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組換え酵素を用いた配列部位 特異的逐次遺伝子導入方法 工学研究院化学工学部門 河邉 佳典 2009227Accumulative gene integration system using recombinase

4 河邊先生 改4 九州大学,2009 + Cre反応 × loxP配列のアームの変異により組込反応が促進される Cre反応 左アーム変異 右アーム変異 非反応性

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組換え酵素を用いた配列部位特異的逐次遺伝子導入方法

工学研究院化学工学部門

河邉 佳典

2009年2月27日

Accumulative gene integration system using recombinase

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九州大学,2009

トランスジェニック動物での場合トランスジェニック動物での場合目的遺伝子の多重化

(増幅)

動物細胞での場合動物細胞での場合

目的遺伝子

医薬品タンパク質を生産する遺伝子を導入

目的遺伝子の多重化(増幅)

マイクロキャリァー

動物細胞

新鮮培地

使用済み培地

空気+炭酸ガス

バイオ医薬品等の大量生産

バイオリアクターでの培養

バイオ医薬品等の大量生産

染色体上での遺伝子増幅の有用性染色体上での遺伝子増幅の有用性

<研究背景>

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九州大学,2009

染色体DNA上の特定の配列部位

特異的に逐次遺伝子導入する

本技術の特徴本技術の特徴

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九州大学,2009

loxP配列

① 認識 ② 環状構造

③ 切り出し連結

Cre-loxPの組換えシステムCre-loxPの組換えシステム

(バクテリオファージP1由来)

目的遺伝子

目的遺伝子

Cre Cre

目的遺伝子

一度の組込みではなく、多重化させることにより遺伝子増幅として使用する

(変異loxP配列の使用)

本研究で利用した遺伝子組換え酵素のシステム本研究で利用した遺伝子組換え酵素のシステム

組換え酵素

組込み反応 組込み反応

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九州大学,2009

Cre反応

×

loxP配列のアームの変異により組込反応が促進される

Cre反応

左アーム変異 右アーム変異非反応性

スペーサー1 スペーサー2

特定のスペーサーとのみ反応できる

選出した変異loxP配列の特性選出した変異loxP配列の特性

アーム変異の特性1)

スペーサー変異の特性 2)

1) P. Oberdoerffer et al. (2003) Nucleic Acids Research,31, e140-

2) P. I. Missirlis et al. (2006)BMC Genomics 7,73-

loxP 配列 : 組換え酵素Creの認識サイト(34bp)loxP 配列 : 組換え酵素Creの認識サイト(34bp)

ATAACTTCGTATA

13bp 13bp8bp

・・・・ ・・・・ATGTATGC TATACGAAGTTAT

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九州大学,2009

Cre反応(組込+削除)

スペーサー1

スペーサー2

右アーム変異

左アーム変異

非反応性

CMV プロモーター loxP1

P1 (動物細胞染色体)

Cre反応(組込)非反応性loxP2

目的遺伝子1

loxP4loxP1

P3目的遺伝子2

非反応性非反応性loxP1目的遺伝子2 目的遺伝子1

P2

目的遺伝子1

loxP2 loxP3

<本技術の原理>

組換え酵素Creと変異loxPを用いた遺伝子導入システム組換え酵素Creと変異loxPを用いた遺伝子導入システム

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九州大学,2009

動物細胞染色体DNA上での部位特異的逐次組込み反応動物細胞染色体DNA上での部位特異的逐次組込み反応

GFP

MERGEDsRed

Phase contrast

各目的遺伝子の発現各目的遺伝子の発現 染色体DNAを鋳型としたPCR解

染色体DNAを鋳型としたPCR解

目的遺伝子の発現およびPCRの結果より

目的遺伝子の配列部位特異的な逐次組込み反応を確認した

NC(water)

NC(water)

λHMarker

φXMarker

CHO/P123(840 bp)

CHO/P123(1680 bp)

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九州大学,2009

細胞染色体

目的遺伝子1

目的遺伝子 1

目的遺伝子 2

目的遺伝子 1目的遺伝子 2

非反応性

非反応性 非反応性

Cre反応(置換)

Cre反応(置換)

目的遺伝子発現ユニットのみを導入することができる遺伝子導入システム

目的遺伝子発現ユニットのみを導入することができる遺伝子導入システム

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九州大学,2009

各目的遺伝子の組込み置換反応

位相差観察

動物細胞染色体DNA上での逐次置換組込みシステムの結果動物細胞染色体DNA上での逐次置換組込みシステムの結果

GFP

DsRed

染色体DNAを鋳型としたPCR解析

φX +-Cre

wate

rCH

O(W

T)

884bp

φX +-Cre

wate

rCH

O(W

T)

810bp

GFPDsRed

884bp

810bp

目的遺伝子の発現およびPCRの結果より

目的遺伝子の配列部位特異的な逐次置換組込み反応を確認した

Merge

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九州大学,2009

従来の染色体DNAへの遺伝子導入法:

② 相同組換え

③ ウイルスベクター法

① ランダム挿入

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九州大学,2009

目的遺伝子

薬剤耐性遺伝子+対応する薬剤を加える

染色体上で遺伝子組込みの起こった

細胞が生き残る

・確実性に欠ける

・効率が低い問題点

従来技術とその問題点~①ランダム挿入~従来技術とその問題点~①ランダム挿入~

目的遺伝子を薬剤耐性遺伝子とともに導入し、薬剤による選別を行うことで、導入した目的遺伝子が染色体に組込まれる

・長い期間が必要である

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九州大学,2009

従来技術とその問題点~②相同組換え法~従来技術とその問題点~②相同組換え法~

相同組換え

X遺伝子

X遺伝子置換ベクター

標的遺伝子

neor tkHSV (薬剤応答遺伝子)

変異X遺伝子

X遺伝子の改変

染色体DNA

・導入する細胞に大きく依存する

・組込み効率が低い

問題点

目的遺伝子断片の両側に、導入したい染色体部位の遺伝子配列をはさむことで、目的染色体部位に挿入できる

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九州大学,2009

染色体DNAへの効率的な遺伝子導入法

・・・レトロウイルスベクター

問題点

・ベクター生産設備 (物理的封じ込めレベルP2~)

・感染の危険性

・導入部位の不制御性

宿主細胞の染色体に目的遺伝子を導入することができる

従来技術とその問題点~③ウイルスベクター法~従来技術とその問題点~③ウイルスベクター法~

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本技術の特徴・従来技術との比較

レトロウイルスベクター

本技術

簡便性

安全性

ベクター生産設備 高い

感染の危険性 高い

導入効率 数%高い

導入部位 ランダム 配列部位特異的

(P2)

相同組換え

高い

高い

10-6

配列部位特異的

ランダム挿入

高い

高い

10-4

ランダム

本技術では、染色体DNAにおいて組換え酵素Cre依存的かつ配列部位特異的に、複数の遺伝子を安定して

逐次導入することができる。

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想定される用途①

有用物質生産のための遺伝子導入

ホットスポット

染色体DNA上には“ホットスポット”という生産性を向上させられる部位がある。

① 染色体にあらかじめloxP配列を導入しておく。(相同組換えで部位特異的にloxP配列を導入しておいても良い)。

loxP配列に複数の目的遺伝子を逐次導入することで、生産性を向上させる。

あらかじめ薬剤耐性遺伝子を変異させ、薬剤に過敏させておき、薬剤の濃度を上昇させることによりホットスポットを探索する

薬剤耐性遺伝子とともにloxP配列をホットスポットに導入させることで、

ホットスポット部位特異的に目的遺伝子を逐次遺伝子導入し、生産性を向上させる。

目的遺伝子1

染色体

ホットスポットの探索

目的遺伝子1目的遺伝子2

loxP

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ROSA26遺伝子座

目的遺伝子や様々なレポーター遺伝子を組み込むために適した遺伝子領域

(過去に検討された多くの細胞で、外来遺伝子を安定的に発現できる)

ES細胞の遺伝子改変に有益な遺伝子座

~マウス 第6染色体、ヒト 第3染色体~

PNAS 94:3789-2794, 1997. Nat.Biotechnol. 25:1477-1482, 2007

想定される用途②配列部位特異的にES細胞へ複数遺伝子をノックイン

本技術により酵素的に目的遺伝子が導入されたES細胞を効率的に樹立することができる。

一度ROSA26遺伝子下流に変異loxP配列を導入したES細胞を樹立しておけば、Cre組換え酵素を用い、配列部位特異的に目的遺伝子を複数導入することができる。

安定発現部位へ導入された分化細胞

ES細胞

loxP配列が組み込まれているROSA26遺伝子座に目的遺伝子を導入している

遺伝子改変動物の作製 個体を用いた物質生産

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実用化への課題

現在、動物細胞染色体DNAで配列部位特異的な

逐次遺伝子導入ができることを確認した。

今後は、・組換え反応効率のさらなる向上のために変異loxP配列を探索

・目的遺伝子の細胞への供給法

について検討する予定である。

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企業への期待

組換えタンパク質生産(微生物宿主である大腸菌・酵母、真核生物として昆虫細胞から動植物細胞を用いた各宿主・ベクター系)

再生医療工学に関わる細胞の遺伝子的改変(幹細胞の分離・培養・分化制御から再プログラム化、ノックアウト・トランスジェニック動物作製)

について部位特異的遺伝子導入を必要とする場合に、本技術の適用が有効と思われる。

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本技術に関する知的財産権

発明の名称: 組換え酵素を用いた遺伝子

増幅方法

出願番号 :特願2008-034640出願人 :国立大学法人九州大学

発明者 :上平 正道、河邉 佳典、

竹之内 雄太

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お問い合わせ先

九州大学知的財産本部

技術移転グループ

TEL 092-642 -4361

FAX 092-642 -4365

e-mail [email protected]