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外外外外外外外外外外外外外外外外外外外外外外 外外外外 外外外外 外外外外 2010 外 10 外 9 外 外外外外外外外外外外外外外外外外 2010 外 2 外外外外外 外外 外外外外外外外外外外外 :西

外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

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Page 1: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

近畿大学 経済学部 菅井康祐

2010 年 10 月 9 日ことばの科学会オープンフォーラム 2010 :

第 2 回年次大会於:関西学院大学梅田キャンパス

Page 2: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

0. 本発表の流れ1. 音韻ループと音声言語のボトムアップ処

理の概観2. 菅井他のポーズを中心としたリスニング

研究の紹介3. 教育・研究における問題点

Page 3: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

1.1  ボトムアップ処理の概念図

Page 4: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

1.2  音韻ループの概念図

       (Baddeley, 1992, Gathercole and Baddeley, 1993 より )

PhonologicalShort-term store

Speech inputs

Subvocalrehearsal

Non-speech Inputs

Page 5: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

1.3 音韻ループ容量についての諸説

  Magical number 7±2(Miller, 1956)   7±2 の chunk (数字、文字、単語など)

  Magical number 4(Cowan, 2001)

2 秒( Baddeley, 1992)

330 ms 以内に連続する要素 7±2 (河野 , 1994) 河野はこれを Perceptual Sense Unit(PSU) と定義 

 

Page 6: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

1.4 疑問点(1) 日本語母語 EFL 学習者が音韻ループに保

持できる容量は?

(2) 発話速度は容量に影響を及ぼすのか?

(3) 超分節素 (super-segmental features) はどのような働きをするのか?

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1.5 自身の研究の着想・音韻ループに保持できる容量ごとにポーズ

を置くことで、学習者の理解が高まるのでは?

  学習者の理解を助けるポーズの間隔がわ

かれば学習者の保持容量の実態にせまれるかも?

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2.1 菅井、山根、神崎( 2006 )

実験1: 文構造を統制した文復唱課題  ( LL 機器を用いて録音した音声を分析)

type 1: S V O / 前置詞句  (7/3( 音節数 ))t ype 2: S (前置詞句 ) / V C (7/3)type 3: S (分詞句) / V C (7/3)type 4: S V C / 関係詞節 (6/4)type 5: S V O / 分詞句 (5/5)

Page 9: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

① 文中( 9 ~ 14 音節)のポーズが1>2>0箇所の順に正解率が高い。

②15 文の中で語数が最も少なく( 7 語)ポーズが1つもない刺激文の聞き取りが1番難しかった。

③ 主部(名詞句+前置詞句)+述部と主部が長い文の正解率が他の構文よりも低かった。

④ ポーズが置かれるとその前の単語の聞き取り正解率が上昇した。

⑤1 文レベルにおいてはポーズの長さは一部のタイプの構文を除いてリスニングに影響を及ぼさない

     要因が多すぎ、はっきりとしない結果

Page 10: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

2.2 Sugai, Kanzaki, & Yamane ( 2007 )音声の長さに焦点を絞った調査

発話速度とポーズの長さを厳密に統制

発話速度 or 調音速度 or ポーズどの要素がリスニングに影響?

Page 11: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

実験1 ( 文章聞き取り課題)<課題>英検準 2級、 3級の問題の中から 5 問ず

つ選出し、合計 10 問作成。

選定基準 ・語彙レベルの低いもの    (Jacet 8000 2000 語レベル) ・ 7 ± 2 音節( 9 音節)以内の自然な位置にポー

ズを置けるもの( Miller 1956 )

Page 12: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

音声編集・文末を含む 96カ所のポーズを

200 ms 、 450 ms 、 700 ms に編集

ポーズ長3種類、調音速度3種類 (Fast, Normal, Slow) に設定

計算例) Fast の調音長+全ポーズ長–     (93 sec)      (450 msec×96) –   = Normal の調音長+全ポーズ長–       (117 sec)     (200 msec×96)–   =136.2 sec

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ポーズ長(msec)

調音長(sec)

ポーズ長合計(sec)

本文合計(msec)

WPM

fast 200 93 19.2 112.2 212.8 450 93 43.2 136.2 175.3 700 93 67.2 160.2 149.1

normal 200 117 19.2 136.2 175.3 450 117 43.2 160.2 149.1 700 117 67.2 184.2 129.6

slow 200 141 19.2 160.2 149.1

450 141 43.2 184.2 129.6 700 141 67.2 208.2 114.7

(

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実験方法

•・初級から中級の大学生英語学習者 480名•  9種類の課題に対し、被験者のレベルが概ねそろ うように 2クラスずつ選択。(各課題に対し約 50 ~  60名)•・それぞれの授業教室備え付けのスピーカから流される音声を聞く形でのリスニングテスト•・レベル統制用のテストを行い、少し休憩をおいた後本課題を実施。

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speed Fast Normal Slowpause (ms) 200 450 700 200 450 700 200 450 700 Total

Mean score 4.67 5.96 5.79 5.10 6.06 5.56 5.78 5.10 6.00 5.56 SD 2.04 1.81 1.74 1.54 1.76 2.31 1.88 1.74 2.08 1.88 n 27 27 38 31 48 32 36 39 32 310

実験1結果

Page 16: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00

type

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

post

20

speed1.002.003.00

実験1結果

Page 17: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

Two-way ANCOVA

従属変数 : Post-test

重回帰分析結果Source F

9 11.67 3.44 0 0.09Intercept 77.2 1 77.2 22.75 0 0.07pre-test 42.58 1 42.58 12.55 0 0.04speed 2.9 2 1.45 0.43 0.65 0pause 18.3 2 9.15 2.7 0.07 0.02

Error 1017.91 300 3.39Total 10811 310

1122.97 309

Type III Sum

of Squares dfMean Square p η2

Corrected Model 105.066(b)

Corrected Total

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速度別比較

4.5

5

5.5

6

6.5

Fast Normal Slow

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ポーズ長比較

4.5

5

5.5

6

6.5

200 450 700

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実験1のまとめ

・調音速度はリスニングに  ほとんどプラスの影響を及ぼさない

・ポーズ長はリスニングを助ける可能性  がある( 200 ms と 450 ms の間に有意傾向)

Page 21: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

実験2目的

実験1の結果をふまえポーズ長のみに絞って更なる調査を行った。

・長いポーズは本当にリスニングを助けるのか

・どのぐらいの長さのポーズが効果があるのか

Page 22: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

実験方法

実験1と同様に課題作成•  音声編集・分析ソフト praat を用いポーズ長を6種類に編集( 200, 300, 400, 500, 600, 700 ms )•

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実験2結果

200 300 400 500 600 700Mean score 5.56 5.64 5.83 7.11 7.07 6.73

SD 2.21 2.35 2.12 1.8 1.89 2.16n 59 55 53 57 54 56

pause (ms)

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200.00 300.00 400.00 500.00 600.00 700.00pause

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

post

192

226

実験2結果グラフ

Page 25: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

Two-way ANCOVA

Sauce F

6 109.29 37.88 0 0.41Intercept 107.34 1 107.34 37.2 0 0.07pre-test 502.1 1 502.1 174.02 0 0.31pause 86.72 5 17.35 6.01 0 0.05Error 943.49 327 2.89 Total 14891 334

1599.24 333

Type III Sum of Squares df

Mean Square p η2

Corrected Model 655.743(b)

Corrected Total

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2.3  菅井、神崎、山根の調査のまとめ初中級・中級の学習者にとって  リスニングを助けるのは、発話速度でも調音速度でもなく適切な位置に置かれたポーズである

また、その長さは 450 ms 以上(河野 1994 他による分析的処理に必要な長

さ)  → PSU の処理が自動化していない

Page 27: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

3.1 学習者が抱える問題• チャンクの構成要素が小さすぎるため、

音韻ループに保持できる情報が少なすぎる。

• ボトムアップ処理の各段階で十分な自動化がされていないため。

Page 28: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

3.2 考えられる対策

音素・音節といった基本的な知覚を自動化するための訓練をもっと積む必要がある

   (シャドーイング、 ATRcall など?)

・メンタルレキシコンへのアクセス速度を上げるような訓練。

・文法処理の自動化を促すような訓練

Page 29: 外国語としての音声言語理解とワーキングメモリ

3.3 研究的課題

・日本語母語 EFL 学習者の音声知覚の単位どのような音声要素で、訓練によってその要素を大きなものにすることができるのか。

・音声言語処理における音韻ループ(ワーキングメモリ)の容量はどのくらいなのか。

・学習者の音声習熟レベルをより詳細に測定できないか。

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参考文献

Baddeley, A. (1992). Working memory. Science, 255, 556–559.Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A   reconsideration of

mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24, 87-185.Gathercole, S., and Baddeley, A.(1993) Phonological working memory: A critical building

block for reading development and vocabulary acquisition? EUROPEAN JOURNAL OF PSYCHOLOGY OF EDUCATION, 8, 259-272.

門田修平( 2006 ) . 『第二言語理解の認知メカニズム』 東京:くろしお出版河野守夫 (1998).「モーラ,音節,リズムの心理言語学的考察」『音声研究』 第

2巻第1号: 16-24.Miller, G. A. (1956). "The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our

capacity for processing information". Psychological Review 63(2): 343–355. 齊藤智( 1997 )『音韻的作動記憶に関する研究』東京:風間書房Sugai, K., Kanzaki, K. & Yamane, S. (2007). The effect of pause on the listening process of

Japanese EFL learners. Language Education & Technology, 44, 187-204.菅井康祐、山根繁、神崎和男( 2006 )「日本人EFL 学習者のリスニングプロセス:

大脳レベルでのポーズへの反応」『外国語教育メディア学会第 46 回全国研究大会発表論文集』  29-37