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1.「定職を持たない若者」の増加 1

1.「定職を持たない若者」の増加 · 2016-11-16 · 1.「定職を持たない若者」の増加 2005年の『労働経済白書』(厚生労働省)によると、決まった職には就かずに

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1.「定職を持たない若者」の増加

2005 年の『労働経済白書』(厚生労働省)によると、決まった職には就かずに

アルバイトやパートで働くか、または働きたいという、いわゆるフリーターと呼

ばれる 15~34 歳の青年の数は、2004 年時点で 213 万人と推定され、101 万人と

された 1992 年から 12 年間で2倍以上に増加している。(1992 年は学生等が一部

含まれていたため実際の倍率はさらに広がる可能性がある) このフリーターと

いう言葉自体は、1980 年代の末にアルバイト情報誌によって生み出されたもの

であるが、当時は、むしろ新しい風俗としてのとらえ方が主であった。しかし、

最近になって、その急激な増加や、当時のフリーターがそのまま 30 代の後半を

迎えるケースが顕在化したことから、にわかに社会問題としてクローズアップさ

れだした。

一方、ごく最近、その存在が明らかになった概念として、ニートと呼ばれる若

者がいる。もとはイギリスで生まれた言葉で、「働くことも、学校に行くことも、

職業訓練もしていない(Not in Employment, Education or Training)」16~18

歳の若者の略称(NEET)である。上記の白書によると、わが国でも、働くことも

仕事を探すこともしていない 15~34 歳の青年のうち、学校や大学の卒業者で未

婚かつ家事も通学もしていない人として集計すると、すでに 2004 年で 64 万人の

存在が認められるという。

また、わが国でニートが知られる少し前に生まれた言葉として「ひきこもり」

がある。現象としては「就学または就労といった自宅以外での生活の場が長期に

わたって失われている状態」とされる。かつては小中学生の「不登校」として問

題となったが、最近になって、20 代や 30 代の青年でも自宅に引きこもるケース

が目立つようになりこの言葉が生まれた。原因のとらえ方などによってさまざま

な定義があるが、いずれにしても長期間に及ぶ状態であるため、現状では統計的

に抽出するのは困難とされる。(上記ニートの 64 万人に含まれている)

こうした、いわば「定職を持たない若者」の増加については、まだ、一般には

若者自身の甘えが問題とする見方が強く、社会全体の問題として取り組むには至

っていない。確かに、「働きたいときに働けばいい」とか、「働きたいけど働けな

い」といった言い分自体は甘えに違いない。だが、こうした見方は、すでにフリ

ーターの言葉が生まれた時にも大人達にあったが、あの時点では今の状況を予測

できずに見過ごしてしまった。しかし、少子化が、次代の働き手がいなくなる深

刻な問題として社会全体で取り組まれようとしている今、定職を持たない若者の

増加は、まさに次代の働き手の問題として見過ごすことはできない。

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2.「定職を持たない若者」の増加は社会の行く末を危うくする

(1)個人所得の低下に伴い税収が減少する

では、このまま、定職を持たない若者の増加を見過ごせばどうなるか。

まずは、そうした若者達の収入の低さが問題となる。一般的にフリーターは所

得が低く、ましてや全く働かないニートの場合は収入がないため、その増加は確

実に国や自治体の税収減につながる。

たとえば、総務省の『就業構造基本調査』(平成 14 年度)における年齢別・雇

用形態別・所得別労働人口を基に、京都市における 15~34 歳の平均年収を推計

すると、正規雇用の場合は 339 万円であるのに対してパートやアルバイト、派遣

社員などの臨時雇用では 109 万円と、200 万円以上もの差がついている。

そこで、これを基に所得税を試算(独身で生命保険等の控除無しと想定)して

みると、正規雇用の 10.8 万円に対して、臨時雇用は0円である。

また、京都市の収入となる個人市民税を試算(同上)してみると、正規雇用の

3.9 万円に対して、臨時雇用は 0.3 万円である。

ちなみに、上記の『就業構造基本調査』によると、京都市では平成 4年度から

平成 14 年度までの 10 年間に 15~34 歳の臨時雇用者が約 1.8 倍にも増えている

が、これによる個人市民税の減収額を推計すると平成 14 年度個人市民税総額の

約 3.2%(注1)に相当する。平成 14 年度の個人市民税総額は約 719 億円なので、

これは金額にすると約 23 億円の減収である。

(注1) 平成 14 年度の年齢別・雇用形態別・所得別労働人口をベースに推計

した個人市民税の総額と、平成 4 年度から平成 14 年度までの 10 年間に臨時雇用

に転換した15~34歳の労働人口が平成14年度に正規雇用として働いていたと仮

定した場合の差額の割合。

(2)税収の減少が恒常化する

こうしたフリーターという若者が登場してすでに 10 年以上の年月が経つが、

現状では、30 歳を超えたフリーターが正規雇用される可能性は限りなくゼロに

近く、また 29 歳以下でも長期間フリーターとなっていた場合は、やはり正規雇

用の可能性は低いといわれている。従って、現在のフリーターの大半は今後も臨

時雇用のまま歳を取ることになる。本来なら税収の中心となるべき年齢層に、こ

うした低所得層が毎年繰り上がってくるため、当然、税収は年々減少することに

なる。

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ちなみに、京都市において、現状(平成 14 年度)の雇用形態が 10 年後も続い

ていると仮定した場合、平成 24 年度における個人市民税の総額は 13.1%減少す

る(注2)と推計される。先述のように、平成 14 年度の個人市民税総額は約 719

億円なので、約 94 億円もの減収である。

(注2) 国立社会保障・人口問題研究所による『日本の将来人口推計』を基に

平成 24 年度の京都市における年齢別労働人口を推計し、これに平成 14 年度の年

齢別・雇用形態別割合を適用するとともに、さらに平成 14 年度時点で臨時雇用

であった15~34歳労働人口の10年後の姿を想定して推計した個人市民税の総額

と、平成 14 年度の年齢別・雇用形態別・所得別労働人口をベースに推計した個

人市民税の総額との比較による。(なお、この減少率には総労働人口自体が 3.4%

減少する分も含まれている)

(3)社会保障制度が弱体化する

個人の所得が低くなれば、当然、健康保険料や年金の掛金も少なくなる。また、

臨時雇用の場合、雇用側が企業負担を嫌って社会保険に加入しないケースが多く、

かといって 20 代の若者の半数近くが国民年金に未加入というのが現状である。

従って、定職を持たない若者の増加は、健康保険や年金といった社会保障制度の

財政基盤を確実に弱体化させることになる。

ちなみに、京都市では、平成 4年度からの 10 年間に 15~34 歳労働力の 19.2%

(約 5 万人)が臨時雇用に転換されたことにより、平成 14 年度の個人所得総額

は 3.9%減少した(注3)と推計される。また、こうした雇用形態が 10 年後も変

わらないと仮定すると、平成 24 年度の個人所得総額は平成 14 年度より 14.3%

減少する(注4)と推計され、その分、健康保険料や年金の掛金も減少する。

(注3) (注1)と同じ想定で総所得額を比較。

(注4) (注2)と同じ想定で総所得額を比較。

(4)若者自身の人生展開が困難になる

一方、こうした定職を持たない若者は、その低所得ゆえ、今後、結婚・出産・

子育て・老後という人生の展開が困難になる可能性がある。このため、将来、彼

等に疎外感や不満あるいは後悔の念といった精神的歪みが生じる心配があり、そ

のうっ積が社会不安をもたらすことも危惧される。

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例えば、時給 900 円でフルタイム(1日 8 時間、月間 25 日)で働いた場合の

年収は 216 万円である。そうしたフリーターの生活をシミュレーションすると、

月収は手取り 15.1 万円(平成 17 年度、独身、生命保険等の控除無しと想定)で

あるのに対し、毎月の出費は控えめに計算しても家賃が 6万円、水道光熱費及び

通信費が 2 万円、食費が 4.5 万円で合計 12.5 万円が必要であり、ショッピング

や貯蓄に回せる余裕は 2.6 万円しかない。

20 代なら辛抱できるかも知れないが、30 代や 40 代になっても収入は増えない

ため、生活がさらに苦しくなることは明らかである。

ましてや、15~34 歳の臨時雇用者の平均年収 109 万円では親のスネをかじら

なければ生活は成り立たない。

ちなみに、平均年収 339 万円(手取り月収 23.4 万円)の 15~34 歳正規雇用者

が同じ生活をすると、月にして 10.9 万円の余裕が出る。

(5)社会問題全般に悪影響を及ぼす

この他、定職を持たない若者の増加は、以下のように社会問題全般にも広く

悪影響を及ぼす可能性がある。

① 少子化の進行

上記のように、低所得のため結婚・出産・子育てといった人生の展開が

困難なことから、今後の少子化に拍車をかける可能性がある。

② 福祉経費の増加

たとえ結婚や出産・子育てという人生の展開をはかったとしても、所得

が増えない場合は生活保護等の福祉対策が必要となる。また、独身のまま

歳を取れば、老後の介護は全て公的に対応せざるを得なくなる。

こうしたことから、将来的に福祉経費が増加するのは確実と考えられる。

③ 社会参画意識の欠乏

一般に、社会人となった若者が健康保険制度や年金制度の知識を得るの

は、企業に正規雇用され、これらの掛金を給料から源泉されるのがきっか

けとなる。また、企業の一員となれば、その活動や労働組合の存在を通じ

て政治を考える機会も増える。

これに対して、臨時雇用では、社会保険に入ってもらえないケースが多

く、また、企業活動や労働組合との関係も希薄なため、結局、社会や政治

に参画しているという意識が育ち難いと考えられる。

つまり、こうした定職を持たない層が、今後、社会の重荷となる可能性が極

めて高く、その意味では、これも「失われた 10 年」の負債の一つといえる。

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3.なぜ「定職を持たない若者」が増加したのか

(1)臨時雇用を中心とする生産システムの確立 では、なぜ、このように定職を持たない若者が増加したのか。

その原因の一つは、経済のグローバル化によりわが国の経済が低迷する中、各

企業が生き残りをかけて合理化を推進した結果、パートやアルバイトといった臨

時雇用を中心とする生産システムが確立されたことにある。

総務省の『労働力調査』(1991 年・2004 年)によると、2004 年の総労働力(人

口)は、バブル経済崩壊翌年の 1991 年と変わらない高水準にある。しかし、そ

の中心は正規雇用から臨時雇用にシフトしており、特に、若年労働力においてこ

の傾向が著しい。

また、同調査によると、女性の職場進出も飛躍的に伸びており、このため求職

の絶対数が増加し、正規雇用の競争率が上昇していることも若者の就職難の一因

となっている。

このため若者は仕方なく臨時雇用として就労しており、定職を「持たない」と

いうより「持てない」状況が強くなっている。実際、内閣府の『青少年の社会的

自立に関する意識調査』(2004 年)によると、15~29 歳の臨時雇用で働く者の

64%は正規雇用されることを希望しているという。

(2)若者の意識変化

フリーターが増加したもう一つの原因は、若者自身の意識の変化である。

2000 年に行われた日本労働研究機構(現労働政策研究・研修機構)の『フリ

ーターの意識と実態調査』によると、いわゆるフリーターは次の3つのタイプに

大別される。

① 夢追求型

芸術家や芸能人、あるいはケーキ職人やバーテンダーになるといった、

夢に向かって一時の糊口をしのぐという、昔から存在するタイプである。

② やむを得ず型

正社員や特定の職業、または次の入学時期や就職時期を目指すため、ま

たは本人や家族の病気といったプライベートなトラブルのため、「やむな

く」アルバイトしているというタイプである。

③ モラトリアム型

何となく学校を中退または卒業し、あるいは会社を辞めて、何となくア

ルバイトしているというタイプである。

①や②のタイプはいつの時代にも存在するが、③のタイプは、わが国が豊かに

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なるにつれて発生した比較的新しいタイプである。もともと、モラトリアムとは

借金の返済を「猶予」するという意味の経済用語であるが、1970 年代に、若者

が社会に出ることや大人になることをためらう兆候が顕著となり、彼等が「モラ

トリアム」と呼ばれてから広く知られるようになった言葉である。従って、この

タイプは、まだ職業を持つ決心がつかない若者と考えることができる。

ところが、若者に対する就職支援現場からの報告では、最近の特徴として、本

人は①や②のタイプと思っているが、第三者から見ると③のタイプと思えるよう

なケースが目立つといわれる。つまり、夢や目標に向かっての具体的行動が伴っ

ていなかったり、そもそも夢や目標自体があやふやなため、結局は、何の前進も

ないままズルズルとフリーターを続けてしまう。つまり、社会に出るとか職業を

持つという意識が希薄な若者がどんどん増えているというわけである。 結局、こうした若者側の意識変化が企業側の合理化追求をより加速させた結果、

現在のようなフリーターの増大を招いたと考えられる。

(3)ニートの出現 さらに、こうした若者達の意識変化は、やがてニートを生み出すことになる。 労働政策研究・研修機構の小杉礼子副統括研究員によると、ニートには次の4

つのタイプがあるという。(『ドリコムアイ 2005 冬号特集ニート』日本ドリコム) ⓐ 立ちすくむタイプ

大学は卒業したものの就職に失敗し壁にぶちあたって立ちすくんでしま

うが、壁を乗り越えるだけのものがないため自分探しの旅に入ってしまう。 ⓑ 自信を失うタイプ

就職した職場で失敗し、自分が居ると迷惑をかけると思い辞めてしまう

が、自分が悪いと思っているので次の仕事が探せない。 ⓒ つながりを失うタイプ

ひきこもりを経験したような人で、社会関係が切れて孤立化し、孤立す

ると余計に人間関係がつくれなくなるという悪循環に陥っている。 ⓓ 刹那(せつな)を生きるタイプ

高校の中退者や卒業者に多く、今の瞬間を非常に重視する価値観を持っ

ていて、将来のことは考えられない。 いわば、ⓐとⓑは社会への出発点における失敗、ⓒは社会に出発する前のつま

ずき、ⓓは社会からのドロップアウトといえる。 ⓐの背景としては、就職がインターネットによるエントリー制になり、誰でも

一流企業を受けられるようになったことから、希望企業と学生との間にレベルの

ミスマッチが生じやすくなり、この結果、何社受けても受からないという現実が

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立ちすくみの原因の一つといわれる。また、小さいときから、個性を大切にとか、

夢を持つことが大事と言われて育ったため、社会に出る段になって、自分の個性

にあった職業は何か、自分の夢は何かを明確にしなければという強迫観念も立ち

すくみの原因とされる。

ⓑの背景としては、いまは好景気時に比べるとノルマや残業などの労働条件が

非常に悪化しているが、かといって企業側に新入社員をケアする余裕もなく、ま

た労働組合も無力化する中で若者が孤立し、「働くとはこんなに苦しいことなの

か。自分にはとても勤まらない。」と自信をなくすケースも多いといわれる。

また、ⓒは、義務教育時代から続くケースのほか、ⓐやⓑから移行するケース

も多いとされる。

なお、ⓓは、こうした状況を本能的に察知してか、そうしたレールに乗ること

を最初から回避していると考えられる。

さらに、最近では、こうしたニートの特徴がフリーターにも現れているといわ

れ、今後、ニートがさらに増加する可能性が高まっている。

(4)モラトリアム このように、定職を持たない若者が増加する背景をつぶさに見てくると、若者

の意識の変化は、単に就労の問題だけではなく、その他の生活全般に現れている

ことに気がつく。例えば、言葉やファッションにおける幼児化現象、成人式での

ハシャギ振りなどに見られる社会的常識の欠如、自分の意に添わないと簡単にキ

レルといった忍耐力の欠乏、あるいは、わが子を放置したり虐待するといった親

としての自覚のなさなど、数え上げればきりがない。まさに、そこには、前述し

た、大人になりたくない、あるいは大人になれないモラトリアムの姿が浮かび上

がってくる。

だからといって、若者の甘えや自覚のなさが問題だ、という議論に戻るつもり

はない。問題は、そうした甘えや自覚のなさがどうして生まれたかである。それ

を知るには、まず、大人とは何なのか、若者と青年とはどう違うのか、青年とは

何か、また、そもそも社会が若者の甘えや自覚のなさを責めるからには、社会は

若者に対して何を期待しているのか、といった根本に立ち返って考えてみる必要

がある。

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4.青年の大人への移行停滞が問題

(1)青年とは大人への移行期間

まず、「若者」と「青年」の言葉の違いであるが、どちらも若い人という意味

では違いがない。しかし、「青年」は、明治時代の中頃に、少年と老年の間に位

置する年代として造り出された言葉である。このため、人生の一時期を示す意味

合いが強く、心理学や社会学の用語としても定着している。その意味では、大人

になりきれない若者を論議する場合、概念的には「青年」の方が適している。従

って、以後は、社会的立場を意味する場合は「青年」の語を使う。

そこで、青年とは何かであるが、心理学や社会学では、青年とは「子どもから

大人への移行期にある者」とされる。では、社会は青年に、どんな大人への移行

を期待しているのであろうか。

ここで、大人とは何かについてフリーに論議すればキリがないが、少なくとも

社会としては、その維持のためにも、青年には「社会を維持・運営する一人前の

構成員」へ移行してもらう必要がある。となれば、これまでの社会(少なくとも

明治以降の近代社会)は、「世帯」(独身世帯を含む)を基本構成単位として維持・

運営されてきたこと、また、常に発展的に継続されてきたことを考え合わせると、

社会が青年に期待する一人前の構成員(大人)の要件は、およそ次の3点に集約

できよう。

① 職業人または主婦として独立した世帯を維持・運営できること

② 最低限の社会的常識を有し社会の維持・運営に参画すること

③ 将来とも社会を発展させるだけの適度な数の子どもを生み育てること

すなわち、青年は、職場や家庭で一人前の職業人または主婦になるための訓練

を受け、その結果、独立した世帯を維持・運営するとともに、社会的常識を学習

して社会の一員としての義務を果たしながら、やがては次代を支える子どもを生

み育てることにより、健全な社会を綿々と受け継いでいくことを期待されている。

もちろん、個々の事情から③の要件を満たすことが困難な場合もあるが、これま

では、青年が全体としてその期待に応えてきたことは、現社会の存在そのものが

証明している。

言い換えれば、青年とは、若者が一人前の構成員(大人)としての3つの要件

を獲得するための移行期間であると考えられる。ちなみに、この移行期間を猶予

期間(モラトリアム)と読み替えると、もともと青年そのものがモラトリアムと

いうことになる。となれば、モラトリアムも猶予自体が問題なのではなく、その

期間に大人への移行が停滞していることが問題ということになる。

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(2)移行の停滞

では、どこにどんな停滞が生じているのか。そこで、上記の大人の要件ごとに、

移行の停滞またはそこから生じている問題をあげてみると以下のようになる。

①の要件に関わるものとしては、

・晩婚化や独身志向の拡大

・フリーターやニートといった定職を持たない若者の増加

②の要件に関わるものとしては、

・若者の幼児化や社会的常識の欠如

・政治や社会に無関心な若者の増加

③の要件に関わるものとしては、

・社会の少子化

・親としての自覚の欠如

このうち、最も早くから指摘されたのが「社会の少子化」である。これは社会

経済の根底を揺るがす大問題であることからいち早く取り上げられ、今も単独の

社会問題として対策が講じられている。しかし、上記のように、これは③の要件

である「適度な数の子どもを生み育てる」への移行停滞から生じた問題である。

その少子化の第一原因とされる「晩婚化や独身志向の拡大」は、①の要件の基幹

部分である家族世帯への移行停滞と位置付けられる。また、「定職を持たない若

者の増加」は、①のもう一つの要件である職業人への移行停滞であるが、当然の

ことながら、晩婚化や独身志向の拡大につながっている。従って、少子化は単独

の社会問題ではなく、青年の移行停滞から生じた問題であり、その根底には定職

を持たない若者の問題が深く関わっていることがわかる。

さらに、こうした定職を持たない若者の増加は、②の要件への移行停滞である

「政治や社会に無関心な若者の増加」につながる可能性がある。なぜなら、定職

を持つことにより、健康保険や年金の掛金が給料から源泉されて初めて社会保障

制度なるものを知り、また、企業や組合といった運命共同体の一員として政治や

社会とのつながりを実感できるからである。

一方、②の要件への移行停滞である「若者の幼児化や社会的常識の欠如」、あ

るいは③の要件への移行停滞である「親としての自覚の欠如」は、まさにモラト

リアムで問題とされる「大人になれない」という精神面での移行停滞である。こ

れは、そもそも、大人を目指す存在である青年というものの根本に関わる重大な

問題である。

こうして見ると、大人への移行停滞は、大別すれば「職業人への移行」と「精

神面での移行」に停滞が生じていることがわかる。

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(3)なぜ移行停滞が生じたのか

では、なぜ、これまでは円滑に移行が行われ、今は停滞するのか。

まず、職業人への移行については、これまでは、昭和 30 年代の集団就職に代

表されるように、高校に進学しない中学卒業者は、大人になるため、あるいは家

計を助けるため、当然のように家を出て就職した。やがて、高卒が当たり前にな

れば、大学へ進学しない若者達もまた当然のように就職をした。高度経済成長期

のこの時代、慢性的に人手不足に悩む企業側は、学校(大学)を通じて新卒者を

一括して採用してきたため、学校(大学)はすべての生徒(学生)を対象に、そ

の特性に応じた進路指導を行うことができた。つまり、学校(大学)での進路指

導から企業での新人教育へ移行の流れが確立され、結果として、大人への移行が

円滑に行われたのである。

しかし、今はインターネットや情報誌を通じての就職が当たり前となり、また

企業も手の掛かる新人より即戦力を求めるようになって、従来のような学校(大

学)を通じた新卒一括採用制度は崩壊した。その結果、これまでのような、学校

(大学)と企業が密接につながった移行の流れは消滅したのである。

また、かつての集団就職を思い起こせば、国民全体が貧しさから抜け出そうと

懸命になっていた時代の雰囲気そのものが、働くことに対する大きな動機付けに

なっていたことは疑う余地がない。しかし、世界に冠たる経済大国に成長した現

在、「働かねば」という気持ちを自然に持つことは困難といわねばならない。

一方、精神面での移行については、労働政策研究・研修機構の『労働政策研究

報告書-若者就業支援の現状と課題』(2005)に、ほぼ全員が高校へ進学すると

いう状況の中で、学校への不適応者が目立つようになり、彼等は学校生活に何の

意義も見いだせないばかりか、就職はおろか人生にも意義を感じなくなっている

実態が報告されている。本来は、移行の準備を行うべき学校において、すでに停

滞が始まっているのである。

また、やはり移行の準備を行うべき家庭においても、かつては家事手伝いとい

う進路があったように、曲がりなりにも専業主婦になるための家事やお稽古事と

いった移行準備が行われていた。しかし、いまでは、統計上は家事手伝いが存在

するものの、実際に、そうした準備が行われているとは誰も信じていない。

さらに、地域においても、かつては地蔵盆などの町内行事で、子どもや青年が

大人の振る舞いを間近に見ることによって移行の準備が行われたが、最早、地域

社会が崩壊したといわれて久しい。

こうして、あらゆる移行の仕組みが弱体化もしくは消滅してしまったからには、

移行が停滞するのも当然のことといえる。

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5.青年政策の現状と課題

(1)政策の現状

現在、すでに各方面で青年の移行支援に関する取り組みが行われている。

まず、行政の政策としては、平成 15 年度に政府が『若者自立・挑戦プラン』

を策定し、これに基づいて平成 16 年度に『アクションプラン』を策定、さらに

平成 18 年 1 月にアクションプランの改定を行って、若者の職業的自立を中心と

する政策を推進している。その具体的取り組みとして、①ヤングハローワーク

②ヤングジョブスポット ③ジョブカフェなどの若者就業支援施設が各地に整

備されている。

① ヤングハローワークは、若者向けのハローワークであり、立地や室内デザ

イン、パンフレットなどに若者向けの工夫がなされているが、京都にはない。

② ヤングジョブスポットは、独立行政法人雇用・能力開発機構が運営するも

ので、京都市では京都市中京青少年活動センター内にあり、カウンセリング

から仕事の紹介までキメ細かな支援が行われている。

③ ジョブカフェは、内閣府・経済産業省・厚生労働省・文部科学省の横断的

事業であり、都道府県が運営している。京都府では京都テルサ内にあり、や

はりカウンセリングから仕事紹介までキメ細かな支援が行われている。

一方、民間の取り組みとしては、厚生労働省の委託で各地の民間団体が合宿形

式で生活訓練や労働体験などの事業を実施する「若者自立塾」をはじめ、民間が

単独で行う、ひきこもりの若者に対する訪問とケア、農業体験を活用したニート

のリハビリ、若者を地域の職場に預かってもらうシステムの運営、いろいろな職

業体験の斡旋など、現在、すでに枚挙にいとまがないほど全国各地で多種多様な

活動が展開されている。

(2)政策の課題

このような様々な取り組みにより、すでに政策のメニューは出揃ったともいわ

れるが、これまで見たように、青年問題は、次の3つの基本的課題に集約できる

ほど大きく、また根本的であることを前提に考える必要がある。

① 膨大な数にのぼる定職を持たない若者のすべてに対応する

② 新たに青年となる若者のすべてに対応する

③ 消滅してしまった移行の仕組みを社会的に再構築する

その上で、具体的政策にあたっては、以下の課題を前提に考える必要がある。

ⓐ 大量かつキメ細かな対応と統括的ネットワークの構築

フリーター、ニート、ひきこもりと呼ばれる定職を持たない若者も、それ

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ぞれにタイプがあり、また、その原因も異なるというように、事情や状態は

千差万別とされる。しかも、その人数は膨大なものとなる。

従って、まず、対象となる若者に接触し相談に乗る窓口及びその後のケア

サービスについては、大量かつキメ細かな対応が必要となる。

一方、そうして接触しまたは受け入れた若者が、その窓口やケアサービス

に必ずしも適しているとは限らない。そうした場合でも、直ちに最適な窓口

やケアサービスに引き継げるよう、すべての窓口とケアサービスを相互に結

び、容易に情報交換ができる統括的ネットワークを構築する必要がある。

ⓑ 企業の参加

フリーターやニートあるいはひきこもりの若者に定職を持ってもらうには、

何よりも雇用者である企業の協力が必要である。

一方、これ以上、定職を持たない若者を増やさないためには、臨時雇用は

景気調整ができるとか、正規雇用の方がサービス残業をさせ易いといった、

若者を臨時雇用に追いやり、あるいは過酷な労働でニートに追い込むことに

つながりかねない、企業側のこうした考え方を改めてもらう必要がある。

このため、対策の主要メンバーとして企業の参加が不可欠となる。

ⓒ 学校教育の再構築

定職を持たない若者を新たに生み出さないためには、かつてのように学校

における進路指導をキメ細かく行う必要がある。

また、その準備としての職業教育や、そもそも大人になるという意識の涵

養、あるいは社会人としての常識を教えるといった学校教育は、これまで以

上に重要なものとなる。

このため、学校における進路指導や職業教育、社会教育の再構築をはかる

必要がある。

ⓓ 地域と家庭の参加

教育は単に学校だけが行えばよいというものではなく、特に地域や家庭に

おける実践は何よりの教育となる。

このため、対策全体の中に地域や家庭を取り込む必要がある。

ⓔ 青年自身の参画

青年政策の先進国であるスウェーデンやイギリスでは無業の青年(ニート)

を「社会的に排除された者」と位置付け、そうした青年を社会に参画させる

ため、その政策運営に青年自身を参画させることを重要な柱としている。

わが国でも、青年が社会の維持・運営を担うようになることが最終的な目

標であることを考えると、当然、青年自身の運営参画が不可欠である。

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表-5.1 現状分析から政策課題への流れ

現 状 分 析 政 策 課 題

1.「定職を持たない若者」の増加

2.「定職を持たない若者」の増加は社会の 行く末を危うくする

3.なぜ「定職を持たない若者」が増加したのか

4.青年の大人への移行停滞が問題

基本的課題

臨時雇用を中心とする生産システムの確立

モラトリアム (大人になりたくないという意識)

若者の意識変化 (フリーターの3つのタイプ)

ニートの出現 (ニートの4つのタイプ)

学校→企業という移行の流れが消滅

学校への不適応

家庭における移行訓練機能が消滅

地域における移行訓練機能が消滅

大量かつキメ細かな対応と

統括的ネットワークの構築

52 万人のニート

217 万人のフリーター

(11 年間で2倍以上に増加)

ひきこもりの顕在化

定職を持たない若者の

すべてに対応する

「定職を持たない若者」も、失われた

10 年の負債である

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企業の参加

学校教育の再構築 地域と家庭の参加 青年自身の参画

新たに青年となる若者の

すべてに対応する

基本的課題

基本的課題

消滅してしまった移行の仕

組みを社会的に再構築する

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6.青年の大人への移行を支援するための政策 -京都市青年ネットワークの提案-

(1)目的

・すべての青年が、社会を維持・運営する一人前の構成員(大人)へ円滑に移行で

きること

(2)基本政策

① 青年が大人へ円滑に移行できる新たな仕組みを社会的に再構築する

② すでに大人への移行に停滞する青年が再び円滑な移行に戻れるよう支援する

③ 新たな青年が大人への移行を円滑に行えるよう支援する

(3)取り組み

青年が大人へ円滑に移行できる新たな仕組みを社会的に再構築する取り組み

-京都市青年ネットワークの構成-

① 京都市青年移行支援委員会の設置

・京都市、京都市教育委員会、京都府、京都府教育委員会、商工会議所、

経済同友会、農協、ハローワーク、ジョブカフェ、ヤングジョブスポット、

NPO 団体、大学、専門学校、宗教団体、専門家、地域団体、市民、青年な

どで構成する

・京都市における青年政策の基本方針を検討する

・京都市における進捗状況を評価する

② 地域青年移行支援協議会の設置

・地域内の区役所、学校、大学、専門学校、経済団体、ハローワーク、

青少年活動センター、NPO 団体、宗教団体、専門家、地域団体、市民、

青年などで構成する

・地域における青年政策の具体的対策を検討する

・地域における進捗状況を評価する

③ 地域青年ネットワークセンターの開設

・地域における青年政策の実施本部

・相談窓口、カウンセリング、ケアサービスの紹介、訪問相談

④ 青年アドバイザーの育成

・地域青年ネットワークセンターを拠点に、相談、カウンセリング、リハビ

リ等の活動を行うアドバイザーが大量に必要となることから、そうしたア

ドバイザーの育成をおこなう

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⑤ 青年ネットワーク情報システム

・地域青年ネットワークセンターを中心に協議会メンバーを互いにネットワ

ークし、関係者が連絡や相談・情報検索を行えるとともに、青年自身が気

軽に相談できるインターネットシステムを構築する

地 域 青年移行支援協議会

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

地 域 青年ネットワークセンター

・ 地 域

青年移行支援協議会

京 都 市 青年移行支援委員会

組織のネットワーク

情報システムのネット

図-6.1

・ ・ ・ ・ ・

地 域

青年ネットワークセンター

青年

・ ・ ・ ・ ・ ・

支援団体 支援組織

青年

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

ワーク

京都市青年ネットワークの仕組みイメージ

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移行停滞する青年が再び円滑な移行に戻れるよう支援する取り組み

① 定職を紹介するプログラム

・企業や地元経済界の協力を得て、定職に就きたい青年に職を紹介する

② 働く喜びを知ってもらうプログラム

・ニート等を対象に、NPO 団体や地域団体、あるいは企業や地元経済界等の

協力を得て、働く意欲を呼び覚ますためのケアサービスを提供する

③ 社会復帰を促すプログラム

・ひきこもりを対象に、NPO 団体や地域団体等の協力を得て、社会復帰を促

すためのケアサービスを提供する

④ 社会参画を促すプログラム

・NPO 団体や地域団体等の協力を得て、すべての青年に社会参画の体験をし

てもらう

⑤ 社会の仕組みを学習するプログラム

・NPO 団体や地域団体等の協力を得て、衣食住にわたる社会人としての必要

知識を学習してもらうとともに、それらに関するあらゆる相談に応じる

新たな青年が大人への移行を円滑に行えるよう支援する取り組み

① 学校における移行支援プログラム

・NPO 団体や地域団体等の協力を得て、衣食住にわたる社会人としての必要

知識を学習してもらう

・NPO 団体や地域団体、あるいは企業や地元経済界等の協力を得て、職業体

験をしてもらう

・企業や地元経済界等と密接に協力しながら、生徒の特性に応じたキメ細か

な進路指導を行う

② 地域における移行支援プログラム

・NPO 団体や地域団体等の協力を得て、スポーツや文化活動のサークルをキ

メ細かく用意してもらい、その中で子どもと大人がふれあう機会を増やす

・地域行事の促進をはかることにより、子どもと大人がふれあう機会を増や

していく

③ 家庭における移行支援プログラム

・NPO 団体や専門家等の協力を得て、親としてのあり方を学習してもらう

・NPO 団体や専門家等の協力を得て、親の悩みに対する相談を受ける

④ 社会における移行支援プログラム

・企業における新人教育の充実

・京都市青年ネットワークによる支援

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表-6.1 政策課題から京都市青年ネットワークへの流れ

政 策 課 題 京都市青年ネットワーク

基本的課題

消滅してしまった移行の仕

組みを社会的に再構築する

青年が大人への円滑に移行できる 新たな仕組みを再構築する取り組み

地域青年移行支援協議会

地域青年ネットワークセンター

青年アドバイザー

大量かつキメ細かな対応と

統括的ネットワークの構築

京都市青年移行支援委員会

企業の参加

青年ネットワーク情報システム

学校教育の再構築

定職を紹介するプログラム

移行停滞する青年が再び円滑な移行に戻れる よう支援する取り組み

地域と家庭の参加

働く喜びを知ってもらうプログラム

社会復帰を促すプログラム

青年自身の参画

社会参画を促すプログラム

社会の仕組みを学習するプログラム

定職を持たない若者の

すべてに対応する

基本的課題

基本的課題

新たに青年となる若者の

すべてに対応する

社会における移行支援プログラム

新たな青年が大人への移行を円滑に行える よう支援する取り組み

家庭における移行支援プログラム

地域における移行支援プログラム

学校における移行支援プログラム

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(4)政策の段階的実施

青年政策は、一刻も早く取り組む必要がある一方で、大規模かつ総合的政策で

あることから全容を整えるのに相当な検討と時間を必要とする。このため、その

実現にあたっては、以下のように各取り組みを段階的に実施していく必要がある。

第1段階(1年目)

<仕組みの構築>

・京都市青年移行支援委員会の設立開催

<検討>

・青年問題の実態及び移行支援の必要性の把握

・移行停滞の支援に関するプロジェクトのあり方

・新たな移行停滞予防に関するプロジェクトのあり方

第2段階(2年目)

<仕組みの構築>

・青年ネットワークセンター(中央)の開設

・青年ネットワーク情報システムの構築

・学校における移行支援プログラムの仕組み

<検討>

・京都市青年ネットワークのあり方

第3段階(3年目)

<検討>

・京都市青年ネットワークの評価と修正

・学校における移行支援プログラムの評価と修正

第4段階(4年目以降)

<仕組みの構築>

・地域青年移行支援協議会の設置

・地域青年ネットワークセンターの開設

<検討>

・地域における青年移行支援の取り組みに対する評価と修正

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表-6.2 京都市青年ネットワークの段階的実施一覧表

段階 実施する仕組み イ メ ー ジ 図

・京都市青年移行支援委員会

の設置

(支援団体・組織は既存のものを想定)

・青年ネットワークセンター

(中央)の開設

・青年ネットワーク情報シス テムの構築

(支援団体・組織の新設充実を想定)

・新たな仕組みはなし

(仕組みの定着を図る)

・地域青年移行支援協議会の

設置

・青年ネットワーク情報シス テムの拡充

京都市青年移行支援委員会

第一段階(1年目) 支援団体

支援組織 支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

青年ネットワークセンター

京都市青年移行支援委員会

第二段階(2年目)

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

青年ネットワークセンター

京都市青年移行支援委員会

第三段階(3年目)

地域青年移行支援協議会 地域青年移行支援協議会 ・・・・・・・・・・・

青年ネットワークセンター 地域

青年ネットワークセンター 地域

青年ネットワークセンター

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

支援団体 支援組織

京都市青年移行支援委員会

第四段階(4年目以降)

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