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「釣り×IoT」というアイデアはどこから? 転勤で札幌に来た翌年の夏、知人に誘われて釣 りに行きました。釣りは子どものころちょっとやっ たことがある程度でしたが、やってみたらハマって しまって。ほぼ毎週末釣りをするようになりました。 それからしばらくして、村田製作所とMakuakeが 主催する「IoTアイディアコンテスト」の開催を知 り、釣りとIoTで何かできないか?とビジネスプラ ンを考え始めました。 株式会社スマートルアー 代表取締役 (おかむら ゆうき) 岡村 雄樹 2016年NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞 smartLure https://smartlure.co/ 2017年3月30日設立。 IoTを駆使し、釣りをさらに楽しむため のルアーやアプリを開発。世界初の“釣り人の能力を拡張す る”プロダクトを提供。 会社情報 新しいチームが、現在、会社を支えるメンバーのみな さんですね。それぞれの出会いは? 最初の出会いは、シリコンバレーでの研修中で す。ビッグデータを扱うことになるので、データ分 析をできる人を探していたところ、 “カリフォルニ アの釣りバカ数学屋”を紹介してもらう機会が あって。その後は、事業の具体化とともに「必要な 人材」も見えてくるので、フェイスブックなどを使っ て、「○○な釣りバカ知りませんか?」と、たくさん の人に発信し、エンジニアなどに出会うことがで きました。 必要だったと思いますが、仲間はどのように集めましたか? よね。ビジネスプランの実現にはIoTやアプリのエンジニアが 岡村さんは、学生時代バイオテクノロジーを専攻しています コンテストに参加する時点では、通っていたビジ ネススクールの卒業生が集まるフェイスブックで、 一 緒 にやってくれる人を探しました 。でも、この チームは「コンテスト出場」を目的として結成され たチームだったので、本格的に事業化する段階 で、新しいチームが必要になりました。 そのコンテストの直後、NoMaps NEDO Dream Pitch 地場で公表することに意味があると感じたんで す。その方が、人材集めにも有利ですし。当時、札 幌で開催される唯一のスタートアップ向けピッチ がNEDO Dream Pitchでした。 にも参加したのですね。 投資家のみなさんが見ているポイントは、「このビ ジネスは育つのか?」なので、それが伝わるように プレゼンします。「実現できるチームがいるか」「採 算が取れて、爆発的に伸びる可能性がある事業プ ランか」「創業者・チームの根性は」など、判断材料 になる部分をしっかりと説明して“もしかして、これ はいけるかな”と感じてもらうことが必要ですね。 出資を受けるには、ビジネスアイデアを理解しても らうことが重要だと思うのですが、釣りをしない方 への説明は難しそうですね。 メンバーの一部から共同創業者として投資を受 け たことから 始まり、銀 行 から の 助 成 金 、エン ジェル投資家からの投資、日本政策金融公庫か らの 融 資 、そして銀 行 系ファンドからの 投 資と、 多方面から資金を集めました。 では、実際の資金調達はどのように進みましたか? 会社としての今後の予定は、まず、2019年夏にセン サーを仕込んだルアーとアプリを実際の釣り人に 使ってもらって、反応を見る、ユーザーテストを行い ます。きっと、厳しいフィードバックもあるはずです が、リアルなユーザーの声を初めて聴く重要なス テップです。 将来的には、集めたデータを、釣り場の保全や釣り を長く楽しめる環境づくりに役立てたり、魚の習性 を研究して養殖法の開発などに貢献できたらいい なと思っています。 また、札幌発のスタートアップでグローバルな活躍 ができることも証明したいですね。東京はスタート アップには向いているかもしれませんが、釣りには 向いていません。ローカルの特性を活かしたスター トアップの躍進は現実味を帯びてきています。 個人的な夢は、事業を軌道に乗せて安定した収益 を出せるようになったら、誰かに会社を任せて、釣り しながら世界を旅したいですね。 今後の目標や夢は? 普段はつながりのない人に向けて自分のプランを 語ることだと思います。お客さんになりそうな人に アイデアを話してみて、「どうやって課題を解決して いけるか」や「おもしろがってくれるか」を確認すべ きです。コンテストに出ると、メンターや審査員か ら厳しい指摘を受けることになりますが、自分が見 落としていた点に気付くことができるし、話題にも なるので、仲間集めや投資家集めに役立ちます。 副業規定に抵触しなければ、在職中でもコンテス ト参加や起業は可能です。もやもやしているなら、 ぜひ行動を。 コンテストに出場する時、起業する時に一番大切な ことは何でしょうか? 起業家の成長を支援する機関であるインキュベー ターのプログラムにエントリーしてみる。じっくりと 話しを聞いてくれるので、アイデアのブラッシュアッ プができます。また、SNSなどで情報収集をして、起 業イベントに行ってみる。とにかく、人に話すことが 重要。特に、スタートアップは面白さが目立つこと が大事です。支援する側は、面白いアイデアを持っ ている人を探しているので、思いついた人はレアな 原石のようなもの。宝石を探している人に発見して もらえるように、自分の存在を発信すべきです。 具体的な行動として、どんな選択肢があるでしょうか? 起業したての頃は、エンジニアの高額な給料のこ とを考えて、先に資金調達が必要だと思っていま した。しかし、自分はエンジニアではないため、 IoT機器やスマホアプリを作ることができず、当 然、ビジネスを実現できるチームがいないと資金 も得られません。Dream Pitchでマッチングして いただいたメンターからも「資金よりもチームが 先だろ」と叱られました。 SNSも最大限活用したようですが、起業する際の仲間 集めは大きなハードルですね。 受 賞 者インタビュー 岡村氏のアイデアには、自然保護や水産 資源の保護など、魚が置かれた環境を大 きく変化させる可能性があります。好きな ことから世界へ。もうすぐ、宝石として輝き だす日が訪れます。 現在に至るまで 41歳  42歳  44歳  45歳 47歳 大学卒業後、東京の大手民間企業に就職 ビジネススクール卒業(MBA取得) 転勤で札幌へ IoTアイディアコンテスト 優秀賞 NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞 シリコンバレーでの研修に参加 勤務先を退職 スマートルアー設立 現在 22

2016年NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞 岡村 …...2016年NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞 smartLure 2017年3月30日設立。IoTを駆使し、釣りをさらに楽しむため

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Page 1: 2016年NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞 岡村 …...2016年NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞 smartLure 2017年3月30日設立。IoTを駆使し、釣りをさらに楽しむため

「釣り×IoT」というアイデアはどこから?転勤で札幌に来た翌年の夏、知人に誘われて釣りに行きました。釣りは子どものころちょっとやったことがある程度でしたが、やってみたらハマってしまって。ほぼ毎週末釣りをするようになりました。それからしばらくして、村田製作所とMakuakeが主催する「IoTアイディアコンテスト」の開催を知り、釣りとIoTで何かできないか?とビジネスプランを考え始めました。

株式会社スマートルアー 代表取締役

(おかむら ゆうき)岡村 雄樹2016年NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞

smartLurehttps://smartlure.co/2017年3月30日設立。IoTを駆使し、釣りをさらに楽しむためのルアーやアプリを開発。世界初の“釣り人の能力を拡張する”プロダクトを提供。

会社情報

新しいチームが、現在、会社を支えるメンバーのみなさんですね。それぞれの出会いは?

最初の出会いは、シリコンバレーでの研修中です。ビッグデータを扱うことになるので、データ分析をできる人を探していたところ、“カリフォルニアの釣りバカ数学屋”を紹介してもらう機会があって。その後は、事業の具体化とともに「必要な人材」も見えてくるので、フェイスブックなどを使って、「○○な釣りバカ知りませんか?」と、たくさんの人に発信し、エンジニアなどに出会うことができました。

必要だったと思いますが、仲間はどのように集めましたか?よね。ビジネスプランの実現にはIoTやアプリのエンジニアが岡村さんは、学生時代バイオテクノロジーを専攻しています

コンテストに参加する時点では、通っていたビジネススクールの卒業生が集まるフェイスブックで、一緒にやってくれる人を探しました。でも、このチームは「コンテスト出場」を目的として結成されたチームだったので、本格的に事業化する段階で、新しいチームが必要になりました。

そのコンテストの直後、NoMaps NEDO Dream Pitch

地場で公表することに意味があると感じたんです。その方が、人材集めにも有利ですし。当時、札幌で開催される唯一のスタートアップ向けピッチがNEDO Dream Pitchでした。

にも参加したのですね。

投資家のみなさんが見ているポイントは、「このビジネスは育つのか?」なので、それが伝わるようにプレゼンします。「実現できるチームがいるか」「採算が取れて、爆発的に伸びる可能性がある事業プランか」「創業者・チームの根性は」など、判断材料になる部分をしっかりと説明して“もしかして、これはいけるかな”と感じてもらうことが必要ですね。

出資を受けるには、ビジネスアイデアを理解してもらうことが重要だと思うのですが、釣りをしない方への説明は難しそうですね。

メンバーの一部から共同創業者として投資を受けたことから始まり、銀行からの助成金、エンジェル投資家からの投資、日本政策金融公庫からの融資、そして銀行系ファンドからの投資と、多方面から資金を集めました。

では、実際の資金調達はどのように進みましたか?

会社としての今後の予定は、まず、2019年夏にセンサーを仕込んだルアーとアプリを実際の釣り人に使ってもらって、反応を見る、ユーザーテストを行います。きっと、厳しいフィードバックもあるはずですが、リアルなユーザーの声を初めて聴く重要なステップです。将来的には、集めたデータを、釣り場の保全や釣りを長く楽しめる環境づくりに役立てたり、魚の習性を研究して養殖法の開発などに貢献できたらいいなと思っています。また、札幌発のスタートアップでグローバルな活躍ができることも証明したいですね。東京はスタートアップには向いているかもしれませんが、釣りには向いていません。ローカルの特性を活かしたスタートアップの躍進は現実味を帯びてきています。個人的な夢は、事業を軌道に乗せて安定した収益を出せるようになったら、誰かに会社を任せて、釣りしながら世界を旅したいですね。

今後の目標や夢は?

普段はつながりのない人に向けて自分のプランを語ることだと思います。お客さんになりそうな人にアイデアを話してみて、「どうやって課題を解決していけるか」や「おもしろがってくれるか」を確認すべきです。コンテストに出ると、メンターや審査員から厳しい指摘を受けることになりますが、自分が見落としていた点に気付くことができるし、話題にもなるので、仲間集めや投資家集めに役立ちます。副業規定に抵触しなければ、在職中でもコンテスト参加や起業は可能です。もやもやしているなら、ぜひ行動を。

コンテストに出場する時、起業する時に一番大切なことは何でしょうか?

起業家の成長を支援する機関であるインキュベーターのプログラムにエントリーしてみる。じっくりと話しを聞いてくれるので、アイデアのブラッシュアップができます。また、SNSなどで情報収集をして、起業イベントに行ってみる。とにかく、人に話すことが重要。特に、スタートアップは面白さが目立つことが大事です。支援する側は、面白いアイデアを持っている人を探しているので、思いついた人はレアな原石のようなもの。宝石を探している人に発見してもらえるように、自分の存在を発信すべきです。

具体的な行動として、どんな選択肢があるでしょうか?

起業したての頃は、エンジニアの高額な給料のことを考えて、先に資金調達が必要だと思っていました。しかし、自分はエンジニアではないため、IoT機器やスマホアプリを作ることができず、当然、ビジネスを実現できるチームがいないと資金も得られません。Dream Pitchでマッチングしていただいたメンターからも「資金よりもチームが先だろ」と叱られました。

SNSも最大限活用したようですが、起業する際の仲間集めは大きなハードルですね。

受賞者インタビュー

岡村氏のアイデアには、自然保護や水産資源の保護など、魚が置かれた環境を大きく変化させる可能性があります。好きなことから世界へ。もうすぐ、宝石として輝きだす日が訪れます。

現在に至るまで

41歳 42歳 44歳       45歳  47歳

大学卒業後、東京の大手民間企業に就職ビジネススクール卒業(MBA取得)転勤で札幌へIoTアイディアコンテスト 優秀賞NoMaps NEDO Dream Pitch 最優秀賞シリコンバレーでの研修に参加勤務先を退職スマートルアー設立現在

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