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最終更新:2020 年 1 月 31 日
2 単一粒子の運動
2.1 はじめに
プラズマのダイナミクスはMaxwell方程式と荷電粒子の運動から自己無撞着に理解されるべきものである.こ
こではまずは与えられた電磁場のもとでの荷電粒子の運動を考える.
以下では非相対論的な荷電粒子の運動方程式
dx
dt= v,
dv
dt=
q
m(E + v ×B)
を用いて荷電粒子の運動を考える.
2.2 ジャイロ運動
E = 0 および B = Bez とすると運動方程式は簡単に解けてvx = −v⊥ cosΩct
vy = +v⊥ sinΩct
vz = v∥
x = −rg sinΩct+ x0
y = −rg cosΩct+ y0
z = v∥t+ z0
を得る.
Ωc =qB
mジャイロ周波数
rg =v⊥Ωc
ジャイロ半径
ジャイロ運動,サイクロトロン運動,ラーモア運動など呼び方は様々.
また,ピッチ角 α を
tanα =v⊥v∥
と定義する.
2.3 断熱不変量
一般化座標 (p, q) について,運動が周期的な場合には
J =
∮pdq (1)
なる量は断熱不変量と呼ばれ,運動の周期に比べて十分ゆっくりと外部パラメータを変化させた時に J ≈ const.
が成り立つ.
荷電粒子のジャイロ運動について考えると
J1 =2πm
q
mv2⊥2B
≡ 2πm
qµ
となる.上式で定義された µ を第 1断熱不変量または磁気モーメントと呼ぶ.
1
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図 1: 磁気ボトル形状
ジャイロ運動に対して十分ゆっくりと磁場強度を変化させると µ を保存するように磁場に対して垂直方向のエネ
ルギーW⊥ = mv2⊥/2 が変化する.(平行方向のエネルギーW∥ = mv2∥/2 は変化しない.)
2.4 磁気ミラー力とバウンス運動
E = 0 のまま磁場形状として図 1のような時間的に定常な「磁気ボトル」形状を考える.
電場が無いのでエネルギーは保存する.
ϵ =1
2mv2∥ +
1
2mv2⊥ = const.
微分して
mv∥dv∥
dt= −µ
dB
dt
= µ
(∂B
∂t+ (v · ∇)B
)≈ µv∥(b · ∇)B (ジャイロ半径≪空間スケール)
(2)
ここで b は磁場の単位ベクトル.
磁力線方向に座標 s をとれば b · ∇B = ∂B/∂s.
結局
mdv∥
dt= −µ
∂B
∂s︸ ︷︷ ︸磁気ミラー力
となり,荷電粒子は磁場が強い方から弱い方に向かって実効的な力を受ける.
(ただし仕事はしない.エネルギーは保存していることに注意.)
2.4.1 バウンス運動とミラー点
磁気ボトルのような磁場形状のもとでは荷電粒子が磁気ミラー力を受け,ある点において反射される場合があ
る.この反射点をミラー点と呼び,2つのミラー点間の周期運動をバウンス運動と呼ぶ.
以下では磁場が最小となる点における量を下付き添え字 0 で表す.
エネルギー保存則
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1
2mv2∥,0 + µB0 = µBm (Bmはミラー点での磁場強度)
を使うとピッチ角とミラー点の関係として
sinα0 =
√B0
Bm(3)
を得る.これはエネルギーには依存しないことに注意.
2.4.2 第 2断熱不変量
J2 =
∮mv∥ds ∼ mv∥l (lはミラー点間の磁力線に沿った距離)
は十分ゆっくり l を変化させたときに保存する.
l →小 のとき v∥ →大 となり粒子は加速される.(フェルミ加速)
地球磁気圏のような双極子磁場中ではピッチ角の大きな荷電粒子は長時間捕捉され,ピッチ角の小さい粒子は
大気に衝突して失われる.→この結果として出来る分布をロスコーン分布と呼ぶ.
2.5 ドリフト運動
荷電粒子は基本的に磁力線に沿って運動するが,磁場の空間不均一がある場合などにはゆっくりと磁力線を横
切った運動をする.これをドリフト運動と呼ぶ.
2.5.1 電場ドリフト
一様な電場および磁場中 (E = Eey および B = Bez) での運動を考える.vx = +Ωcvy
vy = −Ωcvx + qmE
これは簡単に解けて vx = −v⊥ cosΩct+EB
vy = +v⊥ sinΩct
従って周期的なジャイロ運動に加えて一定の速さ vE = E/B で x方向に運動.この運動を電場ドリフト,または
E ×B ドリフトと呼ぶ.
これをベクトル形式で書くと
vE =E ×B
B2
となる.
⋄ 電場ドリフトは電荷,質量,エネルギーなどの物理量に依存しない.⋄ これは電場ドリフトがローレンツ変換に由来するため.⋄ MHDの速度は電場ドリフトに対応する.
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図 2: E ×B ドリフト
2.5.2 一般の力によるドリフト
qE の代わりに F とすると電場ドリフトの導出と全く同様にして
vF =F ×B
qB2
を得る.これは電荷に依存することに注意.
たとえば一様なプラズマに重力をかけると電子とイオンが逆方向にドリフトし電流が発生する.
2.5.3 磁場勾配ドリフト
E = 0 かつ B = B(y)ez (すなわち∇B ∥ ey )
粒子が感じるローレンツ力は
Fx = +qvyB Fy = −qvxB
ここで v と共に粒子の感じる B(y) もジャイロ運動に伴って変動することに注意.
ジャイロ半径が磁場勾配の空間スケールに対して十分小さければ
B ≈ B(y0) +∂B
∂y
∣∣∣∣y=y0
(y − y0)
としてよい.y0 はジャイロ運動の中心の座標である.
これを用いて粒子の感じる力をジャイロ運動の周期で平均化すると
⟨Fx⟩ = 0 ⟨Fy⟩ = −1
2mv2⊥
1
B
∂B
∂y= −µ
∂B
∂y(4)
ただし
⟨A⟩ ≡ Ωc
2π
∫ 2π/Ωc
0
Adt
である.
粒子は磁場勾配によって実効的な力を感じてドリフト運動する.
vG =µ
q
B ×∇B
B2(5)
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図 3: 有限の曲率を持った磁場
これを磁場勾配ドリフトと呼ぶ.これは磁場勾配によって粒子に実行的な力
⟨F ⟩ = −µ∇B
が働くことを意味する.
これは磁気ミラー力と同じ形をしており,磁場が強い領域から弱い領域に粒子を押し出そうとする力に相当.
このような効果を反磁性効果と呼ぶ.
(ただし本当の意味で力が働いているわけではないので,電場がなければ粒子のエネルギーは保存する.)
2.5.4 磁場曲率ドリフト
荷電粒子のジャイロ半径が十分小さいと仮定すると,粒子は基本的には磁力線に沿って運動する.
従って磁力線が曲がっている場合には遠心力を感じる.
曲がった磁力線を局所的に円弧で近似し,その半径を Rc とすると遠心力は
Fc = −mv2∥
Rcec
で与えられる.ただし ec は円の中心に向かう単位ベクトル.
この遠心力によって粒子はドリフト運動する.
vC =mv2∥
qB
B × ecBRc
=mv2∥
qBb× (b · ∇)b (6)
これを磁場曲率ドリフトと呼ぶ.
ただし以下の曲率ベクトル κ と磁力線方向の単位ベクトル b の間の関係式
κ ≡ ecRc
= (b · ∇)b
を用いた.
2.5.5 分極ドリフト
磁場は一様かつ一定とし,電場のみがジャイロ周期に対して十分ゆっくりと時間変化する場合を考える.
運動方程式に磁場の外積をとれば
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E ×B
B2− m
qB2
dv
dt×B = −b× (b× v)
= (I − bb) · v =速度の垂直成分
ここで速度を電場ドリフトとジャイロ運動に分解し,ジャイロ周期で平均をとれば
⟨v⊥⟩ = vE − m
qB2
dvEdt
×B
となる.第 1項は電場ドリフト.第 2項の
vP =m
qBb× dvE
dt(7)
は分極ドリフトと呼ばれる.
2.5.6 ドリフト運動のまとめ
名前 実効的な力 ドリフト速度 備考
電場ドリフト qE (電場) E×BB2 電荷や質量によらない
磁場勾配ドリフト −µ∇B (反磁性効果)mv2
⊥2qB b×∇ lnB 垂直エネルギーに比例
磁場曲率ドリフト −mv∥(b · ∇)b (遠心力)mv2
∥qB b× (b · ∇)b 平行エネルギーに比例
分極ドリフト −mdvE
dt (慣性力) mqB b× dvE
dt 質量に比例
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⋄ 個々の荷電粒子の速度を v ∼ v⊥ ∼ v∥ とし,磁場の空間勾配のスケールを L (すなわち 1/L ∼ ∇ lnB )と
すると
vGv
∼ vCv
∼ rgL
となる.近似の前提条件から rg ≪ L なのでドリフト速度は v に比べて非常に小さい.
⋄ 分極ドリフトの場合は時間変化のスケールを T とすれば
vPv
∼ vE/Ωc
L
L/T
v
程度であり,通常は v に比べて非常に小さい.
⋄ 電場ドリフトについては E/B < c を満たしている限りは任意.
2.5.7 第 3断熱不変量
磁気ボトルや双極子磁場のように軸対称な磁場中では粒子のドリフト軌道は閉じる.(図 1参照)
ジャイロ運動に対して定義された第 1断熱不変量は
J1 ∝ πr2gB
と書き表され,これはジャイロ運動が囲む領域を貫く磁束に対応している.
ドリフト運動についても空間スケールの小さいジャイロ運動について疎視化して考えれば同様に
J3 =
∫B · dS =
∫ R
0
2πrB(r)dr
が保存する.これを第 3断熱不変量と呼ぶ.ただし R はドリフト軌道の対称軸からの距離である.
2.6 荷電粒子の運動のまとめ
軸対称な磁場のもとでは荷電粒子は図 4に示すような 3つの周期運動をし,それぞれに対して断熱不変量が定
義できる.
微小パラメータを ϵ = rg/L ≪ 1 と定義すると,3つの運動の時間スケールがそれぞれ ϵ のオーダーだけ異なる.
従って第 1断熱不変量は最も保存されやすく,逆に第 3断熱不変量は最も保存されにくい.
対応する運動 時間スケール
第 1断熱不変量 ジャイロ運動 ΩcT ∼ 1
第 2断熱不変量 バウンス運動 ΩcT ∼ ϵ−1
第 3断熱不変量 ドリフト運動 ΩcT ∼ ϵ−2
地球磁場を双極子
B = BE
(RE
r
)3
(−2 sinλer + cosλeλ)
で近似する.(ここで λは緯度を表す.)
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図 4: 荷電粒子の 3つの周期運動
図 5: 地球磁気圏における典型的な運動の周期
このときピッチ角 90度 (v∥ = 0) の粒子を考えると磁場勾配ドリフトは
vG,ϕ = −3µ
q
1
r(8)
となり,µ = const.とすると地球に近いほど磁場勾配ドリフトは速くなる.(この傾向は磁場曲率ドリフトを考え
ても同様.)
このときドリフトの方向が電荷に依存することに注意.地球の場合は正電荷は西向き,負電荷は東向きにドリフ
トする.
3つの周期運動の地球磁気圏における典型的な時間スケールは図 5のようになる.
2.7 荷電粒子が作る電流と電磁流体力学 †
2.7.1 ドリフトが作る電流
電荷によってドリフトの向きが異なるときには電流が発生する.多数の粒子の平均的なドリフトが電流を担う.
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⋄ 磁場勾配ドリフト式 5 の平均を求めればよい.ここで以下に注意する.⟨
1
2mv2⊥
⟩=
⟨1
2mv2x +
1
2mv2y
⟩=
1
2nmv2th,⊥ × 2 = P⊥
ここで nは数密度,vth,⊥ は磁力線垂直方向の熱速度,P⊥ は磁力線垂直方向の圧力.
従って電流は
JG = ⟨qsvG,s⟩
=
⟨qs
1
2msv
2⊥
1
qsBb× ∇B
B
⟩=
P⊥
Bb× ∇B
B
⋄ 磁場曲率ドリフト式 6についても同様に平均を取る.
JC = ⟨qsvC⟩
=
⟨qs msv
2∥
1
qsBb× (b · ∇)b
⟩=
P∥
Bb× (b · ∇)b
ここで
⟨mv2∥
⟩= P∥
は磁力線平行方向の圧力.
⋄ 分極ドリフト式 7より
JP = ⟨qs, vP ⟩
=
⟨qs
ms
qsBb× dvE
dt
⟩=
ρ
Bb× dvE
dt
ここで
ρ = ⟨ms⟩
は質量密度.
2.7.2 ジャイロ運動が作る電流(磁化電流)
電磁気学の一般論: 磁化 M を持つ物質中では磁化の回転に伴う磁化電流 JM = ∇×M が流れる.
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荷電粒子の磁気モーメントは第 1断熱不変量 µを用いて−µbと書ける.これを全粒子について足し合わせれば
よいので
M =∑s
⟨(−µb)⟩ = −P⊥
Bb
従って磁化電流は
JM = ∇×M
= −∇P⊥ × b
B− P⊥
Bb× ∇B
B− P⊥
B∇× b
2.7.3 運動方程式
∇×B = µ0J より
1
µ0(∇×B)×B = J ×B
= [JB + JC + JP + JM ]×B
=
[ρdvEdt
+∇P⊥ + (P∥ − P⊥)(b · ∇)b
]⊥
これより磁力線に垂直成分
ρdvEdt
=1
µ0(∇×B)×B −∇P⊥ + (P⊥ − P∥)(b · ∇)b
= −∇(P⊥ +
B2
2µ0
)+
(1 +
P⊥ − P∥
B2/µ0
)(B · ∇)B
µ0
(9)
を得る.
これだけからは磁力線平行方向については何も言えないが,形式的に圧力勾配力 −∇P が平行方向にも働くと
仮定すると電磁流体力学の運動方程式と等価な方程式となる.ここで電場ドリフト vE が流体的な速度となる.
2.8 地球磁気圏における粒子の輸送
2.8.1 Dungeyの開いた磁気圏モデル
太陽風の磁場(惑星間空間磁場)が南向きのとき
(1) 地球磁気圏と太陽風の昼側境界(磁気圏界面)に反平行な磁場計上ができる
(2) 磁気リコネクションが発生
(3) 地球につながった磁力線が尾部に運ばれる
(4) 尾部に反平行磁場の領域が形成
(5) 尾部でも磁気リコネクションが発生
(6) 地球向きの対流が発生
このように磁気圏全体の巨視的な対流が駆動される.これを Dungeyサイクルなどと呼ぶ (図 6).
2.8.2 低エネルギー粒子の軌道
仮想的にゼロエネルギーの粒子の軌道を考えると,赤道面における粒子の輸送は E ×Bドリフトのみで決定さ
れる.(E ×B ドリフト速度は電磁流体近似における流体速度に相当することに注意.)
磁気圏にかかる静電ポテンシャルの起源は以下の 2種類
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最終更新:2020 年 1 月 31 日
図 6: 地球磁気圏の模式図
図 7: ゼロエネルギー粒子の軌道
(1) 地球の自転に起因するポテンシャル (共回転電場)
Φc = −BER3EΩE
r
→
vr = 0
vϕ = rΩE
(2) 太陽風がもつ持つポテンシャル (Dawn-to-Dusk電場)
ΦSW = −rE0 sinϕ
→
Ex = 0
Ey = E0
Φ = Φc +ΦSW なる静電ポテンシャルのもとでの粒子の軌道は図 7のようになる.
ここで E ×B ドリフト速度は
vE =B ×∇Φ
B2
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図 8: 有限エネルギー粒子の軌道
であることから,粒子の軌道は静電ポテンシャル Φ の等高線に等しいことに注意.
地球の近傍(典型的には r/RE ≲ 2− 5)の領域は地球の自転とともに剛体回転(共回転)する.この領域のプ
ラズマは尾部から運ばれてきたプラズマではなく,地球の電離圏から湧き出してきたもの.この領域をプラズマ
圏と呼ぶ.
2.8.3 高エネルギー粒子の軌道
磁場勾配・曲率ドリフトは粒子のエネルギーに依存する.ピッチ角 90度の粒子を考えるとバウンス運動や磁場曲
率ドリフトは無視でき,赤道面内での磁場勾配ドリフトと電場ドリフトのみを考えればよい.式 8から µ = const.
を保ったまま磁気圏尾部から地球近傍に運ばれる粒子を考えると,遠方では電場ドリフトが優勢だが,地球に近
いほど磁場勾配ドリフトが優勢になる.従って有限エネルギーの粒子の軌道は図 8のようになる.太陽風電場の
強さによって,磁気圏尾部から断熱的に地球に運ばれる粒子の到達できる限界の位置が決まっている.
なお電場ドリフトと磁場勾配ドリフトの和は
vE + vG =B ×∇
(qΦ+ 1
2mv2⊥)
qB2
のように書けることから,粒子のドリフト軌道に沿って全エネルギーK = 12mv2⊥ + qΦが保存することが分かる.
2.8.4 磁気嵐
継続的に磁気圏に強い電場がかかる (継続的な南向き磁場など)と大量の太陽風プラズマが磁気圏尾部から地球
近傍に運ばれる.
磁場ドリフトによって地球を取り囲む円環状の大電流(リングカレント)が流れ,近地球の宇宙空間に大きな擾
乱が発生する.これを磁気嵐と呼ぶ.
リングカレントは地磁気を減少させる向きに発達するので,低緯度の磁力計で観測される変動はリングカレン
トの強さを反映する.地上での磁場変動∆B とリングカレントを担うプラズマの全エネルギーWp の間には
∆B
BE= −2
3
Wp
WB(10)
のような関係 (Dessler-Parker-Sckopke関係)がある.ここで
WB =
∫ ∞
RE
B2
2µ0drdΩ =
4π
3µ0B2
ER3E
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は双極子磁場のエネルギー(地球表面から無限遠まで積分したもの)を表す.
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演習問題
1. 調和振動子
dq
dt= p,
dp
dt= −ω2q
について考える.
(1) 式 1 で定義される断熱不変量 J を求めよ.また,これよりジャイロ運動について考えたときに µ が断熱
不変量になることを確かめよ.
(2) 調和振動子の周波数が ω = ω(t) のように時間の関数として周期よりも十分ゆっくり変化する場合に断熱
不変量 J が保存することを示せ.ここで
q(t) = A(t) exp
[±i
∫ t
ω(t′)dt′]
のような解の形 (いわゆるWKB近似)を仮定するとよい.
2. 式 2 において磁気ミラー力を導出する際に粒子のジャイロ半径が磁場の空間勾配のスケールよりも十分小さ
いと仮定した.この理由を述べよ.
3. 式 3 (ピッチ角とミラー点の関係式)を示せ.
4. 具体的に運動方程式を解いて電場ドリフト速度の絶対値が E/B で与えられることを確かめよ.
5. 磁場勾配があるときに荷電粒子が平均的に感じる力が式 4 で与えられることを確かめよ.
6. 曲率ベクトルが κ = ec/Rc = (b · ∇)b で与えられることを示せ.
7. 円筒座標系 (r, ϕ, z)を用いて,時間定常で軸対称なベクトルポテンシャル
A = Aϕeϕ =1
2r
[1 +
( z
L
)2]B0eϕ
で与えられる磁場中の荷電粒子の運動について考える.ただし粒子の軌道は r ≪ L, |z| ≪ L に限られると仮定
する.
(1) このとき荷電粒子の第 1断熱不変量 µが保存することを説明せよ.
(2) µ = const.のとき, r = 0近傍の粒子の z方向の運動の周期を求めよ.
(3) 十分ゆっくりと Lを時間変化させた場合の粒子のエネルギー,速度の変化について議論せよ.
8. 電磁場が B = B(x) ez, E = E0 ey で与えられる場合を考える.
(1) 電場ドリフトの向きおよび大きさを求めよ.
(2) x = 0 の十分近傍の磁場を以下のように近似する.
B(x) ≃ B0 +∂B
∂xx
このとき,磁場勾配ドリフトの向きおよび大きさを求めよ.ただしジャイロ半径は勾配のスケール長よりも
十分小さく,電場ドリフト速度は十分に小さいと仮定せよ.
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(3) 初期に x = 0 にあった粒子が電場ドリフトによって磁場強度が B = B1 となる位置まで運動した.第 1断
熱不変量の保存を仮定し,粒子の垂直エネルギーの増加分を求めよ.
(4) 磁場勾配ドリフトで電場方向に運動することによるエネルギー増加分を求め,前問の答えと一致すること
を示せ.
9. サイクロトロン運動する荷電粒子はループ状の電流を作り,十分遠方では双極子磁場を発生させる.第 1断
熱不変量 µは磁気モーメントとも呼ばれるが,これは µが荷電粒子が作る磁気双極子モーメントに対応している
ためである.このことをビオ・サバールの法則から示せ.
10.
式 9 が得られることを示せ.
11.
Dessler-Parker-Sckopke関係式 10を示そう.
(1) 時間定常を仮定すると温度異方性が無視できる (P⊥ = P∥)とき,ドリフトおよびジャイロ運動が作る電流
の和が
J = b× ∇P
B
と表されることを示せ.
(2) 赤道面のみを考え,圧力が地球からの距離のみに依存する P = P (r) と仮定することで式 10 を導け.
(3) 赤道近傍で磁気嵐に伴う地磁気変動として∆B ∼ 100nTが観測されたとき,リングカレントを担うプラズ
マの全エネルギーを概算せよ.
15