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平成28年度経済産業省委託事業
平成28年度グリーン貢献量認証制度等基盤整備事業
(個人向け補助事業に係るプログラム型プロジェクトの運営・管理)
調査報告書
平成29年3月31日
環境経済株式会社
目 次
1.実施事業の概要 ....................................................................... 1
事業の目的及び内容 ............................................................... 1 1.1
実施概要 ......................................................................... 1 1.2
2. 各団体の運営・管理 ................................................................. 3
会員の管理 ....................................................................... 3 2.1
事務局の運営 ..................................................................... 4 2.2
3. モニタリング報告書の作成及び認証委員会への申請 ..................................... 6
サンプリング対象者の抽出 ......................................................... 6 3.1
モニタリング ..................................................................... 8 3.2
原単位の算定 ..................................................................... 9 3.3
二酸化炭素排出削減量の算定 ...................................................... 10 3.4
審査対応及び制度事務局への申請手続き ............................................ 10 3.5
4. モニタリング報告書変更事項 ........................................................ 12
5. 特記事項 .......................................................................... 14
6. 来年度の課題 ...................................................................... 16
7. アンケート調査 .................................................................... 17
アンケート調査概要 .............................................................. 17 7.1
アンケート調査結果 .............................................................. 17 7.2
1
1.実施事業の概要
事業の目的及び内容 1.1
経済産業省では、平成25年度より、国内の地球温暖化対策の一つとして、省エネ設備の導入や
再生可能エネルギーの活用による温室効果ガスの排出削減量等をクレジットして国が認証する「J
-クレジット制度」を実施している。
J-クレジット制度では、平成25年度より、経済産業省が実施する個人向け省エネ・新エネ機
器導入補助事業から生じる排出削減分を環境価値としてクレジット化することを義務づけることに
よって、1件当たりの排出削減量が少ない家庭部門における埋もれた環境価値を取りまとめ、クレ
ジット認証を行っている。
本事業では、これらの個人向け温室効果ガスの排出削減活動の取りまとめを行うとともに、制度
参加者に対してアンケートを実施する事で、より効果的な個人向け排出削減活動へ向けて展開を図
った。また、認証されたJ-クレジットは、経済産業省が別途実施したクレジト売却事務の受託事
業者に対して移転事務手続きを行った。
実施概要 1.2
平成25年度から平成27年度までの個人向け省エネ・新エネ機器導入補助事業について、個々
の排出削減量をバンドリングするためのプログラム型排出削減プロジェクトの運営・管理を行った。
(1) 対象
対象は表1に示す6倶楽部である。
表1 本事業で対象とした補助事業
○グリーン・リンケージ倶楽部
倶楽部名 補助事業名称
太陽光発電
平成23年度住宅太陽光発電導入支援対策補助事業
平成23年度第3次補正住宅用太陽光発電導入支援復興対策基金造成事業
平成23年度第3次補正住宅用太陽光発電高度普及促進復興対策基金造成事業
平成24年度住宅用太陽光発電導入支援復興対策事業
平成24年度住宅用太陽光発電高度普及促進復興対策事業
燃料電池
平成23年度民生用燃料電池導入支援補助金
平成23年度第3次補正民生用燃料電池導入支援補助金
平成24年度民生用燃料電池導入支援補助金
平成24年度予備費民生用燃料電池導入緊急対策事業
電気自動車
平成23年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
(うち、電気自動車)
平成24年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
(うち、電気自動車)
2
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
倶楽部名 補助事業名称
太陽光発電 平成25年度住宅用太陽光発電導入支援復興対策事業
燃料電池
平成25年度民生用燃料電池導入支援補助金
平成25年度補正民生用燃料電池導入支援補助金
平成26年度補正民生用燃料電池導入支援補助金
平成28年度民生用燃料電池導入支援補助金
電気自動車
平成25年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
(うち、電気自動車)
平成26年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
(うち、電気自動車)
平成27年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
(うち、電気自動車)
平成28年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
(うち、電気自動車)
※但し、平成25年4月1日以降の設備導入分として太陽光発電の会員は平成24年度住宅用太陽光発
電高度普及促進復興対策事業を、燃料電池の会員は平成24年度民生用燃料電池導入緊急対策費補助金
を、電気自動車の会員は平成24年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金を含んでいる。
(2)認証を申請する期間
○グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電と燃料電池の2倶楽部のみ)
平成26年4月1日~平成28年4月30日
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
平成27年12月1日~平成28年11月30日
(3)プロジェクトの更新
国内クレジット制度でプロジェクト登録されたグリーン・リンケージ倶楽部は、J-クレジ
ット制度に移行済であったが、太陽光発電、燃料電池は運営・管理者の変更にともなうプロジ
ェクト更新の申請・登録を行うとともにクレジットの認証申請をした。なお、残る電気自動車
は平成29年度に更新申請、認証申請する予定である。
3
2. 各団体の運営・管理
会員の管理 2.1
グリーン・リンケージ倶楽部、J-グリーン・リンケージ倶楽部における二酸化炭素排出削減量
を算定するために必要な事業者情報を入手、データベースへの入力及び更新等を行った。
(1)会員情報の取得
平成28年度の事務局受託にあたり、各倶楽部の会員情報を経済産業省から取得した。その
後の新規会員情報等についても補助金執行団体から経済産業省を経由して取得した。モニタリ
ング依頼に対する回答で得られた会員情報は、会員情報の更新に使用した。
補助金を申請しようとする消費者に J-クレジット制度およびJ-グリーン・リンケージ倶
楽部の理解を深められるよう、わかりやすく説明したチラシを作成し、補助金執行団体のホー
ムページ上での告知、補助金の公募要領とともに配付を依頼した。
図1 J-グリーン・リンケージ倶楽部(燃料電池)のパンフレット
(2)重複会員の管理
他のプロジェクトとの会員の重複確認は一部のプロジェクトの運営・管理者との照合及び認
証申請時のJ-クレジット制度事務局による重複確認を実施してきた。しかし、他のプロジェ
クトの運営・管理者の連絡先、担当者が公開されていないため、全てのプロジェクトとの重複
確認ができなかった。J-クレジット制度事務局でプロジェクトの情報を管理していることか
ら、経済産業省との協議の上、各プロジェクトが申請の際、J-クレジット制度事務局が重複
確認を行うこととした。これにより平成28年5月以降は他のプロジェクトからの重複確認依
頼に対し、J-クレジット制度事務局へ依頼するよう案内した。
(3)個別情報の取扱
モニタリング依頼の回答・データ提出時に、対象設備の増設や廃棄、会員の転居や死亡など
会員情報が得られる。これらの情報に対して表2の基準を作成し、会員情報の更新を行った。
4
表2 会員情報に対する処理基準
○設備に起因するもの
項目 対象設備 処理方法
売却 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 退会
貸付 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 退会
既存、滅失 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 退会
不具合による交換 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 退会
移設 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 会員情報の更新
車両ナンバーの変更 電気自動車 会員情報の更新
○会員に起因するもの
項目 対象設備 処理方法
死亡、相続 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 会員情報の更新
転居 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 会員情報の更新
住所表示の変更 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 会員情報の更新
郵便の配達不能 太陽光発電、燃料電池、電気自動車 退会
なお、上記の項目に該当する情報を得た場合は会員情報入力管理票を起票し、2 名以上によ
る二重チェックで処理内容を確認し、データベースを修正した。
(4)会員規約
会員規約の倶楽部間に不統一の個所が認められたため、揃える修正した。
(5)セキュリティ管理
経済産業省情報セキュリティポリシー、経済産業省情報セキュリティ対策基準、政府機関の
情報セキュリティ対策のための統一基準群に従い、会員情報を厳格に管理した。
事務局の運営 2.2
(1)事務局の告知
事務局としての窓口を平成28年度の受託者である環境経済株式会社のホームページ上に掲
載し、グリーン・リンケージ倶楽部、J-グリーン・リンケージ倶楽部の趣旨及び概要等を告
知した。
(2)問合せ対応
事務局専用の電話番号、メールアドレスを設定、これを事務局ホームページに掲載し、会員
からの各種問合せに対応した。
(3)事務局の移転
事務局の移転に伴い、所在地及び電話番号の変更をホームページで告知するとともに経済産
業省、J-クレジット事務局並びに補助金執行団体等の関係各所に連絡のうえ必要な手続きをし
た。
5
図2 ホームページ上の事務局の案内
6
3. モニタリング報告書の作成及び認証委員会への申請
サンプリング対象者の抽出 3.1
J-クレジット制度で規定されたサンプリング手法、プロジェクト計画書に基づき層化無作為抽出
法を適用し各倶楽部会員にモニタリングを依頼した。
(1)サンプリング
サンプリング手法に必要な有効回答数の算定は、J-クレジット制度実施規定に基づき下記の計
算式にて求めた。母集団は各倶楽部の会員総数、母集団平均値を90%信頼度、±10%誤差とし
た。
10.25
1N
2k
CI
Nn
2
+−
≥
各倶楽部の母集団数及び上式により算定された必要サンプル数を表2に示す。
表3 各倶楽部の必要サンプル数
倶楽部名 母集団数 必要サンプル数
グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電) 367,062 68
グリーン・リンケージ倶楽部(燃料電池) 16,723 68
J-グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電) 299,554 68
J-グリーン・リンケージ倶楽部(燃料電池) 94,676 68
J-グリーン・リンケージ倶楽部(電気自動車) 7,566 68
(2)会員属性の反映
グリーン・リンケージ倶楽部、J-グリーン・リンケージ倶楽部とも、対象となる会員は、
① A:前回報告の対象となった会員
② B1:新規に入会した会員で今回対象期間の開始日迄に設備を導入済みの会員
③ B2:今回対象期間内に設備を導入した会員
の3つの異なる属性から構成される。これらの属性に係るゆらぎを防止するため、本業務では
プロジェクト計画書に従い層化無作為抽出法を用いてサンプリングを実施した。
なお、層別のサンプル数は会員数に応じた比例配分とし、母集団平均値の推定誤差の緩和を
図った。
n:サンプル数
N:各倶楽部の母集団数
k:正規分布の棄却限界値(90%信頼とし、1.65とする。)
CI:許容誤差(90%信頼区間で許容誤差±10%とし、0.2とする。)
7
(3)層別依頼数
平成27年度のJ-グリーン・リンケージ倶楽部の有効回答数が必要回答数を大きく上回った
ことから今回の依頼数を決定した。J-グリーン・リンケージ倶楽部の依頼数は各倶楽部とも7
00件までに減らした。一方、設備導入から日数が経っているグリーン・リンケージ倶楽部につ
いては1,000件とした。
J-グリーン・リンケージ倶楽部(電気自動車)では、認証申請後に日産ゼロエミッションフ
ァンドと 7,801名の会員の重複が確認され、これら重複会員は退会としたものの、電気自動車は
有効回答率が高く、必要な有効回答数を確保できた。また、グリーン・リンケージ倶楽部(電気
自動車)はモニタリングデータ収集を行ったが、認証申請は平成29年度以降とした。(P12参
照)
表4 各倶楽部の依頼数
○グリーン・リンケージ倶楽部
倶楽部名 層 会員数 依頼数 有効回収数
P43
太陽光発電
A 367,062 1,000 182
B1 0 0 -
B2 0 0 -
合計 367,062 1,000 182
P44
燃料電池
A 16,712 1,000 186
B1 0 0 -
B2 0 0 -
合計 16,712 1,000 186
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
倶楽部名 層 会員数 依頼数 有効回収数
P1
太陽光発電
A 299,554 700 134
B1 0 0 -
B2 0 0 -
合計 299,554 700 134
P2
燃料電池
A 62,313 460 106
B1 6,531 48 15
B2 25,832 192 82
合計 94,676 700 203
P3
電気自動車
A 5,815 266 103
B1 328 14 4
B2 1,423 61 24
合計 7,566 341 131
※P3は日産ゼロエミッションファンドとの重複会員差引後の件数
8
モニタリング 3.2
層化無作為抽出法により選出された会員に対して下記のようにモニタリングを依頼した。
(1)送付文書
対象の会員に以下で構成する送付文書を郵送し、モニタリンデータの提出を依頼した。
①「モニタリング調査へのご協力のお願い」
②「モニタリング方法とモニタリング結果の返信について」
③「よくあるご質問」
④「会員規約」
⑤「J-グリーン・リンケージ倶楽部について(グリーン・リンケージ倶楽部について)」
⑥「モニタリンデータ返送用台紙」
⑦「アンケート」
⑧「返信用封筒」
送付文書は、補助金受給時に理解のないまま会員となった申請者が多いことを想定し、専門的
な技術用語は極力排除し、趣旨説明からデータの取得方法まで図表を多用し、わかりやすい内容
とすることに留意した。
図3 送付文書
(2)日程
母集団の確定からデータ回収期限までの日程は下記の通り実施した。
表5 モニタリング日程
グリーン・リンケージ倶楽部 J-グリーン・リンケージ倶楽部
母集団の締切日 3月 31日現在 10月 31日現在
依頼書面の発送 4月 23日 11月 22日
モニタリンデータ取得期間 5月 1日~5月 14日 12月 1日~12月 14日
データ回収期限 5月 16日 12月 16日
9
(3)モニタリング調査の項目と方法
モニタリング項目はプロジェクト計画書の規定通り変更はない。
表6 モニタリング項目一覧
対象設備 モニタリング項目 モニタリング方法
太陽光発電
・太陽光発電システムの累積発電量
・太陽光発電システムの発電量のうち電力
系統に逆潮流した累積売電量
・パワーコンディショナーまたはモニ
ター表示器の表示値を写真撮影
・電力会社が発行する購入電力量の検
針票の写し、又は写真撮影
燃料電池 ・事業実施後の燃料電池による累積発電量 ・モニター表示器の累積発電量を写真
撮影
電気自動車 ・事業実施後の電気自動車の走行距離 ・メーターパネルの累積走行距離を写
真撮影
(4)モニタリングデータの回収
モニタリングデータの回収方法は2種類を用意した。
①プリントした写真を台紙に貼付し返信用封筒で郵送
②写真のデータをメールに添付し送信する
原単位の算定 3.3
原単位サンプル平均値は、プロジェクト計画書に従い表7の通り算定した。平成28年度の各原
単位は表8の通りである。
表7 原単位の算定
倶楽部名 算定原単位 原単位算定方法
太陽光発電
設備容量に対する1日あたり
の発電量
発電量原単位(kWh/kW/d)=累積発電量(kWh)
÷設備容量(kW)÷稼働日数(d)
設備容量に対する1日あたり
の売電量
売電量原単位(kWh/kW/d)=累積売電量(kWh)
÷設備容量(kW)÷稼働日数(d)
燃料電池 設備容量に対する1日あたり
の発電量
発電量原単位(kWh/W/d)=累積発電量(kWh)
÷設備容量(W)÷稼働日数(d)
電気自動車 1日あたりの走行距離 走行量原単位(km/d)=累積走行距離(km)
÷稼働日数(d)
表8 原単位
○グリーン・リンケージ倶楽部
原単位 前回原単位
太陽光発電 発電量(kWh/kW/d) 3.277 3.343
売電量(kWh/kW/d) 2.254 2.323
燃料電池 (kWh/W/d) 0.009371 0.009458
※プロジェクト更新後1回目につき前回の値は算定に使用せず
10
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
原単位 前回原単位
太陽光発電 発電量(kWh/kW/d) 3.190 3.286
売電量(kWh/kW/d) 2.350 2.485
燃料電池 (kWh/W/d) 0.009028 0.008411
電気自動車 (km/d) 29.637 33.991
二酸化炭素排出削減量の算定 3.4
プロジェクト計画書に従い二酸化炭素の排出削減量を算定した。各倶楽部の二酸化炭素排出削減
量は表9の通りである。
表9 二酸化炭素排出削減量
○グリーン・リンケージ倶楽部
ベースライン排出量
(kg-CO2)
事業実施後排出量
(kg-CO2)
排出削減量
(kg-CO2)
太陽光発電 699,534,996.3 0 699,370,697
燃料電池 74,325,648.9 46,319,975.9 27,997,304
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
ベースライン排出量
(kg-CO2)
事業実施後排出量
(kg-CO2)
排出削減量
(kg-CO2)
太陽光発電 255,003,990.8 0 254,877,689
燃料電池 186,805,068.1 110,901,130.1 75,857,038
電気自動車 8,954,052.7 3,877,125.6 5,073,025
審査対応及び制度事務局への申請手続き 3.5
モニタリング報告書、モニタリング報告書(別紙)及び削減活動リストを作成し、
①グリーン・リンケージ倶楽部は第20回認証委員会
②J-グリーン・リンケージ倶楽部は第22回認証委員会
に認証申請を行った。審査機関はJ-クレジット制度事務局により一般社団法人日本能率協会が選
任された。審査にあたり、提出した資料は下記の通りである。
<各倶楽部の運営・管理に係る資料>
・会員規約
・補助金支給主体から提供を受ける電子媒体及び独自で入手した事業者導入設備の仕様に係る資
料
<CO2削減量ダブルカウント防止に係る資料>
・J-クレジット制度事務局の調査による重複会員のリスト
<サンプル対象者の抽出、モニタリングに係る資料>
11
・サンプリング対象者抽出までのプロセスを示した資料
・モニタリングで取得したデータ(会員から郵送された紙媒体およびメールで送られた証憑)
・モニタリングで用いられた計測器の表示精度を示す資料
・対象設備の仕様を示す資料
<CO2削減量等の実績算定に係る資料>
・モニタリングデータから平均原単位を算定した集計シート
・データベースのプログラムの仕様書
・削減活動リスト
12
4. モニタリング報告書変更事項
本事業の遂行にあたり、昨年度から変更を行った点は以下の通りである。
(1)プロジェクト更新
グリーン・リンケージ倶楽部は第18回認証委員会でのクレジット認証に向け運営・管理者
の変更を計画変容で進めたが、J-クレジット制度でのプロジェクト更新が必要との判断がな
された。グリーン・リンケージ倶楽部は、国内クレジット制度下で排出削減事業計画を登録、
J-クレジット制度に移行し運営・管理者である日本テピア株式会社のもとで排出削減実績報
告書が認証されていたため、運営・管理者の変更が必要となった。合わせてプロジェクトを更
新することとしたところ、形式的な変更ではないとの指摘があり、これは「国内における地球
温暖化対策のための排出削減・吸収量認証制度(J-クレジット制度) 実施規程(プロジェク
ト実施者向け)Ver.2.3」において下記規定に基づくものであり、再妥当性確認が必要とされた。
6.5.2 形式的な変更以外の変更が生じた場合
形式的な変更以外の変更が生じた場合、プロジェクト実施者は、検証時に本実施規程
6.3.3に定める提出物に加えて、プロジェクト計画変更届を検証機関に提出し、その内容も
含めて検証を受けなければならない。
検証の結果、検証機関が改めて妥当性確認が必要であると判断した場合は、変更届の内容
について再妥当性確認を経て、制度管理者にプロジェクト計画変更届及び元々のプロジェク
ト計画書を提出し、プロジェクト再登録の申請を行わなければならない。
これにより、第19回認証委員会にプロジェクト更新を申請し、登録後第20回認証委員会
にクレジット認証申請した。なお、審査費用支援の規定から太陽光発電と燃料電池の2倶楽部
の更新を実施し、電気自動車は平成29年度に実施することとした。
国内クレジット制度ではプログラム型プロジェクトの個人の実施者に対しても経済的障壁の
有無、投資回収年3年以上を算定の対象としているが、更新プロジェクトについてJ-クレジ
ット制度事務局に確認し、「更新プロジェクトは追加性の評価を省略し、旧制度下の追加性の評
価における判断を尊重する」との判断がされたため、投資回収年不適合の対象となる会員を算
定除外のまました。なお算定から除外した会員は太陽光発電 16,928 名、燃料電池 2 名である。
(2)プロジェクト更新時の変更事項
① 運営・管理者の変更
日本テピア株式会社から環境経済株式会社
② 太陽光発電の原単位計算方法を変更
排出削減事業計画では「モニター表示器の写真により提出を受けた会員については、表示値
がパワーコンディショナーによる電力損失が生じる前の直流電力である可能性が想定されるた
め、得られた発電量データにパワーコンディショナーの変換効率を乗じ発電量モニタリング結
果とし」と記載があり、これに沿ったモニタリング報告を作成した。
J-クレジット制度に登録されている他の類似の太陽光発電のプログラム型プロジェクト
(方法論EN-R-002)は18プロジェクトあり、上記の計算方法を採用したのは1プロジェク
トだけであった。一方でパワーコンディショナーのメーカー主要12社に問合せ、9社から、
いずれもパワーコンディショナーによる変換後の交流電力の表示であるとの回答を得た。回答
のあったメーカー9社は太陽光発電システムでは直流電力の表示は想定されないと判断した。
13
加えて会員の設備の約 80%を占めることから、当該箇所を削除の上更新申請し承認された。
(3)変更届
J-グリーン・リンケージ倶楽部では認証申請と同時に変更届を提出し受理された。これは運
営・管理者である環境経済株式会社の所在地の変更と、太陽光発電においてグリーン・リンケー
ジ倶楽部と同様に原単位計算方法を変更した。
14
5. 特記事項
平成28年度委託事業を通して特に報告すべき事項は以下の通りである。
(1)災害への対応
平成28年4月14日に熊本県を震央とするマグニチュード 6.5 の地震があり、全半壊の住
宅が4万棟を超える被害が報告され、熊本県全域が激甚災害に指定された。グリーン・リンケ
ージ倶楽部、J-グリーン・リンケージ倶楽部の会員も被害を受けていることが予想されるた
め、対応方針について経済産業省と協議し、
① 熊本県の会員はモニタリングの依頼を発送しない
② 熊本県の会員は震災日まで算定する
③ 補助金執行団体に会員情報を確認し、変更なき場合は次年度から再開する
以上を確認し実施した。
ア)排出削減量の算定について
○グリーン・リンケージ倶楽部
認証を申請する期間が平成26年4月1日から平成28年4月30日と地震後の期間が短
く、地震の影響度が小さいことから算定に考慮しないこととした。
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
認証を申請するモニタリング期間が平成27年12月1日から平成28年11月30日で
あり、震災後の期間が7ヶ月を超えるため影響度を考慮し、熊本県の会員の算定を4月14
日までとし、震災後の期間を算定から除外した。
表10 熊本県の会員数
○グリーン・リンケージ倶楽部
会員数 熊本県の会員数
モニタリング依頼数
熊本県以外 熊本県 合計
太陽光発電 383,993 9,261(2.4%) 981 18 1,000
燃料電池 16,735 111(0.7%) 992 8 1,000
※会員数は平成 28年 3月末現在
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
会員数 熊本県の会員数
モニタリング依頼数
熊本県以外 熊本県 合計
太陽光発電 299,797 7,085(2.7%) 682 18 700
燃料電池 81,197 660(0.8%) 691 9 700
電気自動車 10,490 191(1.8%) 692 8 700
※会員数は平成 27年 10月末現在
15
図4
(2)大阪ガスの新規事業
J-グリーン・リンケージ倶楽部(燃料電池)
のモニタリング回答のうち8件の画像に売電量の
表示(図4)があったことから調査の結果、平成
28年4月より大阪ガスが売電をセットにした燃
料電池の販売を開始していたことが判明した。
審査機関と協議の結果、プロジェクト計画書で
は売電について規定がないが、自家消費分の値は
採用できるとした。なお、大阪ガスに総発電量が
売電量と自家用の合計であることを確認した。
(3)異常値の判断
図5はグリーン・リンケージ倶楽部のモニタリングデータで
ある。これを原単位の下記計算式にあてはめると
原単位=累積発電量÷設備導入からの日数÷設備容量
=49,800kWh÷1,597 日÷4.3kW=7.252kWh/kW/d
となり、これまでの発電量原単位 3.277kWh/kW/dの2倍を超え、
気象条件の差を考慮しても過大である。
太陽光発電協会の計算式(年間発電電力量=年間日射量×シス
テム出力係数)に NEDO の日射量最大値(5.47kWh/m3)を用い
て試算すると 4.43 kWh/kW/d が得られ、これを上回る値は何らかの原因があると思われる。そ
の原因として太陽光発電パネルの増設などが考えられる。したがって太陽光パネルを増設した
会員が一定数存在していると考えられる。
単位出力あたりの発電量が 4.43 kWh/kW/d を超える会員は、原単位平均値より 2σ 以上大き
い値の会員に一致したことから、統計的手法により平均値より 2σ 以上大きい値は算定対象か
ら除外した。
(4)定時報告
本事業は、その遂行上に予期しえない様々な事象の発生は避けられない。これら事象の対応は
情報の共有化が重要であり、経済産業省に対し月一回程度の定期報告を行った。
138-N412 形・138-N413 型取扱説明書 大阪ガスホームページより
図5
16
6. 来年度の課題
平成28年度委託事業を通して得られた課題は以下の通りである。
(1)機器の仕様変更、モデルチェンジ
① 燃料電池
大阪ガスの燃料電池が売電に対応するような新機種が発売され、プロジェクトの計画段階
では想定していない事象が起きた。
改良による機器のモデルチェンジが常に行われており、補助金執行団体のホームページ等
の補助対象機種の追加情報を定期的に確認し、新型機種の仕様の入手を確実に行う。やむを
えず仕様が入手出来なかった場合は、該当機器の会員の二酸化炭素排出削減量を算定除外と
する。
② 電気自動車
テスラ社の電気自動車は原単位の算出に必要な仕様書等の提供がされていないため、算定
から除外している。登録台数の増加を見込み継続的に提供を促す。
また、他メーカーから新型車が登録された場合、補助金執行団体が公表する補助対象形式
の情報を入手し、各メーカーのカタログ等を収集する。
17
7. アンケート調査
モニタリング調査の依頼時にアンケートを同封し、モニタリング調査の運営や会員の意識等につい
て情報を収集した。
アンケート調査概要 7.1
本事業におけるモニタリング依頼者を対象としてアンケート調査を実施した。対象者から得た意見、
要望等を分析することで、今後本事業を継続的に運営していくために必要な課題について検討した。
アンケートは「J-グリーン・リンケージ倶楽部について」、「モニタリング調査へのご協力のお願い」、
「台紙」と同時に送付し、モニタリング結果と同時に回収した。なお、グリーン・リンケージ倶楽部、
J-グリーン・リンケージ倶楽部とも設問は同一とした。
アンケート調査結果 7.2
(1) アンケート回収実績
各倶楽部のアンケート回収実績は以下の通りである。
モニタリングデータの回答と同様に回答率は設備導入の新しいJ-グリーン・リンケージ倶楽
部が高い結果となっている。なお、モニタリングデータの回答期限後もアンケートを受け付けた
ため、回答数はモニタリングデータ数より多い。
○グリーン・リンケージ倶楽部
回答件数 回答率
太陽光発電 276 28.1%
燃料電池 377 38.0%
全体 653 33.1%
○J-グリーン・リンケージ倶楽部
回答件数 回答率 前回回答件数 前回回答率
太陽光発電 209 30.6% 325 32.5%
燃料電池 283 41.0% 359 35.9%
電気自動車 323 46.7% 477 47.7%
全体 815 39.5% 1,161 38.7%
18
(2)アンケートに対する回答
① J-グリーン・リンケージ倶楽部(グリーン・リンケージ倶楽部)の認知度
補助金支給団体を挙げた会員は電気自動車が最も多い。これはJ-グリーン・リンケージ倶
楽部のパンフレットを配布している効果と考えられることから、燃料電池普及促進協会にも協
力を求めていくことが有効と考える。 一方、設置業者からの説明を挙げた会員は電気自動車が最も少ない。自動車販売店の協力が必
要と考える
設問1
J-グリーン・リンケージ倶楽部(グリーン・リンケージ倶楽部)の会
員であることは、次の何でお知りになりましたか。
(以下各項目とも複数回答あり)
選択肢
1 設置業者からの説明
2 補助金支給主体の説明資料
3 本資料で初めて知った
4 その他(自由記述欄)
図6 J-グリーン・リンケージ倶楽部
太陽光発電 燃料電池
設置業
者からの
説明 5% 補助金
支給団
体 17%
本資料で
初めて
知った
78%
電気自動車
19
図7 グリーン・リンケージ倶楽部
② モニタリングの日程について
全体の約8割の会員が「丁度良い」を選択しており、2週間というモニタリングデータ収
集期間が妥当であると判断できる。
太陽光発電は「短い」を選択した会員が多い。これは月1回の検針票を回答に使う会員と
思われる。モニタリングデータ収集期間に検針がない場合に配慮し、検針票に限り収集期間
の延長を検討する必要があると考える。
設問2 モニタリングの日程についてお伺いします。
選択肢
1 ちょうど良い
2 短い
3 2の短いと感じた理由は何ですか(自由記述欄)
図8 J-グリーン・リンケージ倶楽部
燃料電池 太陽光発電
太陽光発電 燃料電池
長い 3%
丁度良
い 70%
短い
24%
無回答
3%
20
図9 グリーン・リンケージ倶楽部
③ モニタリング依頼書の内容について
肯定的な回答、否定的な回答が半々であった。その中でも電気自動車は「モニターの慣れ
ない操作は負担だった」を回答した会員が少ない分だけ肯定的な回答が多く、「環境重視」の
設備導入の動機、写真撮影の容易さが反映していると考えられる
設問3 モニタリング依頼全般についてお伺いします。
選択肢
1 説明内容はわかりやすかった
2 CO2排出削減に参加できてよかった
3 依頼の可能性があることを知っていた
4 モニターの慣れない操作は負担だった
5 ダイレクトメールと勘違いした
6 面倒くさい
7 説明がわかりにくかった
8 モニタリングの意義がわからない
電気自動車
燃料電池 太陽光発電
21
図10 J-グリーン・リンケージ倶楽部
図11 グリーン・リンケージ倶楽部
太陽光発電 燃料電池
電気自動車
太陽光発電 燃料電池
22
④ J-グリーン・リンケージ倶楽部についての意見、要望
問4では自由記述欄を設け、意見や要望を聞いた。
自由意見欄への回答状況
グリーン・リンケージ倶楽部 J-グリーン・リンケージ倶楽部
太陽光発電 74 48
燃料電池 110 56
電気自動車 - 81
グリーン・リンケージ倶楽部・J-グリーン・リンケージ倶楽部の認知度に関する意見
○モニタリングの依頼に対して不信感を抱く会員は、補助金受給時に趣旨説明を受けていな
いことが主因と考えられる。
<主な意見>
・個人情報が第三者へ流出したのかと思った。国の委託事業として信用したいと思う。(J・
燃)
・写真代やコピー代といったアンケートに対し手間、経費が掛かるのに、一方的に回答せよ
とは少しおかしいのでは。設置した際に同クラブの説明もなかった。(G・太)
・この件に関しては契約時に説明を受けていない。この様なアンケートは怪しく感じるので
契約時にしっかりと説明させるべき。今後はこのアンケートを遠慮する。
・申請後 5年も経ったので忘れた。(J・太)
・会員向け・一般向けにもう少し PRした方がよいのではないか?当方は貴会の会員であるこ
とを知らなかった。(G・燃)
・この様な事業の意図は今回初めて分かったが、早くから知っておきたかった。(G・燃)
グリーン・リンケージ倶楽部、J-グリーン・リンケージ倶楽部(太陽光発電)の趣旨に関す
る意見
○補助金の受給時に説明を受けていない場合であっても趣旨に賛同する意見もある。これは、
わかりやすい説明に努めた結果と考える。
<主な意見>
・エネファーム使用が生活の中であたり前になっているが、CO2排出削減への意識を忘れてい
ました。再確認できてよかった。(G・燃)
・高熱費の節約と思い設置したエネファームでしたが、CO2の削減に役立っていることが分か
り良かったと思う。J-クレジット制度の認知度も低いと思うので、これから広めていって
ほしいと思った。(G・燃)
・次回もアンケートはあるのか?J-クレジットに関して資料を熟読する。(J・燃)
・エネファームの発電量への意識が低かったため、今回のモニター経験は貴重な体験となっ
た。面倒臭くて操作したことはなかったが、再度取説をひいて、活用できるようにしたい。
(J・燃)
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・CO2削減の主旨は理解した。他の人がどの位削減しているのか、若しくは自分の削減がどの
レベルに居るのかわかればおもしろい。(J・燃)
・電気自動車による CO2排出削減量の総量をマスコミ等で周知し、電気自動車の普及を促進
すべき。(J・電)
データ取得に関する意見
○設備によりデータ取得の難易度に差があり、太陽光発電と燃料電池の会員に目立った。
○積算値の表示が出来ない機種の会員の意見が目立った。
<主な意見>
・積算発電量および売電量は、モニター表示画面の写真で確認という不親切な手段でなく、
例えば関西電力の場合"はぴ eみる電"で見ることができる情報に組み入れることは考えら
れないのだろうか。モニタリングに協力しようにも、これではできない。(G・太)
・うちのメーターの機能上、データが 5年分しか表示されず、2011年の実測による売電量が
残っていなかった。本調査が昨年 12月までに行われていれば残っていたことになり、その
点が面倒な計算が必要となり残念だった。(G・太)
・環境価値(発電量・売電量データ)を各個人宛に提出させるのではなく、各個人宅の電力会
社からに各会社単位で一括提出させるべき。社会はアナログからデジタルに移行しているの
に国がアナログ式データ処理を採用している意義が理解できない。(J・太)
・機種改良で手順通りの表示でなかった。(G・燃)
・各メーカーとも表示方法を同じようにするよう指導できないのか。(G・燃)
・ホームページ等でデータを入力できるようにしてほしい。(J・電)
結果報告に対する意見
○データ提供に協力するからには結果が知りたいという意見が目立つ。パンフレットには前
回の結果を記載しているが、改善の余地があると考える。
<主な意見>
・アンケート結果については会員に報告してほしい。(G・太)
・少しでもCO2排出削減に貢献したら補助金などがもらえるよう会員に還元されると良い。
アンケートなのに氏名を記載させるのは何故か。(J・燃)
・個人的にどの程度のCO2排出削減に貢献できているのかを知りたい。またエネファーム(ガ
ス発電)全体ではどれくらいか。(エネファーム設置台数を含めて)(J・燃)
・返送に至るまで手間がかかるため返礼等があっていいのではないか。J-グリーン・リン
ケージ倶楽部の活動経過報告等年 1回くらいの情報公開があるといい。HPでは見ない。(J・
電)
・自分の車はどのくらいの排出削減量があるのかを知りたい。(J・電)
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(3)考察
アンケートの結果からグリーン・リンケージ倶楽部およびJ-グリーン・リンケージ倶楽部の
趣旨について理解度の低い会員がなお存在するものの全体では送付文書の改善もあり、理解度が
向上したと考える。
各倶楽部では、太陽光発電の会員は理解度が低い傾向にあり、燃料電池と電気自動車は理解度
が高い会員が多い傾向にある。これは設備の性格上、導入の動機が太陽光発電は「節約(節電)
志向」と考えられ、一方、燃料電池、電気自動車は「環境重視」の表れではないかと考える。
自由意見は事業に対する理解度が低く批判的な会員と協力的な会員の両極に分かれる結果とな
った。
補助金受給時に会員であることを知らされなかった会員は、モニタリング依頼に対して否定的
になる傾向にあり、依頼文書の配慮に限界があると考える。事業の運営には理解度の向上が不可
欠であり、補助金受給時の説明に改善が必要と考える。
理解度の高い会員の意見は、データ取得方法や補助金のあり方など具体的な記述や前向きの提
案があり、今後の事業の運営上の参考となるものもあり、ホームページあるいは、依頼文書等の
広報に反映することを検討する。