22
shishi No.34 Part i Yamane

#34 Part わかれる

Embed Size (px)

DESCRIPTION

「帰り道」は繊細な心象風景を紡いだ絵と文。たとえばある情景をレンズを通して見つめるとき、アップにし過ぎてしまうと、風景と人、人と人、人と物、などの関係性が客観的につかめなくなってしまう。でもそのように、近寄りすぎて境目が溶け出してしまうような距離感のなかで丁寧に掬い取られる情景や心理は、抽象的な模様のように美しかったりする。

Citation preview

Page 1: #34 Part わかれる

shishiNo.34

Partby Keiko Yamane

Page 2: #34 Part わかれる

帰り道

Page 3: #34 Part わかれる

帰り道

Page 4: #34 Part わかれる
Page 5: #34 Part わかれる

みんなが寝静まったころに

消えてしまいそうな 淡い記憶を捉えたくて

頭の中の暗闇に光をあてる

Page 6: #34 Part わかれる
Page 7: #34 Part わかれる
Page 8: #34 Part わかれる

 あの人の苦労したあとをみつけてしまった

Page 9: #34 Part わかれる

お守りのつもりで身につけていた指輪だけれど

つけていなくても何事もなく 私は夜道を歩いていた

今日は夜景がいつもより寂しく見えるなと思うと

自分がいつもこの道を泣きながら歩いていたことに気づいた

Page 10: #34 Part わかれる
Page 11: #34 Part わかれる
Page 12: #34 Part わかれる

 私が救った銀の指輪が

 彼女の白く優しそうな手の指に

 危な気に留まっている 

夕方 5 時半は哀しみの色

Page 13: #34 Part わかれる

夕方 5 時半は哀しみの色

彼女  「ありがとう」

    「空が暗くなってきたわね」

 私  「…」

静かに呼吸をしないと

煙のように空に溶けてしまいそうな

ひんやりとした淡い日だった

Page 14: #34 Part わかれる
Page 15: #34 Part わかれる
Page 16: #34 Part わかれる
Page 17: #34 Part わかれる

その人は私を通り抜けて向こう側の景色を観ているようだった

Page 18: #34 Part わかれる
Page 19: #34 Part わかれる
Page 20: #34 Part わかれる

星のような名前 綺麗だった 優しく手をふる

夜の海 怖いけれど 寂しそうに手をふる

私たちの心を照らしてゆく真夜中

みんなは楽しそうに別れてゆく

私はすこし 寂しいけれど

Page 21: #34 Part わかれる
Page 22: #34 Part わかれる

Keiko Yamamuro

山室桂子

-

イラストレーター・作家

1989 年神戸市生まれ 川崎市在住

女子美術大学 芸術学部 デザイン学科 ビジュアルデザイン専攻卒業

http://casanaru.tumblr.com/

shishishi-shi.org

Copyright © 2011 shishi. All Rgihts Reserved.