.依存型 精神依存 単独吸入 強迫的吸入 脱社会的 医療機関等での治療自助グループヘの参加

図6 薬物乱用者の生態的類型 

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7.薬物乱用者の生態的類型

 それでは、この薬物問題に対する乏しい社会資源の中で、現場で特に学校や保健所等で薬物を乱用する生徒や若者と出会った場合はどうしたらいいのでしょう。また、不幸にも依存症となってしまっている生徒や若者に対して、その回復のために何をすればいいのでしょう。 私は、私のもとに若者や親が相談にきた揚合、その乱用者が上記の図のどの生態的類型であるかを、本人や親の話から見極めます。そして、そのケースによって対応していきます。 上記の三つの類型の中で、現在非常に増加し大きな社会問題となっているのは、 1の単純遊び型です。  このケースの場合、乱用する薬物が、依存性の比較的に少ないシンナーやマリファナなどの場合は、短期間に薬物依存までにいたるケースは少ないのですが、依存性の高い薬物の場合は、最初はファッション感覚で遊びのつもりでも、数回の乱用でいつのまにか依存症となってしまいます。Sやスピードなどと呼ばれている覚せい剤の場合がこれです。 このケースでは、乱用のどの段階で専門家が関わるかが非常に重要です。私の経験からいって、乱用者が集団使用のみを行っているケースでは、遊びや仲間との集団意識から乱用している場合が多く、集団からの離脱、家庭や学校での処遇改善や薬物の危険性についてのきちんとした知識を身につけさせることで、比較的にたやすく薬物乱用から抜け出すことができます。これは、乱用者本人に、反省や悔悟の気持ちがあり家族の適切な対応が得られる揚合ならば、教師や保健所の担当者がその回復に直接関わり回復させることも可能です。私は、そのようなケースでは、乱用者と日々の生活についての約束を作り、それをきちんと実行させていくという生活指導を行います。

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 また、それと同時に、乱用者の家族を、各都道府県の精神保健福祉センターや一部の保健所、一部のダルクで行っている家族教室や家族会に参加させます。当然のことながら、乱用者と最も多くの時間を共用しその回復に最も関わることになるのは家族です。家族自身が、薬物の真の姿を知り、そして乱用者へのあるべき対応を学ぶことは大きなカとなります。 本人に、回復へのまた遊び中心の生活から通常の学生としての生活へ戻ることへの意欲がない場合は、対応が難しくなります。このようなケースでは、本人を薬物治療の専門病院へ通院させ、薬物の乱用によって自らの脳や内蔵機能にどの程度のダメージが生じているか、このまま乱用を続ければどうなるのかをきちんと医師から指導を受け、本人の自覚と薬物からの離脱への意志を作ろうとします。 この場合も、上記のケースと同様に、家族にも動いてもらいます。 しかし、単独使用にまで入っているケースでは、 3の依存型になっている場合がほとんどで、その回復には多くの時間と努力を要します。 これは、 2の非行型についても同様のことがいえます。集団使用のレベルならば、医療機関等で適 切な治療を受け、断薬の動機付けを受けることにより、比較的に早く回復できる可能性があります。ただし、このケース、特に暴走族などの非行集団に属しているケースでは、その集団から離脱させなければならないという別な困難もあります。私は、このようなケースの場合は、本人の生活する地域から離れたダルクヘ 1~ 3ヶ月程度入所させ薬物乱用や暴走行為などからやっとの思いで抜け出しつつある若者たちとの共同生活の中で、自分をもう一度見つめ直しさせます。 このケースでは、暴走族等の 問題集団との関わりが、乱用原因の背景としてあるため、家族には、各都道府県警が設置している青少年相談室等への相談を 勧めます。 

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 これに対して、薬物の単独使用にまで至っている場合は、 3の依存型に分類できます。また、これは、 2つに分けることができます。一つは、生育過程で受けた家庭や学校等での精神的な傷から薬物に逃げ込んでいる場合です。私は、「薬物のカを借りて生きてきた子」と呼んでいます。このようなケースでは、肉体的なケアとともに、依存にいたった精神的ケアや心理的ケア、環境を変えることなども欠かすことができず、摂食障害や依存のすげ替え、自傷行為、自殺などに至ってしまう場合も多く、回復に長い時間と大きな困難が必要です。また、このケースでは、学校や保健所等の相談機関は 完全に無力であり、医療の領域での長期の入院を伴う対応となります。 二つ目は、 1や 2のケースから、薬物の一定期間の乱用をへて薬物への依存が形成 された場合です。このケースで最もしてはいけない対応は、親や教師、担当者等が 抱え込み、愛のカで救おうとすることです。薬物依存は、依存症という病です。病は、愛のカで回復させることはできません。むしろ「底付き」すなわちもうこれ以上薬物を使い続けることはできないという自覚の形成 を妨げ、それどころか、まだ自分には自分を見捨てていない人がいると安心して薬物乱用を続けさせてしまうイネイブラー(薬物乱用を助ける人)」となってしまう可能性があります。速やかに専門医療機関に相談し、医療機関の治療と自助グループ特にダルクヘの入所、通所を通して、薬物なしの日を一日一日と積み重ねさせ、薬物から離脱させていくことが大切です。 どのような薬物でも、私の経験からいって、その乱用は、乱用者の精神成長を止めます。そして、明日への意欲や希望を奪っていきます。そして、乱用者の回復には、乱用した期間の数倍の時間を必要とします。この意味からいっても、私たちに今求められているのは、若者たちへの小学校期からの薬物予防教育の徹底によって、これ以上の乱用者を増やさないことと、乱用のできる限り早い段階で相談できる窓口を充実させ、それを発見し対応できる体制を作ることです。

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依 存 度 対 処 法

なにかおもしろいことはないか↓

薬物との接触・乱用開始↓

趣味より薬物↓

学校より薬物↓

友人より薬物↓

家族より薬物↓

食事より薬物↓

命より薬物

薬物供給の根絶家庭や学校での予防教育

早期発見家庭や学校での指導

家庭や学校での処遇改善少年保護専門機関への相談薬物専門医療機関への相談

少年保護専門機関による治療薬物専門医療機関による治療

自助グル偏プ等への 参加↓

薬物専門医療機関への入院露助グループ等への 入所

精神医療へ

図7 薬物依存の進行にあわせた対処法

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 この対処法は、私の経験から、薬物依存の進行とそれに対応した対処の例をあげてみました。これは、あくまで一つの目安であり、絶対的なものではありません。 私の経験からいって、できる限り乱用早期に発見し、できる限り多くの入が関わっていけばいくほど回復が早いように思えます。

9.青少年に教えなければならない七つのポイント 今回の第五次薬物汚染期(第三次覚せい剤乱用期)を収束させるために、最も重要なことは、予防教育です。教育というと、すぐ学校が思い浮かびますが、学校はもちろんのこと家庭、地域など青少年に関わるすべての社会できちんとした予防教育を展開することが、現在求められています。小学校の低学年頃から、きちんとした薬物に関する予防教育を与え、自らあらゆる薬物の誘いに対して「NO」といえる勇気を育てることは、私たち大人の責務です。 この予防教育を展開していく場合に重要なポイントは、薬物を、シンナーや覚せい剤などに特定せず、それらの薬物乱用へのゲートウェイ(入り口)となっているアルコールやタバコの乱用防止から入ることです。私の経験や様々な統計資料 から見ても、「あぶり」で覚せい剤を乱用した青少年の 9割以上がタバコの経験者でした。 また、実際の予防教育においては、ただ単に「薬物は怖い。人間を止めることになる。」というような脅しではなく、一つ一つの薬物について、その性質、乱用した場合の精神や身体への影響などを、正確に教えていく必要があります。ところが、現実には、現在の日本に、きちんと薬物の予防教育を展開できる人間は、数えることができるほどしかいません。まずは、予防教育をきちんとできる人間を、全国的に多数養成していくことも求められています。 以下に、薬物予防教育の七つのポイントを書いておきます。また、学校での予防教育の展開例を、私の経験から書いておきます。

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1.アルコール・タバコは、嗜癖性・依存性の強い薬物である。2.アルコール・タバコは、他の薬物への「ゲートウェイドラッグ(入口の薬)」となる。3.アルコールを飲めるか、飲めないかは体質である。4.青少年期からの薬物乱用は、薬物依存症の危険性を確実に増加させる。5.ストレスやつらさ、悲しみ、寂しさなどは、アルコールや薬物を乱用しなくても乗り切れる。6.若者一人一人が、そのままでかけがえのない価値のある存在である。7.薬物の乱用は、犯罪であると同時に病気である。          (アルコール問題全国市民協会の資料より改編)

図8 薬物予防教育の七つのポイント 

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学  齢 予防教育の内容例 関係機関小学校低学年 テーマ「ドラッグと戦う人たち」

・麻薬取締犬と触れ合おう   ・税関で体験学習

大蔵省税関

小学校高学年 テーマ「ドラッグの恐ろしさ」・薬物対策車を招いて

・薬物乱用防止ビデオ鑑賞 ・感慈文、ポスターなどの制作

厚生省麻薬取締官事務所各都道府県警察各都道府県薬務課

中学校 テーマ「ドラッグの素顔」 -ドラッグ乱用防止週間の設置 ・ドラッグ乱用予防講演 ・各教科でドラッグ関連授業 の展開 ・地域に乱用防止ポスター掲示

各都道府県薬務課各都道府県警察厚生省麻薬取締官事務所ダルク

高等学校 テーマ「ドラッグが導く人生」-ドラッグ乱用防止週間の設置 ・ドラッグ乱用予防講演 ・各教科でドラッグ関連授業 の展開 ・地域に乱用防止ポスター掲示 ・街頭で乱用防止キャンペーン

ダルク各都道府県薬務課各都道府県警察厚生省麻薬取締官事務所

図9 学齢に応じたドラッグ予防教育の展開例 

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10.薬物に関する関係諸機関

 現在の日本には、残念ながら青少年の薬物乱用や薬物依存に関して、きちんと相談にのり対処できる機関は、ほとんどありません。本来、この問題に関して、中枢をしめるべき各都道府県の精神保健福祉センターも、ごく一部の都県のセンターが多少対応できる程度で、ほとんど役に立ちません。また、保健所に関してはもっと悲惨な状況で、この問題に対する専門家をきちんとおいている保健所は、私が知る限りありません。私が所属する教育の現場でも、残念ながら私の知る限り皆無です。 医療機関についても同様のことがいえます。薬物に対しては、精神科や神経科が対応しますが、緊急時の解毒については、現在多くの病院が面倒を見てくれるようになりましたが、精神的ケアや断薬への動機付けプログラム・社会復帰プログラム、家族会や家族教室を持つ病院は、全国に数えるほどしかありません。 更生施設についても、公的なものは、日本にはありません。薬物依存専門の自助グループでは、 DARC(ダルク)と APARI(アパリ)が活動しているだけです。 以下に紹介する諸機関は、あくまで私が実際のケースで活用したことのあるもののみを書きました。また、各機関の詳しい活動内容やその機能・評価等については、ケースや担当者によって異なるため、先入観をもたれてはいけないので明記しませんでした。いずれにしても、下記の機関で救われた多くの青少年が存在することは事実です。下記の機関に連絡・相談をしたい場合は、私のほうからご紹介いたしますので、まず私にご一報ください。

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機関の種類 機  関  名 内  容警察機関 各都道府県ユーステレホンコーナー 電話相談・面接相

医療機関 神奈川県立精神医療センターせりがや病院赤城高原ホスピタル埼玉県精神保健福祉センター会津若松羽金病院小樽石橋病院国立下総療養所国立肥前療養所茨城県立友部病院

解毒通院治療入院治療更生プログラム

更生施設 ダルク(全国 30カ所で活動中)APARI(群馬県藤岡市他)その他

電話相談通所プログラム入所プログラム

図10 関係諸機関 

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             一一一一一 参 考 文 献 一一一一一

・「ドラッグ世代一第五次薬物汚染期の若者たち一」 水谷 修著 太陽企画出版

・「中高生の薬物汚染一知るべきこととできること一」 水谷 修共著 農文協

・「さらば、哀しみのドラッグ」 水谷 修著 高文研

・「さよならが、いえなくて一助けて、哀しみから一」 水谷 修著 国本評論社

・「薬物乱用一今、何を、どう伝えるかー」 水谷 修著 大修館書店

・「薬物乱用防止教育一その実際と、あるべき姿-」 水谷 修編著 東山書房

・「さらば、哀しみの青春」 水谷 修著 高文研

・「ドラッグなんていらない」 水谷 修著 東由書房  2004年 2月 20日出版

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