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キーワード1.研究の近年の歯歯羅漢率はを食べる機顎骨の変化が悪いこと)いる 1) ステンレスは図 1(a)ていたが 2) いた. 一方,現性係数が小さ く利用されて用いられてい食性および従来用いらして示したもとができる.歯科矯 歯科矯正,的と背景 医療の高度少している.が減少したた追いつけず, 問題になって 製矯正ワイうな特殊なルれらは同図(b (a) 矯正((b) 矯正1 矯正ワの歯科矯正くかつ弾性ひり,図 2(a).とくに,TiNi 体適合性を有 ていたコバルであるが,小かし,TiNi 正用 NiT 東京医科ーチワイヤ, および予防かし食文化,顎骨は小その結果としおり,歯科矯などを用いた プ構造を用b)のような手作 ープ)ワイヤのイヤの手加工 ヤを用いる歯床においては みが大きいようにそれをi 合金は優れする.図 2(b)クロム合金やな一定の矯金は手加工が T i 超弾科大学 医21 年度超弾性材料, 科の発展に変化により硬 くなり,歯牙の 歯列異常(歯 の需要が増矯正治療にて矯正力をにより製作矯正 ,従来金属よ弾性材料 2),3) ラケットで固機能安定性, ,その変形テンレス鋼と 力を歯に与非常に困難で アーする応歯学総合研助教 中村般研究開NiTi(ニチいう い物 幅は 並び して いて 御し れて も弾 ) が広 して 耐腐 性を 比較 るこ 予め ワイ ワイヤ研究 科、先端助成 AF-200 ール),曲形に成形さの口腔内を同図(c)のよう 機器を用いいる.しかし,が異なる感じ研究では,そ ヤの通電加熱(a) 超弾(b) (c) パルス通2 CNC 料評価学分09016加工 た製品を利用 視し,チェアなスポット溶手作業で屈電加熱によあるなどの自動化を目形に関するNiTi 矯正弾性型 NiTi による NiTi 性型 NiTi 加熱曲することが多イドで形状電源に類似し,試適を繰 処理したワイ問が残されてして歯科矯礎的検討をイヤを用いる変形特性の弾性矯正ワイワイヤを用いる.歯科医が正を行う場たパルス通り返しながらは初期材料た. NiTi った. 列矯正 4) 4) の形状修正 4) 列矯正 ー 81 ー

歯科矯正用 NiTi 超弾性アーチワイヤの CNC 加熱曲げ …‚ˆその形状記憶処理が完了するが,その後の除荷により弾性 回復が発生する.

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Page 1: 歯科矯正用 NiTi 超弾性アーチワイヤの CNC 加熱曲げ …‚ˆその形状記憶処理が完了するが,その後の除荷により弾性 回復が発生する.

キーワード:

1.研究の目

近年の歯科

歯羅漢率は減

を食べる機会

顎骨の変化に

が悪いこと)が

いる 1).

ステンレス鋼

は図 1(a)のよ

ていたが 2),そ

いた.

一方,現在

性係数が小さ

く利用されてお

用いられている

食性および生

従来用いられ

して示したもの

とができる.し

歯科矯

歯科矯正,ア

目的と背景

科医療の高度化

減少している.し

会が減少したため

に追いつけず,

が問題になって

鋼製矯正ワイヤ

ような特殊なルー

それらは同図(b

(a) 矯正(ル

(b) 矯正ワ

図 1 矯正ワイ

在の歯科矯正臨

くかつ弾性ひず

おり,図 2(a)の

る.とくに,TiNi

生体適合性を有

れていたコバルト

のであるが,小さ

しかし,TiNi 合

正用 NiT

東京医科歯

(平

アーチワイヤ,

化および予防歯

しかし食文化の

め,顎骨は小さ

その結果として

おり,歯科矯正

ヤなどを用いた

ープ構造を用い

b)のような手作

ループ)ワイヤの例

ワイヤの手加工

イヤを用いる歯列

臨床においては

ずみが大きい超

のようにそれをブ

i合金は優れた

する.図 2(b)は

トクロム合金やス

さな一定の矯正

金は手加工が

Ti 超弾性

に関

歯科大学 医歯

平成 21 年度一

超弾性材料,

歯科の発展に伴

の変化により硬

さくなり,歯牙の

て歯列異常(歯

正の需要が増加

矯正治療にお

いて矯正力を制

業により製作さ

列矯正

,従来金属より

超弾性材料 2),3)

ブラケットで固定

た機能安定性,

は,その変形特

ステンレス鋼と

正力を歯に与え

非常に困難で

性アーチ

関する応用

歯学総合研究

助教 中村英

一般研究開発

NiTi(ニチノ

伴いう

い物

幅は

並び

加して

おいて

制御し

されて

りも弾

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定して

耐腐

特性を

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で予め

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チワイヤの

用研究

究科、先端材

英雄

発助成 AF-200

ノール),曲げ

蹄形に成形され

様の口腔内を目

は同図(c)のよう

熱機器を用いて

ている.しかし,通

性が異なる感じが

本研究では,そ

ヤの通電加熱成

(a) 超弾性

(b) 超

(c) パルス通電

図 2 超弾

の CNC

材料評価学分野

09016)

げ加工

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目視し,チェアサ

なスポット溶接

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通電加熱により

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の自動化を目指

成形に関する基

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の変形特性の概

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り返しながら行

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いた.

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行った.

歯列矯正4)

概要4)

ヤの形状修正4)

歯列矯正

ー 81 ー

Page 2: 歯科矯正用 NiTi 超弾性アーチワイヤの CNC 加熱曲げ …‚ˆその形状記憶処理が完了するが,その後の除荷により弾性 回復が発生する.

2.実験方法

実験には,直径 0.406mm(0.16 インチ)の円形断面の超弾性

型 NiTi ワイヤ(SENTALLOY-Medium, TOMY International Inc.)5)に対して,500℃(60min)で直線記憶熱処理済みのものを用

いた.この材料は口腔内の温度 37℃で最適な超弾性特性を示

すように設計されている.諸元を表 1 に示す.

NiTi ワイヤの通電・引張試験および通電曲げ試験の概要と

実験条件をそれぞれ図 3, 4 および表 1, 2 に示す.通電加熱

電源は,定電流電源を使用し,通電制御にはパソコンで制御

された SSR を用いた.電流値は回路に直列に接続された無誘

導型の 0.1Ωシャント抵抗を用いた.また,通電加熱時のワイ

ヤ表面の温度測定には,素線直径 25μm の K 型熱電対を用

いた.

通電・引張試験においては装置を保温器内で 37℃に保温

して行った.ひずみ速度は,約 7×10-4 /s である.

表 1 試験片

NiTi round wire

SENTALLOY-Medium TOMY International Inc.

Diameter: d 0.406 mm (0.16 inch)

Length: ℓ 180 mm (original)

Heat treatment Straight , 500 ℃ (60 min)

通電曲げ試験においては,長さ 30mm の素材を Z テーブル

および XYθテーブルに固定したジグ(銅電極)でクランプし,

所定の座標および角度に設定後,パルス通電加熱処理した.

3.実験結果

3.1 超弾性型 NiTi ワイヤの変形特性

図 5 は,負荷・除荷の繰り返しを与えた場合の応力-ひず

み曲線である.同図(a)~(c)は,除荷開始ひずみをそれぞれ

2.0, 6.0, および 8.0 と変化させた場合の結果である.

応力-ひずみ曲線のヒステリシスループ,繰り返し変形によ

る変態降伏応力の低下と非回復ひずみの増大などの典型的

な超弾性挙動を示している.

表 2 実験条件(通電・引張試験)

Temperature of specimen: TW 37±0.5 ℃

Strain rate: 7×10-4 s-1

Current: i 0 - 6 A

Pulse width: T 1 – 100 s

表 3 実験条件(通電曲げ試験)

Ambient temperature: Ta 23±1.0 ℃

Current: i 0 - 6 A

Pulse width: T 1 – 100 s

図 3 NiTi ワイヤの通電・引張試験

図 4 NiTi ワイヤの通電曲げ試験の概要

ー 82 ー

Page 3: 歯科矯正用 NiTi 超弾性アーチワイヤの CNC 加熱曲げ …‚ˆその形状記憶処理が完了するが,その後の除荷により弾性 回復が発生する.

(a) ε1 = 2 %

(b) ε1 = 6 %

(b) ε1 = 8 %

図 5 超弾性型 NiTi ワイヤの変形特性

3.2 超弾性型 NiTi ワイヤの通電加熱曲げ

NiTi 合金製細線は,最終段階では冷間引抜きされて

400-500℃で,10-60 min で(形状記憶)熱処理される.その

熱処理には通常,雰囲気炉が用いられ,その温度と時間は製

品の特性に大きな影響を及ぼす 6).一方,NiTi 合金の加熱に

通電加熱を利用する試みが,SMA アクチュエータ駆動におけ

るひずみ回復動作において多く利用されている 3), 4).また,極

細線の冷間引抜き後の熱処理に利用する試みが報告されて

いるが 7), 8),形状記憶済みの材料に対する形状修正への適用

に関する報告はほとんどない.

図 6 は,l1=10mm の長さの素材ワイヤにパルス通電したとき

の電流と素材中央の温度の変化である.定電流電源を使用し

ているために電流はステップ変化をしている.一方,温度は時

間遅れをともなって上昇し,約 5s で最高温度の約 520℃に達

する.

図 7 は,パルス幅を T=10s に固定して,電流を変化させた

場合の素材中央の最高温度である.白丸が10mmの長さの素

材ワイヤに通電した場合で,黒丸が 70mm の長さの素材ワイ

ヤに通電した場合である.l1=10mm の場合には 70mm の場合

よりも到達温度が低いが,4.5A で約 520℃に達する.

図 8 は,図 4 の手順に従って l1=10mm の長さの素材ワイヤ

を 90°に曲げた状態でパルス通電により形状記憶処理を試

みた結果である.また,図 9 は,通電時のワイヤの温度分布で

あり,ジグに近傍では温度の低下が発生する.i=4.5A (T=10s)

では,素材中央部の温度は 520℃に達する.

TiNi 合金ワイヤの通電曲げ成形では,ひずみ回復とスプリ

ングバックにより戻りが生じる.残留曲げ角αr は,通電パルス

幅 T の増大とともに目標角度 90°に近づくが,T=10s 以上で

は改善がみられず,約+10°のずれが残る.電流値の増大に

よっても目標角度に近づくが,i=4.5A と i=5.5A では差異がな

く,i=4.5A の条件で形状記憶処理が完了している.しかし,図

7 のように短い素材ワイヤの両端を電極で固定している場合に

は,両端部での温度が不十分である可能性がある.また,後

述のように,形状記憶処理がなされ回復ひずみがゼロとなっ

ても,弾性回復が生じるために,ヤング率が相対的に小さい

NiTi 合金では,大きなスプリングバックが発生する.

図 6 通電加熱時の超弾性型 NiTi ワイヤの温度変化

ー 83 ー

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図 7 通電加熱により得られる超弾性型 NiTi ワイヤの温度

図 8 超弾性型 NiTi ワイヤの通電曲げ

図 9 通電中の超弾性型 NiTi ワイヤの温度分布

(a) i = 2.96 A

(b) i = 3.54A

(c) i = 3.96 A

図 10 通電加熱後の超弾性型 NiTi ワイヤの変形特性

3.3 通電加熱された超弾性型 NiTi ワイヤの特性

一例として,直性形状の記憶処理では,わずかな引張応力

(20–100 MPa)を加えた状態で熱処理が行われる 9).一方,比

較的複雑な形状の場合には型形状に拘束された状態(予ひ

ずみが与えられた状態)で熱処理される.

図 10 は,1.58MPa の引張応力下で 3.96A(T=10s) のパルス

通電加熱処理したワイヤの繰り返し変形特性であるが,

i=2.96A では図 5 の初期特性とほぼ同じであるが,i=3.54A で

は,変態降伏応力がかなり増大するとともに,非回復ひずみ

の低下もおおきくなる.さらに i=3.96A では大きく異なる挙動を

示し,数回の繰り返し負荷で超弾性挙動を示さなくなる.

一方,図 11 は,2, および 3%の予ひずみを与えた状態で

2.98A(T=10s)のパルス通電した場合のワイヤの挙動である.B

点でのパルス通電による急速な温度上昇により 3%保持応力

の 2 倍近い回復力が発生し,10s の冷却後 C 点に達しておお

ー 84 ー

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よその形状記憶処理が完了するが,その後の除荷により弾性

回復が発生する.

(a) ε1 = 2 %

(b) ε1 = 3 %

図 11 予ひずみを与えた超弾性型 NiTi ワイヤの通電過程

4.まとめ

歯科矯正用の超弾性型 NiTi アーチワイヤの通電加熱曲げ

の自動化を目指して,基礎的検討を行った.得られた結果は

以下のとおりである.

a) 歯科矯正に用いられる直径 0.4mm の円形断面線材では,

長さ 10~70mm の素材を 4~5A 程度の通電によりワイヤ中

央部を熱処理に必要な 500℃程度まで約 5s で昇温できる.

b) 通電加熱において,素材ワイヤのジグ(電極)近傍では,そ

れを介した熱伝導のために温度の低下が生じて中央部に最

高値をもつ分布を形成する.また,素材が短いと中央部の

最高温度が低くなる.

c) 長さ 10mm の素材ワイヤの通電加熱曲げでは,4.5A で 10s

の通電で 520℃程度に加熱することにより,変態ひずみ分は

緩和されて記憶処理が完了するが,弾性回復分は緩和され

ず,90°の曲げに対して約 10°のスプリングバックが発生

する.

c) 1.58MPa の引張応力下条件でパルス通電加熱により 500℃

程度で熱処理を行うと,変態応力の増大や回復ひずみの減

少・消失などの変形特性の変化がが生じる.

d) 予ひずみを与えた超弾性型 NiTi ワイヤに 10s 通電加熱す

ると,温度上昇時に保持力の 2 倍近い回復力を発生し,冷

却後予ひずみ保持応力か若干大きい応力が残留する.そ

の後,除荷すると変態ひずみの回復はないが,弾性ひずみ

が回復する.

以上のように,適切な電流値で 10s 程度の通電加熱するこ

とにより,形状記憶処理は達成できるが,スプリングバックは非

常に大きく,また,処理後の変形特性が大きく変化するために,

加工の自動化に当たってはこれらをどのように制御するかが

大きな課題となる.

謝辞

本研究を行うにあたり,(財)天田金属加工機械技術振興財

団より研究助成を賜りましたことをここに付記し,深く謝辞を表

します.

また,工場の震災復興の多忙の中で試験材料を準備頂いた

㈱トミーインターナショナルに感謝致します.

参考文献

(1) 相馬,飯田,山本,葛西,後藤:歯科矯正学 第 5 版, 医

歯薬出版株式会社, (2008).

(2) たとえば,佐藤 編:MEAW を用いた矯正治療, ㈱第一

歯科出版, (2001).

(3) D.C. Lagoudas: Shape memory alloys: Modeling and

engineering applications, Springer US, (2008).

(3) 田中, 戸伏, 宮崎:形状記憶合金の機械的特性, 養賢

堂 , (1994).

(4) トミー㈱,歯列矯正器具,

http://www.tomyinc.co.jp/wwwroot/products.html

(5) TOMY International: SENTALLOY,

http://www.tomy-ortho.co.jp/products/sentalloy.html

(6) Otsuka K, Ren X.: Prog Mater Sci, 50, (2005), 511.

(7) B. Malard, J. Pilch, P. Sittner, R. Delville, C. Curfs: Acta

Materialia, 59- 4, (2011), 1542.

(8) Patent applications PV2009–279, PCT/CZ2010/000058.

(9) Pelton AR, DiCello J, Miyazaki S.: Minim Invas Ther

Allied Technol, 9, (2009), 107.

ー 85 ー