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JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT Vol.052
松原 徹夫 先生 (豊橋ハートセンター 循環器内科)
慢性完全閉塞病変において、高度石灰化病変および高度屈曲病変に対し canPass1.2mmが有用であった2症例
58歳男性、慢性腎不全のため20年以上の透析歴が有り、冠動脈3枝病変に加え、PADを合併した症例である。PCI歴も10年以上におよび左冠動脈前下行枝、回旋枝は再狭窄なく落ち着いている。しかし右冠動脈は、近位部から末梢にかけて計7個の薬剤溶出型ステントを留置しているが、再狭窄、再閉塞を繰り返している。半年前に右冠動脈ステント再閉塞病変に対しロータブレーター+DCBを施行したが、狭心症再発し右冠動脈のステント内閉塞 (Fig.1) を確認したため再度PCI となった。
右大腿動脈より6Frにてアプローチし、ガイドカテーテルは JR4.0(TAIGA)を使用。右冠動脈閉塞病変の末梢は、左冠動脈よりの側副血行が認められていたが、対側造影は行わずに手技を開始した。Finecrossと SHION Blue では病変通過できず(Fig. 2)、ガイドワイヤーを XT-Aに変更し病変の通過に成功した。しかしFinecrossが通過しないため、canPass 1.2/6mm を使用した。しかし canPass 1.2/6mm も病変を通過することができなかった (Fig. 3)。ここで、6Fr. GuideLiner V2を併用したところ canPass 1.2/6mm の通過に成功し最大 20気圧で数回拡張を行った (Fig. 4)が、最終的にはバルンはラプチャーした。
手技手順・方法
Fig. 1
Fig. 2
Fig. 3
A: 右冠動脈の閉塞を確認。 B: 冠動脈の石灰化が非常に強く透視にて冠動脈の走行が確認できるが、過去に留置したステントの存在を示す(点線)。
Finecross(白矢印)と、SHION Blue(黒矢印)では病変を通過できなかった。
XT-A は通過できたが、Finecross も canPassも通過できなかった。
A B
Fig. 4
A: 6Fr. GuideLiner のサポートのもと canPass1.2/6mmの通過に成功した。B: 最大 20気圧にて数回拡張を行った。
A B
JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT
造影にて順行性のフローを確認できた (Fig. 5)が、IVUSが全く通過できないため、Hiryu Plus 2.5/12mmにサイズアップすることとした。なんとか病変の通過には成功したが、通過とともにバルーンは既にラプチャーしていた。やはりRotablatorが必要と判断し、Finecrossは通過可能であったため、Rota-wire Floppyに変更し、Rotablator 1.5mmにてアブレーションを行った (Fig. 6)。その後再び 6Fr. GuideLiner V2のサポートのもと IVUSで病変を確認し、NSE ALPHA 3.5/13mmで拡張後に Resolute Integrity3.5/26mmを留置 (Fig. 7)し、良好な結果 (Fig. 8)が得られ手技を終了した。
Fig. 6
Rotablator1.5mmにてアブレーションを行った。
Fig. 5
canPass 1.2/6mm 拡張後に順行性の造影を確認した。
Fig. 8
最終造影にて良好な結果を確認した。
79 歳男性、狭心症 3 枝病変のため、2007
年に右冠動脈にSES留置、左冠動脈回旋枝に
POBAを施行し、側壁枝に BMSを留置した。
2009年に左冠動脈前下行枝にPESを留置した
が、2012年に前下行枝のPESの再狭窄および
大動脈弁狭窄症の進行を認め、大動脈弁人工弁置
換術およびバイパス術(LITA- LAD)を行った。
胸部不快あり精査の結果、心機能は落ち着いてお
りバイパスも良好で、右冠動脈のSES、鈍角枝
のBMSの再狭窄は認めなかったものの回旋枝近
位部にて完全閉塞となっており、末梢は右冠動脈
よりの側副血行を確認した(Fig. 9)ため、PCI を
行うこととなった。
2Fig. 9
回旋枝近位部の屈曲および石灰化を伴う完全閉塞病変を確認。閉塞末梢は右冠動脈からの側副血行を認める(点線内)。
Fig. 7
A: 6Fr. GuideLiner のサポート(白矢印)のもとNSE ALPHA 3.5/13mm(黒矢印) で拡張した。B: 6Fr. GuideLiner のサポート(白矢印)のもとResolute Integrity3.5/26mm(黒矢印) を通過。C: Resolute Integrity3.5/26mmを拡張した。
A B C
右橈骨動脈より 7.5Fr sheath less SPB4.0SHと、左橈骨動脈 5Frから対側造影下に手技を開始した。まず側壁枝にワイヤーを通過させ、Crusadeを使用し XT-Rで病変通過を試みたが、左房枝にしか進まず (Fig. 10)、Crusadeを Corsairに変更し、Corsairを回旋枝近位部に進め、ガイドワイヤーをGAIA 1stに変更し通過に成功した (Fig. 11)。しかしCorsairは病変通過できず、SAPPHIRE Ⅱ 1.0/10mmにて通過を試みるもやはり通過できなかった。次いで側壁枝で Tazuna 2.5/10mmをアンカーとして拡張後、再度 SAPPHIRE Ⅱの通過を試みるも通過できなかった (Fig. 12)。次に Tornus PROを使用するも閉塞病変内までしか進まなかった (Fig. 13)。次に canPass 1.2/6mmで通過を試みた。バルーンアンカーのもと病変遠位部まで進んだが通過しきれないため、そこで拡張を行い、再度通過を試みた。バルンの拡張と前進を繰り返し、通過に成功することができた(Fig. 14)。
手技手順・方法
Fig. 10
まずワイヤーを側壁枝に進め(黒矢印)、Crusade を使用しXT-R にて病変通過を試みるも左房枝に迷入(白矢印)。
Fig. 12Tazuna2.5/10mmを側壁枝で拡張(矢印)しアンカーしながら SAPPHIRE の通過を試みるも病変を通過できなかった。
Fig. 13Tornus PRO は 閉 塞病変内までしか進まず、通過はできなかった。
Fig. 11
A: Corsair を回旋枝近位部に勧めたB: ワイヤーをGAIA 1st に変更し通過に成功した
まずワイヤーを側壁枝に進め(黒矢印)、Crusade を使用しXT-R にて病変通過を試みるも左房枝に迷入(白矢印)。
A B
A: canPass は病変遠位部までは進むことができたが通過はできなかった。B: canPass の拡張と前進を繰り返し通過に成功した。
Fig. 14
A B
まずワイヤーを側壁枝に進め(黒矢印)、Crusade を使用しXT-R にて病変通過を試みるも左房枝に迷入(白矢印)。
JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT
2015-07-10-01
術者紹介 豊橋ハートセンター 循環器内科
松原 徹夫 先生
1984年 3 月 東海大学医学部医学科卒業1985年 6 月 県立岐阜病院研修医1987年 5 月 岐阜大学医学部研究生(第二内科)1987年 6 月 県立岐阜病院救命救急研修医1988年 2 月 県立岐阜病院循環器科医師1992年 4 月 県立岐阜病院循環器科・救急センター部医長2001年 2 月 名古屋共立病院循環器センター・循環器科部長2004年 1 月 豊橋ハートセンター循環器科部長2008年 10月 医療法人名古屋澄心会 名古屋ハートセンター副院長・循環器内科部長2012年 4 月 医療法人澄心会 豊橋ハートセンター 副院長 現在に至る
PCIを取り巻くデバイスは、改良が重ねられ、より安全確実な手技が可能となってきている。慢性完全閉塞病変を含む複雑病変においても技術の進歩と相まってその成功率もさらに向上を続けている。その一方で、患者の高齢化とともに耐糖能異常、腎不全などの増加も加わり、病変背景はより複雑化している。今回紹介した病変も、非常に石灰化が強い病変と、石灰化は強くないが屈曲が強い病変である。このような病変に対しバルーンカテーテルを通過させ拡張するには、その先端チップの長さ、硬さ、テーパー具合と、バルーンプロファイル、シャフトの Pushabilityと Trackabilityなどが問題となってくるわけだが、石灰化が顕著で非常に硬い病変に求められる性能と、屈曲病変に求められる性能では相反することもある。もちろんこれらの個々の性能が優れていても、バルーンカテーテルとしての全体のバランスが取れていなければ“良いバルーンカテーテル”とは言えない。canPassは、非加熱加工による柔軟性の高い先端チップの性能と、integrated shaftの採用による Pushabilityと Trackabilityが、高い次元で融合した非常にバランスの良いバルーンカテーテルであり、この 2つの特徴が発揮された症例を経験したので、今回報告した。
コメント
その後マイクロカテにてワイヤーをGlandslumに変更し、canPass2.5/15mmにサイズアップし 10気圧で拡張を行った。次に IVUSを使用したが、近位部の屈曲を通過できず断念した。ステントの通過は困難であることが予想されたため canPassで同軸アンカーを行いながらCokkateを屈曲遠位部まで進めた (Fig. 15)。PROMUS Premier 2.5/24mmの通過も問題なく行うことができ、病変をフルカバーし、最終造影にて良好な血行再検を確認し手技を終了した(Fig. 16)。
Fig. 16
A: PROMUS Premier2.5/24mmのデリバリーに成功し病変部を フルカバーした。B: 最終造影にて良好な血行再建に成功した。
A BA: canPass2.5mmで同軸アンカーを行いCokkate を進めた。B: Cokkate が屈曲部を超えることができた。
Fig. 15
A B