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メッセージ - chiba-muse.or.jp · The Wonder Explorers' Nobuko Ishii & Terumi Oami *15 小5 総合的な学習の時間の中で 「自分たちでよくしよう,自分たちの町」

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「ネットワークを育む」

千葉県立中央博物館

館長 中村 哲

千葉県立中央博物館の使命は,豊か な自然を守り多様

な文化をつくる人を育み,その活動を 支えることにあり

ます.生態園は,自然復元および環境 保全活動を実地に

行いながら房総半島の生きた自然を紹 介する野外観察地

として,先駆的な存在です.今では, 身近にある自然学

習・環境学習・野外体験の場として, 学校連携活動や子

ども会などの地域交流活動に役立つ場 となるように,さ

まざまな学習プログラムが用意されて います.「耳をたよ

りに自然を観察! 音声認識技術活 用学習プログ ラムの作

成」もその 1 つとして,今後の発展が期待されるもので

す.今回,生態園などで行われてきた 自然の音をめぐる

調査研究とその成果を還元した教育普 及活動の実践が,

連携校として千葉市立扇田小学校と酒 々井町立大室台小

学校,協力校として千葉市立源小学校 ,さらに自然観察

および IT 技術にかかわる市民および有識 者の協力によ

り,音を手がかりに自然を観察する力 を養う学習プログ

ラムとして 1 つの形を得たことを嬉しく思います .中央

博物館は,県民とともに歩む博物館と して,学校とのネ

ットワーク・市民と交流し協働するネ ットワークを大切

にし,未来を担う子供を育てるため, 意義のある活動を

進めていかれるよう,県民のご理解と 協力をお願いした

いと思います.

「豊かな心を育む」

千葉市立扇田小学校

校長 市川 百合子

中庭にビオトープをつくっています. 奨励賞をいただ

きました.この池にカワセミがやって きて,子どもはと

ても喜んでいました.今回,3 年生は 「耳をたよりにす

る」自然観察の機会を得ました.生態 園での学習に備え

て,音声識別装置の使い方を予習した り,野鳥の絵を描

いたり,学校でも熱心に学んでいまし た.学習の最後に

まとめた手作りの野鳥観察マップはと ても立派なもので

す.そして何よりも,音に親しむ体験 から戻ってきた子

どもの心が豊かになっていくようすを ,担任から伝え聞

いています.今年の体験が,4 年生に なってから行う近

くの大百池での学習へとつながること を期待します 1.

「自然への感性を育む」

酒々井町立大室台小学校

校長 山口 延行

すべての教室から谷津田の斜面林が見 えます.春はソ

メイヨシノとヤマザクラのコントラス ト,そして新緑が

目に鮮やかに映ります.夏はフジの花 が咲き,秋はモミ

ジの紅葉も美しいです.そして,コジ ュケイやウグイス

の声が美しく響く谷,それが大室台小 学校です.子ども

たちはこの環境で6年間の小学校生活 を送ります.風の

音や虫の声,自然の作り出す音楽はす ばらしいです.な

かでも鳥たちの奏でる「音楽」は子ど もたちの心をとら

え,自然への感性を育んでくれること でしょう.今回,

「耳をたよりにする」自然観察の学習 機会を得て,これ

まで以上に「自然への感性」を豊かに 育んでいくこと,

また,地域の自然やそれを守ってきた 地域の方々に感謝

する気持ちを持つことなど,さまざま な成果が得られる

ことを楽しみにしています.

「いい耳を育てる」

千葉市立源小学校

校長 長澤 徹

千葉市動物公園に隣接し,7学級20 9名の子どもが

学ぶ,創立22年目の源小学校.まわ りは「千葉さくら

の会」寄贈による多くの桜の木や緑の 樹木に囲まれてお

り,「鳥の舞う街みつわ台」 2の一角にあって自然環境に

恵まれ、野鳥も多い.動物公園からは 風にのって猿の鳴

き声3が聞こえる.5年1組の子ど もたちは,思いがけず

生態園の学習を通して貴重な体験をさ せてもらいました.

自然の音や鳥たちのさえずりを聞いて ,さぞ“いい耳”

をもつ子どもに育ったことでしょう. そして,今まで以

上に聞く力や観察する力がついたこと でしょう.私も一

緒に行けなかったのは残念ですが,こ れからも“いい耳”

を,身の回りの自然環境に向けてほし いです.得たこと

を大いに役立てください.

1 インタビ ュー : 平 成 16 年 3 月 3 日扇 田小 学校に て 大庭照 代 2 千葉市 源町 土地 区画 整理 組合 1975. 鳥の 舞う 街- 千葉 市み つわ 台

への提 言.130pp. 東亜ビ ジネ ス. 3 フクロテ ナガ ザル: の どに 大きく 膨ら む共鳴 袋を 持ち ,大き な声 で

鳴きま す.

メッセージ ~耳をたよりに自然を観察!音声認識 技術活用学習プログラムの 作成を終えて~

音声認 識技 術活用 学習 プログ ラム 耳 をたよ りに 自然を 観察 する ために 事 例報告 書 (教 員用 手引書) 2004

耳をたよりに自然を観察!

Observe Nature by Ear! ** 1 音を手がかりにするわけ

大庭 照代・小林 毅 Why do we use sound c l ues? Ter uyo Oba & Ta keshi Kobayashi

**2 ステップ1 自然の音を聞けるようになる

大庭 照代 Step1: To be abl e to hear natur e sounds Ter uyo Oba

**3 ステップ2 野鳥の探索

大庭 照代 Step2: To search for bi r ds af ter sounds

Ter uyo Oba **5 ステップ3 野鳥観察マップの作成

大庭 照代

Step3: To make the bi r d obser vat i on map Ter uyo Oba

**7 観察データの活用

大庭 照代

Util i zati on of obser vat i on data Ter uyo Oba

**9 支援のしかた:耳と目と頭を使えるよう に

金子 謙一

H ow to assi s t chil dr en for them to use their own ear s , eyes and br ai n Keni chi Kaneko

*1 1 ふりかえり用紙

R evi ew for m

平成 15 年度連携授業の事例

Case Studies o f the Museum-School Program , 2003

*12 小 3 総合的な学習の時間と遠足の中で

「飛び出せ ふしぎ たんけんたい」

石井 信子・大網 照美

T he thi r d- year i nteg r ated s tudy and school excur s i on ‘Let ’s g o! T he Wonder Expl or ers ' N obuko Ishii & Ter umi Oami

*15 小 5 総合的な学習の時間の中で

「自分たちでよくしよう,自分たちの町」

石井 康子・松山 みよこ

T he fi f th- year i ntegr ated s tudy ‘Let’ s i mpr ove our town b y our sel ves ' Yasuko Ishi i & M i yoko M atsuya ma

*18 小 6 理科の時間の中で

「生き物のくらしと自然環境」

梅里 之朗・石田 曜子・池田 寛 T he si xth- year sci ence ‘T he li fe of li vi ng thi ng s and natur al envi r onment ' Yukir o U mesato, Yoko Ishi da & H ir oshi Ikeda

*2 1 雨の日のために

梅里之朗・池田 寛 F or the r ai ny da ys Yukir o U mesato & Hi r oshi Ikeda

自然観察をめぐるさまざまな目線 Di ffe rent Viewpoints in Nature Observation

*22 生態園でバードウォッチング

綾 富美子 Bir d watchi ng i n the Ecol og y Par k F umi ko Aya

*23 小学校で自然観察を支援

河添 寿子

Suppor ti ng the natur e obser vat i on s tudy i n the pri mar y school Toshi ko Ka wazoe

*24 「自然の音を聴く」楽しさ

御須 裕子

Joy of ‘N atur e Sound Li s teni ng ’ Yuko Mi su

*25 インタープリテーション

小林 毅

T he i nter pr etat i on Takeshi Kobayashi

*26 「ふりかえり」がだいじな体験シート

浅田 正彦

Impor tance of ‘T hi nk- Back’ i n the appl icat i on of ac ti vi ty sheets M asahi ko Asada

*27 自然に近づく技術には未来がいっぱい

澤田 裕樹・原口 真

F utur is t ic technol og y to m ake a n access to the natur e Hir oki Sawa da & M akoto H ar ag uchi

*28 音声認識技術とは

庄境 誠・奈木野 豪秀

What i s voi ce r ecog ni ti on technol og y M akoto Shozakai & Goshu N agi no

*29 自然の音を集める

大庭 照代

C ol l ec t i ng natur e sounds Ter uyo Oba

*30 野鳥の絵を描くわけ

箕輪 義隆 R easons to dr aw bir ds Yoshi taka Mi nowa

この学習プログラムの普及に向けて Populariza tion o f the Learn ing Program

*3 1 「耳をたよりに自然を観察!」のすすめ

木村 正典

Obser ve N atur e by Ear! ’ R ecommende d M asanor i Ki mur a

*32 生態園地図 音の たからさがし ポイント M ap of the Ecol og y Par k a nd the l ocat i ons of sound tr easur e hunt

フィードバック用紙 (裏表紙)

F eedback for m

目次 Contents

音声認 識技術 活用 学習プ ログ ラム 耳を たより に自 然を 観察す るた めに 事例 報告書 (教員 用手引 書) 2004

日本には,虫の音や鳥の声に親しむ文化が継承されてきました.

情操教育として,自然の音が感性の発達にかかわることは注目さ

れています.また,子どもの理科離れが危惧される昨今では,生

き物の鳴き声から受ける驚きや感動を,理科や環境学習につなげ,

自然科学への興味を持たせたいという期待があります.千葉県立

中央博物館では,平成元年の開館以来,耳をたよりに自然を観察

する生態園観察会や講座を数多く開催してきました.今回,この

経験を活かし,自然観察指導に携わってこられた各界の方々と,

自然観察支援を目指す最先端の IT 技術者の力をお借りして,「耳

をたよりに自然を観察! 音声認識技術活用学習プログラム」を作

成しました.

聞くことを変える 3 つのステップ

鳴き声を聞くことは,野鳥の観察に欠かせない重要な方法です.

ただし,子どもにとって,聞くことは自明なことではありません.

子どもは,葉陰から聞こえてくる音よりも,目に見える物や手に

取れる物に惹かれがちです.葉が繁っている季節には,声はすれ

ども姿は見えずという状態です.指導者は子どもを鳴き声に気づ

かせ,聞くことに集中させ,葉陰の鳥をも探らせようと望みます.

しかし,子ども 1 人ならまだしも,学級全体を指導することは至

難の業,限界を感じてきました.

そこで,この学習プログラムは,学校の授業への組み込みを前

提に,子ども自身が音を手がかりに自然の営みに気づき,野鳥の

生態と環境を考えるため,次の3つのステップから構成されます.

1)聞けるようになる: 自分の耳を使って,音に集中し,聞い

た結果を記録し,表現する方法を身につけます.

2)野鳥の探索: 音を手がかりに野鳥を探索し,鳴き声の特徴

や姿,生息場所などから種類を識別し,生態や行動を観察し

ます.

3)野鳥観察マップの作成: 鳴き声を手がかりに生態園の野鳥

を調査した結果を地図上に表わし,環境の違いを検討します.

子どもの耳と脳を鍛える

自然の観察では,野鳥も含め,事物の名前を知ることは重要で

す.博物館の生物資料は学名をつけて整理され,保存・活用され

ます.名前が不明であれば,新種の可能性も含めて調査研究を行

います.小学生の自然観察でも,「声を聞いた,姿も見た,木の実

を食べていた」という観察があったときに,理科などの学習とし

てさらに調べ物をしたり,同様な観察結果と比べたり,生じた疑

問を調査したりするためには,種類の識別を行うことが基本です.

地域には,野鳥の鳴き声がわかる耳の達人がいるかもしれません

が,専門的支援はふつう限られています.録音道具や野鳥音声

CD などの物的支援も,入手して使いこなすのは大変です.

そこで,この学習プログラムでは,人間の音声の認識技術を活

用した音声識別装置「ききみみずきん」を学習支援ツールとして

導入し,識別をめぐる指導者の不安を軽減しました.大原則とし

て,今回の学習プログラムに導入した IT 装置は,種類を教えませ

ん.子ども自身が,録音した音と装置が出してくれるサンプル音

とを聞き比べ,姿や食物,生息場所などの関連情報と併せて,種

類を判断するようにデザインされています.今や IT 開発は国家規

模で取り組むべき事業として大きな発展が期待されています.世

間では,IT 装置を使うことが目的であるように考える傾向があり

ます.しかし,今回,「耳をたよりに」としたように,この学習プ

ログラムの目的は,子どもの耳と脳を鍛えることにあります.

コミュニケーションによる学習

自分と他人では,一緒にいても聞いた音が同じではありません.

たとえ同じ音を聞いたとしても,人によって聞こえ方や表現の仕

方が違います.学習のまとめにおいて,自分の観察結果を人に伝

え,他人の観察結果を聞くことにより,子どもは互いの聞こえ方

の違いを知り,音をより深く共有することができます.

体験シート1による学習は,異なる手法で音を対象化させること

により,子どもどうしが違いをわかちあうことを促進します.ま

た,音声データ収集管理装置に子どもの識別結果を集めて,それ

に基づいて「野鳥観察マップ」を描くことも,子どもに活発で賑

やかなコミュニケーションの材料やきっかけを与えます.

この学習プログラムでは,グループ活動が基本です.鳴き声の

録音,「ききみみずきん」の操作,双眼鏡による目視の観察,「野

鳥観察ガイドブック」2の閲覧,観察結果の記録など,異なる役割

を交替で務めます.協力して観察し判断する過程として,役目ご

との発見を言葉で伝えあうやりとりも,学習に効果的です.

この学習プログラムは,理科や総合的学習の時間の目的と内容

に合わせて,3 つのステップをとおして活用することができます.

しかし,小学校 6 年間を見渡すと,音を手がかりに自然や環境を

学ぶ機会は多数あります.発達段階や達成目標に合わせ,生活科

や図工,音楽などの時間にも,部分的に取り入れられます.

本書は,学習プログラムの構成と学習支援のしかた,平成 15

年度に生態園で試行した連携授業(小学校 3 年・5 年・6 年)の

事例報告,学習プログラムに関係するテーマ別の解説・各論,博

物館の学校連携への取り組みと見通し,生態園の地図からなりま

す.今後,学習プログラムの実践において,教員や自然観察指導

者のための手引書として,本書が活用されることを願います.

学習プログラムの評価のため,子どもには「ふりかえり用紙」,

指導者には「フィードバック用紙」を用意しました.博物館と学

校,そして地域住民の協働により,多くの子どもがこの学習プロ

グラムを利用できるように,学習内容,組み立て,教材 1,2,学習

支援ツールなど,今後さらに検討が加えられることを望みます.

1 大庭照代.(編) 2004. 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観

察!-体験シート集-. 20 pp. 千葉県立中央博物館. 千葉市. 2 大庭照代 2003. 野鳥観察ガイドブック-耳をたよりに自然を観察! 音声認識技

術活用学習プログラム-. 106 pp.千葉県立中央博物館. 千葉市.

音を手がかりにするわけ 大庭 照代 千葉県立中央博物館 ・小林 毅 自然教育研究センター

耳をたよりに自然を観察! Observe Nature by Ear !

**1 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

ステップ1は,自分の耳を使って,音に集中し,聞いた結果を

表現し,記録する方法を身につける学習プログラムです.音を感

じて表現することが重要な課題です.このステップは3つの活動

からなり,それぞれに具体的な達成目標があります.

1.まわりに響くさまざまな音を 6 つ以上数え上げ,その聞こ

えてくる方向を指差すことができること.

2.音の高低や,長短,リズム,強弱などの特徴に気づき,言

葉や記号,体の動きなどで表現することができること.

3.特定の音について,その特徴をグループで話し合うことに

より,音源となる生物や事象の音が思い浮かぶような,心

に残るニックネームをつけること.

子どもの発達段階や学習内容にあわせて,活動構成や各活動で行

う作業内容を調整します.なお,「耳の体操(耳ならし)」は,音

を聞くように耳を準備し,音に集中する気持ちを整えます.「耳

をたよりに自然を観察!」学習プログラムのどのステップでも,

毎回,野外活動の初めに行うことをお奨めします(4 頁).

耳の体操(耳ならし)

体制 学級活動(人数は多くても可)・グループ活動(2-5人)

所要時間 約 15 分(解説 3・活動 3-5・ふりかえり 5-7)

方法

耳の体操は,子どもの聞く行動を妨げないように,静かに以下

の声かけをしながら,進行します.

1)両手を広げても互いにぶつからないように広がりましょう.

2)楽な姿勢でしっかり立って,目をつぶりましょう.

3)そのまま 1 分間くらいまわりの音を静かに聞きましょう.

4)下を向いたままの人はいませんか.上,右側,左側などいろ

いろな方向に頭を向けてみましょう.

5)立っているその場所で,体のまわりを回ってみましょう.で

きるだけゆっくり,少しずつ回ってください(3 回程度).音

がいろいろな方向から聞こえてくるのがわかりますか.

6)音が聞こえたら,その方向を指しましょう.2 つ以上の音が

同時に聞こえたら両手両指を使います.そろそろ目をあけて

やってみましょう(しばらくいろいろな音を試します).

7)全部でいくつの音が聞こえましたか.これから数えますので,

聞こえた数で座りましょう.1つ,2つ,・・・・6つ,7つ・・・

8)どんな音が聞こえたか,発表してください.

9)みんなとてもよく聞きましたね.

教材 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート」 (1)いくつの

音がきこえるかな,(2)音 あっちこっちどっち?

ヒント 私たちが聞くとき,音は耳殻で集められ,頭の左右にあ

る耳孔から外耳道の奥の鼓膜へ届きます.両手の掌を広げて耳の

横につけると,音を集める範囲が広がり,音が大きく聞こえます.

この「耳をダンボにする」所作は,小さな音を聞いたり音源の位置

を探したりするときに効果的です.また,頭と体を正確に音の方

向へ向けることも,音を聞くには大切です(4 頁).

効果 耳を整え,体のこわばりを解き,音に集中できます.

音の探検

体制 グループ活動(2-5人)

所要時間 35-40 分(耳の体操 5,解説 3,活動 20-25,ふりかえり 7)

方法

「耳をたよりに自然を観察! 体験シート」を活用して,さまざま

な自然の音を探しに出かけます.音の強弱,長短,繰返しなどの特

徴や,鳥や虫,植物など生物の種類,聞こえる位置などに気をつけ

て音を探索します.聞こえた音は,文字や記号,色や形で表現しま

す.また,自分の感じたことを自由筆記します.探検の後,グルー

プごとに探した音を発表します.学級全体で活動をふりかえり,発

見をわかちあいます.

教材 (3)音のたんけん: 驚く音や不思議な音,おもしろい音

を探し,好きな音を選びます.(4)すてきな音をさがしてみよう:

生物の音の中から初めて聞いた声,楽しそうな声,木の上や落ち葉

の下から聞こえる音を探す.(5)音の入った絵をかこう: すて

きな場所のスケッチに聞こえた音を描き込む.(6)きせつの音を

さがそう: 季節らしい音を選出します.(7)音キャッチ名人に

なろう: 名人になるための 9 つの条件から音を探します.

ヒント 音の探検活動で重要なことは,子どもにどやどやと歩き

回らせないということです.たがいに音が聞こえるように,グル

ープごとにゆっくり,そっと歩きます.出かける前に歩き方を練

習するとよいでしょう.ときどき立ち止まって,耳を澄ませるよ

うに支援しましょう.グループごとに時間差で出たり,順路を変

えたりして,グループごとの干渉を少なくしましょう.生態園に

は,音を聞くための仕掛けや停留所があります.自作の音を聞く

道具をもっていくのも一案です(4 頁).なお,音の探検は,野外

観察地に馴染ませるためにも有効です.

効果 探した音を表現し,音の体験を共有することができます.

ニックネームをつけよう

体制 グループ活動(2-5人)

所要時間 60 分(耳の体操 5,解説 5,活動とまとめ 40,ふりかえり 10)

方法

グループごとに,決めた地点で耳を澄まします.聞こえた音の中

から1つ選んで,その音の特徴を5の倍数,最大15個,みんなで

協力して探します.音の強弱,長短,繰返しなどの音の特色や,鳥

や虫,植物など生物の種類,聞こえた位置や方向などに気をつけて,

1人ずつ順番に特徴をあげます.これらの特徴に基づき,聞こえた

音にぴったりなニックネームをつけます.学級全体の発表会でこの

ニックネームを発表し,みんなにどんな音だったか,音源は何だっ

たか予想をたててもらいます.「野鳥観察ガイドブック」などを参

照したり,耳の達人の支援を受けたりして本当の名前を探ります .

教材 (8)ニックネームをつけよう

ヒント 自分の心に残り,他の人にも伝わるニックネームにしま

しょう.また,ニックネーム集をつくるとよいでしょう.

効果 事物に名前をつける意義を考えるきっかけにします.

Observe Nature by Ear ! 耳をたよりに自然を観察!

自然の音を聞けるようになる 大庭 照代 千葉県立中央博物館

ステップ 1

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 **2

図1 役割分担して野鳥を探索する(イラスト 丸山 聡栄)

ステップ2は,音を手がかりに野鳥を探索し,鳴き声の特徴や

鳴いている鳥の姿,生息場所などから種類を識別し,生態や行動

を観察する学習プログラムです.ここでは,音を聞き比べること

が最重要課題です.ステップ1で学んだことに基づいて,耳をた

よりに野鳥を探し,音声識別装置「ききみみずきん」(以下,識別

装置)を使って,その鳴き声から鳥の種類の識別を試みます.た

だし,鳥の名前を知ることが目的ではありません.その過程にあ

る観察と情報収集が十分に行われ,子どもなりに種類を判断でき

るように支援しましょう.達成目標として,「今日,鳴き声をよく

聞き比べて,得意な鳴き声を最低2種類つくりましょう」,あるい

は高学年の場合なら,「正答率 70%以上をめざして,鳴き声をよ

く聞き比べましょう」というように,識別努力を刺激するように

動機づけを行います(7 頁).

野鳥の観察

多くの子どもが鳥をたくさん観察したいと思って,生態園に来

ます.「たくさん」とは子どもがよく使う表現ですが,さまざまな

種類という意味もあれば,種類にこだわらず鳥を何羽も,あるい

は何度でも見て,いろいろな活動をしているようすを見たいとい

う意味もあります.なかには,事前学習1の際に「野鳥観察ガイド

ブック」で見たきれいな鳥,たとえばカワセミなどの特定の鳥を

見たい,と願っている場合もあります.

しかしながら,野外では,見たい鳥を必ず見ることができるわ

けではありません.教員や支援者が子どもの気持ちを受け止める

ことは必要ですが,いろいろな鳥を子どもに観察させなければな

らない,と躍起にならないようにしてください.鳥の種類や個体

の数が少ないことも,多いことと同じくらいに重要な観察です.

スズメのように普通種とされる鳥でも,スズメの鳴き声や姿など

を空で言える人はなかなかいません.また,鳥がちっとも動かな

い場合,「何もしていなくてつまらなかった」という感想があって

よいと思いますが,鳥がじっとしていることにも理由があります.

ありのままの状態をじっくり観察することから,いろいろな発見

や「なぜ?」という疑問が生まれます.

鳥は,人が近づくとしばらく黙り込み,じっと動かなくなるこ

とがあります.人のようすを窺がっているのです.再び鳴き声が

聞こえるまで,担当地点で「静かに待つこと」も必要です.とく

に,観察者がじっとしていると,鳥はごく近くまでやってきます.

ところで,シジュウカラの群に取り囲まれた子どもが,一見ぼ

んやりしているように思われました.実は鳥のあまりの近さにす

っかり驚き,すくみ,興奮し,呆然としていたのです.おとなの

視点で子どもの体験内容を見限らないように,注意が必要です.

グループ活動

ステップ2では,マイクをもつ録音係,識別装置を操作する識

別係,双眼鏡を使って目で詳しく観察する係,「野鳥観察ガイドブ

1 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」体験シート9,10.

ック」を調べる係,体験シートに観察結果を記録する係など,グ

ループ内の子どもは,協力して観察を進めます.教員や支援者は

適切な支援を行って,どの子どもも係を分担し,役割を順番に回

しながら,全員が参加できるように促しましょう(9-10 頁).

さて,子どもが識別装置を操作しているときに,もし鳥の群に

取り囲まれたら,どのように支援するべきでしょうか.画面を覗

き込んでいる子どもに,「鳥が近くにいるから,今は目で見たら」

と,つい促したくなります.事例では,支援者のアドバイスに子

どもは迷惑そうでした.「ふりかえり」を見ると,鳥が自分の近く

に来ていたことを十分知っていて,鳥が近く録音がうまくできた

ため識別に専念したかったようです.また,この事例では,肉眼

で鳥の体の細部や色具合まで見え,鳴き声も耳のそばで大きく聞

こえたので,それぞれの子どもの意見を取り入れて,正しく識別

されました.

各グループは,それぞれ異なる観察をするので,活動の最後に

集合して,他のグループと観察結果をわかちあうことにより,多

様な観察結果を伝えあうことができます.子どもは次の体験を待

ち望み,新たな意欲を持つようになります.

活動の概要

体制 グループ活動(3-5人)

所要時間 90-100 分(耳の体操 5・解説 5・装置の操作方法初回のみ 20・

活動 50・ふりかえり 10-20)

方法

グループごとに識別装置の使い方を練習した後,生態園内の担

当地点に移動し,野鳥の探索を行います.グループごとに数地点

で行いますが,各地点で 10-15 分間は動かず探索します(32

頁).探索は次の8つの手続きからなります.

1)聞こえた音を識別装置でキャッチする(29 頁).

2)キャッチした音を聞きなおし,鳴きまねして特徴をつかむ.

3)キャッチした音とサンプル音とを聞き比べる.

4)耳だけでなく,鳥の姿や行動やいた場所などを,目でもよく

観察する(双眼鏡や望遠鏡の活用).

耳をたよりに自然を観察! *** Observe Nature by Ear ! 耳をたよりに自然を観察! Observe Nature by Ear !

野鳥の探索 大庭 照代 千葉県立中央博物館

ステップ 2

**3 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

5)「野鳥観察ガイドブック」や識別装置の関連情報を検討する.

6)鳥の種類を総合的に判断する.

7)観察した地点の番号を入力し、識別結果を保存する.

8)体験シートに観察結果を記録する.

教材 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート」(11)とりのこ

えキャッチ名人,(12)どこで なにが ないていた?(13)耳を

たよりに鳥を調べよう,(14)音のたからさがし

ヒント

・識別装置の操作は,ゲーム機を操作する要領と変わらないので,

年齢に関係なく,装置に触ればすばやく習得します.

・録音するときは,頭と体を音の方向へ向けて,マイクを音源に

正確に合わせる必要があります.

・どの子どもも必ず識別装置やマイクなどに触るように順番を組

みましょう.4 名の場合,マイク⇒識別装置⇒記録⇒野鳥観察ガ

イドブックと双眼鏡とします.識別装置を操作した後にマイクを

持たせると,次の子どもの操作に干渉し,録音に集中しません.

後の子どもも落着いて体験できません.

効果 耳も目も使って,野鳥の観察を子ども自身で行う楽しさと

自信を育みます.録音した音を聞き,サンプル音と比較すること

で,音についての観察力を高めます.

Observe Nature by Ear ! 耳をたよりに自然を観察!

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 **4

<耳の体操>

目をつぶり,頭をいろいろな方向に

向けて聞きます.

目 を つ ぶ っ た まま,自分のまわり

を回りながら聞きます.聞こえる方向を指しながら行

うのもよいです. 聞こえた音の種類

を数えて,その数をみんなで確認します.

<装置の使い方>

マイクと識別装置を接続して,使い

方を練習します.

出かける前に,試

しに録音します. 音を聞く仕掛けも活用して,音を探

索します.

<よく聞くには>

ロート型の音を聞

く道具や,手のひらを使います.

立ち止まって聞くようにします.

音を聞く停留所も活用します.

ステップ 2 「野鳥の探索」プログラムの流れ

<野鳥の探索>

グループで協力して 野 鳥 を 探 し ま

す.

マイクを音のする

方向に向けて,しっかり音をキャッチ(録音)します.

キャッチした音を

聞き,まねします.何の鳥か識別装置にききます.リス

トにあげられた種類のサンプル音と聞き比べ,よく似

た鳥を探します.

目 で も 確 認 し ます.「野鳥観察ガイドブック」を活用

し て 鳥 を 調 べ ます.

種 類 を 判 断 し た

ら,識別装置にデー タ を 保 存 し ます.体験シートに

も忘れずに記録します.

<ふりかえり> 野鳥の探索中に気づいたことや感想

を発表します.質疑 応 答 の 時 間 です.

ステップ3は,生態園内のいろいろな場所で,耳をたよりに野

鳥を調査し,その結果を地図に表わすことによって,園内の環境

の違いを比べ,野鳥の行動や生態と環境とのかかわりを考える学

習プログラムです.ここでは,鳥の鳴き声を糸口に,音から環境

を探ることが重要な課題です.

子どもはステップ 2 で培った野鳥の探索と観察方法を活用し,

グループごとに音声識別装置「ききみみずきん」(以下,識別装置)

を使って,園内の複数の担当地点で野鳥の観察を自主的に行いま

す.さらに,観察地点のようすをよく観察します.

観察終了後,各グループの識別装置内に保存されている録音と

その識別結果(鳥の名前・日時・場所など)を,データ収集管理

装置(以下,管理装置)に回収します.管理装置は,全グループ

の観察地点で識別された野鳥データを集約することにより,生態

園の地図上に観察結果を,「野鳥観察マップ」として自動的に作成

します(図1).「野鳥観察マップ」は,野外活動終了後に行う学

習発表会において,学級全体の観察結果を概観し,グループごと

のまとめと発表,全体での質疑やディスカッションに役立てます.

全学年に共通な達成目標は,力を合わせていろいろな環境で耳

をたよりに野鳥を観察することです.すなわち「識別装置を使っ

て生態園の野鳥観察マップをみんなで協力して作成します.各グ

ループは,鳥の鳴き声や姿を手がかりにして野鳥をよく観察し,

それぞれ識別装置に記録しましょう」と動機づけます.高学年で

は学習に比較を導入し,「担当地点の環境の特徴や,観察される鳥

の種類や行動などの違いを考えましょう」と目標設定します.

活動の概要

体制 グループ活動(3-5人)

所要時間 140-150 分(耳の体操 5・解説 5・装置の操作方法復習 10・野

外活動 60・まとめ 30・発表 30-40)

野外活動

耳の体操の後,識別装置や双眼鏡などを準備して,グループご

とに生態園内の担当地点へ出かけます.地点間を移動するときに

は,静かに歩きましょう.他のグループが観察しているかもしれ

ません.観察地点では,15-20 分間は動かずに,あたりの音に

耳を澄まして野鳥を探します.識別装置を活用し,識別した鳥の

名前・地点番号を入力(3-4頁)します.体験シートにも,鳥の

名前・地点番号・日時・観察内容を記入します.観察地点の環境

の特徴も注意します.

やむを得ずグループの人数が多い場合には,手の空いている子

どもを作らないように,サウンドマップを交替で描かせるとよい

でしょう.サウンドマップは,ゆったりと 6 分間,耳を澄まし

て,自分のまわりで聞こえる音を,感じるままに記号や形で描き

ます.後で比べることができるように,サウンドマップの上下の

方向を,描く場所の方向と位置関係に合わせます(17,24 頁).

観察地点

生態園には,「音のたからさがしポイント」として,環境の異

なる 20 地点が選定されています(32 頁).地点 17-19 は生態

実験園にあり,原則として午後 1 時から 4 時まで利用できます.

地点 20 は園外にあり,本館と生態園正門の中間地点です.

各グループが比較する地点の数は,活動時間を 60 分として園

内を移動する時間を考慮すると,2ヶ所が最適です.地点の組み

合わせは,環境の違いを比較するためのものですが,季節によっ

て変化するので,下見が必要です.

(冬季の例 矢印は訪れる順番)

A班 「ひなた」と「ひかげ」 ⑱→⑩

B班 「明るい場所」と「暗い場所」 ①→③

C班 「高い場所」と「低い場所」 ⑳→⑮

D班 「しずかな場所」と「にぎやかな場所」

あるいは「広々した場所」と「密集した場所」

⑧→⑤(⑥経由)

E 班 「落葉樹の林」と「常緑樹の林」 ⑨→②(①経由)

F 班 [水辺]と「林」 ⑯→⑬

教材 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート」(15)比べてみ

よう 2 つの環境,(16)鳥の声マップを作ろう,(17)まわり

の音を絵にかこう(サウンドマップ)

室内活動

1)グループ活動のまとめ: グループごとに,体験シートの記

録を参考に,地点ごとに観察された野鳥の種類や行動を整理

します.鳴き声を録音した場所の気温・明るさ・植物の種類

や生え方・静けさ・全体の景色などをふりかえります.その

結果,担当した地点の環境や野鳥の違いを比べます.支援者

は,子どもが環境の違いを比較できるように,ヒントや励ま

しを与えます.

2)発表会: 管理装置で作成した「野鳥観察マップ」1を全員で

見ることにより.その日の観察を概観します.これは,地図

の見方や観察地点の特徴の説明も兼ねて行います.その後,

グループ活動のまとめや,その日の発見や感想をグループ全

員に発表してもらいます.発表にあわせて,各グループが録

音した野鳥の鳴き声を再生して,みんなで聞きます.音を聞

くときに波形やソナグラム(声紋)(7-8 頁)を見せると興味

を増します.また,再生した音について聞いたことがあるか

どうか確認したり,鳴き声についてのクイズや解説などをあ

わせて行ったりすると,効果的です.

ヒント

発表会の進行は,子どもから各地点の紹介と観察結果を引き出

すように助言することが必要です.また,発表内容や方法を,他

の子どもの発表からも学ぶように支援します.

効果 比較することのおもしろさを体験し,個々の観察地点から

生態園(地域)全体を見わたす目を養います.

1 子どもがまとめを行っている間に,識別装置からデータを回収し,これをもとに野

鳥観察マップの作成準備を行います.野鳥観察マップは,液晶プロジェクターで大

型スクリーンに投影したり,印刷したりすることが可能です.また,各グループが

録音した音を確認し,発表会の際にみんなで聞くことができるように準備 しま す.

**5 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

耳をたよりに自然を観察! Observe Nature by Ear !

野鳥観察マップの作成 大庭 照代 千葉県立中央博物館

ステップ3

Observe Nature by Ear! 耳をたよりに自然を観察!

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 **6

音源のリスト表示

各地点で記録された音源のリストが示されます.

子どもが記録した野鳥以外の音源も示されます.

池から

カイツブリ

林の中を エナ

ガが移動中!

ハシブトガラ スが

オオタカを 追いか

けているね.

野鳥観察 マップを作ろう!

ヒーヨ ヒーヨ

とにぎやかに

鳴くのは, ヒヨドリだよ.

地 図 化

図1 「野鳥観察マップ」の作成: 野鳥音声識別装置に記録された識別結果を,データ収集管理装置のデータベースに取り込めば,「野鳥観察マップ」が自動的に作成されます.

(グループ)

・識別装置で種類を確認

・観察データの記録保存

(全体)

・管理装置にデータ取込

・観察データの集約

・アプリケーション「鳥の声」に

よる地図化

鳥の絵の地図 各地点で最も記録の多い鳥の姿が示されます.

イラストが用意されていない場合は,「?」のついたマ

ークが入ります. 記録がなかった地点は,

空白になります.

「耳をたよりに自然を観察! 音声認識技術活用」学習プログラ

ムの作成」では,IT を活用することによって,学校や生態園のよ

うな自然観察の現場において,自然の音の専門家がつききりでな

くても,また面倒な録音道具の整備活用に追われなくても,子ど

も自身が自然の音に耳を傾け,子どもどうしで観察結果を共有し,

野鳥の観察に不可欠な鳴き声の観察すら,ゲーム感覚で楽しく進

められるようになりました.その結果,観察力や表現力を高め,

野鳥や自然についての興味を広げ,比較という手法により地域環

境を検討するきっかけとなりました.それは,音をめぐる観察デ

ータについて,次の2つのことが可能になったためです.

1. 録音: 音声識別装置(以下,識別装置)の導入により,聞

こえたらすぐ消えてしまう音,あるいは葉陰などに隠れて

なかなかその正体がわからない音を,子どもが自分の手で

キャッチし,何回でも聞きなおせること

2. 識別結果の蓄積: データ収集管理装置(以下,管理装置)

により,みんなでキャッチした音のデータ,すなわち音源

の名前,キャッチした年月日・時刻・場所から,生態園の

野鳥観察マップを作成すること

キャッチした音の活用法

野外でキャッチした音は,WAVE 形式のデジタルオーディオフ

ァイル(サウンドファイル)として保存され,WAVE ファイルと

呼びます.これは,Windows の標準サウンドファイルで,無圧

縮の PCM サウンドです.学習プログラムでキャッチされた音の

WAVE ファイルは,録音した年月日と時分秒による名前がついて

います(図1).通常,ファイルをクリックするだけで,音を再生

するアプリケーションメディアプレーヤー(またはサウンドレコ

ーダー)が自動的に起動し,子どもでも再生できます.

野外で識別装置を操作する際,子どもはキャッチした音を5秒

間の録音全体の波形として確認をします.発表会などで,再生す

るときも,これと同じ形式の波形を見ることができると,一段と

子どもが注目します.また,ソナグラム(声紋)を調べることも

楽しい発見です(図2).このような音声の分析をするには,無料

のアプリケーション1を,インターネットからダウンロードします.

波形をみんなで見ながら,音を確認しながら聞き合って,識別

結果を確認しなおすことができます.音の同定が事前に行われて

いれば,識別の正答率を出すこともできるでしょう(参照 3 頁).

野鳥生息データベース

平成15年度には,科学技術振興機構地域科学館連携支援事業

として,3つの小学校が延べ10回の学習プログラムにおいて,

生態園で識別装置に支援された学習をしました.また,子ども鳥

1 図1で使用した WaveSurfer http:/ /www.speech.kth.se/wavesurfer/ のほかに

も, Avi soft Light ht tp: //www.avisof t-sasl ab.com/ などがある.分析の仕方な

ど詳細 ⇒ 大庭照代 2003.録音データを活用しよう! 音を見る音を知る.

Birde r 15(5): 68-71.

博士の中高生(日本鳥類保護連盟)や,研究相談に博物館を訪れ

た千葉市立高校の諸君(文部科学省スーパーサイエンスハイスク

ール)も,生態園の野鳥の鳴き声を識別装置で録音し,識別結果

を集めました.生態園では今後も,識別装置を利用した野鳥観察

活動から,録音とその識別結果が次々と作られ,管理装置に蓄積

され,野鳥生息データベースとなります.

データ収集管理装置には,学習プログラム実施ごとに結果が 1

つのフォルダーになり,日付と開始時刻,天気,指導者名からで

きた名前がつけられます(例: 200401221100-晴れ-oba).

さらに,グループごとのデータはそれぞれのサブフォルダーに入

れて,使用した識別装置の番号と使用者名からできた名前(例:

006-maruyama)がついています.蓄積されるデータは,時間

(年/月/日 時刻),場所,天候,PDA No(識別装置の番号),

指導者名,使用者名,尤ゆう

度ど

(音声認識レベル),WAVE ファイル

名,鳥番号(日本鳥類目録第6版に基づく)です.

では,このデータベースを使って何ができるのでしょう.管理

装置のアプリケーション「鳥の声」は,このデータベースを日付,

時刻,場所,種類,天候,PDA No,指導者名,使用者名で検索

耳をたよりに自然を観察! Observe Nature by Ear !

観察データの活用 大庭 照代 千葉県立中央博物館

図2 Wave surfe r による波形とソナグラム(声紋):右上の再生ボタンを

クリックすると,カーソルが音にあわせて移動します.ここでは,後

半にウグイスのさえずりが聞こえます.

**7 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

図1 学習プログラムでキャッチした音の WAVE ファイルは,録音した年

月日と時分秒による名前がついています.

することができます.図3に,2004 年1月22日の午前11時以

降のデータを検索する流れを示してあります.検索結果は,識別結果

と録音について表形式でデータの詳細が得られます.検索結果から,

野鳥観察マップ(参照6頁)を作成できるのはもちろんのこと,さま

ざまなグラフを表わすことができます.観察された種類の割合を示す

円グラフや,場所や時刻,種類ごとに,結果を検索できるピボットグ

ラフ,生態園でよく観察される特定の鳥類45種について,それぞれ

の識別回数を表示する棒グラフがあります.このようにして作成され

た野鳥観察マップや各種グラフは,生態園の自然情報として,学校や

その他一般の利用者が閲覧できるように,印刷したりモニター画面で

表示したりすることができます.自分たちの結果と他の人たちの結果,

すなわち違う季節や時間帯の結果を比べることができるのです.

図3 野鳥生息データベースの活用:データを検索する流れ

Observe Nature by Ear! 耳をたよりに自然を観察!

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 **8

日本鳥類目録第6版準拠

管理装置のアプリケーション「鳥の声」を

使って,データベースをいろいろな検索条件で検索することができます.この例では,千葉市立扇田小学校3年1組が学習プ

ログラムを実施した2004年1月22日の午前11時以降で検索してみます.

さまざまなグラフ 円グラフ(上左)

鳴き声が観察された鳥類の割合を示します.

ピボットグラフ(上右) 場所や時刻,種類ごとに,結果をみることができます.この例では,地

点 17 で識別された種類を1時間ごとに表示しています.

棒グラフ(下) 特定の鳥類45種について,出現回数を表示します.

音声認識装置の番号

録音のファイル名 同定により,キャッチした音

の中に2種類以上が認められた場合は,ファイル

名の後に種名が追加されています.

音声認識レベル

この例では,学習プログラム実施支援者の名前.

生態園内の 20 地点

グラフ化

地図化 6 頁

音声識別装置「ききみみずきん」は,とても魅力的な自然観察

ツールです.野外で耳にした音を録音し,さらには手元で再生す

ることによって,何人かで音を共有することができるからです.

自然観察会などで指導を行った方ならわかると思いますが,野外

で音(声)に出会った時に,それについて語るのは本当にむずか

しいものです.どの音(声)について話しているのかを参加者と

確認するために,うまくもない鳴きまねをし,本人しかわからな

いような音のたとえを,あれこれ出さなければなりません.チュ

リチュリだのギーギーだのとまねしているうちに,鳥は飛び去っ

てしまいます.油の切れた自転車のブレーキ音って,いったいど

んな鳥の声でしょう? 鳴く虫のカネタタキやクサヒバリに至っ

ては,最初からあきらめたほうが無難かもしれません.

子どもは自然体で受け入れる

子どもは,「ききみみずきん」をごく自然体で受け入れられます.

連携授業を行った生徒は,小学校 3 年生であれ,5,6 年生であ

れ,簡単なレクチャーを受けるだけで,若干の試行錯誤はあった

ものの,音の録音・再生を無難にこなしていました.むしろおと

なの方が IT に対して身構えてみたり,自然観察とはかくあるべき

という理念にとらわれたりして,馴染むのに時間がかかりました.

「ききみみずきん」を操作する子どもの姿は携帯端末型のゲーム

に興じる姿と何ら違いはありません.ごくごく自然体で受け入れ

てくれたことは,連携授業においても明らかでした.

目的は学習プログラムの達成にあり

しかし,この魅力的な「ききみみずきん」にも落とし穴があり

ます.鳥の声を録音・再生し,さらにはその声の主を判定してく

れるという能力(精度はイマイチですが)に,「ききみみずきん」

自体が目的になってしまう可能性があるのです.ゲームならば携

帯端末だけで完結してかまわないのですが,「ききみみずきん」は

自然観察のためのツールです.連携授業の場合で言えば,学習プ

ログラムの達成こそが目的なわけです.視覚に片寄りがちな自然

観察のアンテナに,「ききみみずきん」によって聴覚を加味するは

ずが,逆に視覚の方がおろそかになってしまったり,あるいは「き

きみみずきん」による単なる音あてゲームに終わってしまったり

するのです.たぶんこれは,子どもに双眼鏡を与えて野鳥観察を

やらせても,捕虫網やたも網を持たせて体験学習をやらせても同

じです.双眼鏡で見ることや生き物を捕ることが目的化してしま

い,学習プログラム全体の進行が停滞しかねません.

支援者は進行役

ここで重要になるのが,支援者による働きかけです.支援者が

援助するのは「ききみみずきん」の操作法ではなく,むしろ,学

習プログラムの進行です.ですから,鳥の声に詳しい必要もあり

ません.学習プログラムにおける「ききみみずきん」の位置づけ

を正しく認識し,子どもを全体の進行に沿ってコントロールでき

ればよいのです.

子ども自身に判断を

基本的な流れは図1に示しましたが,支援者にとって重要な点

が 2 つあります.ひとつは,「ききみみずきん」の識別結果の扱

いです.図では,「ききみみずきん」の意見を聞いてみよう,と表

現しました.装置の出した識別結果は,あくまでも参考意見に過

ぎないということです.つまり,識別結果を踏まえながら,最終

的には自分で判断しなければならないのです.このことは,仮に

装置の識別能力が向上しても変わりません.

そして,自分で判断するために不可欠なのが,目視による観察

と「野鳥観察ガイドブック-耳をたよりに自然を観察! -」(大庭

2003)の活用です.これがポイントの 2 つ目です.鳴き声によ

って鳥の存在に気づき,音源の方に体とマイクを向けることがで

きたら,支援者は姿を探すよう促します.そして,特徴をつかん

で「野鳥観察ガイドブック」で調べるのです.じつはこれは,通

常の野鳥観察の手順と同じです.ただ,子どもはどうしても視覚

に頼ってしまうので,その部分を「ききみみずきん」で修正して

いると言えるかもしれません.

能動的な観察を録音でパワーアップ

この段階までくれば,もう大丈夫.耳で気づき,目でとらえ,

頭で判断できるようになった子どもは,放っておいても学習プロ

グラムを進めてくれます.従来の「はとバスツアー」型ではない,

能動的な野鳥観察が展開されるはずです.そして,この段階に至

ってこそ「ききみみずきん」の最大の長所が発揮されます.音(声)

を録音して,持ち帰ることができるのです.ある意味では,唯一

の物的証拠? となるかもしれません.

子どもが集めたさまざまな音(声)のサンプルをどう使うかは,

学習の次のステップです.連携授業では,観察できた種類を環境

と結びつけて考察するという展開を行った例がありました.ほか

にも,たとえば,プレゼンテーションの学習においても有効です.

自分たちが観察した結果を発表するときに,インターネットでダ

ウンロードしたサンプル音をそのまま流すよりは,自分で録音し

た音(声)をみんなに聞いてもらう方がはるかに意欲的になれま

す.自分でとった音であれば,発表にいろいろな思いを込められ

るかもしれません.

音声識別装置「ききみみずきん」は,開発段階の自然観察ツー

ルです.3 つの小学校との連携授業を通じて感じたのは,「使える」

ツールになりそうな気配です.野外で,あるいは教室で,学芸員

として子どもと楽しく過ごせるためのツールは,あってあり過ぎ

ることはありません.

支援のしかた 耳と目と頭を使えるように

金子 謙一 市立市川自然博物館

耳をたよりに自然を観察! Observe Nature by Ear !

**9 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

図1 「耳をたよりに自然を観察 ! 音声識別技術活用学習プログラム」の基本的な流れ: 支援者は,音声識別装置「ききみみずきん」の識別結果と「野鳥観察

ガイドブック」を参考にして,子どもが自分でよく考えて,鳥の種類を判断できるように,助けることがだいじです.

Observe Nature by Ear! 耳をたよりに自然を観察!

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *10

ふりかえり きょうの学 習がくしゅう

: ①音おと

が聞き

けるようになる ②野や

鳥ちょう

の探たん

索さく

③野鳥観かん

察さつ

マップの作成さくせい

きょう、聞えた音のなかでいちばん小さな音はなに?

きょう、あたらしくしったことは?

きょう、いちばんおもしろかったことは?

きょう、おどろいたことは?

きょう、ざんねんだったことは?

きょう、かぞくやともだちに しらせたいとおもったことは?

これからどんなことをしたいですか?

____年ねん

_____月がつ

_____日にち

__________学校がっこう

____年ねん

____組くみ

______班はん

なまえ:____________

耳をたよりに自然を観察! Observe Nature by Ear!

*11 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

「飛び出せ ふしぎ たんけんたい」は,3年生「扇タイム」(総合的

な学習の時間)のテーマです.初めて総合の学習(扇タイム)をする子

どもなので,「ビオトープにくる生き物のことを知りたい」「野菜や米を

育てたい」「昔のことを調べたい」等々,子どもの興味関心を大切にしな

がら,活動の場を地域に広げ,自然とのふれあい,人とのふれあいを多

く取り入れ,楽しく学習を進めたいと考えました.

扇タイムと生態園とのプログラム連携

千葉市立扇田小学校は開校7年目の学校ですが,開校当時から,千葉

県立中央博物館の研究員の方に学習のアドバイスやゲストティーチャ

ーとして関わっていただいています.また,学習で生態園などを活用す

ることも多く,学校ビオトープ作りでは,「水辺の生き物」「どんぐりか

ら苗木を」「水草と生き物」などたくさんのアドバイスをいただき,子

どもにとって生きた学習が展開されたと思っています.

今回の「耳をたよりに自然を観察!」学習プログラム作成の活動は,

不思議を知りたい3年生にとって興味をもって取り組める内容ではな

いかと思いました.また,音を通して自然に関心をもち,自然を身近に

感じる心を育てることは,視覚に頼りがちな子どもにとって大切なこと

だと思います.そして,教師以外の多くの専門家の方々との出会いは子

どもにとって,新たな視野を広げてくれるチャンスに違いありません.

こうして,「耳をたよりに自然を観察!」のプログラムと3年生「ふし

ぎ たんけんたい」の学習がスタートしました.

3年生扇タイムの年間計画

1.ねらい

・ 調べ学習や体験活動などを通して,進んで学習する意欲を育てる.

・ 自然の中で,自然を使った活動を通して感性を豊かにする.

・ 調べたことや体験したことをわかりやすくまとめたり発表したり

できるように表現力を育てる.

・ グループ活動や多くの人との出会いを通じて,友だちのよさや自分

のよさに気づくようにする.

2.活動計画

1学期

・ グループで調べ学習(生き物,植物,昔グループ)

・ 栽培体験(綿,米,野菜,梅ジュース作り)

・ 地域の伝統芸能「お囃子」を体験

・ 地域の有吉公園で自然体験(春の ふしぎを みつけよう)

・ 第1回「耳をたよりに自然を観察!」プログラム(生態園)

・ 「カエルの学校」を開き,ビオトープと生き物たちの学習

・ グループ発表会(調べたことを発表しよう)

・ パンフレット作り

2学期

・ 収穫(綿,米,野菜など)

・ 土器づくり(昔グループ)

・ 第2回「耳をたよりに自然を観察!」プログラム(生態園)

・ 大おお

百ど

池いけ

公園で自然体験(秋の ふしぎを みつけよう)

・ 綿から布作り

・ 外国の方を迎えて世界の文化を知ろう(梅ジュースで乾杯)

3学期

・ 第3回「耳をたよりに自然を観察!」プログラム(生態園)

・ 鳥の声マップ作り

・ 鳥図鑑作り

・ 大百池公園で自然体験(冬のふしぎを見つけよう)

・ 第4回「耳をたよりに自然を観察!」プログラム(学校)

生態園における活動の前に

平成 15年度の 3年生は,人の話を聞くことより自分のことを話した

い,自分の話を聞いてもらいたい,またじっとしているよりいつでも身

体が動く活発な子どもが多いといった学年でした.「耳をたよりに自然観

察!」という活動ができるのか,担任として大変心配でした.

最初に,近くの有吉公園に行き,「春の ふしぎを みつけよう」という

活動をしました.そのなかに「音キャッチ名人になろう」という活動を

取り入れてみました.体験シートに自分が聞いた音を書き込んでいきま

した.「気持ちのよい音」「おもしろい音」「初めて聞いた鳥の声」など,

耳をたよりに自然を感じることをねらいとしました.また,聞いた音を

絵や記号で表わす「サウンドマップ」(ネイチャーゲーム1より)も取り

入れました2.思っていたより大変集中して音を聞いていたので驚いてし

まいました.戻ってから聞いた音を詩に表わしてみると,本当にいろい

ろな音を聞いていたのがわかりました.

第1回 音キャッチ名人になろう

1.活動のようす

2003年6月6日,第1回目の学習プログラム「自然の音を聞けるよ

うになる」が生態園で行われました.生態園は初めてという子が多かっ

たので,活動範囲をオリエンテ

ーションハウスと野鳥観察舎の

周囲にし,ビンゴ形式の体験シ

ートを使って「音キャッチ名人

になろう」という活動,野鳥観

察舎でいろいろな鳥を観察する

活動,音声識別装置「ききみみ

ずきん」を体験する活動を組ん

でみました.「音キャッチ名人

になろう」の体験シート3を使

っての活動では,学校の近くで

の活動と同じようにたくさんの

音を聞き取っていました.

1 ネイチャーゲーム 2 同等の体験シート: 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」体験シート 17. 3 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」体験シート7に収録.

飛び出せ ふしぎ たんけんたい

石井 信子・大網 照美 千葉市立扇田小学校

Case Studies of the Museum-School Program, 2003 平成15年度連携授業の事例

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *12

図 1 音キャッチ名人をめざす 3年生

しかし,「音」と同じくらい目に見えるものにも興味を持ち,クモな

どの生き物に大騒ぎをして,静かに聞くという約束を忘れてしまう場

面も見られました.

野鳥観察舎では,望遠鏡を覗

きながらたくさんの驚きに出会

ったようです.ふりかえりシー

トに「野鳥観察舎の望遠鏡を見

たら,メスが卵を温めていたの

でびっくりしたよ.オスが巣の

材料をもってきたと先生に教え

てもらったよ」とありました4.

また,音声識別装置を初めて

見て,大変興味を示したようで

す.「鳥の声を聞いて画面に鳥

の絵が写る機械を使ったことが

一番おもしろかった」「鳥の声

を聞いただけで鳥の種類がわかる機械があるなんてすごい.早く使っ

てみたい.」という子どもの声が多く聞かれました.

課題は,グループ活動がスムーズにいかず,自分勝手な行動をして

しまう子どもがいたので,日

常の学習の中で互いのよさを

認め合うような場を多く取り

入れていく必要があると感じ

ました.学校や家のまわりな

どの身近な地域の自然にも関

心を持つように,工夫してい

きたいと思いました.

2.活動後

6月の終わりに,環境アドバイザーの横田耕明氏を迎え「カエルの

学校」の学習をしました.コンピューターでカエルの声を聞きながら,

カエルの生態や自然の仕組みを楽しく学習しました.カエルの声には

特に興味を持って聞き入っていました.学校のビオトープに生き物た

ちがやってくるわけや,自分たちの地域の自然について考えるきっか

けとなりました.石膏で型取ったカエルの模型に,カエルの写真を見

ながら色を塗って学習しました5.グループの発表会では,鳥やカエ

ルのグループは,生態園などで体験したことや学習したことを,自信

をもって発表しました.

第2回 鳥の声キャッチ名人になろう

1.活動のようす

2003 年 10 月9日,

晴天のところ,第2回目

の学習プログラム「野鳥

の探索」が行われました.

今回は生態園の広い範囲

を歩きながら,音声識別

装置「ききみみずきん」

を使って鳥の声をキャッ

4 野鳥観察舎前に広がる舟田池には,カイツブリが毎年繁殖している. 5 尾崎煙雄・小川かほる(編著) 2000. 平成 11 年度千葉県立中央博物館親しむ博物

館づくり事業報告 カエルを題材とした自然学習-教材の開発とその活用例-.

チします.装置を自分たちで使うのは初めてなので,活動に入る前に

装置の使い方について説明を聞きました.しかし,3年生の子どもに

とっては,使い方に慣れるには時間が必要でした.限られた時間内で

は十分装置を使うことはできませんでしたが,アンケートの結果を見

ると「楽しかった」と答える子どもが大変多かったことはたしかです.

多くの子どもは「ききみみずきん」をまた使ってみたいと答えていま

す.

課題としては「鳥の声キャッチ名人になろう」という体験シート6を

使ったのですが,8個の枠を埋めることに気が向いてしまい,「声を

聞き比べる」ということが十分できなかったようです.また,装置に

気をとられ,目の前に鳥が来ていても目で判断することができない場

面もあったようです.3年生の子どもの実態から,耳で聞くトレーニ

ングが必要なのではないかと思いました.

2.子どもの感想

・ 生態園で鳥の声をキャッチする「ききみみずきん」がうまく使

えるか心配だったけど,5回も見つけられてうれしかった.

・ 生態園でいろんな鳥をみたけど,カワセミが一番うれしかった.

カワセミはすごくきれいで,体が青で光っていた.どうして生

態園にはこんなに鳥がたくさんいるのだろう.

・ 大庭先生は一度見ただけで鳥の名前がわかるのですごいなあと

思った.もっと鳥のことを知りたいと思う.

3.活動後

10 月の後半,学校の近くの大百池公園で「秋の ふしぎを みつけ

よう」というテーマで活動をしました.千葉市ネイチャーゲームの会

から御須裕子氏7と宮崎喜美恵氏に来てもらい,「秋の宝物探し」「木

の鼓動」「サウンドマップ」などのネイチャーゲームを通して,自然

のおもしろさや不思議さに気づくことをねらいとしました.大百池に

もたくさんの鳥がやってきます.子どもは鳥の声や,どんぐりが落ち

る音,枯れ葉を踏む音などいろいろな音を聞いていました.聴診器を

もって木の鼓動を聞く活動では,とても真剣に耳をすませて音に聞き

入っていました.戻ってから「大百池公園にもたくさんの鳥がいたの

でびっくりしました.」と感想を書いている子どもが何人かいました.

ある日の4時間目のことです.ビオトープにカワセミがやってきた

ことを見つけた子どもは,そっとみんなで見ていました.「カワセミ

が来るなんてすごい」と大喜びでしたが,カワセミが人里まで出てく

るほど,この地域の自然が開発の波に消えて行っているということで

しょうか.ビオトープにはいろいろな鳥がやってきます.「先生ほら,

鳥が来ているよ.メジロかな」などと話しかけてくる子どもがいます.

第3回 鳥の声マップを作ろう

1.活動のようす

2004 年1月22日,第3回目の学習プログラム「野鳥観察マッ

プの作成」が実施されました.2学期の後半から,「野鳥観察ガイド

ブック」を使って,トレーシングペーパーに鳥のイラストを写したり,

解説を書いたりして,自分の鳥図鑑を作ってきていました8.

この日,グループごとに生態園内で観察する場所を2ヶ所決め,音

声識別装置を使ってキャッチした鳥の声をじっくり聞き,識別する活

動をしました.3回目ともなると,グループ活動を上手にできるよう

6 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」 体験シート 11. 7 24 頁参照. 8 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」 体験シート9.

平成 15 年度連携授業の事例 Case Studies of the Museum-School Program, 2003

図 2 音声識別装置の実演に興味津々.

せいたいえんの音

ピピピピピピピピ はじめて聞いた音

ピーチピ 上から聞こえた音

ピーピーピー ふしぎな音

ググウググウググウ おもしろい音

ホーホケキョ 気持ちのいい音

まだまだあるけど書ききれない.いろんな音

ふしぎな音 いっぱいあるね

(3 年生の詩)

図3 今キャッチした声は何の鳥かな.

*13 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

になり,分担もスムーズ

にでき協力して活動する

姿がみられたことはうれ

しいことです.装置のト

ラブルもあったようです

が,装置を使っての活動

に集中して取り組んでい

ました.「すごい! 今聞

いた鳥の声だ」装置から

聞こえてきた音に感嘆の

声を上げているグループもいました.

「ひなた」が観察ポイントだったグループは,目の前に広がる日の

あたった草原に,たくさんの鳥が食べ物をついばんでいるのを見て,

興奮していました.すぐ「野鳥観察ガイドブック」で鳥を調べたり,

双眼鏡をのぞいたり,いつまでも飽きずに見ていました.

冬は肉眼で鳥を観察しやすいので,じっと鳥を見ている姿が多くみ

られたようです.また,音を録音するという目的をわかっていて,静

かに歩こうとするなど,主体的な活動もみられるようになりました.

課題としては,録音のタイミングを耳で判断できるようにすること

でした.活動の始めに「耳の体操」をして,耳を働かせるようにする

必要性を,学習プログラム開発委員が指摘されていました.たくさん

の声を聞いていたのに録音されていないという結果が出ていました.

体験シート「鳥の声マップを作ろう」9の鳥の記入についても改善が

必要だと思いました.

2.子どもの感想

・ キジバト,ジョウビタキ,エナガ,ハシブトガラスなどいろん

な鳥がいた.不思議な鳥がいて双眼鏡でのぞいたら,頭の後ろ

が白くておなかは赤く,口は鋭く黒かった.

・ 生態園でいろいろな鳥を見られてとてもうれしかった.途中で

電池切れで鳥の声をキャッチできなかったのは残念だったけど,

自分の目で見たり,耳で聞いたりできたから楽しかった.

・ 最初は機械がむずかしかったけど,だんだん慣れてうまくなっ

てきた.T君とS君はとても上手にキャッチしていた.エナガ

が一番聞こえた.

3.活動後

野外活動の後,昼食をはさんで,博物館本館の講堂でまとめをしま

した.研究員と開発者の手で,午前中にキャッチした鳥の声が学級ご

とにまとめられ,大きな「野鳥観察マップ」としてスクリーンに映し

出されました.3 年生は初めてみる地図に,とても驚いたような不

9 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」体験シート 17.

可思議な表情を浮かべていました.グループごとに,大きな地図の前

で感想を述べました.

学校に戻りさっそく全員で「鳥マップ」を作りました.聞いたり見

たりした鳥の絵や声の解説を作りました.聞いたり見たりした鳥を地

図に貼っていきました.また,一人ずつ鳥図鑑を作り,生態園での学

習をふりかえりカードに書いて貼り出しました.他の学年の子どもが

よく見ているのがうれしいです.

最後に

3回の生態園での活動を通し,鳥に大変関心をもったようです.音

声識別装置がなかったら3年生の子どもがじっくり鳥の声に耳を傾

けたり,鳥を見たりしただろうかと考えると,この装置がきっかけと

なり,音や鳥に関心をもつようになったことはたしかだと思います.

装置がうまく作動しなくても自分の目や耳で鳥の声や姿を追ってい

ます.「耳をたよりに自然を観察!」の学習プログラムはいろいろな

工夫をすることで,子どもに自然への道案内ができるものと考えます.

来年度4年生になる子どもは扇タイムで「大百池公園学習」をする予

定です.地域の自然を調べたり自然の中で活動したりしながら,自然

と自分たちの暮らしについて考える学習です.3年生での学習を活か

しながら自分たちの地域と生態園を比べたり,鳥などの生き物を通し

て自然を見つめ直したりする,そんな学習が展開されることを願って

います.

3回の活動を通し,多くの方のご協力をいただき大変うれしく思っ

ています.「先生に教えてもらったんだよ」「鳥のことなんでも知って

いてすごい」と目を輝かせる子どもです.たくさんの方の出会いから,

多くのことを学ぶことができたのだと思います.

Case Studies of the Museum-School Program, 2003 平成 15 年度連携授業の事例

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *14

研究員から

2004 年 2 月 25 日 生態園野鳥マップのポスターを届

けに千葉市立扇田小学校を訪れました.この授業を生態園で

行った 3 年生は 2 学級全 75 名.この日は手を上げて元気

いっぱい,ポスターに出てくる鳥の名前・鳴き声・習性など

発表してくれました.その後,私がなぜ自然の音を研究して

いるのか,好きな鳥は何かなどの質問が後を絶ちませんでし

た.初めてあった 6 月よりも背丈が伸び,心の成長も感じ

ました.どの子どもの中にも,すくすくと伸びる竹のような

生きる力があることに,感動しました.(大庭 照代)

図4 みんなで協力して観察するのもなれてきた.

図5 野鳥観察マップの説明を研究員から聞いた. (撮影 丸山 聡栄)

図 6 鳥の絵や鳥図鑑づくりが活かされた生態園の「鳥マップ」.

千葉市立源小学校は,「ボランティア活動推進協力校」の指定を受けて

いて,平成 15年度はその3年目にあたります.地域クリーン活動や児

童会によるユニセフバザーなど,さまざまな活動を工夫してきました.

5年生の「総合的な学習の時間」でも,福祉やボランティアに目を向け

た実践に取り組みました.その総合的な学習の活動の中に,聴覚を働か

せるような自然体験を取り入れることにより,自然に対する感性を磨い

ていきたいと考えました.

音から考える環境教育

私たちは,ふだんの生活の中で,静かに音に耳を傾けるということが

あまりないと思われます.しかし,注意深く聴いてみると,自然のさま

ざまな営みの音を聞くことができます.環境教育を進めていくうえで特

に大切なことは,自然に対する豊かな感受性を育んでいくことであると

考えています.「聴覚」は五感のひとつとして,重要な感覚です.

今回,「耳をたよりに自然を観察! 音声認識技術活用学習プログラ

ム」を総合的学習の内容に絡めて,3回にわたって千葉県立中央博物館

の生態園を訪れ,学習プログラム開発委員会の支援を受けました.自然

の中に身をおいての直接体験をとおして,児童にはさまざまな「気づき」

や「感想」が生まれました.この学習により,豊かな感性を育てたり,

自然に対する理解を深めたりすることができるものと考えました.

活動の計画

1.テーマ

「自分たちでよくしよう,自分たちの町」

2.活動内容とグループ編成

A班 地域の人とふれあおう

B班 クリーン活動に取り組もう

C班 地域の自然について調べよう

D班 福祉って何だろう

3.ねらい

・自分たちの住んでいる地域のよさや問題点を見つけて調べたり,地

域の環境や福祉のために自分たちのできることを考えて実践したり

することができる.

・友だちと情報を交換したり,友だちの発表を聞いたりして,地域に

ついての自分の考えを深めることができる.

4.支援者の願い

・町探検をしながら,地域の環境や福祉問題に目が向くようになって

ほしい.

・地域の自然環境について調べることを通して,自然のよさや大切さ

に気づき,地域の自然を大切にしていこうという意識を持つことが

できるようにしたい.

・「音を聞く体験」を通して聴覚を磨き,自然からいろいろなことを学

んだり感じとったりする豊かな感受性を育てたい.

5.具体的な活動

・学校裏の林でネイチャーゲームを実施し,自然観察をする.

(動植物の発見,野鳥の鳴き声やいろいろな音調べ)

・町づくりの例のビデオを視聴し,自分たちの町について考える.

・町探検をする.

・アメニティマップ作りをする.

・町探検,アメニティマップ作りをしてわかったことを発表しあう.

・さらに調べたいこと,行動したいことについて話し合い,今後の活

動についての課題を持つ.

・課題別のグループをつくり,活動計画を立てる.

・計画にそって活動する.

・活動のまとめをする.

・他学年の児童や地域の方たちに活動してきたことや地域の環境につ

いての考えを発表する.

活動のようす

手はじめに,自分たちの住んでいる町の探検に出かけ,「いいなと思う

ところ」と「いやだなと思うところ」を調べました.その結果を「アメ

ニティマップ」としてまとめました.町探検の活動をとおして,またア

メニティマップを見ながら感想をみんなで話し合う中で,自分たちの住

む町をもっと住み心地のよい町にしたいという意識が高まり,活動のテ

ーマや内容が決まっていきました.「住み心地のよい町」を考えるときに,

「音」についての「気づき」がありました.鳥の鳴き声を聴いて,鳥の

存在を知り,そして,その鳴き声を気持ちよいと感じていました.そん

なところから,生態園における 3 回の活動,「耳をたよりに自然を観

察!」の学習プログラムへとつながっていきました.

自分たちでよくしよう,自分たちの町 石井 康子 千葉市立源小学校 ・ 松山 みよ子 環境教育アドバイザー

*15 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

平成 15年度連携授業の事例 Case Studies of the Museum-School Program, 2003

「自分たちで作ろう、自分たちの町」

五年一組

一行詩

さあ,朝だ.一日のあいさつ始めよう(野上)

あいさついっぱい元気だ(竹内)

近所の人とごあいさつ(吉田)

おとなも子どももみんなであいさつ(赤井)

ふれあいをあいさつひとつで広げよう(鳥海)

ブーブー車はうるさいな(薄井)

だまるといい音聞こえるよ(飯田)

いろんな場所でのいろんな声(森田)

耳をすませば聞こえてくるよ虫の声(恵介)

ミーンミーン,

セミの声(林)

静かにすれば聞こえてくるよ

いい音が(藤島)

鳥の群れ,みんなで歌う大合唱(小林)

よくみれば,いっぱいあるよ自然の町(菅井)

自然がいっぱい,緑がいっぱい(川上)

アリの行列,遠足か(忠臣)

よくみたら,いろんなところに緑がいっぱい(角)

自然がいっぱい,楽しさいっぱい(政人)

大きな木を守ろうよ(松本)

広めよう,緑いっぱい豊かな町(平野)

ゴミがなければいい気持ち(梅木)

ゴミ拾い,みんなでやればピッカピカ(山下)

きれいになったよ.緑の公園(益子)

ゴミひとつない町は気持ちいい(歩美)

きれいだと,心も豊かで気持ちいい(松下)

きれいな町は気持ちいい(山田)

使って欲しい.点字ブロック(中野)

昔が残る,豊かな町(栗並)

どんな人も,だれでもくらせる町なんだ(吉永)

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *16

Case Studies of the Museum-School Program, 2003 平成 15 年度連携授業の事例

2003 年5月 27 日 生態園における学習プログラム実施に

先立ち,大庭研究員が教室へ来ました.「はじめまして.私は

自然の音が好きです.生態園でみなさんと一緒に,鳥や虫など

いろいろな音を聞くのをとても楽しみにしています.どうぞよ

ろしく.」という挨拶に,児童はとてもびっくりしていました.

(所要時間: 10 分)

1 回目 はじめまして,よろしく

千葉市立源小学校「耳をたよりに自然を観察!」活動記録

千葉市立源小学校 5 年生(担任:石井康子 最終列右,支援者:松山みよ子 最終列左)

2003年11月7日 生態園内で鳴き声をてがかりに野鳥を

探索しました.音声識別装置「ききみみずきん」を児童が自分

で操作して,鳴き声から鳥を識別し,判定に挑みました.

1.事前準備

学級を6班にわけ,班ごとに役割分担や装置の使い方などを

話しあいました.そして「野鳥観察ガイドブック」を活用して

鳥の名前や姿・大きさ・鳴き声なども学習しておきました.

2.野鳥の探索

体験シート: 「生態園の鳥たち」

生態園では,児童はいろいろな鳥に出会うたび,目では姿や

色や動作を見ることができ,耳では鳥の声の高さや長さ,大き

さ,回数などを聞くことができました.グループのだれもが,

1 人あたり 10 分間,装置を体験しました.学級全体では,鳥

の声を 53 個も装置にキャッチしました.この装置の支援によ

り,鳥の鳴き声から種類を判定し(正答率 42% 参照7頁),

3回目 耳をすませて

体験シートに鳥の名前,鳴き

声,聞こえた時刻を書きこみ

ました.また,この体験シー

トは,(空を飛んでいた鳥)(木

の中にいた鳥)(草原や地面に

いた鳥)というように,観察

位置で区分してありましたの

で,鳥の居場所についても児

童は観察できました.

(所要時間: 90 分,

関連の体験シート集: 12)

千葉市立源小学校 5 年生 28 人に聞きました

「ききみみずきん」に興味がありましたか?

おおいにあった 27 人・ふつう 1 人・なし 0 人

鳥の声を聞くことは,楽しかったですか?

楽しかった 24 人・ふつう 3 人・なし 1 人

日常の中で,音に気がつくようになりましたか?

なった 14 人・ふつう 14 人・なし 0 人

2003 年 5 月 29 日 5年生の児童のうちほぼ8割が,生

態園を初めて訪れました.2 班に分け,滞在時間の前半と後半

で 2 つの活動を交替で行いました.活動ごとに体験シートを

用意し,それぞれの体験時間は 30 分としましたが,もう少し

時間をとったほうがよかったかもしれません.

1. 生態園たんけん

体験シート: 「生態園たんけんマップ」

初めての印象を大切にしたいと思い,事前の説明をしないま

まに,1 人 1 人自由に,生態園を見たり,歩いたりしてもら

いました.生態園の中で「おどろいたこと」「おもしろいこと」

「不思議に感じたこと」「私の見つけた宝物」の 4 つを探し,

体験シートに記入しました.タヌキに出会ったり,葉っぱにつ

いたアワフキムシに驚いたり,カイツブリが卵を抱いているの

を見たり,キノコを発見したり,それぞれに楽しんでいました.

2. 音が聞けるようになる

体験シート: 「さあ,耳ならしです」

いろいろな音がする中で1つの音を聞いて,その特徴を書き

出すところが少しむずかしかったようでした.生活の中で,耳

からとらえる音に神経を集中することが,あまりにもないから

でしょうか.しかし,音のする方向に耳と身体を一緒に向ける

動作は,初めての体験でした.また,静かにすることで,鳥の

声がこんなにもたくさん聞こえたのには,感動しました.

耳ならしの後,博物館研究員から,鳴き声の特徴から鳥の種

類を聞き分けられるという話を聞きました.また,次に来園す

るときに使うことになる音声識別装置「ききみみずきん」を,

開発者に見せてもらいました.音に対する興味と生態園への関

心に結びついたようすでした.

(所要時間: 60-80 分,関連の体験シート集: 2,8)

2回目 生態園を楽しもう!

*17 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

2004年 1 月 30 日 生態園内の場所によって観察される野鳥

が違うかどうか,環境の違いを比べました.今回は,音声識別装置

でキャッチした音を,データ収集管理装置に集めて,作成された野

鳥観察マップを見たり,キャッチした音を聞いたりしました.

1.事前準備

「ひなたとひかげ」「暗い場所と明るい場所」「高い場所と低い場

所」「広々した場所と密集した場所」「静かな場所とにぎやかな場所」

「常緑林と落葉林」「水辺と林」の 7 組の場所を選びました.学級

を 4 人ずつの7班に分け,担当場所を決めました.

2. 耳の体操

目をつぶって耳に集中しました.音の種類を数えたり,聞こえる

方向を指差したりして,耳をたよりに観察する準備をしました.

3.野鳥の調査

体験シート: 「くらべてみよう」

午前中,2 地点で鳥の種類や数を調べました.装置を使って耳で

識別した鳥と実際に見た鳥とに区分けして,結果をまとめました.

4.音の調査

体験シート: 「音のマップ」

野鳥の調査をしている間に,1 人ずつ交替でその場所において自

分の耳で聞いたすべての音を,記号や絵で描きました.

5.まとめ

午後は,各班のまとめと発表を行いました.「暗い場所と明るい

場所」班はオオタカを見た感動を述べました.「高い場所と低い場

所」班は,高い場所で 8 種類,低い場所では12種類の鳥を観察し,

音マップから見えた自然の音と人工の音の場所による違いを発表

しました.「静かな場所とにぎやかな場所」班は,コゲラが木をつ

つく音を聞かせてくれました.「ひかげとひなた」班は,ひなたで

声が大きく聞こえたのは,何も遮るものがないから大きく聞こえ,

ひかげはまわりが林に囲まれ音が遮られ小さく聞こえたのではな

いか,との推測を発表してくれました.班ごとに,環境による鳥の

違いが見えたようでした.この日,観察した鳥は,山の鳥7種類・

草原の鳥1種類・人里の鳥 11 種類・水辺の鳥 6 種類,全部で 25

種類でした.

(所要時間: 野外 100 分・室内 70 分)

4回目 くらべてみよう・音と環境

2004年3月 3 日 博物館から大庭研究員が音声識別装置

を持ってきました.耳の体操をしてから,学校の校庭と隣接し

た林で,野鳥の探索を行いました.林では,高い枝でさえずっ

ている鳥をみつけました.早速キャッチして.教室に戻ってか

ら聞きなおし,ムクドリであることを確認しました.たくさん

質問が出ました.1 月 30 日の野鳥の調査結果をまとめた生態

園の「野鳥観察マップ」を見ながら,「耳をたよりに自然を観

察!」の学習をふりかえりました. (所要時間: 野外 60 分・室内 40 分)

5回目 生態園,そして学校のまわり

野外活動をふり返って -5 年生の声-

・ 音声装置の機械を使えるので,ウキウキうれしかった.

・ 鳥の声や種類がよくわかって鳥に興味をもちました.

・ 生態園では,今まで知らなかった鳥の形や声を聞いてい

ろいろな楽しい勉強が,できてよかったです.

・ ききみみずきんでは,なんの鳥かなァ と決めるのがたい

へんだったけれど おもしろかったです.

・ 鳥がいっぱい このような生態園を,もっと作ってほしい

とおもいました.家族で来たいです.

活動と発展の成果

・ 総合的学習の発表「源フェスタ」で鳥の声を当てるクイ

ズをつくった.

・ 学校の中で同じ鳥を探した.

・ 地域の,環境調査の活動につながった.

・ 子どもたちの会話や視野に,広がりが見られた.

・ 自然への興味や音への関心が見られた.

・ 自然の良さを発見できた.

近年,自然と暮らしが,切り離されているような気がします.

人間の祖先は自然の声に今よりも敏感であり,生活の営みの中

で生かされた自然観が,あったのかもしれません.今回,生態

園における「耳をたよりに自然を観察!」の活動は,自然に心を

傾けることができた貴重な体験でした.子どもには,実体験の

中から心と身体を豊かに育ててほしいと願っています.

平成 15 年度連携授業の事例 Case Studies of the Museum-School Program, 2003

6学年の理科の単元「生き物のくらしと自然環境」において,「音」

に着目した自然観察を何度か試みてきました.しかし,録音機器など

道具の問題や指導方法,指導計画等課題があり,十分な成果を得るこ

とができませんでした.今回,「耳をたよりに自然を観察! 音声認識

技術活用学習プログラムの作成」にかかわって,千葉県立中央博物館

の支援を受け,聴覚を観察の窓口にした手法を取り入れることができ

ました.その手立てのポイントは,①地域の科学博物館(学芸員や自

然観察指導員)との連携,②音声識別装置「ききみみずきん」の活用

の2点でした.また,この学習から,「音」が環境に関する情報源と

して優れていることはもちろん,学習の楽しさを深め,心の栄養とな

るカンフル剤にもなる教材であることを実感しました.

単元の指導計画

1.ねらい

動物や植物の生活を観察し,生物と環境とを関係づけながら調べ,

生物と環境とのかかわりについての考えをもつようにする.

2.指導計画

本単元の指導において,地域の自然環境等を活用したフィールドワ

ークを実施するためには,指導時数を確保する必要がありました.そ

こで,年間の指導を見直し,表 1 のように計画しました.また,今

回の指導計画は,音声識別装置「ききみみずきん」(以下,識別装置)

および音声データ収集管理装置(以下,管理装置)の開発と平行して

行ったため,連携授業は学級ごとに各学期1回,千葉県立中央博物館

を訪れ,その生態園および本館展示室において行いました(2 学級,

全 6 回).さらにその後,学校や地域での自然観察に,識別装置を活

用する計画を立案しました.

3.「耳をたよりに自然を観察!」導入のポイント

本単元では,酒々井町立大室台小学校の学区の特徴である「谷津田

(里やま)」を調査するため,自然環境を調べる方法は,「自然観察ガ

イドブック」1を活用しました.ガイドブックの調査方法にしたがっ

て,次の6点を調べることにしました.

1)里やまのなりたち 2)林のようす

3)水辺のようす 4)里やまの動物

5)ゴミのようす 6)里やまと人とのかかわり

博物館との連携授業は,「里やまの動物」の部分とし,「動物」(鳥)

の生態を「音」(鳥の鳴き声)を手がかりにして調べる活動を実施しま

した.

「耳をたよりに自然観察-1」

1回目の博物館における活動は,「自然の音を聞けるようになる」

ことを目的に,生態園の野外で行いました.活動内容は,①野外での

音を聞く体験,②音の聞き方や聞いた音を表現する方法の学習,③識

別装置の提示と解説の3点を,主として実施しました.

1.生態園での展開

野外でどのように「音を聞く」のか,聞いた「音をどのように表現

する」のか,その2点を学ぶため,体験シート「耳をたよりに自然

を観察しよう」2を活用しました.

<音の聞き方・表現の仕方 6 段階>

1)音源の位置を探る(方向・高さ・距離)

2)音の特徴を探す(長短・くり返し・高低・大小)

3)探した特徴をたくさん書き出す

4)音を文字や記号に置き換える方法を学ぶ

5)音の様子を書く(始め・中・終わり)

6)音にニックネームをつける

博物館研究員の大庭照代氏の指導により,同じ音をグループで一緒

に聞き,人によって聞こえ方の違いがあることを感じたり,他者の考

えや感覚を受け入れたり,自分の考えや感覚を主張したりすることの

大切さを学びました.ちなみに,子どもがつけたニックネームは「シ

ーシー鳥」などでした.この経験が,2~3回目の学習で生かされる

ことになりました.グループごとに経験したことを話し合った後,開

発者から音声識別装置の提示を受けました.自分たちの耳を使った後,

同じような働きをする機械,自分たちの耳を助けてくれる機械として,

子どもたちは大きな興味を持ちました.

1 財団法人日本自然保護協会 2001. 身近な自然観察ガイド 自然しらべ「里山」 pp.

7-16. 2 大庭照代 2000. 千葉県立中央博物館音の観察シリーズ1 8 pp.

学期 月 学校での学習活動

*博物館での学習活動

4 ○学習準備(ジャガイモ)

①「ものの燃え方と空気」

5 ②「生き物と養分1」(植物)

6

③「生き物のくらしと自然環境1」

*「耳をたよりに自然観察-1」 60分

・野外での音を聞く体験

・自然の音に親しむ

1

7 ④「生き物と養分2」(動物)

9 ⑤「水溶液の性質」

10 ⑥「電流のはたらき」

11

⑦「生き物のくらしと自然環境2」

*「耳をたよりに自然観察-2」 90分

・声を手がかりに野鳥を探す

・音声識別装置の活用体験

12 ⑧「身体のつくりとはたらき」

1 ⑨「土地のつくり」

2

⑩「生き物のくらしと自然環境3」

*「耳をたよりに自然観察-3」 120分

・音声識別装置を使って野鳥観察

・野鳥観察マップの作成

3 ○博物館での学習を地域で生かす

・音声識別装置を学校で活用する

生き物のくらしと自然環境

梅里 之朗・石田 曜子・池田 覚 酒々井町立大室台小学校

Case Studies of the Museum-School Program,2003 平成 15 年度連携授業の事例

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *18

表1 「生き物のくらしと自然環境」指導計画

3.活動の成果

・環境から「音」を手がかりに情報を入手する方法を学ぶことができ

ました.また,「音情報」に基づき音源にニックネームをつけたり,

特徴をとらえたりして表現する方法も学ぶことができました.

・鳥の「声」を導入にしたことにより,「鳥を見たい」「鳥の鳴き声を

覚えたい」という気持ちが子どもたちに強く生まれていました.ま

た,鳥の鳴き声を鳥の「会話」として受け止めるなど,さまざまな角

度から自然環境を考えることができました.

・博物館研究員がわずかな情報からでも鳥の名前を特定できることに

対して,子どもたちは驚きの声をあげていました.同様に,鳥の鳴

き声から鳥を識別する「識別装置」に対しても,多くの子どもたち

が興味を示していました.

4.課題

・子どもの表現力が十分ではありませんでした.「音」を言葉に置き換

える経験が少ないという理由だけではなく,感じたことを表現する

力や多様な方法を身につけさせたいと思います.

・コミュニケーションを図る能力や態度を身につけさせたいです.

「耳をたよりに自然観察-2」

2回目の博物館における活動は,識別装置の使い方を学ぶために行い

ました.活動内容は,①識別装置で鳥の声を録音する,②録音した鳥の

声を装置の情報(サンプル音声など)と自分たちの情報(「野鳥観察ガイ

ドブック」3)をもとに判定する,③判定結果を識別装置に保存するの3

点を,主な活動として実施しました.

1.学校での学習活動

生態園へ出かける前に,学校の学習林で,野鳥の観察を試みました.

聞き取れたのは,ハシボソガラス,ヒヨドリ,コジュケイなど鳴き声が

特徴的な3種でした.ヒヨドリなどが,アケビなどの実に集まっている

ように見えました.また,学習林のようすやそのつくりを観察し,「2階

建て~3階建て」の構造があることを確認しました.そして,カラスは

屋上,ヒヨドリは2~3階,コジュケイは1階・・・とすみわけいるよ

うだ・・・と子どもなりに感じていました.

このような事前の活動により,子どもは「今の自分たちのレベルでは,

里やまの動物をじゅうぶんに探せない」と感じ,博物館での学習に対し

て必要感や期待感を高めていきました.

3 大庭照代 2004. 野鳥観察ガイドブック -耳をたよりに自然を観察! 音声認識技術活用

学習プログラム-(試行版 2) 87 pp. 千葉県立中央博物館

2.生態園での展開

1回目の復習もかねて,「耳の体操」をウォーミングアップとして行っ

た後,各グループに識別装置とマイク,双眼鏡等の入った観察用具箱を

配りました.録音と識別の仕方は,各グループを担当する学習プログラ

ム開発委員(野外観察指導員や開発者,以下委員)から,装置を提示し

ながら具体的に説明しました.事前に学校でも図を使って説明し,役割

分担を明確にしていたのでスムーズに進めることができました.

グループの構成は4人1組で,識別装置の操作,マイクの操作,双眼

鏡による観察,体験シート4への記録という4つの役割を分担しました.

2回目の活動のポイントが,「識別装置の使い方を身につけ,野鳥の鳴き

声を録音し,聴覚と視覚を合わせた野鳥の識別を試みること」でしたの

で,全員がすべての役割を経験できるように,交代制にしました.

1)野鳥の声の録音

鳥の鳴き声を録音するのは初めての経験でした.マイクを使うのも初

めて,PDA(携帯情報端末)の操作も初めてでした.どのグループも,

共に1つ1つの作業を確認しながら行っていました.識別装置にどのよ

うに録音されるのか,PDAの画面にどのように表示されるのか,気に

なる子どもたちは識別装置に群がり,個々 の役割を忘れてしまいました.

それでも各グループについた委員の適切な支援により,1つの音に集中

するように努めていました.

2)識別装置での判別と保存

録音した鳴き声は,識別装置により,候補となる5種類の鳥の名前に,

それぞれ「確からしさ」の情報を星印(星が多いほど「確か」)にして与

えられます.また,識別装置には,その鳥の鳴き声のサンプルも入って

いて,自分たちの録音した鳴き声と聞き比べることができます.しかし,

野鳥観察の経験がほとんどない子どもにとっては,容易な作業ではなか

ったようです.1時間の作業時間の中で,識別できた個体数は,各グル

ープについて5~10個でした.

3.学校での事後指導

博物館からCD(各グループの識別した音の同定結果)が届くとすぐ

に事後指導を実施しました.博物館研究員の同定によると,正解した割

合は,2~3割と低いレベル5でした(参照7頁).正答率は低かったで

すが,さまざまな野鳥が生態園に生息していることがわかりました.

4.課題

グループについている委員から,「鳥の声だけでなく,飛んでいる姿を

4 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」体験シート 13. 5 正答率は,先生が心配されるほど,悪い内容ではありませんでした.子どもは,開発途上の識

別装置では認識できない鳥種や低音量の録音に,挑戦していたからです.聞き分けようとする

プロセスと,自分の頭で判断するプロセスは活発でした.

*19 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

図1 音声識別装置を体験する酒々井町立大室台小学校6年生(撮影 丸山 聡栄)

図 2 音声識別装置で野鳥を探索中(撮影 丸山 聡栄)

平成 15年度連携授業の事例 Case Studies of the Museum-School Program,2003

見たら体験シートに記録してもよいのではないか」とアドバイスを受け

ました.識別装置にとらわれない野外観察を学ぶこともできました.今

後も,手に入る情報は何でも使う姿勢も教えていきたいです.

「耳をたよりに自然観察-3」

3回目の学習プログラムのねらいは,環境の違いと生物の活動の違い

を関連づけて調査する方法を学ぶことでした.活動地点は,生態園内

20地点6から,環境の違いが明確な 2地点(例:「ひなた」と「ひかげ」)

を子どもが選択し,調査し,比較しました.

1.実施方法

A.「耳の体操」をし,音を聞く耳と頭と心の準備をしました.

・広がって座り,目を閉じて数分間音に集中しました.頭を音のする

方向に向けたり,手を使って耳をダンボにしたり,聞こえた音の数

を数えたりしました.

・立ち上がって,音が聞こえた方向を指さしました.

B.音による環境の探査活動

・識別装置を活用して,鳥の鳴き声をできるだけたくさんの回数録音

し,「野鳥観察ガイドブック」も参考に種類を識別し,保存しました.

・体験シート7に鳥の種類や音の特徴,活動のようすを記録しました.

C.結果のまとめと発表

・グループごとに,前半と後半の分担場所について話し合い,比較し

ました.

・各地点の場所を紹介し,環境の違いと鳥の種類や活動の違いなどの

観察結果を,みんなに知らせました.

2.活動のようす

1)探査活動

2地点の環境を比較するという課題の把握やグループ内のコミュニケ

ーションがスムーズに運ぶようになるまでに若干の時間を要しましたが,

徐々に集中していきました.識別装置に音声を録音し,サンプル音と聞

き比べて識別していくその一連の過程を,グループ内で協力してできる

ようになっていきました.また,識別装置や道具類の操作よりも,鳥の

活動に目を向けられるようになっていました.

2)まとめと発表

各グループのまとめは,野外活動に同行した委員が同席して行いまし

た.委員は,環境の違いが鳥の種類や活動にどのように影響を及ぼすか,

という視点を加えて,子どもに考えさせていました.各グループの代表

が発表したとき,2つの支援がありました.第1は,調査結果の視覚化

でした.各グループの識別結果のデータを識別装置から取り出し,管理

6 音のたからさがしポイント 32頁参照 7 同等の体験シート: 「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」体験シート 15.

装置に集めることにより,学級全体の調査結果を1つの地図として視覚

化しました.これは,各地点で最も多く識別された鳥の種類がイラスト

で表示された「野鳥観察マップ」でした.第 2に,各グループが録音し

た音声の再生でした.音声の再生は,波形のプレゼンテーションと合わ

せて行われました.この2つの支援は,調査結果の発表にとってたいへ

ん有効でした.とくに,録音した音声の再生は,「自分たちの活動の成果」

としてみんなに認められる評価となりました.また,音声の再生を活用

した「その音を聞いたかどうか[YES/NO]クイズ」を行ったことで,

発表会への参加意識を高めることができました.

3.活動の発展-学校での調査活動へむけて

博物館での3回目の学習プログラム終了後,すぐに学校の理科学習に

学んだことを活用しました.それは,学校での野鳥調査ポイントの設定

作業でした.学校の学習林,ビオトープ,学校農園,梅林・・・など,

学校及び学校周辺の環境の中から,野鳥を観察(識別装置を活用)する

12 地点を設定しました.この設定をするとき,博物館で学んだことが

生かされていました.「畑(人の手が加わったところ)」と「野原(放置

されているところ)」など,環境の違いに目を向けた比較や「野鳥観察ガ

イドブック」を活用した鳥の種類の識別など,観察地点の設定段階から

意図された環境学習が始まっていました.

活動全体をふりかえって

生態園における学習プログラムの2回目が終了した秋の朝,登校途中

の女子の頭上を野鳥が飛びました.女子は,野鳥を振り仰ぎ,木の枝に

止まってさえずるようすを,しばらくの間観察していました.今までに

ない行動でした.確実に,子どもの意識の中に「耳をたよりにした自然

観察」が根づいている,そう感じた学校での一風景です.

3回目の学習プログラムが終了したころには,「梅の木にメジロがとま

っていた」,「あの顔の模様はツグミだよ」,「赤い羽根の鳥は何だろう?」

など,子どもの話や理科学習の中で,そんな会話が聞かれるようになり

ました.小学校の最終段階で学んだ音声識別装置「ききみみずきん」を

活用した野鳥観察の方法は,彼らの記憶にはっきりと刻み込まれ,今後

の豊かな自然体験活動に生かされることでしょう.

研究員から

2004年3月11日 卒業式直前の酒々井町立大室台小学校を

訪れました.6年生 2学級全 49名.学校のまわりで野鳥調査を

しました.暴風の中,彼らはたとえおしゃべりしていても,その

耳は鳥の鳴き声に向けられていました.シジュウカラやメジロの

声が聞こえると,さっとマイクを向ける姿.じっと鳴くのを待つ

姿.集中力と忍耐力,そして洞察力が育っていました.中学生に

なってからも,鳥の声が聞こえるように.(大庭 照代)

図4 「野鳥観察マップ」を見せながらグループの結果発表(撮影 丸山 聡栄)

図 3 耳の体操 音はどこから聞こえてくるかな(撮影 丸山 聡栄)

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *20

Case Studies of the Museum-School Program,2003 平成 15年度連携授業の事例

2003 年 11 月 11 日,6 年1組の「耳をたよりに自然観察―2」

の授業は生憎の雨となりました.そこで,本館展示室内に流れている

自然の音の録音を活用して,音声識別装置(以下,識別装置)の使い

方を学ぶことにしました.屋内の学習となりましたが,生態園で行っ

ときと同様,ウォーミングアップで「耳の体操」(1回目の復習とし

て)を行った後,グループに分かれ,野外観察指導員や識別装置の開

発者から識別装置の使い方などの説明を受けました.グループの構成

や役割分担の仕方などは,屋外で実施した学級と同様にしました.

1.実施方法

本館展示室の7カ所で聞こえる音について,各グループが自由に探

索しました.

1)房総の生物展示室:「谷津田の四季」(天井スピーカー)

2)分類展示室: 千葉県の野鳥メドレー(音環境再現システム)

3)小動物展示室入口: 舟田池の鳥(CD)

4)歴史展示室入口: 千葉県の紹介ビデオ(天井スピーカー)

5)自然と人のかかわり展示室入口: 「泉と人間」

(天井スピーカー)

6)自然と人のかかわり展示室 都市化): 都市鳥(CD)

7)光庭休憩室:エナガなど開発者音源 (CD ラジカセ)

博物館研究員から,展示室内で見られる鳥の剥製や写真のリストが配

られました.子どもが識別した鳥について展示物から学べるようにと

のことでしたが,実際には識別装置の活用で精一杯に見えました.

2.野鳥の声(再生音)の録音

模擬体験でしたが,鳥の鳴き声を録音するのは初めての経験でした.

屋外の時と同様,識別装置に集まる傾向が強かったのですが,屋内の

ためかそれほど支障は感じられませんでした.しかし,音がどこから

聞こえてくるかを耳で探すよりも,スピーカーを目で探し,できるだ

け大きな音で録音しようと,スピーカーにマイクをつけて録音する子

どもが多かったです.

3.識別装置での判別と保存

録音した鳴き声を識別装置により判別する作業は,屋外と全く同じ

でした.屋外との違いは,録音した音声とサンプルの音声を聞き比べ

る作業が容易な点でした.どちらも再生音であること,展示室内の再

生音の多くが音量を同じレベルにしてあることなど,いくつか理由が

あるようでした.1時間の作業の中で,識別できた件数は屋外に比べ,

きわめて多い結果となりました.各グループ5~10種類の鳥が識別

されました.また,その後の博物館研究員の同定によれば,正解した

割合は4割のレベルで,正答率が屋外よりも若干高くなっていました.

4.活動後

学校でのふりかえりは,屋外で行った学級と同様にパソコンルーム

で行いました.博物館から送られてきた識別結果のデータと音声ファ

イルをもとに,学習してわかったことや感想文を記入しました.

1)「わかったこと」は何か

屋外活動をした 6 年 2 組の場合,鳥と食物の関係についての記述

が圧倒的に多かったのに対して,博物館展示室で活動をした 6 年 1

組の子どもは,鳥の種類ごとにその生息環境を覚えていたところが違

っていました.たとえば「ハシブトガラス: ゴミをあさったり社会

問題になっている」,「エナガとシジュウカラはにた環境に住み,虫な

どを食べている」などの記述が多くありました.

2)児童の感想

「識別装置が体験できた」,「色々な野鳥の音が聞けて良かった」な

ど,屋外の学級と同じような感想のほかに,圧倒的に多かったのが「野

外で識別装置を実際に活用したかった」でした.3学期にまたできる

という見通しからでしょうか,3 回目への期待感は高いものでした.

野外活動 vs.展示室内活動

「耳をたよりに自然観察―3」では,野鳥観察を識別装置や視覚認

識を活用し,環境の違いが鳥の種類や活動に影響を及ぼすかどうかを

考えさせるねらいがありました.ふりかえりカードを見ると,2回目

を屋外で実施した学級では,野鳥の活動の様子や環境への気づきなど

多様な回答がありましたが,展示室内実施組では一番良かったことは

何かという設問に対して,「野外で野鳥の声を録音できたこと」と回

答した子どもがたいへん多かったのです.すなわち,子どもは環境の

違いの比較よりも,「野鳥の音の録音」に焦点をあてた「耳をたより

に自然観察―2」に近い学習活動をしていたように思われます.

このことから,雨天の場合,屋内で実施するときは,屋外とは違

うねらいを設定し,効果を高める工夫が必要です.その工夫の 1 つ

として,「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」体験シート 19

の活用があります.これは,グループ内で子どもが交代で目隠しをし

ます.目隠しの子どもがマイクをもって展示室内に響く鳥の鳴き声を

探し,耳だけで焦点を合わせて録音します.他のメンバーは,録音さ

れた音を識別装置や「野鳥観察ガイドブック」で検討し,これと判断

する鳥の標本や写真を展示室内で探して,目隠しした人を標本や写真

の場所まで安全に案内し,探索した鳥について詳しく説明します.子

ども同士でコミュニケーションしながら,耳をたよりに得られる情報

と視覚で得られる情報とを,統合することが期待されます.

雨の日のために

梅里 之朗・池田 覚 酒々井町立大室台小学校

平成 15 年度連携授業の事例 Case Studies of the Museum-School Program, 2003

図1 房総の生物展示室で活動中(撮影 丸山 聡栄)

研究員から

「耳をたよりに自然を観察!」学習プログラムでは,雨天な

ど天候が悪いときに 2 つの問題があります.まず,子どもが濡

れることに多少でも慣れていないと,活動自体ができません.

次に,識別装置もマイクも濡らしてはなりません.霧雨や雨後

に植物から垂れてくる滴も問題です.もし,軒下やテントなど

雨宿りできる場所を確保できるなら,雨の日も野鳥は活動して

いるので,野外活動をすることをお薦めします.(大庭 照代)

*21 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

生態園は千葉県立中央博物館の野外観察施設で,約 6.6 ヘク

タールあります.周辺は都市化が進みましたが,1989 年開園以

来,房総の代表的な自然を再現する園内は,自然を求めて楽しむ

人々で毎日賑わっています.

生態園は,昼でも暗い常緑樹林や小川が流れる落葉樹林,空を

見渡せる明るいススキ草地,水辺の植物がはえる湿原,舟田池と

呼ばれる古くからのため池など多様な環境があり,いろいろな種

類の鳥が生息しています.園路を歩くと,意外と身近に鳥を多く

見ることができます.また,舟田池の岸辺には野鳥観察舎が設け

られ,水辺の鳥や池のまわりの林にくる鳥まで,窓越しに望遠鏡

でじっくり観察することもできます.

ところが,「見えるのはスズメやカラスくらい」という方があり

ます.実は,鳥を探すにはちょっとしたコツがいります.それは

耳を大活躍させることでしょう. まず耳で鳥の鳴き声や何かする

音を聞いたら,その方向を目で追うのです.すると,そこには必

ず鳥の姿が見えてきます.また,鳥の好む食物,植生や環境,習

性などを知ると,なお探しやすいでしょう.生態園では,いろい

ろな鳥が木の実や草の実,昆虫,小魚を採食し,林や池を営巣地

や休息地として利用し,生活しています.

生態園で見られる鳥の四季

4月: 桜の花が咲き,池には冬眠から覚めたウシガエルやアカ

ミミガメ,アオダイショウが顔を出します.林ではウグイスや

メジロ,シジュウカラに加えて,アカハラやアオジも渡り前に

歌の練習です.夏鳥のオオルリやキビタキの美しい声も聞かれ

ることがあります.エナガやコゲラはもう巣作りにかかってい

て,園内を歩いて一番わくわくする時期です.

5月: 池の斜面のニセアカシアに白い花が咲く頃,カモの仲間

で一番遅くまで池に留まっていたコガモが北へ帰ります,カイ

ツブリが水の底の落ち葉を重ねて浮き巣をつくり始めます,湿

原のタチヤナギの白い綿毛がフワフワ舞って木道に降り積も

る頃,イワツバメの姿を現します.林ではメジロやシジュウカ

ラが巣づくりに忙しく飛び交います.湿原にオオヨシキリが飛

来しますが,毎年数日間で姿が見えなくなります.夜中にアオ

バズクが「ホッホー,ホッホー」と鳴くのを聞いたという情報も

入ります.

6月: 梅雨に入る頃,カイツブリの親が何回も抱卵に失敗しよ

うやく孵った雛を 3-4 羽背中に乗せて泳ぐ姿は人気です.

7-8 月: ニイニイゼミやアブラゼミが鳴くなか,コアジサシが

空中から池へ飛び込んでは小魚をとる姿が見られます.離れた

千葉の浜辺で雛を育てています.池の両岸の林を行き来するハ

シブトガラスが見られますが,口を開けると中が赤く,一見し

て幼鳥です.林内の巣から無事に巣立ち,親と一緒に行動しま

す.その仕草はかわいらしいものです.

9 月: 「キチキチ・・・」とモズの高鳴きが木のてっぺんで聞こ

えます.渡りの途中でコサメビタキやエゾビタキ,センダイム

シクイ,メボソムシクイが立ち寄り,サンコウチョウの若鳥を

観察したこともあります.

10 月: 毎年一番乗りのコガモが姿を見せると,キンクロハジ

ロ,マガモ,ホシハジロ,ハシビロガモが次々に渡ってきて,

池は半年ぶりに華やかになります.わずか数日の滞在ですが,

オシドリの姿も見られます.警戒するカモの姿に上空へ目をや

ると,オオタカの若鳥です.公園のドバトを捕食していると聞

きます.

11-12 月: 葉が色づき,やがて落ち,園内は秋から冬へと移

ります.足もとでアオジやウグイスの地鳴きがします.池にか

かる木橋の欄干にはジョウビタキがとまり,人が近づいても逃

げません.「ティティティ」と鳴く声に樹上のシメに気がつきま

す.地上ではアカハラやシロハラ,ツグミがカサ,カサと落葉

をめくって食物を探しています.

1-2 月: 凍てついた池にアオサギ,ダイサギ,コサギ,カワウ

がたたずみ,美しい繁殖羽に生えかわったカモの雄が雌に求愛

しています.池の人気者カワセミは,夏には薄汚れた色あいだ

った若鳥がすっかり成鳥となり,オレンジの胸とコバルトブル

ーの羽毛が冬の陽に輝きます.湿原周辺では「フィーフィー」

とやさしい声のベニマシコや,「10 円,10 円」と鳴くマヒワ

が聞こえます.昼でも暗いスダジイ林から,「ヒィーヒィー」

とか細く鳴くトラツグミが飛び出します.

3 月: 暖かい日にはシジュウカラやウグイスがさえずり始め,

下旬には南国からツバメが帰ってきます,季節が巡ります.

ぜひあなたも,バードウォッチングを学校の授業や地域の活動

に取り入れてみませんか.子どもと一緒に耳をすましながら,生

態園を一巡してみてください.すてきな出会いがあるかもしれま

せん.初めて鳥を自分で発見した喜びは,次の喜びへと繋がりま

す.生態園バードガイドとしては,鳥の営みを観察することによ

り,命の大切さ,親子の情愛,生きることの厳しさなどを感じと

っていただければ嬉しいかぎりです.

生態園でバードウォッチング 綾 富美子 中央博物館友の会

Different View points in Nature Observation 自然観察をめぐるさまざまな目線

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 **22

図1 野鳥観察舎にて望遠鏡で野鳥の観察 (撮影 大庭 照代)

千葉県自然観察指導員協議会(略称: 自然観察ちば)では,会員

の有志で「小学校自然観察支援ネットワーク(SSSN)」を組織して

います.平日に活動できる定年退職後の男性や専業主婦などを中

心に,約 120 名の会員がいます.県内各地の小学校に出向いて,

生活科,理科,総合的学習の時間の授業において自然観察を支援

しています.SSSN の活動は 5 年目に入りましたが,毎年依頼さ

れる学校が数校あります.2003 年は小学校以外の団体からの依

頼も入れて 60 件自然観察の指導を行いました.

自然観察を小学校から依頼されると,チームを組んで出向き,

校庭や近隣の公園など,子どもが日常遊んでいるフィールドで,

自然観察の指導を行っています.児童 10 人前後に指導員が 1 人

ついてフィールドをまわり,子どもの発見や質問にきめ細かく対

応しながら,観察を指導します.

めざすこと

SSSN 会員はそれぞれ得意分野がありますが,ネットワークで

活動するときは,身近な生の自然を体験して,その美しさ,不思

議さ,すばらしさに感動してもらえるように,協力します.

1.命のつながりを教えて,次のことに気づいてもらう.

*自然には何1つ無駄な物がないこと

*人間も自然の一部であること

*多様性が大切であること

2.地域の歴史や文化を易しく教える.

3.自然と人とのかかわり,昔から日本人に受け継がれてきた

森林文化を伝える.

4.草花遊びなど野外で行ってきた伝承の遊びを伝える.

五感を使って身近な自然を体験し,感動した後に探究心や研究心

が養われて,自然を大切に思う子供を増やしたいと考えています.

小学校で野鳥観察会

冬には,バードウォッチングの指導を依頼されることがありま

す.日本自然保護協会の自然観察指導員として,私たちの自然観

察のモットーは,生物の名前にこだわらず,つながりを大切にす

ることです.バードウォッチングといっても鳥の姿を見るだけで

なく,虫喰いの葉,落ち葉の下の虫,雑草がはえている空き地な

どを観察して,鳥の食物を考えたり,ツバキの花の蜜をなめて鳥

媒花の話をしたり,実生の幼木を探して鳥による種子散布の話を

したり,というように,鳥を中心に命のつながりを伝えるように

しています.

子どもと鳥を観察するときは,「静かに,そっと」が一番大切な

注意です.まず耳をすまして音,とくに鳥の鳴き声を聞くことか

ら始めます.とくに,森の中では耳をたよりに鳥がいる方向を知

り,それから目で探すように教えています.

音声識別装置 「ききみみずきん」 の活用

「耳をたよりに自然を観察!音声認識技術活用学習プログラム

の作成」にあたり,この学習プログラムを小学校自然観察支援ネッ

トワークの活動の中でどのように活用できるか,考えてみました.

「ききみみずきん」を使用するとき,子どもはとても興味を持ち,

録音するために静かに耳をすまして,鳥の声がする方向にマイク

を向けることに集中します.次に,自分が録音した音と装置に内

蔵されている各種の鳥の鳴き声のサンプルを聞き比べるために,

一生懸命になります.たくさんの音に囲まれて暮らしている子ど

もは,日頃意識して耳を使うことはないようですので,この装置

を使うことは五感の1つである聴覚の訓練になることを実感しま

した.学習プログラムの回数を重ねるごとに装置は改良され,使

いやすくなっていきました.

将来,この装置が鳥の鳴き声を認識する精度があがり,使用法

などもさらに改良されれば,利用する子どもは目と耳の両方を使

った楽しいバードウォッチングができ,より効果的な学習もでき

るようになると期待されます.なかでも,総合的学習の時間では,

学習活動に時間をたっぷり取れます.子どもは装置の操作法をマ

スターすれば,自主的に活動しますが,各グループに自然観察指

導員がつくことで,さらに楽しく深い学習ができると思います.

小学校で自然観察を支援 河添 寿子 千葉県自然観察指導員協議会

図1 野鳥の観察 「いたいた」 「どこどこ」 (撮影 元吉 稔)

自然観察ちば

低学年向け・高学年向けの自然観察会を,学校からの依頼

に応じて,できる範囲でお手伝いさせていただきます.

事務局: 電話・ファクス 043-271-0282

電子メール [email protected]

ホームページ http://www5e.biglobe.ne.jp/~sizenchi/

自然観察をめぐるさまざまな目線 Different Viewpoints in Nature Observation

*23 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

ふだん,私たちは音を耳で聞いています.でも,すべてを聞い

てはいないのです.頭の中で調節し,まわりに溢れている音のう

ち自分に係わりがない音はシャットアウトし,自分に都合のよい

音だけを聞く習慣ができています.ある小学校で,環境学習を指

導していたときのことです.「ねえ,みんな!」と私が呼びかけて

も,振り向かない子どもがいました.周囲にあまりにも多彩な音

が際限なく放たれているため,音をシャットアウトするような耳

になっているのでしょうか.

実は,ほんの少し耳をすまして「聴く耳」を持つと,身近でたく

さんの発見や思わぬ楽しみを得ることがあります.たとえば,私

は千葉市に住んでいますが,浦安市にあるディズニーランドで打

ち上げた花火の音が,ときおり,直線距離 25km 以上隔てた自宅

で聞こえることがあります.たいていは曇りの日です.低い雲に

音が反射してのことでしょう.すると急に,あの賑やかなアトラ

クションのいくつかが頭の中をめぐり,気分が浮き立ちます.不

思議なもので,「音」からさまざまな感情や記憶が呼び覚まされま

す.

千葉県立中央博物館の生態園でも,入園者の少ない静かな日に

は,さまざまな鳥が私のすぐ近くまできてさえずります.藪の下

から聞こえるガサガサという音に耳を凝らしていたら,タヌキと

遭遇したことがありました.音を聞くことは自然観察の基礎とも

なり,自然の営みを知ることができます.

「自然の音を聴く」楽しさを知る活動

1.目を閉じて,まわりの音を静かに聴いてみる.

視覚を遮ると,耳の感覚がよりとぎすまされることに気づき

ます.どんな音が聞こえましたか.意外な発見はありました

か.たとえば,「こんなにたくさんの鳥が鳴いていたのか」「カ

ラスにはいろいろと違う声がある」「車の音が思ったより近く

に聞こえる」といったようなこと・・・

2.音の記憶について考えてみる.

朝起きてから今までに,あなたはどんな音を聞きましたか.

思い出して紙に書き出してみましょう.すると,とても少な

いことに気づきます.他方,聞いているはずの音には何があ

るでしょうか.「洗顔時の水の流れる音」「蛇口をひねった音」

「ドアを閉めた音」「自分の足音」「通勤電車の音」・・・

この活動で気づいてほしいのは,日常いかに自分が「音」を意

識していないかということです.聞こえているはずなのに,

聞いてない音がたくさんあるのです.

3.まわりの音をサウンドマップに描いてみる.

屋外に出て,まわりから聞こえてくる音を絵にします.はじ

めに 1 枚の紙の中心に×印を描き,これを自分とします.自

分を基準にして,左右,前後,上下,いろいろな方向の音を

記入します.音は文字ではなく,いろいろな形やマークなど

を使って,自由に表現します.彩色するのもよいでしょう.

音の頻度や継続性,時間的変化もわかるように描きこみます.

こうして,自分が聞きとった音を視覚的に表すことにより,

どんな音が聞こえていたか,後日でもわかるように工夫しま

す.なお,描き始める前に 5 分くらい静かに音を聞き,それ

から描く時間は 10 分位でよいでしょう.その場の音環境は,

15 分間でその時間帯に聞こえる音のほとんどを聞くことが

できるからです.

環境を診断する活動へ

千葉県立中央博物館の講座,生態園学校「自然の音と環境」では,

サウンドマップを描くときに五感を使うことが強調されました.

音の雰囲気を感じたとおりに色や形で表現すると,自らが体験し

た思いや感覚も微妙に伝わり,サウンドマップは自分で再現した

音の風景として,その地点の音環境が盛り込まれるのです.同じ

地点で同時に作成した「五感で描くサウンドマップ」を対比したと

き,参加者それぞれの絵の違いから,聴くという行為が個人的な

行動であることや,各人が音をどのようにとらえているかわかり

ました.だれもがうるさいと感じた飛行機の音は,騒音計の数字

を示されるよりも実感できました.また,音源の種類から,地域

の生物相や生態系の状態についても情報を得ることができました.

環境内のできごとを伝える音は,環境を診断する材料の1つにも

なるのです.

「聴き方を学ぶ」ことにより,子どもはアンテナ(感性)を上手

にのばし,音環境に対する意識を目覚めさせます.ぜひ,「自然の

音を聴く名人」をめざしてください.

「自然の音を聴く」楽しさ 御須 裕子 平成 14 年度生態園学校「自然の音と環境」修了生

「耳をたよりに自然を観察! 体験シート集」の活用

(体験シート1) いくつの音が聞こえるかな

(体験シート 2) 音あっちこっちどっち?

(体験シート 17) まわりの音を絵にかこう

図 1 五感で描くサウンドマップの例(作 龍門 海行)

Different Viewpoints in Nature Observation 自然観察をめぐるさまざまな目線

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *24

インタープリテーションは,interpret という「ものとものを

つなぐ」という言葉をもとにした,解説・解釈・通訳などの意味

があります.自然教育では,「自然の言葉を人の言葉に通訳する

こと」と考えるとわかりやすいでしょう.

インタープリテーションは,決して単なる情報の伝達や知識

を教えることではありません.インタープリテーションは,情

報の裏側にある,手に触れることができない意味や価値を,参

加者に理解してもらえるようにすることです.インタープリテ

ーションとは多くを語ることではなく,体験を通して,参加者

自らが気づいたり学んだりするように援助することが大切です.

ねらい

インタープリテーションで大切なことは,何を伝えたいのか,

という「ねらい」を設定することです.「ねらい」の要素として,

目的・目標・背景があります.目的は,プログラムを積み重ね

ていって最終的に到達したいことです.目標は,ある1つのプ

ログラムの終了時に参加者に残っていることです.背景とは社

会的・環境教育的な位置づけで,その活動を行う意味が,本筋

からぶれていないかどうか確認する役割となります(図1).

インタープリテーションの流れと構造

どのような流れで話や体験を進めたら,効果的に参加者の学

びにつながるでしょうか.インタープリテーションでは,活動

を環境教育的に進めるために,体験学習法の流れと合わせて考

えます.体験学習法では「体験・指摘・分析・一般化」という流

れがあり,それが次の体験につながる,という循環過程を大切

にします.環境教育では「導入・本体・ふりかえり/わかちあい・

まとめ」の4つの段階を考えます.インタープリテーションを計

画・実践するときには,図2のように2つの流れをすりあわせ

て考えるとよいでしょう.また,図3はインタープリターと素

材,参加者との関係を,インタープリテーションを計画する順

番に沿って示してあります.

3つの T と3つの U

インタープリテーションでは,学びについて3つの T,すな

わち「た」で始まるキーワードがあります.「体験から学ぶ」,「互

いに学び合う」,そして「楽しく学ぶ」ことです.参加者が主体と

なって学べるように指導者が援助することをファシリテーショ

ンと呼びますが,こちらは U,すなわち「う」で始まるキーワー

ドが3つあります.「うながす」,「うけとめる」,そしてその場

に一緒にいる「ウィズ」です.耳をたよりに観察する学習でも,

これらのキーワードを参考に,効果をあげてください.

インタープリテーション 小林 毅 自然教育研究センター

図1 ねらいの要素

達成目標 ・行為目標

・成果目標

目 的 最終的な

到達地点

積み重ね

背 景 社会的・

環境教育的な

位置づけ

日常へ あとから ジワっと くる気づき

つながる コメント

次の体験

図2 インタープリテーションの流れ

体験

指摘 一般化

ふりかえり わかちあい まとめ

分析

導入

本体

具体的なふりかえ

りポイントの指摘

分析的なコメ ン

トの拾い上げ

⑨ 気づき

素材

インタープリター ⑤ プログラム計画

⑬評価・記録

④気づき

③調査

フィードバック

プログラム

⑧ 直接体験

①ねらい/

メッセージ

参加者理解

⑦ うながし

⑩ うけとめ

図3 インタープリテーションの構造

参加者

参 参

⑪ふりかえり/ わかちあい

詳しくはこちら: http://interpreter.ne.jp/

自然観察をめぐるさまざまな目線 Different Viewpoints in Nature Observation

*25 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書 2004

「耳をたよりに自然を観察! 音声認識技術活用学習プログラム

の作成」事業では,体験シートを使ったり,「ききみみずきん」とい

う音声識別装置を使った学習プログラムが開発されました.生態

園では,これとは別に,休みの日に来園する子どもや学校団体向

けに,体験シートを用いた「森の調査隊」という自然体験プログラ

ムを実施しています.

体験シートの長所

体験シートを利用した学習プログラムの利点として,まずあげ

られるのは,子どもが自分のペースで活動できること,観察の視

点を提供できること,そしてなによりも楽しい活動として自然観

察を継続させるインセンティブ(誘発要因,アメとムチのアメ)に

なることです.これは「ききみみずきん」についても言えることで,

楽しい感覚で自然観察を行えることは間違いありません.さらに,

体験シートや装置は,子どもがふだんからなれ親しんでいるテレ

ビゲームをする感覚に近いものもあるので,受け入れやすいのだ

と思われます.ゲームを行う楽しさと,自然観察の発見の楽しさ

を重ねて,楽しい記憶となるでしょう.

活用上の注意

体験シートによる自然観察には,注意も必要です.利用上の欠

点があることを理解したうえで,運用すべきでしょう.

第 1 に,設問以外の自然現象へ目を向けなくなる危険性があり

ます.ゲーム性が高くなればなるほど,この傾向が強くなるよう

です.体験シートの設問がビンゴ形式だったり,時間制限があっ

たりする場合や,使う装置自体がおもしろくゲーム性の高いもの

の場合は,ゲームを解くことや,装置の操作に集中するあまり,

設問となっているもの以外の自然現象に,意識が向かわなくなる

ことがあります.

自然観察の醍醐味の1つは,自然の多様性を,それぞれの子ど

もが持っている別々の感性で受けとめることにあると思います.

時々刻々変化し続ける自然を偶然に発見する楽しみがあり,その

感じ方は人それぞれなのです.多様な自然現象と,多様な子ども

の感性の組み合わせは無限にあるので,自分なりの自然の楽しみ

方が生まれ,個性ある自然観が発達していくのです.ところが,

ゲーム性の高い学習プログラムを安易に利用すると,指導者が見

せたいものについては感じてもらえるでしょうが,子どもには単

一の現象しか受けとめてもらえなくなる危険性があります.

第 2 に,楽しい装置に触れたことや,ゲームを楽しんだことだ

けが,自然体験をしたその日1日の記憶として強く残ってしまい,

相対的に自然体験そのものの記憶がかき消されてしまう危険です.

第2回学習プログラム「野鳥の探索」で,初めて「ききみみずきん」

を手にした千葉市立扇田小学校3年生の「ふりかえり」をみると,

「今日,いちばんおもしろかったことは?」との問いに,音や生物

現象についての回答が 31 名だったのに対し,装置を上げた人は

80 名もいました.

「ふりかえり」の効果

どのようにしたら,ゲーム性の高いプログラムの危険性は回避

しつつ,利点を活かせるでしょうか.多くの自然体験は,ほとん

どの場合,一瞬で終わってしまいます.もちろん,この一瞬は,

新たな発見や体験をするので,とても楽しいものです.残念なこ

とに,この記憶は短期記憶としては残りますが,なにもしなけれ

ば,時ととともに消滅します.しかし,自然観察を楽しんだ後の「ふ

りかえり」は,一瞬の体験をたしかな「記憶」として脳裏に定着させ

る効果があります.これには2つのコツがあるようです.

1.記憶を反復して思い起こす: 体験後,何度も「あの一瞬」を

呼び起こし,記憶をたしかなものにします.

2.ある体験の記憶を他の体験とともにセットで記憶する:ある

鳥のきれいな声を聞いた体験の場合,その鳥を視覚的にも観

察し,鳥の姿と行動を,その「きれいな声」とともに覚えるこ

とが有効です.ほかに,そのときに暑かったことや,森のに

おい,友だちと一緒に見たことなどの記憶もあるといっそう

よいでしょう.五感を通じた体験は楽しいだけでなく,たし

かなものとして記憶されますから,必ず,同時に感じた他の

事象についても一緒に記憶を呼び起こすことが大事です.

「ききみみずきん」は,鳴き声を手がかりに野鳥の観察を支援す

るため,子ども自身が録音し,内蔵のサンプル音声と聞き比べて

鳥の種類を選び,日時・場所とともに,観察した地点で記録を保

存することができます.しかし,同時に,肉眼や双眼鏡,もちろ

ん五感を使って得られたさまざまな発見や観察結果を,体験シー

トに記録しました.子ども自身が何を感じたかも記録しておくこ

とは重要と思われました.開発委員が各班に随行して,体験シー

トに記入させるように励ましたことは意味があると思われました.

また,今回参加した3つの小学校では,生態園における授業を,

当日あるいは後日に改めてふりかえり,次の学び展開へとつなげ

るように計らいました.千葉市立扇田小学校 3 年生のように,学

校に帰ってから,「体験したこと,想像したこと,自分の思い」を

のびのびと表現したことは,記憶の呼び起こしをする「ふりかえ

り」として重要でしょう.

体験シートや観察装置は,「ふりかえり」をしっかり行う一連の

学習プログラムの中で使われてこそ,効果を発揮します.長所・

短所を合わせ理解した上で,適切に利用してください.

「ふりかえり」がだいじな体験シート 浅田 正彦 千葉県立中央博物館

生態園 森の調査隊

森の調査隊は、学校の休日および休暇期間中に行ってい

ます。「森の調査隊体験シート」を授業で活用していただく

ために、「生態園観察ノート 生態園で授業をしてみません

か?」(浅田 正彦 2004)には、準備から事後指導まで

紹介しています.http://www.chiba-muse.or. jp/natural/ informations/part040207/mor i1.htm

Different View points 10 Nature Observation 自然観察をめぐるさまざまな目線

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *26

公園で散策中に聞きなれない鳥の鳴き声を聞いて,なんとい

う鳥だろう,と思った経験をお持ちの方は多いでしょう.姿を

目にすることができれば,図鑑で調べられますが,鳴き声を調

べる方法はなかなかありません.そもそも鳴き声だけ聞こえて,

姿を見ることはできないことのほうが多いものです.また,詳

しい人に聞いてみようと思っても,その鳴き声を正確に記憶に

とどめることが難しいので,これを伝えることはもっと難しい.

とにかく自然観察の初心者にとってはやっかいなことが多すぎ

ます.誰でも簡単に使える「鳴き声の参考書」があれば便利なの

に・・・ 技術者自身のこんな経験から,音声識別装置「ききみ

みずきん」の開発が始まりました.

教育ツールとして開発

「ききみみずきん」は,人間用の音声認識技術を応用して野生

生物の鳴き声を識別し,生物の種類や関連する情報を提供する

世界でも類のないシステムです.「耳をたよりに自然を観察!」

という企画名称にあるとおり,私たち技術者の使命は,子ども

が鳴き声を手がかりにして楽しみながら野鳥を観察し,自然に

対する興味を高めることのできる教育ツールの開発でした.

とかく技術者は,システムや速度,精度などのいわゆる性能

面に意識が向かいがちです.もちろんそれはそれで重要ですが,

実際にこの企画が始まるまでは,開発の方向性は技術面に偏っ

ていました.それが,「単に音を識別する技術ではなく,音を手

がかりに自然に対する興味を高める手段として開発してほし

い」という課題が与えられたのです.私たち技術者は,自然観察

指導にあたる博物館や学校の先生方など現場の意見を聞き,さ

らに私たち自身が自然の中で子どもと向かい合い,その生の声

を聞くことによって,「ききみみずきん」を開発しました.

まず,鳴き声を認識した結果として鳥の種類を自動的に教え

るのではなく,クイズ形式を採用して,あえて子どもに正解を

探させる仕組みにしました.次に,子どもが音をしっかり聞く

ために,録音した鳴き声を聞きなおし,自分の口でまねさせる

仕掛けも導入しました.子ども自身に考えさせるシステムの導

入によって,熟練した指導者(耳の達人)の同行が不可欠であっ

た野鳥観察を,子ども自身がゲーム感覚で進める自主的な活動

にしました.私たちの技術が,世界で初めて教育のためのシス

テムとして形をなしていく過程を体験できたことは,技術者と

してこの上ない快感でした.

「ききみみずきん」の将来

「ききみみずきん」では,識別結果やその日時を装置に記憶し,

データ収集管理装置にデータを集積する仕組みになっています.

これに,GPS(Global Positioning System:位置情報システ

ム)を連動させれば,鳴き声を録音した位置も自動記録されま

す.楽しみながら使うだけで,「いつ,どこに,どんな生物がい

たか」を示す地域の野鳥マップが自動的に作成される仕組みで

す.現在は鳥だけを対象にしていますが,将来は昆虫,カエル,

哺乳類など,声を出す生き物であればどんなものでも識別でき

る総合的な鳴き声の参考書に発展させる計画です.

また,鳴き声を自動的に識別する特性は,生態系の無人連続

観測などの調査分野において,さまざまな革新を可能にするで

しょう.携帯電話システムを搭載し,ネットを経由したデータ

配信と収集が実現すれば,教育や娯楽用ツールをはじめ,生物

分布情報を蓄積するシステムとして,飛躍的な進歩が可能にな

るでしょう.

きっかけをつくる

機械が鳥の名前を教えてくれることを,すんなり受け入れる

子どもの態度に少し驚かされました.その一方,鳴き声を探す

子どもの真剣な横顔や鳥の種類がバッチリわかったときの笑顔

を見たとき,現代の子どもに自然や生き物に対する興味がない

のではなく,きっかけがないだけであることを改めて認識しま

した.ゲーム感覚の自然体験は,あくまできっかけに過ぎませ

んが,子どもはこれを本物の興味に育てる可能性を持っていま

す.時代に応じた手段の提供は,教育者や技術者だけではなく,

社会全体の義務であると思います.「ききみみずきん」が,子ど

もにもそのきっかけを与える責任を持つおとなにも,新たな自

然体験のチャンスとして活用されるように期待しています.

自然に近づく技術には未来がいっぱい 澤田 裕樹 鹿島建設株式会社 ・ 原口 真 株式会社インターリスク総研

図 1 「ききみみずきん」を小学校 3 年生に実演する技術者

名前の由来 日本民話『ききみみずきん』

鳥や木のことばがわかる不思議な頭巾をかぶった貧し

い藤六が,彼らの話に耳を傾け,長者の娘の病気を治し,

人々を幸せにした話(絵本:木下順二 文,初山滋 絵,

岩波書店 1984 年).音声識別装置の名称には,生き物と

の対話を可能にし,人を幸せにする技術を目指す技術者の

想いがこめられています.

自然観察をめぐるさまざまな目線 Different View points in Nature Observation

*27 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

人と人がコミュニケーションをする場合,多くの人は「会話」を

します.「会話」は人にとってもっとも自然なコミュニケーション

手段であることは間違いないでしょう.では,人と機械との間の

コミュニケーションはどうでしょうか.従来ではボタン操作が主

流でしたが,より自然で負担の少ないコミュニケーション手段は,

やはり「音声」による「会話」だと考えられます.このような背景を

もとに考え出された技術が「音声認識」です.

音声認識をするためには,考えられるいくつかのキーワードに

対応してそれぞれに音のモデルを用意します.これを「辞書」また

は「音響モデル」と呼びます.入力された音声が,どの音のモデル

にもっとも似ているのか,「確率的」に判断するのが音声認識の技

術です(図1).辞書の良し悪しは,音声認識の性能に大きくかか

わります.

ここでは,「こんにちは」という声の辞書の作成を例に.辞書の

作り方を簡単に説明します.まず,たくさんの人から「こんにちは」

という声を集めます.これは性別や年齢,体調,出身地,背景環

境などのいろいろな条件によって,同じ「こんにちは」というあい

さつでも,音声の性質が少しずつ異なるからです.たくさんの「こ

んにちは」という声を集めることで,どんな「こんにちは」にも対応

できるようになります.このようにして集められた声を「学習デー

タ」と呼び,「学習データ」の集まりを「学習データベース」と呼びま

す.次に,学習データをもとに「統計的手法」により辞書を作成し

ます.完成した辞書は,いろいろな声の「こんにちは」を表現でき

るものとなっています.

辞書の良し悪しで認識性能が大きく変わるため,辞書作りは非

常に重要で,音声認識の技術者はとくに力を入れて辞書の作成に

取り組んでいます.現在では,人間の音声は単語であれば 95%

以上の性能で認識することが可能です.カーナビゲーションシス

テムや携帯電話などに利用されて,需要が高まっています.

野鳥の鳴き声を認識する

野鳥の声も同じように認識できるでしょうか.実は,集める学

習データを,鳥の鳴き声にそっくり移しかえればよいだけです.

今回,私たちが開発した音声識別装置「ききみみずきん」は,人間

の音声を認識する技術をそのまま鳥の音声に適用して,鳥の種類

を鳴き声から識別するのを手伝ってくれます.

しかし,その認識性能は,まだ十分に満足のいくものになって

いません.もっとも大きな問題は学習データベースにあります.

人間の音声を集める場合,学習データの音声を提供してくれる人

をたくさん集めて,同じ環境で音声の収録を行います.残念なが

ら,野鳥は呼んでも集まってくれません.鳥のたくさんいる場所

にせっかく出かけても,野鳥は技術者が思うように鳴いてくれま

せん.しかも,季節によって野鳥の生息環境に響く音も変わるこ

とを知りました.夏であればセミが,秋であればコオロギが大合

唱しています.辞書に使える学習データを集めるのはとてもたい

へんでした.

実は,千葉県立中央博物館の生物音響資料を利用して辞書づく

りを試しましたが,生態園という場所と学習プログラムを行う季

節にこだわって音環境資料を使ったため,学習データ作成には向

かないSN比(信号-雑音比率)の低いものが多く含まれていました.

これらは完成した辞書の評価に使うこととして,今後は音のきれ

いな個別音録音を辞書作りに使えるよう計らいたいと思います.

また,自然の音の学習データを作成するには,1つ1つの鳴き声

にラベルをつける作業が必要です.これは鳴き声を同定できる学

芸員に協力してもらって初めてできる作業でした.音を聞き返し

ながら行うので,非常に時間がかかり,耳の達人の耳と脳を酷使

するたいへんな仕事でした.

ここで,問題が 2 点に絞られました.いかにして効率良く学習

データを集めるか,またいかにして少ない学習データで汎用性の

ある辞書を作成するか.これらは簡単に解決できる問題ではなく,

同定する作業を楽にするためにも,頭を悩ませています.しかし,

問題解決こそ研究開発の醍醐味といえます.今後,自然の音の認

識技術発展に向けて,博物館など協力しながら,自然の音の辞書

を作りたいものです.

野鳥の音声についてまったく素人だった私たち技術者にとっ

て,「ききみみずきん」という学習支援用システムの開発には数々

の苦労がありました.しかし,これを使った「耳をたよりに自然を

観察する学習プログラム」をとおして,子どもが自然に興味を持っ

てくれたことは,至上の喜びであり,また今後の研究開発の励み

となっています.

音声認識の技術とは 庄境 誠・奈木野 豪秀 旭化成株式会社研究開発本部

さようなら

こんばんは

おはよう

音のモデル

こんにちは

こんにちは

図 1 音声認識の枠組み

Different View points in Nature Observation 自然観察をめぐるさまざまな目線

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *28

音声識別装置「ききみみずきん」ほど面白いように自然の音を

集めることができる道具はありません.スナップ写真をとるよう

に,あの鳥,この鳥,風,せせらぎ・・・というように,まわり

で聞えるさまざまな音を切り取って,装置の中にキャッチします.

キャッチした音を聞き返すと,鳥の美しいさえずりや変わった鳴

き方,いろいろな地鳴き,鳥どうしのやりとりなど,いつもなら

聞き流すほんの1コマの自然の音の世界が記録されています.録

音は装置の中にどんどんたまっていきますが,集めることにはど

んな意味があるでしょうか.千葉県立中央博物館に収められてい

る 2 種類の生物音響資料を例に,考えてみましょう.

個別音

個別音録音は,パラボラ集音器や超志向性マイクを使って,特

定の音源に焦点をあてて録音したものです.鳥・カエル・昆虫な

どの生物の鳴き声や,雷・せせらぎ・波など非生物の音,自動車

や飛行機,道具や機械など人工的な音など個別にとるので,音源

を特定するような音の特徴を調べるときに役立ちます.たとえば,

姿がよく似ている種類では,音声が識別の手がかりになります.

ヒヨドリやキビタキなど鳴きまねが上手な鳥がいますが,何から

音をまねしたかを調べるとき,個別音録音により確認をとります.

生物を調べるときには,体の形や大きさ,色などは剥製・骨格

などの実物標本,生きた姿や生活のようすなどは写真・映像(無

声)・文献,そして鳴き声や鳴き声の使い方については録音・ビデ

オというように,さまざまな資料を手がかりにしましょう.

録音は過去の記録です.蒲谷鶴彦氏(1956)は,埋立て前の

市川市丸浜養魚場前の堤防では,マガンの大群のざわめきが聞こ

えていたことを記録しています.東京湾の自然復元のよき未来像

として,この録音は重要な音の指標を教えてくれます.

音環境

音環境録音は,特定の地点にステレオマイクなどを立てて,そ

こに響く音全体を,できるだけ臨場感があるように,音までの距

離や位置や音源の移動がわかるように録音します.たとえば,生

態園では,舟田池のほとりと照葉樹林の中の 2 箇所で音環境を録

音しています.定期的な録音により昼夜や四季の変化がわかりま

す,長期的にモニタリングすることで,生態園の生物多様性の増

減や,周辺の道路や住宅の建設などによる人為的な変化などが自

然の音の豊かさにもたらすも影響も田取ることができるでしょう.

体験的ではありますが,私たちはしばしば聞こえている音から

環境の種類や良し悪しを感じとります.要因の特定は簡単ではあ

りませんが,音環境録音の精査から手がかりが得られることでし

ょう.千葉市内の異なる環境の小学校区で音環境を比較した研究

から,谷津田や里山など伝統的な環境が保全された小学校区では,

都市化が進んだり,ニュータウンとして人工的に作られたりした

環境の小学校区よりも,多様な音源があることがわかりました

(Oba 1994).写真や地図,文献などとともに,音環境録音は,

地域の自然の豊かさや生物多様性に関する情報をもった資料です.

また,生物の採集や接近,調査による踏み荒らしのない録音は,

生き物の生活を脅かさない地球にやさしい方法としてお薦めです.

自然の音限定 録音のこつ

音声識別装置「ききみみずきん」は鳴き声が聞こえたらそこで

ボタンを押して,押す前の 5 秒間の音を確実にキャッチします.

マイクを音源にしっかり合わせ,このボタンを押すタイミングを

はずさなければ,だれでも驚くほどよい録音がとれます.

しかし,普通の録音機の場合,常時録音状態にすると,テープ

には何の音も入っていないところばかりて,長いテープの中から

とれた音を探し出すのは一苦労です.しかも,「とった音が小さい」

と,マイクの感度がやり玉に上がります.

実は,自然の音は聞こえるよりも小さいのです.マイクと録音

機があっても,音が必ずとれるとは限りません.人間の耳は,騒

音の中でも,針が床に落ちたときの微小な音を選び聞くことがで

きます.聴覚という脳の優れた働きがあってこそできる技です.

プロの野生生物録音家は,耳の印象を再現するために,マイク

の位置や向き,入力レベルの設定など,工夫に工夫を重ねて録音

に備えます.何よりも,生物の生態や行動,録音場所の音響など

を熟解し,いつどのようにしたら録音できるか計算します.マイ

クをさっと取り出し音源にあわせる早業や,身動きやマイクを触

る手など雑音を立てないよう冷静であることも大事です.今回,

大室台小学校 6 年生が卒業前に行った野鳥観察では,この録音術

をみごとに体得した生徒がいました.聞く耳があってこその快挙

でしょう.

音の記憶のすすめ

人間の脳には音の記憶があります.私の頭の中では,何かの拍

子に子ども時代に寝床で聞いた夏の夜の音が甦り,ラジオのよう

に流れます.近くの畑や裏山の木々,はなれた海辺などから,さ

まざまな音が夜空の下に幾重にも重なり聞こえ続けます.私が鳥

の鳴き声を識別したり音環境を区別したりするときにも,脳の中

に記憶した音と照らし合わせています.

どんなによい自然の音の録音があっても,脳の中に記憶として

宿らなければ,自分の耳で即座に聞き分けたり,種類による鳴き

声の違いに気づいたりできません.たとえ録音がかすかに思えて

も,それを踏み台にして,心の中にクリアーに響く音をたくさん

集めることが大切です.

「ききみみずきん」は自然の音を聞き分ける訓練をしながら,

地域の自然の音を集めることのできる,とても便利な「録音装置」

です.今後も社会や学校のニーズにあわせた利用方法や活用先を

考えていきたいと思います.

自然の音を集める 大庭 照代 千葉県立中央博物館

自然観察をめぐるさまざまな目線 Different View points in Nature Observation

*29 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

音声識別装置「ききみみずきん」は,鳴き声を手がかりに鳥の

名前を私たちに教えてくれます.名前がわかると,今度はその鳥

がどんな姿でどんな生活をしているのかを知りたくなります.観

察記録をまとめたり,鳥の映像を残したりもするでしょう.

野外で生活する鳥の姿を記録するには,いくつかの方法があり

ます.望遠レンズ付きのカメラがあれば,鳥の姿を大きく写し出

すことができます.ビデオカメラを使えば,姿だけでなく行動ま

で記録することもできるでしょう.最近では,軽量かつ高性能な

デジカメもたくさん販売されています.それでは絵はどうでしょ

うか.時間がかかるし面倒,そもそも絵を描くなんて苦手・・・

そう言わずに,観察の一手段として活用してみませんか.

なぜ絵なのか

鳥は漠然と眺めるだけでも「見た」という印象は残りますが,

くちばしの形や脚の長さなど,姿形を詳細に思い出すのは困難で

はないでしょうか.絵を描くと,対象となる鳥をよく観察するこ

とになります.あまり意識されませんが,スケッチするときには,

体のつくりや形をよく観察して,その鳥にどんな特徴があるかを

探しながら描いています.さらに,描いている途中で疑問が生じ

たら,図鑑や本で調べる必要があるでしょう.1 羽の鳥を描くこ

とは,単に 1 枚の絵を作り出すだけでなく,時間をかけて対象を

観察し,理解する作業なのです.自分で描いた鳥の絵は,時間が

経ってもその時の状況を具体的に思い出させてくれます.

どうやって描くか

野外で見た鳥をその場で描くことができれば理想的ですが,野

鳥はすぐに飛び去ってしまいますから,実際にはなかなかむずか

しいものです.それでも,冬に公園の池などに渡ってくるカモ類

などは,大型で間近にみられるので,観察しやすい対象と言えま

す.望遠鏡が装備された野鳥観察施設に行けば,天候を気にする

ことなく描くことができるでしょう.動物園などで飼育されてい

る鳥や,博物館の剥製標本を見て描くのも 1 つの方法ですし,図

鑑に掲載された絵や写真,ビデオ映像を模写することにも違った

面白さや利点があります.

絵を描くために特別な道具は必要ありません.極端なことを言

えば,紙と鉛筆 1 本あれば十分で,この手軽さも絵の魅力と言え

ます.もちろん,鳥の羽毛にはさまざまな色がありますから,色

鉛筆や水彩絵具で着彩してみるのもおもしろいと思います.

モチーフになるのは鳥の姿に限定されません.飛び方や食べ方

といった行動,まわりの環境,季節等々・・・描き加える要素は

いくらでもあります.あるいは 1 枚の羽毛や足跡,古巣といった

痕跡にも,描いてみるとさまざまな発見があります.応用の仕方

は人それぞれ.まずはスケッチブックを持って出かけましょう.

野鳥の絵を描くわけ 箕輪 義隆 生物画家

図 2 ペン画: エナガ (作 箕輪 義隆)

図1 鉛筆でスケッチ: スズメ(上) カワセミ(下)

(生態園 1990 年 10 月 7 日 作 箕輪 義隆)

鳥の描き方

http:/ /www11.ocn.ne.jp/~y-minow a/making.html 「野鳥観察ガイドブック」の絵も参考にしてください.

Different View points in Nature Observation 自然観察をめぐるさまざまな目線

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *30

千葉県立中央博物館の生態園は,学校の児童・生徒を対象とし

た学習プログラムを作成するための教材の宝庫となっています.

これまで文部科学省の委嘱事業をはじめとして,多くの効果的な

学習プログラムを開発し,「子どものための生態園事業」として,

当館の学校連携事業の重要な部分を担ってきました.とくに,生

態園を活用して開発する学習プログラムは,自然観察を中心とし

た体験型の形態を持ち,子どもの発達段階に応じてさまざまなバ

リエーションを持たせることが可能です.平成 15 年度に開発し

た「耳をたよりに自然を観察!音声認識技術活用学習プログラム」

は,音声に注目し,IT技術を活用した斬新なものとなっていま

す.これは,当館が学校連携を今後推進していく上で,重要な学

習コンテンツになるものと考えます.

学習プログラムの効果と活用

私が見学したとき,この学習プログラムを体験したすべての子

どもの目が輝いており,活き活きと主体的に学習している姿が,

たいへん印象的でした.耳を傾けるという行為によって,子ども

の集中力の向上を期待できるように思われました.また,今日大

きな教育課題となっている「生きる力」の育成にもたいへん効果

的だと思われました.

今回の体験は,子どもにとって,自然に目(耳)を向けるよい

きっかけとなったようです.学校に戻った後,子どもの自然への

興味関心が高揚したという先生方の話もありました.

この学習プログラムは汎用性が高く,小学校 3 年から 6 年まで

十分活用できます.部分的には小学校低学年でも導入可能でしょ

う.また,中学生からおとなも含め,さまざまな学習段階で有効

に活用できることでしょう.さらに,今後は良質なデリバリーキ

ットとして,生態園内だけでなくそれぞれの地域での活用も期待

できます.なお,この学習プログラムが,視覚障害をもつ子ども

に対しても,優れた学習コンテンツになることを私は期待してい

ます.

今後の取組み

1.教員向け研修の充実

「耳をたよりに自然を観察!音声認識技術活用学習プログラム」

については,平成 16 年度以降,長期休業期間等を利用して,教

育普及事業の一環として教員向けの研修会を実施します.研修で

は鳴き声を手がかりに自然を観察する方法や,音声識別装置「き

きみみずきん」の使用法を学び,児童・生徒の実態に合わせた具

体的な活用方法等について意見交流します.

2.学習プログラムの点検

学習プログラムを絶えず点検し,発展させ,幅広く柔軟に展開

できるように努めます.そのためには,小,中,高,盲聾養護学

校など,すべての子どもの自然観察を支援できるように,学習プ

ログラムを実践される学校からのフィードバックに加え,さまざ

まな分野からの助言に基づいて改善していきます.

3.学校への積極的な広報活動の展開

さまざまな媒体を活用して,この学習プログラムを広く周知し,

利用促進を積極的に図ります.また,学校の先生や学校を支援す

る市民や自然観察指導員等から,電話,fax,eメール等によ

り,中央博物館あてに照会や利用依頼をいただけるよう努めます.

「耳をたよりに自然を観察!」のすすめ 木村 正典 千葉県立中央博物館

学校連携活動及び団体利用手続

ステップ1 教育普及課へ問合せ・相談 電話 043-265-3776

ステップ2 生態学研究科と生態園の下見や活動の打合せ 電話 043-265-3397 またはファクス 043-266-2481

「耳をたよりに自然を観察!」担当:

大庭 照代 [email protected]. jp 図1 生態園オリエンテーションハウスの前で,研究員の話を聞く千葉市立扇田

小学校 3 年生.

この学習プログラムの普及に向けて Popular ization of the Learning Program

*31 音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

図 2 生態園内で音声識別装置「ききみみずきん」に支援されて野鳥を自主的

に探索している酒々井町立大室台小学校 6 年生.

1 海岸植生(クロマツ・ハマ

ヒルガオ・ハマゴウなど)

6 落葉広葉樹林(コナラ・ハ

コネウツギ)

11 やぶ(ササ・イヌシデ・

クヌギ)

16 池・湿原(ヨシ・ハンノキ)

2 常緑広葉樹林(タブ) 7 常緑針葉樹林(アカマツ) 12 落葉広葉樹林(イヌシ

デ・コナラ)

17 落葉広葉樹林(ハンノキ)

3 常緑広葉樹林(スダジイ) 8 草地(ススキ・クズ) 13 落葉広葉樹林(イヌシ

デ・コナラ)

18 畑・雑木林・落葉広葉樹林

(ニセアカシア)

4 常緑広葉樹林(アカガシ・

ヤマグワ・イイギリ)

9 雑木林(更新) 14 湿原(ヨシ・タチヤナギ・

ハンノキ)・竹林(マダケ)

19 草地(チガヤ)・裸地

5 常緑針葉樹林(モミ) 10 雑木林(成熟)・常緑広葉樹

林(シラカシ)・

15 池岸草地・林縁・道

(野鳥観察舎)

20 池岸草地・雑木林の林縁

(本館と生態園の間)

音声認識技術活用学習プログラム

耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 教員用手引書

© 千葉県立中央博物館 2004

執 筆 (巻頭言) 中村 哲 ・ 市川 百合子 ・ 山口 延行 ・ 長澤 徹

(本 文) 「耳をたよりに自然を観察!音声認識技術活用学習プログラム開発委員会」

浅田 正彦 ・ 綾 富美子 ・ 池田 寛 ・ 石井 信子 ・ 石井康子 ・ 石田 曜子 ・ 梅里 之朗 ・ 大網 照美 ・ 大庭 照代 ・金子 謙一 ・

河添 寿子 ・ 小林 毅 ・ 澤田 裕樹 ・ 庄境 誠 ・ 松山 みよこ ・ 御須 裕子 ・ 箕輪 義隆 ・ 奈木野 豪秀 ・原口 真 ( 五十音順 )

編 集 大庭 照代

協 力 由良 浩 ・ 丸山 聡栄

発 行 日 平成16年3月25日

発 行 者 千葉県立中央博物館 〒260-8682 千葉県千葉市中央区青葉町955-2 http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/

電話: 043-265-3111(代表) 043-265-3397(生態学研究科) ファクス: 043-266-2481

印 刷 株式会社 正文社

千葉県立中央博物館 生態園

生態園は、房総半島

でみられる代表的な

自然を、人の手でつ

くっています。

中央博物館本館

舟田池

生態実験園 湿原

雑木林

オリエンテーションハウス

野鳥観察舎

音の たからさがし ポイント

Popularization of the Learning Program この学習プログラムの普及に向けて

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004 *32

正門(出入口)

フィードバック 学習プログラム: ①音が聞けるようになる ②野鳥の探索 ③野鳥観察マップの作成

教員・観察指導員

氏 名

所 属

住 所

連 絡 先 TEL : FA X : E-MA IL :

実施概要

日 時 年 月 日 午 前 ・ 午 後 時 分 よ り 分 間

場 所 生態園・展示室・講堂・研修室・学校・その他( )

参 加 者 数 児 童 な ど : 教 員 な ど : 支 援 者 :

学 校 ・ 学 年 ・ 年 齢 学 校 年 歳

科 目 理 科 ・ 総 合 ・ そ の 他 ( )

達成目標 (例:○○○ができるようになる、参加者の感想を引出すなど)

今 回

年 間

評価: 達成度はいかがでしたか? 4.

段階からひとつ.......

選択してください。

今 回 の 目 標

年 間 の 目 標

●--●--●--●

●--●--●--●

実 施 方 法 わ か り や す い ●--●--●--● わ か り に く い

内 容 ふ さ わ し い ●--●--●--● ふ さ わ し く な い

時 間 長 い ●--●--●--● 短 い ( 適 切 な 長 さ : 分 )

参 加 者 の 反 応

積 極 的 ●--●--●--● 消 極 的

楽 し そ う ●--●--●--● 退 屈 そ う

集 中 し て い る ●--●--●--● 散 漫 に な っ て い る

指導後のコメントと参加者の意見・感想

フィードバック」用紙は、コピーしてお使いください。お手数ですが、ご記入後、下記へお送りください.

〒260-8682 千葉市中央区青葉町 955-2 千葉県立中央博物館 FAX: 043-266-2481(担当:大庭 照代)

音声認識技術活用学習プログラム 耳をたよりに自然を観察するために 事例報告書 (教員用手引書) 2004

耳をたよりに自然を観察! Observe Nature by Ear!