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2. 資源メジャー 5 社の動向 2014 年度通期( 1 12 月)における 資源メジャー 社の 鉱物生産量は、鉄鉱石が過去最 高を記録した事を除けば、総じて前年並み 結果となった。非鉄金属では鉱石品位 低下 やリストラ(売却、休山)、事故による生産量 減少を生産性 改善や新規、拡張案件 ランプアップによる増産が補っている状況にある。代表的な鉱種別にみると、銅は Glencore Katanga Muanda DR コンゴ)、 Vale (伯 Salobo )、 Rio Tinto (モンゴル Oyu Tolgoi 新規・拡張 ランプアップが大きく伸びたが、南米を中心とする鉱石品位 低下が全体 伸びを抑制した。鉛、亜鉛も同様 と言えるが、新規・拡張は件数、 生産量ともに少数であり、鉱石品位 低下や閉山によるマイナス分を埋めきれずに純減と なっている。ニッケルは鉱石品位 低下と事故による生産停止が足を引っ張っている。プ ラチナ等は長引いたストライキにより、大幅な減産となった。また、石炭は生産性 改善 による増加がみられる一方で、年 中頃から後半にかけて大規模な休山や売却計画が相次 いで発表されており、 2015 年度は大きな減少が見込まれる。 中国や欧州を中心とする鈍い 資源 需要による価格下落は底が見えず、ついには鉄鉱石と 銅にまで顕著な影響を及ぼしている。特に鉄鉱石 価格は年初から半値に急落し、各 社の 収益 柱を直撃している。ここ数年間に渡る石炭価格 低迷も含め、3 大 コ モ デ ィ テ ィ( 鉄 鉱石・銅・石炭)ネガティブな成長は、2011 2012 年度以降に各 が進めてきたポ フォリオ 見直しを再び加速させるトリガ となった。 2015 年四半期レポ トより一部修正して再掲載) 1-1 要な 資源 価格 長期 推移 2013 1 1 =1 とした 次価格) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 01/01/2010 03/26/2010 06/18/2010 09/10/2010 12/03/2010 02/25/2011 05/20/2011 08/12/2011 11/04/2011 01/27/2012 04/20/2012 07/13/2012 10/05/2012 12/28/2012 03/22/2013 06/14/2013 09/06/2013 11/29/2013 02/21/2014 05/16/2014 08/08/2014 10/31/2014 01/23/2015 04/17/2015 07/10/2015 10/02/2015 12/25/2015 LME-Copper Grade A Cash ($/tonne) LME-SHG Zinc 99.995% Cash ($/tonne) LME-Lead Cash ($/tonne) LME-Nickel Cash ($/tonne) Gold Bullion LBM ($/oz) London Platinum Free Market ($/oz) LME-Aluminium 99.7% Cash ($/tonne) 資源メジャー・金属部門の動向調査 2015 - 4 - 2. 出所:LMELBMALPPM 等のデータを基に JOGMEC 作成

2. 資源メジャー 5 社の動向 用語mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/report/...Glencore( Katanga、 Muanda :DRコンゴ)、Vale (伯Salobo )、Rio

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用語

紙面やグラフ等のスペースの都合により、商品名や事業名に略語を用いる場合もある。

下記はその一覧である。

【略語一覧】

O&G ....................... Oil/原油、Gas/ガスのどちらか、もしくは両方

Coal ........................ 以下のどちらか、もしくは両方 Thermal Coal/一般炭もしくは燃料炭(発電用) Metallurgical Coal/原料炭(製鉄原料)

Mn .......................... Manganese/マンガン(鉱石をさす場合もある)

Al ............................ 以下のどれか、もしくは全て Bauxite/ボーキサイト Alumina/アルミナ Aluminium/アルミニウム(米国表記では Aluminum)

Cu ........................... Copper/電気銅(銅地金)もしくは銅精鉱

Zn+Pb ..................... Zinc/鉛地金および Lead/亜鉛(ともに精鉱を含む)

Ni ............................ Nickel/ニッケルおよびその鉱石

PGM ....................... 以下の貴金属およびその他の総称 Pt : Platinum/プラチナ Pd : Palladium/パラジウム Rh : Rhodium/ロジウム

Au+Ag .................... Au : Gold/金、Ag : Silver/銀

Ind. Minerals .......... Industrial Minerals ホウ素、ミネラルサンドなどの工業用原料

Alloys ..................... ニッケル、クロム、マンガンなどの合金鉄類

Fert. Products ......... Fertilizer Products 窒素、リン、カリの肥料製品等

(注)本報告書における年次データに関して、財務データについては各社の会計年度を採

用し、生産データについては暦年(1~12 月)を採用している。

2. 資源メジャー5 社の動向

2014年度通期(1〜12月)における資源メジャー各社の鉱物生産量は、鉄鉱石が過去最

高を記録した事を除けば、総じて前年並みの結果となった。非鉄金属では鉱石品位の低下

やリストラ(売却、休山)、事故による生産量の減少を生産性の改善や新規、拡張案件の

ランプアップによる増産が補っている状況にある。代表的な鉱種別にみると、銅は

Glencore(Katanga、Muanda:DRコンゴ)、Vale(伯Salobo)、Rio Tinto(モンゴル

Oyu Tolgoi)の新規・拡張のランプアップが大きく伸びたが、南米を中心とする鉱石品位

の低下が全体の伸びを抑制した。鉛、亜鉛も同様の傾向と言えるが、新規・拡張は件数、

生産量ともに少数であり、鉱石品位の低下や閉山によるマイナス分を埋めきれずに純減と

なっている。ニッケルは鉱石品位の低下と事故による生産停止が足を引っ張っている。プ

ラチナ等は長引いたストライキにより、大幅な減産となった。また、石炭は生産性の改善

による増加がみられる一方で、年の中頃から後半にかけて大規模な休山や売却計画が相次

いで発表されており、2015年度は大きな減少が見込まれる。

中国や欧州を中心とする鈍い資源需要による価格下落は底が見えず、ついには鉄鉱石と

銅にまで顕著な影響を及ぼしている。特に鉄鉱石の価格は年初から半値に急落し、各社の

収益の柱を直撃している。ここ数年間に渡る石炭価格の低迷も含め、3大コモディティ(鉄

鉱石・銅・石炭)のネガティブな成長は、2011/2012年度以降に各社が進めてきたポート

フォリオの見直しを再び加速させるトリガーとなった。

(2015 年四半期レポートより一部修正して再掲載)

図 1-1 主要な資源価格の長期推移( 2013 年 1 月 1 日 =1 とした日次価格)

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Iron Ore 62% China Imp CFR ($/tonne) LME-Copper Grade A Cash ($/tonne)LME-SHG Zinc 99.995% Cash ($/tonne) LME-Lead Cash ($/tonne)LME-Nickel Cash ($/tonne) Gold Bullion LBM ($/oz)London Platinum Free Market ($/oz) LME-Aluminium 99.7% Cash ($/tonne)

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2014

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LME-Copper Grade A Cash ($/tonne)LME-SHG Zinc 99.995% Cash ($/tonne)LME-Lead Cash ($/tonne)LME-Nickel Cash ($/tonne) Gold Bullion LBM ($/oz)London Platinum Free Market ($/oz) LME-Aluminium 99.7% Cash ($/tonne)

資源メジャー・金属部門の動向調査 2015 - 4 -

2.

資源メジャー5社

の動向

出所:LME、LBMA、LPPM 等のデータを基に JOGMEC 作成

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用語

紙面やグラフ等のスペースの都合により、商品名や事業名に略語を用いる場合もある。

下記はその一覧である。

【略語一覧】

O&G ....................... Oil/原油、Gas/ガスのどちらか、もしくは両方

Coal ........................ 以下のどちらか、もしくは両方 Thermal Coal/一般炭もしくは燃料炭(発電用) Metallurgical Coal/原料炭(製鉄原料)

Mn .......................... Manganese/マンガン(鉱石をさす場合もある)

Al ............................ 以下のどれか、もしくは全て Bauxite/ボーキサイト Alumina/アルミナ Aluminium/アルミニウム(米国表記では Aluminum)

Cu ........................... Copper/電気銅(銅地金)もしくは銅精鉱

Zn+Pb ..................... Zinc/鉛地金および Lead/亜鉛(ともに精鉱を含む)

Ni ............................ Nickel/ニッケルおよびその鉱石

PGM ....................... 以下の貴金属およびその他の総称 Pt : Platinum/プラチナ Pd : Palladium/パラジウム Rh : Rhodium/ロジウム

Au+Ag .................... Au : Gold/金、Ag : Silver/銀

Ind. Minerals .......... Industrial Minerals ホウ素、ミネラルサンドなどの工業用原料

Alloys ..................... ニッケル、クロム、マンガンなどの合金鉄類

Fert. Products ......... Fertilizer Products 窒素、リン、カリの肥料製品等

(注)本報告書における年次データに関して、財務データについては各社の会計年度を採

用し、生産データについては暦年(1~12 月)を採用している。

2. 資源メジャー5 社の動向

2014年度通期(1〜12月)における資源メジャー各社の鉱物生産量は、鉄鉱石が過去最

高を記録した事を除けば、総じて前年並みの結果となった。非鉄金属では鉱石品位の低下

やリストラ(売却、休山)、事故による生産量の減少を生産性の改善や新規、拡張案件の

ランプアップによる増産が補っている状況にある。代表的な鉱種別にみると、銅は

Glencore(Katanga、Muanda:DRコンゴ)、Vale(伯Salobo)、Rio Tinto(モンゴル

Oyu Tolgoi)の新規・拡張のランプアップが大きく伸びたが、南米を中心とする鉱石品位

の低下が全体の伸びを抑制した。鉛、亜鉛も同様の傾向と言えるが、新規・拡張は件数、

生産量ともに少数であり、鉱石品位の低下や閉山によるマイナス分を埋めきれずに純減と

なっている。ニッケルは鉱石品位の低下と事故による生産停止が足を引っ張っている。プ

ラチナ等は長引いたストライキにより、大幅な減産となった。また、石炭は生産性の改善

による増加がみられる一方で、年の中頃から後半にかけて大規模な休山や売却計画が相次

いで発表されており、2015年度は大きな減少が見込まれる。

中国や欧州を中心とする鈍い資源需要による価格下落は底が見えず、ついには鉄鉱石と

銅にまで顕著な影響を及ぼしている。特に鉄鉱石の価格は年初から半値に急落し、各社の

収益の柱を直撃している。ここ数年間に渡る石炭価格の低迷も含め、3大コモディティ(鉄

鉱石・銅・石炭)のネガティブな成長は、2011/2012年度以降に各社が進めてきたポート

フォリオの見直しを再び加速させるトリガーとなった。

(2015 年四半期レポートより一部修正して再掲載)

図 1-1 主要な資源価格の長期推移( 2013 年 1 月 1 日 =1 とした日次価格)

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Iron Ore 62% China Imp CFR ($/tonne) LME-Copper Grade A Cash ($/tonne)LME-SHG Zinc 99.995% Cash ($/tonne) LME-Lead Cash ($/tonne)LME-Nickel Cash ($/tonne) Gold Bullion LBM ($/oz)London Platinum Free Market ($/oz) LME-Aluminium 99.7% Cash ($/tonne)

資源メジャー・金属部門の動向調査 2015- 5 -

2.

資源メジャー5社

の動向

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表 2-0-1 報告セグメントの分類⽅法

-B:量的基準 -

以下の要件のいずれかに該当する場合、その事業セグメントは報告セグメントとして認

識しなければならない。

・当該セグメントの売上高(部門間の売上高を含む)が、全てのセグメントの売上高の 10%

を超える場合

・当該セグメントの税引き後損益の絶対値が以下のどちらか大きい額の 10%を超える場合

i. 利益が生じている全ての事業セグメントの利益の合計額

ii. 損失が生じている全ての事業セグメントの損失の合計額の絶対値

・当該セグメントの資産が、全セグメントの資産合計の 10%以上

ただし、上記によって報告セグメントに分類された売上(外部売上)の合計が全体の 75%

に達しない場合、量的基準を満たしていない事業セグメントを既存の報告セグメントに追

加するか、または量的基準を満たしていない事業セグメントを結合して、報告セグメント

とする。つまり、「その他」の報告セグメントにおける外部売上高は 25%を超えてはいけ

ない、というルールである。

表 2-0-1 および図 2-0-1 を用いて、報告セグメントの決定について、具体的に説明する。

【事業セグメントについて】(前年度版を再掲載)

国際会計基準 IFRS にて求められている事業の内容毎にその業績と経営資源の内訳の開

示の内訳単位である「セグメント」の定義について以下触れておく。

セグメントは、企業が業績管理を目的として内部使用する「事業セグメント」、および

その内部用の事業セグメントを決算データとして外部に開示する際の「報告セグメント」

に分類され、それぞれに IFRS が定める基準がある。

1. 事業セグメントの決定

以下の要件のすべてに該当する場合、事業セグメントとして認識できる(ただし、未だ

収益獲得に至っていない立ち上げ中の事業が事業セグメントに該当する場合もある)。

・当該事業活動が費用を負担し、収益を得ている事

・当該事業活動の最高意思決定者 1が、そのセグメントに配分する経営資源に関する意思決

定を行い、また定期的にその業績評価を行っている事

・当該事業活動に関して、独立した財務情報が入手可能である事

2. 報告セグメントの決定

報告セグメントは決算データとして外部に開示される際の単位であり、 IFRS の定める

(A)集約基準および(B)量的基準に従い、事業セグメントを報告セグメントに分類する。

-A:集約基準 2-

以下の要件のすべてに該当する場合、複数の事業セグメントを 1 つの事業セグメントに

集約できる。

・製品及びサービスの性質

・生産過程の性質

・当該製品及びサービスの顧客の類型又は種類

・当該製品を配送し又は当該サービスを提供するために使用する方法

・業種に固有の規制環境が存在する(銀行、保険、公共事業など)

単独の事業セグメントまたは集約基準によって 1 つにまとめられた事業セグメントは、

B の量的基準に従って、報告セグメントへの分類を行う。

1 最 高 意 思 決 定 者 とは CEO や COO などの特 定 の肩 書 を有 する経 営 者 を指 すものでは無 い。従 い、経 営 会 議 や

取 締 役 会 などのグループを指 す場 合 もあれば、カンパニー制 の企 業 の場 合 はカンパニープレジデント、事 業 部 制 の

場 合 は事 業 部 長 などの個 人 を指 す場 合 もある。2 新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人 「IFRS ポイント講 座 :第 14 部 事 業 セグメント 」から抜 粋 。

資源メジャー・金属部門の動向調査 2015 - 6 -

2.

資源メジャー5社

の動向

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表 2-0-1 報告セグメントの分類⽅法

-B:量的基準 -

以下の要件のいずれかに該当する場合、その事業セグメントは報告セグメントとして認

識しなければならない。

・当該セグメントの売上高(部門間の売上高を含む)が、全てのセグメントの売上高の 10%

を超える場合

・当該セグメントの税引き後損益の絶対値が以下のどちらか大きい額の 10%を超える場合

i. 利益が生じている全ての事業セグメントの利益の合計額

ii. 損失が生じている全ての事業セグメントの損失の合計額の絶対値

・当該セグメントの資産が、全セグメントの資産合計の 10%以上

ただし、上記によって報告セグメントに分類された売上(外部売上)の合計が全体の 75%

に達しない場合、量的基準を満たしていない事業セグメントを既存の報告セグメントに追

加するか、または量的基準を満たしていない事業セグメントを結合して、報告セグメント

とする。つまり、「その他」の報告セグメントにおける外部売上高は 25%を超えてはいけ

ない、というルールである。

表 2-0-1 および図 2-0-1 を用いて、報告セグメントの決定について、具体的に説明する。

【事業セグメントについて】(前年度版を再掲載)

国際会計基準 IFRS にて求められている事業の内容毎にその業績と経営資源の内訳の開

示の内訳単位である「セグメント」の定義について以下触れておく。

セグメントは、企業が業績管理を目的として内部使用する「事業セグメント」、および

その内部用の事業セグメントを決算データとして外部に開示する際の「報告セグメント」

に分類され、それぞれに IFRS が定める基準がある。

1. 事業セグメントの決定

以下の要件のすべてに該当する場合、事業セグメントとして認識できる(ただし、未だ

収益獲得に至っていない立ち上げ中の事業が事業セグメントに該当する場合もある)。

・当該事業活動が費用を負担し、収益を得ている事

・当該事業活動の最高意思決定者 1が、そのセグメントに配分する経営資源に関する意思決

定を行い、また定期的にその業績評価を行っている事

・当該事業活動に関して、独立した財務情報が入手可能である事

2. 報告セグメントの決定

報告セグメントは決算データとして外部に開示される際の単位であり、 IFRS の定める

(A)集約基準および(B)量的基準に従い、事業セグメントを報告セグメントに分類する。

-A:集約基準 2-

以下の要件のすべてに該当する場合、複数の事業セグメントを 1 つの事業セグメントに

集約できる。

・製品及びサービスの性質

・生産過程の性質

・当該製品及びサービスの顧客の類型又は種類

・当該製品を配送し又は当該サービスを提供するために使用する方法

・業種に固有の規制環境が存在する(銀行、保険、公共事業など)

単独の事業セグメントまたは集約基準によって 1 つにまとめられた事業セグメントは、

B の量的基準に従って、報告セグメントへの分類を行う。

1 最 高 意 思 決 定 者 とは CEO や COO などの特 定 の肩 書 を有 する経 営 者 を指 すものでは無 い。従 い、経 営 会 議 や

取 締 役 会 などのグループを指 す場 合 もあれば、カンパニー制 の企 業 の場 合 はカンパニープレジデント、事 業 部 制 の

場 合 は事 業 部 長 などの個 人 を指 す場 合 もある。2 新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人 「IFRS ポイント講 座 :第 14 部 事 業 セグメント 」から抜 粋 。

資源メジャー・金属部門の動向調査 2015- 7 -

2.

資源メジャー5社

の動向

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1. 事業 A は売上、税後損益、資産の全てで 10%超のシェアを持つので、単独で報告

セグメントに分類される。

2. 事業 B は税後損益および資産で 10%超のシェアを持つので、単独で報告セグメン

トに分類される。

3. 事業 E は税後損益で 10%超のシェアを持つので、単独で報告セグメントに分類さ

れる。

4. 事業 C、D、F は売上、税後損益、資産のいずれも 10%超のシェアを持つ項目が無

いために、その他に分類される。

5. ただし、単独の報告セグメントの外部売上の合計シェアは 74.5%で、75%を超えて

いないので、事業 C、D、F のうちから、外部売上の最も高い事業 C を単独の報告

セグメントに加える。これにより、単独の報告セグメントの外部売上の合計シェ

アが 84%となり、単独の報告セグメントが確定した。

6. 残る事業 D および事業 F はあわせて、「その他」の報告セグメントとして分類する。

なお、「量的基準」は、その基準を満たさない「事業セグメント」を単独の「報告セグメ

ント」として開示することを妨げるものではない。「量的基準」の意義は、あくまでも、そ

の基準を満たす「事業セグメント」について、「報告セグメント」として開示する事を義務

付けている点にある。つまり、上記の説明では、その他の報告セグメントに分類した事業

D および F は、それぞれ、単独で報告セグメントとして開示する事が可能であり、もし、

それらが集約できる場合は、集約した状態の報告セグメントとして扱う事も可能である。

図 2-0-1 はこれをフローチャートで表したものである。

資源メジャー・金属部門の動向調査 2015 - 8 -

2.

資源メジャー5社

の動向

Page 6: 2. 資源メジャー 5 社の動向 用語mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/report/...Glencore( Katanga、 Muanda :DRコンゴ)、Vale (伯Salobo )、Rio

量的

基準

を満

たさ

ない

事業

セグ

メン

トに

つい

ても

、「

報告

セグ

メン

ト」

とし

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示可

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基準

はそ

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務を

要求

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たさ

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ので

無い

図2-0-1 

報告

セグ

メン

トの

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フロ

ーチ

ャー

資源メジャー・金属部門の動向調査 2015- 9 -

2.

資源メジャー5社

の動向