13
フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 最終報告書:要約 S-46 要約 8 環境社会配慮 本調査では調査初期段階で、調査対象地域内の将来開発シナリオの検討およびシナリ オ検討結果に基づく道路ネットワークの代替案検討など環境社会配慮の視点も取り入れ ながら行い、優先事業の選定を行った。以下では優先事業に係る環境社会配慮に重点 をおいて述べる。 8.1 優先事業に関わる予備環境評価及びスコーピング 対象事業に係る環境社会配慮の全体フレームワークを図 8.1.1 に示す。本調査では、 JICA の環境社会配慮ガイドラインに基づく環境社会配慮 1 と共にフィリピン国の環境影響 評価制度(EIS システム)に基づく環境影響評価の法的手続きを同時に実施し、さらに予 備住民移転計画(Pre-RAP)の策定を行った。本調査の初期段階に DPWH が環境天然 資源省環境管理局(EMB-DENR)に対して EIS 手続き申請書(letter of intent)を提出し、 引き続いて EIS での調査内容を確定するための手続きであるオフィシャルスコーピング プロセスを実施した。 8.1.1 環境社会配慮の全体フレームワーク 選定した優先事業に対する予備環境調査(IEE)の結果に基づき、スコーピングにてある 1 本調査は 2004 年 4 月より施行された国際協力機構(JICA)の環境社会配慮ガイドラインのもと、事前調査の 段階で対象事業がフィリピン国の ECC の取得を必要とする EIS 対象事業であることが確認されたことから、 ステークホルダー 協議 (STM) シナリオ代替案作成 社会・環境的制約条件の抽出 - 社会的に脆弱な施設や地域 - 保全・利用制限地域 シナリオ代替案の評価 -代替案の予備環境調査 -社会環境分析 最適事業案の作成 フィージビリティー調査 住民移転フレームワーク 環境社会 配慮調査 (EIAレベル) 住民移転行動計画の最終化 土地等権利調査 -カットオフデートの確定 詳細設計 -道路用地(ROW)の確定 主要調査フロー 環境社会配慮に関わる実施事項 EISレポート の提出・審査 ECCの取得 詳細な環境管理 計画の策定 環境管理計画の 実施 EISレポートの作成 手続き着手申請 スコーピングプロセス EISプロセス ∆:1STM ∆:3STM 施工 運営維持管理 :8STM 用地取得及び住民移転の実施 住民移転の事前手続き モニタリング・評価 ∆:2STM 合意? End YES NO 予備住民移転行動計画 ステークホルダー 協議 (STM) シナリオ代替案作成 社会・環境的制約条件の抽出 - 社会的に脆弱な施設や地域 - 保全・利用制限地域 シナリオ代替案の評価 -代替案の予備環境調査 -社会環境分析 最適事業案の作成 フィージビリティー調査 住民移転フレームワーク 環境社会 配慮調査 (EIAレベル) 住民移転行動計画の最終化 土地等権利調査 -カットオフデートの確定 詳細設計 -道路用地(ROW)の確定 JICA JICA 調査 調査 主要調査フロー 環境社会配慮に関わる実施事項 EISレポート の提出・審査 ECCの取得 詳細な環境管理 計画の策定 環境管理計画の 実施 EISレポートの作成 手続き着手申請 スコーピングプロセス EISプロセス ∆:1STM ∆:3STM 施工 運営維持管理 :8STM 用地取得及び住民移転の実施 住民移転の事前手続き モニタリング・評価 ∆:2STM 合意? End YES NO 予備住民移転行動計画

8 環境社会配慮 - JICAフィリピン国Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 最終報告書:要約 要約 S-47 程度の環境社会影響が生じると想定された環境社会影響項目を対象に環境社会配慮調

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

S-46 要約

8 環境社会配慮

本調査では調査初期段階で、調査対象地域内の将来開発シナリオの検討およびシナリ

オ検討結果に基づく道路ネットワークの代替案検討など環境社会配慮の視点も取り入れ

ながら行い、優先事業の選定を行った。以下では優先事業に係る環境社会配慮に重点

をおいて述べる。 8.1 優先事業に関わる予備環境評価及びスコーピング

対象事業に係る環境社会配慮の全体フレームワークを図 8.1.1 に示す。本調査では、

JICA の環境社会配慮ガイドラインに基づく環境社会配慮1と共にフィリピン国の環境影響

評価制度(EIS システム)に基づく環境影響評価の法的手続きを同時に実施し、さらに予

備住民移転計画(Pre-RAP)の策定を行った。本調査の初期段階に DPWH が環境天然

資源省環境管理局(EMB-DENR)に対して EIS 手続き申請書(letter of intent)を提出し、

引き続いて EIS での調査内容を確定するための手続きであるオフィシャルスコーピング

プロセスを実施した。

図 8.1.1 環境社会配慮の全体フレームワーク

選定した優先事業に対する予備環境調査(IEE)の結果に基づき、スコーピングにてある

1 本調査は 2004 年 4 月より施行された国際協力機構(JICA)の環境社会配慮ガイドラインのもと、事前調査の

段階で対象事業がフィリピン国の ECC の取得を必要とする EIS 対象事業であることが確認されたことから、

ステークホルダー協議 (STM)

シナリオ代替案作成

社会・環境的制約条件の抽出- 社会的に脆弱な施設や地域- 保全・利用制限地域

シナリオ代替案の評価-代替案の予備環境調査-社会環境分析

適事業案の作成

フィージビリティー調査

住民移転フレームワーク環境社会配慮調査

(EIAレベル)

住民移転行動計画の 終化

土地等権利調査-カットオフデートの確定

詳細設計-道路用地(ROW)の確定

JIC

A JI

CA

調査

調査

主要調査フロー 環境社会配慮に関わる実施事項

EISレポート

の提出・審査

ECCの取得

詳細な環境管理計画の策定

環境管理計画の実施

EISレポートの作成

手続き着手申請

スコーピングプロセス

EISプロセス

∆:第1次STM

∆:第3次STM

施工

運営維持管理

∆:第8次STM

用地取得及び住民移転の実施

住民移転の事前手続き

モニタリング・評価

∆:第2次STM

合意?

EndYES

NO

予備住民移転行動計画

ステークホルダー協議 (STM)

シナリオ代替案作成

社会・環境的制約条件の抽出- 社会的に脆弱な施設や地域- 保全・利用制限地域

シナリオ代替案の評価-代替案の予備環境調査-社会環境分析

適事業案の作成

フィージビリティー調査

住民移転フレームワーク環境社会配慮調査

(EIAレベル)

住民移転行動計画の 終化

土地等権利調査-カットオフデートの確定

詳細設計-道路用地(ROW)の確定

JIC

A JI

CA

調査

調査

主要調査フロー 環境社会配慮に関わる実施事項

EISレポート

の提出・審査

ECCの取得

詳細な環境管理計画の策定

環境管理計画の実施

EISレポートの作成

手続き着手申請

スコーピングプロセス

EISプロセス

∆:第1次STM

∆:第3次STM

施工

運営維持管理

∆:第8次STM

用地取得及び住民移転の実施

住民移転の事前手続き

モニタリング・評価

∆:第2次STM

合意?

EndYES

NO

予備住民移転行動計画

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

要約 S-47

程度の環境社会影響が生じると想定された環境社会影響項目を対象に環境社会配慮調

査(EIA レベル)を実施した。環境社会配慮調査は、JICA 調査団の技術的な支援の下で

DPWH 主導にて実施し、一部の調査については、EMB-DENR に登録されている現地コ

ンサルタント企業への再委託調査により実施した。

8.2 環境社会配慮調査(EIA レベル) スコーピングの結果に基づき、優先事業に係る環境社会配慮調査(EIA レベル)(以下、

EIA 調査)を実施した。環境ベースライン調査、社会調査、及び環境影響評価調査につ

いては現地コンサルタント企業による再委託調査にて実施した。 EIA 調査は以下の手順と手法にて実施した。

① 現況把握調査

② 環境社会影響の予測

③ 優先道路線形に対する環境社会影響の評価

④ 環境社会影響緩和策の検討

⑤ 環境管理モニタリング計画(EMMP)の策定

⑥ EIS 報告書案の作成

⑦ 予備住民移転計画(Pre-RAP)書の作成

環境ベースライン調査及び社会調査の結果 環境ベースライン情報として事業予定地内及び周辺の環境現況情報の収集を行った。

データの収集に際しては、現地踏査や二次データの収集に加えて、環境大気質、騒音・

振動レベル、及び表流水質について現地測定調査を実施した。また、社会調査として間

接的な被影響者を対象とした「社会経済調査」と住民移転の可能性のある世帯を対象と

した「世帯インベントリー調査」を実施し、潜在的な事業被影響者から提案事業の実施に

関する意識と意見などについて聴取した。 社会経済調査は代替路線線形用地も含む 58 のバランガイ2を対象に実施し、道路

用地取得に伴う直接的な影響を受けない 696 世帯のサンプルを抽出し調査を行っ

た。一方で、世帯インベントリー調査は、代替路線線形用地も含む 23 のバランガ

イ3を対象に用地取得に伴う住民移転の可能性のある全世帯(826 世帯)を対象とし

て調査を実施した。 影響評価及び対策検討

優先事業である 3 路線はカビテ州、ラグナ州及びムンテンルパ市を合わせた 58 バラン

ガイに何らかの環境社会影響を与えると想定された。環境社会影響項目ごとに、物理的、

カテゴリーA 案件(環境や社会への重大で望ましくない影響のある可能性を持つようなプロジェクト)とされ、

本格調査の始めの段階より JICA の設置した環境社会配慮審査会での諮問対象となった。 2 カビテ州:49 バランガイ、ラグナ州:7 バランガイ、メトロマニラのムンテンルパ市:2 バランガイ 3 カビテ州:23 バランガイ、ラグナ州及びムンテンルパ市は対称バランガイなし。

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

S-48 要約

生物的、社会経済的観点から、それぞれ工事前・工事期間中と供用後の事業段階での

影響を検討した。本調査では、環境社会影響について、特性、発生期間、空間的範囲、

可逆性または永続性、及び累積性などの観点から総合的な検討を行ない、影響規模と

重大性の評価として “重大な影響あり”、“ある程度の影響あり”及び“影響なし”の分類を

行った。

1) 工事前・工事期間中の影響

工事前・工事期間中の環境社会影響は“ある程度の影響あり”のものから“重大な影響あ

り”まで様々にある。用地造成などに伴う植生の除去、地形の改変、一時的な土壌の移動

などに伴う土壌浸食は、河川の水質悪化や水生生物の生息環境を脅かす可能性がある。

また局所的な大気汚染や騒音レベルの上昇を引き起こす可能性がある。これらの影響は

一時的で短期間であり、今後の詳細な現地調査及び施工計画に基づき 小化または緩

和できると考えられた。特に乾季の施工に際しては、水質や不安定な斜面のモニタリング

や、資材管理プログラムや植生の回復や再植栽対策、建設廃棄物管理などの策定と適

切な実施が必要である。 社会経済面での負の影響は大きく、その影響は供用後も継続する可能性がある。

も重大な影響は住民移転に関わる影響であり、6 地方自体 28 バランガイの計

487 世帯に及び、また農地取得による作物収入の損失も生じる。こうした影響は

補償と被影響世帯の住民移転支援を適切に実施することで対応可能であると考え

られる。本調査の実施後に策定が必要とされる詳細な住民移転計画(RAP)は関連

地方自治体(LGU)や国家住宅庁、DENR、農業省及び国家警察など中央政府機関の

協力により DPWH が主体となって実施する必要がある。

2) 供用後の影響

道路の運営と維持管理の段階では、特に新規道路では増加する自動車交通によって従

前の状況に対して大気汚染物質や騒音レベルの上昇が生じる恐れがある。こうした影響

は沿道または道路中央部への植栽によってある程度の緩和ができるが、学校や病院のよ

うな特別な配慮が必要とされる場所では遮音壁を設置し、沿線の建物が低層である場所

では道路の高架化により大気汚染物質や騒音を上空に拡散させることを提案した。さら

に、大気汚染レベルと騒音レベルの定期的なモニタリングと制限速度超過の取り締まりな

どを行うことが必要である。 また提案事業の建設に伴う地域分断による社会影響についても検討を行った。提案道路

が地域内を横断することにより人や車などの地域内移動を阻害するような場所を航空写

真や現地踏査、現場の関連情報などから特定し、分断による社会影響及び地域特性を

各分断箇所で分析の上、対策の必要性及び立体交差などによる適切な対策の種類につ

いて検討を行った。 上記のように負の影響の一方で、対象事業の実施による新規道路の建設と既存道路網

の改善は、公共施設・サービスへのアクセスの改善や土地の付加価値の上昇、経済的機

会の増加やそれに伴う地方自治体の税収増などの効果をもたらす。こうした事業による効

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

要約 S-49

果や便益については情報・教育・コミュニケーション(IEC)キャンペーンを通じて住民らへ

の普及を行ない、本道路事業の社会的な支持を得られるように努める必要がある。 環境管理・モニタリング計画 環境管理・モニタリング計画(EMMP)では、予測される主要な負及び正の環境社会影響

に対して軽減・強化策を具体的なプログラムやプロジェクトとして提案し、適切な実施体制

のフレームワークや実施メカニズムを必要なコストとともに示す必要がある。EMMP は主

に次のコンポーネントで構成される:(a)設計及び施工管理プログラム、(b)社会開発及び

組織計画、及び(c)環境モニタリング計画 EIS 実施に係る勧告 ECC 取得後、EIS を適切に実施するに際しては、以下の事項を行う必要がある。

• 詳細設計(D/D)時における環境管理モニタリング計画(EMMP)の策定に際して

は、事業実施時に行う環境社会影響項目のモニタリングの詳細計画に応じて、

新たなベースライン調査を行う必要がある。関連して社会経済調査の再実施の

必要性を検討し、必要に応じて再調査または補足調査を行う。 • EIA 調査の結果、提言された対策のうち、特に施工監理や詳細設計の中で反

映・確認すべき事項があることから、D/D 時に EIS を精査し、確実に対策案が実

施されるようにする。また対策を実施する担当機関についても同時に確認する必

要がある。

8.3 予備住民移転計画の策定 住民移転に関わる世帯インベントリー調査結果 全ての代替路線線形の道路用地(ROW)内と ROW 両端から 10 m の余裕幅内の居住

世帯を併せた住民移転の可能性のある全ての居住世帯(826 世帯)についてインベントリ

ー調査を実施した。住民移転の可能性のある世帯の社会経済的特性と生計情報を収集

するため、対象事業への意思に関わる質問事項も含めた直接インタヴュー調査を実施し

た。調査を通じて、家屋等の立地を示すコミュニティー地図と各家屋等の写真記録を併

せて調査家屋に調査番号を付したインベントリーを作成した。 予備住民移転計画の策定 本調査では、事業実施の際の用地取得に伴う住民移転について特に移転住民の生計

回復に重点を置いた社会配慮の観点から適切に実施するために予備住民移転計画

(Pre-RAP)を策定した。Pre-RAP では、代替路線案について、実行可能性及び費用効

果が高く、社会的に受け容れられやすいオプションを選定するために、取得対象用地の

状況、影響を被る世帯や構造物の数、住民移転やその他の補償事項などの観点から総

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

S-50 要約

合的な比較調査を行った。 Pre-RAP では、優先事業として選定された 3 路線について用地取得・住民移転の実施

に関わる具体的な検討を行った。Pre-RAP では、各種方針及び住民移転に関わる補償

等の権利について規定したが、予算も含む被影響世帯や店舗、事業者への補償パッケ

ージに関わる詳細は今後の詳細調査結果に基づいて適宜改訂する必要がある。住民移

転先用地の特定についても詳細設計段階で行う必要があるが、Pre-RAP では生計回復

支援策も含めた移転先用地の整備や関連支援策の必要性や内容の整理、費用の予備

積算を行なった。用地取得及び住民移転に関わる総コストは 23.2 億ペソ(約 45 億円)と見積もられた。 DPWH が事業実施機関として用地取得および住民移転に関わる調整と実施を担当する

ことになる。また DPWH 内の環境社会サービス局(ESSO)が RAP の実施に関わる技術

的な指導と支援を DPWH の事業実施関係者に対して行う。 RAP の実施は対象事業の内外両面からモニタリング・評価する必要がある。事業実施機

関及び ESSO は内部モニタリングを実施し、ESSO は四半期ごとに事業融資機関に対

してモニタリングレポートの提出が適当と考えられる。モニタリングレポートでは RAP で規

定した方針や補償支援策の遵守状況などについての報告がなされる必要がある。また外

部モニタリングとして、実施機関は独立した専門家または組織を融資機関の同意の下で

雇用する必要がある。実施機関は住民移転手続きや支払われた補償金額や他の支援策

などが被影響者に対して事業実施前(移転前)の社会的・経済的生活状況と照らして維

持または向上させたかの詳細について工事後に評価し、レポートとして取りまとめる必要

がある。 さらに被影響世帯や資産等のインベントリーのアップデート、移転先用地や実施時の問

題事項の特定、特に社会的弱者に対する生計回復策の詳細検討などを DPWH は本調

査後に実施する必要がある。

8.4 提案事業の実施に関わる合意形成プロセス 本調査では特定したステークホルダーに対して様々な合意形成に関わる活動を行った。

主な活動としては、(a)ステークホルダー協議、(b)バランガイコンサルテーション、(c)直接・間接被影響世帯へのインタヴュー調査、(d)地方自治体の意思決定主体との協議、

(e)地方自治体及び州の開発評議会及び関連機関等との協議、が挙げられる。

ステークホルダー協議の実施

ステークホルダーに対する事業計画に関する重要事項の情報公開及び関係者からの反

応を適時に得るため、調査期間中に8回に亘るステークホルダー協議を開催した。各回

ステークホルダー協議では、調査段階や協議内容に応じて一回に複数箇所での開催も

行った(下表参照)。ステークホルダー協議では情報提供や意見交換だけでなく、代替路

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

要約 S-51

線線形の参加型評価なども行い計画への実質的な参加も試みた。参加者は中央・地方

政府機関、大規模土地所有者・開発業者、間接・直接的な被影響住民、事業者グルー

プ、及び NGO などに亘った。

表 8.4.1 ステークホルダー協議の実施状況 No. 調査段階 主な議題 開催時期 参加者数

1 次 シナリオ検討 - 調査概要 - 既存、実施中、及び将来の交通プロジェクト - ステークホルダー協議の趣旨説明 - ステークホルダー協議のスケジュールと目的

2005 年 3 月 17 日 1 ヶ所で開催

計 70 名

2 次 シナリオ評価 - 代替開発シナリオ - 環境社会配慮のフレームワーク - 地域交通ネットワークの代替シナリオ案

2005 年 6 月 16 日 1 ヶ所で開催

計 81 名

3 次

- 代替案の概要 - ゼロオプションについて - 環境社会配慮調査(EIA レベル)の調査概要 - 環境社会影響項目に係る意見聴取 (本ステークホルダー協議は EIS システムにおけるオフィ

シャルスコーピングプロセスと位置付けられた。)

2005 年 9 月 23 日 1 ヶ所で開催

計 98 名

4 次 - 代替案の評価結果 - 環境社会配慮調査(EIA レベル)の進捗状況 - 適事業案の調査フレームワーク

2005 年 12 月 7 日(カビテ州) 2005 年 12 月 8 日(ラグナ州) 2005 年 12 月 12 日(ムンテンルパ)

3 ヶ所で開催

計 115 名

5 次

適事業案の

策定

- 環境社会配慮調査(EIA レベル)の結果 - 対象事業の実施体制 - 適事業に係る合意

2006 年 3 月 14 日(ラグナ州) 2006 年 3 月 15 日(カビテ州) 2006 年 2 月 22 日(メトロマニラ)

3 ヶ所で開催

計 168 名

6 次 - 実行可能性調査(F/S)の概要 - 環境社会配慮調査(EIA レベル)に係る追加検討 - 住民移転方針の説明

2006 年 6 月 2 日 1 ヶ所で開催

計 115 名

7 次 - F/S の進捗状況 - 住民移転行動計画 (RAP)のフレームワークの説明

2006 年 6 月 18 日~8 月 29 日 地方自治体ごとに実施

7 ヶ所で開催

計 259 名

8 次

実行可能性調

査(F/S) - F/S の結果概要 - RAP のフレームワークの合意 - 事業実施に係る必要事項

2006 年 9 月 8 日 1 ヶ所で開催

計 134 名

関連地方自治体との協議及びフォーカスグループディスカッションの実施

合意形成に関わる総合的な活動の一環として、代替線形も含む優先事業用地沿いの全

58 バランガイにおいて、フォーカスグループディスカッションをバランガイコンサルテーシ

ョンと称して各バランガイで実施した。バランガイコンサルテーションには、バランガイキャ

プテン及び議員、移転対照となる可能性のある世帯も含む住民、コミュニティーグループ

や NGO などが参加した。バランガイコンサルテーションでは、DPWH のスタッフと JICA調査団、及び再委託先の現地社会環境専門家が事業や社会調査に関わる説明などを

行ない、同時に参加者との意見交換を行った。

LGU 及び開発評議会による事業実施に関わる決議の発行

バランガイコンサルテーションの結果に基づき、関連バランガイ事務所から本事業の実施

を指示する決議及び決議文書を得た。このバランガイによる承認に基づき、関連地方自

治体に対してコンサルテーションを実施し、地方自治体議会から DPWH に対しての決議

文書が提出され、さらに州政府からも同様に事業実施を指示する決議文書が提出された。

こうした地方自治体から提出された事業実施を指示する決議文書は、DPWH に対しては

事業の優先度の高さを示し、EMB-DENR に対しては EIA システムにおいて本事業の社

会的な受諾を示すものとなった。

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

S-52 要約

9 事業方式 9.1 財務環境

中央政府は DPWH を通じてほとんどの道路投資を行っている。そのため DPWH の事業

実施能力は中央政府の財務能力に左右される。図 9.1.1 は、過去 14 年間の道路投資

実績および 2010 年までの道路投資見込み額を示したものである。GDP に占める道路

投資割合は低下傾向にあり、1991 年の 1.3%をピークに、2005 年には 0.6%に低下し

ている。これにより多くの重要な道路事業の実施は延期を余儀なくされ、CALA 道路プロ

ジェクトのような大規模投資は 2008 年まで考慮することが困難になっている。

図 9.1.1 DPWH による過去の道路投資実績今後の見込み額

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

in M

illio

n Pe

sos

0.0%

0.2%

0.4%

0.6%

0.8%

1.0%

1.2%

1.4%

as %

of G

DP

Ratio to

Actual Investments Proposed

地方自治体は 1990 年の地方自治体法の制定を境に能力の増大を示しているが, その

道路投資シェアはまだ極めて小さい。2005 年度は、 CALA の州や市町村の収入は 100億ペソであったが、地方道路投資に充てられたのはわずか 6 億ペソであった。少数の地

方自治体を除き、この調査で提案する道路の財源を十分に確保することは難しい。 ODA を財源とした道路事業は可能であるが、ペソのカウンターパーファンドの不足により、

可能性が低下している。 民間資金によるインフラ資金調達は 1992 年頃から盛んに提案されたが、1997 年のアジ

ア通貨危機から展望が危うくなり、既に開始されていた3つの高速道路プロジェクト(スカ

イウェイ、スターエクスプレス、R-1 エクスプレス)では、次のフェーズでの財政確保ができ

なくなってしまった。 このような状態から抜け出しフィリピンの国際競争力の退勢を挽回するため、比政府は自

ら課した予算の上限の範囲内で国内債券市場を利用することを選択した。この戦略は、

NDC(National Development Company) が年間 200 億ペソ程度の債券を発行し、

(100

万ペソ)

GD

P

(%)

投資実績 見込み

対 GDP 比

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

要約 S-53

PIC(Philippine Infrastructure Company)を通して財務的にフィージブルなインフラ事業

に投資するというものである。その副次的利益には、ニノイアキノ空港第3ターミナルプロ

ジェクト等で傷ついたインフラに対する民間投資家への信用を回復するということがあっ

た。この新しい財源を利用するには、CALA のプロジェクト道路は有料道路でなければな

らない。JICA 調査団は、NS 道路のうち NS-1 から NS-3 の区間がこのスキームに適合

すると判断した。 この公共と民間の財源を活用する戦略は世界銀行の注目を引き、世界銀行は North South Road(フェーズ1と2)にファイナンスを提供し、プロジェクトを早急に立ち上げるた

めの技術援助を行うとの積極的意向を表明した。表 9.1.1 に CALA 道路プロジェクトのフ

ァイナンススキームの概要を示す。

表 9.1.1 CALA道路プロジェクトに関するファイナンススキーム

道路区間 基本スキーム 備考

North-South Road のフェーズ1(NS-1, NS-2, NS-3)

PPP スキーム: DPWH は既存の

Molino Blvd を事業者に提供。 NS-1 の用地は PIC が先行取得。 民間

事業者は設計・財源調達・建設を行

い、料金収入を得る。DPWH は用

地費を負担するが、入札額によって

はそれを回収できる。

DPWH は North-South Road の

フェーズ1のコンセッションを 2007年前半に入札にかける。 入札の

勝者が詳細設計を行っている間

に PIC の資金を用いて用地買収

が開始される。道路建設と料金収

受設備は民間資金による。

North-South Roadのフェーズ2 (NS-4 , NS-5)

PPP+ODA スキーム: 世界銀行が

DPWH 予算を通じて設計と建設を

ファイナンス。民間は有料道路コン

セッションに対して入札(投資)する。

コンセッションは設計と2車線の建

設後入札される。ODA+DPWH に

よるファイナンスは民間投資に先

立って行われる。

CALA Expressway(CE-1, CE-2, CE-3, CE-4)

従来スキーム: JBIC 等からの ODAによる設計・建設へのファイナンス。

DPWH のプログラムによる。

2016 年以降でないと民間資本が

入りにくい。有料道路化はコンセッ

ションに左右される。拡幅と料金

収受施設は民間に任せられる。

Daang Hari Road (DH2)

PPP スキーム: PNCC フランチャイ

ズの一部。NDC/PIC は PNCC と共

に、既存の SLEX コンセッションを利

用して、有料道路プロジェクトとして

事業推進中。資金は国内で調達。

NDC/PIC への技術支援を除き

DPWH の予算に影響するものは

ない。

Daang Hari Road (DH3, DH4)

従来スキーム: JBIC 等からの ODAによる設計・建設へのファイナンス。

DPWH のプログラムによる。

DPWH は用地収用のための予算

を早期に確保すべき。NDC のフ

ァイナンスが期待できる。

9.2 実施シナリオ

NDC/PIC による資金調達の可能性、および世界銀行のファイナンスの申し入れにより、

DPWH が CALA 道路プロジェクトを実施する方策が広がった。タイミング、リスクおよび結

果の相違によって、次の3つのシナリオが考えられる。

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

S-54 要約

• シナリオ A – North-South Road のコンセッションを BOT 法に基づき入札にかける。

ただし過去の失敗、特に Star Expressway の頓挫に学ぶことが重要である。入札に

勝った事業者は特別目的会社 (SPC)を設立し、Toll Concession Agreement (TCA)を TRB から譲許されるが、詳細設計を実施し資金を確保した上で道路を建

設、政府に資産を返却するまで有料道路を運営・維持管理しなければならない。こ

のシナリオでは、PIC の参加は2次的要素に過ぎず、参加の形や規模は入札の結果

による。

• シナリオ B – シナリオ A と同じであるが、PIC の参加は考えない。DPWH は自身の

予算により用地費を賄い、SPC も PIC からの資金を期待しない。

• シナリオ C – PIC の役割を拡大し、PIC 自身が速やかに SPC を設立、TCA を得て

詳細設計の実施と並行して用地取得のファイナンスを行う。その後、TCA を持つ

SPC に対し入札を実施する。民営化はこの入札により達成される。 これらのうちシナリオ A と C は NS-1 の完成を も早く達成できる(2011 年第1四半期)。

ただしシナリオ A では遅れる可能性が高くなる。シナリオ B では、 も早くて 2011 年第4

四半期と想定されるが、DPWH が 2008 年には予算から用地費を支出できること、民間

事業者が期日どおり資金を確保できることが前提となる。 シナリオ C では以前のフィリピンでの BOT/PSP プロジェクトで見られた 欠点を避けること

ができる。しかしこのような複雑なプロジェクトの実績がない組織に多くをゆだねるというリ

スクはある。 3つのシナリオに共通して必要なのは、NEDA-ICC の評価と承認である。これには通常

DPWH による書類の準備から NEDA-ICC の 終承認まで 4-6 ヶ月かかる。しかし

North-South Road の入札は 2007 年 5 月の選挙後にしか開始することができない。

9.3 事業実施支援 事業シナリオに関わらず、DPWH は外国に支援されたプロジェクトについての

PMO の管轄下にプロジェクト管理ユニットを設置しなければならない(PMO の

人員を使って)。道路に関する業務の中には DPWH の地方エンジニアリングオフィス

に委ねられるものもあろう。 DPWH はまた外国からの技術援助を必要とする(おそらく世界銀行から、遅くとも 2007年 1 月までに)。これは North-South Road のフェーズ1についての次の業務のために必

要なものである。

• 2007 年前半 – 入札準備および NEDA-ICC 評価に必要な書類作成

• 2008 年後半 – 入札資格審査、入札およびコンセッション譲許 過去の有料道路プロジェクトの教訓から、コンセッションには次の要件が必要である。

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

要約 S-55

• 本調査で提案しているように、道路料金は固定料金で、既存有料道路の 高のレー

トを下回ること。これは Star Expressway の失敗を繰り返さないということである。

• コンセッション期間は従来の 25 年固定ではなく、料金収入により可変であること。こ

れにより、交通量と収入が予測より多ければ期間を短縮し、少なければ期間を延長

できる。

• NS2 と NS3 の事業を実施する権利は NS1 の完成から数えて有効期限を設定する

こと。これにより、R-1、Star、Skyway の問題点を回避できる。

• 用地費は一部でも道路料金でカバーされるプロジェクトコストに含めること。建設開

始時期は、用地取得終了時または設計完了時、どちらか遅いほうとみなすべきであ

る。

入札の判定基準は、政府・公企業(NDC-PIC、DPWH)の負担が少ないかどうかに置くべ

きである。用地費をべつにしても、PIC は入札の勝者からプロジェクトへの投資を求めら

れることがあり得る。財務能力は入札参加者の資格として も重要なものである。もし設計

あるいは用地取得の終了後 3 ヶ月以内に入札の勝者が資金を確保できないならば、パ

ーフォーマンスボンドを取り消し詳細設計書を提出させた上、PIC にプロジェクトに参加し、

投資し、引き継ぐ権利を与えるべきである。入札参加グループは、メンバーとして設計会

社を含み、入札に詳細設計のコストとスケジュールを明記しなければならない。その成果

品は事業者が建設を開始できなかった場合、DPWH の資産とし次のコンセッション取得

者の利用に供するべきである。建設開始時期は TRB ではなく DPWH の詳細設計完成

承認から起算するものとする。 本調査の終了後(2006 年 9 月)事業実施にいたるまでの間、フォローアップには

困難が予想される。DPWH の BOT PMO がこの担当と目されるが、有料道路以外

の道路に対して注意が行き届かなくなる恐れがある。したがって、プロジェクト

全体の「指揮官」を任命することが妥当である。JICA 調査団の残すデータと資産

を保全するのみならず、「指揮官」は道路の計画線型を保持しできるだけ多くの

土地所有者と合意を達成することが重要である。

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

S-56 要約

10 結論と提言 10.1 結論

カビテ・ラグーナの道路交通ネットワークは、この地域の急速な地域発展に追いついてお

らず、その結果交通混雑が悪化している。この成長はメトロマニラと密接に関係しているた

め、混雑はメトロマニラに近づくほど厳しい。このパターンは中期的にも継続的しそうであ

り、さらに状況が悪化する可能性が高い。 長い目で見ると地域内と東西の通勤移動が活発になることで CALA の高成長率を保つこ

とができる。向こう 10 年間で次の 2 つの新しい幹線道路が必要となる。(a) North South Road: これは北側で R-1 高速道路に接続し、途中で Daang Hari Road と交差、さらに

南で Governor’s Drive に接続する、 (b) Daang Hari Road:これは東西幹線道路で東

側は SLEX へ接続する。2つの幹線道路は経済的、技術的にフィージブルであることが

示された(North-South Road の E-IRR は 80%を越え, DH-4 のそれも 60%)。 上記の道路のうちには、土地収用の関係でサービスレベルを抑えざるを得なかった区間

がある。実施が遅れる場合はこの制約がさらに厳しくなる恐れがあるため、早急な実施と

道路用地の保全が必要である。 より早くプロジェクトを現実化するためには、公共部門のリソースは、民間部門のリソース

によりてこ入れされる必要がある。すべての道路区間 (NS+DH+CE)の費用合計は 269億ペソになる。このうち、North South Road のフェーズ1が 52 億ペソ、フェーズ 2 が 87億ペソである。DPWH の予算だけに依存している状況が続けば、完成は少なくとも 3 年

遅れるだろう。North South Road は、 公共と民間が協力する PPP 事業として建設する

ことができる。フェーズ 1 では主に民間資金を充て、フェーズ 2 で ODA や公共資金を充

てる。DH-2 は PIC と PNCC による BTO スキームとして既に実施が始まっている。この事

業は DPWH の予算に頼る必要はない。 DH-3 と DH-4 には 31 億ペソ必要と推計され、2008 開始の DPWH の投資計画に位置

づけられなければならない。土地収用費用は、North South Road で 14 億ペソ、DH-3 と DH-4 は 4.2 億ペソになる。これら用地費は、民間開発業者が土地を寄付ないし簿価

で譲渡してくれれば、相当圧縮できる。 CALA Expressway の経済的価値も高い。CE-1 から CE-4 の 4 区間の E-IRR は 34-35%となっているが、もし CE-5 と CE-6 という R-1 高速道路の延伸ともいうべき区間が建

設されたなら、CALA Expressway は SLEX の代替路線となり、その経済的・社会的価値

は膨大なものとなる。

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フィリピン国 Cavite-Laguna(CALA)東西道路事業化促進調査 終報告書:要約

要約 S-57

10.2 提言 調査団の提言を以下に示す。

• CALA 道路プロジェクト実現の気運を維持し、本調査終了時とプロジェクト実施時の

ギャップをつなぐため、DPWH 内にプロジェクト「指揮官」を任命する。

• 詳細設計と並行して、本調査 EIS で提案している環境・社会インパクト軽減策を確認

し、その実施責任・役割分担を設定する。

• DPWH は3つの実施シナリオのうちどれに従うかを決定し、ペンディングになっている

NDC/PIC との MOU (Memorandum of Understanding)を締結する。

• 2007 年 6 月以前を目途として North South Road フェーズ1を入札にかけ、NEDA-ICC の承認をそれ以前に取り付ける。

• 地方自治体は、新規幹線道路が完成するまでの間、混雑緩和のために現況コリドー

での小規模交通改善施策を実施する。

• 効率性を保ちつつ通勤時の自動車利用への転換を抑制するため、バス・ジープニ

ー・トライシクルで構成される既存公共交通システムの改善・調整を行う。

• 現段階で利害関係者のコンセンサスがまだ取れていない CALA Expressway の

CE-1 区間(SLEX への第2接続部分)についての更なる検討。

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