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施工編 1.一般

本施工マニュアルは、アラミド繊維シートを用いて既存鉄筋コンクリート

橋脚の耐震補強を行う工法の内、単位幅当りの繊維量の大きな高耐力のアラ

ミド繊維シートを使用した工法の施工に適用する。高耐力アラミド繊維シー

トとは、単位幅あたりの引張耐力が90tf/m以上の製品について呼称する。

アラミド繊維シート補強工法は,工法の特徴を理解し,本要領に従い施工

しなければならない。本要領に記載されていない事項については、関連する

基・規準および要領による。なお、本要領では以下の基・規準および要領を

引用している。

・日本道路公団;設計・施工要領第2集 平成2年7月

・土木学会;コンクリート標準示方書 平成8年版 施工編

・日本道路協会;道路橋示方書・同解説 Ⅰ~Ⅴ 平成8年12月

・アラミド補強研究会;アラミド繊維シートによる鉄筋コンクリート橋脚

の補強工法設計・施工要領(案) 平成10年 1月

・(財)鉄道総合技術研究所:アラミド繊維シートによる鉄道高架橋柱の耐

震補強工法設計・施工指針 平成8年11月

アラミド繊維シート補強工法は,コンクリート表面にアラミド繊維シートを

エポキシ系樹脂で接着含浸し,AFRP シートとして機能を発揮させる工法である。

本工法は,各工種毎の施工手順を定めており,これらを遵守して形成された

AFRP シートが工法としての所定の機能を発揮することができる。したがって,

それらの内容を理解したうえで施工を実施する必要がある。

現在、AFRP シートは、その引張耐力が 40tf/m~ 120tf/m(目付け量で 235g/m2

~ 830g/m2) の製品が開発されている。本マニュアルは、そのうち 90tf/m~

120tf/m のシートの施工方法に付いて規定したものである。高耐力のアラミド

繊維シートは、その機械的性質ついては従来の製品と同一の性能を有している

ものの、シート中の繊維量が増加した事により、シート厚およびシート重量が

増加し、施工性に関しては若干の違いを有している。したがって,相違点を理

解したうえで施工を実施する必要がある。将来、単位幅あたりの耐力を変える

場合には、強度試験に加えて施工性試験等によりその性能を確認し、十分な検

討を加えたものを使用するものとする。なお、表中の 90tf シートは従来の手法

で施工する事が可能である。しかしながら、より良い品質を確保するために、

新開発の 120tf シートと同様の施工手順を取るものとした。

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アラミド繊維シート補強工法は、以下の手順によるものとする。

図-解 1.1 アラミド繊維補強工法の施工手順

準備工

表面処理工

下地処理工 不陸調整工プライマー工

アラミド繊維シート巻立て工

仕上工

現地踏査 既設橋脚調査

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2.使用材料

(1) アラミド繊維シート  アラミド繊維シートは、アラミド1もしくは、アラミド2を用いるものとする。 比重; アラミド1 1.45、アラミド2 1.39

(2) プライマー  プライマーは、エポキシ樹脂系を用いる。ただし、プライマーの選択に当た っては、次の規格を満足するものとする。  付着強度; 15kgf/cm2以上 (JIS K 5400による。補強対象コンクリート         の引張強度以上の強度を有する試験板を用いる。)  比重; 0.85~1.30 (JIS K 5400による)  可使時間; 0.3時間以上 (JIS K 6833による)  粘度; 施工条件を考慮して、十分に機能を発揮できるものとする。

(3) 含浸接着樹脂  含浸接着樹脂は、エポキシ樹脂の常温硬化型を用いる。ただし、含浸接着 樹脂の選定に当たっては、次の規格を満足するものを選択する。  比重; 1.00~1.30 (JIS K 5400による)  可使時間; 0.3時間以上 (JIS K 6833による)  引張強度; 300kgf/cm2以上 (JIS K 7113による)  曲げ強度; 400kgf/cm2以上 (JIS K 7203による)  引張せん断強度; 100kgf/cm2以上 (JIS K 6850による)  未硬化物の物性: 環境条件を考慮して、施工時に必要な粘着性および

含浸性を有し、アラミド繊維シートの垂れや剥離に関する抵抗性が確認されたもの。

(4) 不陸調整材  不陸調整材は、エポキシ樹脂の常温硬化型を標準とし、プライマー、含浸 接着樹脂との十分な接着が可能なもので、作業に適した粘度を有しなければ ならない。不陸調整材の選定に当たっては、次の規格を満足するものを選択 する。  付着強度; 15kgf/cm2以上 (JIS K 5400による。補強対象コンクリート         の引張強度以上の強度を有する試験板を用いる。)

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(5 )AFRPシート

AFRPシートは、次の性質を満足すものを用いる。

本要領に示したAFRPシートの引張り試験方法により求めた引張強度および引

張弾性率が、以下の規格である必要がある。

アラミド1;引張強度 21000kgf/cm2以上、引張弾性率 1.2±0.2×106kgf/cm2

アラミド2;引張強度 24000kgf/cm2以上、引張弾性率 0.8±0.15×106kgf/cm2

(6 )仕上げ材

仕上げ材は、紫外線を遮断し、その他の条件に応じた必要な性能を有する材

料を選択する。

ここでは、アラミド繊維補強工法に用いる材

料のみを規定する。そのほかの材料(鉄筋・コ

ンクリート・セメント・補修用材料など)につ

いては、1章で述べた基・規準および要領など

の従来の規定を準用する。AFRP シートは、高強

度、軽量かつ耐久性に優れており、異形棒鋼(S

D295A)と比較して強度が約 8~10倍、

弾性率がほぼ 1/3~1/2 の引張特性を示す。また、

AFRPシートは、異形棒鋼のように降伏棚がなく、

破断強度まではほぼ弾性であることも大きな特

徴である(図-解 2.1)。

(1)アラミド繊維は、引張強度および引張弾性率により大きく分類され、これらの値により

アラミド繊維の材料を規定することができる。アラミド1は、ケブラーとトワロンであり、高

弾性率を特徴としている。アラミド2はテクノーラであり、高強度を特徴としている。表-解

2.1 および表-解 2.2 に代表的な高耐力 AFRP シートの種類と材料特性を示す。

図-解 2.1 各種材料の応力~ひずみ曲線

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(3)高耐力アラミド繊維シート用の含浸接着樹脂は、厚さの大きいシート中に浸透するため

の良好な含浸性と、重量の大きいシートをコンクリート面に確実に貼付ける高い粘着性の相反

する性質を両立させることが必要となる。高耐力アラミド繊維シートに使用されている代表的

な含浸接着樹脂の未硬化時の物性を回転粘度計を用いて測定した結果を付属資料4に示す。含

浸性(染込みやすさ)に対する一般的な指標である動的粘度は、環境温度が 20℃の室内試験に

おいて、夏用タイプで 20000mpa・s 以下、冬用タイプで 14000mpa・s 以下が概ね適していると考

えられる。同様に粘着性(たれにくさ)の一般的な指標であるチクソインデックス(Ti)値は、

夏用、冬用何れのタイプにおいても 3.0 以上が目安となるようである。しかしながら、粘度や

Ti 値の他にも施工性に影響を与える要因は様々なものがあり、各社の製品間の粘度や Ti 値の

違いも大きなものであるため、これらの数値は製品製造時の品質管理用値としての意味合いが

強いと判断される。したがって、たれや剥離に対する抵抗性を付属資料3に示す剥離抵抗性試

験により確認し安全を期すものとした。なお、酷暑期や厳寒期等の特殊な環境条件を想定した

含浸接着樹脂は、20℃の室内試験のみでは評価が難しいため、それぞれの適用温度条件の下で

未硬化時の物性を試験する必要がある。

また、新たな製品開発により、上記の粘度や Ti 値の範囲外でも良好な施工性を有する含浸接

着樹脂が開発されることも予想され、今後も数値の範囲や指標そのものを検討していく必要が

あることにも留意されたい。

現在までに性能の確認された高耐力アラミド繊維シート用樹脂の一例を付属資料5に示す。

(5)JISにはアラミド繊維および樹脂に関する規格はなく、FRP としての強度の試験方法

が規定されている。そこで、本要領では、JISの試験方法を引用して使用材料を規定するこ

ととした。将来、公的規格が定められた場合には本条文を改訂する必要がある。

本要領を作成するにあたり、試験に使用したアラミド繊維シートは、アラミド1で 623g/m2

から 830g/m2、アラミド2で 525g/m2から 700g/m2ものであり、この範囲を大きく外れるものを

使用する場合は別途材料試験を行う。

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(6)AFRP シートは、アラミド繊維およびエポキシ系樹脂ともに紫外線による強度低下が生ず

る。既往の耐久性試験において 15 年相当におよぶ促進暴露試験の結果、遮光処置を行わない場

合で 3%の強度の低下で、フッ素系塗装によって遮光した場合で強度低下は認められない。

AFRP シート表面を被覆しない場合、樹脂表面層は若干劣化するが、樹脂表面が紫外線を吸収す

るため、内部のアラミド繊維が劣化することを防止することができる。

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表-解 2.1 AFRP シートの種類と材料特性(1)

繊維種類 単位 アラミド1

シート区分 標準品 ← 高耐力 ←

品 番

AK-40

AW-40

AK-60

AW-60

AK-90

AW-90

AK-120

AW-120

繊維目付量 g/m2 280 415 623 830

厚さ mm 0.193 0.286 0.430 0.572

引張強度 kgf/cm2 21000 ← 21000 ←

引張弾性率 kgf/cm2 1.2×106 ← 1.2×106 ←

破断伸度 (%) 1.8 ← 1.8 ←

保証耐力 tf/m 40 60 90 120

備考 本指針の適用外 本指針を適用

表-解 2.2 AFRP シートの種類と材料特性(2)

繊維種類 単位 アラミド2

シート区分 標準品 ← 高耐力 ←

品 番 AT-40 AT-60 AT-90 AT-120

繊維目付量 g/m2 235 350 525 700

厚さ mm 0.169 0.252 0.378 0.540

引張強度 kgf/cm2 24000 ← 24000 ←

引張弾性率 kgf/cm2 0.8×106 ← 0.8×106 ←

破断伸度 (%) 3.0 ← 3.0 ←

保証耐力 tf/m 40 60 90 120

備考 本指針の適用外 本指針を適用

(2)プライマーは、コンクリートとアラミド繊維シートが確実に接着し一体化するために

使用するもので、コンクリートとの十分な接着強度が得られるものでなければならない。

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(3)高耐力アラミド繊維シートは、シートの厚さから含浸に要する樹脂量が多くなる。特に

下塗りの樹脂が不足した場合、コンクリートとシート界面の樹脂が不足して接着不良状態が懸

念される。このため、壁面をだれることの無い性質を持つ含浸樹脂を必要な量だけコンクリー

ト表面に塗布することが重要である。

含浸接着樹脂は、アラミド繊維シート中に浸透するための良好な含浸性を有すると共に、貼

付け時にコンクリート面に確実にシートを保持する粘度も必要である。高耐力アラミド繊維シ

ートは、シート中の繊維量すなわち重量の増加により、含浸接着樹脂も従来の製

品に比べてシートを保持するための高い粘性が必要となる傾向がある。含浸性と

粘着性は相反する性質であり、これらの両立にもっとも関連の深い配合設計上の指標としては

粘度およびチクソインデックス(Ti 値)が一般的に挙げられる。粘度や Ti 値の他にも施工性

に影響を与える要因は様々なものがあり、粘度や Ti 値が等しくても直ちに同一の施工性を示す

ものではないが、あらかじめ施工時の含浸性および粘着性が確認された樹脂に関し

ては、粘度と Ti 値を用いることにより現場での品質管理は可能である(付属資料4参照)。

これらの点を踏まえ、高耐力アラミド繊維シートの施工においては、実施工を模擬した施工

試験や付属資料3に示す強制剥離試験により品質を確認された樹脂を使用し、受入れ時に納入

ロットの樹脂の施工性が問題ないことを製造者発行の試験成績書で確認するものとした。付属

資料5に高耐力アラミド繊維シートに使用可能な樹脂を示す。

(5)JISにはアラミド繊維および樹脂に関する規格はなく、FRP としての強度の試験方法

が規定されている。そこで、本要領では、JISの試験方法を引用して使用材料を規定するこ

ととした。将来、公的規格が定められた場合には本条文を改訂する必要がある。

本要領を作成するにあたり、試験に使用したアラミド繊維シートは、アラミド1で 623g/m2

から 830g/m2、アラミド2で 525g/m2から 700g/m2ものであり、この範囲を大きく外れるものを

使用する場合は別途材料試験を行う。

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(6)AFRP シートは、アラミド繊維およびエポキシ系樹脂ともに紫外線による強度低下が生ず

る。既往の耐久性試験において 15 年相当におよぶ促進暴露試験の結果、遮光処置を行わない場

合で 3%の強度の低下で、フッ素系塗装によって遮光した場合で強度低下は認められない。

AFRP シート表面を被覆しない場合、樹脂表面層は若干劣化するが、樹脂表面が紫外線を吸収す

るため、内部のアラミド繊維が劣化することを防止することができる。

AFRP シート表面に被覆をすれば紫外線の影響を直接受けることはほとんどないため、アラミド

繊維補強工法の耐久性を向上させることも目的として、表面被覆を行うこととした。

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2.施工

3.1 施工計画

工事に先立ち材料の搬入と保管、機材の搬入、下地処理、アラミド繊維シ

ートの貼り付け及び巻き付けについて検討し、施工および工程の計画を立て

なければならない。

既設橋脚の補強工事では、環境条件等で制約される場合が多く、また材料が

建設分野では新素材と呼ばれるものを使うことから、施工計画を立てるには検

討が必要である。例えば、樹脂の調合には、有機溶剤等の危険物を使用するた

め、作業者に安全教育を行う必要がある。また、巻立ての施工時期における気

温や湿度の条件を留意しなければならない。施工手順と品質管理方法は、以下

に規定する。

3.2 施工手順

3.2.1 表面処理工

必要に応じて以下に示す(1)~(3)の表面処理工を行う。

(1)下地処理工

既設橋脚のコンクリート表面は、適切な下地処理方法により、脆弱部や汚

れを取り除かなければならない。また、橋脚等の隅角部については突起等を

除去し、半径10㎜以上の面取りを行わなければならない。事前調査で補修

が必要と認められた鉄筋の露出部、著しい断面欠損部、豆板等の不良部およ

び型枠目地の段差は、補修し平坦性を確保しなければならない。有害なひび

割れは修復しなければならない。

(2)プライマー工

既設コンクリートとアラミド繊維シートとの接着性を向上させるため

に、下地処理を行った既設コンクリ―ト表面にプライマーを塗布しなければ

ならない。

(3)不陸調整工

コンクリート面の段差等については不陸調整材を用いて平坦に仕上げな

ければならない。

(1)アラミド繊維巻立て工法は、接着剤による接着耐久性が工法の信頼性や耐

久性を左右するものであるため、橋脚等の表面の風化層、レイタンス層等の脆

弱部分や汚れ等は、適切な処理方法にて除去しなければならない。特に、曲げ

補強を行う場合は骨材表面が露出するまで下地処理しなければならない。また、

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隅角部については突起および段差を確実に除去しなければならない。通常のア

ラミド繊維シートを使用する場合、既存橋脚が面取りを有する場合は特別の処

置を必要とせず、面取りが行われていない場合にのみ半径10㎜以上の面取り

を行う事と規定している。しかしながら、高耐力のアラミド繊維シートを使用

する場合は、隅角部にアラミド繊維シートを確実に追従させ浮きを防止するた

め、面取りの有無に依らず半径10㎜以上の面取りを行わなければならないも

のとした。表面処理工(下地処理工)はディスクサンダー処理を標準としてよい。

損傷の補修としては、断面修復工とひびわれ注入工が考えられる。断面修復

工は、鉄筋の露出や著しい断面欠損部分、豆板等の不良部分がある場合に、そ

の部分のはつりとともに、鉄筋を防錆処理した後、コンクリートと同等以上の

強度を有する断面修復材で補修し、平坦に仕上げなければならない。また、ひ

びわれが生じている場合には、その部分に接着したアラミド繊維シートに過大

な応力集中が起こる可能性があるので、低圧樹脂注入工法など適切な注入方法

でひび割れを補修しなければならない。

(2) プライマーの塗布は、コンクリート表面が十分に乾燥していること、

雰囲気温度が5℃以上である必要がある。ただし、施工現場の保温や湿潤面専

用プライマーの使用など適切な処置を講じる場合はこの限りではない。

標準的な施工手順と注意点を以下に示す。

① プライマー工に先立ち、コンクリート表面が乾燥状態であることを確認する。

② プライマーを所定の配合比で均一になるまで十分に撹拌する。

③ 1 回の調合量は可使時間以内に使用し終える量とする。

④ 施工面にローラー刷毛にてプライマ―を均―に塗布する。

⑤ 製品により規定された標準使用量を遵守する。ただし、標準使用量は、雰囲

気温度やコンクリートの表面状態により変動することに留意する。

表-解 3.1 コンクリートの乾燥状態

目視による状態 表面水率 プライマーの種類

白く乾燥している。 8%未満 一般用プライマー

黒く変色している。 8~10% 湿潤用プライマー

結露している。 10%以上 乾燥処置を行う

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(3)不陸調整工は、下地処理工および断面補修工を行った後に残された小さな

型枠段差や小さなエアホールなど、アラミド繊維シート巻立て後に気泡や浮き

の原因となる不良部分を仕上げるために実施する。不陸調整工に用いる材料は、

樹脂系のパテ材やモルタルなどを適宜選択して使用する。

小さなエアホールの数が多い場合、左官仕上げの要領で全面仕上げを行う事

が望ましい。特に、高耐力シートを使用する場合、浮き、膨れとコンクリート

面に直接塗布する第1層目の下塗り量の不足を防止するために不陸調整の仕上

がり状態には注意しなければならない。

3.2.2 アラミド繊維シ-ト巻立て工

コンクリ―トの表面にローラーや刷毛で含浸接着樹脂を塗布した後、速や

かにアラミド繊維シートを貼付けなければならない。

アラミド繊維シートの巻立ては、原則として雰囲気温度が 5℃以下、あるい

は雨天の場合は、施工してはならない。ただし、施工現場の保温、あるいは雨

がかりの防止等の適切な処置を行う場合はこの限りではない。

標準的な施工手順と注意点を以下に示す。

① プライマーが指触乾燥していることを確認する。(揮発型プライマー使用

時)

② アラミド繊維シートは、設計図書に従い貼付け作業に適した長さに切断する。

③ 含浸接着剤を所定の配合比で均一になるまで十分に撹拌する。

④ 含浸接着剤の 1 回の調合量は可使時間以内に使用し終える量とする。

⑤ 施工面にローラー刷毛にて、下塗りの含浸・接着剤を均一に塗布する。アラ

ミド繊維シートへの樹脂含浸は、下塗りの樹脂を含浸させる事が基本であり、

表-解 3.2.2 に示す下塗りの標準塗布量を遵守する。

⑥ 含浸接着剤の塗布面にアラミド繊維シートを押しつけ、繊維方向に気泡を除

去しながら貼付ける。この際、シートの弛みが生じないよう繊維方向に張力

を加えた状態で徐々にシートを巻き出す。

⑦ FRP 用脱泡ローラーやゴムへラを使用し、空気溜まりを除去するとともに含

浸接着剤を十分にアラミド繊維シートに含浸させる。

⑧ 高耐力のアラミド繊維シートを使用する場合、下塗りの含浸作業後、上塗り

作業は直ちに行わず、15 分程度の養生を行い樹脂の自然含浸を期待する。

ただし、含浸接着樹脂の可使時間を超えて放置してはならない。

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⑨ 貼付けたアラミド繊維シートの上から、上塗り樹脂として含浸接着剤をロー

ラー刷毛にて均一に塗布し、含漫・接着剤の含浸を完全に行う。

⑩ 製品により規定された標準塗布量を遵守する。ただし、標準塗布量は、雰囲

気温度やアラミド繊維シートの種類により変動することに留意する。

⑪ 2 層以上を積層する場合には、⑤~⑧の作業を繰り返す。

⑫ 連続して多層張りを行う事により品質が低下すると予想された場合には、下層の

含浸接着樹脂の指蝕乾燥状態を確認した後に上層の施工を行わなければな

らない。

⑬ 次層の巻立てに入る前に下層のシートの表面状態を観察し、浮きや膨れ等が

有った場合は、樹脂の硬化状態に応じてエアー抜きや樹脂注入などの処置を

行ってから次工程に入らなければならない

⑭ 施工中に結露が発生した場合には、ウェスなどで空拭きし乾燥等の対策を行

った後に施工する。

⑮ 降雨時の雨水や強風時の砂などが付着しないように、必要に応じてビニール

シート等で養生を行わなければならない。

表 -解 3.2 含浸接着樹脂の標準塗布量

(tf/m)

標準塗布量(g/m2)

(下塗りと上塗りの合

計)

下塗りの標準

塗布量(g/m2)

90 1000 550

120 1200 700

3.2.3 仕上げ工

施工場所の立地条件および環境条件に応じて仕上げ工を行わなければならない。

アラミド繊維シート補強工法の耐久性を向上させるため、遮光ならびに外力

からの保護を目的とした仕上げ工を行わなければならない。仕上げ材の種類に

は、樹脂系の塗装材料、モルタル吹付けや,吹き付け材料に塗装を組み合わせ

た複合塗膜等様々な種類があり、施工場所の立地条件、環境条件さらに美観に

も配慮して適切な製品を選定することが望ましい。

耐火性能が要求される場合、条件に応じて温度が 220℃を超えない耐火被覆構

造とする必要がある。

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4.品質管理および検査

(1)品質管理

施工開始前に、各使用材料の品質を確認するとともに、機械および設備の

性能を確認しなければならない。また、施工に際しては以下の計測・試験を

実施して品質を確保しなければならない

1)環境条件の計測

2)巻立て表面の観察

3)AFRP シートの材料試験

4)AFRP シートの接着試験

5)仕上げ材接着試験

(2)検査

施工が完了した後、各使用材料の数量検査、出来形検査を行わなければな

らない。また、AFRP シートの貼付け状況、仕上げ工の仕上がり状況を目視等

により確認しなければならない。

(1) 品質管理

施工開始前に、各使用材料の品質を製造者発行の試験成績表で確認しなけれ

ばならない。また、使用する施工機械および設備の性能を製造者発行の仕様書

により確認しておかなければならない。

施工中の品質管理として実施する計測および試験項目は、以下の方法を標準

とする。

1) 環境条件の計測

環境条件の計測は、プライマー塗布工およびアラミド繊維シート巻立て工に

おいて使用する樹脂材料の品質管理を目的として行い、樹脂材料の施工条件を

満足していることを確認する。

計測項目は、天候、施工場所の雰囲気温度、コンクリートの表面水率、およ

び AFRP シート表面の結露の有無等がある。それぞれ目視または計測機器を用い

て測定を行い、施工条件を満たしたことを確認してから施工を行う。

環境条件の計測は、施工期間中の全日において施工開始前に実施しなければ

ならない。表-解 4.1 に計測された外気温による品質管理手法の一例を示す。

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表-解 4.1 外気温による品質管理例

外気温*1 冬用樹脂 夏用樹脂

注意事項 対策 注意事項 対策

5℃

以下

施工性の著しい

低下

総合的な施工対策 適用外

5℃~

10℃

含浸性の低下、

硬化の遅延

白化現象の発生

含浸状態に注意

補助具の使用*3

温暖所に保管

保温養生

適用外

10℃~

15℃

適正温度

適用外

15℃~

20℃、

*2

粘着性の低下、

可使時間の短縮

接着状態に注意

1 回の作業量に注意

冷暗所に保管

直射日光を遮蔽し

て施工

含浸性の低下、

硬化の遅延

含浸状態に注意

補助具の使用*3

温暖所に保管

保温養生

20℃~

25℃

適用外 適正温度

25℃~

30℃

適用外 粘着性の低下、

可使時間の短縮

接着状態に注意

1 回の作業量に注意

冷暗所に保管

直射日光を遮蔽し

て施工

30℃

以上

適用外

施工性の著しい

低下

総合的な施工対策

樹脂の変更

*1:温度範囲は、使用する含浸接着樹脂の温度特性により異なる。

* 2:樹脂の適用温度が重複する範囲においては、気象条件、立地条件等を考慮してタイプを

選択する。

*3:アイロンやヒートローラー等の加熱により含浸性を補助する用具

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2) 巻立て表面の観察

アラミド繊維シート巻立て工の表面の観察による管理項目を表-解 4.2 に、対

象となる不良状態を表-解 4.3 にそれぞれ示す。

アラミド繊維シートの直進性に影響する位置ずれは、層数の増加と共に位置

ずれが累積する傾向が有るので、1層毎に観察し許容範囲内となるように施工

する。酷暑期や厳寒期、連続して多層貼りを行う場合などは、含浸接着樹脂の

状態によりだれが生じ易くなる場合があり注意が必要である。

アラミド繊維シートの接着性に影響するシートの浮きや膨れ等の未接着部は、

巻立て後、硬化と共に徐々に発生し進行する。このため、次層の巻立てに入る

前に下層のシートの表面状態を観察し、浮きや膨れ等が有った場合は、樹脂の

硬化状態に応じてエアー抜きや樹脂注入などの処置を行わなければならない。

直射日光が当たる施工面は、浮きや膨れが発生し易くなる場合があり、注意が

必要である。

表-解 4.2 品質管理項目

管理項目 管理値 対象となる不良状態

直線性 不良部の位置ずれの大きさが

辺長または直径の 1/200 以下

波打ち、傾斜、段差、

だれ等の位置ずれ

接着性 不良部の面積が 1個に付き 10cm2以下、

不良部の合計面積が全面積の 0.5%以下

浮き、膨れ等の

未接着部

表-解 4.3 施工不良の種類

管理項目 名称 状態 原因

波打ち 繊維が波打ち直線性が無い 張力不足、整形不足

直線性 傾斜

段差

繊維の方向が補強方向より傾く。

継手部に段差が生じる

張力不均等、整形不足

だれ 自重で局所的に垂れ下がれる。

張力不足、樹脂量過多、

含浸不足、高・低温時の施工

接着性

浮き シートは平面であるが付着が無い

含浸不足、樹脂量過少、

不陸調整不足、直射日光

膨れ シートが膨れ上がり、付着が無い

含浸不足、樹脂量過少、

不陸調整不足、直射日光

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- - 18

3)AFRP シートの引張試験

AFRP シートの引張試験は、アラミド繊維シート巻立て工における AFRP シー

トの品質管理を目的として行い、AFRP シートの複合材料としての強度性能を評

価する。

AFRP シートの引張試験は、JIS K 7073 に準拠して行うものとする。試験片は、

現場で施工時に製作し、硬化後引張試験を行い強度等の確認を行う。なお、試

験頻度は各工事につき 1 回以上とし、試験片の本数は、5本以上とする。

① 試験片の形状・寸法

AFRP シート:幅 12.5mm×長さ 200mm、

試験区間長さ 100mm

② 引張強度と引張弾性率

引張強度:次表に示す規格引張強度以上。

引張弾性率:次表に示す規格値の範囲内

表-解 4.4 品質規格 シートの種類 項 目 規 格 アラミド1 引張強度 21000kgf/cm2以上

引張弾性率 1.2±0.2×106kgf/cm2 アラミド2 引張強度 24000kgf/cm2以上

引張弾性率 0.8±0.15×106kgf/cm2 試験方法:JIS K 7073

4)AFRP シートの接着試験

AFRP シートの接着試験は、表面処理工におけるコンクリートの状態、および

アラミド繊維シート巻立て工における AFRP シートの積層化の均質性を品質管

理するために行い、AFRP シートとコンクリート間の接着性能および AFRP シー

ト間の接着性能を評価する。

AFRP シートの接着試験は、JIS K 5400 に準拠して実施する。現位置試験とし

て試験を行う場合、補強区間内に試験個所を設定すると AFRP シートを切断し補

強効果を減ずるため、試験後に試験位置の補修を行うなど注意が必要である。

このため AFRP シートの接着試験は、補強範囲外に試験区間を設定して実施する

ことが望ましい。また、あらかじめ試験用に準備したコンクリート板にアラミ

ド繊維シート貼付けて接着試験を行う方法もある。これらの際、AFRP シートの

貼付けは、補強区間と同様の仕様で行わなければならない。

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なお、試験頻度は各工事につき 1 回以上ととし、試験片の本数は、5本以上

とする。

① 試験片

接着試験用アタッチメントは、接着面が 40×40(mm)の鋼製引張用治具を

用いる。現位置試験によらずコンクリート版を使用する場合、アラミド繊

維シートを接着するコンクリート板の強度は、既存橋脚のコンクリート強

度以上のものを用いなければならない。

② 接着強度

AFRP シートとコンクリートの境界面での剥離や AFRP シート内部での層間

剥離が生じた場合は、不合格とし、AFRP シートとともコンクリートが引き

剥がれれば合格とする。

5)仕上げ材の性能試験

仕上げ材の性能試験は、仕上げ工の品質管理を目的として行い、仕上げ材の

AFRP シートに対するの防護性能を判断するために行う。仕上げ工の目的および

仕上げ材の種類には様々なものがあり、それらに応じて適切な試験方法を選定

しなければならない。

遮光による耐久性の向上を目的とした場合、仕上げ材の遮光効果は、仕上げ

材と AFRP シートの接着試験によって代替え評価してよい。接着試験は、JIS K

5400 に準拠し、同規格中の碁盤目テープ試験、鋼製冶具による引張試験等の中

から、仕上げ材の種類に応じて適切な方法を選択する。

衝撃防護性能および耐火性能を目的とした場合、塗布を行った仕上げ材の厚

さ、および取り付けた板状の緩衝材や耐熱材の厚さがそれぞれの性能に与える

影響が大きいため、これらを測定して評価を行ってよい。

なお、試験頻度は各工事、仕上げ材 1 種類につき 1 回以上とする。

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(2)検査

施工が完了した後、各使用材料の検査を実施する。プライマー、含浸接着樹

脂は、数量検査として空缶の数により確認する。アラミド繊維シートの使用料

は、出来型検査として貼付け面積と積層数を確認する。また、仕上げ材量の使

用量は、材料の種類に応じて適切な検査方法を選択する。

目視による検査で AFRP シートの広範囲の浮きが確認された場合は、内部の気

泡に樹脂注入を行わなければならない。また、仕上げ材に関して AFRP シートの

露出個所が認められた場合は、該当個所の上塗り塗装等を行わなければならな

い。

5.安全管理

エポキシ系樹脂等の汚染・吸入による災害に対して適切な対策をたてなけ

ればならない。さらに、アラミド繊維シート補強工法に関する一般的な注意

事項に対して適切な対策をたてなければならない。

アラミド繊維シート補強工法におけるプライマーや含浸樹脂などのエポキシ

系樹脂を使用や、作業状況が狭隘部や高所作業となることによる労働災害防止

のために、十分な対策をたてければならない。

エポキシ系樹脂等の汚染・吸入による災害の防止のため、以下の対策を行わな

ければならない。

• 樹脂に有機溶剤が含まれているものは第2種有機溶剤に相当するため,有機

溶剤作業主任者を選任して作業の指揮を取らせるなければならない。

• 洗浄に用いる有機溶剤は保管場所を定め,消防法に定められた貯蔵の表示,

掲示,溶剤区分の表示を行わなければならない。

• ハンドミキサー等による樹脂の練り混ぜ時には換気に注意し,必要に応じて

送風機やダクトによる強制換気を行わければならない。

• 樹脂が直接肌に触れると皮膚障害を起こすこともあるので,肌の露出は避け

るとともに,必ず保護メガネ,保護マスク,ビニール手袋等の安全保護具を

着用しなければならない。

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付 属 資 料

付属資料-1 高耐力アラミド繊維シートの施工試験 付属資料-2 樹脂の塗布量に関する接着力試験 付属資料-3 強制剥離試験方法(案) 付属資料-4 含浸接着樹脂の未硬化時の物性試験方法(案) 付属資料-5 アラミド繊維シート用含浸接着樹脂

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付属資料-1 高耐力アラミド繊維シートの施工試験 1.施工性試験概要 単位面積当たりの重量が大きい高耐力シートの模擬施工を行い、貼付出来型の計測を行った。さら

に、施工不良を発生時間で分類し、経時計測により各段階における施工不良の有無とその程度につい

ても計測を実施した。 高耐力アラミド繊維シートは、3種の製品を付属表 2.1に示す含浸接着樹脂との組み合わせで使用

した。各シートの耐力は 90tf/m、幅は 30cm と同等の製品を使用した。含浸接着樹脂は、標準使用量を 1000g/m2とし、その内の下塗りの最低塗布量を 500g/m2として施工を行った。高耐力アラミド

繊維シートの貼付対象は、柱体の模擬試験体としてプレキャストボックスカルバート(1800×1800×2000)の外周を利用した。シートの積層数は、1層のみで下地処理したコンクリート面に直接貼付した。試験体形状寸法を付属図1.1に測定項目を付属表1.2にそれぞれ示す。 施工性試験の実施手順を下記に示す。 ・ ボックスカルバートの周囲にシート割付線および計測規準線をけがく。 ・ 割付線に沿ってシートを貼付する ・ 張付け後直ちに貼付精度の計測を実施する。位置の計測は、規準線からシートの上下端までの

長さとして計測をおこなう。 ・ 樹脂の粘性が増加する可使時間まで20分後、40分後、60分後にシートのだれ、および継

手部の剥離の計測を同様の手順で行う。 ・ 樹脂の指蝕乾燥後、触診により浮き、膨れの

調査を行う。浮き、膨れの大きさは、直行す

る2方向で計測し、楕円形として面積を算出

する。

付属表1.2 計測項目一覧 分類 発生時期 項目 測定方法。 使用器具 Ⅰ 巻立て中 波打ち

歪み ・ 各面を目視により観察し、発生範囲および高度差を計測

目視 メジャー

傾斜 段差

・ 各面の両端部と中央の3点の高さを計測 ・ 継手部の段差の大きさを計測

メジャー メジャー

Ⅱ 巻立て直後 だれ ・ 各面のシート上縁の高さの経時変化を巻き立て直後から 20分毎に 3回測定

メジャー

~可使時間 剥離 ・ 継手部を巻き立て直後から 20分毎に 3回観察

目視 メジャー

Ⅲ 指蝕乾燥頃 浮き ・ 各面の発生状況を触診 ・大きさ別に発生数を集計*

触診棒 メジャー

膨れ ・ 各面の発生状況を触診 ・大きさ別に発生数を集計*

触診棒 メジャー

付属表 1.1 材料の組み合わせ シート 樹脂 1 ケブラー DD グラウト2 トワロン #200AS 3 テクノーラ AR ボンド

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付属図 1.1 シート割り付け線および計測規準線

2.試験結果 試験結果の一覧を付属表 1.3に示す。何れの計測項目に付いても管理値内の結果となった。

付属表 1.3 計測結果 シート種類 分類 発生時期 項目 ケブラ- トワロン テクノーラ

管理値

Ⅰ 巻立て中 波打ち 歪み

発生せず 発生せず 発生せず

傾斜

差:5.0mm 比率:0.28%

差:2.5mm 比率:0.13%

差:1.5mm 比率:0.08%

段差

差:3.0mm 比率:0..17%

差:2.5mm 比率:0.13%

差:2.7mm 比率:0.15%

辺長または 直径の 1/200以下 (0.5%以下)

Ⅱ 巻立て直後 だれ 発生せず 発生せず 発生せず 下降量で 1/400以内

~可使時間 剥離 発生せず 発生せず 発生せず 防止する。

Ⅲ 指蝕乾燥頃 浮き 数量:1個 合計:2.98cm2

比率:0.01%

数量:1個 合計:2.98 cm2

比率:0.01%

数量:3個 合計:7.21 cm2 比率:0.03%

膨れ 発生せず

発生せず 発生せず

1個に付き 10cm2以下 全体で 0.5%以下

計測規準線1

計測規準線2

計測規準線3

計測規準線4

中央計測線

ケブラー

トワロン

テクノーラ

300

300

300

300

400

200

200

800 800100 100

300

500

500

500

200

左端計測線 右端計測線

1800

2000

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付属資料-2 樹脂の塗布量に関する接着力試験 1.接着力試験概要 高耐力アラミド繊維シートは、シートの厚さから含浸に要する樹脂量が多くなる。特に下塗りの樹

脂が不足した場合コンクリートとシート界面の樹脂が不足して接着不良状態が懸念される。このため、

樹脂の塗布方法を変えた模擬施工を行い建研式接着力試験により、接着強度の検討を行った。 高耐力アラミド繊維シートは、3種の製品を付属表 2.1に示す樹脂との組み合わせで使用した。シ

ートの耐力は 90tf/m、120tf/mの製品を使用した。それぞれの樹脂の塗布量の組み合わせを付属表2.1に示す。高耐力アラミド繊維シートの貼付対象は、柱体の模擬試験体としてプレキャストボックスカルバート(1800×1800×2000)の外周を利用した。シートの積層数は、1層のみで施工後 2週間で建研式接着力試験を実施した。

CL

120-1

テクノーラ

300

300

300

300

400

700 700100 100

1800

200

120-2

120-3

90-1

90-1

90-1

200

付属表 2.1 材料の組み合わせ シート 樹脂 1 ケブラー DD グラウト2 トワロン #200AS 3 テクノーラ AR ボンド

付属表2.2 計測項目一覧 樹脂の塗布量g/m2 シート

耐力 No.

下塗り 上塗り 合計 1 500 500 1000 2 700 300 1000

90tf級

3 900 100 1000 1 500 700 1200 2 700 500 1200

120tf級 3 900 300 1200

付属図 2.1 試験体およびシート割り付け

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2.試験結果 試験結果の一覧を付属表 2.3から一覧を付属表 2.5に示す。柱体の模擬試験体としてプレキャスボ

ックスカルバートを使用しているためコンクリート強度が高く、界面破壊が一部に認められたものの、

強度は通常のコンクリートの引張強度以上の値を得られており、問題のない値である。今回の試験範

囲内の施工状況の変動は強度に影響を与えない事が確認された。

付属表 2.3 計測結果(ケブラ-) シート 耐力

No. 樹脂の塗布量g/m2 付着強度 kgf/cm2

破壊形式

下塗り 上塗り 合計 1 500 500 1000 31.9 一部界面

90tf級 2 700 300 1000 29.8 一部界面 3 900 100 1000 24.8 母材 1 500 700 1200 19.6 母材

120tf級 2 700 500 1200 21.9 母材 3 900 300 1200 29.2 母材

付属表 2.4 計測結果(トワロン)

シート 耐力

No. 樹脂の塗布量g/m2 付着強度 kgf/cm2

破壊形式

下塗り 上塗り 合計 1 500 500 1000 26.5 母材

90tf級 2 700 300 1000 29.6 一部界面 3 900 100 1000 29.4 一部界面 1 500 700 1200 35.6 母材

120tf級 2 700 500 1200 29.1 界面 3 900 300 1200 28.5 一部界面

付属表 2.3 計測結果(テクノーラ)

シート 耐力

No. 樹脂の塗布量g/m2 付着強度 kgf/cm2

破壊形式

下塗り 上塗り 合計 1 500 500 1000 20.5 一部界面

90tf級 2 700 300 1000 25.9 母材 3 900 100 1000 32.4 母材 1 500 700 1200 29.5 界面

120tf級 2 700 500 1200 24.7 一部界面 3 900 300 1200 28.2 一部界面

*:表中の値は平均値

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付属資料-3 強制剥離試験方法(案) 1.はじめに 高耐力アラミド繊維シートの含浸接着樹脂硬化後の接着性能に関しては、建研式接着力試験が規定されているが、未硬化時の接着性能に関しては、参考となる規・基準を含め現在までのところ存在しないため、今回新たに強制剥離試験試験方法を提案した。本試験方法(案)における試験手順は、数種類の樹脂により予備試験を実施して定めたものである。しかしながら、試験室における含浸接着樹脂の諸物性と現場施工における様々な環境要因との関係は未解明な部分も多く、特に厳しい環境条件が予想される場合、その環境条件に合わせた強制剥離試験を実施する事が望ましい。 2.強制剥離試験方法(案) 1)適用範囲 この基準は、強制剥離試験によってアラミド繊維シート補強工法に使用される含浸接着樹脂の施工時の粘着性能を試験する場合について規定する。 2)含浸接着樹脂 2.1 含浸接着樹脂は、未硬化時の適用温度の規定が20℃以上の配合(夏用)および20℃以下の 配合(冬用)の2種を使用する。ただし、両タイプの硬化後の力学的物性は、同一でなければならない。

2.2 適用温度が20℃より大きく隔たる配合(厳寒期用、酷暑期用)は、3.2の規定により個別に試験しなければならない。

3)試験室の条件 3.1 試験室の温湿度は、温度20±2℃、湿度50±5%RHとする。 3.2 適用温度が20℃より大きく隔たる配合の樹脂を試験する場合は、それそれの適用温度の上限 と下限を試験室の温度として個別に試験を行うものとする。 3.3 含浸接着樹脂および試験体の構成材料は、試験実施前3時間以上、試験室の状態におかなけれ

ばならない。 4)試験体構成材料 4.1 試験体は、図-1に示すコンクリート平板とアラミド繊維シート及び鋼製プレートにより構

成される。 4.2 アラミド繊維シートは、単位幅当りの耐力が90tf/mまたは120tf/mと規定された製品を

使用する。 4.3 コンクリー平板は、JIS A 5304に規定される製品を使用し、予め表面のディスクサンダー処理

およびプライマー塗布を行っておく。 4.4 鋼製プレートは、シートの種類に応じて表-1に示す寸法および重量を標準とする。 4.5 鋼製プレートは、アラミド繊維シートに予め適切な方法で固定しておく。固定に接着剤を使用

する場合は、点接着を均等に分布させ、且つ接着面積の合計がプレート面積の10%を超えない範囲で行う。この際、繊維方向が鉛直方向となるようにする。

5)試験手順 5.1 コンクリーと平板を水平に静置し、表-2に示す規定量の下塗り樹脂を塗布する。 5.2 アラミド繊維シートを貼付し、脱泡ローラー等を用いて確実に含浸作業を行う。 5.3 鋼製プレート部は、背面からの自然含浸のみとし、軽く圧迫して形を整える事に留める。 5.4 規定量の上塗り樹脂を塗布し、再度、含浸作業を行う。 5.5 コンクリート平板を鋼製プレート部を上部としてゆっくりと引き上げ直立させる。 5.6 アラミド繊維シートの粘着状況を観察しながら15分間放置する。

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6)合否の判定 試験時間内においてシート全体が剥離しない事 7)報告事項 必要に応じて次の事項を表示する。 ・ 含浸接着樹脂の名称および温度タイプ ・ アラミド繊維シートの名称および耐力 ・ 鋼製プレートの形状寸法および重量 ・ 試験室の状態 ・ アラミド繊維シートの剥離の有無 ・ その他

付属図3.1 強制剥離試験

付属表3.1 鋼製プレートの重量 90tf級 120tf級 厚さ 3mm 4mm 幅 140mm 140mm 高さ 70mm 70mm 重量 225g 300g

付属表3.2 含浸接着樹脂の標準塗布量 90tf級 120tf級 1.0m2 0.09m2 1.0m2 0.09m2

下塗り 550g 50g 700g 63g 上塗り 450g 41g 500g 45g 合計 1000g 91g 1200g 108g

付属表3.3 アラミド繊維シートの重量

シート 90tf級 120tf級 種類 1.0m2 0.09m2 1.0m2 0.09m2 ケブラー 623g 56g 830g 75g トワロン テクノーラ

525g 47g 700g 63g

60

300

70

140

300

C.L.

アラミド繊維シート

鋼製プレート

コンクリート平板

C.L.4

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3.強制剥離試験方法(案)解説 ⑤貼付方法

実施工におけるシートの貼付け方向に応じて剥離と中弛みの二つの不良状態が予想される。 縦貼り:曲げ補強時の上端の剥離 横貼り:巻付け補強時の中弛み

この内、より厳しい試験状態となる縦貼りで強制剥離試験を行いシートの粘着性状に付いて確認するものとする。アラミド繊維シートは、実施工と同様の手順でコンクリートの鉛直面に貼付するものとする。この際、シートの上端部に重りとなるプレートを予め接着しておいて局部的な粘着力不足や外力の作用に伴う不良状態の表現を試みた。プレートの重量は、試験で使用したシート重量の4倍を目安として設定した。 ②温度条件 施工時の温度の影響は、夏用、冬用の樹脂をそれぞれ20℃の標準試験温度で強制剥離試験を行うことで確認する。これは設定した温度がそれぞれの温度タイプの樹脂において、適用温度の低温側と高温側に相当するためである。これまでに確認されている温度の影響は次の2点であり、温度により樹脂の粘性が変化しても同種の不良状態を引き起こしやすい事が確認されている。

低温側:樹脂の粘性増加による含浸性の低下、可使時間の硬化時間の遅延 両者の効果による緩やかに継続するダレ 高温側:樹脂の粘性低下による急激な剥離やダレ

⑦合否の判定 強制剥離試験の合格判定条件は、判定の客観性、判定の容易さ、および施工時の安全性から以下のように規定する。 「試験時間内においてシート全体が剥離しない事」

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年 月 日

アラミド研究会 技術委員長殿 会社名: . 担当者: . TEL: . FAX: .

強制剥離試験試験結果

樹脂名称 : . 温度タイプ: . シート種類: . 試験日 : . 試験場所 : . 試験室の状態 温度: ± ℃ .

湿度: ± % .

プレート重量: g .

試験結果: 合格 ・ 不合格 . 備考 : .

4.試験結果 アラミド繊維シートによる耐震補強工法において、現在までに施工性の検討を行った樹脂の強制剥離試験結果を参考値として付属表3.4に示す。

付属表3.4 強制剥離試験結果 No.

メーカー 樹脂 名称

シート 名称

温度 タイプ

プレート 重量

判定 備考

1 サンユレジン(株) L-500 AK-120 夏用 冬用

300g 合格 合格

アラミド補強研究会会員

2 ショーボンド建設(株) AE AK-120 夏用 冬用

300g 合格 合格

アラミド補強研究会会員

3 横浜ゴム(株) AE-3000 AK-120 夏用 冬用

300g 合格 合格

アラミド補強研究会会員

4 ヘンケルジャパン(株) ARボンド AT-120 夏用 冬用

300g 合格 合格

アラミド補強研究会会員

5 シントーボンド(株) #2000As AW-120 夏用 冬用

300g 合格 合格

6 コニシボンド(株) E2500 AK-120 夏用 冬用

300g 合格 合格

7 日米レジン(株) アルプロン AK-120 夏用 冬用

300g 合格 合格

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付属資料-4 含浸接着樹脂の未硬化時の物性試験方法(案) 1.はじめに 高耐力アラミド繊維シートの施工性に影響を与える樹脂の未硬化時の因子として、可使時間の他にシートへの樹脂の含浸性とシートを保持する樹脂の粘着性が挙げられる。含浸性や粘着性と関連の高い樹脂の物性値として、粘度、およびチクソトロピー値等があり、樹脂メーカーの製造過程における品質管理値として採用されている。これらの値は回転粘度計を用いて測定することが一般的であるが、測定の細部に関しては各製造メーカー毎に様々な仕様が採用されており統一されていない。一方、使用者側が受入時に確認すべき物性値も、機械的性質を除けば可使時間のみが規定されている。使用者側の受入検査に施行性に関連した数値を附加するため、回転粘度計による粘度およびチクソインデックス値の測定方法を可能な限り標準化するものとした。 2.アラミド繊維シート用樹脂の未硬化時の物性試験(案) 1)適用範囲 この基準は、アラミド繊維シート補強工法に使用される含浸接着樹脂の品質管理を目的として未

硬化時の物性を試験する場合について、回転粘度計による粘度およびチクソインデックス(Ti値)の測定時の標準的な試験条件を規定する。 なお、本試験方法(案)における試験条件および指標は、既に施工上問題が無い事を確認された

樹脂の品質管理に使用されるものであり、新たに開発された製品を使用する際には、別途強制剥離試験や模擬施工を行い、その施工性を確認しなければならない。 2)含浸接着樹脂 2.1 含浸接着樹脂は、未硬化時の適用温度の規定が20℃以上の配合(夏用)および20℃以下の 配合(冬用)の2種を使用する。ただし、両タイプの硬化後の力学的物性は、同一でなければならない。

2.2 適用温度が20℃より大きく隔たる配合(厳寒期用、酷暑期用)は、3.2の規定により個別に試験しなければならない。

3)試験室の条件 3.1 試験室の温湿度は、温度20±2℃、湿度50±5%RHとする。 3.2 適用温度が20℃より大きく隔たる配合の樹脂を試験する場合は、それそれの適用温度の上限 と下限を試験室の温度として個別に試験を行うものとする。 3.3 含浸接着樹脂および試験体の構成材料は、試験実施前3時間以上、試験室の状態におかなけれ

ばならない。 4)試験装置 4.1 試験体装置は、JIS K 7117 「液状樹脂の回転粘度計による粘度試験」に規定された粘度計のか

ら各樹脂の特性に適した組み合わせを選択して試験を行うものとする。 5)試験手順 5.1 試験手順は、JIS K 7117 「液状樹脂の回転粘度計による粘度試験」に準じて実施する。 5.2 粘度の測定は、回転数の異なる2点で測定し、2点の測定速度の選定は表-1に従うものとす

る。 5.3 上記二点のうち低回転時の粘度を高回転時の粘度で除した値をチクソインデックス(Ti)とす

る。

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付属表4.1 回転数の組合わせ 回転数

rpm 備考

①低回転時 1~10 静的粘度 ②高回転時 ①の10倍の速度 動的粘度

6)報告事項 必要に応じて次の事項を表示する。 ・ 含浸接着樹脂の名称および温度タイプ ・ 回転粘度計の種類、スピンドルの号数 ・ 回転数の組み合わせ ・ 試験室の状態 ・ 低回転時の粘度、高回転時の粘度、Ti値 ・ 上記数値に関する各樹脂の製造上の管理値 ・ その他 3.アラミド繊維シート用樹脂の未硬化時の物性試験(案)解説 1)粘度測定時の回転数 回転粘度計による測定で選られる数値と施工上の物性の間には以下の関係がある。

① 低回転数で測定した粘度(静的粘度) アラミド繊維シートのコンクリートへの粘着性に関係し、この数値が大きいとシートが垂れにく

くなるが、含浸性は低下する。シートの垂れに対する樹脂の抵抗性は、厳密には回転数が極めて0に近いときの粘度として試験すべきであるが、実用的な試験方法が存在しないため近似的に1~10rpmの範囲内で測定することとした。

② 高回転数で測定した粘度(動的粘度) アラミド繊維シートの繊維中への含浸性に関係し、この数値が低いとシートへの含浸性が高くな

るが、シートが垂れ易くなる。この場合の含浸性は、脱泡ローラー等を用いて適切な含浸作業を行っているときの染み込み易さであるが、回転粘度計を使用する上で①の回転数の十倍の速度で含浸作業を表現するものとした。

③ チクソインデックス(Ti値) 低回転時の粘度を高回転時の粘度で除した値がチクソインデックス(Ti値)であり、含浸性と粘着性の相反する性質を両立させるための参考指標となる。粘度やTi値の他にも施工性に影響を与える要因は様々なものがあるが、Ti値は最も一般的な指標となっているため本試験方法(案)でも採用するものとした。ただし、粘度とTi値が等しいくても直ちに同一の施工性を示すものではない事に注意が必要である。 2)温度条件 含浸樹脂の未硬化時の物性試験は、夏用、冬用の樹脂をそれぞれ20℃の標準試験温度で回転粘度計を用いて測定測定することで確認する。これは、樹脂材料の品質管理として一般的な設定温度であること、設定した温度がそれぞれの温度タイプの樹脂において、適用温度の低温側と高温側に相当するためである。これまでに確認されている温度の影響は次の2点であり、温度により樹脂の粘性が変化しても同種の不良状態を引き起こしやすい事が確認されている。

低温側:樹脂の粘性増加による含浸性の低下、可使時間や硬化時間の遅延 両者の効果による緩やかに継続するダレ 高温側:樹脂の粘性低下による急激な剥離やダレ、可使時間の不足

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年 月 日

アラミド研究会 技術委員長殿 会社名: . 担当者: . TEL: . FAX: .

アラミド繊維シート用樹脂の 未硬化時の物性試験測定結果

樹脂名称 : . 温度タイプ: . 試験日 : . 試験場所 : .

粘度計の名称: . スピンドルの番号: . 回転数: rpm/ rpm . 試験室の状態 温度: ± ℃ .

湿度: ± % .

1.試験結果

項目

回転数 rpm

粘度 mpa・s

①静的粘度 ②動的粘度 チクソインデックス(Ti)

2.管理範囲

項目

回転数 rpm

粘度 mpa・s

①静的粘度 ~ ②動的粘度 ~ チクソインデックス(Ti)

- ~

3.備考

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4.試験結果 アラミド繊維シートによる耐震補強工法において、現在までに施工性の検討を行った付属表3.4に示す樹脂の粘度の分布を付属図4.1および付属図4.1に、Ti値の分布を付属図4.3にそれぞれ示す。

付属表3.4 試験異使用した樹脂

No.

メーカー 樹脂 名称

温度 タイプ

備考

1 サンユレジン(株) L-500 夏用 冬用

アラミド補強研究会会員

2 ショーボンド建設(株) AE 夏用 冬用

アラミド補強研究会会員

3 横浜ゴム(株) AE-3000 夏用 冬用

アラミド補強研究会会員

4 ヘンケルジャパン(株) ARボンド 夏用 冬用

アラミド補強研究会会員

5 シントーボンド(株) #2000As 夏用 冬用

6 コニシボンド(株) E2500 夏用 冬用

7 日米レジン(株) アルプロン 夏用 冬用

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

夏用 冬用

樹脂タイプ

粘度

(mpa

・s)

平均

BH型回転粘度計

測定温度:20℃

回転数:20rpm

付属図4.1 動的粘度の分布

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

夏用 冬用

樹脂タイプ

粘度

(mpa

・s)

平均

BH型回転粘度計

測定温度:20℃

回転数:2rpm

付属図4.2 静的粘度の分布

0

1

2

3

4

5

6

7

夏用 冬用

樹脂タイプ

チク

ソイ

ンデ

ック

ス(-

平均

BH型回転粘度計

測定温度:20℃

回転数:2/20rpm

付属図4.3 Ti値の分布

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付属資料-5 アラミド繊維シート用含浸接着樹脂 1.含浸接着樹脂の適用範囲 高耐力アラミド繊維シートに対して現在までに施工性の検討が終了している含浸接着樹脂を付属

表--5.1に示す。 樹脂の粘度およびチクソインデックス(Ti値)の標準値は、各製造メーカーによりことなるため、

受入検査に先立ってその管理幅を確認しておかなければならない。

付属表 5.1 高耐力繊維シート用含浸接着樹脂

番号 メーカー名称 樹脂名称 シート名称 従来品 高耐力 40tf級 60tf級 90tf級 120tf級1 サンユレジン L-500 AK ○ ○ ○ ○ 2 ショーボンド AE AK、AW、AT ● ● ● ○ 3 横浜ゴム AE-3000 AK ○ ● ○ ○ 4 ARボンド AR ボンド AW、AT ● ● ● ● 5 神東ボンド #2000As AK、AW ● ● ● ○ 6 コニシボンド E2500 AK、AW ● ● ● ○ 8 日米レジン アルプロン AK ● ○ ○ ● 7 大日本色材 AK ● ● ● ●:施工実績有、○:強制剥離試験試験により性能確認、 平成 11年 4月現在

付属表 5.2 高耐力繊維シート用含浸接着樹脂の管理値

番号 メーカー名称 樹脂名称 回転数 rpm 粘度 mpa・s TI値 静的 動的 静的 動的 - 1 サンユレジン L-500 ~ ~ ~ 2 ショーボンド AE ~ ~ ~ 3 横浜ゴム AE-3000 ~ ~ ~ 4 ARボンド AR ボンド ~ ~ ~ 5 神東ボンド #2000As ~ ~ ~ 6 コニシボンド E2500 ~ ~ ~ 8 日米レジン アルプロン ~ ~ ~ 7 大日本色材 ~ ~ ~

平成 11年 4月現在