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The high-resolution MIDI format (eXtended Precision MIDI format)の仕様紹介と, 研究分野での利用について ○野池賢二(所属なし) 池淵 隆(関西学院大学) 片寄晴弘(関西学院大学)

ふたつの高精度化 MIDI 仕様

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(33) The high-resolution MIDI format(eXtended Precision MIDI format)の仕様紹介と,研究分野での利用について 野池 賢二 (所属なし), 池淵 隆 (関西学院大学), 片寄 晴弘 (関西学院大学) http://www.ustream.tv/recorded/38133139 http://www.sigmus.jp/?page_id=2151 SIGMUS100 「SIGMUS第100回記念シンポジウム」(情報処理学会 音楽情報科学研究会 第100回研究発表会)

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Page 1: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

The high-resolution MIDI format(eXtended Precision MIDI format)の仕様紹介と,

研究分野での利用について

○野池賢二(所属なし)

池淵 隆(関西学院大学)

片寄晴弘(関西学院大学)

Page 2: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

はじめに

• とある仕様の紹介発表

• MIDI 高精度化の仕様• MMA の仕様(High Resolution MIDI ?)

• YAMAHA の仕様(eXtended Precision MIDI(XP MIDI))

• まだあまり認知や普及がなされていない

• “High Reso MIDI 仕様”, “XP MIDI 仕様” で検索しても,まとまった情報がほとんど見つからない

• 128段階で足りてますか?

•研究成果の品質が上がるかも?

•製品の特長のひとつになるかも?• この発表スライドや,サウンドサンプルのありか

http://www.slideshare.net/knoike/presentations

http://noike.info/HRmidi/

Page 3: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

MIDI とはどんな仕様か

•電子楽器間で演奏情報をやりとりするプロトコル

•日本発祥の規格

• 1983年に制定

• 30年が経過した現在でも標準的に使用されている,有用な仕様

Page 4: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

現在におけるMIDI の不満点

•鍵盤楽器に特化した仕様である

• 31250 bps という転送速度の遅さ

•同時発生イベントを「同時である」と記述できない→ インターバルタイム 0 でイベントを列挙する

………

•パラメータの精度(分解能)の低さ

いまいち萌えない理由を挙げなさい

Page 5: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

MIDI メッセージパラメータの精度(分解能)

•基本的に,7bit のパラメータがひとつ(128段階)• Note On/Off ベロシティ 128段階で十分?

• ペダル踏度 128 段階で十分?

• ポリフォニック・キープレッシャー(アフタータッチ) 128 段階で十分?

演奏表情の研究素材データとしては

精度が足りない(と感じる)

音響信号処理に移行する前段階として

手軽な高精度化方法が必要

うわっ…私の精度,低すぎ…?

Page 6: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

ふたつのMIDI 高精度化仕様

• MMA(MIDI Manufacturers Association) によって承認されている仕様

• YAMAHA による拡張仕様 eXtended Pricision MIDI(XP MIDI)公開されている仕様書が存在しない

→ 解析的に仕様を推測

•現状での普及具合

•研究分野での利用について

Page 7: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

MMA による高精度化仕様

•以前から「HD Protocol」として高精度化,高機能化が議論されてきた

•現状では,• High Resolution Velocity Prefix(HR Vel Prefix と略記)

• だけが承認(2007年)

Page 8: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

High Resolution Velocity Prefix(HR Vel Prefix)

• CC#88(58H) を使用して,Note On/Off ベロシティに下位 7bit の情報を拡張する

Note On: 9n K V

CC#88 HR Vel Prefix: Bn 58 P p p p p p p p

v v v v v v v

v v v v v v v p p p p p p p

High Resolution Velocity(14bit):

Page 9: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

HR Vel Prefix の値

1 0 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1

High Resolution Velocity(14bit):

High Resolution Velocity(7+7bit):

→ 8192+1024+128+32+1=9737→ 9737 / 16384段階

1 0 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1

理解2

理解1

→ → 64+8+1=73, 0.25+0.0078125=0.2578125→ 73.2578125

小数部整数部

こちらの理解

のほうがオススメ

Page 10: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

HR Vel Prefix の特徴

•標準の Note On/Off ベロシティとの完全上位互換性を確保• HR Vel Prefix をサポートしていない HW/SW は,単純に無視すればよい

• Note On/Off ベロシティが 0 のときは,HR Vel Prefix は無効

• (「Note Onベロシティ0 = Note Off」との互換性を優先)

• HR Vel Prefix は,その後で最初に出現する Note On/Off メッセージにだけ有効

0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1

→ 33(あるいは,0.2578125) ではなく,0→ + という理解が直感的→ このルールのため,精度は 214-128=16256

整数部 小数部

Page 11: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

ふたつのMIDI 高精度化仕様

• MMA(MIDI Manufacturers Association) によって承認されている仕様

• YAMAHA による拡張仕様 eXtended Pricision MIDI(XP MIDI)

Page 12: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

YAMAHA による高精度化仕様

• Disklavier E3 などで用いられている拡張仕様

•仕様の名前は eXtended Pricision MIDI(XP MIDI)

公開されている仕様書が存在しなかったため,

• Zenph社のシーケンスソフト「RePerform」http://www.zenph.com/reperform

• Minnesota International Piano-e-Competition のアーカイブファイル

http://www.piano-e-competition.com

• MODARTT社のソフトウェア音源「Pianoteq」http://www.pianoteq.com/

を使用し,解析的に仕様を推測

Page 13: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI によって高精度化されたメッセージ

• Note On/Off ベロシティ128段階→ 1024段階

• ポリフォニックキープレッシャー(アフタータッチ)128段階→ 1024段階

• ペダル踏度128段階→ 256段階

Page 14: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI 高精度化 Note On/Off ベロシティ

• CC#16(10H) を使用して,Note On/Off ベロシティに下位 3bit の情報を拡張する

Note On: 9n K V

CC#16 XP Vel Suffix: Bn 10 S

XP MIDI Velocity(10bit):

v v v v v v v

s s s

sv v v v v v v s s

MMA の HR Vel Prefix と異なり,拡張するためのメッセージのほうが後着

Page 15: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI Note On/Off ベロシティの値

XP MIDI Velocity(10bit):

XP MIDI Velocity(7+3bit):

→ 512+64+8+2=→ 586 / 1024段階

理解2(Pianoteq)

理解1(RePerform)

→ → 64+8+1=73, 0.25=0.25→ 73.25

小数部整数部

01 0 0 1 0 0 1 1 0

01 0 0 1 0 0 1 1 0

Page 16: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI Note On/Off の特徴

•高精度化用のメッセージのほうが,標準の Note On/Off メッセージよりも後

• Note On/Off メッセージのベロシティが0であっても有効

→ 2(10bit表現),0.25(整数部+小数部)→ 真の10bit表現のため,精度は 210=1024

00 0 0 0 0 0 0 1 0

Page 17: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI 高精度化ポリフォニックキープレッシャー

•標準のポリフォニックキープレッシャーとは別に,CC#81(51H)で上位7bitを,CC#16(10H)で下位3bitを指定する

PolyKprs: An K V

CC#81 XP Kprs MSB: Bn 51 H

XP MIDI Kprs(10bit):

v v v v v v v

l l l

lh h h h h h h l l

h h h h h h h

CC#16 XP Kprs LSB: Bn 10 L

Page 18: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI ポリフォニックキープレッシャーの値と特徴

•値

•高精度化メッセージのほうが,標準のポリフォニックキープレッシャーメッセージよりも後

XP MIDI Kprs(10bit):

01 0 0 1 0 0 1 1 0

→ 512+64+8+2=→ 586 / 1024段階

Page 19: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI 高精度ペダル踏度

• CC#16(10H) を使用して,標準のペダル踏度に下位 1bit の情報を拡張する

Damper(Sustain): Bn 40 V

CC#16 XP Pedal Suffix: Bn 10 S

XP Pedal(8bit):

v v v v v v v

拡張するためのメッセージのほうが後着

Sostenuto: Bn 42 V

Soft: Bn 43 V

s

v v v v v v v s

Page 20: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

XP MIDI ペダル踏度の値と特徴

•値

•高精度化メッセージのほうが,標準のペダル踏度メッセージよりも後

•標準のペダル踏度が 0 であっても,有効

XP MIDI Pedal(8bit):

→ 128+16+2+1=→ 147 / 256段階

1 0 0 1 0 0 1 1

0 0 0 0 0 0 0 1

→ 1(8bit表現),0.5(整数部+小数部)→ 真の8bit表現のため,精度は 28=256

Page 21: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

現状での普及具合

• サポート製品

• XP MIDI を積極的に使用したピアノ演奏コンテスト「Minnesota International Piano-e-Competition」

http://www.piano-e-competition.com

HR Vel Prefix(入力 / 出力)

XP MIDI(入力 / 出力)

Pianoteq ○ / - ○ / -

VAX77 - / ○ - / ×

Privia PX-150など ○ / ○ × / ×

Disklavier E3 など × / × ○ / ○

RePerform × / × ○ / ○

Page 22: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

PianoteqソフトウェアMIDI音源(MODARTT社)

•物理モデリングに基づいて音響信号を生成するソフトウェアMIDI音源

http://www.pianoteq.com/

• MMA の HR Vel Prefix と,YAMAHA の XP MIDI の両仕様に対応

• MIDI高精度化仕様を用いたSMFやMIDI入力を,音で確認する場合に有用

Page 23: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

VAX77 MIDI Keyboard Controller(INFINITE RESPONSE社)

• 76鍵のMIDIキーボードhttp://www.infiniteresponse.com/

• MMA の HR Vel Prefix に対応

•各鍵の Note On ベロシティ用のセンサの精度は256段階

•演奏データをMIDI高精度化仕様で出力できるMIDIキーボードとして有用であったが,現在は入手不可能

→ 次の製品を開発中

Page 24: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

Privia PX-150 など(CASIO社)

• Privia: PX-150, PX-350M, PX-750, PX-850, PX-1200GPhttp://casio.jp/emi/products/privia/

• CELVIANO: AP-250, AP-450, AP-650Mhttp://casio.jp/emi/products/celviano/

•音源を内蔵した電子ピアノ

• MMAのHR Vel Prefixに対応している.ただし,PX-150, PX-350M, PX-750, AP-250はNote Offベロシティには対応していない

http://support.casio.jp/pdf/008/nil%20(PX150-1200_AP250-650_MIDI_J_121017).pdf

• MIDI高精度化仕様での演奏収録に有用

• MIDI高精度化仕様を用いたSMFやMIDI入力を

•音で確認する場合に有用

Page 25: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

Disklavier E3 など(YAMAHA社)

•演奏の記録,再生のできるアコースティックピアノ

• E3, Pro, Mark IV が XP MIDI に対応している

• XP MIDI 仕様での演奏収録,再生のために,確実で最良

Page 26: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

RePerform(Zenph社)• MIDI シーケンスソフトウェア

http://www.zenph.com/reperform

• XP MIDI に対応

•演奏の記録,再生,簡易編集が可能

•通常の SMF と,XP MIDI 仕様の SMF との相互変換が可能

• XP MIDI 仕様での演奏収録,再生のために有用

Page 27: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

Minnesota International Piano-e-Competition

• XP MIDI 仕様とインターネットを積極的に活用した,人間のピアノ演奏コンテスト

http://www.piano-e-competition.com

•演奏者や聴取者は,必ずしも同一コンテスト会場に集まる必要がない• 演奏者の演奏データや演奏中の映像は,インターネットを経由して別のコンテスト会場にも送られる

• このときの演奏データの形式が XP MIDI

• 使用されているピアノは Disklavier E3

•過去のコンテストでの演奏データがアーカイブとして公開されているので,XP MIDI 仕様による SMF の実例として有用

• XP MIDI 仕様そのものの有用性の確認

Page 28: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

研究分野での利用について(1/2)

•演奏の表情を扱う研究• 演奏表情の分析,生成

• 演奏表情付けコンテスト(Rencon)• 試しに高精度化MIDI仕様で聴き比べコンテスト実施?

• 演奏表情DB(例: CrestMusePEDB)演奏→ SMF → CrestMuseDB

演奏→ 高精度化 SMF → 高精度化 CrestMusePEDB

• MIDIに類似したデータ表現を用いる研究• 音響信号からMIDIレベルの量子化を行う研究(採譜システム)

• 歌声から歌声合成システムの元データを生成する研究

• 聴取心理実験の刺激データ

精緻にすることで,成果の品質を上げられないか?新たな知見,課題が生じるのではない?

Page 29: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

研究分野での利用について(2/2)

• ネットワーク越しに演奏情報をやりとりする研究• 転送先での演奏の再現性の向上

• インタラクティブシステム• 7bitよりも精度の高いセンシング情報を,劣化させることなくMIDIメッセージにマッピング

• 128段階よりも精緻なコントロール

• (例: 360度の回転を 360/128=2.8125度よりも精緻に)

•研究分野以外での利用について

•高精度化MIDI 対応デバイス,ソフトウェアの開発→ 製品の特長のひとつとして挙げられる

Page 30: ふたつの高精度化 MIDI 仕様

まとめ

•ふたつのMIDI 高精度化仕様を紹介

•現状での普及具合

•研究分野での利用について

• この発表スライドのありかhttp://www.slideshare.net/knoike/presentations

• サウンドサンプルhttp://noike.info/HRmidi/