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「帰り道」は繊細な心象風景を紡いだ絵と文。たとえばある情景をレンズを通して見つめるとき、アップにし過ぎてしまうと、風景と人、人と人、人と物、などの関係性が客観的につかめなくなってしまう。でもそのように、近寄りすぎて境目が溶け出してしまうような距離感のなかで丁寧に掬い取られる情景や心理は、抽象的な模様のように美しかったりする。
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shishiNo.34
Partby Keiko Yamane
帰り道
帰り道
みんなが寝静まったころに
消えてしまいそうな 淡い記憶を捉えたくて
頭の中の暗闇に光をあてる
あの人の苦労したあとをみつけてしまった
お守りのつもりで身につけていた指輪だけれど
つけていなくても何事もなく 私は夜道を歩いていた
今日は夜景がいつもより寂しく見えるなと思うと
自分がいつもこの道を泣きながら歩いていたことに気づいた
私が救った銀の指輪が
彼女の白く優しそうな手の指に
危な気に留まっている
夕方 5 時半は哀しみの色
夕方 5 時半は哀しみの色
彼女 「ありがとう」
「空が暗くなってきたわね」
私 「…」
静かに呼吸をしないと
煙のように空に溶けてしまいそうな
ひんやりとした淡い日だった
その人は私を通り抜けて向こう側の景色を観ているようだった
星のような名前 綺麗だった 優しく手をふる
夜の海 怖いけれど 寂しそうに手をふる
私たちの心を照らしてゆく真夜中
みんなは楽しそうに別れてゆく
私はすこし 寂しいけれど
Keiko Yamamuro
山室桂子
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イラストレーター・作家
1989 年神戸市生まれ 川崎市在住
女子美術大学 芸術学部 デザイン学科 ビジュアルデザイン専攻卒業
http://casanaru.tumblr.com/
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