28
2010 IA 12 I 34, 35, 36, 37, 38, 39 1 11 問題 1. い」「各 」「 」「一 あるか せよ。また、 する めよ。 (1) sin 2x log 2 , sin 3x log 3 , sin 4x log 4 , ...... , sin nx log n , ... (x R) (2) log (1 + x) , log ( 1+ x 2 ) , log ( 1+ x 3 ) , ..., log ( 1+ x n ) , ... (x> 0) (3) x 1+ x 2 , 2x 1+4x 2 , 3x 1+9x 2 , ..., nx 1+ n 2 x 2 , ... (x R) 問題 2. [a, b] する {f n } n=1 f しており、しか c [a, b] について {f n (c)} n=1 f (c) している する。こ き、{f n } n=1 f あるこ せよ。 問題 3. が一 しているか うか せよ。 (1) n=1 x n (1 + nx 2 ) x R (2) n=1 1 (x + n)(x + n + 1) x 0 (3) n=1 1 x 2 + n x R (4) n=1 (-1) n-1 x 2 + n x R (5) n=1 cos nx n a x R (6) n=1 ( x n - sin x n ) - 1 x 1

2010年度数学IA演習第12 - lecture.ecc.u-tokyo.ac.jpnkiyono/2010/hira10...第12 回解答 2 定義1. Iを定義域とする関数の列{f n}∞ =1 がIを定義域とする関数fに収束するとは、I

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2010年度数学 IA演習第 12回理 I 34, 35, 36, 37, 38, 39組

1月 11日 清野和彦

問題 1. 次の関数列は「収束しない」「各点収束」「広義一様収束」「一様収束」のどれであるか判定せよ。また、収束する場合には極限関数も求めよ。

(1)sin 2x

log 2,

sin 3x

log 3,

sin 4x

log 4, . . . . . . ,

sin nx

log n, . . . (x ∈ R)

(2) log (1 + x) , log(1 +

x

2

), log

(1 +

x

3

), . . . , log

(1 +

x

n

), . . . (x > 0)

(3)x

1 + x2,

2x

1 + 4x2,

3x

1 + 9x2, . . . ,

nx

1 + n2x2, . . . (x ∈ R)

問題 2. 有界閉区間 [a, b] を定義域とする連続関数の列 {fn}∞n=1 が連続関数 f に各点収束しており、しかも、任意の c ∈ [a, b] について数列 {fn(c)}∞n=1 は単調増加か単調減少で f(c) に収束しているとする。このとき、{fn}∞n=1 の f への収束は一様収束であることを証明せよ。

問題 3. 次の関数項級数が一様収束しているかどうか判定せよ。

(1)∞∑

n=1

x

n (1 + nx2)x ∈ R (2)

∞∑n=1

1

(x + n)(x + n + 1)x ≥ 0

(3)∞∑

n=1

1

x2 + nx ∈ R (4)

∞∑n=1

(−1)n−1

x2 + nx ∈ R

(5)∞∑

n=1

cos nx

nax ∈ R (6)

∞∑n=1

(x

n− sin

x

n

)− 1 ≤ x ≤ 1

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●周期 2πを持ち [−π, π]で積分可能な関数 f(x)に対し、数列 {af,k}∞k=0、{bf,k}∞k=0

af,k =1

π

∫ π

−π

f(x) cos kxdx, bf,k =1

π

∫ π

−π

f(x) sin kxdx

と定義し、f のフーリエ係数と言うことにします。また、無限級数

af,0

2+

∞∑k=1

(af,k cos kx + bf,k sin kx)

を f のフーリエ級数と言います。以下、f(x) を周期 2π を持つ C∞ 級関数(何回でも微分できる関数)とします。

問題 4. f (n) のフーリエ係数 af (n),k, bf (n),k は、n = 2m のとき

af (n),k = (−1)mknaf,k, bf (n),k = (−1)mknbf,k

で、n = 2m + 1 のとき

af (n),k = (−1)mknbf,k, bf (n),k = (−1)m+1knaf,k

であることを示せ。

問題 5. 任意の非負整数 n に対し、無限級数∞∑

k=1

(af,k

dn

dxncos kx + bf,k

dn

dxnsin kx

)は一様収束することを示せ。(ただし d0

dx0 は 0回微分、つまりなにもしないことです。)

問題 6. f のフーリエ級数の一様収束先は C∞ 級関数であることを示せ。

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1月 11日 清野和彦

目 次

1 関数列の収束と微積分 1

1.1 各点収束と微積分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11.2 一様収束 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41.3 一様収束と連続性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 61.4 一様収束と積分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 71.5 一様収束と微分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 101.6 関数項級数の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 121.7 広義一様収束 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13

2 一様収束性の判定 14

2.1 具体例 : 問題 1の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 142.2 一般論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15

2.2.1 問題 2の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 152.2.2 一様コーシー列 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16

2.3 関数項級数の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 172.3.1 問題 3の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

3 例:フーリエ級数:問題 4, 5, 6の解答 20

1 関数列の収束と微積分

1.1 各点収束と微積分

我々は、数列や無限級数の収束についてはいろいろと学んであるのですから、関数の列につい

ても

関数の列 f1(x), f2(x), . . . に対し x = a を代入してできる数列 f1(a), f2(a), . . . は収束するかどうか

を考えるなら、既に多くのことを知っています。もちろん a としては、すべての fn(x) の定義域に入っている実数ならなんでもよいわけです。特に、すべての fn(x) の定義域が共通で、定義域内のすべての a について数列 f1(a), f2(a), . . . が収束するというのが、この視点から見た場合の「関数列の収束」の定義として一番自然に見えるでしょう。各収束列 f1(a), f2(a), . . .の極限値 lim

n→∞fn(a)

を x = a のときの値として定義される関数を f(x) として、「関数列 {fn(x)}∞n=1 は f(x) に収束する」と定義することになるわけです。ε-N 論法を使って定義すると次のようになります。

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第 12 回解答 2

� �定義 1. I を定義域とする関数の列 {fn}∞n=1 が I を定義域とする関数 f に収束するとは、I

内の任意の x と任意の正実数 ε に対してある自然数 N があって、n > N を満たす任意の自

然数 n に対して

|fn(x) − f(x)| < ε

が成り立つことを言う。� �N は ε だけでなく x に応じて取れればよい、というところに注意して下さい。

なお、今回のテーマはあとで定義する「一様収束」という定義 1とは別の収束なので、一様収束と区別するために上で定義した関数列の収束のことを各点収束とか点別収束ということがありま

す。(なぜ「各点」とか「点別」とかと言うのかは、次節で一様収束の定義を紹介するときに説明

します。)このプリントでも無用な混乱を避けるために、収束という言葉を単独で使うのは避け、

必ず各点収束と書くことにします。ただし、単に「関数列が収束する」と言ったら普通は各点収束

のことを意味するのだということは心に留めておいた方がよいでしょう。

さて、上で定義した各点収束には関数列の収束として一見何ら不足はないように見えます。それ

なのに今回のテーマは各点収束とは違う一様収束です。ということは各点収束では何かまずいこと

があるということなはずです。その「まずいこと」を例で見てみましょう。

例 1. 自然数 n に対し、実数全体を定義域とする関数 fn を

fn(x) =n2x

en|x|

と定義すると、

(1). 任意の x に対し、 limn→∞

fn(x) = 0. すなわち {fn}∞n=1 は定数関数 0に各点収束する。

(2). limn→∞

∫ 1

0

fn(x)dx ̸= 0.

(3). limn→∞

f ′n(0) ̸= 0.

(4). limn→∞

maxx

|fn(x)| ̸= 0.

が成り立ちます。

証明. (1) x = 0 のときは、任意の n に対して fn(0) = 0 ですので、 limn→∞

fn(0) = 0 です。x ̸= 0 としましょう。x > 0 とすると、

fn(−x) =−n2x

enx= −fn(x)

ですので、x > 0 での極限が分かれば x < 0 での極限も分かります。そこで、以下 x > 0 とします。すると、ex > 1 ですので ex = 1 + h となる正実数 h が存在します。よって、

|fn(x)| = fn(x) =n2x

enx= x

n2

(1 + h)n

= xn2

1 + nh+ n(n−1)2 h2 + n(n−1)(n−2)

6 h3 + · · · + hn< x

n2

n(n−1)(n−2)6 h3

ですので、

limn→∞

|fn(x)| ≤ x limn→∞

n2

n(n−1)(n−2)6 h3

= 0

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第 12 回解答 3

� �

O

y

x

f1f2

f3

f4

f5

図 1: 例 1の関数列のグラフ。� �となります。

結局、任意の x に対して limn→∞

fn(x) = 0 であることがわかりました。(2) まず、各 fn(x) に対して、具体的に積分を求めましょう。部分積分を利用します。∫ 1

0

fn(x)dx =∫ 1

0

n2xe−nxdx = n2

∫ 1

0

x ·(− 1ne−nx

)′

dx

= −n[ x

enx

]10

+ n

∫ 1

0

e−nxdx = − n

en−[

1enx

]10

= 1 − n+ 1en

となります。よって、

limn→∞

∫ 1

0

fn(x)dx = 1 − limn→∞

n+ 1en

= 1 ̸= 0

となります。

(3) 実際に微分を実行すると、

limx→0

fn(x) − fn(0)x

= limx→0

n2

en|x|= n2

となります。よって、

limn→∞

f ′n(0) = +∞

と発散してしまい、0に収束しません。(4) (1)で注意したように fn は奇関数ですので、|f(−x)| = |f(x)| となります。よって、x ≥ 0で考えれば十分です。しかも x ≥ 0 のとき fn(x) ≥ 0 ですから、絶対値をはずして考えても同じです。

さて、x > 0 において f ′n(x) を計算すると、

f ′n(x) =n2 − n3x

enx

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第 12 回解答 4

となりますので、fn(x)は 0 ≤ x ≤ 1n で単調に増加し、

1n ≤ xで単調に減少します。よって、fn(x)

は x = 1n で最大値

ne をとります。

limn→∞

n

e= +∞

ですので、max |fn(x)| は n→ ∞ のとき 0に収束しません。 □

この例からわかる「各点収束ではまずいこと」とは、関数列の各点収束先 f の微積分と各項 fn

を微積分したものの極限が一致しない、つまり、

各点収束という極限と微分や積分という極限の順序を入れ替えられない

ということです。もちろん、二種類の極限の順序が入れ替えられなければならないということはあ

りません。しかし、入れ替えられるような収束概念があるなら、それを使って関数列の収束を議論

した方がより扱いやすいことは確かでしょう。なぜなら、関数列の極限をとることと微分や積分を

することの順序をいちいち気にせずに議論することができるからです。

そもそも、例 1の関数列が (4)の

limn→∞

maxx

|fn(x)| ̸= 0

という性質を持つことがいかにもこの収束の「良くない」ことを示唆しているように感じられる

と思います。なぜなら、「関数は恒等的に 0になる」のに「値の最大値は 0にならない」のですから、いかにも気持ちが悪いわけです。というわけで、このような「気持ち悪さ」のない収束概念と

して考えられたのが一様収束という概念です。

1.2 一様収束

積分や微分以前に、連続関数の列の各点収束極限は連続とは限りません。つまり、一般には

limn→∞

limx→a

fn(x) ̸= limx→a

limn→∞

fn(x) (1)

なのです。例えば、fn(x) = cos2n x とすると、fn(x) は連続ですが

limn→∞

fn(x) =

{1 x は π の整数倍

0 x は π の整数倍でない

となって不連続です。

式 (1)のようなことの起こる原因は、関数列 {fn}∞n=1 が f に各点収束していても、ある x にお

いて fn(x) → f(x) となる「速さ」と、x に近い x + h において fn(x + h) → f(x + h) となる「速さ」の間に関係があるとは言えないからです。各点収束とか点別収束とかという名前はこのこ

とをを強調していたわけです。

逆に言うと、連続性や微積分のように定義の中で変数についての極限を使っている概念を関数列の

極限において保つにふさわしい収束概念は、各点収束とは違って、x ごとに決まる数列 {fn(x)}∞n=1

の収束が関連しているものでなければならないということになります。そこから最も単純に出てく

る収束概念が、次に定義する一様収束です。

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第 12 回解答 5

� �定義 2. I を定義域とする関数からなる関数列 {fn}∞n=1 が I を定義域とする関数 f に一様収

束するとは、任意の正実数 ε に対してある自然数 N があって、n > N を満たす任意の自然

数 n と I に属する任意の x に対して

|fn(x) − f(x)| < ε

が成り立つことを言う。� �各点収束と一様収束の違いがわかりますか? 論理記号で書くと、一様収束は

∀ε ∃N ∀x ∀n [n > N → |fn(x) − f(x)| < ε]

で、各点収束は

∀ε ∀x ∃N ∀n [n > N → |fn(x) − f(x)| < ε]

です。∀x と ∀N が入れ替わっています。つまり、N を x によらずに取れるのが一様収束で、各

点収束の定義より厳しい条件を課しているわけです。よって、特に

{fn}∞n=1 が f に一様収束しているなら {fn}∞n=1 は f に各点収束している

ということがわかります。

I を定義域とする二つの関数 f(x), g(x) に対し、x を I 内で動かしたときの |f(x) − g(x)| の上限は +∞ も許せば必ず存在します。(例えば I が有界閉区間で f も g も連続関数なら、それは

|f(x) − g(x)| の最大値のことです。)それを ∥f − g∥I と書くことにしましょう。

∥f − g∥I = supx∈I

|f(x) − g(x)|

です。(定義域がわかりきっているときは ∥f − g∥ とも書きます。)すると、次が成り立ちます。� �補題 1. {fn}∞n=1 が f に一様収束することと、 lim

n→∞∥fn − f∥I = 0 は同値である。� �

証明. {fn}∞n=1 が f に一様収束しているとします。つまり、

∀ε ∃N ∀x ∈ I [n > N =⇒ |fn(x) − f(x)| < ε]

です。任意の x に対して |fn(x) − f(x)| < ε が成り立つのですから、

∥fn − f∥I = supx

|fn(x) − f(x)| ≤ ε

です。これで

limn→∞

∥fn − f∥I = 0

が示せました。

逆に limn→∞

∥fn − f∥I = 0 が成り立っているとします。つまり、

∀ε ∃N [n > N =⇒ ∥fn − f∥I < ε]

です。任意の x に対して

|fn(x) − f(x)| ≤ supx∈I

|fn(x) − f(x)| = ∥fn − f∥I

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第 12 回解答 6

ですので、

∀ε ∃N ∀x ∈ I [n > N =⇒ |fn(x) − f(x)| < ε]

が成り立ちます。これは一様収束の定義です。 □

要するに、{fn}∞n=1 が f に一様収束するとは、y = f(x) のグラフに少し幅をつけると、十分大きい n に対する y = fn(x) のグラフがその幅の中に収まってしまうという状況のことなのです(図 2)。だから、標語的には、

一様収束とはグラフの見た目が収束すること

と言ってしまって差し支えないでしょう。� �

O

y

x

ε

ε

f

fn

図 2: 一様収束では、極限関数 f のグラフに幅を付けると十分大きな n に対する fn のグラ

フがその幅のなかに収まってしまう。� �翻って例 1の (4)を考えてみると、n2x

enx の最大値とは∥∥∥n2xenx − 0

∥∥∥ のことですので、n→ ∞ のと

きこれが 0に収束しないということは、n2xenx の 0への収束が一様収束でないということを示してい

るのです。つまり、例 1は、一様収束しない関数列では極限を取ることと微積分を取ることの順序を入れ替えられないということの例なのです。

1.3 一様収束と連続性

一様収束と微積分の相性を調べる前に、まず連続性との相性が良いことを証明しておきましょう。� �定理 1. 連続関数列 {fn}∞n=1 が f に一様収束するなら、f も連続である。� �

証明. x0 を任意に固定し、f がそこで連続なことを示しましょう。

{fn}∞n=1 は f に一様収束しているのですから、任意の正実数 ε が与えられたとき、ある自然数

n0 があって、任意の x に対して

|fn0(x) − f(x)| < ε

3

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第 12 回解答 7

を満たします。fn0 は連続と仮定しているので、x0 に対してある正実数 δ があって

|x0 − x| < δ =⇒ |fn0(x0) − fn0(x)| <ε

3

が成り立ちます。これらを足すと、|x0 − x| < δ を満たす任意の x に対して

|f(x0) − f(x)| ≤ |f(x0) − fn0(x0)| + |fn0(x0) − fn0(x)| + |fn0(x) − f(x)|

3+ε

3+ε

3= ε

が得られます。これは、f(x) が x0 で連続なことの定義です。

x0 は任意でしたので、f(x) は定義域全体で連続であることが示せました。 □

注意. この証明をよく読むと、「各 fn が 1点 x0 で連続なら、一様収束先 f も x0 で連続である」が証明されていることが分かります。★

例 2. [0, 1] 上の関数列 fn を fn(x) = xn とすると、

limn→∞

fn(x) = 0 (x ̸= 1) limn→∞

fn(1) = 1

となって極限関数が不連続なので、この収束は一様収束ではありません。

注意. 例 1の関数列のように一様収束でなくても極限関数が連続なことがありますので、一様収束は極限関数が連続であるための十分条件なだけであって、必要十分条件ではありません。★

1.4 一様収束と積分

次に微分ではなく積分と一様収束の関係を調べます。というのは、一様収束というのは積分との

相性は大変良いのですが、微分との相性はそれほどでもないからなのです。そのことは一様収束が

「グラフの収束」であることから想像がつくでしょう。y = fn(x) のグラフが y = f(x) のグラフに見た目で近づいて行くなら、グラフの囲む部分の面積もいかにも近づきそうです。しかし、目をこ

らしてよく見ると y = fn(x) のグラフが y = f(x) のグラフにまとわりつくように細かく振動しているような状況を考えると、グラフの見た目としては近づいても各点の接線の傾きまで近づいて行

くかどうかはわからない感じがすると思います。

一様収束と積分の相性の良さは次の定理です。� �定理 2. 定義域内の任意の有界閉区間で積分可能な関数の列 {fn}∞n=1 が一様収束しているな

ら、極限関数 f も定義域内の任意の有界閉区間で積分可能で

limn→∞

∫ b

a

fn(x)dx =∫ b

a

f(x)dx

が成り立つ。� �証明. 定義域内の有界閉区間 [a, b] をひとつ選んでそこで議論すれば十分です。始めに f(x) が積分可能なことを証明しましょう。まず、f(x) は有界です。実際、fn(x) たちは積分可能なので有界で、f(x) に一様収束しているのですから、十分大きな n に対し

|fn(x) − f(x)| < 1

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第 12 回解答 8

が x によらずに成り立ちます。よって、

fn(x) − 1 < f(x) < fn(x) + 1

が x によらずに成り立つので f(x) は有界です。さて、f(x) が積分可能であることは、正実数 ε がどんなに小さかろうとも [a, b] の分割をうまくとれば上リーマン和と下リーマン和の差を ε より小さくできるということと同値でした。記号

を簡単にするために、[a, b] の分割を ∆、f(x) の ∆ に対する上下リーマン和を R, R とし、fn(x)の ∆ に対する上下リーマン和を Rn, Rn としましょう。つまり

∆ = {a = x0, x1, . . . , xk−1, xk = b}

として、

R =k∑i=1

supxi−1≤x≤xi

f(x)(xi − xi−1) R =k∑i=1

infxi−1≤x≤xi

f(x)(xi − xi−1)

Rn =k∑i=1

supxi−1≤x≤xi

fn(x)(xi − xi−1) Rn =k∑i=1

infxi−1≤x≤xi

fn(x)(xi − xi−1)

です。

さて、任意の正実数 ε が与えられたとしましょう。fn が f に一様収束していることから、ある

十分大きな N があって、

∥f − fN∥ < ε

4(b− a)

を満たします。よって、任意の ∆ とその任意の i 番目の区間に対して、

supxi−1≤x≤xi

f(x) − supxi−1≤x≤xi

fN (x) ≤ supxi−1≤x≤xi

|f(x) − fN (x)| ≤ ∥f − fN∥

infxi−1≤x≤xi

fN (x) − infxi−1≤x≤xi

f(x) ≤ supxi−1≤x≤xi

|f(x) − fN (x)| ≤ ∥f − fN∥

が成り立ちます。一方 fN (x) は積分可能ですので、

|∆| < δ =⇒ RN −RN <ε

2

を満たす分割 ∆ が存在します。よって、この ∆ に関して

R−R =k∑i=1

supxi−1≤x≤xi

f(x)(xi − xi−1) −k∑i=1

infxi−1≤x≤xi

f(x)(xi − xi−1)

≤k∑i=1

(sup

xi−1≤x≤xi

fN (x) + ∥f − fN∥

)(xi − xi−1)

−k∑i=1

(inf

xi−1≤x≤xi

fN (x) − ∥f − fN∥)

(xi − xi−1)

= RN −RN + 2∥f − fN∥(b− a) <ε

2+ 2

ε

4(b− a)(b− a) = ε

が成り立ちます。これで示せました。

最後に、f(x) の積分の値を計算しましょう。∣∣∣∣∣∫ b

a

(fn(x) − f(x))dx

∣∣∣∣∣ ≤∫ b

a

|fn(x) − f(x)|dx ≤ ∥fn − f∥(b− a) n→∞−−−−→ 0

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第 12 回解答 9

ですので、 ∫ b

a

f(x)dx = limn→∞

∫ b

a

fn(x)dx

です。 □

積分可能な関数の列 {fn}∞n=1 がとりあえず積分可能かどうか不明な関数 f に収束していると

き、その収束が一様収束なら f も積分可能になってしまって積分と極限が入れ替えられるのです。

一様収束と積分はとても相性が良いのです。

注意. 積分可能な関数列が一様収束してさえいればだまっていても極限関数は積分可能になってしまうので、一様収束と積分は本当にとても相性が良いのです。実際、極限関数が積分可能であることを条件として課してしまえば、収束に課す条件を「一様収束」よりずっと弱められます。

例 3. 例 1の関数を少し変えたgn(x) =

nx

enx0 ≤ x ≤ 1

という関数の列は恒等的に 0という関数に各点収束していますが、どの n に対しても gn(x) の最大値が 1e

なので一様収束はしていません。しかし、 limn→∞

∫ 1

0

gn(x)dx = 0 は成り立ちます。

例 1の関数列 {fn}∞n=1 との違いはグラフから見て取れるでしょう(図 3)。 fn(x) は n が大きくなるにつ� �

O

y

x O

y

x

y = fn(x) y = gn(x)

4

3

2 n = 14 3 2 n = 1

...

· · ·

図 3: fn と gn の違い� �れやせてゆく分高さが高くなって面積を稼いでいますが、gn(x) の方は 1

eという天井から頭を出すわけに行

かないのでやせて減った分の面積を他で補うことができずにあえなく面積=0に収束してしまうわけです。実はこれは一般的に成り立ちます。この {gn}∞n=1 のように、|gn(x)| の上限の作る数列 {supx |gn(x)|}∞n=1

が有界なとき、つまり、

∥gn∥ < M、すなわち n にも x にもよらない定数 M で任意の n, x に対して |gn(x)| < M を満たすものがある

という条件を満たすとき、関数列 {gn}∞n=1 は一様有界であるといいます。� �定理 3. [a, b] 上の一様有界な可積分関数列 {gn}∞n=1 が可積分関数 g に各点収束しているならば、

limn→∞

∫ b

a

gn(x)dx =

∫ b

a

g(x)dx

が成り立つ。� �

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第 12 回解答 10

収束先の関数が積分可能であることを仮定するなら、一様収束よりかなり弱い一様有界だけで積分と極限の入れ替えは可能なのです。(例によって「一様有界」もこのための必要十分条件ではありません。一様有界でなくても関数列の極限と積分の入れ替えられることはあります。)なお、定理 3の証明はしません。なぜなら、そこまで積分と関数列の極限にこだわるならその点でもっと

整合性のあるルベーグ積分を学んで、この定理を含むルベーグの収束定理を証明する方がよいと考えるからです。つまり、これから先ルベーグ積分を学びたいと思っている人や学ぶ必要のある人はそのときに証明する方がよく、ルベーグ積分を学ぶことになりそうもない人はこんな細かいことにこだわらず一様収束の概念と「一様収束なら積分と極限が交換可能」ということをしっかり身につけることの方が重要だと考えるからです。★

1.5 一様収束と微分

次に微分を考えましょう。f が x = a で微分可能なことの定義は

limx→a

f(x) − f(a)x− a

が存在することでした。分母は 0に行くので当然分子も 0に収束し f は a で連続です。だから、

微分可能というのは「連続+α」であって、その「+α」が「x− a との比が収束する」という条件

です。こう考えると一様収束と微分もとても相性が良いような感じがするでしょう、

しかし、次のような例が存在してしまいます。

例 4. 自然数 n に対し、実数全体を定義域とする関数 hn を

hn(x) =sinnxn

と定義すると、{hn(x)}∞n=1 は恒等的に 0という定数関数に一様収束していますが

limn→∞

h′n(0) ̸= 0

となってしまっています。� �

O

y

x

h1

h2

h3h4

h5

図 4: 例 4の関数列のグラフ。� �証明. | sinx| は x = π

2 +mπ (m ∈ N) のとき最大値 1をとりますので、hn(x) の最大値は 1n で

す。よって、

limn→∞

maxx

|hn(x)| = limn→∞

1n

= 0

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第 12 回解答 11

です。これは {hn(x)}∞n=1 が恒等的に 0という関数に一様収束することを意味しています。しかし、h′n(x) = cosnx ですので、

limn→∞

h′n(0) = limn→∞

1 = 1 ̸= 0

です。 □

この関数列は導関数 {h′n(x)}∞n=1 が元の関数列の導関数に収束していない、すなわち微分と極限

を入れ替えられない例になっているのです。それどころか、{h′n(x)}∞n=1 は x が π の倍数でない

ところでは各点収束さえしません。このような例はいくらでもあります。

このように一様収束と微分は相性が良くありません。そこで、仕方がないので、微分について

は積分についての定理 2を微積分の基本定理を使ってを微分の形に言い換えることで満足しましょう。それでも十分有用な定理が得られます。� �定理 4. C1 級関数の列 {fn}∞n=1 がある関数 f に各点収束しており、導関数の列 {f ′n}∞n=1 が

ある関数 g に一様収束しているなら、f も C1 級で f ′ = g が成り立つ。� �証明. 微積分の基本定理により、

fn(x) − fn(a) =∫ x

a

f ′n(t)dt (2)

です。いま、{f ′n}∞n=1 は g に一様収束しているので、定理 2より

limn→∞

∫ x

a

f ′n(t)dt =∫ x

a

g(t)dt

が成り立ちます。これと、{fn}∞n=1 が f に各点収束していることから、式 (2)の両辺で n→ ∞ の極限をとると、

f(x) − f(a) =∫ x

a

g(t)dt

が得られます。再び微積分の基本定理により、この式は f が g を導関数とする微分可能な関数で

あることを意味しています。さらに g は連続関数列 {f ′n}∞n=1 の一様収束極限ですので、定理 1により連続関数です。よって f は C1 級関数です。 □

注意. このとき {fn}∞n=1 の f への収束は、定義域内の任意の閉区間上では一様になります。実際、x ∈ [a, b]なら

|f(x) − fn(x)| ≤∫ x

a

|g(x) − f ′n(x)|dx + |f(a) − fn(a)|

であり、fn(a) は f(a) に収束しているので、ある自然数 N があって

n > N =⇒ |fn(a) − f(a)| <ε

2

を満たし、f ′n は g に一様収束しているので、ある自然数 M があって

n > M =⇒ |g(x) − f ′n(x)| <

ε

2(b − a)

を満たしますから、n が N と M の両方より大きければ

|f(x) − fn(x)| <ε

2(b − a)(b − a) +

ε

2= ε

となって、fn は [a, b] 上 f に一様収束します。このように「定義域全体では一様収束ではないが、有界閉区間に限ると一様収束になっている」という収

束のことを広義一様収束といいます。これについては第 1.7節で改めて説明します。★

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第 12 回解答 12

注意. しつこいようですが、この定理も十分条件であって必要十分条件ではありません。定理 2という「必要十分条件ではないもの」から得たのですから当然といえば当然でしょう。たとえば、

fn(x) = −nx + 1

nenx

とすると、{fn}∞n=1 は定数関数 0に各点収束しています。また、f ′n(x) = nx

enx ですので、定理 2のあとの注意にあるように {f ′

n}∞n=1 も定数関数 0に各点収束していて、その収束は一様収束ではありません。しかし、

limn→∞

f ′n(x) = 0 = f ′(x)

が成り立っています。★

1.6 関数項級数の場合

関数列が「関数を足して行く」という形の無限級数で与えられることがしばしばあります。この

ような関数列のことを関数項級数と言います。もう少し詳しく書きましょう。� �定義 3. I を定義域とする関数の列 {fn}∞n=1 に対し、

∞∑n=1

fn(x) x ∈ I

を I 上の関数項級数といい、∞∑n=1

fn

と書く。� �I に属する a をひとつ選ぶごとに

∑∞n=1 fn(a) という(普通の)無限級数ができるわけです。そ

して、無限級数が収束するとかしないとかいうことは、部分和の作る数列が収束するとかしないと

かいうことで定義されるのでした。だから、関数項級数が各点収束するとか一様収束するとかは次

のように定義されることになります。� �定義 4. I 上の関数項級数

∑∞n=1 fn が各点収束するとは、関数列

f1, f1 + f2, f1 + f2 + f3, . . . ,

n∑k=1

fk, . . .

が各点収束することである。� �� �定義 5. I 上の関数項級数

∑∞n=1 fn が一様収束するとは、関数列

f1, f1 + f2, f1 + f2 + f3, . . . ,

n∑k=1

fk, . . .

が一様収束することである。� �注意. さらに、無限級数には普通の数列にはない絶対収束という概念がありました。これにあたることを関数項級数で考えることもできます。絶対各点収束や絶対一様収束です。絶対一様収束は講義で定義されたかどうか確認し忘れました。このプリントでは絶対収束は(あらわには)扱わないことにします。★

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第 12 回解答 13

これの節でこれまでに出てきた定理はすべて関数項級数にも当てはまります。

定義 1を関数項級数に対して書き直すと次のようになります。� �定理 5. I 上の関数項級数

∑∞n=1 fn が F に一様収束しているとき、すべての fn が連続関数

ならば F も連続関数である。� �定理 2を関数項級数に対して書き直すと次のようになります。� �定理 6.

∑∞n=1 fn が F 一様収束しており、各 fn が定義域内の任意の有界閉区間で積分可能

ならば、F も任意の有界閉区間で積分可能であり、∫ b

a

F (x)dx =∞∑n=1

∫ b

a

φn(x)dx

が成り立つ。� �つまり、無限和

∑∞n=1 と積分の順序を入れ替えられるというわけです。これを項別積分定理と

言います。

同様に、定理 4を関数項級数に対して書き直すと、� �定理 7.

∑∞n=1 fn(x) が F に各点収束しており、各 fn(x) は C1 級で

∑∞n=1 f

′n(x) が G 一様

収束しているなら、F も C1 級で F ′ = G が成り立つ。� �つまり、無限和

∑∞n=1 と微分の順序を入れ替えられるというわけです。これを項別微分定理と

言います。

1.7 広義一様収束

連続性や微分を考えるには各点のほんの近くで、積分を考える場合でも定義域内の任意の有界閉

区間上で一様収束していてくれれば良いので、一様収束していなくても次のように定義される概念

で十分役に立ちます。� �定義 6. I を定義域とする関数の列 {fn}∞n=1 が広義一様収束しているとは、I に含まれる任

意の有界閉区間をとったとき、関数列 {fn}∞n=1 の定義域をそこに制限すると一様収束してい

ることを言う。� �広義一様収束は定義域 I が有界閉区間でない場合に本質的な概念です。なぜなら、I が有界閉

区間のときは「任意の閉区間」として I そのものを取れるからです。また、「広義」一様収束とい

う名前からも察せられるとおり、一様収束ならば広義一様収束でもあります。なぜなら、一様収束

している関数列は、どのように定義域を狭めても一様収束しているからです。一方、冪級数のよう

に、広義一様収束はしていても一様収束していない例はいくらでもあります。三つの収束概念の間

には

一様収束 =⇒広義一様収束 =⇒各点収束

という関係があるわけです。

注意. 広義一様収束の定義として「各点のほんの近くで一様収束」ということ、つまり、任意の x0 に対し正実数 δ0 で [x0 − d0, x0 + d0] ∩ I に制限すると一様収束していることを採用し、上でした定義を「コンパク

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第 12 回解答 14

ト一様収束」と呼ぶのがもっと一般的な議論をする場合の名付け方ですが、この二つは I が区間(「ひとつながり」ということです)なら一致するので、ここでは上のように定義しました。I が区間でない場合でも「広義一様収束 =⇒ コンパクト一様収束」は成り立ちますが「コンパクト一様収束 =⇒ 広義一様収束」は成り立たないことがあります。★

定理 1, 2, 4に当たることはそのまま成り立ちます。つまり、� �定理 8. 連続関数の列 {fn}∞n=1 が f に広義一様収束しているならば f は連続である。� �� �定理 9. 定義域内の任意の有界閉区間で積分可能な関数の列 fn が f に広義一様収束している

ならば、f も定義域内の任意の有界閉区間で積分可能で、

limn→∞

∫ b

a

fn(x)dx =∫ b

a

f(x)dx

が成り立つ。� �� �定理 10. C1 級関数の列 fn が f に各点収束しており、導関数の列 f ′n が g に広義一様収束

しているならば、f も C1 級で f ′ = g が成り立つ。� �証明は、対応する定理の証明と同じです。(ちょっと言葉を変えるだけです。)確認してください。

関数項級数が広義一様収束するということの定義や、広義一様収束している関数項級数について

項別微積分が可能であることもすぐ分かるでしょう。

広義一様収束はテイラー展開や冪級数を論ずる上で大切な概念です。次回、広義一様収束である

ことを使ってテイラー展開や冪級数について議論する予定です。

2 一様収束性の判定

さて、前節の定理 1、2、4を応用したいのですが、そのためには与えられた関数列が一様収束しているのかどうかを判定できなければなりません。勝手な関数列が与えられたとき、それが何らか

の関数に一様収束しているかどうかを知るのに定義に照らしてみる以外に方法がないようでは使え

ないのです。この節ではそれについて考えましょう。

2.1 具体例 : 問題 1の解答

関数列が一様収束しているかどうかを判定する一般論はほとんどありません。(私は問題 2で紹介したものと、1年生には難しすぎるようなものしか知りません。)ですので、まずは直一様収束の定義を適用する具体例をいくつか見てもらいましょう。

(1) | sinnx| ≤ 1 なので、x によらずに∣∣∣∣ sinnxlog n

∣∣∣∣ ≤ 1log n

n→∞−−−−→ 0

となります。これは

supx∈R

∣∣∣∣ sinnxlog n− 0∣∣∣∣ n→∞−−−−→ 0

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第 12 回解答 15

を意味します。よって、この関数列は定数関数 0に一様収束します。 □

(2) 正実数 x を任意に選んで固定すると、n→ ∞ のとき xn → 0 となるので、

limn→∞

log(1 +

x

n

)= log

(1 + lim

n→∞

x

n

)= log 1 = 0

となります。よって、この関数列は定義域全体で定数関数 0に各点収束しています。次に、この収束が一様収束かどうか調べましょう。どんなに大きな n を取っても、x > n なら

log(1 +

x

n

)> log 2

となってしまいます。つまり、

supx>0

∣∣∣log(1 +

x

n

)− 0∣∣∣ > log 2

です。よって、この収束は一様収束ではありません。

しかし、0 < a < b である a と b を任意に固定すると、

supa≤x≤b

∣∣∣log(1 +

x

n

)− 0∣∣∣ = sup

a≤x≤blog(1 +

x

n

)= log

(1 +

b

n

)n→∞−−−−→ 0

となっています。すなわちこの収束は広義一様収束です。 □

(3) x を任意に固定すると、nx

1 + n2x2=

x/n

1/n2 + x2

n→∞−−−−→ 0

となっていますので、この関数列は定数関数 0に各点収束しています。この収束が一様収束かどうか調べましょう。

d

dx

nx

1 + n2x2=n(1 − n2x2

)(1 + n2x2)2

ですので、n を固定したとき、∣∣∣ nx1+n2x2

∣∣∣ は x = ± 1n で最大値

12 を取ります。よって、0を含む任

意の区間 I において

limn→∞

supx∈I

∣∣∣∣ nx

1 + n2x2− 0∣∣∣∣ = 1

2̸= 0

となっています。すなわち、この関数列は各点収束しかしていません。 □

2.2 一般論

2.2.1 問題 2の解答

まず、前置きなしにいきなり述べられるものからいきましょう。問題 2です。(ディニの定理という名前がついています。)

解答. {fn}∞n=1 が各点で単調増加か単調減少に f に各点収束するとは、

gn(x) = |fn(x) − f(x)|

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第 12 回解答 16

とおいたとき、関数列 {gn}∞n=1 が単調減少で 0に各点収束することと言い換えられます。また、{fn}∞n=1 が f に一様収束するとは、{gn}∞n=1 が 0に一様収束することです。そこで、この {gn}∞n=1

について定理を証明すればよいことになります。

背理法で示します。つまり、{gn}∞n=1 の 0への収束が一様でないと仮定して矛盾を導きましょう。{gn}∞n=1 の 0への収束が一様でないのですから、ある正実数 ε0 があって、どの自然数 n に対し

ても n 以上のある自然数 mn とある xn で

gmn(xn) ≥ ε0

を満たすものが存在します。いま、{gn}∞n=1 たちの定義域は有界閉区間ですので、数列 xn は収束

する部分列 xnkを持ちます1。その極限を x∞ としましょう。すると、各 gn が連続であることから

gn(x∞) = limk→∞

gn(xnk)

が成り立ちます。また、関数列 {gn}∞n=1 は単調減少ですので、ある nk 以下のすべての n に対し、

gn(xnk) ≥ gmnk

(xnk) ≥ ε0

が成り立ちます。ところが、k → ∞ のとき nk → ∞ ですので、任意の n はある nk 以下です。

よって、任意の n に対して

gn(x∞) ≥ ε0

が成り立ちます。これは gn が 0に各点収束することと矛盾します。 □

注意. 連続関数列が連続関数に収束していても一様収束とは限らないことは例 1で見たとおりですので、この定理は自明ではありません。★

2.2.2 一様コーシー列

普通、関数列が具体的に与えられても、その収束先を具体的に書き下せるとは限りません。しか

し、∥ · ∥ という絶対値もどきがあるのだから、実数列の収束判定ででてきた「コーシーの収束条件」にあたるものを考えることはできます。つまり、� �定義 7. 関数列 fn が一様コーシー列であるとは、任意の正実数 ε に対して自然数 N で

n > N,m > N =⇒ ∥fn − fm∥ < ε

を満たすものが取れることを言う。� �というように実数のコーシー列のときと同様に定義すると、� �補題 2. {fn}∞n=1 が f に一様収束しているならば、{fn}∞n=1 は一様コーシー列である。� �

は当然成り立ちますが、この逆が成り立つかどうかということです。そして、実際、� �定理 11. {fn}∞n=1 が一様コーシー列ならば、{fn}∞n=1 はある f に一様収束する。� �

が言えます。1ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理です。

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第 12 回解答 17

証明. 任意の x に対して

|fn(x) − fm(x)| ≤ ∥fn − fm∥

ですので、数列{fn(x)

}∞n=1

はコーシー列となり収束します。その値を f(x) と書くことにしましょう。x は任意でしたので f(x) は関数で、関数列 {fn}∞n=1 は f に各点収束するわけです。

limm→∞

|fn(x) − fm(x)| = |fn(x) − f(x)|

ですので、∥fn − fm∥ < ε ならば ∥fn − f∥ ≤ ε となります。これは {fn}∞n=1 の f への収束が一

様収束であることを意味しています。 □

2.3 関数項級数の場合

一様コーシー列を関数項級数に当てはめることで、関数項級数に独特の一様収束判定法が得られ

ます。優級数判定法、あるいはワイエルシュトラスの M テストと呼ばれます。� �定理 12. 関数列 {fn}∞n=1 に対して、数列 Mn で、二つの条件

(1) ∥fn∥ ≤Mn (2)∞∑n=1

Mn は収束する

を満たすものがあるならば、関数項級数∑∞n=1 fn は一様収束する。� �

証明. 条件 (1) より、n < m なる自然数に対して x によらずに∣∣∣∣∣m∑

k=n+1

fk(x)

∣∣∣∣∣ ≤m∑

k=n+1

|fk(x)| ≤m∑

k=n+1

Mk

が成り立ちます。条件 (2) より数列∑nk=1Mk はコーシー列ですので、任意の正実数 ε に対して

ある自然数 N があって

m > n > N =⇒m∑

k=n+1

Mk < ε

を満たします。よって x によらずに

m > n > N =⇒

∣∣∣∣∣m∑

k=n+1

fk(x)

∣∣∣∣∣ < ε

が成り立ちます。これは関数列∑nk=1 fk(x) が一様コーシー列であることを示しており、定理 11

から一様収束します。 □

注意. 定理 12の結論はただの一様収束だけではなく絶対一様収束まで成り立っています。★

例 5. 級数∑∞n=0 an を絶対収束する級数とし fn(x) = an cosnx とすると、∥fn∥ ≤ |an| ですの

で、関数項級数∞∑n=0

an cosnx

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第 12 回解答 18

は定理 12からある関数に一様収束します。その関数を F (x) とすると、項別積分定理から F (x)は積分可能で ∫ a

0

F (x)dx =∞∑n=0

ann

sinna

となります。また、もし∑∞n=0 nan も絶対収束するなら、項別微分定理から F (x) は C1 級で

F ′(x) = −∞∑n=0

nan sinnx

となります。このように sin や cos を項とする級数を 三角級数といいます。

注意. 上で「級数∑∞

n=0 an は絶対収束する」という条件は本質的です。たとえば an = 1nとすると、

∞∑n=1

an sin nx =

x

2− Nxπ (2Nx − 1)π < x < (2Nx + 1)π, Nx は整数

0 x = Nπ, N は整数

と不連続関数に収束します(図 2.3)。★

� �

O

y

xπ−π

π2

−π2

図 5: 三角級数∞∑n=1

1n

sinnx の収束先

� �2.3.1 問題 3の解答

(1) fn(x) =x

n(1 + nx2)とします。

f ′n(x) =1 − nx2

n(1 + nx2)2

なので、|fn(x)| は x = ± 1√nで最大値をとり、その値は

12n

√nです。講義で学んだように、無

限級数∞∑n=1

1n√n

=∞∑n=1

1n

32

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第 12 回解答 19

は収束します。従って、

Mn =1

2n√n

と定義すると、数列 {Mn}∞n=1 は定理 12の性質を持ちます。よって、優級数判定法によりこの関数項級数は一様収束します。 □

(2) x ≥ 0 なので、

0 ≤ 1(x+ n)(x+ n+ 1)

≤ 1n(n+ 1)

です。また、

∞∑n=1

1n(n+ 1)

=∞∑n=1

(1n− 1n+ 1

)=(

1 − 12

)+(

12− 1

3

)+ · · · +

(1n− 1n+ 1

)+ · · ·

= limn→∞

(1 − 1

n+ 1

)= 1

と収束しています。従って、

Mn =1

n(n+ 1)

とすれば、数列 {Mn}∞n=1 は定理 12の性質を満たします。よって、優級数判定法により問題の関数項級数は一様収束します。 □

(3) x = 0 を代入すると、∞∑n=1

1nとなります。これは講義でも演習でも学んだように発散します。

x ̸= 0 でも、各 x に対して x2 < m となる整数 m をとると、

∞∑n=1

1x2 + n

>∞∑n=1

1m+ n

=∞∑

n=m+1

1n

なのでやはり発散します。つまり、この関数項級数はすべての x で発散します。 □

(4) x を一つ固定します。すると、

1x2 + 1

1x2 + 2

1x2 + 3

· · · 1x2 + n

· · ·

は単調減少数列になるので、任意の自然数 m と k に対して、

0 <1

x2 +m+ 1− 1x2 +m+ 2

+1

x2 +m+ 3− · · · + (−1)k−1

x2 +m+ k≤ 1x2 +m+ 1

<1m

が成り立ちます。よって、n > m を満たす任意の自然数に対し、

supx

∣∣∣∣∣n∑

k=m+1

(−1)k−1

x2 + k

∣∣∣∣∣ ≤ 1m

n>m→∞−−−−−−→ 0

が成り立ちます。これは問題の関数項級数が一様コーシー列であることですので、一様収束してい

ます。 □

注意. なお、この無限級数の各項の絶対値をとったものは (3)の無限級数になり発散していますので、絶対一様収束はしていません。★

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第 12 回解答 20

(5) | cosnx| ≤ 1 なので、 ∣∣∣cosnxna

∣∣∣ ≤ 1na

です。講義で学んだように a > 1 ならば∑∞n=1

1na は収束します。よって、優級数判定法 a > 1 な

らば問題の関数項級数は一様収束します。

一方、やはり講義で学んだように、a ≤ 1 ならば

∞∑n=1

cos(n · 0)na

=∞∑n=1

1na

は発散します。つまり、x = 0 において問題の関数項級数は発散しています。ということは各点収束さえしていないのですから、一様収束もしていません。 □

(6) x も sinx も奇関数なので ∣∣∣xn− sin

x

n

∣∣∣ = ∣∣∣∣ |x|n − sin|x|n

∣∣∣∣です。3次までのテイラー展開により、

sin|x|n

=|x|n

− |x|3

6n3+

sin c24

|x|4

n4≥ |x|

n− |x|3

6n3>

|x|n

− 1n3

が成り立ちます。(0 < c < |x|n ≤ 1 < π

2 です。)よって、∣∣∣∣ |x|n − sin|x|n

∣∣∣∣ < 1n3

が任意の x ∈ [−1, 1] に対して成り立っています。∑∞n=1

1n3 が収束することは講義で学びました。

よって、優級数判定法によりこの関数項級数は一様収束します。 □

3 例:フーリエ級数:問題4, 5, 6の解答

これまでの話をふんだんに使う例としてフーリエ級数を考えてみましょう。

関数の級数展開としては、今まさにテイラー展開を学んでおり、次回の演習でも扱います。テイ

ラー展開はある 1点での高階導関数たちを係数とする冪級数で、ほとんどの関数ではもとの関数に収束しないという大変厳しいものです。一方、これから紹介するフーリエ級数展開とは、定義域こ

そ有界閉区間でなければならないのですが、そこを積分区間とするある積分たちに三角関数を掛け

たものを足しあげるという三角級数で、C∞ 級関数どころかすべての連続関数でもとの関数に「ほ

とんど」各点収束します。それどころかかなり不連続な関数でも O.K.というおおらかなもので、どのくらい不連続なところがあってもよいのかとか、「ほとんど」各点収束するというなら収束し

ない点はどのくらいあるのかとかといった問題から現代数学の基礎である集合論やルベーグ測度論

が、またフーリエ級数展開の微分方程式への応用から関数解析学が生まれた2という、テイラー展

開に勝るとも劣らない重要なものです。

上に書いたように、フーリエ級数展開はかなり汚い関数に対して考えられるのですが、相手を

C∞ 級に限ると大変おとなしい議論になるので、ここではそれを紹介します。

2ここのところは私の誤解が入っているような気がかなりします。

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第 12 回解答 21

� �定義 8. 周期 2π を持ち [−π, π] で積分可能な関数 f(x) に対し、数列 {af,k}∞k=0、{bf,k}∞k=1

af,k =1π

∫ π

−πf(x) cos kxdx bf,k =

∫ π

−πf(x) sin kxdx

と定義し、f のフーリエ係数と言う。また、無限級数

af,02

+∞∑k=1

(af,k cos kx+ bf,k sin kx)

を f のフーリエ級数と言う。� �af,k の方は k = 0 からで、bf,k の方は k = 1 からです。面倒なので任意の f に対して bf,0 = 0と定義してしまいましょう。

注意. フーリエ係数という用語や af,k、bf,k という記号は一般的なものではないような気がします。ここだけの用語と記号だと思って下さい。もちろん、フーリエ級数やフーリエ級数展開という用語の方は一般的です。★

周期関数は、x に適当な定数を掛けて変数変換してやれば周期を好きなように変えることができ

るので、三角関数の本来の周期である 2π を使うことにします。なお、この節の最初では「任意の有界閉区間」と説明しましたが、微分を考える場合、閉区間の両端での微分が一致していることが

必要なので、このように周期関数として表現しました。実際に考えているのは半径 1の円周を定義域とする C∞ 級関数だと言えます。

以下、f(x) は周期 2π を持つ C∞ 級関数とします。

まず、f(x) の(高階)導関数たちのフーリエ係数を f(x) のフーリエ係数で書き表しておきましょう。(最終的には項別微積分によって当たり前になる関係式です。)� �補題 3 (問題 4). f (n)(x) のフーリエ係数は、n = 2m のとき

af(n),k = (−1)mknaf,k bf(n),k = (−1)mknbf,k

で、n = 2m+ 1 のとき

af(n),k = (−1)mknbf,k bf(n),k = (−1)m+1knaf,k

である。� �証明 (問題 4の解答). ここでは関数列と積分の入れ替えは出てきません。ただ部分積分をくり返すだけです。

af(n),k と bf(n),k について別々に議論してももちろん示せますが、ここでは実変数複素数値関数

e√−1kx := cos kx+

√−1 sin kx を使って計算をまとめてしまいましょう。

部分積分すると、周期 2π に注意して、∫ 2π

0

f (n)(x)e√−1kxdx = −

∫ 2π

0

f (n−1)(x)√−1ke

√−1kxdx =

∫ 2π

0

f (n−2)(x)(√

−1k)2e√−1kxdx

· · · = (−1)n∫ 2π

0

f(x)(√

−1k)ne√−1kxdx

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第 12 回解答 22

となります。π で割って

af(n),k +√−1bf(n),k =

(−√−1k

)n (af,k +

√−1bf,k

)です。(ただし、任意の g(x) に対して bg,0 = 0 とおいています。)これを実部と虚部に分ければ

af(2m),k = (−1)mknaf,k, bf(2m),k = (−1)mknbf,k

af(2m+1),k = (−1)mknbf,k, bf(2m+1),k = (−1)m+1knaf,k

となります。 □

これを使うと、極限関数が何になるかを問題にしなければ f (n)(x) のフーリエ級数たちがそれぞれ何らかの関数に一様収束することが簡単に示せます。� �補題 4 (問題 5). 任意の非負整数 n に対し、無限級数

∞∑k=1

(af,k

dn

dxncos kx+ bf,k

dn

dxnsin kx

)

は一様収束する。(ただし d0

dx0 は 0回微分、つまりなにもしないことです。)� �証明 (問題 5の解答). 関数項級数の一様収束を示せというのですから、定理 12の優級数判定法の出番です。つまり、各 n に対し∣∣∣∣af,k dndxn cos kx+ bf,k

dn

dxnsin kx

∣∣∣∣ ≤Mk

なる Mk で∑∞k=1Mk の収束するものを見つけようというわけです。∣∣∣∣af,k dndxn cos kx+ bf,k

dn

dxnsin kx

∣∣∣∣ ≤ (|af,k| + |bf,k|) kn

であって、上の補題 3より

(|af,k| + |bf,k|) kn+2 =∣∣af(n+2),k

∣∣+ ∣∣bf(n+2),k

∣∣です。関数 f (n+2)(x) も周期 2π を持つ連続関数ですので最大値をとります。それを Ln+2 としま

しょう。| cos kx| ≤ 1, | sin kx| ≤ 1 なので、k によらずに∣∣af(n+2),k

∣∣ ≤ 1π

∫ 2π

0

Ln+2dx = 2Ln+2

∣∣bf(n+2),f

∣∣ ≤ 1π

∫ 2π

0

Ln+2dx = 2Ln+2

が成り立ちます。よって

(|af,k| + |bf,k|) kn ≤ 4Ln+2

k2

となります。∞∑k=1

4Ln+2

k2≤ 8Ln+2

となって収束しますので、

Mk =4Ln+2

k2

とすればよいことになります。 □

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第 12 回解答 23

注意. f (n)(x) のフーリエ級数が一様収束することを示すのに、f (n+2)(x) のフーリエ係数を使いました。だから、f(x) が C2 級であれば f(x) のフーリエ級数の収束は一様です。実は、f(x) が C1 級であれば同じことが示せるのですが、煩雑になるだけですので、ここではやりません。興味のある方はフーリエ級数(展開、積分、解析)の入門書を当たってください。★

この補題と項別微分定理 7から「C∞ 級関数のフーリエ級数は何らかの C∞ 級関数に一様収束

する」ということが即座に示せます。� �定理 13 (問題 6). f(x) のフーリエ級数は C∞ 級関数に一様収束する。� �

証明 (問題 6の解答). まず、補題 4より

af,02

+∞∑k=1

(af,k cos kx+ bf,k sin kx)

は一様収束するので各点収束します。そして、再び補題 4より

d

dx

{af,02

+n∑k=1

(af,k cos kx+ bf,k sin kx)

}=

n∑k=1

(af,k

d

dxcos kx+ bf,k

d

dxsin kx

)も一様収束します。よって、項別微分定理 7より、f(x) のフーリエ級数は C1 級で、導関数は

∞∑k=1

(af,k

d

dxcos kx+ bf,k

d

dxsin kx

)であることが分かりました。

三度補題 4より

d

dx

{n∑k=1

(af,k

d

dxcos kx+ bf,k

d

dxsin kx

)}=

n∑k=1

(af,k

d2

dx2cos kx+ bf,k

d2

dx2sin kx

)も一様収束します。よって f(x) のフーリエ級数の導関数は C1 級、つまり、f(x) は C2 級で、二

階導関数は∞∑k=1

(af,k

d2

dx2cos kx+ bf,k

d2

dx2sin kx

)であることが分かりました。以上、帰納法により、f のフーリエ級数が C∞ 級関数に一様収束す

ることが示せました。 □

f(x) から作ったフーリエ級数が、極限関数はわからないけれどもとにかく C∞ 級関数に収束す

ることがわかったわけです。あとはこの極限関数が f(x) 自身であってくれればめでたしめでたしですが、それを示すにはちょっとテクニカルな補題と非常に重要な三角関数の性質が要ります。� �補題 5. −π < a < b < π に対して

α(x) = cos(x− a+ b

2

)− cos

a− b

2+ 1

とおくと(図 6)

limn→∞

αn(x) =

0 x ∈ [−π, a) ∪ (b, π]

1 x = a, b

∞ x ∈ (a, b)

となる。� �

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第 12 回解答 24

� �

O

y

x

1

πba

図 6: α(x) のグラフ� �証明. 図より明らか、といってしまっても良いとは思いますが、一応説明も書いておきましょう。

導関数は

α′(x) = − sin(x− a+ b

2

)なので、α(x) は

(−π, a+b2

)で単調増加

(a+b2 , π

)で単調減少です。

−1 < α(−π) = α(π) < 1 α(a) = α(b) = 1

ですので、|α(x)| < 1 x ∈ [−π, a) ∪ (b, π]α(x) = 1 x = a, b

α(x) > 1 x ∈ (a, b)

ですから、

limn→∞

αn(x) =

0 x ∈ [−π, a) ∪ (b, π]

1 x = a, b

∞ x ∈ (a, b)

となります。 □

この α(x) を使うと次が示せます。� �補題 6. 周期 2π を持つ二つの連続関数 ϕ(x) と ψ(x) のフーリエ係数が一致すれば、ϕ = ψ

である。� �証明. ϕ ̸= ψ と仮定して矛盾を導きます。

ϕ(x0) > ψ(x0) となる x があるとしてかまいません。(なければ、ϕ と ψ の役割を入れ替えま

す。) ε = (ϕ(x0)−ψ(x0))2 とすると、0 < a < b < 2π なる a, b で閉区間 [a, b] 上 ϕ(x)−ψ(x) > ε と

なるものがあります。この a, b に対して

α(x) = 1 + cos(x− a+ b

2

)− cos

a− b

2

と定義します。

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第 12 回解答 25

任意の自然数 nに対して、αn(x)は 1, cosx, sinx, cos2 x, cosx sinx, sin2 x,. . . , cosn x, cosn−1 x sinx,. . .,sinn x たちの一次結合(線形結合)なので、1, cosx, sinx, . . ., cosnx, sinnx たちの一次結合です。実際、

α(x) = 1 − cosa− b

2+ cos

a+ b

2cosx− sin

a+ b

2sinx

なので、A = 1 − cos a−b2 , B = cos a+b2 , C = − sin a+b2 として

α(x) = A+B cosx+ C sinx

α2(x) = A2 + 2AB cosx+ 2AC sinx+B2 cos2 x+ 2BC cosx sinx+ C2 sin2 x

= A2 +B2 + C2

2+ 2AB cosx+ 2AC sinx+

B2 − C2

2cos 2x+BC sin 2x

α3(x) = · · ·

となります。よって、ϕ(x) と ψ(x) のフーリエ係数が一致するという仮定より、任意の n に対して∫ π

−π(ϕ(x) − ψ(x))αn(x)dx = 0

です。

さて、この式は∫ b

a

(ϕ(x) − ψ(x))αn(x)dx = −∫ a

−π(ϕ(x) − ψ(x))αn(x)dx−

∫ π

b

(ϕ(x) − ψ(x))αn(x)dx

と書き直せます。閉区間 [a, b] 上 ϕ(x) − ψ(x) > ε でしたので

左辺 > ε

∫ b

a

αn(x)dx

です。補題 5より、[a, b] 上 limn→∞

αn(x) = ∞ ですので、n → ∞ のとき左辺は ∞ に発散します。

一方、|ϕ(x) − ψ(x)| も周期 2π の連続関数ですので、最大値を持ちます。それを M とすると

|右辺 | ≤M

{∫ a

−π|αn(x)| dx+

∫ π

b

|αn(x)| dx}

です。補題 5より、[−π, a) ∪ (b, π] 上 limn→∞

αn(x) = 0 ですので、n → ∞ のとき右辺は 0 に収束します。

これで矛盾が導けました。 □

最後に簡単だが重要な三角関数の直交関係を用意しましょう。� �補題 7. 次が成り立ちます。

∫ π

−πcosmθ cosnθdθ =

0 (m ̸= n)

1 (m = n ̸= 0)

2 (m = n = 0)

∫ π

−πcosmθ sinnθdθ = 0

∫ π

−πsinmθ sinnθdθ =

{0 (m ̸= n, or m = n = 0)

1 (m = n ̸= 0)� �

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第 12 回解答 26

証明. 三角関数の積を和に直す公式

cosx cos y =12{cos(x+ y) + cos(x− y)}

cosx sin y =12{sin(x+ y) − sin(x− y)}

sinx sin y =12{cos(x− y) − cos(x+ y)}

を使えば、

∫ 2π

0

cosmθ cosnθdθ =12π

∫ π

−πcos(m+ n)θdθ +

12π

∫ π

−πcos(m− n)θdθ

∫ π

−πcosmθ sinnθdθ =

12π

∫ π

−πsin(m+ n)θdθ − 1

∫ π

−πsin(m− n)θdθ

∫ π

−πsinmθ sinnθdθ =

12π

∫ π

−πcos(m− n)θdθ − 1

∫ π

−πcos(m+ n)θdθ

となるので示せました。 □

これで念願の「フーリエ級数の収束先はもとの関数そのものである」を項別積分を利用して示す

ことができます。� �定理 14. f(x) から作ったフーリエ級数の収束先は f(x) 自身である。� �

証明. 周期 2π の C∞ 級関数 g(x) を f(x) のフーリエ級数の収束先としましょう。つまり

g(x) =af,02

+∞∑k=1

(af,k cos kx+ bf,k sin kx)

です。g(x) のフーリエ係数を求めましょう。定理 13により f(x) のフーリエ級数の g(x) への収束は一様収束なので、項別積分定理 6により項別に積分することができます。補題 7を使うと

ag,k =1π

∫ π

−πg(x) cos kxdx

=1π

∫ π

−π

{af,02

+∞∑l=1

(af,l cos lx+ bf,l sin lx)

}cos kxdx

=∞∑l=0

{af,lπ

∫ π

−πcos lx cos kxdx+

bf,lπ

∫ π

−πsin lx cos kxdx

}= af,k

bg,k =1π

∫ π

−πg(x) sin kxdx

=1π

∫ π

−π

{af,02

+∞∑l=1

(af,l cos lx+ bf,l sin lx)

}sin lxdx

=∞∑l=0

{af,lπ

∫ π

−πcos lx sin kxdx+

bf,lπ

∫ π

−πsin lx sin kxdx

}= bf,k

となります。つまり、g と f のフーリエ係数は一致します。よって補題 6より f = g が分かりま

した。これで、f(x) のフーリエ級数は f(x) 自身に一様収束することが示せました。 □

積分から作られるフーリエ展開の「おおらかさ」が味わえたでしょうか。なお、微分方程式への

応用は広義の範囲を逸脱してしまうので触れないことにします。ご了承ください。